説明

壁面緑化システム及び壁面緑化方法

【課題】天然樹木によって建築物外壁面を広範に緑化する。
【解決手段】建築物の外壁面を緑化する壁面緑化システム(1)は、垂直支柱(2)、梁部材(3)及び横架材(4:5)によって形成された鋼構造の骨組みを有する。梁部材は、外壁面(W)と平行な方向に延び、隣り合う垂直支柱を相互連結する。樹木(T)を植栽する土壌を収容した植栽ポット(6)が、横架材によって支持される。第1横架材(4)は、支柱列と外壁面との間に水平に架設され、第2横架材(5)は、支柱列の外側に水平に延びる。植栽ポットは、同一層レベルおいて支柱の前後に交互に配置され、同一支柱の上下方向において支柱の前後に交互に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面緑化システム及び壁面緑化方法に関するものであり、より詳細には、高木、中木等の樹木によって建築物の外壁面を緑化する壁面緑化システム及び壁面緑化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部の建築物においては、自然保護、景観、環境負荷軽減等の都市計画上の観点より、適正な面積の緑地を建築物の敷地内に確保することが、従来より重視されてきた。一般に、敷地の緑化は、高木、中木及び低木等の樹木や、芝生等を敷地内の土壌に植栽することによって行われている。
【0003】
近年、壁面緑化及び屋上緑化等の建築物自体の緑化が、ヒートアイランド現象緩和、美観向上、環境負荷軽減等の観点より、注目されている。壁面緑化方法として、付着根を有するつる植物を自立登攀させて壁面を覆う登攀式壁面緑化法、屋上、ベランダ等に設置したプランターから植物を垂らして壁面を緑化する垂下式壁面緑化法、ワイヤー等の補助材を用いてつる植物を登攀又は下垂させて壁面を緑化する補助材式壁面緑化法(特開2004-267084号公報)、つる植物を誘引・巻付け可能なユニットを用いたユニット式壁面緑化(特開2004-254565号公報)、更には、壁面緑化専用の植栽済み緑化パネルを用いて壁面を早期に緑化する立体基盤式壁面緑化法(特開2003-155714号公報、特開2001-169658号公報)等が知られている。この他、多数の植栽ユニット等を屋上等から懸吊して建築物の壁面を緑化する方法(特開2004-24855号公報)等の様々な緑化方法が今日までに提案されてきた。
【特許文献1】特開2004-267084号公報
【特許文献2】特開2004-254565号公報
【特許文献3】特開2003-155714号公報
【特許文献4】特開2001-169658号公報
【特許文献5】特開2004-24855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の壁面緑化法は、つる植物、蔦植物等の地被植物を使用したものにすぎず、壁面を天然樹木で広範に緑化する試みは、今日においても未だ行われていない。天然樹木で壁面を緑化するために人工地盤を外壁から突出させ、或いは、建築物の外壁を部分的に後退させて人工地盤を形成することも可能であるが、日光及び雨水が天然樹木に作用するには、適正な空間を樹木廻りに確保する必要があることから、このような人工地盤は、外壁面に局所的に形成し得るにすぎず、外壁面を天然樹木で広範に緑化することはできない。
また、地被植物を使用した壁面緑化又は屋上緑化によって大気中のCO2濃度を低減させようとする試みが、近年殊に注目されているが、地被植物によっては、CO2濃度低減効果を十分に達成し難く、中木又は高木を用いた壁面緑化の必要が将来的に生じると考えられる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天然樹木によって建築物外壁面を広範に緑化することができる壁面緑化システム及び壁面緑化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は、建築物の外壁面を緑化する壁面緑化システムにおいて、
前記外壁面から所定間隔を隔てて配置された複数の垂直支柱と、
前記外壁面と平行な方向に延び、隣り合う垂直支柱を相互連結する梁部材と、
樹木を植栽する土壌を収容可能な植栽用容器と、
該植栽用容器を支持する第1及び第2横架材とを有し、
前記支柱、梁部材及び横架材は、建築物の外側に鋼構造の骨組みを形成し、
第1横架材は、前記支柱と前記外壁面との間に水平に架設され、前記第2横架材は、前記支柱から支柱列の外側に水平に延び、
前記植栽用容器は、第1及び第2横架材によって夫々支持され、同一層レベルおいて前記支柱の前後に交互に配置され、同一支柱の上下方向において前記支柱の前後に交互に配置されることを特徴とする壁面緑化システムを提供する。
【0007】
本発明の上記構成によれば、建築物の外壁と平行な支柱列が外壁面の外側に配置される。植栽用容器の荷重は、横架材を介して支柱に伝達し、支柱の柱脚部から基礎及び地盤に伝達するので、建築物に大きな構造的負荷を与えずに、中木又は高木用の植栽用容器を外壁に配置することができる。同一層レベルの植栽用容器は、外壁面に沿って支柱の前後に交互に配置されるので、隣り合う樹木の間に十分な水平方向距離を確保することができる。また、同一支柱と関連した植栽用容器は、支柱の前後に交互に配置されるので、上下の樹木の間に十分な上下方向距離を確保することができる。従って、十分な空間を各樹木廻りに確保し、日光及び雨水を各樹木に均一に作用せしめることが可能となる。
【0008】
他の観点より、本発明は、建築物の外壁面を緑化する壁面緑化方法において、
樹木を植栽する土壌を収容可能な第1及び第2植栽用容器を外壁面から間隔を隔てて配置し、前記第1植栽容器を前記外壁面に接近させ、前記第2植栽用容器を前記外壁面から離間させ、前記第1及び第2植栽用容器を水平方向且つ上下方向に交互に配置し、
各植栽用容器内の土壌に中木又は高木を植栽し、中木又は高木の成長によって前記外壁面を中木又は高木で覆うことを特徴とする壁面緑化方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の壁面緑化システムによれば、天然樹木によって建築物外壁面を広範に緑化することができる。また、天然樹木で壁面緑化することにより、外壁面を全体的に中木又は高木で視覚的に覆うとともに、大気中のCO2濃度の低減に有効な壁面を建築物に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態において、植栽用容器は、真円形断面の頂部開口形容器からなる。植栽容器の断面(水平断面)は、長円形又は楕円形等の円形断面、或いは、三角形、四角形、五角形等の多角形断面に設計しても良い。また、植栽用容器を二重構造に設計し、或いは、植栽用土壌を収容した内側ポット又はプランタ等の内側容器を植栽用容器内に更に配置しても良い。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、支柱、梁部材及び横架材は、植栽用容器の荷重を支持することができる所定断面の鋼管からなり、ブラケット及びボルト・ナット組立体によって相互連結される。好ましくは、支柱は、コールテン鋼の鋼管からなり、植栽用容器又は地盤、或いは、地上レベルのプランタ等に植栽した蔦植物又はつる植物等の地被植物が支柱の表面を登攀する。
【0012】
好ましくは、支柱の柱脚部は、建築物の構造体から独立した鉄筋コンクリート構造等の基礎に支持され、第1横架材は、外壁面に取外し可能に連結される。壁面緑化システムは、建築物に対して独立した構造体を形成し、建築物から取外すことができる。このような構成の壁面緑化システムは、既存建築物の壁面に取付けることも可能であるので、実用的に有利である。
【0013】
更に好ましくは、植栽用容器は、角形鋼管製の横架材の上面に固定され、灌水設備、排水設備及び照明設備が植栽用容器に配設される。灌水設備、排水設備及び照明設備のための給水管、排水管及び電気配線が、支柱内の中空部に配管又は配線される。
【0014】
本発明の好適な実施形態において、上記横架材には、方杖部材が接合され、方杖部材は、横架材から支柱に向かって斜め下方に延びる。横架材及び方杖部材の支柱側端部は、垂直部材によって相互連結され、概ねトラス構造の骨組みを形成し、この骨組は、支柱に二点支持される。
【0015】
所望により、各植栽用容器の樹木にアクセスするための床面形成部材が、梁部材及び横架材に支持される。
【実施例1】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2は、本発明の実施例に係る壁面緑化システムを全体的に示す正面図及び側面図である。
【0018】
壁面緑化システム1は、建築物Aの外壁面Wに沿って延びる複数の垂直支柱2と、支柱2の間に水平に架設された複数の梁部材3と、支柱2と外壁面Wとの間に水平に延びる両端支持構造の横架材4と、支柱2から外側に延びる片持ち梁構造の横架材5と、支柱2の前後に交互に配置された植栽ポット6とから構成される。植栽ポット6は、樹木植栽用の土壌を収容可能な植栽用容器を構成する。支柱2の柱脚部は、地上レベルGLに配置された鉄筋コンクリート構造の基礎7に埋入し、基礎7によって地盤G上に支持される。支柱2は、スパンSの相互間隔を隔てて整列配置され、外壁面Wと平行な支柱列を建築物Aの外側に形成する。
【0019】
建築物Aは、4階建ての建築物として例示されており、梁部材3、横架材4、5及び植栽ポット6は、建築物Aの各階の床レベル1FL〜4FLに相応するレベルに夫々配置される。各階の梁部材3は、図1に示すように同一レベルに配置され、横架材4、5は、図2に示すように梁部材3と同一レベルに配置される。支柱2、梁部材3及び横架材4、5は、立体格子状の鋼構造物として建築物Aの外側に構築される。
【0020】
図3及び図4は、壁面緑化システム1の構造を示す部分平面図及び部分側面図であり、図5は、支柱2に固定したブラケットの配置を示す平面図、正面図及び側面図である。
【0021】
図3に示すように、横架材4は、各支柱2と外壁面Wとを連結するように1スパン(1×S)間隔に配置され、横架材5は、2スパン(2×S)間隔に配置される。植栽ポット6は、支柱2と外壁面Wとの間の壁面帯域(支柱列の後側領域)において2スパン(2×S)間隔に配置され、横架材4に支持される。植栽ポット6は又、支柱列の外側帯域(支柱2の前側領域)において2スパン(2×S)間隔に配置され、横架材5に支持される。
【0022】
支柱2は、円形断面の鋼管からなり、例えば、100mm×4.2mm(直径×肉厚)の断面寸法を有する。梁部材3は、ブラケット31を両端部に固定した角形鋼管からなり、例えば、100mm×50mm×3.2mm(高さ×幅×肉厚)の断面寸法を有する。ブラケット31は、支柱2の両側に突設したブラケット21にボルト連結される。梁部材3は、両端支持の梁部材として支柱2の間に架設され、隣り合う支柱2同士を相互連結する。
【0023】
横架材4は、梁部材3と同一の断面寸法を有する角形鋼管からなる。ブラケット41が、横架材4の支柱側端部(前端部)に固定され、アンカープレート42が、横架材4の外壁側端部(後端部)に固定される。アンカープレート42は、アンカーボルト49によって外壁面Wに固定される。ブラケット22が、支柱2の前後に突設される。ブラケット41は、支柱2の後側(外壁面側)に位置するブラケット22にボルト連結される。図5に示す如く、ブラケット22は、ブラケット21と直交する方向に配向され、横架材4は、梁部材3と直交する方向に延び、支柱2を建築物Aの外壁に連結する。
【0024】
横架材5も又、梁部材3と同一の断面寸法を有する角形鋼管からなる。横架材5の前端面は、鋼鈑52によって閉塞する。ブラケット51が、横架材5の支柱側端部(後端部)に固定され、支柱列の外側(支柱2の前側)に位置するブラケット22にボルト連結される。横架材5は、梁部材3と直交する方向に配向され、横架材4と整列する。
【0025】
図4に示す如く、植栽ポット6は、横架材4、5上に夫々配置され、植栽ポット6の荷重は、横架材4、5によって支持される。植栽ポット6の荷重を支柱2に伝達する方杖部材43、53が、支柱2の前後に対称に配置される。方杖部材43は、横架材4から斜め下方に延び、垂直プレート45の下端部に一体的に連結される。垂直プレート45は、横架材4の端部とブラケット41との間に介挿した帯状の鋼鈑からなる。方杖部材53は、横架材5から斜め下方に延び、垂直プレート55の下端部に一体的に連結される。垂直プレート55は、横架材5の端部とブラケット51との間に介挿した帯状の鋼鈑からなる。
【0026】
ブラケット23が支柱2の前後に突設され、ブラケット44、54が、ブラケット23と対向するように垂直プレート45、55に固定される。ブラケット44、54は夫々、ブラケット23にボルト連結される。かくして、横架材4、5は、支柱2に二点支持され、植栽ポット6の荷重は、上下のブラケット22、23を介して支柱2に伝達する。
【0027】
図6は、植栽ポット6の構造を示す平面図、正面図及び側面図である。
【0028】
図6には、支柱2の前側に配置された植栽ポット6が示されている。植栽ポット6は、直径約800mmの円筒形本体61と、本体61の下面を閉塞する底板62とから構成される。本体61は、板厚約3mmの鋼鈑の曲げ成形品からなり、底板62は、周縁部を本体61に溶接した板厚約3mmの円形鋼鈑からなる。底板62は、横架材5の上面に溶接され、植栽ポット6は、横架材5と一体化する。
【0029】
土壌充填領域70の底面を形成する排水板63が、植栽ポット6内に配置される。排水板63には、径方向中央部に向かって水勾配の傾斜が付けられており、排水口64が、排水板63の中心に配置される。排水口64は、排水管65に接続され、排水管65は、図6(C)に示す如く、底板62を貫通する。排水管65は、横架材52の中空部内に延び、仮想線で示すように中空部内に配管される。
【0030】
土壌充填領域70の上部には、灌水設備8及び照明設備9が配置される。灌水設備8は、植栽ポット6の内周面に沿って延びる灌水管81と、灌水管81に接続された給水管82とから構成される。照明設備9は、本体61に支持された複数の照明器具91と、電力供給用の電気配線92と、電気配線92を接続可能な配電ボックス93とから構成される。配電ボックス93には、給電線を挿通した電気配管94が接続される。
【0031】
図2に部分拡大断面図として示すように、給水管82、排水管65及び電気配管94は、支柱2の管内領域に延びる。支柱2内には、給水主管83及び排水主管66が垂直に配管される。給水管82は、給水主管83に接続され、排水管65は、排水主管66に接続される。電気配管94は、支柱2の管内領域に垂直に配管される。
【0032】
土壌Jが土壌充填領域70に所定レベルまで充填される。所望により、土壌Jの落下を阻止して排水する土壌排水手段が排水口64に設けられる。例えば、土壌Jとして、比重0.8程度の軽量土壌と、排水層用の土壌改良資材(比重0.1程度の黒曜石パーライト等)とを好ましく使用し得る。土壌Jの上方域には、灌水設備8及び照明設備9が配置される。
【0033】
図2には、中木又は高木等の樹木Tと、蔦植物(蔦類)又はつる植物等の地被植物Uとを植栽ポット6内の土壌Jに植栽した状態が示されている。樹木Tの高さは、建築物Aの階高Hよりも低い高さを有する。樹木Tとして、例えば、樹高4m、樹径2mの高木(例えば、しゃら)を植栽ポット6に植栽することができる。地被植物Uは、支柱2に伸び、支柱2の表面を登攀し又は垂下する。支柱2は、好ましくは、コールテン鋼の鋼管からなり、地被植物Uの付着根は、コールテン鋼の酸化皮膜に付着し、支柱2の表面を自立登攀する。
【0034】
図1に示す如く、植栽ポット6は、建築物Aの正面側に均等な間隔で配置され、建築物Aの外壁面Wは、樹木Tで全体的に緑化される。樹木Tは、都市計画上の観点より建築物Aの価値を高めるばかりでなく、建築物Aに作用する夏期の日射を緩和する効果、屋外環境と屋内領域との間の視線を自然物で遮断する効果、或いは、建築物利用者の心理を自然物で改善する効果など、登攀植物のみによる従来の壁面緑化では得られなかった効果をもたらす。
【0035】
植栽ポット6は、支柱2の前後に交互に配置されるが、このような千鳥配置により、十分な水平間隔及び垂直間隔を樹木T同士の間に確保することができる。
【0036】
図7は、樹木Tの配置を示す平面図である。
【0037】
図7(A)には、奇数階レベルの樹木配置が示されており、図7(B)には、偶数階レベルの樹木配置が示されている。図7に示す通り芯(1)〜(6)は、図1に示す支柱2の通り芯(1)〜(6)と一致する。
【0038】
偶数番号の通り芯(2)、(4)、(6)に配置された植栽ポット6は、偶数階(2階、4階)レベルにおいて支柱列の外側に配置され、奇数階(3階)レベルにおいて支柱列と外壁面Wとの間に配置される。奇数番号の通り芯(1)、(3)、(5)に配置された植栽ポット6は、奇数階(3階)レベルにおいて支柱列の外側に配置され、偶数階(2階、4階)レベルにおいて支柱列と外壁面Wとの間に配置される。樹木Tは、水平方向距離Eを隔てて離間するとともに、2層分の高さ2×Hの上下方向距離に隔てて離間する。このため、図2に示す如く、十分な日射Lが各樹木Tに到達し、十分な露又は雨水Rが樹木Tに降りるための空間が、各樹木Tの廻りに確保される。
【0039】
各植栽ポット6は、500〜600kg程度の重量を有し、植栽ポット6の荷重は、横架材4、5を介して支柱2に伝達する。植栽ポット6の荷重は、支柱2、梁部材3及び横架材4、5の自重を含む鉛直荷重Pとして支柱2の柱脚部分に作用し、基礎7は、鉛直荷重Pを支持する。植栽ポット6の荷重の一部は、曲げ応力及び剪断応力として、横架材4から建築物Aの外壁に作用するが、建築物Aに作用する応力は、比較的小さく、建築物Aの鉄筋補強等によって比較的容易に吸収することができる。上述した植栽ポット6の交互配列は、壁面緑化システム1の荷重均衡を図る上でも有利であり、例えば、横架材4、5と支柱2との接続部に作用する剪断応力又は曲げ応力は、互いに反対方向に支柱に作用し、部分的に相殺する。所望により、壁面緑化システム1の耐震性を向上させる水平ブレース等の補強材を鋼製骨組みの適所に配置しても良い。
【0040】
樹木Tの管理は、支柱2、梁部材3及び横架材4、5からなる鋼製骨組を利用して行うことができる。通常の技能を有する植木職人は、建築物の窓等を介して鋼製骨組に移り、各樹木Tにアクセスすることができる。所望により、各樹木Tにアクセスするための足場が壁面緑化システム1に配設される。図7には、このような足場を形成するグレーチング等の開孔鋼製床材35、36(仮想線で示す)が例示されている。開孔鋼製床材35、36は、建築物A、梁部材3及び横架材4に支持される。
【0041】
図8は、樹木Tが成長した状態を示す壁面緑化システムの正面図である。
【0042】
樹木Tの成長に伴い、建築物Aの外壁面Wのみならず、壁面緑化システム自体も樹木Tで覆われる。所望により、壁面緑化システムの直下又は外側の地盤Gに樹木(仮想線で示す)を植栽しても良い。また、蔦植物(蔦類)又はつる植物等の地被植物を地盤Gに植栽し、最下層の支柱2に登攀させても良い。支柱列の外側に配置された植栽ポット6は、樹木Tによって完全に覆うことは困難であるものの、地盤レベルの歩行者等は、支柱列外側の植栽ポット6を視覚的に認識し難い。従って、壁面緑化システムは、樹木Tによって実質的に覆われる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0044】
例えば、上記実施例では、植栽ポット6内に土壌Jを直に充填しているが、植栽ポット6を二重構造に設計し、或いは、内側ポット又はプランタボックス等を植栽ポット6内に配置しても良い。
【0045】
また、植栽ポット6、梁部材3及び横架材4、5等に耐候性塗料を塗装し、或いは、これらの部材をコールテン鋼等の耐候性鋼材によって製作しても良い。
【0046】
更に、給水ポンプ等の灌水用給水設備や、灌水及び照明を自動制御又は時間制御する制御装置等の如く、従来の緑化システムにおいて採用されている公知の装置又は機器を壁面緑化システム1に適当に配設しても良い。
【0047】
また、樹木Tは、常緑樹であっても、落葉樹であっても良い。例えば、常緑樹は、管理を容易にする上で望ましく、他方、落葉樹は、夏期日射の遮断と冬季日射の壁面到達とを両立させる上で望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の壁面緑化システム及び壁面緑化方法は、天然樹木によって建築物外壁面を広範に緑化する壁面緑化手段として用いられる。殊に、本発明の壁面緑化システム及び壁面緑化方法は、低層又は中層の都市建築物の外壁面を中木又は高木で全体的に緑化する壁面緑化手段として有利に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例に係る壁面緑化システムの構成を全体的に示す正面図である。
【図2】図1に示す壁面緑化システムの構成を示す側面図である。
【図3】壁面緑化システムの構造を示す部分平面図である。
【図4】壁面緑化システムの構造を示す部分側面図である。
【図5】支柱に固定したブラケットの配置を示す平面図、正面図及び側面図である。
【図6】植栽ポットの構造を示す平面図、正面図及び側面図である。
【図7】樹木の配置を示す平面図である。
【図8】樹木が成長した状態を示す壁面緑化システムの正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 壁面緑化システム
2 垂直支柱
3 梁部材
4 横架材(第1横架材)
5 横架材(第2横架材)
6 植栽ポット
7 基礎
8 灌水設備
9 照明設備
61 本体
62 底板
63 排水板
64 排水口
65 排水管
A 建築物
W 外壁面
J 土壌
T 樹木
U 地被植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁面を緑化する壁面緑化システムにおいて、
前記外壁面から所定間隔を隔てて配置された複数の垂直支柱と、
前記外壁面と平行な方向に延び、隣り合う垂直支柱を相互連結する梁部材と、
樹木を植栽する土壌を収容可能な植栽用容器と、
該植栽用容器を支持する第1及び第2横架材とを有し、
前記支柱、梁部材及び横架材は、建築物の外側に鋼構造の骨組みを形成し、
第1横架材は、前記支柱と前記外壁面との間に水平に架設され、前記第2横架材は、前記支柱から支柱列の外側に水平に延び、
前記植栽用容器は、第1及び第2横架材によって夫々支持され、同一層レベルおいて前記支柱の前後に交互に配置され、同一支柱の上下方向において前記支柱の前後に交互に配置されることを特徴とする壁面緑化システム。
【請求項2】
前記支柱は、地被植物が支柱の表面を登攀するように、コールテン鋼の鋼管によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の壁面緑化システム。
【請求項3】
灌水設備、排水設備及び/又は照明設備が前記植栽用容器に配設され、灌水設備、排水設備及び/又は照明設備のための給水管、排水管及び/又は電気配線が、前記支柱内の中空部に配管又は配線されることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁面緑化システム。
【請求項4】
前記横架材には、方杖部材が接合され、該方杖部材は、前記横架材から前記支柱に向かって斜め下方に延び、前記横架材及び方杖部材の支柱側端部は、垂直部材によって相互連結されるとともに、前記支柱に二点支持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁面緑化システム。
【請求項5】
前記植栽用容器の樹木にアクセスするための床面形成部材が、前記梁部材及び/又は前記横架材に支持されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の壁面緑化システム。
【請求項6】
建築物の外壁面を緑化する壁面緑化方法において、
樹木を植栽する土壌を収容可能な第1及び第2植栽用容器を外壁面から間隔を隔てて配置し、前記第1植栽容器を前記外壁面に接近させ、前記第2植栽用容器を前記外壁面から離間させ、前記第1及び第2植栽用容器を水平方向且つ上下方向に交互に配置し、
各植栽用容器内の土壌に中木又は高木を植栽し、中木又は高木の成長によって前記外壁面を中木又は高木で覆うことを特徴とする壁面緑化方法。
【請求項7】
前記外壁面から所定間隔を隔てて複数の垂直支柱を配置し、
前記植栽容器の荷重を前記支柱に伝達するように、前記植栽用容器を支持する横架材を前記垂直支柱に取付けることを特徴とする請求項6に記載の壁面緑化方法。
【請求項8】
前記支柱に地被植物を登攀せしめることを特徴とする請求項7に記載の壁面緑化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−274948(P2007−274948A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104151(P2006−104151)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(591195189)株式会社杉孝 (22)
【Fターム(参考)】