説明

変位測定装置、変位測定方法、光学用部材成形用金型の製造方法及び光学用部材

【課題】レーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれによる測定誤差を低減することのできる変位測定装置及び変位測定方法を提供する。
【解決手段】ビームスプリッタ3により、レーザ光源1から出射されたレーザ光を被測定物4に向かう第1分割レーザ光2a及び第2分割レーザ光2bに分割すると共に、第2受光素子6bにより第2分割レーザ光2bを受光する。そして、第2受光素子6bを、第2受光素子6bに入射する第2分割レーザ光2bの光量の割合と第1受光素子6aに入射する第1分割レーザ光2aの光量の割合とが一致する位置に配置し、位置演算器8は、第1受光素子6aの出力及び第2受光素子6bの出力の差に基づいてレーザ光源1に対する被測定物4の変位を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で被測定物の変位を測定する変位測定装置、変位測定方法、光学用部材成形用金型の製造方法及び光学用部材に関し、特にレーザ光により被測定物の変位を測定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば工作機械で加工を行う時には、工作機械上における工具の位置、工具の先端形状の情報が必要である。そこで、従来は、工具の位置や先端形状を測定するため、ワークにダミー加工を行った後、ワークを取り外し、工作機械外の測定装置を用いてダミー加工の加工痕を測定することにより工作機械上における工具の位置や先端形状を測定している。
【0003】
しかし、このような方法はダミー加工を行った後、工作機械外でダミー加工の加工痕の測定を行なうので、スループットを損なってしまうことと、工具が磨耗するという課題がある。そこで、従来は、このような課題に対しては、工具でレーザ光を遮光させ、遮光した光量変化を測定することにより、非接触で、工作機械上で工具のレーザ光源に対する変位を測定するようにしたものがある(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−88555号公報
【特許文献2】特開2005−308605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような遮光した光量変化を測定する従来の変位測定装置及び変位測定方法においては、レーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれが測定誤差となってしまう課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、レーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれによる測定誤差を低減することのできる変位測定装置、変位測定方法、光学用部材成形用金型の製造方法及び光学用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の変位測定装置は、被測定物の変位を測定するための変位測定装置であって、レーザ光源と、被測定物と、前記被測定物と前記レーザ光源との間に配置され、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記被測定物に向かう第1分割レーザ光及び前記第1分割レーザ光とは別方向に向かう第2分割レーザ光に分割するビームスプリッタと、前記第1分割レーザ光を受光する受光素子と、前記第2分割レーザ光を受光する演算用受光素子と、前記被測定物により遮光された前記第1分割レーザ光を受光した前記受光素子の出力及び前記第2分割レーザ光を受光した前記演算用受光素子の出力により前記被測定物の変位を演算する演算部と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
また本発明の変位測定方法は、被測定物の変位を測定するための変位測定方法であって、被測定物とレーザ光源との間に配置されたビームスプリッタにより、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記被測定物に向かう第1分割レーザ光及び前記第1分割レーザ光とは別方向に向かう第2分割レーザ光に分割し、前記被測定物により遮光された前記第1分割レーザ光を受光した受光素子の出力及び第2分割レーザ光を受光した演算用受光素子の出力により前記被測定物の変位を測定することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の光学用部材成形用金型の製造方法は、加工プログラムにより切削工具の刃先と金型とを相対移動させて前記金型を切削加工する光学用部材成形用金型の製造方法であって、本発明の変位測定方法により測定した切削工具の刃先の形状から前記加工プログラムを作成し、作成した前記加工プログラムにより前記切削工具と前記金型とを相対移動させて前記金型を切削加工することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光学用部材は、本発明の光学用部材成形用金型の製造方法により製造された金型を用いて成形されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のように、分割されたレーザ光をそれぞれ受光した受光素子の出力及び演算用受光素子の出力の差に基づいてレーザ光源に対する被測定物の変位を演算することにより、レーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれによる測定誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る変位測定装置の構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る変位測定装置の構成図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る変位測定装置の構成図。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る変位測定装置の構成図。
【図5】本発明の変位測定装置の測定対象である切削工具を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る変位測定装置の構成図である。図1において、1はレーザ光2を出射するレーザ光源であり、このレーザ光源1から、ビーム径3mmの太さを有するレーザ光2が出射される。3はビームスプリッタであり、このビームスプリッタ3により、レーザ光2は2つのレーザ光2a,2bに分割される。5は工具等の被測定物4を固定する駆動ステージであり、この駆動ステージ5は、被測定物4が分割されたレーザ光2の内の一方のレーザ光(以下、第1分割レーザ光という)2aを遮光する方向に駆動できる構成となっている。
【0014】
また、6aは被測定物4のレーザ光出射方向下流側に配置された第1受光素子である。ここで、第1分割レーザ光2aは、ビームスプリッタ3により分割され、被測定物4により一部が遮光された後、第1受光素子6aに入射され、第1受光素子6aでは入射された第1分割レーザ光2aの光量を測定する。
【0015】
6bは第2受光素子であり、この第2受光素子6bはビームスプリッタ3により分割されたレーザ光2のうちの第1分割レーザ光2aとは別方向に向かうレーザ光(以下、第2分割レーザ光という)2bを受光し、第2分割レーザ光2bの光量を測定する。ここで、演算用受光素子である第2受光素子6bは、被測定物4の場所で第1分割レーザ光2aが通過する方向と分割前のレーザ光の同じ方向に相当する第2分割レーザ光2bのみを入射するように設置されている。なお、これらレーザ光源1、ビームスプリッタ3、第1及び第2第1受光素子6a,6bは、ベース7に固定されている。
【0016】
8は第1及び第2受光素子6a,6bの出力より被測定物4の位置を演算する演算部である位置演算器である。9は駆動ステージ5を矢印Aで示す第1分割レーザ光2aを遮光する方向に移動させる不図示の駆動部を制御するステージ制御部であり、このステージ制御部9は、位置演算器8からの出力に基づき、不図示の駆動部の駆動量を制御する。
【0017】
次に、本実施の形態に係る変位測定方法及び駆動ステージ5の駆動方法について説明する。本実施の形態においては、第1分割レーザ光2aを被測定物4が任意の量で遮光した位置(第1分割レーザ光2aと被測定物4の相対位置)の出力変化を測定することにより被測定物4の変位を測定するようにしている。
【0018】
以下、第1分割レーザ光2aを被測定物4が50%遮光した位置を測定する場合について説明する。なお、このような測定を行うのは、レーザ光2がガウシアン分布であるために、第1分割レーザ光2aを被測定物4が遮光した時の感度が最も高くなるのが50%遮光した位置だからである。この場合、第2受光素子6bの設置位置も第2分割レーザ光2bの光量が50%となる位置である。
【0019】
言い換えれば、第2受光素子6bの設置位置は、被測定物4により遮光された第1分割レーザ光2aが第1受光素子6aに入力される幅W1と、第2分割レーザ光2bが入力される幅W2とが同じになる位置である。即ち、本実施の形態において、第2受光素子6bは、第2受光素子6bに入射する第2分割レーザ光の2b光量の割合と、第1受光素子6aに入射する第1分割レーザ光2aの光量の割合とが一致する位置に配置されている。
【0020】
第2受光素子6bの光量出力Vb(%)は、光量安定性による測定誤差係数をC、光軸ぶれによる測定誤差係数をD、レーザ光源1から第2受光素子6bまでの距離をLb1とおけば、次式で表せる。なお、測定誤差係数Dは、レーザ光源1から射出したレーザ光2の角度ぶれによる誤差であるので、距離Lb1との乗数で光量出力Vb(%)に影響する。なお、距離Lb1は設計値であるので既知である。
Vb(%)=C×(50±D×Lb1)・・・(1)
【0021】
このように、この第2受光素子6bの光量出力Vb(%)はレーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれに影響したものとなる。このため、第2受光素子6bの光量出力Vb(%)を測定すれば、レーザ光源1からのレーザ光2の光量安定性、光量分布、光軸ぶれを測定することができる。
【0022】
また、第1受光素子6aの光量出力Va(%)は、レーザ光源1から第1受光素子6aまでの距離をLa1、駆動ステージ5を走査して被測定物4で遮光したことによる光量変動をXとおけば、次式で表せる。なお、距離La1は設計値であるので既知である。
Va(%)=C×(X±D×La1)・・・(2)
【0023】
ここで、レーザ光源1からのレーザ光の光量安定性、光量分布が良好で、光軸ぶれがない場合には、Vb=Vaとなるが、レーザ光の光量安定性、光量分布が悪く、光軸ぶれがある場合には、VbとVaとは異なるようになる。そこで、このようにVbとVaとが異なる場合には、VaとVbの値が等しくなるように駆動ステージ5を走査するようにする。
【0024】
そして、このように駆動ステージ5を走査してVaとVbとの値を等しくすることにより、第1分割レーザ光2aを被測定物4が50%遮光する位置を測定することができる。ここで、光量安定性による測定誤差係数Cが大きい場合には、正規化を行いVa/Vbを1にするように駆動ステージ5を走査するのが好ましい。また、光軸ぶれによる測定誤差係数Dが大きい場合には差分を行い(Va−Vb)を0にするように駆動ステージ5を走査するのが好ましい。
【0025】
このように、本実施の形態では、レーザ光2を分割し、分割されたレーザ光である第2分割レーザ光2bを第2受光素子6bにより受光するようにしている。そして、この第2受光素子6bの光量出力Vb(%)に基づいて、第1分割レーザ光2aを被測定物4が遮光した位置を測定するようにしている。
【0026】
これにより、被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光した位置を、レーザ光2の光量強度、光量分布、光軸ぶれの影響を低減して測定することができる。そして、このようにレーザ光2の光量強度等の影響を低減して被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光した位置を測定することにより、被測定物4の変位を精度よく測定することができる。
【0027】
また、被測定物4の変位を精度よく測定し、この測定位置に基づいてステージ制御部9が駆動部の駆動量を制御することにより、被測定物4を所望する位置、例えば、第1分割レーザ光2aを50%遮光する位置に移動させることができる。言い換えれば、被測定物4を移動させ、被測定物4の目標位置に対応する第1分割レーザ光2aの光量と、第2分割レーザ光2bの光量とを一致させることにより、被測定物4を所望する位置に移動させることができる。
【0028】
以上説明したように、分割レーザ光を受光した第1及び第2受光素子6a,6bの出力の差に基づいてレーザ光源1に対する被測定物4の変位を演算することにより、レーザ光2の光量安定性、光量分布、光軸ぶれによる測定誤差を低減することができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図2は、本実施の形態に係る変位測定装置の構成図である。なお、図2において、既述した図1と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0030】
図2において、10はビームスプリッタ3と第2受光素子6bの間に設けられ、第2分割レーザ光2bを遮蔽する遮蔽物であるナイフエッジである。このナイフエッジ10は、被測定物4の場所で第1分割レーザ光2aが透過する方向の光軸に対して同一の方向の第2分割レーザ光2bのみが第2受光素子6bに入射するように設置されている。なお、レーザ光源1、ビームスプリッタ3、第1及び第2受光素子6a,6b、ナイフエッジ10は、ベース7に固定されている。
【0031】
次に、本実施の形態に係る変位測定方法及び駆動ステージ5の駆動方法について説明する。なお、本実施の形態においても、既述した第1の実施の形態と同様に、第1分割レーザ光2aを被測定物4が任意の量で遮光した位置(第1分割レーザ光2aと被測定物4の相対位置)を測定することにより変位を測定するようにしている。
【0032】
以下、第1分割レーザ光2aを被測定物4が50%遮光した位置を測定する場合について説明する。第2受光素子6bの光量出力Vb(%)は、光量安定性による測定誤差係数をC、光軸ぶれによる測定誤差係数をD、レーザ光源1からナイフエッジ10までの距離をLb2とおけば、次式で表せる。測定誤差係数Dは、レーザ光源1から射出したレーザ光2の角度ぶれによる誤差であるので、距離Lb2との乗数で光量出力Vb(%)に影響する。なお、距離Lb2は設計値であるので既知である。
Vb(%)=C×(50±D×Lb2)・・・(3)
【0033】
つまり、この第2受光素子6bの光量出力Vb(%)はレーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれに影響したものとなる。このため、第2受光素子6bの光量出力Vb(%)を測定すれば、レーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれを測定することができる。
【0034】
また、第1受光素子6aの光量出力Va(%)は、レーザ光源1から被測定物4までの距離をLa2、駆動ステージ5を走査して被測定物4で遮光したことによる光量変動をXとおけば、次式で表せる。なお、距離La2は設計値であるので既知である。
Va(%)=C×(X±D×La2)・・・(4)
【0035】
そして、第1分割レーザ光2aを被測定物4が50%遮光した位置を測定する場合は、第1受光素子6aの光量出力Va(%)と第2受光素子6bの光量出力Vb(%)との値が等しくなるように駆動ステージ5を走査すれば良い。ここで、光量安定性による測定誤差係数Cが大きい場合には正規化を行いVa/Vbを1にするように駆動ステージ5を走査するのが好ましい。また、光軸ぶれによる測定誤差係数Dが大きい場合には差分を行い(Va−Vb)を0にするように駆動ステージ5を走査するのが好ましい。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態では、ナイフエッジ10を通過した第2分割レーザ光2bを第2受光素子6bにより受光し、この第2受光素子6bの光量出力Vb(%)に基づいて、被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光した位置を測定するようにしている。これにより、被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光した位置を、レーザ光2の光量強度、光量分布、光軸ぶれの影響を低減して測定することができる。さらに、ナイフエッジ10を用いることにより、簡易な構成で第2受光素子6bに入射する第2分割レーザ光2bを、被測定物4で遮光される第1分割レーザ光2aと、分割前のレーザ光の同じ方向に相当する方向から遮光することができる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図3は、本実施の形態に係る変位測定装置の構成図である。なお、図3において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0038】
図3において、11a〜11dは焦点距離が同一の集光レンズであり、第1及び第2分割レーザ光2a,2bのそれぞれの光路上において集光光学系を構成している。なお、本実施の形態において、駆動ステージ5は、矢印Aで示す被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光する方向と、矢印Bで示す第1分割レーザ光2aの光軸方向とに駆動できる構成となっている。
【0039】
ここで、ナイフエッジ10は第2分割レーザ光2bの光軸方向において集光レンズ11cの焦点位置に固定されている。また、レーザ光源1、ビームスプリッタ3、第1及び第2受光素子6a,6b、ナイフエッジ10、集光レンズ11a〜11dは、ベース7に固定されている。
【0040】
次に、本実施の形態に係る変位測定方法及び駆動ステージ5の駆動方法について説明する。まず、被測定物4を駆動ステージ5により、第1分割レーザ光2aの光軸方向において集光レンズ11aの焦点位置に移動させる。なお、被測定物4が集光レンズ11aの焦点位置に移動したかは第1受光素子6aの光量出力Va(%)により判断する。
【0041】
例えば、被測定物4による遮光量が50%より小さい場合は、第1分割レーザ光2aの光軸方向に被測定物4を走査したときの光量出力Va(%)は、焦点位置で最大となる。したがって、被測定物4を光量出力Va(%)が最大となる位置まで移動させることにより、被測定物4を集光レンズ11aの焦点位置に移動させることができる。
【0042】
次に、このように被測定物4を第1分割レーザ光2aの光軸方向において集光レンズ11aの焦点位置に設置した後、第2受光素子6bの光量出力Vb(%)を測定することにより、被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光した位置を測定する。ここで、第2受光素子6bの光量出力Vb(%)は、光量安定性による測定誤差係数をC、光軸ぶれによる測定誤差係数をD、レーザ光源1からナイフエッジ10までの距離をLb2とおけば、次式で表せる。
Vb(%)=C×(50±D×Lb2)・・・(5)
【0043】
つまり、この第2受光素子6bの光量出力Vb(%)はレーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれに影響したものとなる。このため、第2受光素子6bの光量出力Vb(%)を測定すれば、レーザ光の光量安定性、光量分布、光軸ぶれを測定することができる。
【0044】
また、第1受光素子6aの光量出力Va(%)は、レーザ光源1から被測定物4までの距離をLa2、駆動ステージ5を走査して被測定物4で遮光したことによる光量変動をXとおけば、次式で表せる。なお、距離La2は設計値であるので既知である。
Va(%)=C×(X±D×La2)・・・(6)
【0045】
ここで、本実施の形態においては、第1分割レーザ光2aを被測定物4が50%遮光した位置を測定したいので、第1受光素子6aの光量出力Vaと第2受光素子6bの光量出力Vbとの値が等しくなるように駆動ステージ5を走査する。
【0046】
なお、光量安定性による測定誤差係数Cが大きい場合には正規化を行いVa/Vbを1にするように駆動ステージ5を走査するのが好ましい。また、光軸ぶれによる測定誤差係数Dが大きい場合には差分を行い(Va−Vb)を0にするように駆動ステージ5を走査するのが好ましい。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態では、第2分割レーザ光2bを第2受光素子6bにより受光し、この第2受光素子6bの光量出力Vb(%)に基づいて、第1分割レーザ光2aを被測定物4が遮光した位置を測定するようにしている。これにより、被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光した位置を、レーザ光2の光量強度、光量分布、光軸ぶれの影響を低減して測定することができる。さらに、第1分割レーザ光2aを被測定物4の位置で、第2分割レーザ光2bをナイフエッジ10の位置で集光させているので、被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光した位置を、より高精度に測定することができる。
【0048】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図4は、本実施の形態に係る変位測定装置の構成図である。なお、図4において、既述した図3と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0049】
図4において、3aは第1ビームスプリッタであり、本実施の形態において、第1ビームスプリッタ3aとして、第1分割レーザ光2aの光量を33%、第2分割レーザ光2bの光量を66%に分割する素子を使用している。また、3bは第1ビームスプリッタ3aにより光量を66%に分割された第2分割レーザ光2bを、2つのレーザ光2c,2dに分割する第2ビームスプリッタである。なお、本実施の形態において、この他のビームスプリッタである第2ビームスプリッタ3bとしてハーフミラーを使用する。
【0050】
第1分割レーザ光2aは、被測定物4で一部が遮光され、遮光された後の第1分割レーザ光2aは、第1受光素子6aにより光量を測定する。また、第2ビームスプリッタ3bにより分割された第2分割レーザ光2bの一方のレーザ光(以下、第3分割レーザ光という)2cは、第2受光素子6bで光量を測定する。
【0051】
そして、被測定物4の場所で透過する第1分割レーザ光2aと、分割される前のレーザ光の同じ方向に相当する方向の第3分割レーザ光2cのみが第2受光素子6bに入射するようにナイフエッジ10が設置されている。なお、本実施の形態において、ナイフエッジ10は、第3分割レーザ光2cの光軸方向において集光レンズ11cの焦点位置、すなわち第3分割レーザ光2cの光量が50%透過する位置に固定されている。
【0052】
また、第2ビームスプリッタ3bにより分割された第2分割レーザ光2bの他方のレーザ光(以下、第4分割レーザ光という)2dは、第3受光素子6cで光量を測定する。なお、レーザ光源1、第1及び第2ビームスプリッタ3a,3b、第1〜第3受光素子6a〜6c、ナイフエッジ10、集光レンズ11a〜11dは、ベース7に固定されている。
【0053】
そして、本実施の形態においては、第1〜第3受光素子6a〜6cの出力より被測定物4の位置を演算している。次に、本実施の形態に係る変位測定方法及び駆動ステージ5の駆動方法について説明する。
【0054】
まず、被測定物4を、矢印Bに示すように、第1分割レーザ光2aの光軸方向において集光レンズ11aの焦点位置に駆動ステージ5により移動させる。集光レンズ11aの焦点位置は、第1受光素子6aの光量出力Vaにより判断する。例えば、被測定物4による遮光量が50%より小さい場合は、第1分割レーザ光2aの光軸方向に被測定物4を走査したときの光量出力Vaは、焦点位置で最大となる。
【0055】
そして、このようにして被測定物4を第1分割レーザ光2aの光軸方向において集光レンズ11aの焦点位置に設置した後に、被測定物4が第1分割レーザ光2aを遮光する位置を測定する。
【0056】
ここで、第2受光素子6bの光量出力Vb(%)は、光量安定性による測定誤差係数をC、光軸ぶれによる測定誤差係数をD、レーザ光源1からナイフエッジ10までの距離をLb3とおけば、次式で表せる。測定誤差係数Dは、レーザ光源1から射出したレーザ光2の角度ぶれによる誤差であるので、距離Lb3との乗数で光量出力Vbに影響する。なお、距離Lb3は設計値であるので既知である。
Vb(%)=C×(50±D×Lb3)・・・(7)
【0057】
また、第1受光素子6aの光量出力Va(%)は、レーザ光源1から被測定物4までの距離をLa2、駆動ステージ5を走査して被測定物4で遮光したことによる光量変動をXとおけば、次式で表せる。なお、距離La2は設計値であるので既知である。
Va(%)=C×(X±D×La2)・・・(8)
【0058】
そして、受光素子6cの光量出力Vc(%)は、レーザ光源1の光量出力の33%であるので、次式で表せる。
Vc(%)=C×33・・・(9)
【0059】
ここで、本実施の形態においては、第1分割レーザ光2aを被測定物4が50%遮光した位置を測定する。このため、第1受光素子6aの光量出力Vaと第2受光素子6bの光量出力Vbとの値が等しくなるように駆動ステージ5を走査する。
【0060】
この場合、まず、式(9)より光量安定性による測定誤差係数Cを測定できるので、光量出力Va、VbをVcで正規化することにより光量変動を補正する。次に、光量出力Va、Vbの差分(Va−Vb)を0にするように駆動ステージ5を走査する。
【0061】
このように、本実施の形態においては、第3受光素子6cにより光量強度の安定性を示す測定誤差係数Cを測定すると共に、測定した測定誤差係数Cにより第2受光素子6bの出力Vbを補正するようにしている。これにより、レーザ光源1の光量安定性、光量分布、光軸ぶれを補正することができる。また、この補正された第2受光素子6bの出力Vbに基づいて第1受光素子6aの光量出力Vaを補正することにより、分割レーザ光2aを被測定物4が遮光した位置をより高精度に測定することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態で、第3受光素子6cにより光量強度の安定性を示す測定誤差係数Cを測定し、測定した測定誤差係数Cにより第1受光素子6aの光量出力Vaと第2受光素子6bの光量出力Vbを補正するようにしている。これにより、第1分割レーザ光2aの光量安定性と光軸ぶれを切り分けて補正することができる。さらに、被測定物4とナイフエッジ10の位置で集光させているので、被測定物4の変位と、レーザ光2の光量安定性、光量分布、光軸ぶれの測定分解能を上げ、より高精度に位置を測定することができる。
【0063】
ところで、これまで説明した第1〜第4の実施の形態における変位測定装置の具体的な用途としては、被測定物4の形状を測定する形状測定装置として用いることが可能である。そして、測定対象である被測定物4としては、例えば図5に示す切削工具23がある。
【0064】
この切削工具23は、シャンク24にダイヤモンドバイト25が固定されており、ダイヤモンドバイト25の刃先26で被加工物を切削する構成となっている。ここで、シングルポイント加工以外の加工方法においては、刃先26の稜線の形状が加工結果に影響するので、刃先26の形状精度が低いと被加工物の形状精度も低下してしまう。しかし、ダイヤモンドバイト25は難加工材料であり、刃先26を高精度に加工することは困難である。そこで、刃先26の形状を本発明の各実施の形態に係るいずれかの測定方法(形状測定装置)で計測し、加工プログラムにより刃先26の稜線の形状誤差を補正することで高精度な加工を行うことができる。
【0065】
この測定方法としては、ステージ制御部9の制御の下で駆動ステージ5により、被測定物4である刃先26による第1分割レーザ光2aの遮光量が第2分割レーザ光2bの遮光量と等しくなるように被測定物4である切削工具23の刃先26を走査する。即ち、ステージ制御部9は、第1受光素子6aの光量出力(通過光量)と、第2受光素子6bの光量出力の値が等しくなるように切削工具23を移動させることで、刃先26における遮光量を一定に維持して第1分割レーザ光2aを刃先26に沿って走査させる。
【0066】
この時の刃先26の移動履歴が刃先26の形状となる。これにより、刃先26の形状が測定される。また他の測定方法としては、ステージを被測定物4である切削工具23の刃先26の設計形状になるように走査して、遮光量(通過光量)の変化量より設計形状との差分形状を測定する方法もある。以上のように、刃先26を移動させた結果に基づき刃先26の形状を測定する。
【0067】
このように求めた刃先の形状は、高い形状精度を求められる切削加工等に好適に用いることができる。このように高精度に測定された切削工具は、例えば、プラスチックレンズまたはガラスレンズ等の光学用部材を成形するための光学用部材成形用金型の製造に用いることができる。
【0068】
光学用部材を成形する金型の加工は、加工プログラムによって切削工具の刃先と金型とを相対移動させて切削加工するという、公知の製造方法によって作製される。従来、切削工具の刃先と被加工物である金型とを相対移動させて、所望の形状を加工するための加工プログラムは、切削工具の刃先の位置と被加工物の位置をそれぞれ規定することにより作成される。切削工具の刃先の位置は、例えば切削工具の刃先の設計形状から規定される。しかし、実際、加工する時の切削工具の刃先の形状が、設計されている形状と異なる形状であった場合は、その刃先の形状誤差が加工誤差となって被加工物の加工精度に影響を与えてしまうことになる。
【0069】
そこで、本発明の第1〜第4の実施の形態の何れかの変位測定装置又は変位測定方法で求めた刃先の形状のデータを、加工プログラムの作成に用いることによって、金型の加工に及ぼす刃先の形状誤差の影響を非常に小さくすることが可能になる。これにより、金型の加工精度を向上させることができ、ひいてはこの金型を用いて成形される光学用部材の形状精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…レーザ光源、2…レーザ光、2a…第1分割レーザ光、2b…第2分割レーザ光、2c…第3分割レーザ光、2d…第4分割レーザ光、3…ビームスプリッタ、3a…第1ビームスプリッタ、3b…第2ビームスプリッタ、4…被測定物、5…駆動ステージ、6a…第1受光素子、6b…第2受光素子、6c…第3受光素子、8…位置演算器、9…ステージ制御部、10…ナイフエッジ、11a〜11d…集光レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
被測定物と、
前記被測定物と前記レーザ光源との間に配置され、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記被測定物に向かう第1分割レーザ光及び前記第1分割レーザ光とは別方向に向かう第2分割レーザ光に分割するビームスプリッタと、
前記第1分割レーザ光を受光する受光素子と、
前記第2分割レーザ光を受光する演算用受光素子と、
前記被測定物により遮光された前記第1分割レーザ光を受光した前記受光素子の出力及び前記第2分割レーザ光を受光した前記演算用受光素子の出力により前記被測定物の変位を演算する演算部と、
を有することを特徴とする被測定物の変位を測定するための変位測定装置。
【請求項2】
前記被測定物の目標位置に対応する前記第1分割レーザ光の光量と、前記第2分割レーザ光の光量とを一致させるべく、前記被測定物で遮光される前記第1分割レーザ光と、分割前のレーザ光の同じ方向に相当する前記第2分割レーザ光を遮光するように、前記ビームスプリッタと前記演算用受光素子との間に、前記第2分割レーザ光を遮光する遮蔽物が設けられていることを特徴とする請求項1記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記被測定物の目標位置に対応する前記第1分割レーザ光の光量と、前記第2分割レーザ光の光量とを一致させるべく、前記受光素子で受光される前記第1分割レーザ光と、分割前のレーザ光の同じ方向に相当する前記第2分割レーザ光の一部が受光されるように前記演算用受光素子が配置されていることを特徴とする請求項1記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記第1分割レーザ光の光路上に設けられ、前記第1分割レーザ光を前記被測定物の位置で集光する集光レンズと、
前記第2分割レーザ光の光路上に設けられ、前記第2分割レーザ光を前記遮蔽物と同じ位置で集光する集光レンズと、を有することを特徴とする請求項2記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記第2分割レーザ光の光路上に設けられ、前記第2分割レーザ光を前記演算用受光素子に向かう第3分割レーザ光及び前記第3分割レーザ光とは別方向に向かう第4分割レーザ光に分割する他のビームスプリッタと、
前記他のビームスプリッタにより分割される第4分割レーザ光を受光する他の受光素子と、を備え、
前記演算部は、前記他の受光素子の出力を用いて前記受光素子の出力及び前記演算用受光素子の出力を補正し、補正した前記受光素子の出力及び前記演算用受光素子の出力により前記レーザ光に対する前記被測定物の変位を演算することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記被測定物を前記受光素子に向かうレーザ光を遮光する方向に移動させる駆動部を有し、
前記演算された前記被測定物の変位に基づき前記被測定物を前記受光素子の出力及び前記演算用受光素子の出力が一致する位置に移動させるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項7】
被測定物とレーザ光源との間に配置されたビームスプリッタにより、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記被測定物に向かう第1分割レーザ光及び前記第1分割レーザ光とは別方向に向かう第2分割レーザ光に分割し、
前記被測定物により遮光された前記第1分割レーザ光を受光した受光素子の出力及び第2分割レーザ光を受光した演算用受光素子の出力により前記被測定物の変位を測定することを特徴とする被測定物の変位を測定するための変位測定方法。
【請求項8】
前記被測定物の目標位置に対応する前記第1分割レーザ光の光量と、前記第2分割レーザ光の光量とが一致するように、レーザ光を分割する前記ビームスプリッタと前記演算用受光素子との間に遮蔽物を設けることを特徴とする請求項7記載の変位測定方法。
【請求項9】
前記被測定物の目標位置に対応する前記第1分割レーザ光の光量と、前記第2分割レーザ光の光量とが一致するように、前記演算用受光素子を配置することを特徴とする請求項7記載の変位測定方法。
【請求項10】
前記第2分割レーザ光の光路上に設けられ、前記第2分割レーザ光を前記演算用受光素子に向かう第3分割レーザ光及び前記第3分割レーザ光とは別方向に向かう第4分割レーザ光に分割する他のビームスプリッタと、
前記他のビームスプリッタにより分割される第4分割レーザ光を受光する他の受光素子と、を備え、
前記他の受光素子の出力を用いて前記受光素子の出力及び前記演算用受光素子の出力を補正し、補正した前記受光素子の出力及び前記演算用受光素子の出力により前記レーザ光に対する前記被測定物の変位を測定することを特徴とする請求項7記載の変位測定方法。
【請求項11】
前記被測定物を、前記受光素子に向かうレーザ光を遮光する方向であって、かつ、前記受光素子の出力及び前記演算用受光素子の出力が一致する位置に移動させて、前記被測定物の変位を測定することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の変位測定方法。
【請求項12】
前記被測定物は切削工具であり、前記切削工具の刃先の形状を測定することを特徴とすることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の変位測定方法。
【請求項13】
加工プログラムにより切削工具の刃先と金型とを相対移動させて前記金型を切削加工する光学用部材成形用金型の製造方法であって、
請求項12に記載の変位測定方法により切削工具の刃先の形状を測定し、測定した切削工具の刃先の形状に基づいて前記加工プログラムを作成し、作成した前記加工プログラムにより前記切削工具と前記金型とを相対移動させて前記金型を切削加工することを特徴とする光学用部材成形用金型の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の光学用部材成形用金型の製造方法により製造された金型を用いて成形されたことを特徴とする光学用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159498(P2012−159498A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2889(P2012−2889)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】