説明

変位計測装置

【課題】
一般的に行われる方法は、非接触型の電気的精密機器を用いるため、電源が必要であり、悪環境下(停電、埃、高湿度)での長期耐久性に劣り、さらにはデータを収録するための計測器も必要となり、コスト高になるだけでなく、メンテナンスにも多大な労力がかかる。なによりも大きな問題としては、非接触センサを利用した場合、視覚的にセンサの不良発生を確認し難いということがある。
【解決手段】
沈埋工法により設けられた沈埋函において、継手構造を介して対向する函体の一方に設置され、ガイド基体と、ガイド基体をスライド自在に走行するアーム走行体と、アーム走行体の先端に設けられたマーカと、アーム走行体を先端方向に常時押圧する押圧手段とからなる変位計測装置本体と、函体の他方に設置され上記マーカが面に当接するように位置したターゲットパネルとから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈埋工法における沈埋函の継手部の変形にともなう変位量を計測するための変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水底下(海峡、運河など)に構造物を構築する方法として沈埋工法がある。これは複数の函体を地上にて製作するとともに、水底の所定位置にトレンチを掘っておき、函体を順次曳航沈設し、さらに連結した後埋め戻して構造物を完成させるものである。こうして設けられた構造物は完成後、長期にわたる不等沈下や地震等の自然現象によって変形が起こり、やがては損壊が発生することが多々ある。よって事前に函体の継手部の構造を可撓性部材を用いる等伸縮自在な性能を具備するようになっているが、この継手部の変位状況を長期にわたって的確に把握して継手部の性能限界を見合わせ適宜対策していくことが求められる。函体継手部の変位を計測する方法としては、継手部を介して相互に対向位置する函体端部の一方にレーザ変位計、超音波変位計等の非接触型センサを取付け、他方に反射ターゲットを取付けるものが、一般的なものとして考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記に述べた一般的に考えられる方法は、非接触型の電気的精密機器を用いるため、電源が必要であり、悪環境下(停電、埃、高湿度)での長期耐久性に劣り、さらにはデータを収録するための計測器も必要となり、コスト高になるだけでなく、メンテナンスにも多大な労力がかかる。なによりも大きな問題としては、非接触センサを利用した場合、視覚的にセンサの不良発生を確認し難いということがある。安全を確実に維持し続けるためには致命的な問題といえよう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明では沈埋工法により設けられた沈埋函において、継手構造を介して対向する函体の一方に設置されたガイド基体と、ガイド基体を走行するアーム走行体と、アーム走行体の先端に構成されるマーカと、アーム走行体を先端方向に常時押圧する押圧手段と、函体の他方に設置され上記マーカが面に当接するように位置したターゲット板とからなる変位計測装置を提案する。
【0005】
またアーム走行体を先端方向に常時押圧する押圧手段として、ガイド基体の先端側に固定してアーム走行体を引張る定加重バネを構成するようにした上記の変位計測装置を提案する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は比較的単純な機械的構造をとっているため、電源の必要もなく、埃、高湿度の環境下でも長期にわたって損傷することもなく、データの収録用計測器も不要であり、低コスト化が実現できるとともにメンテナンスも容易となる。さらには、変位計測装置自身の不良が万が一発生したとしても、マーカとターゲット板の関係状況を視覚的に簡単に確認できるため、速やかな対策が講じられるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による変位計測装置の平面図
【図2】本発明による変位計測装置の正面図
【図3】本発明によるターゲットパネルを示す平面図
【図4】本発明による変位計測装置の動作説明図
【図5】本発明による変位計測装置の取付状態を示す平面断面図
【図6】本発明による変位計測装置の取付状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための形能を実施例として説明する。
【実施例】
【0009】
図1および図2に従って本発明による変位計測装置本体の構造を説明する。図中1は変位計測装置本体であり、次のような構成となっている。2はたとえば高剛性のベアリング用シャフトからなるガイド基体であり、このガイド基体2の一端部には後述する変位計測装置本体用取付アームに固定されるエンド部3が設けられている。ガイド基体2の両測部には軸方向に沿ってガイド溝4が設けられている。5はガイド基体2に嵌合してガイド溝4に係合してガイド基体2の長手方向にスライド自在なスライドユニットである。6はスライドユニット5上に補強部材7を介して一端部を載設固定されたたとえばアルミ角材からなる走行アームである。
スライドユニット5と走行アーム6とにより、アーム走行体8が構成されている。走行アーム6の他端(先端)部にはマーカ9たとえば超鋼製のケガキ針が装備されている。ガイド基体の他端には押圧手段9たとえば引き込むワイヤ11にその繰り出し量にかかわらず一定の引張力を有する定荷重バネが固定されている。ワイヤ11の先端はスライドユニット5の前端面に固定されている。これによって、アーム走行体8は常時ガイド基体2の先端に向かって一定荷重で引張られている。
【0010】
次に図3により変位記録を録るための部材を説明する。
図中12は変位計測装置本体1のマーカ9に面部を当接して変位軌跡を記録するためのターゲットパネルである。中央部裏面には後述するターゲットパネル用取付アームに固定される締付部13が設けられている。14は記録面であり、たとえば表面には青ニスが塗布されている。
【0011】
次に図4により変位計測装置本体1の動作について説明する。図4ではアーム走行体8が最も先端側にスライドした位置関係を示し、任意の計測部位に取付する場合はアーム走行体8のスライドユニット5が中間部に位置するようにセットする。各部の説明は図1,2ですでに述べたので同一番号を付して説明を省略する。
【0012】
さらに、本発明による変位計測装置の取付状況を図5、図6を参照しながら説明する。図中21は沈埋函であり、函体22と函体23の継手部24の壁部を平面的に断面したものである。函体22の一端部は継手部24を介して函体23の一端と連結されている。函体22の一端部にはブロック25が突設され、函体23の一端部にはブロック25に対向位置するブロック26が突設されている。ブロック25−26間の外側隙間には一次止水可撓材27が液密に設置されているとともに、ブロック25−26間の内側の隙間には二次止水可撓材28が液密に設置されている。29は函体22と函体23を連結保持する耐力バーである。耐力バー29は函体22と函体23の相互の変形に追従して伸縮およびその方向を変化させ対応するようになっている。また、一次止水可撓材27と二次止水可撓材28も函体22と函体23との相互の変形に追従し、継手部24の損傷を抑制するものである。30は外面カバープレート、31は内面カバープレートである。
【0013】
函体22の端部内側壁面にたとえば角パイプ構造をなす変位計測装置本体用取付アーム32の一端が固定されており、この変位計測装置本体用取付アーム32は中間で折れ曲がり函体23方向に向いている。また函体23の端部内側壁面にたとえば角パイプ構造をなすターゲットパネル用取付アーム33の一端が固定されており、この変位計測装置本体用取付アーム33は中間で折れ曲がり函体22方向に向いている。ターゲットパネル用取付アーム33の先端部にはターゲットパネル12が記録面14を上に向ける方向で着脱自在に固定されている。変位計測装置本体用取付アーム32の先端部には変位計測装置本体1が下方向に向かってエンド固定部3が取付られており、マーカ9はターゲットパネル12の記録面14の中央に当接位置している。ここで、アーム走行体8のスライドユニット5の位置はそのストローク量の中間位置付近にある。
【0014】
次に図3、図4、図5、図6を参照しながら作用を説明する。たとえば、地震が起こり、函体22と函体23との間で相対的な変形が発生したとする。図5中矢印aで示す方向に函体22が変位した場合、この函体22の壁面に固定された変位計測装置本体取付アーム32も同様に矢印a方向に変位する。すなわち、変位計測装置本体取付アーム32の先端部に固定された変位計測装置本体1のマーカ9がターゲットパネル12の記録面14上を移動する。ここで、マーカ9はターゲットパネル12の記録面14に押圧手段10によって一定圧力で押圧されているため記録面14に青ニスが削り取られた状態で、その移動軌跡を描く(図3でライン15で表示)。さらに函体22が図5中矢印bで示す方向に変位した場合、この函体22の壁面に固定された変位計測装置本体取付アーム32も同様に矢印b方向に変位する。すなわち、変位計測装置本体取付アーム32の先端部に固定された変位計測装置本体1のマーカ9がターゲットパネル12の記録面14上を移動する。前述と同様に記録面14にその移動軌跡を描く(図3でライン16で表示)。基本的な動きとして説明したが、本来は3次元の変位が複合されて起こるものであり、前述の矢印a,b方向の変位とともに鉛直方向の動きが複合されたものとなる。すなわち変位計測装置本体1とターゲットパネル12との間が接近または離間する方向に働く。変位計測装置本体1のアーム走行体8は前述したように伸縮自在の構成であるため、鉛直方向の変位に追従し、変位計測装置本体1とターゲットパネル12の間隙の変化に拘わらずマーカ9が一定荷重でターゲットパネル12の記録面14に当接し続け、変位計測装置本体1の損傷も防ぐようになっている。
【0015】
こうして経時的にターゲットパネル12の記録面14にマーカ9によって連続線が随時描かれることになり、よって、地震の直後等に確認することで2軸方向の最大変位量を記録として得られる。また、異なる方向に向けた2対を設けることで3軸方向の最大変位量を記録として得られるものである。
【0016】
函体22が矢印a,b方向に変位した場合の説明をしたが、函体23が矢印a,b方向に変位した状況の場合も同一の作用を行うことは勿論である。また、この実施例では変位計測装置本体1を上から下方向に向かって、ターゲットパネル12は記録面14が上方向を向くようにセットしたが、このセット方法では函体22,函体23の水平方向の2成分方向(Z、X方向)を記録する手法となり、3次元方向の変位を賄うためには図示しないが函体22側に固定する変位計測装置本体1を、その先端側(マーカ9側)を壁面方向に向けるとともに、函体23に固定するターゲットパネル12の記録面14を壁面から直交する方向に向けてセットしておく必要がある。この場合は鉛直方向と矢印b方向の変位記録を得られると同時に矢印a方向の変位については変位計測装置本体1のアーム走行体8が伸縮して変位計測装置本体1の損傷を防止するようになっている。
【0017】
ターゲットパネル12の記録面14の描かれる線の状況によって、締付部13への図示しない固定ネジを操作することで任意に交換することができる。さらに、本実施例ではターゲットパネル12の記録面14に青ニスを塗布してマーカ9による線軌跡を明確にするようにしたが、ターゲットパネル12の材質とマーカの形状を種々考慮することにより、記録面13の塗装の有無は限定されるものではない。さらに、押圧手段10としてストロークに拘わらず一定の引張荷重を維持する定荷重バネを使用したが、本発明「請求項1」では同機能のものであれば何ら限定されることはない。
【符号の説明】
【0018】
1 変位計測装置本体
2 ガイド基体
3 エンド固定部
4 ガイド溝
5 スライドユニット
6 走行アーム
7 補強部材
8 アーム走行体
9 マーカ
10 押圧手段(定荷重バネ)
11 ワイヤ
12 ターゲットパネル
13 締付部
14 記録面
15 ライン
16 ライン
a 矢印
b 矢印
21 沈埋函
22、23 函体
24 継手部
25、26 ブロック
27 一次止水可撓材
28 二次止水可撓材
29 耐力バー
30 外面カバープレート
31 内面カバープレート
32 変位計測装置本体用取付アーム
33 ターゲットパネル用取付アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈埋工法により設けられた沈埋函において、継手部構造を介して対向する函体の一方に設置され、ガイド基体と、ガイド基体をスライド自在に走行するアーム走行体と、アーム走行体の先端に設けられたマーカと、ガイド基体に設けられアーム走行体を先端方向に常時押圧する押圧手段とからなる変位計測装置本体と、函体の他方に設置され上記マーカが記録面に当接するように位置したターゲットパネルとからなることを特徴とする変位計測装置。
【請求項2】
アーム走行体を先端方向に常時押圧する押圧手段として、ガイド基体の先端側に固定してアーム走行体を引張る定加重バネを構成するようにした上記「請求項1」の変位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−242317(P2010−242317A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89390(P2009−89390)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(592090555)パシフィックコンサルタンツ株式会社 (30)
【出願人】(593122321)綜合計測株式会社 (7)
【Fターム(参考)】