説明

変位計測装置

【課題】簡易かつ安価に構成することができ、かつ、3方向の変位を計測することを可能とした変位計測装置を提案する。
【解決手段】第一の構造体B1と第二の構造体B2との結合部Jにおける変位を測定する変位計測装置1であって、結合部Jの目開き方向に沿って配置された目開き目盛り10と、目開き盛り1と直交するように第一の構造体B1に固定された横目違い目盛り20と、目開き目盛り10および横目違い目盛り20と直交するように第二の構造体B2に固定された縦目違い目盛り30と、を備えており、横目違い目盛り20は、第一の構造体B1の表面に対して垂直に配設されており、縦目違い目盛り30は、目開き目盛り10と横目違い目盛り20とが直交する面に対して垂直に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材を組み合わせて形成された構造物において、部材同士の結合部に許容値以上の変位が生じた場合には対策を講じる必要がある。
そのため、部材同士の結合部における変位計測は随時行う必要がある。
【0003】
従来、部材同士の結合部における変位計測は、結合部にスケール(ものさし等)をあてることで、継ぎ目の目開きを測定するのが一般的であった。
【0004】
ところが、スケールを利用した変位計測は、目開きを対象とした一方向のみの測定であるため、目違いの変位に対しては測定していなかった。また、測定者が代わることによりスケールの読みに誤差が生じるおそれもあった。
【0005】
そのため、特許文献1には、異なる場所に据えつけられた2台のレーザー光測定器により1つの測点を繰り返し計測することで、当該測点の変位を計測する変位計測方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、構造物に固定された2台の変位計測センサにより固定点を測定することで、構造物の変位を計測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−307869号公報
【特許文献2】特開2006−112902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載の計測方法は、レーザー光測定器を2台設置する必要があるため、装置が大掛かりとなり高価であった。また、レーザー光測定器の据付等に手間を要していた。
【0009】
また、特許文献2に記載の計測方法も複数の変位計測センサを設置する必要があるため、高価であるとともに、その取付作業に手間を要していた。
【0010】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の計測方法は、2方向の変位を計測することが可能であるものの、3方向の変位を計測することはできなかった。
【0011】
本発明は、前記問題点を解決するものであって、簡易かつ安価に構成することができ、かつ、3方向の変位を計測することを可能とした変位計測装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決する本発明は、第一の構造体と第二の構造体との結合部における変位を測定する変位計測装置であって、前記結合部の目開き方向に沿って配置された第一目盛り部と、前記第一目盛り部と直交するように前記第一の構造体に固定された第二目盛り部と、前記第一目盛り部および前記第二目盛り部と直交するように前記第二の構造体に固定された第三目盛り部と、を備えており、前記第二目盛り部は、前記第一の構造体の表面に対して垂直に配設されており、前記第三目盛り部は、前記第一目盛り部と前記第二目盛り部とが直交する平面に対して垂直に配設されていることを特徴としている。
【0013】
前記変位計測装置は、前記第一目盛り部が、前記第三目盛り部の中間位置から延設されており、前記第一目盛り部と前記第二目盛り部とが、水平面上で直交するものであってもよい。
【0014】
かかる変位計測装置よれば、第一目盛り部と第二目盛り部と第三目盛り部とが三次元方向で交差しているため、各目盛り部に表示された目盛りを読むことで三方向の変位を計測することが可能となる。
また、変位計測装置は、簡易な構成なため、簡便な方法で取り付けることが可能であるとともに安価である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の変位計測装置によれば、簡易かつ安価に構成することができ、かつ、3方向の変位を計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る変位計測装置の設置状況を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す変位計測装置の斜視図である。
【図3】変位計測装置による変位量の測定状況を示す正面図であって、(a)は常時、(b)は目開き時、(c)上下方向の目違い時である。
【図4】変位計測装置による変位量の測定状況を示す平面図であって、(a)は常時、(b)は横方向の目違い時である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、図1に示すように、連接された既設のボックスカルバートB,Bの結合部2に設置されて、結合部Jにおける変位を測定する変位計測装置1について説明する。
【0018】
ボックスカルバートB,Bは互いに付き合わされた状態で連結されている。
ボックスカルバートB,Bの端部には、それぞれ切欠部3が形成されており、ボックスカルバートB,Bの端面同士を突き合わせることで、結合部Jに断面凹字上の溝2が形成される。
【0019】
変位計測装置1は、溝2内において、一方のボックスカルバートB1と他方のボックスカルバートB2との間に跨って配設されている。これにより、変位計測装置1は、結合部Jにおいて変異が生じた際に、目開き、横方向の目違いおよび上下方向の目違いの変位量を表示する。
【0020】
変位計測装置1の設置箇所は限定されるものではないが、本実施形態では、各結合部Jにおいて左右に1箇所ずつ設置するものとする(図1では片側のみ表示)。
【0021】
変位計測装置1は、図2に示すように、目開き目盛り10と、横目違い目盛り20と、縦目違い目盛り30と、を備えて構成されている。目開き目盛り10、横目違い目盛り20および縦目違い目盛り30の3つの目盛りは、それぞれ互いに直交するように配置されている。
【0022】
変位計測装置1は、目開き目盛り10が表示された第一部材(第一目盛り部)11と、横目違い目盛り20が表示された第二部材21と、縦目違い目盛り30が表示された第三部材31と、を備えて構成されている。
第一部材11は、他方のボックスカルバートB2に固定された第三部材31に設置されている。また、第二部材21は、一方のボックスカルバートB1に固定されている。
【0023】
第一部材11は、後記する第三部材31の目盛り部(第三目盛り部)34の中間位置から当該目盛り部34に直交するように延設された板材である。なお、第一部材11の材質は限定されるものではない。
【0024】
本実施形態では、目盛り部34に沿って上下方向に移動することが可能となるように第一部材11を第三部材31に設置するが、第三部材31に固定してもよい。また、第一部材11は、第二部材21に設置してもよい。
【0025】
第一部材11の表面には、目開き目盛り10が表示されている。目開き目盛り10は、ボックスカルバートBの延長方向に沿って水平に配置されている。
【0026】
第二部材21は、固定部22と連結部23と目盛り部(第二目盛り部)24とを備えて構成されている。
【0027】
固定部22は、矩形状の鋼板からなり、上下に貫通孔が形成されている。固定部22は、貫通孔を挿通するボルト6により、一方のボックスカルバートB1に締着されている。なお、本実施形態では、後記する止水板4を締着するためのボルト6を使用して固定部22を固定している。
【0028】
固定部22の内空側表面には、連結部23が一体に固定されている。
連結部23は、門型に形成された鋼板であって、固定部22と目盛り部24とを連結する部材である。
【0029】
連結部23は、上下の脚部が固定部22に固定されていることで、配置されている。連結部23には、目盛り部24が固定されている。
連結部23は、脚部の高さにより、目盛り部24を他方のボックスカルバートB2の表面から離隔させて、結合部Jにおける変位発生時に目盛り部24と他方のボックスカルバートB2とが接触することを防止する。
【0030】
目盛り部24は、L字状の鋼板により構成された部材であって、一片が連結部23に固定されて、他片がボックスカルバートB1の表面(壁面)に対して垂直となるように配置されている。
目盛り部24の他片の上面には、ボックスカルバートBの表面に垂直な方向に等間隔で並ぶ横目違い目盛り20が表示されている。
【0031】
目盛り部24の他片は、ボックスカルバートBの表面(壁面)に対して垂直を呈していることで、横目違い目盛り20が目開き目盛り10と直交した状態で、一方のボックスカルバートB1に固定されている。
このように配置された目開き目盛り10と横目違い目盛り20との交点において付された横違い目盛り20の数値を読むことで、結合部Jの水平方向の目違いの値を把握することができる。
【0032】
第二部材21の形状は前記のものに限定されるものではなく、横目違い目盛り20を所定の位置に配置することが可能となるように適宜構成することが可能である。また、第二部材21は必ずしも鋼製部材により構成する必要はない。
【0033】
第三部材31は、固定部32,32と脚部33,33と目盛り部(第三目盛り部)34とを備えて構成されている。
【0034】
固定部32は、矩形状の鋼板からなり、上下端部に貫通孔が形成されている。固定部32は、貫通孔を挿通するボルト6により、他方のボックスカルバートB2に締着されている。なお、本実施形態では、後記する止水板4を締着するためのボルト6を使用して固定部32を固定する。
固定部32の内空側表面には、脚部33が一体に固定されている。
【0035】
脚部33,33は、間隔をあけて上下に配設された固定部32,32の表面にそれぞれ立設された鋼板である。
脚部33は、結合部Jにおける変位が発生した際に、第三部材31から延設された目開き目盛り10が一方のボックスカルバートB1と接触することがない程度の高さを有している。
【0036】
目盛り部34は、脚部33,33の間に上下方向に横架されており、表面に縦目違い目盛り30が表示されている。
目盛り部34の中間位置には、目開き目盛り10が表面に表示された第一部材11がボックスカルバートBの表面に沿って水平に延設されている。
【0037】
第三部材31は、目盛り部34が水平面に対して垂直となるように、他方のボックスカルバートB2に固定されている。
【0038】
第三部材31の構成は前記のものに限定されるものではなく、縦目違い目盛り30をボックスカルバートBの表面に沿って上下に配置されるように、適宜構成することが可能である。また、第三部材31は必ずしも鋼製部材により構成する必要はない。
【0039】
結合部JのボックスカルバートB同士の突合せ部には、充填材7が充填されており、結合部Jからの土砂などの流入が防止されている。なお、充填材7の材質は限定されるものではない。
また、結合部Jには、ボックスカルバートB同士の突合せ部に沿って止水板4が周設されていて、止水性の向上が図られている。
【0040】
止水板4は、溝2の底面に配設されたゴム板である。なお、止水板4を構成する材料は限定されるものではなく、適宜選定して使用することが可能である。
【0041】
止水板4は、たわませた状態で配置されており、結合部Jにおける目開きや目違い等が生じた際に、ボックスカルバートBの延長方向に対して伸長することで、破損しないように構成されている。なお、止水板4が伸縮することで結合部Jの変位を吸収するものとしてもよい。
【0042】
止水板4は、一方のボックスカルバートB1と他方のボックスカルバートB2とに跨って配設されており、ボックスカルバートBと固定板5により端部が把持されることで固定されている。
【0043】
固定板5は、ボックスカルバートBの切欠部3に配設されて、止水板4の端部をボックスカルバートBに固定する板材である。本実施形態では、鋼板により構成するが、固定板5を構成する材質は限定されるものではない。
固定板5には、複数の貫通孔が形成されており、貫通孔を貫通して配設されたボルト6により、ボックスカルバートBの端部に締着されている。
【0044】
変位計測装置1を利用した変位測定は、まず、変位計測装置1を設置した状態における目開き目盛り10、横目違い目盛り20および縦目違い目盛り30の数値を読む。つまり、第二部材21の目盛り部24の他方のボックスカルバートB2側面(L字状の鋼板の底辺)が
指す目開き目盛り10の数値(図3(a))、また、第一部材11が指す横目違い目盛り20の数値(図4(a))、さらに、第一部材11の下端が指す縦目違い目盛り30の数値(図3(a))をそれぞれ記録しておく。
なお、変位計測装置1を設置する際に、目開き目盛り10、横目違い目盛り20および縦目違い目盛り30がそれぞれ0を指すように設置してもよい(図3(a)および図4(a)参照)。
【0045】
結合部Jにおいて、目開きが生じた場合には、図3(b)に示すように、一方のボックスカルバートB1と他方のボックスカルバートB2との離隔にともない、第二部材21と第三部材31も離隔する。
【0046】
目開き量aの測定は、第二部材21の目盛り部24の移動距離a’を目開き目盛り10により読むことにより行う。
【0047】
また、図3(c)に示すように、結合部Jにおいて、上下方向の変位(鉛直方向の目違い)が生じた場合は、縦目違い目盛り30により、第一部材11の移動距離b’を読むことに目違い量bを測定する。
【0048】
なお、図3(c)に示すように、一方のボックスカルバートB1が低く、他方のボックスカルバートB2が高くなる変位が生じた場合は、第一部材11を、第二部材21の目盛り部24の位置に下げた状態で、縦目違い目盛り30により第一部材11の移動距離b’を読む。
また、一方のボックスカルバートB1が高く、他方のボックスカルバートB2が低くなる変位が生じた場合は、第一部材11は、第二部材21により押し上げられるため、そのまま第一部材11の下端が指す縦目違い目盛り30の数値を読めばよい。
【0049】
さらに、結合部Jにおいて、図4(b)に示すように、水平方向の目違い変位が生じた場合は、横目違い目盛り20により第一部材11の移動距離c’を読むことで目違い量cを測定することができる。
【0050】
以上、本実施形態の変位計測装置1によれば、3つの目盛り10,20,30の交差部の値を読むことで3方向の変位を同時に計測することができる。
そのため、測定者による計測誤差が生じにくく、一定の精度で測定を行うことができる。
【0051】
また、変位計測装置1は、結合部Jの継手部材(ボルト6)等を利用して設置することができるため、ボックスカルバートBに損傷させることがなく、構造物としての品質を低下させることがない。
【0052】
また、変位計測装置1は、構成が簡易なため、安価に製造することができ、またボックスカルバートBへの設置作業も容易に行うことができる。
【0053】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0054】
例えば、前記実施形態では、変位計測装置を、ボックスカルバートの側壁に設置する場合について説明したが、変位計測装置の設置箇所は限定されるものではなく、例えば天井や底版に設置してもよい。
【0055】
また、変位計測装置を設置するボックスカルバートの断面形状は、矩形断面に限定されるものではなく、例えば円形であってもよい。
また、変位計測装置を設置する構造体はボックスカルバートに限定されるものではない。また、変位計測装置は新規に敷設するボックスカルバートに設置してもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、第二目盛りにより水平方向の目違い量の測定を行い、第三目盛りにより鉛直方向の目違い量の測定を行う場合について説明したが、第二目盛り、第三目盛りの方向は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 変位計測装置
10 目開き目盛り
11 第一部材(第一目盛り部)
20 横目違い目盛り
21 第二部材
24 目盛り部(第二目盛り部)
30 縦目違い目盛り
31 第三部材
34 目盛り部(第三目盛り部)
B ボックスカルバート(構造体)
B1 一方のボックスカルバート(第一の構造体)
B2 他方のボックスカルバート(第二の構造体)
J 結合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の構造体と第二の構造体との結合部における変位を測定する変位計測装置であって、
前記結合部の目開き方向に沿って配置された第一目盛り部と、
前記第一目盛り部と直交するように前記第一の構造体に固定された第二目盛り部と、
前記第一目盛り部および前記第二目盛り部と直交するように前記第二の構造体に固定された第三目盛り部と、を備えており、
前記第二目盛り部は、前記第一の構造体の表面に対して垂直に配設されており、
前記第三目盛り部は、前記第一目盛り部と前記第二目盛り部とが直交する平面に対して垂直に配設されていることを特徴とする、変位計測装置。
【請求項2】
前記第一目盛り部が、前記第三目盛り部の中間位置から延設されており、
前記第一目盛り部と前記第二目盛り部とが、水平面上で直交していることを特徴とする、請求項1に記載の変位計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−43464(P2011−43464A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193097(P2009−193097)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(500174328)中大実業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】