説明

変色に耐性のエアゾールスプレー

水、炭化水素溶媒、噴射剤、界面活性剤及び殺虫活性物質に加えて、ブチルヒドロキシトルエン、リモネン及び安息香酸ナトリウムを含有するエアゾール殺虫スプレーが開示されている。このスプレーは、長期間貯蔵する間でも変色に対して耐性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願する出願の参照
非適用
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
非適用
【0002】
発明の背景
本発明は、活性成分、例えば、殺虫剤、芳香剤及びクリーナーを付与するように設計されたスプレーに関する。更に特に、本発明は、リモネン(オレンジ芳香及び溶媒目的用)並びに貯蔵の間の缶腐食及び変色を最小にするための追加の化学薬品を含有するエアゾールスプレーに関する。
【背景技術】
【0003】
種々のスプレーが公知である。例えば、米国特許第5,773,016号明細書には、水、炭化水素溶媒、界面活性剤、殺虫剤(群)及び炭化水素ガス噴射剤(群)から形成されたエアゾールエマルジョンスプレーが記載されている。この特許には、また、貯蔵中の缶腐食を減少させるために、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム又はこれらの混合物を添加することが望ましいことが記載されている。
【0004】
米国特許第5,792,465号明細書には、昆虫防除剤を付与するために使用される比較的安定なミクロエマルジョン及び好ましい噴射剤としてプロパン/イソブタン混合物を添加することの可能性が記載された。この特許では、また、d−リモネン(オレンジ油の成分)を、溶媒として同様に添加できたことが指摘された。
【0005】
別の仕事に於いて、主としてその酸化防止特性(活性物質を保護するため)のために、ブチルヒドロキシトルエン(「BHT」)をある種の殺虫性混合物に添加することが示唆された。
【0006】
従って、技術は、ある種のスプレー中にリモネンを使用することを示唆したけれども、このような配合物は、特に、腐食防止剤、亜硝酸ナトリウムの存在下で、急速に変色する傾向がある。このことは、オレンジ芳香は非常に望ましいけれども、消費者が、家庭に於いてこのようなスプレーを使用したいとは思わないようにするであろう。
【0007】
従って、リモネンを含有するスプレー配合物を改良するための要求が存在する。
【特許文献1】米国特許第5,773,016号明細書
【特許文献2】米国特許第5,792,465号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
一つの面に於いて、本発明は、少なくとも20%(好ましくは、約50%)の水と、少なくとも1%(好ましくは、約10%)の炭化水素溶媒と、少なくとも0.1%(好ましくは、約1%)の界面活性剤と、少なくとも0.1%(好ましくは、約2%)のリモネンと、少なくとも0.01%(好ましくは、約0.5%)のブチルヒドロキシトルエンと、少なくとも0.01%(好ましくは、約0.2%)の安息香酸アルカリ金属塩(好ましくは、安息香酸ナトリウム)と、少なくとも0.01%(好ましくは、約0.4%)の、害虫防除物質(例えば、殺虫剤、防虫剤又は昆虫防除成長調節剤)、芳香物質、臭気マスク及び殺菌剤からなる群から選択された活性物質と、を含有するエアゾールスプレーを提供する。反対に記載されていない限り、本明細書に記載した全てのパーセンテージは重量パーセンテージである。このスプレーは、好ましくは、ガス噴射剤を含有するエアゾールスプレーの形態である。
【0009】
好ましい炭化水素溶媒(ガス噴射剤とは別)は、6〜20個の炭素を有する。例には、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、鉱油、重芳香族ナフサ、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン並びに他のアルカン及びアルケンが含まれる。特に好ましい炭化水素は、エクソン社(Exxon)からのノルパル(Norpar)13溶媒である。
【0010】
界面活性剤は、活性物質を付与するためのエアゾールエマルジョンスプレーに関連して有用であることが知られている、種々のカチオン性、アニオン性、両性及び非イオン性界面活性剤から選択することができ、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤が特に好ましい。これに関して、殺虫スプレーを配合するとき、界面活性剤として、ソルビタンモノオレアートとポリエトキシル化ステアリン酸との混合物を使用することが好ましい。
【0011】
他の適切な非イオン性界面活性剤には、活性及び適用によって、アルコールアルキル鎖中に8〜24個の炭素原子を有する第一級及び第二級脂肪族アルコールから誘導されるポリエトキシラートが含まれる。エチレンオキシドの一部又は全部を、プロピレンオキシドによって置き換えることができる。更に他の適切な非イオン性界面活性剤には、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール;酸疎水性物質中に8個以上の炭素原子及び親水性基として10モル以上のエチレンオキシドを有する高級有機酸のポリアルキレンエステル;通常8個以上の炭素を有する脂肪酸から誘導される、その疎水性基が第一級、第二級又は第三級アミン由来でありそしてそのエチレンオキシド含有量が水溶性及び非イオン性特徴の両方を与えるために十分に高い、ポリアルキレンアルキルアミン;脂肪酸又はエステルのアミドから誘導される疎水性基を有するポリアルキレンアルキルアミド;グリコール、ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーの脂肪酸エステルなどが含まれてよい。
【0012】
(活性及び適用により)可能性のある適切な非イオン性界面活性剤の代表には、アルキル基中に6〜20個の炭素原子のアルキルアリールスルホン酸エステル;C10〜C22脂肪酸石鹸;C10〜C22脂肪硫酸エステル;高級アルキル及び線状パラフィンスルホン酸並びにそれらの塩のアルカリ金属塩を含む、C10〜C22アルキルスルホン酸エステル;アルカリ金属ジアルキルスルホスクシナート、エトキシル化アルコール硫酸エステル、リン酸エステル、タウラート(taurates)などが含まれる。
【0013】
エアゾールエマルジョンスプレーに於いて一般的に使用される種類の、広範囲の種々のカチオン性及び両性界面活性剤も、使用することができる。しかしながら、これらは幾らか一層腐食性である傾向であるので、これらは好ましくない。
【0014】
種々のガス状炭化水素を噴射剤(propellant)として使用することができる。この適用の目的のために、「炭化水素」は炭素及び水素のみを有する。これらは、典型的に、エアゾール缶の圧力条件下で液化し、炭化水素溶媒の一部になる。例えば、この噴射剤は、ジメチルエーテル、ジフルオロエタン、プロパン、ブタン、イソブタン及びこれらの混合物(好ましくは、イソブタン/プロパン混合物)であってよい。特に好ましい噴射剤は、フィリップス・ペトロリウム社(Phillips Petroleum)からのA−46、80/20モル%プロパン/イソブタン混合物である。あるいは、噴射剤は他の種類のガス、例えばCO2であってよい。
【0015】
活性物質が、害虫防除成分、例えば、這う昆虫又は飛ぶ昆虫に対して有効な成分であるとき、活性物質は、合成ピレトロイドの混合物、例えば、テトラメトリン(tetramethrin)、ペルメトリン、シペルメトリン(cypermethrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、アレトリン・フォルテ(allethrin forte)、フェノトリン(phenothrin)、d−フェノトリン、レスメトリン、エスビオトリン(esbiothrin)、アレトリン、d−トランス・アレトリン及びカデトリン(kadethrin)と、ラムダ−シハロトリン(lambda−cyhalothrin)、天然ジョチュウギク(例えば、ピレトリン)及び有機リン酸エステル、例えばクロルピリホスの、2種以上の混合物であってよい。米国特許第5,037,653号明細書に列挙されている他の殺虫剤も参照。種々の相乗剤(synergist)、例えばピペロニルブトキシドも使用することができる。
【0016】
または、昆虫防除剤は、防虫剤、例えば、シトロネラ、レモングラス油、ラベンダー油、シナモン油、ニーム油、クローブ油、ビャクダン油又はゲラニオールであってもよい。また、活性物質は、昆虫成長調節剤、例えばヒドロプレン(hydroprene)であってもよい。活性剤の他の種類は、芳香剤又は脱臭剤/マスクである。ラベンダー油のような上記の油の或るものは、防虫機能及び芳香機能の両方を果たす。
【0017】
活性物質の更に他の種類は、殺菌剤、例えばオルトフェニルフェノールである。これらは、また、或る場合には脱臭機能を発揮する。
【0018】
意図する適用により、他の成分(例えば、共溶媒アルコール)が含有されていてよい。例えば、家具艶出し剤には、光沢を与えるためのシリコーンが含有されていてよい。
【0019】
スプレーにガス状噴射剤が含有され、缶内に加圧されているとき、スプレーは、エアゾール缶から空気中に(飛ぶ昆虫殺虫剤の場合)又は表面に対して(這う昆虫殺虫剤又はクリーナーの場合)スプレーすることができる。または、ポンプスプレー容器(ガス噴射剤無し)を、同様の方式で使用することができる。
【0020】
この後者の形態で、本発明は、少なくとも20%の水と、少なくとも0.1%のリモネンと、少なくとも0.01%のブチルヒドロキシトルエンと、少なくとも0.01%の安息香酸アルカリ金属塩と、少なくとも0.01%の殺虫剤、防虫剤、昆虫防除成長調節剤、他の芳香物質、臭気マスク及び殺菌剤からなる群から選択された活性物質と、を有するスプレーを提供することができる。
【0021】
本発明の利点は、スプレーが、貯蔵の間に長期間に亘って実質的に色安定性であることである。これは、一般的な活性物質若しくは芳香物質の有効性に悪影響を与えることなく又はコストを著しく増加させることなく又は缶を保護するための腐食防止剤の使用を妨げることなく達成される。
【0022】
本発明のこれらの及び更に他の利点は、下記の説明から明らかになるであろう。この記載に於いて、ある種の好ましい実施形態に言及する。しかしながら、特許請求の範囲は、本発明の全範囲を判定するために見られるべきであり、特許請求の範囲は好ましい実施形態に限定されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
好ましい実施形態の詳細な説明
A.概要
【0024】
本発明の好ましい形態は、殺虫活性物質を含有するエアゾールエマルジョンスプレーである。これらは、典型的に、水、界面活性剤、炭化水素溶媒、噴射剤ガス及び1種又は2種以上の活性物質を有する。本発明に従って、また、活性物質を保護するための酸化防止剤としてのBHT、好ましい所望の芳香物質(及び追加の溶媒)としてのリモネン、及び(好ましい形態に於いて)腐食防止剤としての安息香酸ナトリウムを添加する。
【0025】
B.実施例/比較例(重量パーセントによる成分)
【0026】
【表1】

【0027】
C.試験データ
【0028】
配合物A〜Eに関して、一つ(「A」)はBHT及び安息香酸ナトリウムの両方を有しており、一つはどちらも有さずそして亜硝酸ナトリウムを有さず(「B」)、一つはどちらも有さず、亜硝酸ナトリウムを有し(「C」)、一つはBHTを有しそして亜硝酸ナトリウムも安息香酸ナトリウムも有さず(「D」)、一つはBHT及び亜硝酸ナトリウムを有し、安息香酸ナトリウムを有していなかった(「E」)。これらの配合物を、ガラスではあるが標準のエアゾール容器内に貯蔵した。本発明者は、それぞれの場合に27日間のシミュレートした貯蔵期間の後、目視観察技術、及び最も変色したサンプルに5を指定し、変色しなかったサンプルに0を指定する主観的0〜5等級付けシステムにより、変色を観察した。
【0029】
BHT及び腐食防止剤を含有しない配合物Bは透明であるけれども、BHTを添加したとき(配合物D)、腐食防止剤の不存在下でも変色が存在し、これは、亜硝酸ナトリウムのみを含有する(そしてBHTも安息香酸ナトリウムも含有しない)配合物Cと、強さに於いて類似していた。亜硝酸ナトリウム及びBHTの両方を添加したとき(配合物E)、変色はなお一層強かった。驚くべきことに、配合物Aに於いて示されるように、安息香酸ナトリウムが、亜硝酸ナトリウムにとって換わったとき、配合物の容易に感知できる変色は本質的に存在しなかった。
【0030】
従って、3種の要素(リモネン、BHT、安息香酸アルカリ金属塩)の存在は、所望の芳香及び腐食防止を与えながら、相乗的に作用する。重要なことに、これは、殺虫活性に顕著な影響を与えることなく、許容できるコストで達成される。
【0031】
非エアゾールポンプスプレーのために設計された別の配合物は、下記の通りである(重量パーセントでの成分)
【0032】
【表2】

【0033】
上記のことは本発明の多数の好ましい実施形態を記載するけれども、他の実施形態も本発明の範囲内であることが認められるであろう。例えば、他の安息香酸アルカリ金属塩が、BHTと組み合わせて有利である。更に、本発明は他の活性物質で有用である。従って、特許請求の範囲は、本発明の全範囲を判定するために注目されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、改良されたエアゾールスプレー、特に殺虫剤を付与するものを提供し、ここで、このスプレーはリモネンを含有し、貯蔵の間の変色に耐性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも20重量%の水と、少なくとも1重量%の炭化水素溶媒と、少なくとも0.1重量%の界面活性剤と、少なくとも0.1重量%のリモネンと、少なくとも0.01重量%のブチルヒドロキシトルエンと、少なくとも0.01重量%の安息香酸アルカリ金属塩と、少なくとも0.01重量%の、殺虫剤、防虫剤、昆虫防除成長調節剤、他の芳香物質、臭気マスク及び殺菌剤からなる群から選択された活性物質と、を含有するエアゾールスプレー。
【請求項2】
活性物質が、殺虫剤、防虫剤及び昆虫防除成長調節剤からなる群から選択される、請求項1記載のエアゾールスプレー。
【請求項3】
スプレーに、更に噴射剤が含有されている、請求項1記載のエアゾールスプレー。
【請求項4】
スプレーがエアゾールエマルジョンスプレーであり、噴射剤がイソブタン及びプロパンの混合物である、請求項3記載のエアゾールスプレー。
【請求項5】
炭化水素溶媒が、6〜12個の炭素を有する、請求項1記載のエアゾールスプレー。
【請求項6】
活性物質に、合成ピレトロイドが含まれる、請求項1記載のエアゾールスプレー。
【請求項7】
スプレーが殺虫エマルジョンである、請求項1記載のエアゾールスプレー。
【請求項8】
スプレーがエアゾール殺虫エマルジョンである、請求項7記載のエアゾールスプレー。
【請求項9】
安息香酸塩が安息香酸ナトリウムである、請求項1記載のエアゾールスプレー。
【請求項10】
スプレーに亜硝酸ナトリウムが含有されていない、請求項9記載のエアゾールスプレー。
【請求項11】
少なくとも20重量%の水と、少なくとも0.1重量%のリモネンと、少なくとも0.01重量%のブチルヒドロキシトルエンと、少なくとも0.01重量%の安息香酸アルカリ金属塩と、少なくとも0.01重量%の、殺虫剤、防虫剤、昆虫防除成長調節剤、他の芳香物質、臭気マスク及び殺菌剤からなる群から選択された活性物質と、を含有する請求項9記載のエアゾールスプレー。

【公表番号】特表2007−519736(P2007−519736A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551443(P2006−551443)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/002482
【国際公開番号】WO2005/074682
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)
【Fターム(参考)】