変調装置、通信機及び近距離レーダ
【課題】変調信号への影響を従来よりも少なくし、変調の状態の変化にかかわらずローカルリークを除去することができる発信装置を提供する。
【解決手段】第1、第2のデータを生成する信号発生器13と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段10と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器1と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器2と、前記第1の変調器1と前記第2の変調器2で発生した変調波を合成する合成器3とを備えている。
【解決手段】第1、第2のデータを生成する信号発生器13と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段10と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器1と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器2と、前記第1の変調器1と前記第2の変調器2で発生した変調波を合成する合成器3とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調装置、通信機及び近距離レーダに関し、より詳しくは、無線通信装置の送信機に使用される、データ信号を無線周波数信号に変換する変調装置と、変調器を備えた通信機及び近距離レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の高周波信号を得る方法には、ダイレクトコンバージョン方式のようにデータ信号により直接に高周波信号を変調する方式と、ヘテロダイン方式のようにデータ信号により低周波で変調した後に周波数変調により必要な高周波信号を得る方式が考えられる。両者を比較すると、回路規模、コストなどの観点から直接変調方式の方が有利である。
【0003】
図31(a)は、無線通信装置の送信機に使用される変調装置の回路ブロック図である。
図31(a)において、ローカル発信器101から出力される搬送波は、データ発生器102から出力されたデータに基づいて乗算器(ミキサ)103によって変調され、高周波アンプ104、高周波バンドパスフィルタ105を介してアンテナ106から送信される。
【0004】
しかし、ミキサ103の出力ポートである高周波(RF)ポートとローカル発振器101からのローカル信号を入力するローカル(LO)ポートとの間のアイソレーションを完全に取ることは難しく、ローカル発振器101から出力されるローカル信号である搬送波f0 が高周波ポートに漏れて高周波アンプ104、高周波バンドパスフィルタ105を伝わってアンテナ106から空中に放射されるという問題がある。図31(b)は、変調信号にローカルリーク信号が重畳した例を示す周波数スペクトル図であり、周波数f0で記載されているベクトルがローカルリーク信号を示す。
【0005】
RFポートとLOポートの間のアイソレーションは数十dB程度、特にミリ波帯、準ミリ波帯ではたかだか30dB程度であるため、RFポートにはローカル信号があるレベルで定常的に出現する。
例えば、変調方式にパルス変調を採用する場合に、ローカルリーク信号によって、第1に、定常的に無変調キャリアが出現しているためパルスのオンオフ比が劣化し、第2に、非常に短いパルスによる広帯域変調時には変調信号に比べてローカルリーク信号の線スペクトル電力が大きいので規定のスペクトル条件を満足できない、といった問題が発生する。特に、ウルトラワイドバンド(UWB:Ultra Wide Band)通信や、UWB近距離レーダ(SRR:Short Range Radar)といった用途ではローカルリークによる影響が深刻である。
また、変調方式に位相変調を採用する場合には、ローカルリーク信号により変調信号にスペクトル誤差が生じるので、復調時の障害となり、通信速度、通信品質の低下につながる。
【0006】
ローカルリークの問題を解決する手段としては、図32(a)に示すようなローカルリーク信号の周波数を減衰するバンドリジェクトフィルタ107の使用や、下記の特許文献1に記載のようにミキサの出力側でローカルリークを相殺する方式や、特許文献2に記載のようにミキサの平衡度を調整するためにDCバイアスを重畳する方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−20288号公報
【特許文献2】特開平5−14429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図32(a)に示したようなフィルタ方式では、図32(b)に示すようにローカルリーク信号に近い周波数の変調信号もバンドリジェクトフィルタ107の影響を受けるので、搬送波f0 で非常に急峻なバンドリジェクトフィルタ107が必要になる。しかし、実現可能な遮断性能では変調信号が影響を受けることは避けられず、また、急峻な遮断特性を持つバンドリジェクトフィルタを実現するためには価格、サイズなどの面でデメリットが大きい。
【0009】
また、特許文献1は図33(a)に示すような回路構成を有し、ローカル発信器101とミキサ103の間に分配器108を介在させて、ローカル発信器101から出力された搬送波をミキサ103と位相・振幅調整器109に分配し、位相・振幅調整器109から出力された信号とミキサ103から出力された変調信号を合成器110により合成してアンテナ106に送る構成となっている。位相・振幅調整期109は、図33(b)に示すように、変調信号に重畳された搬送波をキャンセルする位相と振幅を有している。
【0010】
しかし、図33(a)に示す構成によれば、最適なキャンセル量が変調信号の有無、信号レベルなどによって変化するので、パルス変調のような高速に状態が変化する方式では追従できず、最適なキャンセル量を得られるのはオン時かオフ時のいずれかに限定される。例えば、リークレベルのモニタ・調整のしやすさなどの観点から、オフ時に最適になるように調整することが多い。
また、上記の特許文献2に記載のバイアスによる調整方法に関しても、キャンセル方式と同様に最適なキャンセル量を得ることができるのはオン時又はオフ時のいずれかに限定されてしまう。
【0011】
本発明の目的は、変調信号への影響を従来よりも少なくし、変調の状態の変化にかかわらずローカルリークを除去することができる変調装置、通信機及び近距離レーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の第1の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器とを備え、前記信号発生器は、1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置である。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する前記ローカル発振手段は、一つの共振器により互いに逆相で発振する2つの発振器を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1の態様において、前記ローカル発振手段は、2つの共振器が協調動作している1つの発振器から、互いに逆相となる前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する構造を有していることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記ローカル発振手段は、1つの発振器から逆相分配器により前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生させる構造を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の第7の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と、該第1のローカル信号と同相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1のデータと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1、第2の変調器で発生した変調波を逆相で合成する逆相合成器とを有し、前記信号発生器は、1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置である。
【0019】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第9の態様は、第7の態様において、前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有する機能を持ったことを特徴とする。
【0021】
本発明の第10の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器とを備え、前記信号発生器は、特定の電圧を中心に互いに反転の関係にある第1出力信号、第2出力信号を出力する信号回路と、前記第2出力信号の振幅を調整する振幅調整回路と、前記第1出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、前記振幅調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路とを有することを特徴とする変調装置である。
【0022】
本発明の第11の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器とを備え、前記信号発生器は、直流オフセット電圧を含む第1出力信号と、直流オフセット電圧を中心に前記第1出力信号を反転させた第2出力信号とを出力する信号回路と、前記第1出力信号の直流オフセット電圧を調整する第1の直流オフセット調整回路と、前記第2出力信号の直流オフセット電圧を調整する第2の直流オフセット調整回路と、前記第1の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、前記第2の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路とを有することを特徴とする変調装置である。
【0023】
本発明の第12の態様は、第1乃至第11の態様のいずれかにおいて、前記信号発生器は、前記第1のデータ出力回路の振幅を調整する第3の振幅調整回路と、前記第2のデータ出力回路の振幅を調整する第4の振幅調整回路を有し、第1・第2データの振幅を等しく調整する構造を有していることを特徴とする。
【0024】
本発明の第13の態様は、第12の態様において、前記第3の振幅調整回路及び第4の振幅調整回路を含む信号発生器により、各データの振幅を所定の値に変化させることで、多値変調も可能であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第14の態様は、上記の第1乃至第13の態様のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするウルトラワイドバンド通信機である。
【0026】
本発明の第15の態様は、上記の第1乃至第13の態様のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするとするウルトラワイドバンド近距離レーダである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ローカル信号と逆相のローカル信号を、適切な2系統のデータとミキサにより変調し、それぞれの高周波送信信号を合成することで、ローカルリークは逆相合成により、高周波送信信号中のローカルリークが効率よく除去される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る変調装置を示す回路ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器から出力されるデータの第1例の信号波形図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る変調装置のローカル発振器から出力されるローカル信号の波形図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器の第1例を示す回路ブロック図である。
【図5】図5は、図4に示した信号発生器により処理されるデータの波形図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る変調装置の他の例を示す回路ブロック図である。
【図7】図7は、図6に示す回路ブロックの概略的な動作原理を示す簡略化した周波数スペクトル図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る変調装置におけるローカルリークキャンセル効果を示す特性図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器の第2例を示す回路ブロック図である。
【図10】図10は、図9に示した信号発生器により処理されるデータの波形図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器の第3例を示す回路ブロック図である。
【図12】図12は、図11に示した信号発生器により処理されるデータの波形図である。
【図13】図13(a)は、本発明の実施形態に係る変調装置を構成する合成器に入力される2つの信号波形とその出力波形を示すタイムドメイン図、図13(b)は、それらの波形の周波数ドメイン図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態に係る変調装置における信号発生器の第4例を示す回路ブロック図である。
【図15】図15は、図14に示した信号発生器により処理されるデータの波形図と、その信号発生器の出力信号を2つのミキサを介して合成された信号波形図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態に係る変調装置における信号発生器の第5例を示す回路ブロック図である。
【図17】図17(a)、(b)は、図16に示す信号発生器における第1系統目のクロックと遅延線を通したクロックとを用いて波形成形されるデータ波形図である。
【図18】図18は、図16に示す信号発生器における第2系統目のクロックと遅延線を通したクロックを用いて波形成形されるデータ波形図である。
【図19】図19は、図16に示す信号発生器によって発生する第1のデータ信号の波形処理を示す波形図である。
【図20】図20は、図16に示す信号発生器によって発生する第2のデータ信号の波形処理を示す波形図である。
【図21】図21は、本発明の実施形態に係る変調装置における信号発生器の第6例を示す回路ブロック図である。
【図22】図22は、本発明の実施形態に係る4値位相変調を示す回路ブロック図である。
【図23】図23は、本発明の実施形態に係る多値振幅位相変調装置の第1例を示す回路ブロック図である。
【図24】図24は、本発明の実施形態に係る多値振幅位相変調による送信信号の変化の概略を示す波形図である。
【図25】図25は、本発明の実施形態に係る多値振幅位相変調装置のを示す回路ブロック図である。
【図26】図26は、本発明の実施形態に係る変調装置におけるローカル発振器の第1例を示す回路ブロック図である。
【図27】図27は、本発明の実施形態に係る変調装置におけるローカル発振器の第2例を示す回路ブロック図である。
【図28】図28は、図27に示すローカル発振器における逆相分配器の具体例を示す回路図である。
【図29】図29は、本発明の実施形態に係る変調装置における2つのミキサから出力されるローカルリーク信号の位相ズレとレベル差の違いによるローカルリークキャンセル効果を示す図である。
【図30】図30は、本発明の実施形態に係る変調装置のさらに別の例を示す回路ブロック図である。
【図31】図31は、従来の第1の変調装置を示す回路ブロック図とその周波数タイムドメイン図である。
【図32】図32は、従来の第2の変調装置を示す回路ブロック図とその周波数タイムドメイン図である。
【図33】図33は、従来の第3の変調装置を示す回路ブロック図とその周波数タイムドメイン図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る変調装置の回路ブロック図である。
【0030】
図1に示す変調装置は、第1のローカル信号(搬送波)f0を出力する第1ローカル信号出力部11と第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号−f0を出力する第2ローカル信号出力部12とを有するローカル発振器10と、第1のデータ信号D1を出力する第1のデータ出力部14と第2のデータ信号D2を出力する第2のデータ出力部15とを有する信号発生器13と、第1ローカル信号出力部11から出力される第1のローカル信号f0と第1データ出力部14から出力される第1のデータ信号D1を入力して第1のローカル信号f0を第1のデータ信号D1により変調する第1ミキサ(変調器)1と、第2ローカル信号出力部12から出力される第2のローカル信号−f0と第2データ出力部15から出力される第2のデータ信号D2を入力して第2のローカル信号−f0を第2データ信号D2により変調する第2ミキサ(変調器)2と、第1ミキサ1と第2ミキサ2から出力される変調信号を合成するとともにそれらの変調信号波に含まれる第1、第2のローカル信号f0、−f0のリーク成分f0’、−f0’を互いに打ち消して減衰させつつ高周波送信信号D1・f0とD2・−f0を加算して出力する合成器3とを有している。また、合成器3から出力された変調信号はアンテナ4から放射される。
【0031】
次に、本実施形態に係る変調装置の変調方式として2値位相変調、パルス変調、位相変調等を例に挙げて変調装置の動作を説明する。
【0032】
位相変調
まず、位相変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)を行う変調装置について説明する。
図1において、信号発生器13により生成される信号は、例えば第1のデータ出力部14から出力される第1のデータ信号D1を期間T1 で波高値VHigh、期間T2 で波高値VLowとなるパルス信号とし、第2データ出力部15から出力される第2のデータ信号D2を期間T1で波高値VLow、期間T2で波高値VHighとなるパルス信号とする。第1、第2のデータ信号D1,D2は直流オフセット電圧(コモン電圧:Vcom)を中心に等振幅(VHigh-Vcom=Vcom-VLow)となり、それぞれ対称に動作する差動信号である。
【0033】
ここで、信号発生器13から第1ミキサ1に入力する第1のデータ信号D1を図2(a)に示すように期間T1 で波高値VHigh、期間T2で波高値VLowとし、また、図3(a)に示すようにローカル発振器10の第1ローカル出力部11から出力されるローカル信号をβcos ωl t(β:振幅、ωl :角周波数、t:時間)とすると、第1ミキサ1においては第1のデータ信号D1によりローカル信号が変調されるので、期間T1、T2のそれぞれにおける第1ミキサ1からの出力信号Fm1(t)は次式(1)、(2)のようになる。
【0034】
Fm1(T1)=VHighβcos ωl t (時間T1) (1)
Fm1(T2)=VLowβcos ωl t (時間T2) (2)
【0035】
ここで、第1ローカル信号出力部11から第1ミキサ1の出力側へのローカルリークは、第1ミキサ1のアイソレーション性能に応じた減衰を受け、位相ズレが生じるので、ローカル周波数についての第1ミキサ1による減衰量をγ、位相量をδとすると、第1ミキサ1の出力側へのローカルリークは次式(3)のようになって、式(1)、(2)に加えられる。
【0036】
βγcos (ωl t+δ) (3)
【0037】
一方、信号発生器13から第2ミキサ2に入力する第2のデータ信号D2を図2(b)に示すように期間T1で波高値VLow、期間T2で波高値VHighとし、また、図3(b)に示すようにローカル発振器10の第2ローカル信号出力部12から出力されるローカル信号をβcos(ωlt+π)(β:振幅、ωl:角周波数、t:時間)とすると、第2ミキサ2においては第2のデータ信号D2によりローカル信号が変調されるので、期間T1、T2にそれぞれにおける第2ミキサ2からの出力信号Fm2(t)は次式(4)、(5)のようになる。
【0038】
Fm2(T1) =VLowβcos (ωlt+π)
=−VLowβcos ωlt (時間T1) (4)
Fm2(T2) =VHighβcos (ωlt+π)
=−VHighβcos ωlt (時間T2) (5)
【0039】
ここで、第2のローカル出力部12から第2ミキサ2の出力側へのローカルリークは、第2ミキサ2のアイソレーション性能に応じた減衰を受け、位相ズレが生じるので、ローカル周波数についての第2ミキサ2による減衰量をγ、位相量をδとすると、ローカルリークは次式(6)のようになって、式(4)、(5)に加えられる。
【0040】
βγcos (ωlt+π+δ)
=−βγcos (ωlt+δ) (6)
【0041】
以上のような関係から、第1ミキサ1と第2ミキサ2の出力信号を合成器3により加算すると、式(1)〜(6)の関係から、合成器3の出力Fc(t) は次式(7)、(8)のようになる。
【0042】
Fc(T1)=(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T1) (7)
Fc(T2)=−(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T2) (8)
【0043】
通常、第1ミキサと第1のデータ信号D1のみで変調する場合には、データ信号の振幅は(VHigh−VLow)÷2となり、出力も((VHigh−VLow)÷2)βcosωltとなる。本方式を用いた場合は合成器3から出力される信号は、振幅が2倍となる。一方で、第1、第2ローカル信号出力部11,12のそれぞれから合成器3の出力側に流れるローカルリークは互いに逆相関係となって合成されるために合成器3から出力されない。
【0044】
以上により、アンテナ4から送信される高周波送信信号F(T)は、次式(9)、(10)のように送信信号として有効な成分のみとなる。
【0045】
F(T1)=(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T1) (9)
F(T2)=−(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T2) (10)
【0046】
図1に示す変調装置の信号発生器13における第1のデータ信号D1 、第2のデータ信号D2 の生成方法としては、直流オフセット電圧を中心にして等振幅で対称に動作する差動信号を生成し、差動信号の各ポートの信号をシングルエンドとして取り出す方法を用いても良い。差動信号の規格には、RS−422、PECL(PHP Extension Community Library)、LVDS(Low-Voltage Deferential Signaling)などがあるが、いずれに規格に準拠する信号でも良い。また、それらの規格以外の信号でも良い。
【0047】
また、2値位相変調用データとして、例えば図4に示すように差動信号をAC結合したものを用いても良い。
図4において、差動信号発生回路16の出力側の第1、第2ポート16a,16bのそれぞれに直流オフセット電圧カット回路17,18を介して第1、第2のデータ出力部14,15に作動信号を出力する構成が採用される。
【0048】
図5(a)に示すように、差動信号発生回路16の第1ポート16aから出力される信号は直流オフセット電圧を含む第1出力信号であり、また、第2ポート16bから出力される信号は直流オフセット電圧を中心に第1出力信号を反転した第2出力信号である。
そして、直流オフセット電圧カット回路17,18により直流オフセット電圧成分がカットされた第1出力信号、第2出力信号は図5(b)に示すように互いに符号反転したバイポーラ信号波形になり、それぞれ第1、第2のデータ出力部14,15に出力される。
【0049】
このようにAC結合することによってデータ信号が電圧低下や、周波数特性の変化などの影響を受けるが、ミキサ1,2の動作点を最大VHighから(VHigh -VLow)÷2まで下げることが可能である。また、データ信号がミキサ1,2のRFポートにリークする分についてもキャンセルする効果も得られる。
【0050】
次に、1つのローカル信号を用いることによりローカルリークをキャンセルする回路について説明する。
例えば、図6の回路ブロック図に示すように、ローカル発振器10からの同相の2つのローカル信号を第1、第2ミキサ1,2にそれぞれ入力するとともに、信号発生器13における第1、第2データ出力部14,15のそれぞれのデータ信号を第1、第2ミキサ1,2に入力して高周波送信信号を生成し、第1、第2ミキサ1,2のそれぞれの出力信号を逆相合成器8により逆位相にて合成することにより、高周波送信信号中に含まれるローカル信号の成分を減衰させつつ、高周波送信信号を倍増して出力してもよい。
【0051】
そのような構成により得られる概略的な動作原理の周波数スペクトルを図7に示す。
図8において、逆相合成器8は逆相分配器の入出力を反転すればよい。ただし、逆相合成器8には周波数特性があり、ローカル周波数で逆相になるものを採用する。同様に、逆相合成器8の周波数特性から逆相合成されるとみなせるのは、ローカル周波数近傍に限られるため、同相合成される(逆相信号を逆相合成するので、結果的に同相合成)高周波送信信号については比較的狭帯域な信号に限定される。
【0052】
位相変位変調(PSK)について、ローカルリークキャンセル回路がある場合と無い場合を比較したところ、図8に示すような効果が得られた。図8(a)は、従来のローカルリークキャンセル回路が無い変調装置を用いた場合にローカル信号と同じ周波数1GHzにレベルの高いローカル(LO)リークが存在する。これに対し、図8(b)は、本実施形態のローカルリークキャンセル回路を有する変調装置であり、ローカル信号と同じ周波数1GHzに低レベルのLOリークが存在し、LOリークの低減効果があることがわかる。
【0053】
パルス変調
次に、パルス変調を行う変調装置の一例を図9を参照して説明する。
図9において、特定の電圧を中心に反転した信号を送信する構造を有する差動信号発生回路16の出力側の第1、第2ポート16a,16bの信号をシングルエンドとして取り出す場合に、例えば、第1ポート16aを第1のデータ出力部14にそのまま出力するとともに第2ポート16bの出力をレベル調整器26によりx倍して第2のデータ出力部15に出力する構成を採用する。
これにより、図1において第2ミキサ2から出力される信号Fm2(t)は次式(11)、(12)となる。
【0054】
Fm2(T1)=xVLow βcos (ωl t+π)=−xVLow βcos ωl t
(11)
Fm2(T2)=xVHighβcos (ωl t+π)=−xVHighβcos ωl t
(12)
【0055】
また、第1ミキサ1から出力される信号Fm1(t)は上記の式(1)、(2)となるので、時間T1 、T2における合成器3の出力は、次式(13)、(14)のようになる。
【0056】
FC(T1) =(VHigh−xVLow )βcos ωl t (13)
FC(T2) =(VLow −xVHigh)βcos ωl t (14)
【0057】
期間T1 のみパルス出力されるように調整すると、x=VLow /VHighの場合には合成器3の出力は次式(15)、(16)のようになり、パルス変調信号が得られる。
【0058】
FC(T1) =(VHigh−((VLow)2/VHigh))βcos ωl t (15)
FC(T2) =0 (16)
【0059】
ユニポーラ信号の通常の方式でパルス変調する場合、データの振幅は(VHigh−VLow)となるが、下式(17)が成立するので、本実施形態による方式を用いることによりローカルリークをキャンセルする効果が得られるだけでなく、所望の信号については増幅効果が得られる。
【0060】
(VHigh−VLow )<(VHigh−((VLow)2/VHigh)) (17)
【0061】
高レベル値をVHigh、xVHigh、低レベル値をVLow、xVLowとした波形のパルス変調用データは、例えば図9に示すように差動信号発生回路を用いて作成される。図9において、差動信号発生回路16の出力側の第1のポート16aは第1データ出力部14に出力され、第2のポート16bは振幅調整器26を介して第2データ出力部15に出力される。
【0062】
差動信号発生回路16から出力される信号は、図10(a)に示すように直流オフセット電圧を含む高レベル値VHigh、低レベル値VLowの第1出力信号と、直流オフセット電圧を中心に第1の出力信号を反転した第2出力信号であり、第1出力信号は第1ポート16aに出力され、第2出力信号は第2ポート16bに出力される。また、第2ポート16bから出力される第2出力信号は、図10(b)に示すように、振幅調整器26によってx倍されて高レベル値xVHigh、低レベル値xVLowに振幅調整され、直流オフセット電圧もx倍されて第2のデータ出力部15に出力される。
【0063】
また、パルス変調用データとして、例えば図11に示すように差動信号の直流オフセット電圧を調整する構造を採用しても良い。
図11において、差動信号発生回路16の出力側の第1ポート16aと第1のデータ出力部14の間、および第2ポート16bと第2のデータ出力部15の間のそれぞれには直流オフセット調整回路24,25介在されている。
これにより、図12(a)に示すように、差動信号発生回路16の第1ポート21aからは直流オフセット電圧を含む第1出力信号が出力され、第2ポート21bからは直流オフセット電圧を中心に第1出力信号を反転させた第2出力信号が出力される。
【0064】
直流オフセット調整回路24,25によって直流オフセット電圧が別々に調整された第1出力信号、第2出力信号は図12(b)に示すように互いに符号反転したユニポーラ信号波形になり、それぞれ第1、第2のデータ出力部14,15を介してミキサ1,2に出力される。
そのような直流オフセット電圧を調整することにより、データ信号が電圧低下や、周波数特性の変化などの影響を受けるが、パルス変調信号の振幅を(VHigh -VLow)×2まで高めることが可能である。
【0065】
図13には、図1に示した回路によりローカル信号をパルス変調したときの概略的な動作原理を示す。図13(a)のタイムドメイン図に示すようにパルスがオン時のデータの振幅は合成器3により倍増し、オフ時のローカルリークは逆相の合成により抑制される。また、オン時にもデータの振幅にはローカルリークが含まれているがこれも互いの逆相の合成により抑制される。また、図13(b)に周波数ドメイン図を示すが、第1、第2ミキサ1,2の出力は、高周波送信信号が全て同相であり、ローカルリークf0 のみが逆相となるために、データ信号は無駄なく使用される。
【0066】
パルス位相変調信号
次に、差動信号を2系統用意し、信号を組合せることによりパルス位相変調を行うことを説明する。
図14は、パルス位相変調を行うための信号発生器13の構成を示す回路ブロック図である。
【0067】
図14において、信号発生器13は、第1差動信号発生回路31と第2差動信号発生回路32を有している。第1差動信号発生回路31において、第1出力ポート31aから出力される信号S1と第2出力ポート31bから出力される信号N1はコモン電圧を中心に信号S1を反転した関係にある。第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aから出力される信号S2と第2出力ポート32bから出力される信号N2もコモン電圧を中心にS2を反転した関係にある。
【0068】
また、第1差動信号発生回路31の第1出力ポート31aから出力される信号S1と第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aから出力される信号S2は、それぞれ送信信号の正相パルスと逆相パルスに対応しており、パルスを出力する期間だけVHighとVLowが入れ替わる。なお、それぞれの信号は図15(a)の左と右に示すように同期が取れている。
【0069】
第1差動信号発生回路31の第1出力ポート31aは第1合成器33の第1入力端に接続され、第2出力ポート31bは第1振幅調整器35を介して第2合成器34の第2入力端に接続されている。第1振幅調整器35は、図15(b)の左側に示すように、第1差動信号発生回路31の第2出力ポート31bから出力される信号N1の振幅及び直流オフセット電圧成分をx倍した波形にする。
【0070】
また、第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aは第2合成器34の第1入力端に接続され、第2出力ポート32bは第2振幅調整器36を介して第1合成器33の第2入力端に接続されている。第2振幅調整器36は、図15(b)の右側に示すように、第2差動信号発生回路32の第2出力ポート32bから出力される信号N2の振幅及び直流オフセット電圧成分をx倍した波形にする。
【0071】
第1合成器33は、第1差動信号発生回路31の第1出力ポート31aと第2振幅調整器36から出力された信号を合成して第1のデータ出力部14に出力するように構成されている。また、第2合成器34は、第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aと第1振幅調整器35から出力された信号を合成して第2のデータ出力部15に出力するように構成されている。即ち、第1、第2合成回路33,34は、第1、第2差動信号発生回路31,32の第2出力ポート31b、32bのそれぞれから出力される信号N1、N2を第1、第2振幅調整器35,36を介してx倍した後に互いに入れ替えて信号S1、S2とは異なる合成器に入力するようになっている。
【0072】
これにより、第1合成回路33から出力される信号は図15(c)の左側のような波形となり、第2合成回路34から出力される信号は図15(c)の右側のような波形となる。
なお、第1、第2振幅調整器35,36の倍率xは、所望の期間 のみパルス出力されるようにx=VLow /VHighに調整する。
【0073】
第1合成回路33から出力された信号は図15(d)の左側に示す波形となって第1のデータ出力部14から図1に示す第1ミキサ1に出力され、また、第2合成回路34から出力された信号は図15(d)の右側に示す波形となって第2のデータ出力部15を介して第2ミキサ2に出力される。
【0074】
図1に示す第1ローカル信号出力部11から第1ミキサ1に入力するローカル信号をsinωtとし、第2ローカル信号出力部12から第2ミキサ2に入力するローカル信号をsin(ωt+π)とする。
従って、第1ミキサ1と第2ミキサ2のそれぞれの出力側のローカルリークは合成器3において互いにキャンセルされる。また、合成器3により合成された変調信号は、図15(e)に示すように、信号S1とx倍された信号N2を合成した正相信号と、信号S2とx倍された信号N1を合成した逆相信号が休止時間を挟んでアンテナ4に伝送される。
【0075】
短いパルスによるパルス変調
次に、クロックのパルス幅を調整してパルス幅を調整して短いパルスとした信号発生器13について図16を参照して説明する。
図16において、クロック発振器40は、第1分配器41を介して第2、第3の分配器42,43に接続されている。
【0076】
第2の分配器42の第1出力端は、第1遅延線44を介して第1比較器46の基準信号端(ref)に接続され、また、第2出力端は第1スイッチ45の「1」入力端に接続されている。第1スイッチ45は、データ回路50から第4の分配器51を介して入力したデータ信号によって、「1」入力端のクロックを制御して第1比較器46の信号端(signal)へ出力するように構成されている。なお、第1スイッチ45の「0」入力端は接地電位となっている。
【0077】
第1比較器46は、例えば図17(a)に示すように、第1遅延線44により所望のパルス幅Δtだけ遅延された遅延クロック信号と、第1スイッチ45から出力されたデータのクロック信号を入力し、さらに、閾値と信号の関係から、図17(b)の実線で示すように、遅延クロック信号に比べてクロック信号のレベルの高い時間のみ高レベルとなる信号を第1ポート46aから出力する。また、第1比較器46の第2ポート46bからは、第1ポート46aからの出力信号と等振幅であって振幅中心で反転した反転信号を出力するように構成されている。
なお、データの切り替えで比較器46,49の閾値が固定になると、その出力も固定になる。
【0078】
第3の分配器43の第1出力端は、第2遅延線47を介して第2比較器49の基準信号端(ref)に接続され、また、その第2出力端は第2スイッチ48の「0」入力端に接続されている。第2スイッチ48は、データ回路50から第4の分配器51を介して入力したデータ信号によって、「0」入力端のクロックを制御して第2比較器49の信号端(signal)へ出力するように構成されている。なお、第2スイッチ38の「1」入力端は接地電位となっている。
【0079】
第2比較器49は、例えば図18(a)に示すように、第2遅延線47により所望のパルス幅Δtだけ遅延された遅延クロック信号と、第2スイッチ48から出力されてデータ回路50からのデータ信号の「0」,「1」が逆転したクロック信号を入力し、さらに、閾値と信号の関係から、図18(b)の実線で示すように、遅延クロック信号に比べてクロック信号のレベルの高い時間のみ高レベルとなる信号を第1ポート49aから出力する。また、また、第2比較器49の第2ポート49bからは、第1ポート49aからの出力信号と等振幅であって振幅中心で反転した反転信号を出力するように構成されている。
【0080】
第1比較器46の第1出力ポート46aは第1合成器33の第1入力端に接続され、第2比較器49の第1出力ポート49aは第2振幅調整器36を介して第1合成器33の第2入力端に接続されており、第1合成器33の出力は第1のデータ出力部14に出力される。
また、第2比較器49の第2出力ポート49bは第2合成器34の第1入力端に接続され、第1比較器46の第2出力ポート46bは第1振幅調整器35を介して第2合成器34の第2入力端に接続されており、第2合成器34の出力は第2のデータ出力部15に出力される。
第1、第2振幅調整器35,36、第1、第2合成器33,34の信号処理は、図14、図15(a)〜(c)に基づいて行う信号処理と同様に、図19、図20に示す波形のようになる。
【0081】
ところで、図21に示すように、第1遅延線44の出力端と第1比較器46の基準端(Ref)の間に第1スイッチ45を介在させるとともに、第2分配器42の第1出力ポートを直に第1比較器46の信号端(signal)に接続し、さらに、第2遅延線47の出力端と第2比較器49の基準端(Ref)の間に第2スイッチ48を介在させるとともに、第3分配器43の第1出力ポートを直に第2比較器49の信号端(signal)に接続してもよい。この場合、第1遅延線44の出力端は第1スイッチ45の「1」入力端に接続され、第2遅延線47の出力端は第2スイッチ48の「0」入力端に接続される。なお、第1スイッチ45の「0」入力端と第2スイッチ48の「1」入力端には、出力を固定とするための閾値にするためクロック信号の波高値よりも大きな電圧+Vが印加されている。
【0082】
QPSK変調
次に、本変調装置で4値位相変調(QPSK:quadrature phase shift keying)する方式、例えば、図22に例示するように、変調装置を2系統用いるQPSKについて説明する。
第1・第2の変調装置Q,Iはそれぞれ、「位相変調」のところで説明したものと同じものでも良い。第1の変調装置Qの第1のローカル信号出力部11からcos ωtを出力させ、第1の変調装置Qの第2のローカル信号出力部12からcos (ωt+π)を出力させるとともに、第2の変調装置Iの第1のローカル信号出力部11からsin ωtを出力させ、第2の変調装置Iの第2のローカル信号出力部12からsin (ωt+π)を出力させる。なお、ローカル発振器10を第1・第2の変調装置Q,Iで共用することで、一つのローカル発振器10からcos ωt、cos (ωt+π)、sin ωt、sin (ωt+π)を出力させても良い。
そして、第1、第2の変調装置Q,Iの出力を合成器60により合成してアンテナ4に出力することによりQPSK変調が可能になる。また、「パルス位相変調」のところで説明した変調装置を用いることで、パルスQPSK変調も可能である。なお、図22中、符号61は原発信器、62は位相調整器を示している。
【0083】
多値振幅位相変調
次に、本変調装置で多値振幅位相変調する方式について説明する。
図23に示すように、信号発生器13の第1のデータ出力部27と第2のデータ出力部15はそれぞれ第1の振幅調整器27と第2の振幅調整器28に接続され、同じ倍率で振幅調整される。第1の振幅調整器27の第1の出力信号D1’と第2の振幅調整器28の第2の出力信号D2’は、それぞれ第1ミキサ1と第2ミキサ2に接続される。第1のローカル信号f0 と第1の出力信号D1’、第2のローカル信号−f0 と第2の出力信号D2’により変調された変調信号は、合成器3で合成されアンテナ4から放射される。
【0084】
図24は、「パルス位相変調信号」のところで説明した変調装置について、振幅調整器27,28の有無による送信信号の変化の概略を示している。
図24(a)は振幅調整器27,28が無い場合の送信信号波形であり、図24(b)は振幅調整器27,28により、例えば振幅が0.5倍された場合の送信信号波形を示す。これにより、信号発生器13の出力信号の振幅を調整することで、送信信号の振幅を調整することができる。
【0085】
例えば、図25に示すように、振幅調整器27,28を備えた信号発生器13を含む変調装置により、送信信号を多値化することにより多値振幅位相変調、例えば16QAM変調を行うことができる。第1のQPSK変調装置Q,Iと第2のQPSK変調装置Q’,I’のうち第2のQPSK変調装置Q’,I’の信号発生器13には振幅調整器27,28が含まれている。振幅調整器27,28により第1のQPSK変調装置Q,Iの信号発生器13の出力と第2のQPSK変調装置Q’,I’の信号発生器13の出力との振幅比が、1:3になるよう調整する。これにより、第1・第2のQPSK変調装置Q,I、Q’,I’の出力を合成器60により合成してアンテナ4に出力することにより16QAM(quadrature amplitude modulation)変調が可能になる。また、信号発生器のデータの種類によってはパルス16QAM変調も可能である。
さらに、必要に応じて振幅・位相の値を変更した多値振幅位相変調器を構成しても良い。
【0086】
ローカル信号発生器
次に、ローカル信号発生器10において正相・逆相の関係にある第1、第2のローカル信号を生成する方式について説明する。
第1の方式として、互いに逆位相となる第1、第2のローカル信号を1つの共振器により互いに逆相で発信する2つの異なる原発振器より生成する構成を採用する。
第2の方式として、図26に示すように2つの共振器が協調動作している1つの原発振器9から2系統取り出す構成を採用する。この場合、第2ローカル信号出力部12では逆相処理が行われる。また、2系統取り出す方法としては、その他に、1つの共振器を共用した2系統のローカル信号を作る方法を採用しても良いし、無安定マルチバイブレータのような、2つの共振器を協調動作させているものから2出力を取り出す方式などでも良い。
【0087】
第3の方式として、第1、第2の方式のように互いに逆位相となるローカル発振器を2つ使用するのではなく、図27に示すように1つの原発振器9からの源信号を逆相分配器7を介して第1、第2ローカル信号出力部11,12に出力して、互いに逆相のローカル信号を出力する構成を採用する。
【0088】
逆相分配器7には180度ハイブリッドなどが適しており、例えば、低周波帯信号では図28(a)に示すようなトランス方式があり、また、高周波帯信号で平面回路とする場合には図28(b)に示すようなラットレース方式があり、また、立体回路(導波管回路)の場合はマジックT方式(図示せず)などが挙げられる。また、2分配回路と位相遅延回路を単純に組み合わせたもの(図示せず)でも良い。
【0089】
ローカル周波数については可変にしてもよい。
例えば、正相・逆相のローカル信号を生成する方式のうちの第1、第2の方式において、それぞれのローカル信号について正相・逆相の関係を維持しつつ、ローカル発振器の周波数を可変動作させても良い。これにより、周波数多重通信のように通信ごとに周波数が変化する方式や、スペクトル拡散の周波数ホッピング方式などで本発明の変調装置を用いた場合に、各周波数においてローカルリークをキャンセルする効果と、高周波送信信号を増幅する効果が得られる。
【0090】
また、正相・逆相のローカル信号を生成する第3の方式においても、ローカル発振器の周波数を可変動作させても良い。なお、ローカル発振器の周波数に対して可変周波数幅が小さい場合には、逆相相殺・同相合成の効果は十分得られるが、周波数可変幅を広く取る場合や、逆相相殺・同相合成の効果を最大限利用する場合には、逆相分配器を周波数変化と連動できる可変型にしておくか、位相・振幅調整器により、周波数変化と連動して、位相・振幅を調整してもよい。
【0091】
次に、変調装置の構成部品にバラつきなどがある場合の調整機能について説明する。
第1、第2ミキサ1,2に同一の部品を使用した場合でも、部品のバラツキによってローカル発振器10から第1、第2ミキサ1,2の出力端への通過特性(通過位相、アイソレーション)にはバラツキが発生する可能性がある。
【0092】
また、ローカル発振器10において第1、第2ローカル信号出力部11,12のそれぞれから出力されるローカル信号も特性バラツキによって、位相差、出力レベルに差が発生する可能性がある。位相・振幅のズレによるキャンセル効果劣化について図29に示す。180度からの位相差が0度で、かつ出力レベルの差が0dBのとき、ローカルリークのキャンセル効果は無限大(∞)で最もよい。テーブル内の数値は大きいほどキャンセル効果が大きい。位相差5度(180+5度)、振幅差0.5dBではキャンセル効果は19.9dB程度に劣化し、高周波送信信号の同相合成効果3dBを加えて、トータル23dBの効果となる。
【0093】
そこで、キャンセル効果を高めたい場合は、部品のバラツキを吸収するために、図30に示すように、第1ローカル信号出力部11と第1ミキサ1の間に第1の位相・振幅調整機5を接続するとともに、第2ローカル信号出力部12と第2ミキサ2の間に第2の位相・振幅調整機6を接続してもよい。
また、図6に示したような、同相の2つのローカル信号を出力するローカル発振器10と第1ミキサ1、第2ミキサ2のそれぞれの間に位相・振幅調整器5,6を接続してもよい。
なお、追加する位置としては、ローカル発振器10とミキサ1,2の間でも、ミキサ1,2と合成器3の間のどちらでも構わない。また、第1、第2の位相・振幅調整器5,6は、2つのミキサ1,2が介在するいずれか一方の経路への追加だけでも構わない。
【0094】
但し、変調信号が広帯域信号となる場合には、広帯域に渡って均一な周波数特性を持つ位相・振幅調整器の実現が困難であるので、特定周波数の位相・振幅調整をローカル発振器10とミキサ1,2の間に追加する方が望ましい。また、調整用にレベル検出器などを追加しても良い。なお、同様の理由から信号発生器13とミキサ1,2の間に位相・振幅調整器を追加しても良い。この方法は、上記した正相・逆相のローカル信号を生成するいずれの方式にも適用可能である。
【0095】
上記の変調装置は、ウルトラワイドバンド(UWB)通信や、UWB近距離レーダ(SRR)などに適用される。
以上述べたように本発明によれば、ローカル信号と逆相のローカル信号を、適切な2系統のデータとミキサにより変調し、それぞれの高周波送信信号を合成することで、ローカルリークは逆相合成により、高周波送信信号中のローカルリークが効率よく除去される。
また、副次的効果として、放射電力の規格に対してローカルリーク信号で制約されることがなくなり、放射電力の効率化にもつながる。あるいは、高周波送信信号は同相合成され増幅効果があるため、さらにローカルリーク対高周波送信信号比が改善される。
【0096】
さらに他の副次的効果として、データ信号に逆相信号を用いる場合は、データ信号がミキサを通過するデータリークについても、逆相合成することによりミキサのアイソレーションも改善する効果が得られる。これによりデータ信号リークを除去するフィルタが不要となるので、データ信号周波数と高周波送信信号が重なるような周波数配置も設定することが可能となる。
【0097】
また、本発明によれば、同一の部品(ミキサ)を、逆相の同じ信号・同じ波形(ローカル・データ)で使用するといった対称動作により生成した信号を逆相で合成するので、無調整でローカルリークのキャンセル効果が得られる。また必要に応じて部品バラツキを吸収するための位相・振幅を調整することで、さらにキャンセル効果を向上させることも可能である。さらに、同じ部品を対称動作させているため、温度・湿度等の動作環境、信号レベル、信号波形といった動作条件の変化による特性変動も少ない。
また、本発明によれば、本来ローカルリークと等しい無変調信号の原因となる直流オフセット電圧の影響をうけないため、信号発生器としてディジタル信号回路で広範囲に用いられている、高速差動信号を直接接続することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
1、2:ミキサ
3:合成器
4:アンテナ
5,6:位相・振幅調整器
7:逆相分配器
8:逆相合成器
9:原発振器
10:ローカル発振器
11:第1ローカル信号出力部
12:第2ローカル信号出力部
13:信号発生器
14:第1のデータ出力部
15:第2のデータ出力部
16:作動信号回路
17,18;直流カット回路
24,25:直流オフセット回路
26:レベル調整器
27,28:振幅調整器
31,32:作動信号回路
33,34:合成器
35,36:振幅調整回路
40:クロック発振器
41〜43:分配器
44,47:遅延線
45,48:スイッチ
46,49:比較器
50:データ回路
51:分配器
60,60a,60b,60c:合成器
61:原発振器
62:位相調整器
Q,Q’,I,I’:変調装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調装置、通信機及び近距離レーダに関し、より詳しくは、無線通信装置の送信機に使用される、データ信号を無線周波数信号に変換する変調装置と、変調器を備えた通信機及び近距離レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の高周波信号を得る方法には、ダイレクトコンバージョン方式のようにデータ信号により直接に高周波信号を変調する方式と、ヘテロダイン方式のようにデータ信号により低周波で変調した後に周波数変調により必要な高周波信号を得る方式が考えられる。両者を比較すると、回路規模、コストなどの観点から直接変調方式の方が有利である。
【0003】
図31(a)は、無線通信装置の送信機に使用される変調装置の回路ブロック図である。
図31(a)において、ローカル発信器101から出力される搬送波は、データ発生器102から出力されたデータに基づいて乗算器(ミキサ)103によって変調され、高周波アンプ104、高周波バンドパスフィルタ105を介してアンテナ106から送信される。
【0004】
しかし、ミキサ103の出力ポートである高周波(RF)ポートとローカル発振器101からのローカル信号を入力するローカル(LO)ポートとの間のアイソレーションを完全に取ることは難しく、ローカル発振器101から出力されるローカル信号である搬送波f0 が高周波ポートに漏れて高周波アンプ104、高周波バンドパスフィルタ105を伝わってアンテナ106から空中に放射されるという問題がある。図31(b)は、変調信号にローカルリーク信号が重畳した例を示す周波数スペクトル図であり、周波数f0で記載されているベクトルがローカルリーク信号を示す。
【0005】
RFポートとLOポートの間のアイソレーションは数十dB程度、特にミリ波帯、準ミリ波帯ではたかだか30dB程度であるため、RFポートにはローカル信号があるレベルで定常的に出現する。
例えば、変調方式にパルス変調を採用する場合に、ローカルリーク信号によって、第1に、定常的に無変調キャリアが出現しているためパルスのオンオフ比が劣化し、第2に、非常に短いパルスによる広帯域変調時には変調信号に比べてローカルリーク信号の線スペクトル電力が大きいので規定のスペクトル条件を満足できない、といった問題が発生する。特に、ウルトラワイドバンド(UWB:Ultra Wide Band)通信や、UWB近距離レーダ(SRR:Short Range Radar)といった用途ではローカルリークによる影響が深刻である。
また、変調方式に位相変調を採用する場合には、ローカルリーク信号により変調信号にスペクトル誤差が生じるので、復調時の障害となり、通信速度、通信品質の低下につながる。
【0006】
ローカルリークの問題を解決する手段としては、図32(a)に示すようなローカルリーク信号の周波数を減衰するバンドリジェクトフィルタ107の使用や、下記の特許文献1に記載のようにミキサの出力側でローカルリークを相殺する方式や、特許文献2に記載のようにミキサの平衡度を調整するためにDCバイアスを重畳する方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−20288号公報
【特許文献2】特開平5−14429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図32(a)に示したようなフィルタ方式では、図32(b)に示すようにローカルリーク信号に近い周波数の変調信号もバンドリジェクトフィルタ107の影響を受けるので、搬送波f0 で非常に急峻なバンドリジェクトフィルタ107が必要になる。しかし、実現可能な遮断性能では変調信号が影響を受けることは避けられず、また、急峻な遮断特性を持つバンドリジェクトフィルタを実現するためには価格、サイズなどの面でデメリットが大きい。
【0009】
また、特許文献1は図33(a)に示すような回路構成を有し、ローカル発信器101とミキサ103の間に分配器108を介在させて、ローカル発信器101から出力された搬送波をミキサ103と位相・振幅調整器109に分配し、位相・振幅調整器109から出力された信号とミキサ103から出力された変調信号を合成器110により合成してアンテナ106に送る構成となっている。位相・振幅調整期109は、図33(b)に示すように、変調信号に重畳された搬送波をキャンセルする位相と振幅を有している。
【0010】
しかし、図33(a)に示す構成によれば、最適なキャンセル量が変調信号の有無、信号レベルなどによって変化するので、パルス変調のような高速に状態が変化する方式では追従できず、最適なキャンセル量を得られるのはオン時かオフ時のいずれかに限定される。例えば、リークレベルのモニタ・調整のしやすさなどの観点から、オフ時に最適になるように調整することが多い。
また、上記の特許文献2に記載のバイアスによる調整方法に関しても、キャンセル方式と同様に最適なキャンセル量を得ることができるのはオン時又はオフ時のいずれかに限定されてしまう。
【0011】
本発明の目的は、変調信号への影響を従来よりも少なくし、変調の状態の変化にかかわらずローカルリークを除去することができる変調装置、通信機及び近距離レーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の第1の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器とを備え、前記信号発生器は、1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置である。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する前記ローカル発振手段は、一つの共振器により互いに逆相で発振する2つの発振器を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1の態様において、前記ローカル発振手段は、2つの共振器が協調動作している1つの発振器から、互いに逆相となる前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する構造を有していることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記ローカル発振手段は、1つの発振器から逆相分配器により前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生させる構造を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の第7の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と、該第1のローカル信号と同相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1のデータと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1、第2の変調器で発生した変調波を逆相で合成する逆相合成器とを有し、前記信号発生器は、1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置である。
【0019】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第9の態様は、第7の態様において、前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有する機能を持ったことを特徴とする。
【0021】
本発明の第10の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器とを備え、前記信号発生器は、特定の電圧を中心に互いに反転の関係にある第1出力信号、第2出力信号を出力する信号回路と、前記第2出力信号の振幅を調整する振幅調整回路と、前記第1出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、前記振幅調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路とを有することを特徴とする変調装置である。
【0022】
本発明の第11の態様は、第1、第2のデータを生成する信号発生器と、第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器とを備え、前記信号発生器は、直流オフセット電圧を含む第1出力信号と、直流オフセット電圧を中心に前記第1出力信号を反転させた第2出力信号とを出力する信号回路と、前記第1出力信号の直流オフセット電圧を調整する第1の直流オフセット調整回路と、前記第2出力信号の直流オフセット電圧を調整する第2の直流オフセット調整回路と、前記第1の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、前記第2の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路とを有することを特徴とする変調装置である。
【0023】
本発明の第12の態様は、第1乃至第11の態様のいずれかにおいて、前記信号発生器は、前記第1のデータ出力回路の振幅を調整する第3の振幅調整回路と、前記第2のデータ出力回路の振幅を調整する第4の振幅調整回路を有し、第1・第2データの振幅を等しく調整する構造を有していることを特徴とする。
【0024】
本発明の第13の態様は、第12の態様において、前記第3の振幅調整回路及び第4の振幅調整回路を含む信号発生器により、各データの振幅を所定の値に変化させることで、多値変調も可能であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第14の態様は、上記の第1乃至第13の態様のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするウルトラワイドバンド通信機である。
【0026】
本発明の第15の態様は、上記の第1乃至第13の態様のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするとするウルトラワイドバンド近距離レーダである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ローカル信号と逆相のローカル信号を、適切な2系統のデータとミキサにより変調し、それぞれの高周波送信信号を合成することで、ローカルリークは逆相合成により、高周波送信信号中のローカルリークが効率よく除去される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る変調装置を示す回路ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器から出力されるデータの第1例の信号波形図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る変調装置のローカル発振器から出力されるローカル信号の波形図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器の第1例を示す回路ブロック図である。
【図5】図5は、図4に示した信号発生器により処理されるデータの波形図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る変調装置の他の例を示す回路ブロック図である。
【図7】図7は、図6に示す回路ブロックの概略的な動作原理を示す簡略化した周波数スペクトル図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る変調装置におけるローカルリークキャンセル効果を示す特性図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器の第2例を示す回路ブロック図である。
【図10】図10は、図9に示した信号発生器により処理されるデータの波形図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態に係る変調装置の信号発生器の第3例を示す回路ブロック図である。
【図12】図12は、図11に示した信号発生器により処理されるデータの波形図である。
【図13】図13(a)は、本発明の実施形態に係る変調装置を構成する合成器に入力される2つの信号波形とその出力波形を示すタイムドメイン図、図13(b)は、それらの波形の周波数ドメイン図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態に係る変調装置における信号発生器の第4例を示す回路ブロック図である。
【図15】図15は、図14に示した信号発生器により処理されるデータの波形図と、その信号発生器の出力信号を2つのミキサを介して合成された信号波形図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態に係る変調装置における信号発生器の第5例を示す回路ブロック図である。
【図17】図17(a)、(b)は、図16に示す信号発生器における第1系統目のクロックと遅延線を通したクロックとを用いて波形成形されるデータ波形図である。
【図18】図18は、図16に示す信号発生器における第2系統目のクロックと遅延線を通したクロックを用いて波形成形されるデータ波形図である。
【図19】図19は、図16に示す信号発生器によって発生する第1のデータ信号の波形処理を示す波形図である。
【図20】図20は、図16に示す信号発生器によって発生する第2のデータ信号の波形処理を示す波形図である。
【図21】図21は、本発明の実施形態に係る変調装置における信号発生器の第6例を示す回路ブロック図である。
【図22】図22は、本発明の実施形態に係る4値位相変調を示す回路ブロック図である。
【図23】図23は、本発明の実施形態に係る多値振幅位相変調装置の第1例を示す回路ブロック図である。
【図24】図24は、本発明の実施形態に係る多値振幅位相変調による送信信号の変化の概略を示す波形図である。
【図25】図25は、本発明の実施形態に係る多値振幅位相変調装置のを示す回路ブロック図である。
【図26】図26は、本発明の実施形態に係る変調装置におけるローカル発振器の第1例を示す回路ブロック図である。
【図27】図27は、本発明の実施形態に係る変調装置におけるローカル発振器の第2例を示す回路ブロック図である。
【図28】図28は、図27に示すローカル発振器における逆相分配器の具体例を示す回路図である。
【図29】図29は、本発明の実施形態に係る変調装置における2つのミキサから出力されるローカルリーク信号の位相ズレとレベル差の違いによるローカルリークキャンセル効果を示す図である。
【図30】図30は、本発明の実施形態に係る変調装置のさらに別の例を示す回路ブロック図である。
【図31】図31は、従来の第1の変調装置を示す回路ブロック図とその周波数タイムドメイン図である。
【図32】図32は、従来の第2の変調装置を示す回路ブロック図とその周波数タイムドメイン図である。
【図33】図33は、従来の第3の変調装置を示す回路ブロック図とその周波数タイムドメイン図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る変調装置の回路ブロック図である。
【0030】
図1に示す変調装置は、第1のローカル信号(搬送波)f0を出力する第1ローカル信号出力部11と第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号−f0を出力する第2ローカル信号出力部12とを有するローカル発振器10と、第1のデータ信号D1を出力する第1のデータ出力部14と第2のデータ信号D2を出力する第2のデータ出力部15とを有する信号発生器13と、第1ローカル信号出力部11から出力される第1のローカル信号f0と第1データ出力部14から出力される第1のデータ信号D1を入力して第1のローカル信号f0を第1のデータ信号D1により変調する第1ミキサ(変調器)1と、第2ローカル信号出力部12から出力される第2のローカル信号−f0と第2データ出力部15から出力される第2のデータ信号D2を入力して第2のローカル信号−f0を第2データ信号D2により変調する第2ミキサ(変調器)2と、第1ミキサ1と第2ミキサ2から出力される変調信号を合成するとともにそれらの変調信号波に含まれる第1、第2のローカル信号f0、−f0のリーク成分f0’、−f0’を互いに打ち消して減衰させつつ高周波送信信号D1・f0とD2・−f0を加算して出力する合成器3とを有している。また、合成器3から出力された変調信号はアンテナ4から放射される。
【0031】
次に、本実施形態に係る変調装置の変調方式として2値位相変調、パルス変調、位相変調等を例に挙げて変調装置の動作を説明する。
【0032】
位相変調
まず、位相変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)を行う変調装置について説明する。
図1において、信号発生器13により生成される信号は、例えば第1のデータ出力部14から出力される第1のデータ信号D1を期間T1 で波高値VHigh、期間T2 で波高値VLowとなるパルス信号とし、第2データ出力部15から出力される第2のデータ信号D2を期間T1で波高値VLow、期間T2で波高値VHighとなるパルス信号とする。第1、第2のデータ信号D1,D2は直流オフセット電圧(コモン電圧:Vcom)を中心に等振幅(VHigh-Vcom=Vcom-VLow)となり、それぞれ対称に動作する差動信号である。
【0033】
ここで、信号発生器13から第1ミキサ1に入力する第1のデータ信号D1を図2(a)に示すように期間T1 で波高値VHigh、期間T2で波高値VLowとし、また、図3(a)に示すようにローカル発振器10の第1ローカル出力部11から出力されるローカル信号をβcos ωl t(β:振幅、ωl :角周波数、t:時間)とすると、第1ミキサ1においては第1のデータ信号D1によりローカル信号が変調されるので、期間T1、T2のそれぞれにおける第1ミキサ1からの出力信号Fm1(t)は次式(1)、(2)のようになる。
【0034】
Fm1(T1)=VHighβcos ωl t (時間T1) (1)
Fm1(T2)=VLowβcos ωl t (時間T2) (2)
【0035】
ここで、第1ローカル信号出力部11から第1ミキサ1の出力側へのローカルリークは、第1ミキサ1のアイソレーション性能に応じた減衰を受け、位相ズレが生じるので、ローカル周波数についての第1ミキサ1による減衰量をγ、位相量をδとすると、第1ミキサ1の出力側へのローカルリークは次式(3)のようになって、式(1)、(2)に加えられる。
【0036】
βγcos (ωl t+δ) (3)
【0037】
一方、信号発生器13から第2ミキサ2に入力する第2のデータ信号D2を図2(b)に示すように期間T1で波高値VLow、期間T2で波高値VHighとし、また、図3(b)に示すようにローカル発振器10の第2ローカル信号出力部12から出力されるローカル信号をβcos(ωlt+π)(β:振幅、ωl:角周波数、t:時間)とすると、第2ミキサ2においては第2のデータ信号D2によりローカル信号が変調されるので、期間T1、T2にそれぞれにおける第2ミキサ2からの出力信号Fm2(t)は次式(4)、(5)のようになる。
【0038】
Fm2(T1) =VLowβcos (ωlt+π)
=−VLowβcos ωlt (時間T1) (4)
Fm2(T2) =VHighβcos (ωlt+π)
=−VHighβcos ωlt (時間T2) (5)
【0039】
ここで、第2のローカル出力部12から第2ミキサ2の出力側へのローカルリークは、第2ミキサ2のアイソレーション性能に応じた減衰を受け、位相ズレが生じるので、ローカル周波数についての第2ミキサ2による減衰量をγ、位相量をδとすると、ローカルリークは次式(6)のようになって、式(4)、(5)に加えられる。
【0040】
βγcos (ωlt+π+δ)
=−βγcos (ωlt+δ) (6)
【0041】
以上のような関係から、第1ミキサ1と第2ミキサ2の出力信号を合成器3により加算すると、式(1)〜(6)の関係から、合成器3の出力Fc(t) は次式(7)、(8)のようになる。
【0042】
Fc(T1)=(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T1) (7)
Fc(T2)=−(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T2) (8)
【0043】
通常、第1ミキサと第1のデータ信号D1のみで変調する場合には、データ信号の振幅は(VHigh−VLow)÷2となり、出力も((VHigh−VLow)÷2)βcosωltとなる。本方式を用いた場合は合成器3から出力される信号は、振幅が2倍となる。一方で、第1、第2ローカル信号出力部11,12のそれぞれから合成器3の出力側に流れるローカルリークは互いに逆相関係となって合成されるために合成器3から出力されない。
【0044】
以上により、アンテナ4から送信される高周波送信信号F(T)は、次式(9)、(10)のように送信信号として有効な成分のみとなる。
【0045】
F(T1)=(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T1) (9)
F(T2)=−(VHigh−VLow)βcos ωlt (時間T2) (10)
【0046】
図1に示す変調装置の信号発生器13における第1のデータ信号D1 、第2のデータ信号D2 の生成方法としては、直流オフセット電圧を中心にして等振幅で対称に動作する差動信号を生成し、差動信号の各ポートの信号をシングルエンドとして取り出す方法を用いても良い。差動信号の規格には、RS−422、PECL(PHP Extension Community Library)、LVDS(Low-Voltage Deferential Signaling)などがあるが、いずれに規格に準拠する信号でも良い。また、それらの規格以外の信号でも良い。
【0047】
また、2値位相変調用データとして、例えば図4に示すように差動信号をAC結合したものを用いても良い。
図4において、差動信号発生回路16の出力側の第1、第2ポート16a,16bのそれぞれに直流オフセット電圧カット回路17,18を介して第1、第2のデータ出力部14,15に作動信号を出力する構成が採用される。
【0048】
図5(a)に示すように、差動信号発生回路16の第1ポート16aから出力される信号は直流オフセット電圧を含む第1出力信号であり、また、第2ポート16bから出力される信号は直流オフセット電圧を中心に第1出力信号を反転した第2出力信号である。
そして、直流オフセット電圧カット回路17,18により直流オフセット電圧成分がカットされた第1出力信号、第2出力信号は図5(b)に示すように互いに符号反転したバイポーラ信号波形になり、それぞれ第1、第2のデータ出力部14,15に出力される。
【0049】
このようにAC結合することによってデータ信号が電圧低下や、周波数特性の変化などの影響を受けるが、ミキサ1,2の動作点を最大VHighから(VHigh -VLow)÷2まで下げることが可能である。また、データ信号がミキサ1,2のRFポートにリークする分についてもキャンセルする効果も得られる。
【0050】
次に、1つのローカル信号を用いることによりローカルリークをキャンセルする回路について説明する。
例えば、図6の回路ブロック図に示すように、ローカル発振器10からの同相の2つのローカル信号を第1、第2ミキサ1,2にそれぞれ入力するとともに、信号発生器13における第1、第2データ出力部14,15のそれぞれのデータ信号を第1、第2ミキサ1,2に入力して高周波送信信号を生成し、第1、第2ミキサ1,2のそれぞれの出力信号を逆相合成器8により逆位相にて合成することにより、高周波送信信号中に含まれるローカル信号の成分を減衰させつつ、高周波送信信号を倍増して出力してもよい。
【0051】
そのような構成により得られる概略的な動作原理の周波数スペクトルを図7に示す。
図8において、逆相合成器8は逆相分配器の入出力を反転すればよい。ただし、逆相合成器8には周波数特性があり、ローカル周波数で逆相になるものを採用する。同様に、逆相合成器8の周波数特性から逆相合成されるとみなせるのは、ローカル周波数近傍に限られるため、同相合成される(逆相信号を逆相合成するので、結果的に同相合成)高周波送信信号については比較的狭帯域な信号に限定される。
【0052】
位相変位変調(PSK)について、ローカルリークキャンセル回路がある場合と無い場合を比較したところ、図8に示すような効果が得られた。図8(a)は、従来のローカルリークキャンセル回路が無い変調装置を用いた場合にローカル信号と同じ周波数1GHzにレベルの高いローカル(LO)リークが存在する。これに対し、図8(b)は、本実施形態のローカルリークキャンセル回路を有する変調装置であり、ローカル信号と同じ周波数1GHzに低レベルのLOリークが存在し、LOリークの低減効果があることがわかる。
【0053】
パルス変調
次に、パルス変調を行う変調装置の一例を図9を参照して説明する。
図9において、特定の電圧を中心に反転した信号を送信する構造を有する差動信号発生回路16の出力側の第1、第2ポート16a,16bの信号をシングルエンドとして取り出す場合に、例えば、第1ポート16aを第1のデータ出力部14にそのまま出力するとともに第2ポート16bの出力をレベル調整器26によりx倍して第2のデータ出力部15に出力する構成を採用する。
これにより、図1において第2ミキサ2から出力される信号Fm2(t)は次式(11)、(12)となる。
【0054】
Fm2(T1)=xVLow βcos (ωl t+π)=−xVLow βcos ωl t
(11)
Fm2(T2)=xVHighβcos (ωl t+π)=−xVHighβcos ωl t
(12)
【0055】
また、第1ミキサ1から出力される信号Fm1(t)は上記の式(1)、(2)となるので、時間T1 、T2における合成器3の出力は、次式(13)、(14)のようになる。
【0056】
FC(T1) =(VHigh−xVLow )βcos ωl t (13)
FC(T2) =(VLow −xVHigh)βcos ωl t (14)
【0057】
期間T1 のみパルス出力されるように調整すると、x=VLow /VHighの場合には合成器3の出力は次式(15)、(16)のようになり、パルス変調信号が得られる。
【0058】
FC(T1) =(VHigh−((VLow)2/VHigh))βcos ωl t (15)
FC(T2) =0 (16)
【0059】
ユニポーラ信号の通常の方式でパルス変調する場合、データの振幅は(VHigh−VLow)となるが、下式(17)が成立するので、本実施形態による方式を用いることによりローカルリークをキャンセルする効果が得られるだけでなく、所望の信号については増幅効果が得られる。
【0060】
(VHigh−VLow )<(VHigh−((VLow)2/VHigh)) (17)
【0061】
高レベル値をVHigh、xVHigh、低レベル値をVLow、xVLowとした波形のパルス変調用データは、例えば図9に示すように差動信号発生回路を用いて作成される。図9において、差動信号発生回路16の出力側の第1のポート16aは第1データ出力部14に出力され、第2のポート16bは振幅調整器26を介して第2データ出力部15に出力される。
【0062】
差動信号発生回路16から出力される信号は、図10(a)に示すように直流オフセット電圧を含む高レベル値VHigh、低レベル値VLowの第1出力信号と、直流オフセット電圧を中心に第1の出力信号を反転した第2出力信号であり、第1出力信号は第1ポート16aに出力され、第2出力信号は第2ポート16bに出力される。また、第2ポート16bから出力される第2出力信号は、図10(b)に示すように、振幅調整器26によってx倍されて高レベル値xVHigh、低レベル値xVLowに振幅調整され、直流オフセット電圧もx倍されて第2のデータ出力部15に出力される。
【0063】
また、パルス変調用データとして、例えば図11に示すように差動信号の直流オフセット電圧を調整する構造を採用しても良い。
図11において、差動信号発生回路16の出力側の第1ポート16aと第1のデータ出力部14の間、および第2ポート16bと第2のデータ出力部15の間のそれぞれには直流オフセット調整回路24,25介在されている。
これにより、図12(a)に示すように、差動信号発生回路16の第1ポート21aからは直流オフセット電圧を含む第1出力信号が出力され、第2ポート21bからは直流オフセット電圧を中心に第1出力信号を反転させた第2出力信号が出力される。
【0064】
直流オフセット調整回路24,25によって直流オフセット電圧が別々に調整された第1出力信号、第2出力信号は図12(b)に示すように互いに符号反転したユニポーラ信号波形になり、それぞれ第1、第2のデータ出力部14,15を介してミキサ1,2に出力される。
そのような直流オフセット電圧を調整することにより、データ信号が電圧低下や、周波数特性の変化などの影響を受けるが、パルス変調信号の振幅を(VHigh -VLow)×2まで高めることが可能である。
【0065】
図13には、図1に示した回路によりローカル信号をパルス変調したときの概略的な動作原理を示す。図13(a)のタイムドメイン図に示すようにパルスがオン時のデータの振幅は合成器3により倍増し、オフ時のローカルリークは逆相の合成により抑制される。また、オン時にもデータの振幅にはローカルリークが含まれているがこれも互いの逆相の合成により抑制される。また、図13(b)に周波数ドメイン図を示すが、第1、第2ミキサ1,2の出力は、高周波送信信号が全て同相であり、ローカルリークf0 のみが逆相となるために、データ信号は無駄なく使用される。
【0066】
パルス位相変調信号
次に、差動信号を2系統用意し、信号を組合せることによりパルス位相変調を行うことを説明する。
図14は、パルス位相変調を行うための信号発生器13の構成を示す回路ブロック図である。
【0067】
図14において、信号発生器13は、第1差動信号発生回路31と第2差動信号発生回路32を有している。第1差動信号発生回路31において、第1出力ポート31aから出力される信号S1と第2出力ポート31bから出力される信号N1はコモン電圧を中心に信号S1を反転した関係にある。第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aから出力される信号S2と第2出力ポート32bから出力される信号N2もコモン電圧を中心にS2を反転した関係にある。
【0068】
また、第1差動信号発生回路31の第1出力ポート31aから出力される信号S1と第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aから出力される信号S2は、それぞれ送信信号の正相パルスと逆相パルスに対応しており、パルスを出力する期間だけVHighとVLowが入れ替わる。なお、それぞれの信号は図15(a)の左と右に示すように同期が取れている。
【0069】
第1差動信号発生回路31の第1出力ポート31aは第1合成器33の第1入力端に接続され、第2出力ポート31bは第1振幅調整器35を介して第2合成器34の第2入力端に接続されている。第1振幅調整器35は、図15(b)の左側に示すように、第1差動信号発生回路31の第2出力ポート31bから出力される信号N1の振幅及び直流オフセット電圧成分をx倍した波形にする。
【0070】
また、第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aは第2合成器34の第1入力端に接続され、第2出力ポート32bは第2振幅調整器36を介して第1合成器33の第2入力端に接続されている。第2振幅調整器36は、図15(b)の右側に示すように、第2差動信号発生回路32の第2出力ポート32bから出力される信号N2の振幅及び直流オフセット電圧成分をx倍した波形にする。
【0071】
第1合成器33は、第1差動信号発生回路31の第1出力ポート31aと第2振幅調整器36から出力された信号を合成して第1のデータ出力部14に出力するように構成されている。また、第2合成器34は、第2差動信号発生回路32の第1出力ポート32aと第1振幅調整器35から出力された信号を合成して第2のデータ出力部15に出力するように構成されている。即ち、第1、第2合成回路33,34は、第1、第2差動信号発生回路31,32の第2出力ポート31b、32bのそれぞれから出力される信号N1、N2を第1、第2振幅調整器35,36を介してx倍した後に互いに入れ替えて信号S1、S2とは異なる合成器に入力するようになっている。
【0072】
これにより、第1合成回路33から出力される信号は図15(c)の左側のような波形となり、第2合成回路34から出力される信号は図15(c)の右側のような波形となる。
なお、第1、第2振幅調整器35,36の倍率xは、所望の期間 のみパルス出力されるようにx=VLow /VHighに調整する。
【0073】
第1合成回路33から出力された信号は図15(d)の左側に示す波形となって第1のデータ出力部14から図1に示す第1ミキサ1に出力され、また、第2合成回路34から出力された信号は図15(d)の右側に示す波形となって第2のデータ出力部15を介して第2ミキサ2に出力される。
【0074】
図1に示す第1ローカル信号出力部11から第1ミキサ1に入力するローカル信号をsinωtとし、第2ローカル信号出力部12から第2ミキサ2に入力するローカル信号をsin(ωt+π)とする。
従って、第1ミキサ1と第2ミキサ2のそれぞれの出力側のローカルリークは合成器3において互いにキャンセルされる。また、合成器3により合成された変調信号は、図15(e)に示すように、信号S1とx倍された信号N2を合成した正相信号と、信号S2とx倍された信号N1を合成した逆相信号が休止時間を挟んでアンテナ4に伝送される。
【0075】
短いパルスによるパルス変調
次に、クロックのパルス幅を調整してパルス幅を調整して短いパルスとした信号発生器13について図16を参照して説明する。
図16において、クロック発振器40は、第1分配器41を介して第2、第3の分配器42,43に接続されている。
【0076】
第2の分配器42の第1出力端は、第1遅延線44を介して第1比較器46の基準信号端(ref)に接続され、また、第2出力端は第1スイッチ45の「1」入力端に接続されている。第1スイッチ45は、データ回路50から第4の分配器51を介して入力したデータ信号によって、「1」入力端のクロックを制御して第1比較器46の信号端(signal)へ出力するように構成されている。なお、第1スイッチ45の「0」入力端は接地電位となっている。
【0077】
第1比較器46は、例えば図17(a)に示すように、第1遅延線44により所望のパルス幅Δtだけ遅延された遅延クロック信号と、第1スイッチ45から出力されたデータのクロック信号を入力し、さらに、閾値と信号の関係から、図17(b)の実線で示すように、遅延クロック信号に比べてクロック信号のレベルの高い時間のみ高レベルとなる信号を第1ポート46aから出力する。また、第1比較器46の第2ポート46bからは、第1ポート46aからの出力信号と等振幅であって振幅中心で反転した反転信号を出力するように構成されている。
なお、データの切り替えで比較器46,49の閾値が固定になると、その出力も固定になる。
【0078】
第3の分配器43の第1出力端は、第2遅延線47を介して第2比較器49の基準信号端(ref)に接続され、また、その第2出力端は第2スイッチ48の「0」入力端に接続されている。第2スイッチ48は、データ回路50から第4の分配器51を介して入力したデータ信号によって、「0」入力端のクロックを制御して第2比較器49の信号端(signal)へ出力するように構成されている。なお、第2スイッチ38の「1」入力端は接地電位となっている。
【0079】
第2比較器49は、例えば図18(a)に示すように、第2遅延線47により所望のパルス幅Δtだけ遅延された遅延クロック信号と、第2スイッチ48から出力されてデータ回路50からのデータ信号の「0」,「1」が逆転したクロック信号を入力し、さらに、閾値と信号の関係から、図18(b)の実線で示すように、遅延クロック信号に比べてクロック信号のレベルの高い時間のみ高レベルとなる信号を第1ポート49aから出力する。また、また、第2比較器49の第2ポート49bからは、第1ポート49aからの出力信号と等振幅であって振幅中心で反転した反転信号を出力するように構成されている。
【0080】
第1比較器46の第1出力ポート46aは第1合成器33の第1入力端に接続され、第2比較器49の第1出力ポート49aは第2振幅調整器36を介して第1合成器33の第2入力端に接続されており、第1合成器33の出力は第1のデータ出力部14に出力される。
また、第2比較器49の第2出力ポート49bは第2合成器34の第1入力端に接続され、第1比較器46の第2出力ポート46bは第1振幅調整器35を介して第2合成器34の第2入力端に接続されており、第2合成器34の出力は第2のデータ出力部15に出力される。
第1、第2振幅調整器35,36、第1、第2合成器33,34の信号処理は、図14、図15(a)〜(c)に基づいて行う信号処理と同様に、図19、図20に示す波形のようになる。
【0081】
ところで、図21に示すように、第1遅延線44の出力端と第1比較器46の基準端(Ref)の間に第1スイッチ45を介在させるとともに、第2分配器42の第1出力ポートを直に第1比較器46の信号端(signal)に接続し、さらに、第2遅延線47の出力端と第2比較器49の基準端(Ref)の間に第2スイッチ48を介在させるとともに、第3分配器43の第1出力ポートを直に第2比較器49の信号端(signal)に接続してもよい。この場合、第1遅延線44の出力端は第1スイッチ45の「1」入力端に接続され、第2遅延線47の出力端は第2スイッチ48の「0」入力端に接続される。なお、第1スイッチ45の「0」入力端と第2スイッチ48の「1」入力端には、出力を固定とするための閾値にするためクロック信号の波高値よりも大きな電圧+Vが印加されている。
【0082】
QPSK変調
次に、本変調装置で4値位相変調(QPSK:quadrature phase shift keying)する方式、例えば、図22に例示するように、変調装置を2系統用いるQPSKについて説明する。
第1・第2の変調装置Q,Iはそれぞれ、「位相変調」のところで説明したものと同じものでも良い。第1の変調装置Qの第1のローカル信号出力部11からcos ωtを出力させ、第1の変調装置Qの第2のローカル信号出力部12からcos (ωt+π)を出力させるとともに、第2の変調装置Iの第1のローカル信号出力部11からsin ωtを出力させ、第2の変調装置Iの第2のローカル信号出力部12からsin (ωt+π)を出力させる。なお、ローカル発振器10を第1・第2の変調装置Q,Iで共用することで、一つのローカル発振器10からcos ωt、cos (ωt+π)、sin ωt、sin (ωt+π)を出力させても良い。
そして、第1、第2の変調装置Q,Iの出力を合成器60により合成してアンテナ4に出力することによりQPSK変調が可能になる。また、「パルス位相変調」のところで説明した変調装置を用いることで、パルスQPSK変調も可能である。なお、図22中、符号61は原発信器、62は位相調整器を示している。
【0083】
多値振幅位相変調
次に、本変調装置で多値振幅位相変調する方式について説明する。
図23に示すように、信号発生器13の第1のデータ出力部27と第2のデータ出力部15はそれぞれ第1の振幅調整器27と第2の振幅調整器28に接続され、同じ倍率で振幅調整される。第1の振幅調整器27の第1の出力信号D1’と第2の振幅調整器28の第2の出力信号D2’は、それぞれ第1ミキサ1と第2ミキサ2に接続される。第1のローカル信号f0 と第1の出力信号D1’、第2のローカル信号−f0 と第2の出力信号D2’により変調された変調信号は、合成器3で合成されアンテナ4から放射される。
【0084】
図24は、「パルス位相変調信号」のところで説明した変調装置について、振幅調整器27,28の有無による送信信号の変化の概略を示している。
図24(a)は振幅調整器27,28が無い場合の送信信号波形であり、図24(b)は振幅調整器27,28により、例えば振幅が0.5倍された場合の送信信号波形を示す。これにより、信号発生器13の出力信号の振幅を調整することで、送信信号の振幅を調整することができる。
【0085】
例えば、図25に示すように、振幅調整器27,28を備えた信号発生器13を含む変調装置により、送信信号を多値化することにより多値振幅位相変調、例えば16QAM変調を行うことができる。第1のQPSK変調装置Q,Iと第2のQPSK変調装置Q’,I’のうち第2のQPSK変調装置Q’,I’の信号発生器13には振幅調整器27,28が含まれている。振幅調整器27,28により第1のQPSK変調装置Q,Iの信号発生器13の出力と第2のQPSK変調装置Q’,I’の信号発生器13の出力との振幅比が、1:3になるよう調整する。これにより、第1・第2のQPSK変調装置Q,I、Q’,I’の出力を合成器60により合成してアンテナ4に出力することにより16QAM(quadrature amplitude modulation)変調が可能になる。また、信号発生器のデータの種類によってはパルス16QAM変調も可能である。
さらに、必要に応じて振幅・位相の値を変更した多値振幅位相変調器を構成しても良い。
【0086】
ローカル信号発生器
次に、ローカル信号発生器10において正相・逆相の関係にある第1、第2のローカル信号を生成する方式について説明する。
第1の方式として、互いに逆位相となる第1、第2のローカル信号を1つの共振器により互いに逆相で発信する2つの異なる原発振器より生成する構成を採用する。
第2の方式として、図26に示すように2つの共振器が協調動作している1つの原発振器9から2系統取り出す構成を採用する。この場合、第2ローカル信号出力部12では逆相処理が行われる。また、2系統取り出す方法としては、その他に、1つの共振器を共用した2系統のローカル信号を作る方法を採用しても良いし、無安定マルチバイブレータのような、2つの共振器を協調動作させているものから2出力を取り出す方式などでも良い。
【0087】
第3の方式として、第1、第2の方式のように互いに逆位相となるローカル発振器を2つ使用するのではなく、図27に示すように1つの原発振器9からの源信号を逆相分配器7を介して第1、第2ローカル信号出力部11,12に出力して、互いに逆相のローカル信号を出力する構成を採用する。
【0088】
逆相分配器7には180度ハイブリッドなどが適しており、例えば、低周波帯信号では図28(a)に示すようなトランス方式があり、また、高周波帯信号で平面回路とする場合には図28(b)に示すようなラットレース方式があり、また、立体回路(導波管回路)の場合はマジックT方式(図示せず)などが挙げられる。また、2分配回路と位相遅延回路を単純に組み合わせたもの(図示せず)でも良い。
【0089】
ローカル周波数については可変にしてもよい。
例えば、正相・逆相のローカル信号を生成する方式のうちの第1、第2の方式において、それぞれのローカル信号について正相・逆相の関係を維持しつつ、ローカル発振器の周波数を可変動作させても良い。これにより、周波数多重通信のように通信ごとに周波数が変化する方式や、スペクトル拡散の周波数ホッピング方式などで本発明の変調装置を用いた場合に、各周波数においてローカルリークをキャンセルする効果と、高周波送信信号を増幅する効果が得られる。
【0090】
また、正相・逆相のローカル信号を生成する第3の方式においても、ローカル発振器の周波数を可変動作させても良い。なお、ローカル発振器の周波数に対して可変周波数幅が小さい場合には、逆相相殺・同相合成の効果は十分得られるが、周波数可変幅を広く取る場合や、逆相相殺・同相合成の効果を最大限利用する場合には、逆相分配器を周波数変化と連動できる可変型にしておくか、位相・振幅調整器により、周波数変化と連動して、位相・振幅を調整してもよい。
【0091】
次に、変調装置の構成部品にバラつきなどがある場合の調整機能について説明する。
第1、第2ミキサ1,2に同一の部品を使用した場合でも、部品のバラツキによってローカル発振器10から第1、第2ミキサ1,2の出力端への通過特性(通過位相、アイソレーション)にはバラツキが発生する可能性がある。
【0092】
また、ローカル発振器10において第1、第2ローカル信号出力部11,12のそれぞれから出力されるローカル信号も特性バラツキによって、位相差、出力レベルに差が発生する可能性がある。位相・振幅のズレによるキャンセル効果劣化について図29に示す。180度からの位相差が0度で、かつ出力レベルの差が0dBのとき、ローカルリークのキャンセル効果は無限大(∞)で最もよい。テーブル内の数値は大きいほどキャンセル効果が大きい。位相差5度(180+5度)、振幅差0.5dBではキャンセル効果は19.9dB程度に劣化し、高周波送信信号の同相合成効果3dBを加えて、トータル23dBの効果となる。
【0093】
そこで、キャンセル効果を高めたい場合は、部品のバラツキを吸収するために、図30に示すように、第1ローカル信号出力部11と第1ミキサ1の間に第1の位相・振幅調整機5を接続するとともに、第2ローカル信号出力部12と第2ミキサ2の間に第2の位相・振幅調整機6を接続してもよい。
また、図6に示したような、同相の2つのローカル信号を出力するローカル発振器10と第1ミキサ1、第2ミキサ2のそれぞれの間に位相・振幅調整器5,6を接続してもよい。
なお、追加する位置としては、ローカル発振器10とミキサ1,2の間でも、ミキサ1,2と合成器3の間のどちらでも構わない。また、第1、第2の位相・振幅調整器5,6は、2つのミキサ1,2が介在するいずれか一方の経路への追加だけでも構わない。
【0094】
但し、変調信号が広帯域信号となる場合には、広帯域に渡って均一な周波数特性を持つ位相・振幅調整器の実現が困難であるので、特定周波数の位相・振幅調整をローカル発振器10とミキサ1,2の間に追加する方が望ましい。また、調整用にレベル検出器などを追加しても良い。なお、同様の理由から信号発生器13とミキサ1,2の間に位相・振幅調整器を追加しても良い。この方法は、上記した正相・逆相のローカル信号を生成するいずれの方式にも適用可能である。
【0095】
上記の変調装置は、ウルトラワイドバンド(UWB)通信や、UWB近距離レーダ(SRR)などに適用される。
以上述べたように本発明によれば、ローカル信号と逆相のローカル信号を、適切な2系統のデータとミキサにより変調し、それぞれの高周波送信信号を合成することで、ローカルリークは逆相合成により、高周波送信信号中のローカルリークが効率よく除去される。
また、副次的効果として、放射電力の規格に対してローカルリーク信号で制約されることがなくなり、放射電力の効率化にもつながる。あるいは、高周波送信信号は同相合成され増幅効果があるため、さらにローカルリーク対高周波送信信号比が改善される。
【0096】
さらに他の副次的効果として、データ信号に逆相信号を用いる場合は、データ信号がミキサを通過するデータリークについても、逆相合成することによりミキサのアイソレーションも改善する効果が得られる。これによりデータ信号リークを除去するフィルタが不要となるので、データ信号周波数と高周波送信信号が重なるような周波数配置も設定することが可能となる。
【0097】
また、本発明によれば、同一の部品(ミキサ)を、逆相の同じ信号・同じ波形(ローカル・データ)で使用するといった対称動作により生成した信号を逆相で合成するので、無調整でローカルリークのキャンセル効果が得られる。また必要に応じて部品バラツキを吸収するための位相・振幅を調整することで、さらにキャンセル効果を向上させることも可能である。さらに、同じ部品を対称動作させているため、温度・湿度等の動作環境、信号レベル、信号波形といった動作条件の変化による特性変動も少ない。
また、本発明によれば、本来ローカルリークと等しい無変調信号の原因となる直流オフセット電圧の影響をうけないため、信号発生器としてディジタル信号回路で広範囲に用いられている、高速差動信号を直接接続することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
1、2:ミキサ
3:合成器
4:アンテナ
5,6:位相・振幅調整器
7:逆相分配器
8:逆相合成器
9:原発振器
10:ローカル発振器
11:第1ローカル信号出力部
12:第2ローカル信号出力部
13:信号発生器
14:第1のデータ出力部
15:第2のデータ出力部
16:作動信号回路
17,18;直流カット回路
24,25:直流オフセット回路
26:レベル調整器
27,28:振幅調整器
31,32:作動信号回路
33,34:合成器
35,36:振幅調整回路
40:クロック発振器
41〜43:分配器
44,47:遅延線
45,48:スイッチ
46,49:比較器
50:データ回路
51:分配器
60,60a,60b,60c:合成器
61:原発振器
62:位相調整器
Q,Q’,I,I’:変調装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器と
を備え、
前記信号発生器は、
1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、
前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、
前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、
前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置。
【請求項2】
前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、
前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項3】
前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する前記ローカル発振手段は、一つの共振器により互いに逆相で発振する2つの発振器を有することを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項4】
前記ローカル発振手段は、2つの共振器が協調動作している1つの発振器から、互いに逆相となる前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項5】
前記ローカル発振手段は、1つの発振器から逆相分配器により前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生させる構造を有することを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項6】
前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の変調装置。
【請求項7】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と、該第1のローカル信号と同相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1のデータと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1、第2の変調器で発生した変調波を逆相で合成する逆相合成器と
を有し、
前記信号発生器は、
1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、
前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、
前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、
前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置。
【請求項8】
前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、
前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする請求項7に記載の変調装置。
【請求項9】
前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有する機能を持ったことを特徴とする請求項7に記載の変調装置。
【請求項10】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器と
を備え、
前記信号発生器は、
特定の電圧を中心に互いに反転の関係にある第1出力信号、第2出力信号を出力する信号回路と、
前記第2出力信号の振幅を調整する振幅調整回路と、
前記第1出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、
前記振幅調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路と、を有することを特徴とする変調装置。
【請求項11】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器と
を備え、
前記信号発生器は、
直流オフセット電圧を含む第1出力信号と、直流オフセット電圧を中心に前記第1出力信号を反転させた第2出力信号とを出力する信号回路と、
前記第1出力信号の直流オフセット電圧を調整する第1の直流オフセット調整回路と、
前記第2出力信号の直流オフセット電圧を調整する第2の直流オフセット調整回路と、
前記第1の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、
前記第2の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路と、を有することを特徴とする変調装置。
【請求項12】
前記信号発生器は、
前記第1のデータ出力回路の振幅を調整する第3の振幅調整回路と、
前記第2のデータ出力回路の振幅を調整する第4の振幅調整回路を有し、第1・第2データの振幅を等しく調整する構造を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の変調装置。
【請求項13】
前記第3の振幅調整回路及び第4の振幅調整回路を含む信号発生器により、各データの振幅を所定の値に変化させることで、多値変調も可能である請求項12に記載の変調装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするウルトラワイドバンド通信機。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするウルトラワイドバンド近距離レーダ。
【請求項1】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器と
を備え、
前記信号発生器は、
1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、
前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、
前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、
前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置。
【請求項2】
前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、
前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項3】
前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する前記ローカル発振手段は、一つの共振器により互いに逆相で発振する2つの発振器を有することを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項4】
前記ローカル発振手段は、2つの共振器が協調動作している1つの発振器から、互いに逆相となる前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生する構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項5】
前記ローカル発振手段は、1つの発振器から逆相分配器により前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号を発生させる構造を有することを特徴とする請求項1に記載の変調装置。
【請求項6】
前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の変調装置。
【請求項7】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と、該第1のローカル信号と同相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1のデータと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1、第2の変調器で発生した変調波を逆相で合成する逆相合成器と
を有し、
前記信号発生器は、
1つのクロック信号から分配器により第1のクロック信号と第2のクロック信号を発生させる分配器と、
前記第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する遅延量を調整する遅延回路と、
前記第1のクロック信号と前記遅延回路の出力信号の振幅を比較する比較器を有し、
前記遅延量に相当し、前記クロック信号に比べて短い信号を生成する構造を有していることを特徴とする変調装置。
【請求項8】
前記信号発生器は、前記遅延回路と前記比較器の間に介在するスイッチを更に有し、
前記スイッチには前記クロック信号より大きな電圧が印加されていることを特徴とする請求項7に記載の変調装置。
【請求項9】
前記第1のローカル信号と前記第2のローカル信号の位相・振幅を調整する位相・振幅調整手段を有する機能を持ったことを特徴とする請求項7に記載の変調装置。
【請求項10】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器と
を備え、
前記信号発生器は、
特定の電圧を中心に互いに反転の関係にある第1出力信号、第2出力信号を出力する信号回路と、
前記第2出力信号の振幅を調整する振幅調整回路と、
前記第1出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、
前記振幅調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路と、を有することを特徴とする変調装置。
【請求項11】
第1、第2のデータを生成する信号発生器と、
第1のローカル信号と該第1のローカル信号と逆相の関係にある第2のローカル信号を発生するローカル発振手段と、
前記第1データと前記第1のローカル信号から変調波を発生する第1の変調器と、
前記第2データと前記第2のローカル信号から変調波を発生する第2の変調器と、
前記第1の変調器と前記第2の変調器で発生した変調波を合成する合成器と
を備え、
前記信号発生器は、
直流オフセット電圧を含む第1出力信号と、直流オフセット電圧を中心に前記第1出力信号を反転させた第2出力信号とを出力する信号回路と、
前記第1出力信号の直流オフセット電圧を調整する第1の直流オフセット調整回路と、
前記第2出力信号の直流オフセット電圧を調整する第2の直流オフセット調整回路と、
前記第1の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第1のデータを出力する第1のデータ出力回路と、
前記第2の直流オフセット調整回路の出力信号に基づいて前記第2のデータを出力する第2のデータ出力回路と、を有することを特徴とする変調装置。
【請求項12】
前記信号発生器は、
前記第1のデータ出力回路の振幅を調整する第3の振幅調整回路と、
前記第2のデータ出力回路の振幅を調整する第4の振幅調整回路を有し、第1・第2データの振幅を等しく調整する構造を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の変調装置。
【請求項13】
前記第3の振幅調整回路及び第4の振幅調整回路を含む信号発生器により、各データの振幅を所定の値に変化させることで、多値変調も可能である請求項12に記載の変調装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするウルトラワイドバンド通信機。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれかに記載の変調装置を用いることを特徴とするウルトラワイドバンド近距離レーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2011−61824(P2011−61824A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233904(P2010−233904)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2005−205965(P2005−205965)の分割
【原出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2005−205965(P2005−205965)の分割
【原出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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