説明

外壁板固定金具、この固定金具を用いた外壁の施工方法、およびこの固定金具を用いた外壁板の固定構造

【課題】 外壁板の目地等の表面に現れる模様を柱芯に合わせて意匠性を高め、どのような幅の柱にも確実かつ容易に取り付けることを可能とし、外壁の仕上がり面を均一に揃えることを可能とする。
【解決手段】 基板部2は、壁下地への取付面21を有するとともにこの取付面21に止着孔22が穿設されている。スライド部材3は、基板部2の取付面21の前面に沿ってスライド可能に設けられ、壁下地に固定される固定板部31の三方に、対向する一対のガイド板部33と、これらのガイド板部33に直交する実受け部34とを備える。そして、スライド部材3の実受け部34の一側面において、一方の外壁板の側縁部を挟持するようにスライド部材3をスライドさせ、前記外壁板を保持した状態でスライド部材3の固定板部31が壁下地に固定される。また、この実受け部34の他側面において、他方の外壁板の側縁部を挟持して外壁板が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁板固定金具、この固定金具を用いた外壁の施工方法、およびこの固定金具を用いた外壁板の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、窯業系サイディング材等の外壁板を建物の躯体に施工する方法として、外壁板の長手方向を上下方向に合わせて張り付ける縦張り工法と、外壁板の長手方向を水平方向に合わせて張り付ける横張り工法とが多用されている。
【0003】
このうち、縦張り工法では、壁下地に横胴縁を配設して外壁板を釘固定したり、横胴縁に止め金具を用いて外壁板を固定したり、柱を下地として横胴縁を入れずに外壁板を止め金具で固定するなどの手法がとられていた。
【0004】
しかし、縦張り工法において横胴縁を用いると、壁下地に多くの横材を配設することになり、設備配管等の貫通穴を開設するのに横材を避けて計画しなければならなくなったり、あるいは横材にも貫通穴を設けなければならなくなったりするという問題点があった。
【0005】
また、外壁板を固定する釘が表面に現れて意匠性に劣るという問題点や、横材を使用しない部分との外壁板の仕上がり面を面一に揃えることができないという問題点もあった。
【0006】
例えば、特許文献1には、外壁板を縦張り工法によって取り付けるための留め金具の技術について開示されている。この留め金具は、壁下地に当てがわれる基板の両側縁に形成した起立片の長さ方向中央から基板が折曲されて突設片が設けられ、この突設片の表裏に折り返された止着用爪片が外壁板の接合段部に係合するようになっている。また、基板は一部斜面になって形成されており、卵形状の釘孔が穿設されて、ビスを強く締め付けたときビス頭から釘孔に加えられる圧縮力と斜面傾斜方向の力の両作用によって、金具が外壁板へ締め付けるように意図されている。
【特許文献1】特開2002−138646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来例の留め金具の場合は、外壁板の意匠目地等の表面模様を柱芯に合わせると、金具の固定位置が柱芯から外れたり、柱の端空き寸法が不足したりするなどの不都合を生じると考えられる。また、これを避けるために外壁板の位置を柱からずらすと、外壁板の表面模様と柱芯とがずれてしまい、意匠性に劣る仕上がりになるという問題点もある。
【0008】
また、外壁板の側縁部に金具を引っ掛けて仮支持させ、この状態で柱や胴縁等の下地材に留め金具を固定するが、作業中に手を放すと留め金具が落下することもあるため施工性が低下するという不都合もあった。さらに、前記従来例に開示されているように、柱に対して釘を留め金具を介して斜め打ちする場合、その強度基準が不明確であり、信頼性に欠けるものとなってしまう。
【0009】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、外壁板の目地等の表面に現れる模様を柱芯に合わせて意匠性を高められるように配慮しつつ、どのような幅の柱にも確実かつ容易に取り付けることを可能とし、外壁の仕上がり面を均一に揃えることが可能な外壁板固定金具を提供するとともに、この固定金具を用いた外壁の施工方法、およびこの固定金具を用いた外壁板の固定構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、複数枚の外壁板を壁下地に隣接させて固定して壁面を形成するための外壁板固定金具であって、壁下地への取付面を有するとともにこの取付面に止着孔が穿設されている基板部と、この基板部の取付面の前面に沿ってスライド可能に設けられるスライド部材を有し、スライド部材は、壁下地に固定される固定板部を備え、この固定板部の三方が立ち上げられて、対向する一対のガイド板部と、これらのガイド板部に直交する実受け部とが形成されており、基板部が壁下地に取り付けられ、スライド部材の実受け部の一側面において、隣接させる一方の外壁板の側縁部を挟持するようにスライド部材をスライドさせ、前記外壁板を保持した状態でスライド部材の固定板部が壁下地に固定されてスライド部材のスライド動作が固定され、このスライド部材の実受け部の他側面において、隣接させる他方の外壁板の側縁部を挟持して、外壁板が壁下地に固定されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
このような発明によれば、まず外壁板固定金具の基板部を留め付けておき、続いて外壁板をスライド部材で保持するようにし、このスライド部材を留め付けるという手順で作業を進めることができるので、施工効率を低下させることなく容易に外壁板を壁下地に固定することができる。また、横胴縁等の多数の横材を用いる必要がないので配管穴や付帯物の設置位置の設計自由度を高めることができ、施工性も向上させることができる。
【0012】
また、本発明は上記構成の外壁板固定金具において、基板部は、互いに対向する側縁部に平行に配設されたリップ部を有する断面略C形に形成されており、スライド部材の各ガイド板部には、前記リップ部に内接しうるガイド爪がガイド板部の外側に向けてそれぞれ突設されており、このスライド部材のガイド板部のガイド爪が基板部のリップ部の内側に納められて、基板部に対してスライド部材がスライドするように構成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、簡単な構造で構成することができ、基板部とスライド部材とを組み付けて一体にした状態では、壁下地に取り付ける際にいずれかの部材を落下させるおそれがなく、またスライド部材のスライド動作も容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明は上記構成の外壁板固定金具において、基板部の取付面にはスライド部材のスライド範囲を規定する大きさの開口部が形成されており、スライド部材の固定板部には止着孔が穿設されて、基板部の開口部を介して固定板部を壁下地に止着させるように構成されていることを特徴とする。また、スライド部材の固定板部には、基板部の開口部の内側に納まるように陥没した段部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
これにより、基板部に対するスライド部材のスライド動作もスムーズに行うことができるとともに、固定板部に段部が形成されているので、スライド部材の固定面と基板部の固定面とを同一平面上とすることが可能になる。したがって、スライド部材を基板部から取り外して、スライド部材を単体で固定金具として使用することも可能となる。
【0016】
また、本発明は上記構成の外壁板固定金具において、スライド部材の実受け部は、先端部が三分割されて交互に折曲されており、分割された両端の実受け部の先端部は、固定板部の反対方向に折曲されてそれぞれ第1係止片となされ、中央の先端部は、固定板部側へ折曲されて第2係止片となされ、実受け部の一側面の外側には、第1係止片とともに一方の外壁板の側縁部を挟み込む第1支持面がそれぞれ配設されており、第2係止片とともに他方の外壁板の側縁部を挟み込む第2支持面がガイド板部の先端部を折曲して形成されていることが好ましい。これにより、外壁板の側縁部を確実かつ容易に保持して、固定することができるようになっている。
【0017】
また、本発明は上記構成の外壁板固定金具において、スライド部材の第1係止片には、第1支持面に対向する方向に突出した係止突起が形成されていることが好ましい。また、本発明は上記構成の外壁板固定金具において、スライド部材の第2支持面には、第2係止片に対向する方向に隆起させた隆起部が設けられていることが好ましい。
【0018】
このような構成により、外壁板の厚み寸法に多少のばらつきがあってもそれを許容して、係止片および支持面の間に外壁板を嵌め込んで確実に固定することが可能になる。
【0019】
また、本発明は上記構成の外壁板固定金具において、基板部の開口部には、スライド方向の端部にスライド部材の抜け止め片が設けられていることが好ましい。これにより、スライド部材を不用意に落下させることがなく、基板部に一体に組み付けておくことが可能になる。
【0020】
さらに、本発明に係る外壁の施工方法は、前記構成に係る外壁板固定金具を用いて第1の外壁板と第2の外壁板とを隣接させて壁下地に固定して壁面を形成する外壁の施工方法であって、壁下地に外壁板固定金具を配置し、基板部の取付面の止着孔と柱芯とを合致させて基板部を止着具により固定して、基板部を壁下地に取り付ける基板部取付工程と、前記基板部に沿ってスライド部材をスライドさせて第1の外壁板の側縁部を実受け部の一側面において保持する第1の外壁板取付工程と、外壁板の目地が前記柱芯と合致するように第1の外壁板を配置して、当該位置でスライド部材を壁下地に固定するスライド部材固定工程と、固定したスライド部材の実受け部の他側面において第2の外壁板の側縁部を保持する第2の外壁板取付工程と、を含むことを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明に係る外壁板の固定構造は、前記構成に係る外壁板固定金具を用いて第1の外壁板と第2の外壁板とを隣接させて壁下地に固定した外壁板の固定構造であって、第1、第2の外壁板にはともに各側縁部に合决り状の実矧ぎ部が形成され、第1の外壁板の側縁部には目地溝が形成されており、外壁板固定金具は、基板部の取付面が止着孔と柱芯とを合致させるように配設されて止着具により壁下地および柱に固定され、スライド部材の固定板部が壁下地に固定され、第1の外壁板の実矧ぎ部は、外壁板固定金具の実受け部の一側面において保持されるとともに、目地溝が柱芯に合致するように配設され、第2の外壁板は、第1の外壁板の実矧ぎ部に継ぎ合わせられるとともに外壁板固定金具の実受け部の他側面において保持されて、第1の外壁板と第2の外壁板とが隣接するとともに外壁板固定金具の厚みによって壁下地との間に所定のスペースを設けて固定され、これらの外壁板による目地が柱芯に合致して形成されたことを特徴としている。
【0022】
このような外壁の施工方法および外壁板の固定構造により、外壁板による目地を柱芯に合致して配設することが可能になって意匠性を高めるとともに、効率よく外壁板を配設して壁面を形成することができる。また、第1の外壁板と第2の外壁板とを隣接させて、外壁板固定金具の厚みによって壁下地との間に所定のスペースを設けて固定することができる。すなわち、この外壁板固定金具に設けられている実受け部によって、各外壁板と壁下地との間に通気路に相当するスペースを確保することができる。
【0023】
なお、これらの発明において、柱は、屋根または床等の荷重を支えて基礎に伝える垂直部材全般を言い、柱(主柱)だけでなく、間柱、管柱等も含むものとする。
【発明の効果】
【0024】
上述のように構成される本発明の外壁板固定金具によれば、外壁板の目地等の表面に現れる模様を柱芯に合わせて意匠性を高めることができ、柱や間柱など、どのような幅の柱にも確実かつ容易に取り付けることが可能となって、外壁の仕上がり面を均一に揃えることも可能である。また、本発明の固定金具を用いた外壁の施工方法、およびこの固定金具を用いた外壁板の固定構造により、意匠性が高く信頼性の高い外壁を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る外壁板固定金具、この固定金具を用いた外壁の施工方法、およびこの固定金具を用いた外壁板の固定構造を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1〜図3は本発明に係る外壁板固定金具を示し、図1は外壁板固定金具を左方向から見た斜視図、図2は図1の外壁板固定金具を右方向から見た斜視図、図3は外壁板固定金具の正面図である。なお、説明の便宜上、外壁板固定金具における方向性を、縦張り工法において施工されるときの状態を基準にして、図3に示すように規定して説明を行うこととする。
【0027】
また、図4は本発明に係る外壁板固定金具を壁下地および柱に固定したところを示す断面図、図5は本発明に係る外壁の施工方法の一工程を示す断面図、図6は図5の正面図である。また、図7は本発明に係る外壁板の固定構造を示す断面図である。
【0028】
なお、前記各断面図においては図面を見やすくするために、柱や壁下地等の構成部材には断面を示すハッチングを省略して透視的に記載している。
【0029】
外壁板固定金具1は、複数枚の外壁板4を壁下地5に隣接させて固定して壁面を形成するものである。外壁板固定金具1は、基板部2と、スライド部材3との2部材からなる。これらの2部材とも、例えば厚さ0.8〜1.2mm程度のステンレス板、鋼鉄板、アルミ軽合金板等の金属板を折曲成形して形成されている。
【0030】
基板部2は、壁下地5の室外側の面に固定される取付面21を有する。この取付面21には、図中に示す左寄りに止着孔22が穿設されている。止着孔22の上下には、抜け止め片23,23が形成され、基板部2の材厚分程度だけ取付面21から突出するように軽く折曲されている。
【0031】
また、基板部2は、互いに対向する側縁部に、平行に配設されたリップ部26を有する断面略C形に形成されている。例示の形態では、長辺方向である左右方向に対して平行となるように、上下の側縁部にそれぞれリップ部26が形成されている。
【0032】
また、スライド部材3は、基板部2の取付面21の前面(室外側面)に沿ってスライド可能に設けられるように構成されている。図示するように、スライド部材3は、正面視長方形状の基板部2に対して、上下方向の幅はほぼ同等に形成されており、左右方向には基板部2よりも短く形成されている。
【0033】
スライド部材3は、壁下地5に固定しうる固定板部31を備えている。固定板部31は、周縁の三方(図3でいう左、上、下、の三方)が立ち上げられて、互いに対向する一対のガイド板部33(上下)と、これらのガイド板部33に直交する実受け部34(左側)とを形成している。
【0034】
スライド部材3の各ガイド板部33は、基板部2のリップ部26同士の間隔にほぼ相当する間隔で配設され、これらのリップ部26に内接しうるガイド爪331が、ガイド板部33の中腹部に外側に向けてそれぞれ突設されている。
【0035】
ガイド爪331は、基板部2のリップ部26の内側に納められる。したがって、ガイド爪331は、基板部2のリップ部26の溝寸法よりも小さい突出長さで形成されている。また、ガイド爪331は、基板部2のリップ部26の内側に当接しない程度の遊びを持たせた寸法により配設されている。
【0036】
このようなガイド板部33のガイド爪331を、基板部2のリップ部26にそれぞれ挿通させることで、スライド部材3が基板部2に対して左右方向に自在にスライドするように構成されている。図3に示すように、基板部2の左寄りに取付面21および止着孔22が配置され、この基板部2に対してスライド部材3は実受け部34が左側に位置するように基板部2に嵌め合わせられる。
【0037】
基板部2の取付面21には、略長方形状の開口部24が形成されている。この開口部24は、スライド部材3のスライド範囲を規定する大きさとなされている。基板部2の開口部24には、スライド方向となる左右方向の右端部に、スライド部材3の抜けを防止する抜け止め片25が切り曲げして形成されており、取付面21の表面より微少寸法だけ突出するように設けられている。
【0038】
また、スライド部材3の固定板部31には、この基板部2の開口部24の内側に納まるように陥没した段部311が形成されている。この段部311によって、スライド部材3の固定板部31には、ちょうど基板部2の材厚分だけ凹ませた凹部が形成されている。
【0039】
これにより、スライド部材3のガイド爪331を基板部2のリップ部26に挿通させ、左右方向にスライドさせると、スライド部材3の段部311が、基板部2の開口部24の端縁に沿って摺動する。そして、スライド部材3が基板部2の最右寄りに位置すると、基板部2の抜け止め片25がスライド部材3の固定板部31に当接して引っ掛かるため、スライド範囲の右端が規定される。また、スライド部材3を基板部2の開口部24に沿って左方向にスライドさせると、スライド部材3の固定板部31の段部311が開口部24の左端縁に当接して引っ掛かり、スライド範囲の左端が規定される。
【0040】
なお、スライド部材3を基板部2の開口部24から離間させて基板部2の取付面21より浮かせた状態でスライドさせると、スライド部材3は開口部24の左端縁よりもさらに左寄りにスライドさせることができ、取付面21の抜け止め片23,23に段部311が係止して抜け止めされるようになっている。この状態からさらにスライド部材3を左方向へ引っ張ると、スライド部材3の段部311が抜け止め片23,23を乗り越えて、基板部2から取り外すことも可能となっている。
【0041】
かかるスライド部材3の固定板部31には、段部311の内側に複数の止着孔32が穿設されている。スライド部材3は、基板部2の開口部24を介して、固定板部31を壁下地5に当接させることができ、これらの止着孔32を利用して壁下地5にスライド部材3を止着させることができるように構成されている。
【0042】
また、スライド部材3の実受け部34は、先端部が細溝によって三分割されて、交互に折曲されている。このように分割されている実受け部34の先端部のうち、両端に位置する実受け部34の先端部は、固定板部31の反対方向に折曲されて逆L字状に形成されており、それぞれ第1係止片341,341となされている。また、中央に位置する実受け部34の先端部は、固定板部31側へ傾斜させて折曲されて、これが第2係止片344となされている。
【0043】
また、かかる実受け部34の一側面の外側には、第1係止片341,341とともに一方の外壁板4の側縁部を挟み込むための第1支持面343,343がそれぞれ配設されている。また、このスライド部材3の第1係止片341,341には、第1支持面343,343に対向する方向(室内側)に突出した係止突起342が形成されている。
【0044】
また、実受け部34の第2係止片344とともに他方の外壁板4の側縁部を挟み込むための第2支持面345,345が、ガイド板部33の先端部を外側方向へ折曲して形成されている。このスライド部材3の第2支持面345,345には、外側を部分的に切り曲げすることによって第2係止片344に対向する方向(室外側)へ隆起させた隆起部346,346が設けられている。
【0045】
このような外壁板固定金具1は、基板部2とスライド部材3とが互いにスライド可能に一体に組み付けられて用いられるが、次に、外壁板固定金具1によって、隣接して建て込む複数の外壁板4,4を壁下地に固定する施工方法について説明する。
【0046】
外壁板4を配設する壁下地5に、基板部2とスライド部材3とが一体の外壁板固定金具1を配置する。このとき、基板部2の取付面21に形成されている止着孔22と、柱6の柱芯とを合致させるようにして配置する。そして、図4に示すように、基板部2の取付面21を止着孔22を介してビス等の止着具7により固定して、基板部2を壁下地5に取り付ける(基板部取付工程)。
【0047】
次に、スライド部材3を基板部2の開口部24に沿わせてスライドさせ、第1の外壁板4の側縁部を実受け部34の一側面に嵌め込み、保持させる(第1の外壁板取付工程)。図5に示すように、外壁板4の側縁部には、合决り状の実矧ぎ部41が形成されている。この実矧ぎ部41を、スライド部材3の第1係止片341,341および第1支持面343,343に嵌め合わせる。
【0048】
続いて、この第1の外壁板4の目地溝42が柱芯と合致するように外壁板4の位置を調整し、この位置でスライド部材3を壁下地5に固定する(スライド部材固定工程)。スライド部材3の固定は、固定板部31の止着孔32を介して止着具7で壁下地5に止着することにより行う。これにより、スライド部材3のスライド動作が固定される。
【0049】
次に、第2の外壁板4をスライド部材3に取り付ける。すなわち、壁下地5に固定されたスライド部材3に対し、第2の外壁板4の実矧ぎ部41を、実受け部34の第2係止片344および第2支持面345,345の間に嵌め込んで保持させる(第2の外壁板取付工程)。
【0050】
このように外壁板4,4を保持する外壁板固定金具1は、外壁板の四周の上下方向に数箇所配置されて壁下地5に固定するだけで、外壁板4,4を固定することができる。かかる工程を繰り返して外壁板4を固定し、壁面が形成される。
【0051】
このように外壁板固定金具1により固定された外壁板4,4は、図7に示すような固定構造をなす。すなわち、ともに各側縁部に合决り状の実矧ぎ部41が形成された第1の外壁板4と第2の外壁板4とが、第1の外壁板4の側縁部の目地溝42を挟んで隣接されている。
【0052】
外壁板固定金具1は、基板部2の取付面21の止着孔22と柱6の柱芯とを合致させるように配設されている。基板部2は、止着具7により壁下地5および柱6に固定されている。また、スライド部材3の固定板部31は、壁下地5に止着具7により固定されている。
【0053】
第1の外壁板4の実矧ぎ部41は、外壁板固定金具1の実受け部34の一側面において、第1係止片341および第1支持面343の間に挟持されて固定され、その目地溝42がちょうど柱6の柱芯に合致するように配設されている。
【0054】
第2の外壁板4は、外壁板固定金具1の実受け部34の他側面において、第2係止片344および第2支持面345の間に挟持されて固定され、第1の外壁板4の実矧ぎ部41に継ぎ合わせられている。
【0055】
これにより、第1の外壁板4と第2の外壁板4とが隣接するとともに、外壁板固定金具1の厚みによって壁下地5との間に所定のスペースを設けて固定されている。すなわち、この外壁板固定金具1に設けられた第1支持面343および第2支持面345によって、外壁板4,4と壁下地5との間に通気路10に相当するスペースが確保されている。また、これらの外壁板4,4による目地(目地溝42)が、柱6の柱芯に合致して形成されている。
【0056】
また、かかる外壁板固定金具1は、スライド部材3を基板部2から取り外して、スライド部材3を単体で外壁板固定金具として使用することもできる。この場合、外壁板4の長手方向を水平方向に合わせて張り付ける横張工法が可能となる。そして、前記縦張り工法で説明したのと同様に、外壁板4の実矧ぎ部41を、スライド部材3の実受け部34に嵌め込んで固定するように施工する。このとき、スライド部材3の固定板部31は壁下地5に取り付けられて、縦張り工法の場合と同様のスペースを外壁板4,4との間に確保できるので、壁面の仕上がり面を面一に揃えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、外壁板を建物の躯体あるいは壁下地等に固定して壁面を形成するのに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る外壁板固定金具を左方向から見た斜視図である。
【図2】図1の外壁板固定金具を右方向から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る外壁板固定金具の正面図である。
【図4】本発明に係る外壁板固定金具を壁下地および柱に固定したところを示す断面図である。
【図5】本発明に係る外壁の施工方法の一工程を示す断面図である。
【図6】図5に示す状態の外壁板固定金具の正面図である。
【図7】本発明に係る外壁板の固定構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 外壁板固定金具
2 基板部
21 取付面
22 止着孔
23 抜け止め片
24 開口部
25 抜け止め片
26 リップ部
3 スライド部材
31 固定板部
311 段部
32 止着孔
33 ガイド板部
331 ガイド爪
34 実受け部
341 第1係止片
342 係止突起
343 第1支持面
344 第2係止片
345 第2支持面
346 隆起部
4 外壁板
41 実矧ぎ部
42 目地溝
5 壁下地
6 柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の外壁板を壁下地に隣接させて固定して壁面を形成するための外壁板固定金具であって、
壁下地への取付面を有するとともにこの取付面に止着孔が穿設されている基板部と、この基板部の取付面の前面に沿ってスライド可能に設けられるスライド部材を有し、
スライド部材は、壁下地に固定される固定板部を備え、この固定板部の三方が立ち上げられて、対向する一対のガイド板部と、これらのガイド板部に直交する実受け部とが形成されており、
基板部が壁下地に取り付けられ、スライド部材の実受け部の一側面において、隣接させる一方の外壁板の側縁部を挟持するようにスライド部材をスライドさせ、前記外壁板を保持した状態でスライド部材の固定板部が壁下地に固定されてスライド部材のスライド動作が固定され、このスライド部材の実受け部の他側面において、隣接させる他方の外壁板の側縁部を挟持して、外壁板が壁下地に固定されるように構成されていることを特徴とする外壁板固定金具。
【請求項2】
基板部は、互いに対向する側縁部に平行に配設されたリップ部を有する断面略C形に形成されており、スライド部材の各ガイド板部には、前記リップ部に内接しうるガイド爪がガイド板部の外側に向けてそれぞれ突設されており、
このスライド部材のガイド板部のガイド爪が基板部のリップ部の内側に納められて、基板部に対してスライド部材がスライドするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の外壁板固定金具。
【請求項3】
基板部の取付面にはスライド部材のスライド範囲を規定する大きさの開口部が形成されており、スライド部材の固定板部には止着孔が穿設されて、基板部の開口部を介して固定板部を壁下地に止着させるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の外壁板固定金具。
【請求項4】
スライド部材の固定板部には、基板部の開口部の内側に納まるように陥没した段部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外壁板固定金具。
【請求項5】
スライド部材の実受け部は、先端部が三分割されて交互に折曲されており、
分割された両端の実受け部の先端部は、固定板部の反対方向に折曲されてそれぞれ第1係止片となされ、中央の先端部は、固定板部側へ折曲されて第2係止片となされ、
実受け部の一側面の外側には、第1係止片とともに一方の外壁板の側縁部を挟み込む第1支持面がそれぞれ配設されており、第2係止片とともに他方の外壁板の側縁部を挟み込む第2支持面がガイド板部の先端部を折曲して形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の外壁板固定金具。
【請求項6】
スライド部材の第1係止片には、第1支持面に対向する方向に突出した係止突起が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の外壁板固定金具。
【請求項7】
スライド部材の第2支持面には、第2係止片に対向する方向に隆起させた隆起部が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の外壁板固定金具。
【請求項8】
基板部の開口部には、スライド方向の端部にスライド部材の抜け止め片が設けられていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の外壁板固定金具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の外壁板固定金具を用いて第1の外壁板と第2の外壁板とを隣接させて壁下地に固定して壁面を形成する外壁の施工方法であって、
壁下地に外壁板固定金具を配置し、基板部の取付面の止着孔と柱芯とを合致させて基板部を止着具により固定して、基板部を壁下地に取り付ける基板部取付工程と、
前記基板部に沿ってスライド部材をスライドさせて第1の外壁板の側縁部を実受け部の一側面において保持する第1の外壁板取付工程と、
外壁板の目地が前記柱芯と合致するように第1の外壁板を配置して、当該位置でスライド部材を壁下地に固定するスライド部材固定工程と、
固定したスライド部材の実受け部の他側面において第2の外壁板の側縁部を保持する第2の外壁板取付工程と、
を含むことを特徴とする外壁の施工方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の外壁板固定金具を用いて第1の外壁板と第2の外壁板とを隣接させて壁下地に固定した外壁板の固定構造であって、
第1、第2の外壁板にはともに各側縁部に合决り状の実矧ぎ部が形成され、第1の外壁板の側縁部には目地溝が形成されており、
外壁板固定金具は、基板部の取付面が止着孔と柱芯とを合致させるように配設されて止着具により壁下地および柱に固定され、スライド部材の固定板部が壁下地に固定され、
第1の外壁板の実矧ぎ部は、外壁板固定金具の実受け部の一側面において保持されるとともに、目地溝が柱芯に合致するように配設され、
第2の外壁板は、第1の外壁板の実矧ぎ部に継ぎ合わせられるとともに外壁板固定金具の実受け部の他側面において保持されて、
第1の外壁板と第2の外壁板とが隣接するとともに外壁板固定金具の厚みによって壁下地との間に所定のスペースを設けて固定され、これらの外壁板による目地が柱芯に合致して形成されたことを特徴とする外壁板の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−31717(P2008−31717A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205799(P2006−205799)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000110664)ナンカイ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】