説明

外段取り装置

【課題】スペースを有効利用し、品質低下を防止し、生産効率を向上させることのできる外段取り装置を提供する。
【解決手段】被成膜対象の基材5が装着されるとともに、成膜装置内に配置される基材ホルダ4を保持する保持部材20と、この保持部材20が取り付けられる移動可能フレーム10と、この移動可能フレーム10に取り付けられるとともに、基材ホルダ4の表面に清浄空気を供給する清浄空気供給手段30とを備えたことを特徴とする外段取り装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜対象物である基材が装着される基材ホルダを保持する外段取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、真空槽内で基材に蒸着等の成膜処理を行う成膜装置として、真空槽に対し真空ゲート弁を介してロードロック室を接続し、真空槽内を大気に開放することなく、真空槽の真空状態の質を良好に維持して再現性のよい状態で真空成膜を行うようにしたロードロック式(連続式)の成膜装置が使用されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−222846号公報
【特許文献2】特開2004−99946号公報
【特許文献3】特開2004−99947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたようなロードロック式の成膜装置は、装置サイズが大きく、装置を設置するための広いスペースを必要とするため、工場等のスペースの有効利用を図ることができなかった。
一方で、ロードロック式の成膜装置ではなく、真空槽のみで構成される成膜装置から成膜後の基材や基材ホルダを単に取り出して、搬送台車に積載したのでは、基材表面に異物等が付着してしまい、品質が低下してしまう。また、成膜後の基材や基材ホルダ等は高温になっていることがあるので、基材や基材ホルダなどを取り出し可能になるまで冷却しなければならず、その間は成膜装置を使用することができず、生産効率が低下してしまう。
このような品質や生産効率の低下を防ぐために、クリーンルーム内に真空槽を設置し、成膜後の基材や基材ホルダ等を高温状態のまま移動させて搬送装置に載せ、同じクリーンルーム内で放置冷却する手段も考えられる。しかしながら、真空槽と冷却中の搬送装置とを設置するためのエリアをカバーする広いスペースのクリーンルームが必要となるので、工場等のスペースの有効利用を図ることができない。
【0005】
本発明の目的は、工場等のスペースを有効利用し、品質低下を防止し、生産効率を向上させることのできる外段取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[適用例1]
本適用例に係る発明は、成膜装置内に配置されるとともに被成膜対象の基材が装着される基材ホルダを保持する保持部材と、この保持部材が取り付けられた移動可能フレームと、この移動可能フレームに取り付けられるとともに、前記基材ホルダの表面に清浄空気を供給する清浄空気供給手段とを備えたことを特徴とする外段取り装置である。
本適用例によれば、ロードロック式の成膜装置を用いないため、工場等のスペースを有効利用することができる。
また、成膜処理後であって基材ホルダが冷却される前に、成膜装置から搬出される基材ホルダを保持部材にて保持することができる。さらに、保持部材に保持されている基材ホルダの表面に清浄空気を供給することができる。そのため、冷却を待つ時間を要することなく、成膜装置は次の成膜加工に移ることができ、生産効率を向上させることができる。そして、基材が冷却されるまでの時間は、成膜装置内で基材ホルダを放置して冷却する場合に比べて、大幅に短縮されるため、生産効率を向上させることが出来る。
【0007】
また、基材ホルダは、保持部材に保持され、清浄空気の供給を受けたまま搬送可能である。そのため、例えば、成膜装置が設置されたクリーンルームから、別のクリーンルームへと移動する場合であっても、クリーンルーム間を移動している間に、基材表面への異物付着等が防止され、品質の低下を防止することが出来る。
そして、広いエリアのクリーンルームを設けなくても、局所的にクリーンルームを設け、適宜クリーンルーム間を移動すればよいため、工場等のスペースを有効活用することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に係る本適用例では、前記清浄空気供給手段は、冷風を供給することが好ましい。
本適用例によれば、基材ホルダ表面に清浄な室温以下の冷風を供給することができる。そのため、基材および基材ホルダをより短時間で冷却して、生産効率を向上させることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または適用例2に係る本適用例では、前記清浄空気供給手段は、温度調節機能および除湿機能を備えていることが好ましい。
本適用例によれば、基材ホルダに装着された基材表面に乾燥温風を供給することができる。したがって、成膜前の基材を加熱するとともに、基材中の水分を減少させることができる。そのため、成膜処理を開始するのに必要な基材温度や真空度に到達するまでの時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれかに係る本適用例では、前記基材ホルダはドーム状に形成されるとともに頂部には開口部が設けられ、前記保持部材には、前記基材ホルダを保持した際に前記基材ホルダの内表面側との間に隙間が形成されるように整流板が配置され、前記清浄空気供給手段には、清浄空気を吐出するとともに、前記基材ホルダを保持した際に前記開口部に面して配置される吐出部が設けられていることが好ましい。
本適用例によれば、基材ホルダの頂部に形成された開口部を通過して、基材ホルダの内表面側へ供給された清浄空気は、基材ホルダの内表面側と前記整流板との間に形成された隙間を清浄空気の流通路として通過し、基材ホルダの底面側から放出される。そのため、基材ホルダの内表面側へ露出する基材表面に対して、より多くの清浄空気を効率的に供給することができる。そして、基材ホルダの内表面側を通過する清浄空気が開口部から基材ホルダの底面側へと流れるため、基材ホルダの低面側からの異物侵入などを防ぐことができる。
したがって、品質低下を防止する効果をさらに高めることができる。さらに、基材および基材ホルダをより短時間で冷却することができるので、生産効率を向上させることができる。
【0011】
[適用例5]
適用例4に係る本適用例では、前記清浄空気供給手段は、前記基材ホルダから離隔移動可能に前記移動可能フレームに対して取り付けられていることが好ましい。
本適用例によれば、清浄空気供給手段を基材ホルダから離れた位置に移動させることが可能なので、成膜装置に対する基材ホルダの搬入および搬出を行う際に清浄空気供給手段が邪魔にならない。そのため、搬入および搬出作業を円滑に行うことができ、生産効率を向上させることができる。
また、清浄空気供給手段の吐出部を、基材ホルダの開口部から離れた位置に移動させることができるので、基材ホルダの外周面側および内周面側に供給される清浄空気量を適宜調節することができる。
例えば、当該吐出部を開口部に近接させると、より多くの清浄空気を基材ホルダの表面に対して供給することができる。一方で、当該吐出部を開口部から離隔させれば、基材ホルダ表面に供給される清浄空気が減少するものの、基材の装着および取り外し作業時において、清浄空気の風圧による作業性の低下を防止することが出来る。
【0012】
[適用例6]
適用例5に係る本適用例では、前記清浄空気供給手段は、互いに直交する3軸方向に移動可能に取り付けられていることが好ましい。
本適用例によれば、適用例5と同様の効果を奏するとともに、適用例5よりも基材ホルダに対する清浄空気供給手段の位置調整を行い易くすることができる。
【0013】
[適用例7]
適用例1から適用例6までのいずれかに係る本適用例では、前記保持部材は、昇降可能に前記移動可能フレームに対して取り付けられていることが好ましい。
本適用例によれば、基材ホルダに対する基材の装着および取り外し作業を行う際の作業性を考慮して保持部材の高さ位置を変化させることができるので、作業性を向上させることができる。
【0014】
[適用例8]
適用例4から適用例7までのいずれかに係る本適用例では、前記基材ホルダにおける前記基材の未装着部位に遮蔽板が装着されていることが好ましい。
基材ホルダの基材装着部位すべてに基材が装着されておらず、基材未装着部位がある場合に、そのままで清浄空気供給手段から清浄空気を供給したとしても、清浄空気の流れは基材未装着部位で乱れてしまい、全ての基材表面に対して清浄空気が安定して供給されない。その結果、清浄空気の供給が不十分な部位に装着されている一部の基材の品質低下を招いてしまう。
しかし、本適用例によれば、基材未装着部位には遮蔽板が装着されているため、清浄空気の流れが乱れることが無く、基材に対して清浄空気を安定して供給することができる。したがって、品質の低下を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる外段取り装置および成膜装置の概略図。
【図2】前記実施形態に係る外段取り装置の保持部の拡大図。
【図3】前記実施形態に係る基材ホルダの斜視図。
【図4】前記実施形態に係る基材ホルダの断面拡大図。
【図5】前記実施形態に係る基材ホルダを保持した状態を示す図。
【図6】前記実施形態に係る基材ホルダを保持した状態の拡大図。
【図7】前記実施形態に係る外段取り装置の移動後を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔外段取り装置〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態にかかる外段取り装置1、成膜装置2および成膜装置2に収容された基材ホルダ4が示されている。外段取り装置1および成膜装置2はクリーンルーム6内に配置されている。
外段取り装置1は、移動可能フレーム10と、この移動可能フレーム10に取り付けられた保持部材20と、同じく移動可能フレーム10に取り付けられた清浄空気供給手段30とを備えて構成される。
【0017】
移動可能フレーム10は、上下方向に延びるメインフレーム11を備えており、このメインフレーム11の下端部には、メインフレーム11から連続して形成された水平方向に延びる下フレーム12を備えている。
この下フレーム12には、外段取り装置1が移動可能なように車輪13が取り付けられている。
【0018】
保持部材20は、基材5が装着された基材ホルダ4を保持する。
保持部材20は、メインフレーム11に対して水平方向に延びる保持フレーム21と、この保持フレーム21上に設けられるとともに基材ホルダ4を保持するための保持部22と、保持部22の内側に設けられる整流板23とで構成されている。なお、詳細は後述するが、基材ホルダ4は円錐型ドーム状に形成されている(図3参照)。
保持フレーム21は、昇降機構24を介してメインフレーム11に取り付けられているため、保持部材20は昇降移動が可能になっている。
【0019】
図2には、保持部材20の拡大図が示されている。
保持部22は、基材ホルダ4を載せるための平面部22Aと、基材ホルダ4の保持位置を保持部22に合わせるための位置合わせ部22Bとで構成されている。位置合わせ部22Bは、平面部22Aに対して所定の傾斜角度で起立して形成されている。図2中では、二点差線で示される基材ホルダ4の底面が平面部22A上に載せられて保持されている。
整流板23は円錐状に形成されている。整流板23は保持フレーム21上に設けられた整流板保持部25に着脱可能に取り付けられている。この整流板23は、基材ホルダ4を保持部22で保持する際に、基材ホルダ4のドーム状内部に収容可能なサイズに形成されている。さらに整流板23は、基材ホルダ4のドーム状内部に収容された際に、基材ホルダ4の内表面と整流板23の外表面との間に所定間隔の隙間Dが生ずるサイズに形成されている。この隙間Dが清浄空気の流通路として利用される。この隙間Dに清浄空気が流れることにより一層効率の高い冷却効果が発生する。清浄空気供給手段30からの送風量に対して、基材と清浄空気の接触面積が大きくなる為である。
【0020】
清浄空気供給手段30は、基材ホルダ4の表面に清浄空気を供給するためのものである。清浄空気供給手段30としては、代表的なものとしてFFU(ファンフィルターユニット)等が挙げられる。
本実施形態で用いる清浄空気供給手段30は、その上面側に設けられた吸気部31から、シロッコファンなどの図示しないファンによって空気を取り込む(図1参照)。そして、清浄空気供給手段30の内部には図示しないフィルタが取り付けられ、取り込んだ空気はそのフィルタを通過して、除塵される。その後、除塵された清浄空気は、清浄空気供給手段30の下面側に設けられた吐出部32から吐出される。フィルタとしては、エアフィルタとして、HEPAフィルタやULPAフィルタ等を、それぞれ1枚もしくは複数枚を組み合わせて用いることができる。高い清浄度が要求される場合には、ULPAフィルタが使用される。
また、清浄空気供給手段30には、図示しない温度調節機能および除湿機能が設けられている。そのため、清浄空気供給手段30からは、冷風や乾燥温風等も供給される。
【0021】
清浄空気供給手段30は、第1移動機構33を介して水平方向に延びる上フレーム34に設けられている。そして上フレーム34は、第2移動機構35を介してメインフレーム11に取り付けられている。
清浄空気供給手段30は、第1移動機構33によって、紙面に対して垂直方向(Y方向)に移動することができる。また、第2移動機構35によって、上フレーム34は、紙面平面内で上下方向(Z方向)および左右方向(X方向)に移動することができる。すなわち、清浄空気供給手段30は、互いに直交する3軸方向に移動可能にメインフレーム11に対して取り付けられている。
【0022】
〔基材ホルダ〕
図3には、円錐型ドーム状に形成されている基材ホルダ4が示されている。
また、図4には基材ホルダ4の断面拡大図が示されている。
基材ホルダ4には、その頂部から放射状に、窓部41が設けられている。この窓部41の枠には基材5を装着させるための治具42が予め取り付けられている。基材5が装着されると、基材ホルダ4の内表面側に基材5の表面(成膜面)が露出した状態になるので、この内表面側に露出した基材5の表面上に膜が形成されることになる。
また、基材ホルダ4の頂部には、清浄空気供給手段30から供給される清浄空気を基材ホルダ4のドーム内部へと導入するための開口部43が設けられている。
なお、基材ホルダ4のすべての窓部41に対して基材5を装着させない場合には、当該未装着部には、基材ホルダ4の内表面側と外表面側とが窓部41を介して連通しないように、窓部41を覆うための遮蔽板5’が取り付けられる。窓部41を覆うことができればよいので、例えば、遮蔽板5’としては図4に示すような基材5と同じサイズの板状体などが用いられる。
【0023】
〔成膜装置〕
成膜装置2は、被成膜対象の基材5を保持する基材ホルダ4を収容し、真空状態下で基材5の成膜面に膜を形成させるためのものである。成膜装置2はクリーンルーム6内に設置されているため、成膜装置2の扉が開放されても、基材ホルダ4や基材5の表面は清浄に保たれる。
成膜装置2の内部には、基材ホルダ4を回転させるための回転機構が設けられている。図1に示されるように、レール22に備え付けられた回転歯車21が、基材ホルダ4の底面部を支持して回転させる。また、成膜装置2の上方にも図示しない回転機構が設けられ、基材ホルダ4を支持し回転させる。これらの回転機構は、基材ホルダ4が装置外へ搬出される際には、待避可能に設けられている。
また、成膜装置2内の底部には成膜原材料が配置されている。例えば、成膜装置2が真空蒸着装置であれば、この成膜原材料を加熱蒸発させることで、基材ホルダ4に保持された基材5の成膜面に成膜原材料が付着して析出し、膜が形成される。
その他、成膜装置2は、従来の成膜装置が備える構成も備えている。
【0024】
〔外段取り装置の動作1〕
次に、本実施形態に係る外段取り装置1の動作について説明する。
なお、説明上、基材5の表面には、すでに膜が形成された状態であるとする。また、成膜処理は成膜装置2が設置されているクリーンルーム6で行われ、その後、別のクリーンルーム7(図7参照)で、基材ホルダ4および基材5を冷却し、基材5を取り外すための作業が行われるものとする。
【0025】
図1には、クリーンルーム6内の、基材ホルダ4を保持していない状態の外段取り装置1と基材ホルダ4が収容された成膜装置2とが示されている。
まず、成膜装置2の扉を開け、外段取り装置1を保持部22が基材ホルダ4の下方に位置するまで移動させる。なお、予め、清浄空気供給手段30や上フレーム34は、成膜装置2や基材ホルダ4に接触しないように適宜移動させておく。
そして、保持部材20を上方に移動させ、基材ホルダ4を保持部22で保持させる。このとき、整流板23は、基材ホルダ4の内部に収容され、基材ホルダ4の内表面と整流板23の外表面との間に、隙間D(図2参照)が形成される。
基材ホルダ4を保持した後、外段取り装置1を後退させて、基材ホルダ4を成膜装置2の外へと搬出する。なお、この搬出の際には、成膜装置2内の基材ホルダ4を回転させるための回転機構も適宜待避させる。
【0026】
次に、図5に示すように、清浄空気供給手段30の吐出部32が基材ホルダ4の開口部43に面するように、清浄空気供給手段30と保持部材20を移動させる。そして、清浄空気供給手段30から基材ホルダ4に対して清浄空気を供給させ、いわゆるダウンフローFを形成させる。このとき、室温以下の冷風を供給させれば、冷却効果が高まる。
【0027】
図6にダウンフローFの様子を拡大して示す。開口部43から基材ホルダ4の内表面側へ供給された清浄空気は、基材ホルダ4の内表面と整流板23の外表面との間に形成された隙間Dを通過して、基材ホルダ4の下方から放出される。一方、基材ホルダ4の外表面側へ供給された清浄空気は、基材ホルダ4の外表面に沿って基材ホルダ4の下方へと流れる。
【0028】
清浄空気の供給を開始した後、供給したままの状態で、成膜装置2が設置されたクリーンルーム6を出て、基材5の取り出し作業を行うために別のクリーンルーム7へと外段取り装置1を移動させる。
図7に示すように、クリーンルーム7へと移動した後、基材5の取り出し作業を行い易い高さ位置に調節するために、保持部材20を昇降させる。また、清浄空気供給手段30からの清浄空気の供給量が多すぎて取り出し作業を行い難いときは、基材ホルダ4の表面へ供給される供給量を抑えるために、基材ホルダ4の開口部43から離れた位置に清浄空気供給手段30を移動させる。
基材5を全て取り出し終わった基材ホルダ4は、そのまま外段取り装置1の保持部材20で保持させたままにする。
【0029】
〔外段取り装置の動作2〕
次に、成膜処理が行われる前の外段取り装置1の動作について説明する。
前述したように、成膜後の基材5を全て取り出し終わった基材ホルダ4は、そのまま外段取り装置1の保持部材20で保持させたままになっている。そして、外段取り装置1は、クリーンルーム7内で待機させたままになっている。
そこで、この基材ホルダ4を用いて次の成膜処理へと移行すべく、まず基材ホルダ4に基材5を装着させる。
【0030】
装着後は、前述と同様に、清浄空気供給手段30の吐出部32が基材ホルダ4の開口部43に面するように、清浄空気供給手段30と保持部材20を移動させ、清浄空気供給手段30から基材ホルダ4に対して清浄空気を供給させる。
このとき、乾燥空気を供給すれば基材5が水分を吸収することを防ぐことも出来る。さらに、乾燥温風を供給すれば基材5の加熱や、基材5に含まれていた水分を除去することもできる。
清浄空気の供給を開始した後、供給したままの状態で、成膜装置2が設置されたクリーンルーム6へと外段取り装置1を移動させる。
【0031】
移動後は、清浄空気供給手段30からの清浄空気の供給を停止させる。そして、清浄空気供給手段30や上フレーム34は、成膜装置2や基材ホルダ4に接触しないように適宜移動させる。
成膜装置2において別途進行していた成膜処理が終了し、基材ホルダが搬出された後であれば、クリーンルーム7から移動してきた外段取り装置1に保持されていた基材ホルダ4を成膜装置2へ搬入し、収容させる。
一方、成膜装置2において成膜処理が進行中であれば、成膜処理が終了するまで待機し、成膜処理が終了した後に基材ホルダ4を成膜装置2へ搬入し、収容させる。
【0032】
〔実施形態の効果〕
以上のような本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)ロードロック式の成膜装置を用いないため、工場等のスペースを有効利用することができる。
【0033】
(2)成膜処理後であって基材ホルダ4が冷却される前に、成膜装置2から搬出される基材ホルダ4を保持部材20にて保持することができる。さらに、保持部材20に保持されている基材ホルダ4の表面に清浄空気を供給することができる。そのため、冷却を待つ時間を要することなく、成膜装置2は次の成膜加工に移ることができ、生産効率を向上させることができる。そして、基材5が冷却されるまでの時間は、成膜装置2内で基材ホルダ4を放置したまま冷却する場合に比べて、大幅に短縮されるため、生産効率を向上させることが出来る。
【0034】
(3)基材ホルダ4は、保持部材20に保持され、清浄空気の供給を受けたまま搬送可能である。そのため、例えば、成膜装置2が設置されたクリーンルーム6から、別のクリーンルーム7へと移動する場合であっても、クリーンルーム6,7間を移動している間に、基材の表面への異物付着等が防止され、品質の低下を防止することが出来る。
そして、広いエリアのクリーンルームを設けなくても、局所的にクリーンルームを設け、適宜クリーンルーム6,7間を移動すればよいため、工場等のスペースを有効活用することができる。
【0035】
(4)基材ホルダ4の表面に清浄な冷風を供給することができる。そのため、基材および基材ホルダをより短時間で冷却して、生産効率を向上させることができる。
【0036】
(5)基材ホルダ4に装着された基材5の表面に乾燥温風を供給することができる。したがって、成膜前の基材5を加熱するとともに、基材5に含まれる水分を減少させることができる。そのため、成膜処理を開始するのに必要な基材温度や真空度に到達するまでの時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
【0037】
(6)基材ホルダ4の頂部に形成された開口部43を通過して、基材ホルダ4の内表面側へ供給された清浄空気は、基材ホルダ4の内表面側と整流板23との間に形成された隙間Dを清浄空気の流通路として通過し、基材ホルダ4の底面側から放出される。そのため、基材ホルダ4の内表面側へ露出する成膜面に対して、より多くの清浄空気を効率的に供給することができる。そして、基材ホルダの内表面側を通過する清浄空気が開口部43から基材ホルダ4の底面側へと流れるため、基材ホルダ4の低面側からの異物侵入などを防ぐことができる。
したがって、品質低下を防止する効果をさらに高めることができる。さらに、基材5および基材ホルダ4をより短時間で冷却することができるので、生産効率を向上させることができる。
【0038】
(7)清浄空気供給手段30は互いに直交する3軸方向に移動可能であるために、基材ホルダ4の開口部43に対する清浄空気供給手段30の吐出部32の相対位置を適宜変化させることができる。そのため、基材ホルダ4の外周面側および内周面側に供給される清浄空気量を適宜調節することができる。
例えば、吐出部32を開口部43に近接させると、より多くの清浄空気を基材ホルダ4の表面に対して供給することができる。一方で、吐出部32を開口部43から離隔させれば、基材ホルダ4表面に供給される清浄空気が減少するものの、基材5の装着および取り外し作業時における風圧による作業性の低下を防止することが出来る。
【0039】
(8)基材ホルダ4に対する基材5の装着および取り外し作業を行う際の作業性を考慮して保持部材20の高さ位置を変化させることができるので、作業性を向上させることができる。
【0040】
(9)基材5を装着させていない部位がある場合には遮蔽板5’を装着させるため、清浄空気の流れが乱れることが無く、基材5に対して清浄空気を安定して供給することができる。したがって、品質の低下を防止することが出来る。
【0041】
〔変形例〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、保持部22を、保持フレーム21上でその位置を変更可能に取り付けても良い。そうすれば、基材ホルダ4のサイズに応じて、保持部22の位置を変更することができることになり、様々なサイズの基材ホルダ4を保持可能な外段取り装置とすることができる。
なお、整流板23も整流板保持部25に対して着脱可能に取り付けられているので、基材ホルダ4のサイズに応じた整流板23を取り付けることができる。そのため、基材ホルダ4と整流板23との隙間Dを適切に調整することができる。
【0042】
また、前記実施形態においては、清浄空気供給手段30の移動可能な方向は、互いに直交する3軸方向として説明したが、これに限られない。例えば、メインフレーム11を軸とした回転方向への移動機構を設けることで、首振り動作が可能になり、清浄空気供給手段30の位置をよりフレキシブルに移動させることができる。
【0043】
また、前記実施形態においては、基材ホルダ4を保持部22に載置して保持する態様で説明したが、例えば、保持部22に基材ホルダ4を回転させるための機構を設けても良い。そうすれば、基材ホルダ4を回転させながら、基材5の装着および取り外しが可能になり、作業性を向上させることができる。
【0044】
また、前記実施形態においては、外段取り装置1が移動可能なように下フレーム12に車輪13が取り付けられているが、これに限られない。例えば、クローラー等、その他の移動機構によって、外段取り装置1を移動させても良い。
【0045】
また、前記実施形態においては、基材ホルダ4の内表面側と整流板23との間に形成される隙間Dに清浄空気を供給させているが、これに限られない。例えば、基材ホルダ4の頂部に形成された開口部43から基材ホルダ4の内表面側に清浄な空気をより多く供給し、成膜面を清浄に保つことができれば、整流板23を保持部材20上に設置しない形態も採り得る。
【符号の説明】
【0046】
1…外段取り装置、2…成膜装置、4…基材ホルダ、5…基材、5’…遮蔽板、10…移動可能フレーム、23…整流板、30…清浄空気供給手段、32…吐出部、43…開口部、D…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜装置内に配置されるとともに被成膜対象の基材が装着される基材ホルダを保持する保持部材と、
この保持部材が取り付けられた移動可能フレームと、
この移動可能フレームに取り付けられるとともに、前記基材ホルダの表面に清浄空気を供給する清浄空気供給手段と
を備えたことを特徴とする外段取り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の外段取り装置において、
前記清浄空気供給手段は、冷風を供給することを特徴とする外段取り装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の外段取り装置において、
前記清浄空気供給手段は、温度調節機能および除湿機能を備えていることを特徴とする外段取り装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の外段取り装置において、
前記基材ホルダはドーム状に形成されるとともに頂部には開口部が設けられ、
前記保持部材には、前記基材ホルダを保持した際に前記基材ホルダの内表面側との間に隙間が形成されるように整流板が配置され、
前記清浄空気供給手段には、清浄空気を吐出するとともに、前記基材ホルダを保持した際に前記開口部に面して配置される吐出部が設けられていることを特徴とする外段取り装置。
【請求項5】
請求項4に記載の外段取り装置において、
前記清浄空気供給手段は、前記基材ホルダから離隔移動可能に前記移動可能フレームに対して取り付けられていることを特徴とする外段取り装置。
【請求項6】
請求項5に記載の外段取り装置において、
前記清浄空気供給手段は、互いに直交する3軸方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とする外段取り装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の外段取り装置において、
前記保持部材は、昇降可能に前記移動可能フレームに対して取り付けられていることを特徴とする外段取り装置。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれかに記載の外段取り装置において、
前記基材ホルダにおける前記基材の未装着部位に遮蔽板が装着されていることを特徴とする外段取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−189740(P2010−189740A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37388(P2009−37388)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】