説明

外部記憶装置およびそのケース

【課題】小型の外部記憶装置の互換性を高める。
【解決手段】記憶媒体を装着すると共に、一端に外部接続用のコネクタを装着した配線基板を内部に収容した状態で、第1,第2のケースを固定機構により固定する。この第1のケースには、配線基板に対向する面の複数箇所に、外部の機器に取り付けるための第1のねじ穴を設け、第2のケースには、第1のケースの第1のねじ穴に対応する複数の位置の各々に、当該第2のケース内部に向かって突出して、第1のねじ穴にネジ止めされるネジが侵入可能な空間を確保する壁部を設ける。その上で、複数の壁部の少なくとも一部には、第2のケース内側側面に、配線基板を下から支持する支持部材との間に配線基板を挟み込むフックを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部記憶装置とそのケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からハードディスク(以下、必要に応じてHDと略称する)やシリコンディスク(以下、同様にSSDと略称する)が、外部記憶装置として広く用いられている。これらの外部記憶装置は、コンピュータ内部に装着させる際の互換性を重視して、形状や取付ネジの位置などが規格化されている。最近では、ハードディスクに代えて、SSDを取り付けることもあり、本来ハードディスクのディスクの大きさから規定された3.5インチの規格や2.5インチの規格が、他の外部記憶装置においても用いられることが多い。また、大きさの異なる外部記憶装置を装着するアダプタも種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−108405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ノート型のコンピュータについては小型化の要求が高く、ハードディスクやSSDにおいては、形状や取付関係の互換性を保ちつつ、できるだけ小さな形状とすることが強く求められている。特に、SSDでは、ハードディスクを換装するといった使われ方があり、ハードディスクとの互換性が求められている。しかしながら、SSDでは、用いられる記憶媒体が半導体メモリチップであることから、2.5インチのディスクなどの記憶媒体を用いるハードディスクとは、内蔵部品から見た筐体形状への要求が異なり、必ずしも形状の互換性が保たれているとは言えなかった。特に、小型のノート型コンピュータに装着できるように内蔵ハードディスクがぎりぎりまでスリム化されていると、従来のSSDでは、換装することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
記憶媒体を内蔵する外部記憶装置であって、
前記記憶媒体を装着すると共に、一端に外部接続用のコネクタを装着した配線基板と、
前記配線基板を両側から覆う第1,第2のケースと、
該第1のケースと該第2のケースとを、内部に前記配線基板収納した状態で固定する固定機構と
を備え、
前記第1のケースは、前記配線基板に対向する面の複数箇所に、外部の機器に取り付けるための第1のねじ穴を備え、
前記第2のケースには、
前記第1のケースの前記第1のねじ穴に対応する複数の位置の各々に、当該第2のケース内部に向かって突出して、前記第1のねじ穴にネジ止めされるネジが侵入可能な空間を確保する壁部と、
前記配線基板を支持する複数の支持部材と
を設け、
前記複数の壁部の少なくとも一部には、前記第2のケース内側側面に、前記支持部材との間に前記配線基板を挟み込むフックを備えた
外部記憶装置。
【0007】
かかる外部記憶装置によれば、記憶媒体を装着した配線基板は、固定機構により固定される第1,第2のケース内に収容され、しかも支持部材と壁部に設けたフックとの間に挟み込んで保持される。そのうえで、この外部記憶装置は、そのまま第1のねじ穴を用いて、外部の機器に取り付けることができる。第1のねじ穴にネジが侵入可能な空間を確保する壁部が、配線基板を固定するための機構としても働くので、外部記憶装置の小型化を図ることができる。この結果、他の外部記憶装置との互換性を確保することも容易となる。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載の外部記憶装置であって、
前記第1または第2のケースは、前記第1のねじ穴とは前記ネジの侵入方向が異なる複数の第2のねじ穴を備え、
前記壁部は、前記空間を、前記第1,第2のねじ穴に排他的にネジ止めされるネジに対して侵入可能に設けられた
外部記憶装置。
【0009】
この外部記憶装置は、第2のねじ穴を第1のねじ穴とはネジの侵入方向が異なるように設けており、壁部が形成する空間には、第1,第2のねじ穴にネジ止めされるネジが排他的に侵入可能となっているので、第1,第2のねじ穴に対応したいずれの方向からでも、ネジ止めすることができる。このため、外部記憶装置の取り付けの自由度を高めつつ、外部記憶装置の内部に必要とされるネジ止めの空間を低減して、装置の小型化を図ることができる。なお、第2のねじ穴は、第1のケースに設けても良いし、ケースの組合わせ形状を工夫して、第2のケースに設けることも可能である。もとより、第2のねじ穴の一部を第1のケースに、残りを第2のケースに設けても良い。第2のねじ穴へのネジの侵入方向は、第1のねじ穴へのネジの侵入方向と異なっていれば良く、両者が直角の関係であれば、取付方向が縦横2方向とすることができる。もとより取り付けられる外部機器の形状に合わせて、両者が他の角度の関係となっていても良い。第2のねじ穴におけるネジの侵入方向は、第2のねじ穴のすべてについて同一である必要はなく、第2のケースの対向する側面に設けられていれば、侵入方向も対向することになる。もとより第2のケースの隣り合った側部に設けた場合には、第2のねじ穴におけるネジの侵入方向は、互いに交叉(多くは直交)することになる。第1のねじ穴と第2のねじ穴におけるネジの侵入方向は必ずしも交叉する必要はなく、両方のねじ穴は、いわゆるねじれの位置にあってもよい。
【0010】
[適用例3]
適用例1または適用例2記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースの前記配線基板に対向する面は、前記第1のねじ穴の周辺を、所定寸法だけ隆起させ、前記第1,第2のケースを前記固定機構により固定した際の前記第1のケースの前記第1のねじ穴から、前記第2のケースの底面までの寸法を、前記外部の機器への装着寸法とした外部記憶装置。
【0011】
かかる外部記憶装置では、第1のねじ穴周辺を所定寸法だけ隆起させていることから、第1,第2のケースを固定機構により固定した際の第1のねじ穴表面から、第2のケースの底面までの寸法を、外部の機器への装着寸法とすると、結果的に第1のケース配線基板に対向する面の高さを、その分、低くすることができる。この結果、この外部記憶装置をノートタイプのコンピュータなどに取り付ける際に必要となる体積を抑制することができる。もとより、第1ねじ穴の周辺を平坦なままとしても良いし、逆に凹ませることも可能である。また第1のねじ穴の周辺のみならず、例えば配線基板に装着される部品の高さに応じた範囲を一様に、あるいは部品に応じて隆起させることも差し支えない。
【0012】
[適用例4]
適用例2記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースの前記配線基板に対向する面に対して略直角をなす側壁を、少なくとも前記壁部に対応する位置に設け、
前記第2のねじ穴を、前記側壁に設けた
外部記憶装置。
【0013】
この外部記憶装置は、第2のねじ穴を、第1のケースの配線基板に対向する面に対して略直角をなす側壁であって、少なくとも壁部に対応する位置に設けられた側壁に設けているので、第1,第2のねじ穴は、共に第1のケースに設けられることになり、両方のねじ穴において必要とされる寸法精度を容易に実現することができる。また、ねじ穴の加工は第1のケースに対してのみ必要となり、製造も容易となる。なお、ここでは、側壁は第1のケースの配線基板に対向する面に対して直角をなすものとしたが、第2のケースとの組合わせができれば、他の角度であっても差し支えない。
【0014】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースは、板金加工により形成し、
前記第2のケースは、樹脂モールドにより形成した
外部記憶装置。
【0015】
この外部記憶装置は、第1のケースが板金加工により、第2のケースが樹脂モードにより、それぞれ形成されるので、ケース全体のコストを低減でき、更に量産性に優れるという利点が得られる。また、第1のケースは板金加工により形成するので、形状の変更などが容易であり、ケース外形に対する要求に柔軟に応えることができる。他方、第2のケースは樹脂モールドにより形成するので、単価を低減できるだけでなく、壁部や支持部材が樹脂形成されていることから、配線基板の確実な固定を実現する上で、配線基板が金属などにより押さえつけられて、傷つけるといった虞を解消することができる。なお、第1のケースも樹脂モールドで形成することも可能である。また、第2のケースは、ベース部分を金属や他の素材で形成し、壁部と支持部材の前記配線基板に当接する部分のみを樹脂などでコーティングした構成とすることも可能である。こうしたコーティング用の樹脂としてはゴムなどの天然樹脂や合成樹脂など、種々の材料を用いることができる。もとより、配線基板の素材との組合わせによっては、壁部や支持部材の少なくとも一方を、樹脂以外の素材によって形成しても差し支えない。もともと外部記憶装置の配線基板は、繰り返し取り外して用いることは希なので、一度、壁部材のフックと支持部材との間に配線基板を挟持してしまえば、壁部や支持部材の素材がなんであれ、配線基板を傷つける虞は小さいからである。
【0016】
[適用例6]
適用例5記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースは、前記配線基板に対向する面の周縁において、前記第2のケースの内側にはめ込まれる舌片を、前記板金を折り曲げることにより形成すると共に、該舌片に前記固定機構の一部をなす係合部を設け、
前記第2ケースには、前記舌片に設けられた前記係合部に係合して、前記固定機構を構成する係合部材を設けた
外部記憶装置。
かかる外部記憶装置では、第1のケースと第2のケースとの固定を極めて容易に実現することができる。もとより固定機構としては、第1のケースを第2のケースにネジ止め(あるいはその逆にネジ止め)するもの、グロメットやリベットなどで固定するものなど、種々の構成を採用することができる。
【0017】
[適用例7]
前記配線基板の前記第1のケース側表面には、前記配線基板のグランドと前記板金加工された第1のケースとを電気的に接続するバネ部材が設けられた適用例5または適用例6記載の外部記憶装置。
かかる外部記憶装置では、配線基板のグランドと第1のケースとの電気的な接続を確実に実現し、第1のケースによりノイズ対策を図ることができる。配線基板を、第2のケースと共に収容する第1の配線基板が板金であって、しかも配線基板のグランドと同電位に保持されることから、外部からのノイズの影響を受けにくくなり、あるいは外部へのノイズの輻射を低減することができる。なお、配線基板のグランドと第1のケースとは、バネ部材以外の導体で接続しても良い。例えば両者を電線で接続しても良いし、第1のケースから伸びた脚部が、配線基板のグランドに接触する構成としても良い。接触後、ハンダ付けする構成としても良い。あるいは、配線基板のグランドのランドから第1のケースに向けて延出された導体を第1のケースに接触させて固定するものとしても良い。更に、第1のケースは、配線基板のグランド側ではなく電源ラインに接続しても良い。また、第2のケースを導体で形成した場合には、配線基板のグランドや電源ラインを、第2のケースに接続しても良い。第1,第2のケースは、それ自体が板金など、電気的な良導体としても良いが、表面に導電性の皮膜を形成したり、カーボンなどの素材を混入した樹脂などにより形成しても差し支えない。各ケースの一部を板金などで形成し、ここに配線基板のグランドまたは電源ラインを接続しても良い。
【0018】
[適用例8]
前記第1のケースは、前記配線基板に前記コネクタか取り付けられる位置に対応する箇所が切り欠かれた適用例1ないし適用例7のいずれか記載の外部記憶装置。
この外部記憶装置では、第1のケースが配線基板上のコネクタと干渉することがなく、第1のケースの高さを、コネクタの高さによる制限を受けずに抑制することが可能となる。なお、コネクタの高さが、取付寸法に対して十分に低い場合には、第1のケースを切り欠く必要はない。また、第1のケースの切欠は、コネクタに対応した箇所以外にも設けても良い。
【0019】
[適用例9]
前記コネクタは、SATA規格のコネクタである適用例8記載の外部記憶装置。
SATA規格のコネクタは、外部記憶装置に用いられることが多く、その高さはコネクタの規格として定められているので、第1のケースが、SATA規格のコネクタの高さにより低くできることは、設計の自由度を確保する上で、有用である。もとより、IDEコネクタ、USBコネクタ、SCSIコネクタなど、他のコネクタを用いることも可能である。
【0020】
[適用例10]
前記配線基板には、前記コネクタとは別に、当該外部記憶装置を外部のコンピュータに接続するための他のコネクタを備えた適用例1ないし適用例9のいずれか記載の外部記憶装置。
かかる外部記憶装置では、例えばUSBなどの他のコネクタが備えられているので、他のコネクタを用いて、外部のコンピュータと接続することができ、その利便性を一層向上することができる。こうしたコネクタは、配線基板のいずれの位置に設けても良い。場合によっては、配線基板の表面ではなく、裏面に設けても良い。
【0021】
[適用例11]
前記記憶媒体は、磁気的にデータを記憶するディスク装置、磁気光学的にデータ記憶するディスク装置、電気的にデータを記憶する半導体記憶装置、光学的にデータを記憶する光学記憶装置のいずれかである適用例1ないし適用例10のいずれか記載の外部記憶装置。
かかる外部記憶装置は、それぞれの方法でデータを記憶することができ、各方法の利点を享受することができる。例えば、ハードディスクのように磁気的にデータを記憶するものでは、その記憶容量の大きさを利用して、大容量の記憶装置を構成することができる。また半導体記憶装置を用いた場合には、可動部がなく読み出しあるいは書き込みを高速化できるなどの利点を享受することができる。半導体記憶装置としては、SRAM、DRAMなどのメモリを用いた構成、フラッシュメモリを用いた構成、強磁性メモリを用いた構成、など種々の構成を採用することができる。また、磁気光学的な記憶装置としてはMOなどの記憶装置を代表例としてあげることができる。更に、光学的な記憶装置としては、ホログラムを用いた記憶装置を挙げることができる。もとより、これらの方法以外の記憶媒体を用いることも差し支えない。
【0022】
[適用例12]
記憶媒体を装着すると共に一端に外部接続用のコネクタを装着した配線基板を内蔵可能な外部記憶装置用ケースであって、
前記配線基板を両側から覆う第1,第2のケースと、
該第1のケースと該第2のケースとを、内部に前記配線基板収納した状態で固定する固定機構と
を備え、
前記第1のケースは、前記配線基板に対向する面の複数箇所に、外部の機器に取り付けるための第1のねじ穴を備え、
前記第2のケースには、
前記第1のケースの前記第1のねじ穴に対応する複数の位置の各々に、当該第2のケース内部に向かって突出して、前記第1のねじ穴にネジ止めされるネジが侵入可能な空間を確保する壁部と、
前記配線基板を支持する複数の支持部材と
を設け、
前記複数の壁部の少なくとも一部には、前記第2のケース内側側面に、前記支持部材との間に前記配線基板を挟み込むフックを備えた
外部記憶装置用ケース。
【0023】
かかる外部記憶装置用ケースは、記憶媒体を装着した配線基板を、固定機構により固定される第1,第2のケース内に収容することができ、しかも支持部材と壁部に設けたフックとの間に、配線基板を挟み込んで保持することができる。また、このケースを用いた外部記憶装置は、そのまま第1のケースに設けられた第1のねじ穴を用いて、外部の機器に取り付けることができる。第1のねじ穴にネジが侵入可能な空間を確保する壁部が、配線基板を固定するための機構としても働くので、外部記憶装置の小型化を図ることができる。この結果、このケースを用いた外部記憶装置について、他の外部記憶装置との互換性を確保することも容易となる。こうした外部記憶装置用ケースでは、適用例1ないし11に記載した種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例のSSDの外観を示す斜視図である。
【図2】SSDの分解斜視図である。
【図3】下ケースの斜視図である。
【図4】配線基板を示す平面図である。
【図5】下ケースの凹部周辺の取付関係を示す説明図である。
【図6】下ケースの平面図である。
【図7】図6におけるA−A矢視の断面拡大図である。
【図8】図6におけるB−B矢視の断面拡大図である。
【図9】配線基板の固定の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を、実施例に基づいて以下説明する。図1は、本発明の実施例としてのSSD10の外観を示す斜視図である。このSSD10は、板金加工された厚さ0.6ミリのSECC製の上ケース20を、ABS樹脂製の下ケース50に嵌め込むことで構成され、その内部には、配線基板80を収容している。配線基板80には、半導体メモリであるフラッシュメモリが多数実装されており、全体で64Gバイトの記憶容量を実現している。このSSD10の長手方向一端には、コンピュータの内部に設けられたSATAのコネクタに結合されるコネクタ(以下、SATAコネクタとも呼ぶ)85が設けられ、他端には、USBコネクタ88が設けられている。
【0026】
本実施例のSSD10は、2.5インチサイズのハードディスクの形状の規格と同一の形状をしており、上面22には、2.5インチサイズのハードディスクの規格に従い、4箇所のねじ穴(以下、第1のねじ穴という)24〜27が設けられている。また、これらの第1のねじ穴24と25、26と27を結ぶ直線上であって、SSD10の左右の側面には、同様に規格に従い、取付用のねじ穴(以下、第2のねじ穴という)31〜34が設けられている(第2のねじ穴32、34は図1では図示されていない)。これらのねじ穴24〜27、31〜34は、いずれも上ケース20の板金を下穴加工およびバーリング加工した後、ねじ穴加工することにより形成される。ねじ穴の位置はもとより、SSD10の厚み、幅、奥行き、SATAコネクタ85の位置なども、すべて2.5インチハードディスクの規格に従っている。なお、実施例における上ケース20が特許請求の範囲の第1のケースに、下ケース50が第2のケースに、それぞれ相当する。
【0027】
上ケース20と下ケース50との組合わせ方法については後述するが、図1に示したように両者が、内部に配線基板80を収納した状態で組み付けられると、SSD10は、第1のねじ穴24〜27または第2のねじ穴31〜34により、外部の機器、例えばノート型のパソコン内部などに取り付け可能となる。この第1のねじ穴24〜27および第2のねじ穴31〜34の配置は、2.5インチハードディスクの規格に従っている。また、図示するように、上ケース20の上面22に設けられた第1のねじ穴24〜27の周辺には、隆起部24A〜27Aが設けられている。このため、SSD10の各隆起部を除いた厚みは、2.5インチハードディスクが規定する厚みより、0.5mm以上薄くなっている。従って、狭隘なノート型のコンピュータなどの内部への取付が容易となっている。
【0028】
図2は、SSD10の構造を示す分解斜視図である。図示するように、下ケース50は、SATAコネクタ85が位置する側を除いて、底面52から側壁54がほぼ直角に立ち上がった形状に形成されている。また、下ケース50の底面52には、凹み56が形成されている。この底面52の凹み56は、2.5インチのハードディスクの形状を模しているが、同時にリブとして働き、下ケース50の底面52に剛性を付与するのに役立っている。また、下ケース50の開口側端部の両サイドは、外方に延長され、凸部97,98を形成している。この凸部97,98には同様に延長された上ケース20の突出部28,29が嵌まる。凸部97,98は、配線基板80の端部に取り付けられたSATAコネクタ85を保護する目的で設けられている。
【0029】
下ケース50の底面52の形状を図3に示した。図3は、図1における上下関係を逆にして、下ケース50の形状を示す斜視図である。図2および図3に示したように、この下ケース50には、側壁54の4箇所に、内側に向かう凹部61〜64が設けられている。この凹部61〜64の位置は、第1のねじ穴24〜27および第2のねじ穴31〜34の位置に対応している。
【0030】
この下ケース50に、配線基板80が収納されている。配線基板80に、フラッシュメモリFMやSATAコネクタ85、USBコネクタ88が設けられていることは既に説明した。また、USBコネクタ88の隣には、板ばねを用いたコンタクト部材89が取り付けられている。このコンタクト部材89は、配線基板80のグランドラインに電気的に接続されており、後述するように、上ケース20との電気的な導通を確保するために設けられている。これらの部材をハンダ付けされた配線基板80は、図4の平面図に示したように、その周縁部の、下ケース50の凹部61〜64に対応する位置が、凹部61〜64の外形形状に合わせて切り欠かれており、下ケース50への収納に際しては、凹部61〜64を位置決め部材として利用することができる。配線基板80の固定方法については、後で詳しく説明するが、下ケースの凹部61〜64と配線基板80の切り欠きの存在により、配線基板80は、下ケース50内に、位置決めされて配置される。
【0031】
下ケース50の凹部61〜64と、第1,第2のねじ穴24〜27、31〜34の関係について説明する。図5は、これらの関係を示した斜視図である。図5では、代表例として、凹部63とその周辺のみを示している。また図3では、理解の便を図って、第1のねじ穴26については、その周辺の隆起部も含めて図示を省力している。
【0032】
上ケース20の第1のねじ穴24〜27の近傍には、第2のねじ穴31〜34を形成するための側壁部材41〜43が形成されている。その側壁部材41〜44は、図5に示したように、上ケース20の上面22から略垂直に折り曲げられて形成されている。この折り曲げ箇所は、凹部61〜64に対応する位置からは、ずれている。これは、折り曲げ加工時に用いる治具が、バーリング加工された第1,第2のねじ穴と干渉するのを避けるためである。折り曲げられた側壁部材41〜44は、上ケース20を下ケース50に嵌め合わせると、下ケース50の凹部63近傍の側壁54に設けられた窪み(図2参照)に収納される。また、第1のねじ穴24〜27は、凹部61〜64の上方開口に対応して位置し、第2のねじ穴31〜34は、凹部61〜64の側面開口に対応して位置する。従って、ここに、外部機器にSSD10を取り付ける雄ネジFB1またはFB2を螺合すると、各ネジFB1,FB2は、凹部61〜64の内部空間に侵入することができる。この結果、各ネジFB1,FB2が、ケース内部に侵入して、配線基板80上の電子部品を傷つけるといったことがない。また、外部機器との取り付けは、通常第1のねじ穴または第2のねじ穴のいずれか一方を用いて行なわれるので、同時に2つのネジFB1,FB2が、凹部61から64に侵入することはない。このため、凹部61〜64は、その内部空間の大きさを一本のネジの侵入を許容するだけの大きさで足り、凹部61〜64の形状を必要最小限度のものにすることができる。
【0033】
上ケース20と下ケース50との固定は、上ケース20の一部を折り曲げて形成した側面の5つの舌片35〜39が、下ケース50の側壁54の内側に入り込み、側壁54の内側に設けられた突起75〜79に、舌片35〜39に設けられた開口が嵌まることにより行なわれる。舌片35,36は、上ケース20の短手方向に両サイド略中央部に、舌片37,38は、上ケース20の突出部28,29の側方に、舌片39は、上ケース20のUSBコネクタ88が配置された側の略中央に、それぞれ設けられており、突起75〜79は、それぞれ舌片35〜39に対応する位置に設けられている。なお、この舌片35〜39は、配線基板80を固定するためにも用いられている。
【0034】
配線基板80の固定について説明する。図6は下ケース50の平面図、図7はそのA−A矢視の断面拡大図、図8は図6におけるB−B矢視の断面拡大図である。更に、図8は、下ケース50の凹部64付近に配線基板80と上ケース20とを組み付ける状態を示す説明図である。図示するように、下ケース50の凹部61〜64近傍かつ凹部61〜64から見て内側に、支持凸部65〜68が形成されている。支持凸部65〜68は、図8に示したように、段付きの形状(以下、段付き部とも呼ぶ)に形成されており、配線基板80を載置する支持部として働く。
【0035】
一方、凹部61〜64のうち、凹部64については、半円筒形状に形成された側の外側に、フック74が形成されている。フック74は、図8に示したように、上ケース20側から下ケース50側に向けた傾斜部を備えている。従って、配線基板80を下ケース50に配置するとき、上方から差し込まれた配線基板80の切り欠き部94の縁は、このフック74の傾斜部を乗り越えて押し込まれ、図8に示すように、支持凸部68の段付き部とフック74の下面との間に挟持された状態となる。フック74は4つの凹部の一つ(64)にのみ設けられており、かつフック74および支持凸部68はいずれも合成樹脂製なので、挟持によって、過度のストレスが配線基板80に加えられることはない。もとより、フック74は、他の凹部61〜63にも同様に設け、このフックにより配線基板80を下ケース50内に固定するものとしても良い。本実施例では、フック74は、凹部64にのみ設けられているが、配線基板80は、上ケース20の周囲の5箇所に設けられた舌片35〜39によって固定される構造となっている。
【0036】
配線基板80は、上ケース20を下ケース50に組み付けることによって、舌片35〜39の先端により押さえつけられ、ケース内に固定される。舌片35〜39は、上述したように、下ケース50の側壁54内側に設けられた突起75〜79に嵌り込み、固定される。と同時に、舌片35〜39が、配線基板80の上面に当接し、支持凸部65〜68の段付き部に載置された配線基板80を固定する。
【0037】
上ケース20を下ケース50に組み付けたとき、上ケース20の上面22の内側と配線基板80の上面との間には、図9に示したように、HMの高さが確保されている。この高さは、配線基板80に取り付けられたフラッシュメモリFMの高さより高い、このため、配線基板80に取り付けられたフラッシュメモリFMが上ケース20の内側に当接することはない。他方、USBコネクタ88の隣に配置されたコンタクト部材89とSATAコネクタ85の高さHCは、この高さHMより、僅かに高い。従って、コンタクト部材89は、上ケース20下ケース50に取り付けると、上ケース20の上面22の内側に当接し、電気的にも接続される。他方、SATAコネクタ85については、コネクタ85に対応する上ケース20の部位は切り欠かれており、上ケース20はコネクタ85を覆っていない。このために、上ケース20がコネクタ85に当接することはない。しかも、コネクタ85の高さHCは、上ケース20の内側と配線基板80の上面との間の寸法HMに上ケース20の板厚(0.6ミリ)を加えたものよりは低い。
即ち、
HC<HM+0.6
という関係としてあるので、コネクタ85が、上ケース20から突出することもない。
【0038】
以上説明した本実施例のSSD10は、形状が2.5インチハードディスクの規格に一致しており、通常の2.5インチハードディスクを換装する際に、取付ネジなどをそのまま用いることができる。しかも、第1のねじ穴24〜27の周辺には、隆起部24A〜27Aが設けられており、上ケース20の上面は、隆起部24A〜27Aの隆起寸法分だけ控えた大きさとなっている。このため、2.5インチハードディスクの規格よりも更に体積を縮小したハードディスクとも互換性を確保している。更に、本実施例のSSD10は、その下ケース50の外形形状も、底面52に凹み56を設けるなど、小型化が図られたハードディスクと近似の形状にしてあるので、小型ハードディスクとの互換性は一層高いものとされている。
【0039】
また、本実施例のSSD10は、凹部61〜64を設けることにより、2方向からの取付用のネジFB1(FB2)が侵入する空間を確保すると共に、凹部64の外側に設けたフック74により、配線基板80を固定することができる、という優れた作用効果を奏する。配線基板80を挟持する支持凸部68とフック74とは、合成樹脂製なので、配線基板80に過度のストレスを加えたり、傷つけるということがない。また絶縁性も十分に確保されている。
【0040】
また、本実施例のSSD10は、上ケース20が板金加工により形成されており、かつコンタクト部材89を介して配線基板80のグランドと導通されているので、外部のノイズの影響を抑制でき、かつ配線基板80からのノイズの輻射もカットすることができる。
【0041】
本実施例のSSD10は、上ケース20に隆起部24A〜27Aを設けることで、上ケース20の隆起部以外の厚みを低減している。また、コネクタ85上部を上ケース20が覆わないように、上ケース20の上面は切り欠かれた形状となっている。更に、下ケース50の底面52には凹み56が設けられている。これらの構成の各々、および総体により、本実施例のSSD10は、その占有体積を小さくしており、2.5インチハードディスクの互換性を確保したまま、より一層小型化された2.5インチハードディスクを換装することができる。
【0042】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、種々の態様で実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10…SSD
20…上ケース
22…上面
24〜27…第1のねじ穴
24A〜27A…隆起部
28,29…突出部
31〜34…第2のねじ穴
35〜39…舌片
41〜44…側壁部材
50…下ケース
52…底面
54…側壁
56…凹み
61〜64…凹部
65〜68…支持凸部
74…フック
75〜79…突起
80…配線基板
85…SATAコネクタ
88…USBコネクタ
89…コンタクト部材
91〜94…切り欠き部
98,99…凸部
FB1,FB2…ネジ
FM…フラッシュメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体を内蔵する外部記憶装置であって、
前記記憶媒体を装着すると共に、一端に外部接続用のコネクタを装着した配線基板と、
前記配線基板を両側から覆う第1,第2のケースと、
該第1のケースと該第2のケースとを、内部に前記配線基板を収納した状態で固定する固定機構と
を備え、
前記第1のケースは、前記配線基板に対向する面の複数箇所に、外部の機器に取り付けるための第1のねじ穴を備え、
前記第2のケースには、
前記第1のケースの前記第1のねじ穴に対応する複数の位置の各々に、当該第2のケース内部に向かって突出して、前記第1のねじ穴にネジ止めされるネジが侵入可能な空間を確保する壁部と、
前記配線基板を支持する複数の支持部材と
を設け、
前記複数の壁部の少なくとも一部には、前記第2のケース内側側面に、前記支持部材との間に前記配線基板を挟み込むフックを備えた
外部記憶装置。
【請求項2】
請求項1記載の外部記憶装置であって、
前記第1または第2のケースは、前記第1のねじ穴とは前記ネジの侵入方向が異なる複数の第2のねじ穴を備え、
前記壁部は、前記空間を、前記第1,第2のねじ穴に排他的にネジ止めされるネジに対して侵入可能に設けられた
外部記憶装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースの前記配線基板に対向する面は、前記第1のねじ穴の周辺を、所定寸法だけ隆起させ、前記第1,第2のケースを前記固定機構により固定した際の前記第1のケースの前記第1のねじ穴から、前記第2のケースの底面までの寸法を、前記外部の機器への装着寸法とした外部記憶装置。
【請求項4】
請求項2記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースの前記配線基板に対向する面に対して略直角をなす側壁を、少なくとも前記壁部に対応する位置に設け、
前記第2のねじ穴を、前記側壁に設けた
外部記憶装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースは、板金加工により形成し、
前記第2のケースは、樹脂モールドにより形成した
外部記憶装置。
【請求項6】
請求項5記載の外部記憶装置であって、
前記第1のケースは、前記配線基板に対向する面の周縁において、前記第2のケースの内側にはめ込まれる舌片を、前記板金を折り曲げることにより形成すると共に、該舌片に前記固定機構の一部をなす係合部を設け、
前記第2ケースには、前記舌片に設けられた前記係合部に係合して、前記固定機構を構成する係合部材を設けた
外部記憶装置。
【請求項7】
前記配線基板の前記第1のケース側表面には、前記配線基板のグランドと前記板金加工された第1のケースとを電気的に接続するバネ部材が設けられた請求項5または請求項6記載の外部記憶装置。
【請求項8】
前記第1のケースは、前記配線基板に前記コネクタか取り付けられる位置に対応する箇所が切り欠かれた請求項1ないし請求項7のいずれか記載の外部記憶装置。
【請求項9】
前記コネクタは、SATA規格のコネクタである請求項8記載の外部記憶装置。
【請求項10】
前記配線基板には、前記コネクタとは別に、当該外部記憶装置を外部のコンピュータに接続するための他のコネクタを備えた請求項1ないし請求項9のいずれか記載の外部記憶装置。
【請求項11】
前記記憶媒体は、磁気的にデータを記憶するディスク装置、磁気光学的にデータ記憶するディスク装置、電気的にデータを記憶する半導体記憶装置、光学的にデータを記憶する光学記憶装置のいずれかである請求項1ないし請求項10のいずれか記載の外部記憶装置。
【請求項12】
記憶媒体を装着すると共に一端に外部接続用のコネクタを装着した配線基板を内蔵可能な外部記憶装置用ケースであって、
前記配線基板を両側から覆う第1,第2のケースと、
該第1のケースと該第2のケースとを、内部に前記配線基板を収納した状態で固定する固定機構と
を備え、
前記第1のケースは、前記配線基板に対向する面の複数箇所に、外部の機器に取り付けるための第1のねじ穴を備え、
前記第2のケースには、
前記第1のケースの前記第1のねじ穴に対応する複数の位置の各々に、当該第2のケース内部に向かって突出して、前記第1のねじ穴にネジ止めされるネジが侵入可能な空間を確保する壁部と、
前記配線基板を支持する複数の支持部材と
を設け、
前記複数の壁部の少なくとも一部には、前記第2のケース内側側面に、前記支持部材との間に前記配線基板を挟み込むフックを備えた
外部記憶装置用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−108141(P2011−108141A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264688(P2009−264688)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】