説明

多孔質シート

【課題】 高い耐熱性を有し、十分な安全性が得られる多孔質シートを提供する。
【解決手段】 無機繊維不織布に高分子ナノファイバー層を被覆した多孔質シートであり、多孔質シートの耐熱性が300℃以上であり、高分子ナノファイバー層は、材質がポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドの熱可塑性高分子から選ばれる1種類または複数種類の混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シート、例えば、非水電解質二次電池用セパレータのようなセパレータとして有用な多孔質シート、とくに、無機繊維不織布に高分子ナノファイバー層を被覆した多孔質シートに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、携帯電話や自動車用途などに使用されており、高容量化の傾向に伴って、高い安全性が要求されるようになってきている。
【0003】
現行のリチウムイオン電池では、正極と負極の電子伝導を絶縁する役割として、10〜30μmのポリオレフィン系微多孔膜セパレータが使用されている。これらの膜の素材としてはポリエチレンおよびポリプロピレンなどが広く利用されている。この場合、もしも微小短絡が起こり温度上昇した場合は120℃付近でポリエチレンが微多孔を閉じ、電池反応の進行を阻止するシャットダウン機能が備えられている。ただし、ポリプロピレンの溶融温度160℃を超えると、セパレータのメルトダウンが起こり全面短絡する恐れがある。さらに220℃以上では正極が熱分解して、放出された酸素と電解液などの有機溶媒が激しく反応して熱暴走に至る可能性もある。
【0004】
これらの問題点を解決する種々の例が提案されている。
【0005】
特許文献1(特開2008−218085号公報)には、ポリオレフィン樹脂に無機フィラーを混合溶融して、多孔化と強度向上のために一軸延伸あるいは二軸延伸したフィルムが記載されている。
【0006】
特許文献2(特開2007−273443号公報)には、ポリオレフィン微多孔膜を素材として、無機フィラーを含んだスラリーを塗布又は含浸処理して乾燥する方法が記載されている。
【0007】
特許文献3(特開2005−285605号公報)には、正極又は負極活物質の表面にセラミックフィラーを含む多孔層を形成させる方法が記載されている。
【0008】
特許文献4(特開2006−164761号公報)には、150℃で実質的に変形しないイオン透過性のシート状物に、有機微粒子を塗布又は含浸させたセパレータが記載されている。
【0009】
特許文献5(特開2010−251078号公報)には、無機多孔質材料に耐熱性の樹脂を被覆することで、耐熱性のある多孔質シートとする方法が記載されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1から3に記載の従来例では、いずれも、基材のフィルムは、ポリオレフィン系樹脂であるため、高温での耐熱性が不十分であり、電池の熱暴走を防ぐために安全が確保されているとは言いがたかった。さらに、無機フィラーを添加するためには既存のセパレータよりも製造工程が複雑となり、製造コストが増大するといった課題も有していた。
【0011】
特許文献4に記載の従来例では、シート上の基材に有機微粒子を塗布または含浸させているが、有機微粒子を敷き詰めた状態または基材中に一部が浸透した状態では、均一で微細な孔が得られにくい。そのため、リチウムイオン電池として安定した充放電特性が得られにくいといった問題があった。
【0012】
特許文献5に記載の従来例では、耐熱性には優れているが、基材の無機繊維に表面被覆する方法では、シートの孔径が大きくなるためデンドライト生成による短絡が発生しやすく、安定した充放電特性が得られにくいといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−218085号公報
【特許文献2】特開2007−273443号公報
【特許文献3】特開2005−285605号公報
【特許文献4】特開2006−164761号公報
【特許文献5】特開2010−251078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、高い耐熱性を有し、十分な安全性が得られる多孔質シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0016】
(1)無機繊維不織布に高分子ナノファイバー層を被覆したことを特徴とする多孔質シート。
【0017】
(2)多孔質シートの耐熱性が300℃以上であり、多孔質シートを用いた電池の放電容量が充電容量の99パーセント以上であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質シート。
【0018】
(3)無機繊維不織布は、セラミックファイバーを50重量%以上95重量%以下含み、厚みが10μm以上100μm以下であり、透気度が5秒以上100秒以下であることを特徴とする前述の多孔質シート。
【0019】
(4)高分子ナノファイバー層は、材質がポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドの熱可塑性高分子から選ばれる1種類または複数種類の混合物であることを特徴とする前述の多孔質シート。
【0020】
(5)高分子ナノファイバー層は、繊維径が10nm以上500nm以下であり、厚みが1μm以上8μm以下であることを特徴とする前述の多孔質シート。
【0021】
(6)前述の多孔質シートを有するセパレータ。
【0022】
(7)前述のセパレータが設けられている電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明の多孔質シートは、無機繊維不織布に高分子ナノファイバー層を被覆したことを特徴とする多孔質シートであり、例えば、耐熱性に優れた無機繊維を主成分とした不織布を基材とし、その基材の表面に高分子ナノファイバーからなる層を被覆した構造にする。
【0024】
基材とする無機繊維は、500℃以上でも変形収縮することはほとんどないため、既存のポリオレフィンを基材とした製品よりもはるかに高い耐熱性を有する。
【0025】
また、無機繊維は不燃性であるため、リチウムイオン電池で大きな容量を占めているセパレータの基材として使用した場合、可燃性の電解液などを組み込んでいても、十分な安全性が得られる。
【0026】
さらに、高分子ナノファイバー層で被覆すると、均一で微細な孔を三次元的に作製することができる。そのため、リチウムデンドライトの生成による短絡発生を抑制し、リチウムイオン電池として安定した充放電特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明においては、耐熱性に優れた無機繊維を主成分とした無機繊維不織布を基材とし、その基材に高分子ナノファイバー層を被覆して、多孔質シートを作製する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態における無機繊維不織布は以下の通りである。
【0029】
無機繊維としては、SiO、Al、ZrO、MgO、CaOなどの酸化物を主成分とし、繊維径が1μm以上100μm以下の繊維形状のものが使用できる。具体的にはガラス繊維、セラミックファイバー、アルミナ繊維、ムライト繊維、ウィスカーなどが使用できる。
【0030】
無機繊維不織布は、上記無機繊維とセルロース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンなどの有機繊維からなり、無機繊維/有機繊維の比率が重量比で50/50〜95/5であればよく、好ましくは60/40〜90/10である。無機繊維は不織布の骨材であり、有機繊維は無機繊維を結合させる役割を果たす。無機繊維の量が50%未満だと耐熱性が不十分であり、高温において不織布の収縮が大きくなってしまう。95%を超えると、有機繊維の量が少なすぎるため不織布自体の強度が十分ではなく、取り扱いが著しく悪くなってしまう。
【0031】
無機繊維不織布の厚みは10μm以上100μm以下が好ましい。10μm未満では不織布自体の強度が小さく、さらにピンホールなどが発生しやすくなってしまう。100μmを超えると、セパレータとして使用した際に抵抗が大きくなり、十分な充放電特性が得られない。
【0032】
無機繊維不織布の透気度は5秒以上100秒以下が好ましい。5秒未満では空孔の面積が大きいため、基材としての強度が低く、ナノファイバー層にピンホールが発生しやすくなってしまう。100秒を超えるとセパレータとしての抵抗が大きすぎるため十分な充放電特性が得られない。
【0033】
透気度の評価方法はJIS P 8117に従った。本方法は100ccの空気が不織布を通過する時間を測定するもので、不織布の緻密度を表すものである。
【0034】
無機繊維不織布の製造方法は通常の製紙方法が適用できる。例えば、無機繊維とフィビリル化したセルロースを水に分散させてスラリーとして、それを抄紙する方法を採用できる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態における高分子ナノファイバー層は以下の通りである。
【0036】
高分子ナノファイバーの材質はポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどの熱可塑性高分子から選ばれる1種類または複数種類の混合物などが使用できる。
【0037】
繊維径は10nm以上500nm以下が好ましい。10nm未満では製法が限定されるため、量産には不向きとなる。500nmを超えると十分に微細な多孔が得られず、空孔が大きくなるため内部短絡が発生してしまう。
【0038】
高分子ナノファイバー層の厚みは1μm以上8μm以下が好ましい。1μm未満では層の厚みが不十分であり、空孔が大きくなって内部短絡が発生してしまう。8μmを超えると内部抵抗が高くなって十分な充放電特性が得られない。
【0039】
高分子ナノファイバー層の目付量(単位面積当たりの重量)は0.1g/m以上1.5g/m以下が好ましい。0.1g/m未満ではナノファイバー層の緻密度が不十分であり、空孔が大きいため内部短絡が発生しやすくなる。1.5g/mを超えると内部抵抗が高くなるため十分な充放電特性が得られない。
【0040】
高分子ナノファイバーは、エレクトロスピニング(電荷誘導紡糸)法によって作製できる。エレクトロスピニングは、高電圧を印加したノズルから高分子溶液を押し出し、高分子溶液を帯電させることで、対向電極のコレクター側に向かって延伸してナノファイバーを作製する方法である。高分子溶液の配合や印加する電圧などのパラメーターを変更することでナノファイバーの繊維径や形状を調整でき、層構造を制御できる。高分子溶液はナノファイバーを構成する高分子と溶媒からなり、高分子はポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどの熱可塑性高分子から選ばれる1種類または複数種類の混合物であり、溶媒はエタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、酢酸エチル、酢酸メチル、水などから選ばれる1種類または複数種類の混合物を使用できる。上記高分子溶液には、高分子ナノファイバー層を作製する時間を短縮するために高分子粉末を添加することもできる。ただし高分子粉末を添加する場合は、使用している溶媒に溶解しない高分子を選択する必要がある。高分子粉末はポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性高分子が使用でき、粒子径は50μm以下が好ましい。50μmを超えると均一な分散が困難になり、高分子ナノファイバー層作製時にムラが発生しやすくなる。
【0041】
無機繊維不織布に高分子ナノファイバー層を被覆して多孔質シートを作製する方法としては、無機繊維不織布に高分子ナノファイバー層を積層した後、加熱しながらプレス加工する方法を挙げることができる。加熱により軟化した高分子ナノファイバー層に圧力を加えることで、無機繊維不織布と完全に接着した一体構造にでき、同時に高分子ナノファイバー層の厚みを適切な値に制御できる。加熱温度は高分子ナノファイバー層を十分に軟化できればよく、材質によって異なるが、100℃以上250℃以下が好ましい。100℃未満では十分に軟化せず、250℃を超えると、高分子ナノファイバーが完全に溶融してしまい、微孔構造を保てなくなってしまう。
【0042】
作製した多孔質シートの評価方法は以下の通りである。
【0043】
(1)耐熱特性の評価
30×50mmに切り出した多孔質シートをSUS板の上にクリップで固定して、電熱ヒーターを用いてそのSUS板を加熱した。室温から300℃まで加熱して、形状変化等の外観状態を観察した。フィルムが変形溶解するサンプルでは、その温度を耐熱性として、変形溶解が無いサンプルは300℃以上とした。
【0044】
(2)高分子ナノファイバー層の厚み、繊維径測定
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、多孔質シートの断面を観察し、厚みと繊維径を測定した。
【0045】
(3)電池特性の評価
電池特性の評価として、作製した多孔質シートをセパレータとして組み込んだ電池の放電容量を測定した。コバルト酸リチウム正極材料を70μmの厚さに塗工した幅30mmのアルミ箔からなる正極シート(厚さ100μm)と、リチウム箔幅30mmの負極シートを、セパレータの間に介在させて、30×55×3mmの扁平状に巻き取ったものを、予め皿状に加工しておいたアルミニウムラミネートパッケージ内に収めた。このパッケージを真空注液装置内にセットし、電解液を注液した後、10kPaの減圧と10kPaの加圧を3回繰り返すことによって、電解液をセパレータ内部に十分に含浸させた。ついで、真空注液装置内でパッケージ開口部を封止することにより、リチウムイオン2次電池を組み立てた。室温20℃の条件下で、このようにして組み立てた電池を0.15mA/cmの電流密度で、カットオフ電圧を4.2Vに設定して定電流モードで充電を行い、同じ電流密度でカットオフ電圧を2.8Vに設定して放電を行うという充放電を0.2Cのレートで行った。この時の放電容量で充放電特性を評価した。110mAh/g以上であれば既存の材質と同等の性能といえる。また、カットオフ電位を同じに設定して、充放電の電流密度を5倍にし、レートを1.0Cに変えた評価実験を行った。充放電の繰り返し特性は、レート1.0Cで行い、繰り返し100回後で初期容量の95パーセントが放電で観察され、各々の充放電の繰り返し回数で充電容量の99パーセント以上が放電で観察されものは、既存の材質と同等の性能といえる。
【0046】
以下、表を参照して、実施例1〜5及び参考例1〜4を説明する。
【表1】

【実施例1】
【0047】
実施例1においては、セラミックファイバー製無機繊維不織布(株式会社ITM製MTペーパー:厚み40μm)と、ポリビニルアルコールの高分子ナノファイバー層からなる積層体を、130℃で加熱プレスして高分子ナノファイバー層の厚みを2μmとして、多孔質シートを作製した。作製した多孔質シートをセパレータとして電池に組み込んで評価したところ、レート0.2Cで放電容量は125mAh/gであり充放電特性は良好であった。さらに、充放電の繰り返し特性は、レート1.0Cで行い、繰り返し100回後で初期容量の95パーセントが放電で観察され、各々の充放電の繰り返し回数で充電容量の99パーセント以上が放電で観察された。また300℃以上まで加熱しても変形等が無く、耐熱性も良好であった。
【実施例2】
【0048】
実施例2においては、セラミックファイバー製無機繊維不織布(株式会社ITM製MTペーパー:厚み40μm)と、高分子粉末としてポリエチレン微粒子1(平均粒径20μm:住友精化株式会社製UF−80)を2重量%含有したポリビニルアルコールの高分子ナノファイバー層からなる積層体を、130℃で加熱プレスして高分子ナノファイバー層の厚みを2μmとして、多孔質シートを作製した。作製した多孔質シートをセパレータとして電池に組み込んで評価したところ、レート0.2Cで放電容量は131mAh/gであり充放電特性は良好であった。さらに、充放電の繰り返し特性は、レート1.0Cで行い、繰り返し100回後で初期容量の95パーセントが放電で観察され、各々の充放電の繰り返し回数で充電容量の99パーセント以上が放電で観察された。また300℃以上まで加熱しても変形等が無く、耐熱性も良好であった。
【実施例3】
【0049】
実施例3においては、高分子ナノファイバー層の厚みを4μmとした以外は実施例2と同一の条件で多孔質シートを作製した。レート0.2Cで放電容量は120mAh/gであり充放電特性は良好であった。さらに、充放電の繰り返し特性は、レート1.0Cで行い、繰り返し100回後で初期容量の95パーセントが放電で観察され、各々の充放電の繰り返し回数で充電容量の99パーセント以上が放電で観察された。また300℃以上まで加熱しても変形等が無く、耐熱性も良好であった。
【実施例4】
【0050】
実施例4においては、高分子粉末をポリエチレン微粒子2(平均粒径30μm:三井化学株式会社製XM−220)に変更した以外は、実施例2と同一の条件で多孔質シートを作製した。レート0.2Cで放電容量は113mAh/gであり充放電特性は良好であった。さらに、充放電の繰り返し特性は、レート1.0Cで行い、繰り返し100回後で初期容量の95パーセントが放電で観察され、各々の充放電の繰り返し回数で充電容量の99パーセント以上が放電で観察された。また300℃以上まで加熱しても変形等が無く、耐熱性も良好であった。
【実施例5】
【0051】
実施例5においては、高分子ナノファイバーの材質をポリフッ化ビニリデンとした以外は、実施例2と同一の条件で多孔質シートを作製した。放電容量は112mAh/gであり充放電特性は良好であった。さらに、充放電の繰り返し特性は、レート1.0Cで行い、繰り返し100回後で初期容量の95パーセントが放電で観察され、各々の充放電の繰り返し回数で充電容量の99パーセント以上が放電で観察された。また300℃以上まで加熱しても変形等が無く、耐熱性も良好であった。
【比較例1】
【0052】
比較例1においては、セラミックファイバー製無機繊維不織布(株式会社ITM製MTペーパー:厚み40μm)のみで特性をレート0.2Cで評価した。耐熱性には優れているものの、電池評価をすると内部短絡が発生して充放電特性が得られなかった。
【比較例2】
【0053】
比較例2においては、高分子ナノファイバー層の厚みを10μmとした以外は、実施例2と同一の条件で多孔質シートを作製した。耐熱性には優れているものの、内部抵抗が高くなってレート0.2Cで放電容量は82mAh/gしか得られなかった。
【比較例3】
【0054】
比較例3においては、市販のポリエチレン−ポリプロピレンからなる微多孔膜を無機繊維不織布の代わりとして用いて特性を評価した。レート0.2Cで放電容量は135mAh/gであり、充放電特性は良好であったが、140℃まで加熱すると変形溶解し、耐熱性は不十分であった。
【比較例4】
【0055】
比較例4においては、市販のポリエチレン−ポリプロピレンからなる微多孔膜を無機繊維不織布の代わりとして使用し、高分子粉末の代わりに微粉シリカ(平均粒径20nm)を添加したポリビニルアルコールからなる高分子ナノファイバー層を厚さ2μmとして多孔質シートを作製した。レート0.2Cで放電容量は129mAh/gであり充放電特性は良好であった。微粉シリカの耐熱性は優れているが、150℃まで加熱すると基材が変形溶解してしまい、耐熱性は不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維不織布に高分子ナノファイバー層を被覆したことを特徴とする多孔質シート。
【請求項2】
多孔質シートの耐熱性が300℃以上であり、多孔質シートを用いた電池の放電容量が充電容量の99パーセント以上であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質シート。
【請求項3】
無機繊維不織布は、セラミックファイバーを50重量%以上95重量%以下含み、厚みが10μm以上100μm以下であり、透気度が5秒以上100秒以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質シート。
【請求項4】
高分子ナノファイバー層は、材質がポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドの熱可塑性高分子から選ばれる1種類または複数種類の混合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の多孔質シート。
【請求項5】
高分子ナノファイバー層は、繊維径が10nm以上500nm以下であり、厚みが1μm以上8μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の多孔質シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の多孔質シートを有するセパレータ。
【請求項7】
請求項6に記載のセパレータが設けられている電池。

【公開番号】特開2012−178320(P2012−178320A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41906(P2011−41906)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(506201529)株式会社ITM (4)
【出願人】(599048638)CBC株式会社 (9)
【Fターム(参考)】