説明

多孔質銀製シート、金属製部材接合体の製造方法、金属製部材接合体、電気回路接続用バンプの製造方法および電気回路接続用バンプ

【課題】金属製部材間に接合剤を介在させ圧力を加えながら加熱した場合に、金属製部材間の間隙が殆ど減少せず、強固に接合した金属製部材接合体の製造方法、金属製部材接合体、接合剤である多孔質銀製シートなどを提供する。
【解決手段】還元法で製造され,平均粒径(メディアン径D50)が1.0μmより大きく50μm以下であり,表面が撥水性有機化合物で被覆されていて撥水性である加熱焼結性銀粒子と(B)揮発性分散媒とからなる銀粒子組成物を、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ、該銀粒子同士を焼結せしめてなる多孔質銀製シート。多孔質銀製シートを複数の金属製部材間に介在させ、0.001MPa以上の圧力を加えながら70℃以上400℃以下での加熱および/または超音波振動を加えることにより、複数の金属製部材同士を接合させる。かくして得られた金属製部材接合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シート、複数の金属製部材が加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートにより接合された金属製部材接合体の製造方法、当該多孔質銀製シートにより接合された金属製部材接合体、電気回路接続用バンプの製造方法および電気回路接続用バンプに関する。
【背景技術】
【0002】
銀、銅、ニッケルなどの金属粉末を液状熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる導電性・熱伝導性ペーストは、加熱により硬化して導電性・熱伝導性被膜が形成される。したがって、プリント回路基板上の導電性回路の形成、抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成、電磁波シールド用導電性被膜の形成、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接着、太陽電池の電極の形成、特に、アモルファスシリコン半導体を用いているために、高温処理のできない太陽電池の電極の形成、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に使用されている。
【0003】
近年、チップ部品の高性能化により、チップ部品からの発熱量が増え、電気伝導性はもとより、熱伝導性の向上が要求される。したがって、金属粒子の含有率を可能な限り増加することにより電気伝導性、熱伝導性を向上しようとする。ところが、そうすると、ペーストの粘度が上昇し、作業性が著しく低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、本発明者らは、銀粉末と揮発性分散媒とからなるペースト状銀組成物は、加熱すると当該揮発性分散媒が揮発し銀粉末が焼結して、極めて高い導電性と熱伝導性を有する固形状銀となること、および、金属製部材の接合や、導電回路の形成に有用なことを見出して国際出願した(WO2006/126614、WO2007/034833)が、ペースト状であるため適用時に所定の形状や大きさや厚さにすることは容易でなく、しかも形状や大きさや厚さが経時的に変化しやすいという問題があることに本発明者らは気付き、常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物からなるシート状接着剤を用いることにより、形状保持性に優れた金属製部材の接合方法を見出して国際出願した(WO2008/065728)。
【0005】
しかしながら、常温または加熱下で可塑性を有する焼結性金属粒子組成物からなるシート状接着剤は、接着強さを向上させるため圧力を加えながら接合しようとすると、シート状接着剤が押しつぶされて接着剤層の厚さが大きく損なわれる、という問題があることに本発明者らは気がついた。
【0006】
特開2007−324523号公報には、平均粒径が0.005μm〜1.0μmの金属粉末と有機溶剤からなる金属ペーストを予め一方の接合部剤に塗布し、加熱して金属粉末を焼結した金属粉末焼結体を形成し、これを介して他方の接合部剤を配置し、加熱しながら加圧して接合する方法が提案されている。しかしながら、この方法では平均粒径が0.005μm〜1.0μmという、いわゆる金属ナノ粒子を使用しており、金属粉末が極めて微小であるため、得られた金属粉末焼結体が緻密となり、このため硬さおよびヤング率が非常に大きく、熱応力緩和性が低下するため、熱衝撃によって接合部材のみならず金属粉末焼結体自体をも破壊されるという問題がある。特に、接合部材が電子部品のような場合には熱衝撃によって高価な電子部品が破壊されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/126614
【特許文献2】WO2007/034833
【特許文献3】WO2008/065728
【特許文献4】特開2007−324523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは上記の問題点を解決するため鋭意研究した結果、特定の加熱焼結性銀粒子をあらかじめ加熱して得られた多孔質焼結物である銀製シートを金属製部材間に介在させ、圧力を加えながら加熱した場合、接着剤層としての該銀製シートが厚さを大きく損なうことなく、すなわち、金属製部材間の間隙が殆ど減少することがなく、また、該銀製シートにより接合された金属製部材接合体が熱衝撃によって破壊されにくく、金属製部材を強固に接合した金属製部材接合体が得られることを見出して本発明に到達した。
【0009】
本発明の目的は、金属製部材間に接合剤を介在させ圧力を加えながら加熱した場合に、金属製部材間の間隙が殆ど減少せず、複数の金属製部材同士が強固に接合されており、熱衝撃によって破壊されにくい金属製部材接合体の製造方法を提供することにあり、さらには、複数の金属製部材同士が強固に接合されており、熱衝撃によって破壊されにくい金属製部材接合体、および、そのための多孔質銀製シートを提供することにある。
さらには、半導体素子上または基板上に強固に接合した金属製バンプの製造方法、および、半導体素子上または基板上に強固に接合した金属製バンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、
「[1] (A)還元法で製造され,平均粒径(メディアン径D50)が1.0μmより大きく50μm以下であり,表面が撥水性有機化合物で被覆されていて撥水性である加熱焼結性銀粒子と(B)揮発性分散媒とからなる銀粒子組成物を、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ,該銀粒子同士を焼結せしめてなる多孔質銀製シート。
[2] 撥水性有機化合物が中・高級脂肪酸又はその誘導体であることを特徴とする[1]に記載の多孔質銀製シート。
[3] 多孔銀製シートの空隙率が10面積%以上50面積%以下であり、体積抵抗率が5×10-5Ω・cm以下であり、かつ熱伝導性が20W/m・K以上であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の多孔質銀製シート。
[4] [1]、[2]または[3]に記載の多孔質銀製シートを複数の金属製部材間に介在させ、0.001MPa以上の圧力を加えながら、70℃以上400℃以下での加熱および/または超音波振動を加えることにより、多孔質銀製シートと金属製部材とを接合させて、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
[5] 多孔質銀製シートが、複数の金属製部材のどちらか一方にあらかじめ形成されていることを特徴とする、[4]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[6] [4]または[5]に記載の金属製部材接合体の製造方法により製造された金属製部材接合体。
[7] 金属製部材接合体が電子部品であることを特徴とする、[6]に記載の金属製部材接合体。
[8] 多孔質銀製シートが電極を形成するバンプであることを特徴とする、[6]に記載の金属製部材接合体。
[9] [1]、[2]または[3]に記載の多孔質銀製シートを、半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部に、0.001MPa以上の圧力を加えながら、70℃以上400℃以下での加熱および/または超音波振動を加えることにより接合させて、半導体素子上または基板上に金属製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。
[10] [9]に記載の電気回路接続用バンプの製造方法により製造された電気回路接続用バンプ。」により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多孔質銀製シートを金属製部材間に介在させ圧力を加えながら加熱した場合に、金属製部材間の間隙が殆ど減少せず、金属製部材同士が強固に接合しており、熱衝撃によって破壊されにくい金属製部材接合体を製造することができる。
本発明の金属製部材接合体の製造方法によると、金属製部材間に多孔質銀製シートを介在させ圧力を加えながら加熱した場合に、金属製部材間の間隙が殆ど減少せず、金属製部材同士が強固に接合されており、熱衝撃によって破壊されにくい金属製部材接合体を簡易に製造することができる。
本発明の金属製部材接合体は、複数の金属製部材同士が強固に接合されており、熱衝撃によって破壊されにくい。
本発明の電気回路接続用バンプの製造方法によると、半導体素子上または基板上に強固に接合した金属製バンプを製造することができる。
本発明の電気回路接続用バンプは、半導体素子上または基板上に強固に接合している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例におけるせん断接着強さ測定用試験体Aの平面図である。銀基板1と銀チップ3とが、銀粒子の加熱焼結物である銀製シート2により接合されている。
【図2】図1におけるX−X線断面図である。
【図3】実施例における銅製配線回路接合体Bの平面図である。
【図4】図3におけるX−X線断面図である。
【図5】実施例1において作製した銀製シートの断面の電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例3において作製した銀製シートの断面の電子顕微鏡写真である。
【図7】比較例1において作製した銀製シートの断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多孔質銀製シートは、(A)還元法で製造され,平均粒径(メディアン径D50)が1.0μmより大きく50μm以下であり,表面が撥水性有機化合物で被覆されていて撥水性である加熱焼結性銀粒子と(B)揮発性分散媒とからなる銀粒子組成物を、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ,該銀粒子同士を焼結せしめてなることを特徴とする。
【0014】
(A)還元法で製造され,平均粒径(メディアン径D50)が1.0μmより大きく50μm以下であり,表面が撥水性有機化合物で被覆されていて撥水性である加熱焼結性銀粒子(以下、「加熱焼結性銀粒子(A)」と略称することがある)における平均粒径(メディアン径D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる一次粒子の平均粒径(メディアン径D50)である。メディアン径D50は、レーザー回折法50%粒径と称されたり(特開2003−55701参照)、体積累積粒径D50と称されてもいる(特開2007−84860参照)。
レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、銀粒子にレーザービームを照射し、その銀粒子の大きさに応じて様々な方向へ発せられる回折光や散乱光のレーザー光の強度を測定することにより一次粒子の粒径を求めるという汎用の測定方法である。数多くの測定装置が市販されており(例えば、株式会社島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD、日機装株式会社製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック)、これらを用いて容易に平均粒径(メディアン径D50)を測定することができる。なお銀粒子の凝集が強い場合には、ホモジナイザーにより一次粒子の状態に分散してから測定することが好ましい。
【0015】
平均粒径(メディアン径D50)が50μmを越えると、加熱焼結性銀粒子(A)の焼結性が低下するため平均粒子径はそれより小さい方が好ましい。このため20μm以下であることが好ましい。平均粒径(メディアン径D50)が1.0μm以下であると焼結後の硬さおよびヤング率が大きくなり、熱衝撃耐性が低下するという問題があるため、1.0μmより大きいことが必要であり、1.5μm以上であることが好ましい。加熱焼結性銀粒子(A)の平均粒径(メディアン径D50)の範囲は1.5μm以上であり20μm以下が好ましく、2.0μm以上であり20μm以下がさらに好ましい。
【0016】
加熱焼結性銀粒子(A)における銀の材質は、常温で固体であり、加熱により焼結しやすければよい。加熱焼結性銀粒子(A)における銀粒子は、表面または内部の一部が酸化銀または過酸化銀であってもよく、表面の全部が酸化銀または過酸化銀であってもよい。
【0017】
加熱焼結性銀粒子(A)における銀粒子は、その表面が還元法で作られた銀でメッキされた樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂)粒子であってもよい。
【0018】
加熱焼結性銀粒子(A)の形状は、加熱焼結性があれば特に限定されず、球状,針状,角状,樹枝状,繊維状,フレーク状(片状),粒状,不規則形状,涙滴状が例示される(JIS Z2500:2000参照)。さらには楕円球状,海綿状、ぶどう状、紡錘状,略立方体状等が例示される。
その形状は、多孔質焼結物を形成しやすい点で球状、粒状およびフレーク状が好ましい。
ここで言う球状とは、ほぼ球に近い形状である(JIS Z2500:2000参照)。必ずしも真球状である必要はなく、粒子の長径(DL)と短径(DS)との比(DL)/(DS)(球状係数と言うことがある)が1.0〜1.2の範囲にあるものが好ましい。
粒状とは、不規則形状のものではなくほぼ等しい寸法をもつ形状である(JIS Z2500:2000参照)。
フレーク状(片状)とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000参照)、鱗のように薄い板状であることから鱗片状とも言われるものである。いずれの形状であっても粒度分布は限定されない。
【0019】
なお、還元法による銀粒子の製造方法は多く提案されている。通常、硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて酸化銀を調製し、これにホルマリンのような還元剤の水溶液を加えることにより酸化銀を還元して銀粒子分散液とし、分散液をろ過し、ろ過残渣を水洗し、乾燥をおこなうことにより製造される。
【0020】
加熱焼結性銀粒子(A)は、その凝集防止のため、表面が撥水性有機化合物で被覆されている。そのような撥水性有機化合物として、高・中級脂肪酸;その誘導体である撥水性高・中級脂肪酸金属塩、撥水性高・中級脂肪酸アミド、高・中級脂肪酸エステルおよび撥水性高・中級アルキルアミンが例示される。被覆効果、処理効果の点で特には高・中級脂肪酸が好ましい。
【0021】
高級脂肪酸は、炭素原子数15以上の脂肪酸であり、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシステアリン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)等の直鎖飽和脂肪酸;2−ペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、イソステアリン酸等の分枝飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の不飽和脂肪酸が例示される。
【0022】
中級脂肪酸は、炭素原子数が6〜14の脂肪酸であり、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)等の直鎖飽和脂肪酸;イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、2−プロピルヘプタン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、2−ブチルオクタン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸等の分枝飽和脂肪酸;10−ウンデセン酸等の不飽和脂肪酸が例示される。
【0023】
撥水性有機化合物の被覆量は、銀粒子の平均粒径、比表面積、形状などにより変わるが、加熱焼結性銀粒子(A)の0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。少なすぎると加熱焼結性銀粒子(A)が凝集しやすくなって保存安定性が低下し、ひいては加熱焼結時の多孔質焼結体が不均一になり、多すぎると加熱焼結性銀粒子(A)の加熱焼結性が低下するからである。
【0024】
撥水性有機化合物の被覆量は通常の方法で測定できる。窒素ガス中または空気中で高温度(例えば撥水性有機化合物の沸点以上)に加熱して重量減少率を測定する方法、加熱焼結性銀粒子(A)を酸素気流中で加熱して加熱焼結性銀粒子に付着していた撥水性有機化合物中の炭素を炭酸ガスに変え、赤外線吸収スペクトル法により定量分析する方法が例示される。
【0025】
撥水性有機化合物で被覆したフレーク状加熱焼結性銀粒子は、例えば、ボールミル中に球状または粒状のような形状の銀粒子と撥水性有機化合物を投入して、ボールにより銀粒子を殴打することにより製造することができる(特公昭40−6971、特開2000−234107の[0004]参照)。
【0026】
具体的には、粒状の加熱焼結性銀粒子と、高・中級脂肪酸、撥水性高・中級脂肪酸金属塩、高・中級脂肪酸エステル、撥水性高・中級脂肪酸アミド等の撥水性有機化合物とを、セラミック製のボールとともに、回転式ドラム装置(例えばボールミル)に投入し、ボールで銀粒子を殴打することにより、撥水性有機化合物が付着したフレーク状加熱焼結性銀粒子を製造することができる。この際、潤滑性向上のための高・中級脂肪酸、撥水性高・中級脂肪酸金属塩、高・中級脂肪酸エステル、撥水性高・中級脂肪酸アミド、撥水性高・中級アルキルアミン等の撥水性有機化合物が、フレーク状加熱焼結性銀粒子表面に付着する。
【0027】
加熱焼結性銀粒子(A)表面は、このような高・中級脂肪酸等により半分以上が被覆されていればよいが、全部が被覆されていることが好ましい。このように銀粒子表面が撥水性有機化合物により被覆された加熱焼結性銀粒子は撥水性を示す。
なお、表面を撥水性有機化合物で被覆した加熱焼結性銀粒子は、撥水性有機化合物の溶液中に加熱焼結性銀粒子を浸漬した後、該銀粒子を取り出して乾燥することにより製造することもできる。
【0028】
揮発性分散媒(B)は、粉状である加熱焼結性銀粒子(A)をペースト状にするために配合され、常温で固体であっても混合するときの温度で液状であればよいが、取り扱いが容易な常温で液体であることが好ましい。なお、ペースト状はクリーム状やスラリー状を含むものである。
【0029】
加熱時に、加熱焼結性銀粒子(A)が焼結可能とするため、あるいは、銀粒子組成物を加熱による接合剤として使用可能にするためには、揮発性分散媒(B)は非揮発性ではなく、揮発性であることが必要である。加熱焼結性接合剤として利用しやすくなるからである。揮発性分散媒(B)の沸点は、60℃〜300℃であることが好ましい。沸点が60℃未満であると、銀粒子組成物を調製する作業中に溶媒が揮散しやすく、沸点が300℃より大であると、加熱後も揮発性分散媒(B)が残留しかねないからである。
【0030】
そのような揮発性分散媒(B)として、炭素原子および水素原子からなる揮発性炭化水素化合物、炭素原子,水素原子および酸素原子からなる揮発性有機化合物、炭素原子,水素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物、炭素原子,水素原子,酸素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物が例示される。これらはいずれも常温において液状である。
【0031】
水やエチレングリコールのようにSP値が13以上であり親水性が非常に大きな液体は加熱焼結性銀粒子(A)を弾いてしまうので、単独では不適であるが、前記揮発性有機化合物のうちの親水性揮発性有機化合物との均一混合物、あるいは、前記揮発性有機化合物のうちの非水溶性有機化合物と親水性揮発性有機化合物との均一混合物にすれば適切な揮発性分散媒となる。
そのための水は純水が好ましく、その電気伝導度は100μS/cm以下が好ましい。純水の製造方法は、通常の方法で良く、イオン交換法、逆浸透法、蒸留法が例示される。
【0032】
具体的には、炭素原子、水素原子および酸素原子からなる揮発性有機化合物として、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール等の揮発性一価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ、メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エメチルセロソルブ、エチルカルビトール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルセロソルブ、プロピルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール等のエーテル結合を有する揮発性一価アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコールなどの揮発性アラルキルアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの揮発性多価脂肪族アルコールが例示される。
【0033】
さらにはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3、5、5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイブチルケトン(2、6−ジメチル−4−ヘプタノン)等の揮発性脂肪族ケトン;酢酸エチル(エチルアセテート)、酢酸ブチル、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2−ジアセトキシエタンのような揮発性脂肪族カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2−ビス(2−ジエトキシ)エタン、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン等の揮発性脂肪族エーテルが例示される。その他に、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エタンのようなエステルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコールが例示される。
【0034】
炭素原子および水素原子からなる揮発性炭化水素化合物として、n−パラフィン、イソパラフィン等の揮発性脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の揮発性芳香族炭化水素が例示される。
【0035】
炭素原子、水素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物として、アセトニトリル、プロピオニトリルのような揮発性アルキルニトリルが例示される。
炭素原子、水素原子、酸素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物として、アセトアミド、N、N-ジメチルホルムアミドのような揮発性カルボン酸アミドが例示される。その他に、低分子量の揮発性シリコンオイルおよび揮発性有機変成シリコンオイルが例示される。
【0036】
揮発性分散媒(B)の配合量は、加熱焼結性銀粒子(A)をペースト状にするのに十分な量である。加熱焼結性銀粒子の粒径、表面積、形状など、および、揮発性分散媒の種類、粘度などにより、ペースト状にするのに十分な量は変動するが、具体的には、例えば、加熱焼結性銀粒子(A)100重量部当たり3〜30重量部である。
本発明における銀粒子組成物には、本発明の目的に反しない限り、加熱焼結性銀粒子以外の金属系または非金属系の粉体、金属化合物、金属錯体、チクソ剤、安定剤、着色剤等の添加物を少量ないし微量含有しても良い。
【0037】
本発明で使用する銀粒子組成物は、加熱焼結性銀粒子(A)と、揮発性分散媒(B)を、ミキサーに投入し、均一なペースト状になるまで撹拌混合することにより、容易に製造することができる。
【0038】
本発明で使用する銀粒子組成物は、加熱焼結性銀粒子(A)と揮発性分散媒(B)との混合物であり、常温で熱可塑性の固体状、または、常温でペースト状であるが、常温でペースト状であることが好ましい。なお、ペースト状はクリーム状やスラリー状を含む。ペースト化することによりシリンダーやノズルから細い線状に吐出でき、また、メタルマスクによる印刷塗布が容易である。
【0039】
本発明の金属製部材接合体の製造方法では、加熱焼結性銀粒子(A)と揮発性分散媒(B)とからなる銀粒子組成物を、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ、該銀粒子同士を焼結せしめて形成した多孔質焼結物である銀製シートを接合剤として使用する。
【0040】
この多孔質銀製シートは、前記銀粒子組成物を、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の該銀粒子組成物の焼結物とは接着しない材料上に拡げ、70℃以上400℃以下での加熱により製造することができる。加熱により揮発性分散媒(B)が揮散して、前記銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子同士が焼結し、導電性と熱伝導性が優れた多孔質焼結物となる。
また、この多孔質銀製シートは、複数の金属製部材のどちらか一方に前記銀粒子組成物を拡げて同様に加熱焼結することにより形成された、金属製部材に接合したものであってもよい。
【0041】
このときの雰囲気ガスは、加熱焼結性銀粒子の焼結を阻害しなければ特に限定されず、空気など酸素ガスを含む酸化性ガス、窒素ガスなどの不活性ガス、水素ガスを含む還元性ガスが例示される。還元性ガスは、水素ガス5〜25体積%と窒素ガス95〜75体積%からなるフォーミングガスと称される還元性ガスが好ましい。
【0042】
このようにして作成された銀製シートは、数多くの微細な空孔や空隙、連続した空隙などの細孔を有した多孔質であり、その空隙率は通常10〜50面積%であることが好ましい。空隙率が10面積%未満であると、得られた銀製シートが緻密となり、このため硬さおよびヤング率が非常に大きく、熱応力緩和性が低下しやすくなり、空隙率が50面積%を越えると、多孔質銀製シートの強度が低下してもろくなりやすくなるためである。
【0043】
なお、空隙率の測定方法は、通常の測定方法が利用できる。多孔質焼結体の断面を電子顕微鏡で写真撮影し、画像解析ソフトにより、写真における銀部分と空間部分の面積比率を求める方法、電子顕微鏡により撮影した写真を均質な紙等に印刷し、銀部分と空間部分をはさみ等で切り分けて各々の重量を測定し、その重量比率を面積比率とする方法が例示される。
【0044】
このようにして製造された多孔質銀製シートは導電性と熱伝導性に優れている。導電性は、23℃で体積抵抗率が5×10-5Ω・cm以下であることが好ましく、1×10-5Ω・cm以下であることがより好ましい。熱伝導性は、23℃で20W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましい。
【0045】
多孔質銀製シートは、多少の凹凸があっても良いが、均一な厚さであることが好ましい。その厚さは特に限定されないが、通常、5μm以上、1200μm以下であり、特には500μm以下である。また多孔質銀製シートは、シート状のほかフィルム状、テープ状、円盤状、薄いブロック状、チップ状であっても良い。
シート状、フィルム状、テープ状であると、2枚の平坦な金属製部材間に介在させるのに便利である。シートの大きさ、形状は、接合しようとする金属製部材の大きさ、形状、あるいは、接合を必要とする大きさ、形状とするとよい。
多孔質銀製シートは、加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結した硬い固形物であるため、複数の金属製部材間に介して圧力をかけて接合させた場合でも変形はわずかであり、接着剤層の厚さの確保が容易であり、また所定の場所からはみ出て周辺を汚染することがないという特徴を有する。
【0046】
本発明の金属性部材接合体の製造方法は、このように作成された多孔質銀製シートを複数の金属製部材間に介在させ、0.001MPa以上の圧力を加えながら70℃以上400℃以下での加熱により、複数の金属製部材同士を接合させることで達成できる。
このときの圧力は、加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物で固体状の銀製シートと被着体である複数の金属製部材とを十分に接触させることを目的としている。圧力が0.001MPa未満であると、多孔質銀製シートと金属製部材が十分に接触しないので、優れた接合強さを得ることができない。このため圧力は高いほうが良く、好ましくは0.01MPa以上であり、特に好ましくは0.1MPa以上である。上限は接合する金属製部材が破壊されない圧力の最大値である。
【0047】
本発明で使用する金属製部材は、多孔質銀製シートと接している面に圧力をかけながら加熱することにより接合する被着体である。金属製部材の材質としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、スズ、アルミニウム、および、これら各金属の合金が例示される。これらのうちでは導電性、接合性の点で、金、銀、銅、白金、パラジウムまたはこれら各金属の合金が好ましい。金属製部材は前記金属でメッキされたものであってもよい。金属製部材としては、全体または一部が金属で形成されたリードフレーム、プリント基板、半導体チップ、放熱板が例示される。なお、接合に使用する銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子(A)と金属製部材の表面金属は、同一の金属もしくは金属合金が好ましいが、合金を形成しやすい金属であっても良い。
【0048】
加熱するときの雰囲気ガスは、特に限定されず、空気など酸素ガスを含む酸化性ガス、窒素ガスなどの不活性ガス、水素ガスを含む還元性ガスが例示される。還元性ガスは、水素ガス5〜25体積%と窒素ガス95〜75体積%からなるフォーミングガスと称される還元性ガスが好ましい。金属製部材が酸化されやすい、銅、ニッケル、スズのような場合は、不活性ガスまたは還元性ガスが好ましい。
【0049】
本発明の金属性部材接合体の製造方法では、複数の金属製部材間に多孔質銀製シートを介在させ、0.001MPa以上の圧力を加えながら70℃以上400℃以下での加熱により、複数の金属製部材を接合するが、このときに超音波振動を加えながら接合しても良い。
【0050】
超音波振動の周波数は2kHz以上であり、10kHz以上であることが好ましく、上限は特に制限されないが、装置の能力上500kHz位である。また、超音波振動の振幅は、好ましくは0.1〜40μm、より好ましくは0.3〜20μm、さらに好ましくは0.5〜12μmである。なお、超音波振動が多孔質銀製シートに確実に伝わるように、接合する金属製部材に直接、または、超音波振動を吸収しにくい素材からなるカバー材等を介して超音波振動の発信部分を押し当てることが好ましいが、そのときの圧力は前記したとおりである。
【0051】
本発明の金属製部材接合体は、加熱焼結性銀粒子(A)と揮発性分散媒(B)とからなる銀粒子組成物を、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ、該銀粒子同士を焼結せしめて形成した多孔質焼結物である銀製シートを、複数の金属製部材間に介在させ、0.001MPa以上の圧力を加えながら70℃以上400℃以下で加熱することにより、複数の金属製部材同士を接合させたものである。また、このときに超音波振動を加えてもよい。
【0052】
加熱焼結性銀粒子(A)、揮発性分散媒(B)、加熱温度、多孔質焼結物、銀製シート、金属製部材、加熱するときの圧力、超音波振動については、金属製部材接合体の製造方法に関して説明したとおりである。
【0053】
本発明の金属製部材接合体のせん断接着強さは、5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。
【0054】
本発明の金属製部材接合体の製造方法で使用する加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートは、圧力を加えて加熱することにより接着剤として用いることができるため、複数の金属製部材間の接合に用いた場合、銀製シートは接触していた金属製部材、例えば金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、アルミニウム基板、ニッケルメッキ基板、スズメッキ金属基板等の金属系基板へ強固に接着し、電気絶縁性基板上の電極等金属部分へ強固に接着する。また、加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートは、圧力を加えて加熱することにより接着性を有するバンプとして用いることができるため、半導体素子または基板上に電極を形成する自己接着が可能なバンプとして用いることができる。このため、本発明の金属製部材接合体の製造方法は、金属系基板や金属部分を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等の金属製部材接合体の製造に有用である。
【0055】
そのような接合として、金属部分を有するコンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合、ダイオード、メモリ、IC、CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合、高発熱のCPUチップと冷却板との接合等が例示される。
【0056】
本発明の金属製部材接合体は、複数の金属製部材間で加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートにより金属製部材が強固に接合している。
そのような接合体として、金属部分を有するコンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合体、ダイオード、メモリ、IC、CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合体、高発熱のCPUチップと冷却板との接合体が例示される。
【実施例】
【0057】
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中、部と記載されているのは、重量部を意味する。銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートの硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製シートにより接合された金属製部材接合体の接着剤層の厚さ、せん断接着強さおよび耐熱衝撃性を下記の方法により測定した。なお、特に記載のない場合の測定温度は23℃である。
【0058】
[加熱焼結性銀粒子の平均粒径(メディアン径D50)]
株式会社島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD3000Jを用いてレーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られた一次粒子の平均粒径(メディアン径D50)である。
【0059】
[加熱焼結性銀粒子の撥水性有機化合物量]
熱重量測定装置(株式会社島津製作所製DTG−60AH)を用い、加熱焼結性銀粒子を空気気流中で昇温速度5℃/minにて23℃から500℃まで昇温したときの供試加熱焼結性銀粒子の重量の減少分(加熱減量、単位重量%)をもって、撥水性有機化合物量とした。
撥水性有機化合物で被覆された,還元法による銀粒子は、その内部および表面に微量の有機化合物である還元剤が残存しているが、無視できる程度に少ないからである。
【0060】
[銀製シートの硬さ]
ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、15mm角の開口部を有する厚さ1mmのステンレス製のマスクを置き、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布した。これを熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱してから取り出し、冷却後、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板からはずすことにより、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作製した。
【0061】
得られた銀製シートを硬さ測定用試験体とした。JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験)に準拠して硬さを測定した。
【0062】
[銀製シートのヤング率]
ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、15mm角の開口部を有する厚さ1mmのステンレス製のマスクを置き、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布した。これを熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱してから取り出し、冷却後、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板からはずすことにより、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作製した。
【0063】
得られた銀製シートを薄膜機械的特性測定装置(MTSシステムズ社製)によりヤング率を測定した。
【0064】
[銀製シートの空隙率]
ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、15mm角の開口部を有する厚さ1mmのステンレス製のマスクを置き、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布した。これを熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱してから取り出し、冷却後、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板からはずすことにより、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作製した。
【0065】
得られた銀製シートの断面を電子顕微鏡で撮影し、画像解析ソフト(アメリカ合衆国のNational Institute of Health製のNIH Image)を用いて、断面における空間の占める面積の割合を算出し、その比率を面積%で示した。
【0066】
[銀製シートの体積抵抗率]
ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、15mm角の開口部を有する厚さ1mmのステンレス製のマスクを置き、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布した。これを熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱してから取り出し、冷却後、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板からはずすことにより、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作成した。
【0067】
得られた銀製シートについて、JIS K 7194に準じた方法により体積抵抗率(単位;Ω・cm)を測定した。
【0068】
[銀製シートの熱伝導率]
ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状の銀粒子組成物を塗布した。これを熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱してから取り出し、冷却後、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板からはずすことにより、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作成した。
【0069】
得られた銀製シートについて、熱定数測定装置によるレーザーフラッシュ法により熱伝導率(単位;W/m・K)を測定した。
【0070】
[金属製部材接合体のせん断接着強さA]
ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布した。これを、熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱してから取り出し、冷却後、ポリテトラフルオロエチレン樹脂板からはずすことにより、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作製した。
【0071】
その銀製シートを、幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.9%)上に、10mmの間隔をおいて置き、その銀製シートの上に、サイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ(銀純度99.9%)を載せ、空気中にて加熱圧着装置により0.5MPaの圧力を加えながら300℃で1時間加熱することにより接合した。圧力を加えない場合は、無加圧のまま300℃で1時間加熱することにより接合した。
【0072】
得られたせん断接着強さ測定用試験体を、接着強さ試験機の試験体取付け具にセットし、該銀チップの側面を、接着強さ試験機の押圧棒により押厚速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ(単位;MPa)とした。
【0073】
[金属製部材接合体のせん断接着強さB]
幅25mm×長さ70mm×厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.9%)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布し、これを熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱することにより、銀基板上に接合した、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作製した。
【0074】
その銀基板に接合した銀製シートの上に、サイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ(銀純度99.9%)を搭載し、空気中にて加熱圧着装置により0.5MPaの圧力を加えながら300℃で1時間加熱することにより接合した。圧力を加えない場合は、無加圧のまま300℃で1時間加熱することにより接合した。
【0075】
得られたせん断接着強さ測定用試験体を、接着強さ試験機の試験体取付け具にセットし、該銀チップの側面を、接着強さ試験機の押圧棒により押厚速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ(単位;MPa)とした。
【0076】
[金属製部材接合体のせん断接着強さC]
幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.9%)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布し、これを熱風循環式オーブン中で280℃で1時間加熱することにより、銀基板上に接合した、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作製した。この銀製シートは銀基板上に接合しており、接着剤層となるものである。
【0077】
その銀基板に接合した銀製シートの上に、サイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ(銀純度99.9%)を搭載し、超音波加熱圧着装置により、空気中にて超音波振動(周波数30kHz、振幅4μm)を印加しつつ、0.5MPaの加圧にて温度200℃で30秒間加熱することにより、接合した。圧力を加えない場合は、無加圧のまま200℃で30秒間超音波振動を印加することにより接合した。
【0078】
[接着剤層の厚さ]
せん断接着強さ測定用試験体の厚さをマイクロメーターにより測定した。せん断接着強さ測定用試験体における接着剤層の厚さは、あらかじめ測定しておいた、幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.9%)、2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ(銀純度99.9%)の厚さを差し引くことにより接着剤層の厚さとした。
【0079】
得られたせん断接着強さ測定用試験体を、接着強さ試験機の試験体取付け具にセットし、該銀チップの側面を接着強さ試験機の押圧棒により押厚速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ(単位;MPa)とした。
【0080】
[金属製部材接合体の耐熱衝撃性]
幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.9%)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(7.5mm×7.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状の銀粒子組成物を印刷塗布し、これを熱風循環式オーブン中で250℃で1時間加熱することにより、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結体である銀製シートを作製した。この銀製シートは銀基板上に接合しており、接着剤層となるものである。
【0081】
その銀基板に接合した銀製シートの上に、サイズが7.5mm×7.5mm×0.5mmでその表面が金メッキされたシリコンチップ(熱膨張率3ppm)を搭載し、空気中にて加熱圧着装置により0.5MPaの圧力を加えながら300℃で1時間加熱することにより接合して、耐熱衝撃性用試験体となる接合体を作製した。圧力を加えない場合は、無加圧のまま300℃で1時間加熱することにより接合した。
【0082】
得られた耐熱衝撃性用試験体を冷熱衝撃試験機に入れ、−50℃で30分間放置と+150℃で30分間放置を1サイクルとする冷熱衝撃1000サイクルをおこない、シリコンチップに割れや剥離がないか、実体顕微鏡で観察した。
【0083】
[実施例1]
市販の、還元法で製造され,表面がステアリン酸で被覆され,有機化合物量が1.0%であり,平均粒径(メディアン径D50)が2.7μmである粒状の銀粒子100部に、揮発性分散媒として酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エタン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)8部を添加し、ヘラを用いて均一に混合することによりペースト状の銀粒子組成物を調製した。
【0084】
上記ペースト状の銀粒子組成物を用いて、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートおよび金属製部材接合体を作製し、硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さおよび耐熱衝撃性を測定し、結果を表1にまとめて示した。作製した銀製シートの断面の電子顕微鏡写真を図5に示した。以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、多孔質銀製シートである接着剤層(以下、単に「接着剤層」という)の厚さを大きく損なうことなく、また耐熱衝撃性を低下することなく、金属製部材同士が強固に接合した接合体を製造するのに有用なことがわかった。
【0085】
[実施例2]
実施例1において用いた銀粒子の代わりに、市販の、還元法で製造され,表面がステアリンで被覆され,有機化合物量が0.7%であり,平均粒径(メディアン径D50)が3.0μmであるフレーク状の銀粒子を用いたほかは、実施例1と同様の条件でペースト状の銀粒子組成物を調製した。
【0086】
上記ペースト状の銀粒子組成物を用いて、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートおよび金属製部材接合体を作製し、硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さおよび耐熱衝撃性を測定し、結果を表1にまとめて示した。以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、接着剤層の厚さを大きく損なうことなく、また耐熱衝撃性を低下することなく、金属製部材同士が強固に接合した接合体を製造するのに有用なことがわかった。
【0087】
[実施例3]
市販の、還元法で製造され,表面がオレイン酸で被覆され,有機化合物量が0.7%であり,平均粒径(メディアン径D50)が7.0μmであるフレーク状の銀粒子100部に、揮発性分散媒としてジプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)7部を添加し、ヘラを用いて均一に混合することによりペースト状の銀粒子組成物を調製した。
【0088】
上記ペースト状の銀粒子組成物を用いて、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートおよび金属製部材接合体を作製し、硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さおよび耐熱衝撃性を測定し、結果を表1にまとめて示した。作製した銀製シートの断面の電子顕微鏡写真を図6に示した。以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、接着剤層の厚さを大きく損なうことなく、また耐熱衝撃性を低下することなく、金属製部材同士が強固に接合した接合体を製造するのに有用なことがわかった。
【0089】
[実施例4]
実施例3において用いた銀粒子の代わりに、市販の、還元法で製造され,表面がステアリン酸で被覆され,有機化合物量が0.5%であり,平均粒径(メディアン径D50)が12.5μmであるフレーク状の銀粒子を用いたほかは、実施例3と同様の条件でペースト状の銀粒子組成物を調製した。
【0090】
上記ペースト状の銀粒子組成物を用いて、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートおよび金属製部材接合体を作製し、硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さおよび耐熱衝撃性を測定し、結果を表1にまとめて示した。以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、接着剤層の厚さを大きく損なうことなく、また耐熱衝撃性を低下することなく、金属製部材同士が強固に接合した接合体を製造するのに有用なことがわかった
【0091】
[比較例1]
市販の、湿式法で製造され,表面が親水性有機化合物であるアルキルアミンで被覆され,有機化合物量が1.2%であり,平均粒径(メディアン径D50)が0.03μmである球状の銀粒子100部に、揮発性分散媒として酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エタン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)11部を添加し、自転公転式ミキサーを用いて均一に混合することによりペースト状の銀粒子組成物を調製した。
【0092】
上記ペースト状の銀粒子組成物を用いて、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートおよび金属製部材接合体を作製し、硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さおよび耐熱衝撃性を測定し、結果を表2にまとめて示した。作製した銀製シートの断面の電子顕微鏡写真を図7に示した。以上の結果により、この接合方法は、耐熱衝撃性が乏しいという問題があることがわかった。
【0093】
[比較例2]
実施例1において、金属製部材のせん断接着強さの測定で、圧力を加えないで接合した以外は同様にして金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さを測定し、結果を表2にまとめて示した。以上の結果により、圧力を加えないと接着剤層の厚さは損なわれないが、金属製部材の十分なせん断接着強さを得ることができないことがわかった。
【0094】
[比較例3]
実施例1において調製したペースト状の銀粒子組成物を、幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.9%)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて印刷塗布し、その上にサイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ(銀純度99.9%)を搭載し、空気中にて加熱圧着装置により0.5MPaの圧力を加えながら300℃で1時間加熱すことにより接合した。
【0095】
得られたせん断接着強さ測定用試験体は、シート状銀粒子焼結物が該銀チップの周辺部にはみ出しており、接着剤層の厚さが大きく損なわれていた。結果を表2にまとめて示した。
【0096】
[比較例4]
ガラス容器に、実施例2で用いたフレーク状銀粒子100部と、揮発性分散媒としてデュレン(和光純薬工業株式会社製、融点80℃)25部を投入し、90℃のホットプレート上で攪拌して均一なペースト物とした。この加熱焼結性銀粒子組成物を厚さ130μmのポリイミドシート2枚の間にはさんで、90℃に加熱されたプレス機で0.1mmとなるように加圧して取り出し、冷却してポリイミドシートからはがすことにより熱可塑性のシート状の銀粒子組成物を調製した。
【0097】
このシート状の銀粒子組成物を、幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.9%)上に、10mmの間隔をおいて4つ置き、その上にサイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ(銀純度99.9%)を搭載し、空気中にて加熱圧着装置により0.5MPaの圧力を加えながら300℃で1時間加熱することにより接合した。
【0098】
得られたせん断接着強さ測定用試験体は、シート状の銀粒子焼結物が該銀チップの周辺部にはみ出しており、接着剤層の厚さが大きく損なわれていた。結果を表2にまとめて示した。
【0099】
[比較例5]
市販の、アトマイズ法で製造され,表面が有機化合物で被覆されていない,平均粒径(メディアン径D50)が2.0μmである球状の銀粒子100部に、揮発性分散媒として酢酸2−(2ブトキシエトキシ)エタン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)8部を添加し、ヘラを用いて均一に混合することによりペースト状の銀粒子組成物を調製した。
【0100】
上記ペースト状の銀粒子組成物を用いて、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートおよび金属製部材接合体を作製し、硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さおよび耐熱衝撃性を測定し、結果を表3にまとめて示した。以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、銀製シートの焼結性が劣り、金属製部材を強固に接合できないという問題があることがわかった。
【0101】
[比較例6]
市販の、還元法で製造され,表面が有機化合物で被覆されていない,平均粒径(メディアン径D50)が0.8μmである粒状の銀粒子100部に、揮発性分散媒として酢酸2−(2ブトキシエトキシ)エタン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)8部を添加し、ヘラを用いて均一に混合することによりペースト状の銀粒子組成物を調製した。
【0102】
上記ペースト状の銀粒子組成物を用いて、銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物である銀製シートおよび金属製部材接合体を作製し、硬さ、ヤング率、空隙率、体積抵抗率および熱伝導率、金属製部材の接合前後における接着剤層の厚さ、金属製部材接合体のせん断接着強さおよび耐熱衝撃性を測定し、結果を表3にまとめて示した。以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、得られた銀粉末焼結体が緻密となり、このため硬さおよびヤング率が非常に大きく、熱応力緩和性が低下するため、熱衝撃によって接合部材のみならず銀粉末焼結体自体をも破壊されるという問題があることがわかった。
【0103】
[実施例5]
厚さが1.2mmのセラミック板4上に形成された, 表面が金メッキされた銅製配線回路5(幅1mm,長さ50mm,厚さ30μm)の両端部手前に、縦1mm、横1mm、厚さ300μmの開口部を有するメタルマスクを用いて、実施例1で調製したペースト状の銀粒子組成物をドット状に印刷塗布した。このセラミック板4を200℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱することにより、銅配線回路5表面の金メッキ6に接合した,縦1mm,横1mm,厚さ250μmの多孔質銀製バンプ7を形成した。別の、厚さが1.2mmのセラミック板上に形成された, 表面が金メッキされた銅製配線回路5(幅1mm、長さ50mm、厚さ30μm)の両端部手前を、先に形成した多孔質銀製バンプ7を介して重ね合わせ、0.5MPaの圧力を加えながら300℃で1時間加熱することにより、多孔質銀製バンプ7により表面が金メッキされた銅製配線回路5同士を接合した。かくしてセラミック板4上の金メッキされた銅製配線回路5同士をシート状多孔質銀製バンプ7により接合した銅製配線回路接合体B(図3、図4参照)を得た。
【0104】
この銅製配線回路接合体Bの両端部手前に形成したシート状多孔質銀製バンプ7は、もう一方の銅製配線回路5表面の金メッキ6と強固に接合しており、電気抵抗器Rにより両バンプ間の電気抵抗を測定した(図4参照)ところ、0.05Ω未満であり、実用上十分な導電性を有していた。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の多孔質銀製シートは、金属製部材の接合に有用である。
本発明の多孔質銀製シートの製造方法は、多孔質銀製シートを効率よく簡易に製造するのに有用である。
本発明の金属製部材接合体の製造方法は、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接合体、放熱用部材への接合体などの製造に有用である。
本発明の金属製部材接合体は、電子部品、電子装置、電気部品、電気装置などに有用である。
本発明の電気回路接続用バンプの製造方法は、半導体素子上または基板上に金属製バンプを形成するのに有用である。
本発明の電気回路接続用バンプは、電気回路接続に有用である。
【符号の説明】
【0109】
A せん断接着強さ測定用試験体
B 銅製配線回路接合体
1 銀基板
2 多孔質銀製シート
3 銀チップ
4 セラミック板
5 銅製配線回路
6 金メッキ
7 多孔質銀製バンプ
8 電気抵抗測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)還元法で製造され,平均粒径(メディアン径D50)が1.0μmより大きく50μm以下であり,表面が撥水性有機化合物で被覆されていて撥水性である加熱焼結性銀粒子と(B)揮発性分散媒とからなる銀粒子組成物を、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ,該銀粒子同士を焼結せしめてなる多孔質銀製シート。
【請求項2】
撥水性有機化合物が中・高級脂肪酸又はその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質銀製シート。
【請求項3】
多孔銀製シートの空隙率が10面積%以上50面積%以下であり、体積抵抗率が5×10-5Ω・cm以下であり、かつ熱伝導性が20W/m・K以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の多孔質銀製シート。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3に記載の多孔質銀製シートを複数の金属製部材間に介在させ、0.001MPa以上の圧力を加えながら、70℃以上400℃以下での加熱および/または超音波振動を加えることにより、多孔質銀製シートと金属製部材とを接合させて、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
【請求項5】
多孔質銀製シートが、複数の金属製部材のどちらか一方にあらかじめ形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の金属製部材接合体の製造方法により製造された金属製部材接合体。
【請求項7】
金属製部材接合体が電子部品であることを特徴とする、請求項6に記載の金属製部材接合体。
【請求項8】
多孔質銀製シートが電極を形成するバンプであることを特徴とする、請求項6に記載の金属製部材接合体。
【請求項9】
請求項1、請求項2または請求項3に記載の多孔質銀製シートを、半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部に、0.001MPa以上の圧力を加えながら、70℃以上400℃以下での加熱および/または超音波振動を加えることにより接合させて、半導体素子上または基板上に金属製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電気回路接続用バンプの製造方法により製造された電気回路接続用バンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−248617(P2010−248617A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32305(P2010−32305)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000111199)ニホンハンダ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】