説明

多層レンズ、積層型ウェハレンズおよびその製造方法

【課題】高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズを提供する。
【解決手段】本発明に係る積層型ウェハレンズ1は、2枚のウェハスケールレンズ2,3が重ね合わされたものである。ウェハスケールレンズ2は、裏面には凹部2bを備え、ウェハスケールレンズ3は、おもて面に凸部3bを備えている。そして、凹部2bおよび凸部3bが互いに嵌合することによって、ウェハスケールレンズ2,3が、位置合わせされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハスケールレンズの構造およびウェハスケールレンズを複数重ねた積層型ウェハレンズの構造に関し、特に、複数枚のウェハスケールレンズを重ね合わせた積層型ウェハレンズおよびそれを個々に分割した多層レンズの構造、並びに積層型ウェハレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ付き携帯電話やディジタルスチルカメラ、監視カメラなどへの普及に伴い、それらに仕様される固体撮像装置の需要も増大し且つ、適用の必要性から小型化への要求が高まっている。この小型化を図る一つの手法として、半導体チップにレンズを搭載した半導体チップとレンズとを一体型にするウェハスケールカメラモジュールの形成する手法が提案されている。上記ウェハスケールカメラモジュールは、複数枚のウェハスケールレンズを貼り合わせた、積層型ウェハレンズを形成することで製造コストの削減が可能となる。
【0003】
しかしながら、積層型ウェハレンズを製造する場合、ウェハスケールレンズの重ね合わせが容易でないため、ウェハスケールレンズ間に、位置ズレまたは傾きが発生する。この位置ズレまたは傾きは、積層型ウェハレンズのレンズ特性を劣化させる最大の原因となる。言い換えれば、複数枚のウェハスケールで形成されている積層型ウェハレンズは、各ウェハスケールレンズの中心位置のズレ(光軸のズレ)、および、各ウェハスケールレンズ間の距離(高さ)のズレが、レンズ特性の悪化を招く。従って、積層型ウェハレンズは、非常に高い精度でウェハスケールレンズを重ね合わせることが必要不可欠である。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、この位置ズレを防いでウェハスケールレンズ貼り合わせる方法が開示されている。図10は、特許文献1の積層型ウェハレンズを構成するウェハスケールレンズの平面図である。
【0005】
具体的には、図10のように、ウェハスケールレンズ100には、蒸着によって形成された位置決めマーク101,102が形成されている。そして、積層型ウェハレンズの製造時には、この位置決めマーク101,102をアライメント基準として、複数枚のウェハスケールレンズ100を重ね合わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−248989号公報(1999年9月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法は、位置決めマークの位置ズレが積層型ウェハレンズに反映される。このため、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズを製造することができないという問題がある。
【0008】
具体的には、蒸着によりウェハスケールレンズ100に位置決めマーク101,102を形成した場合、位置合わせマーク101,102の形成時に、必ず位置ズレが生じている。このため、位置ズレが生じている位置決めマーク101,102を基準にして、ウェハスケールレンズ100を重ね合わせると、積層型ウェハレンズにも、当然その位置ズレが反映される。従って、特に、各ウェハスケールレンズ100の光軸のズレを避けることはできない。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズおよびその製造方法、並びに、積層型ウェハレンズを個々に分割した多層レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る積層型ウェハレンズは、上記課題を解決するために、複数のレンズ光学部を有するウェハスケールレンズが、複数枚重ね合わされた積層型ウェハレンズであって、各ウェハスケールレンズは、互いに隣接するウェハスケールレンズとの対向面に、ウェハスケールレンズ自身が凹凸形状となった位置合わせ部を有しており、上記位置合わせ部は、レンズ光学部を避けて形成されており、上記位置合わせ部の凹凸の嵌合によって、互いに隣接するウェハスケールレンズが、位置合わせされていることを特徴としている。
【0011】
従来のように、ウェハスケールレンズに、蒸着により位置合わせマークを形成すると、位置合わせマークの形成時(蒸着時)に、位置ズレが生じる。このため、ウェハスケールレンズを重ね合わせた積層型ウェハレンズに、その位置ズレが反映されてしまう。特に、光軸のズレが生じやすい。さらに、ウェハスケールレンズを重ね合わせた後に、位置ズレも生じやすい。
【0012】
これに対し、本発明によれば、ウェハスケールレンズ自身が凹凸形状となった、位置合わせ部を備えている。つまり、位置合わせ部は、ウェハスケールレンズの一部であって、同一材料から形成されている。このため、ウェハスケールレンズの形成と同時に(同一工程で)、位置合わせ部の凹凸も形成される。従って、蒸着による位置合わせマーク形成が招くような位置ズレが、積層型ウェハレンズに反映されることはない。
【0013】
しかも、この凹凸形状の嵌合によって、隣接するウェハスケールレンズが、水平方向(面方向)に位置合わせされる。これにより、隣接するウェハスケールレンズの光軸が、確実に一致する。さらに、凹凸が嵌合しているため、いったんウェハスケールレンズを重ね合わせると位置ズレを起さない。従って、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズを実現することができる。
【0014】
本発明に係る積層型ウェハレンズにおいて、上記位置合わせ部の凹凸は、傾斜部を有することが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、位置合わせ部の凹凸が傾斜面を有することになる。これにより、ウェハスケールレンズに光を照射すると、傾斜部に入射した光が、その傾斜面で屈折する。このため、撮像装置等を用いた画像認識によって、各ウェハスケールレンズの位置合わせ部を容易に認識することができる。これにより、各ウェハスケールレンズを重ね合わせる時間を短縮することができる。従って、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズの大量生産が可能となる。
【0016】
本発明に係る積層型ウェハレンズにおいて、上記位置合わせ部の凹凸は、ウェハスケールレンズの光軸方向の中心軸に対して、回転対称となるように設けられていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、位置合わせ部の凹凸が、ウェハスケールレンズの中心軸に対して、回転対称となる位置に形成されている。このため、ウェハスケールレンズを重ね合わせる際、特定の凹部と凸部との対応に限定されることなく、任意の凹部と凸部とを嵌合させることができる。これにより、最もレンズ特性の良い組み合わせの凸部と凹部とを嵌合させて、ウェハスケールレンズを重ね合わせることができる。従って、より高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズを実現することができる。
【0018】
本発明に係る積層型ウェハレンズにおいて、上記位置合わせ部は、上記凹凸の嵌合によって、隣接するウェハスケールレンズの高さが規定されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、位置合わせ部の凹凸を嵌合させてウェハスケールレンズを重ね合わせると、ウェハスケールレンズ間の高さが規定される。すなわち、凹部の深さまたは凸部の長さ(厚さ)によって、ウェハスケールレンズ間の距離(高さ)が厳密に規定される。このため、ウェハスケールレンズ間の距離を確実に一定にすることができる。つまり、位置合わせ部の凹凸が、ウェハスケールレンズを重ねるときの光軸のズレおよび位置ズレを防止するだけでなく、隣接するウェハスケールレンズ間の高さ(距離)を規定するためにも機能する。従って、光軸方向および光軸に対して垂直方向のいずれの方向にも、より高い精度に重ね合わされた積層型ウェハレンズを実現することができる。
【0020】
本発明に係る積層型ウェハレンズにおいて、上記ウェハスケールレンズおよび位置合わせ部は、成型によって形成されたものであることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、ウェハスケールレンズおよび位置合わせ部が、成型によって形成されているため、いずれの形状も高精度に形成される。従って、より高精度に位置合わせされた積層型ウェハレンズを実現することができる。
【0022】
本発明に係る積層型ウェハレンズにおいて、上記位置合わせ部の凹凸が嵌合した状態で、レンズ光学部を除いて、隣接するウェハスケールレンズの対向面が、互いに接していることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、位置合わせ部の凹凸が嵌合した状態で、隣接するウェハスケールレンズの各対向面が互いに接触している。さらに、各対向面は、レンズ光学部以外の領域で、互いに接している。これにより、位置合わせ部の凹凸が嵌合した状態では、互いに接触した対向面によって、各ウェハスケールレンズのレンズ光学部が包囲(密封)される。従って、外部からレンズ光学部へのゴミの侵入を確実に防ぐことができる。
【0024】
本発明に係る積層型ウェハレンズにおいて、上記位置合わせ部の凹凸は、積層型ウェハレンズを個々の多層レンズに分割するための切断領域内に形成されていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、積層型ウェハレンズを切断して個々の多層レンズに分割すると、切断領域内に形成された位置合わせ部の凹凸も切断される。このため、切断後の多層レンズには、位置合わせ部が残らない。従って、切断後に位置合わせ部のない多層レンズが形成される積層型ウェハレンズを提供することができる。
【0026】
本発明に係る積層型ウェハレンズにおいて、上記位置合わせ部の凹凸は、多面体形状であることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、ウェハスケールレンズに、多面体形状の凹凸が形成されている。これにより、ウェハスケールレンズに光を照射すると、多面体の凹凸に入射した光が、屈折する。このため、撮像装置等を用いた画像認識によって、各ウェハスケールレンズの位置合わせ部を容易に認識することができる。これにより、各ウェハスケールレンズを重ね合わせる時間を短縮することができる。従って、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズの大量生産が可能となる。
【0028】
本発明の多層レンズは、前記いずれかの積層型ウェハレンズが個片化されたものである。つまり、本発明の多層レンズは、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズが、個片に分割されたものである。従って、高い精度でレンズ光学部が積層された多層レンズを実現することができる。
【0029】
本発明の積層型ウェハレンズの製造方法は、隣接するウェハスケールレンズの各位置合わせ部の凹凸を嵌合させる工程を含むことを特徴としている。
【0030】
上記の方法によれば、ウェハスケールレンズ自身が凹凸形状となった位置合わせ部を嵌合させて、ウェハスケールレンズを重ねる。従って、蒸着による位置合わせマーク形成が招くような位置ズレが、積層型ウェハレンズに反映されることはない。しかも、この凹凸形状の嵌合によって、隣接するウェハスケールレンズが、水平方向(面方向)に位置合わせされる。これにより、隣接するウェハスケールレンズの光軸が、確実に一致する。さらに、凹凸が嵌合しているため、いったんウェハスケールレンズを重ね合わせると位置ズレを起さない。従って、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズを製造することができる。
【0031】
なお、本発明には、前記いずれかの積層型ウェハレンズに用いられるウェハスケールレンズであって、互いに隣接するウェハスケールレンズとの対向面に、ウェハスケールレンズ自身が凹凸形状となった位置合わせ部を有しており、上記位置合わせ部は、レンズ光学部を避けて形成されており、かつ、上記位置合わせ部の凹凸の嵌合によって、互いに隣接するウェハスケールレンズが、位置合わせされるように形成されていることを特徴とするウェハスケールレンズも含まれる。なお、この位置あわせ部は、ウェハスケールレンズのおもて面(レンズ光学部が形成された面)および裏面(レンズ光学部が形成された面の逆の面)のいずれの面に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の積層型ウェハレンズは、互いに隣接する2つのウェハスケールレンズのうち、少なくとも一方のウェハスケールレンズの対向面に、溝が形成されており、その溝に接着剤が充填されており、かつ、その溝が形成された部分を除いて、隣接する2つのウェハスケールレンズの対向面が、互いに接している構成である。それゆえ、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の積層型ウェハレンズを分解した斜視図である。
【図2】本発明の積層型ウェハレンズの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1の積層型ウェハレンズを構成するウェハスケールレンズを示す平面図である。
【図4】図1の積層型ウェハレンズを構成するウェハスケールレンズに形成された凹凸形状を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【図5】図1の積層型ウェハレンズを構成するウェハスケールレンズに形成された凹凸形状を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【図6】本発明の別の積層型ウェハレンズの概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6の積層型ウェハレンズを分解した断面図である。
【図8】図6の積層型ウェハレンズを構成するウェハスケールレンズを示す平面図である。
【図9】図6は、積層型ウェハレンズの断面図である。
【図10】特許文献1の積層型ウェハレンズを構成するウェハスケールレンズの概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図9に基づいて、詳細に説明する。図2は、本実施形態の積層型ウェハレンズの概略構成を示す斜視図である。
【0035】
図2のように、積層型ウェハレンズ1は、互いに隣接する2枚の円盤状のウェハスケールレンズ2,3が重ね合わされたものである。ウェハスケールレンズ2,3は、ガラスまたは樹脂などの材料から形成されている。
【0036】
ウェハスケールレンズ2は、複数のレンズ光学部2aを有している。具体的には、ウェハスケールレンズ2には、複数のレンズ光学部2aがマトリクス状に配列されている。
【0037】
一方、図3は、ウェハスケールレンズ3の平面図である。同図は、ウェハスケールレンズ2との対向面を示している。ウェハスケールレンズ3も、ウェハスケールレンズ2と同様に、複数のレンズ光学部3aを有している。レンズ光学部3aは、各レンズ光学部2aに対応して、マトリクス状に配列されている。
【0038】
積層型ウェハレンズ1では、ウェハスケールレンズ2,3間に生じた位置ズレが、レンズ特性の悪化を招く。特に、各ウェハスケールレンズ2,3の中心位置のズレ、すなわち光軸のズレは、レンズ特性に大きく影響する。このため、ウェハスケールレンズ2,3が、高い精度で重ね合わされていることが重要である。
【0039】
そこで、積層型ウェハレンズ1では、各ウェハスケールレンズ2,3が、互いに隣接するウェハスケールレンズ2,3間の位置合わせを行うための位置合わせ部を有している。
【0040】
具体的には、図3のように、ウェハスケールレンズ3は、おもて面(ウェハスケールレンズ2との対向面)に、4つの凸部(位置合わせ部)3bを備えている。すなわち、各凸部3bは、ウェハスケールレンズ3自身が凸形状となったものである。各凸部3bの形成部位は、レンズ光学部3aを避けて形成されている。図3では、4つの凸部3bが、ウェハスケールレンズ3の外縁部に、均等に配置されている。また、各凸部3bの形状は、十字形状となっている。
【0041】
なお、各凸部3bは、レンズ光学部3aを避けて形成されていれば、任意の位置に形成することができる。また、各凸部3bの形状も特に限定されるものではない。
【0042】
一方、図1は、積層型ウェハレンズ1を分解した斜視図である。図1のように、ウェハスケールレンズ2は、裏面(ウェハスケールレンズ3との対向面)に、4つの凹部(位置合わせ部)2bを備えている。すなわち、各凹部2bは、ウェハスケールレンズ2自身が凸形状となったものである。各凹部2bは、ウェハスケールレンズ3の各凸部3bに対応する位置に形成されている。このため、各凹部2bも、レンズ光学部2aを避けて形成されている。また、4つの凹部2bが、ウェハスケールレンズ2の裏面の外縁部に、均等に配置されている。また、凹部2bの形状は、十字形状の凸部3bが嵌合する形状となっている。
【0043】
従って、各凹部2bおよび凸部3bを嵌合させて、ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせると、容易に積層型ウェハレンズ1を製造することができる。しかも、各凹部2bおよび凸部3bが互いに嵌合することによって、ウェハスケールレンズ2,3が位置合わせされている。
【0044】
このように、積層型ウェハレンズ1では、複数枚のウェハスケールレンズ2,3が、凹凸形状の位置合わせ部を備えている。凹部2bおよび凸部3b(位置合わせ部)は、ウェハスケールレンズ2,3の一部であるため、ウェハスケールレンズ2,3と同一材料から形成されている。このため、ウェハスケールレンズ2,3の形成と同時に(同一工程で)、凹部2bおよび凸部3bも形成される。凹部2bおよび凸部3bの形成時に、ウェハスケールレンズ2,3に対して、位置ズレが生じることはない。従って、従来の蒸着による位置合わせマーク形成が招くような位置ズレが、積層型ウェハレンズ1に反映されることはない。
【0045】
さらに、ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせると、この位置合わせ部の凹凸の嵌合する。これにより、隣接するウェハスケールレンズ2,3が、水平方向(面方向)に位置合わせされる。これにより、隣接するウェハスケールレンズ2,3の光軸が、確実に一致する。さらに、凹部2bおよび凸部3bが嵌合しているため、いったんウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせると位置ズレを起さない。従って、高い精度でウェハスケールレンズ2,3が重ね合わされた積層型ウェハレンズ1を実現することができる。
【0046】
また、図1のように、積層型ウェハレンズ1では、各4つの凹部2bおよび凸部3bが、ウェハスケールレンズ2,3の光軸方向の中心軸に対して、回転対称となるように設けられている。また、各凹部2bの形状は同一であり、各凸部3bの形状も同一である。このため、図1の場合、ウェハスケールレンズ2,3を90°単位で回転させれば、凹部2bと凸部3bとを嵌合させることができる。つまり、ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせる際、特定の凹部2bと凸部3bとの対応に限定されることなく、任意の凹部2bと凸部3bとを嵌合させることができる。これにより、最もレンズ特性の良い組み合わせの凹部2bと凸部3bとを嵌合させて、ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせることができる。従って、より高い精度でウェハスケールレンズ2,3が重ね合わされた積層型ウェハレンズ1を実現することができる。
【0047】
また、凹部2bおよび凸部3bは、互いに嵌合することによって、ウェハスケールレンズ2,3の距離(高さ)が規定されるようになっていることが好ましい。すなわち、凹部の深さまたは凸部の長さ(厚さ)によって、ウェハスケールレンズ間の距離(高さ)が厳密に規定される。例えば、凹部2bの深さが凸部3bの長さよりも大きい場合、ウェハスケールレンズ2,3間の距離は、凸部3bの厚さによって規定される。一方、凹部2bの深さが凸部3bの長さよりも小さい場合、ウェハスケールレンズ2,3間の距離は、凹部2bの深さによって規定される。このため、ウェハスケールレンズ2,3間の距離を確実に一定にすることができる。つまり、凹部2bおよび凸部3bが、ウェハスケールレンズ2,3を重ねるときの光軸のズレおよび位置ズレを防止するだけでなく、隣接するウェハスケールレンズ2,3間の高さ(距離)を規定するためにも機能する。従って、光軸方向および光軸に対して垂直方向のいずれの方向にも、より高い精度に重ね合わされた積層型ウェハレンズ1を実現することができる。
【0048】
なお、図1では、ウェハスケールレンズ2に凹部2bが、ウェハスケールレンズ3に凸部3bが形成されている。しかし、凹部2bおよび凸部3bは、互いに嵌合できるようになっていれば、この組み合わせに限定されるものではない。例えば、ウェハスケールレンズ2に凸部を、ウェハスケールレンズ3に凹部を形成してもよいし、ウェハスケールレンズ2,3にそれぞれ、凹部および凸部を形成してもよい。
【0049】
一方、図1では、凹部2bおよび凸部3bは、十字形状である。しかし、凹部2bおよび凸部3bの形状は、これに限定されるものではない。例えば、図4および図5は、別の凹部2bおよび凸部3bを示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
【0050】
具体的には、図4のように、凹部2bおよび凸部3bは、いずれも、テーパ形状となっている。つまり、凹部2bおよび凸部3bは、傾斜部(傾斜面)を有している。これにより、ウェハスケールレンズ2,3に光を照射すると、傾斜部に入射した光が、その傾斜面で屈折する。このため、撮像装置等を用いた画像認識によって、各ウェハスケールレンズ2,3の凹部2bおよび凸部3bを容易に認識することができる。つまり、凹部2bおよび凸部3bの嵌合による位置合わせに加えて、画像認識による位置合わせも可能となる。これにより、各ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせる時間を短縮することができる。従って、高い精度でウェハスケールレンズ2,3が重ね合わされた積層型ウェハレンズ1の大量生産が可能となる。
【0051】
また、図4の凹部2bおよび凸部3bは、多面体形状であるともいえる。この場合も、傾斜部を有する場合と同様に、ウェハスケールレンズ2,3に光を照射すると、多面体の凹部2bおよび凸部に入射した光が、屈折する。このため、撮像装置等を用いた画像認識によって、各ウェハスケールレンズ2,3の凹部2bおよび凸部3bを容易に認識することができる。これにより、各ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせる時間を短縮することができる。従って、高い精度でウェハスケールレンズ2,3が重ね合わされた積層型ウェハレンズ1の大量生産が可能となる。
【0052】
また、図4の例では、1つの凹部2bに、1つの凸部3bが嵌合する構成である。しかし、図5のように、2つ(1対)の凹部2bに、2つ(1対)の凸部が嵌合する構成であってもよい。これにより、より高い精度でウェハスケールレンズ2,3が重ね合わされた積層型ウェハレンズ1を実現することができる。
【0053】
このような凹部2bおよび凸部3bは、成型によって形成されたものであることが好ましい。これにより、ウェハスケールレンズ2,3を成型時に、高精度に凹部2bおよび凸部3bを形成することができる。成型によって凹部2bおよび凸部3bが形成された場合の精度は、凸部3bの高さまたは凹部2bの深さを含めて、わずか数μである。従って、凹部2bおよび凸部3bによって、確実にウェハスケールレンズ2,3間の距離を一定にすることができる。一方、特許文献1では、ウェハスケールレンズとは別工程で、蒸着によって位置合わせマークが形成される。位置あわせマーク形成時に、必ず位置ズレが生じるため、精度が低い。なお、凹部2bおよび凸部3bの形成方法は、成型に限定されるものではない。
【0054】
ここで、積層型ウェハレンズ1は、ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせると、凹部2bおよび凸部3bが、互いに嵌合する。このため、嵌合した状態で、いったんウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせると位置ズレを起さない。従って、ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせるときに、ウェハスケールレンズ2,3を接着する必要はない。しかし、積層型ウェハレンズ20は、最終的に切断され、個片の多層レンズに分割される。このため、積層型ウェハレンズ20を切断する前には、ウェハスケールレンズ2,3を接着することが好ましい。なお、分割後の各多層レンズに凹部2bおよび凸部3bが残るようになっている場合、この接着は必須ではない。
【0055】
ウェハスケールレンズ2,3の接着方法は、特に限定されるものではない。例えば、図6の積層型ウェハレンズ20は、ウェハスケールレンズの接着に好適である。図6は、積層型ウェハレンズ20の概略構成を示す斜視図である。
【0056】
図6のように、積層型ウェハレンズ20は、互いに隣接する2枚の円盤状のウェハスケールレンズ201,202が重ね合わされたものである。ウェハスケールレンズ201,202は、複数のレンズ光学部を有している。具体的には、ウェハスケールレンズ201には、複数のレンズ光学部201aがマトリクス状に配列されている。図示しないが、ウェハスケールレンズ202も同様に、各レンズ光学部201aに対応する複数のレンズ光学部が形成されている。なお、図6では、ウェハスケールレンズ201,202には、図示しない位置合わせ部(図1と同様の凹部2bおよび凸部3b)が形成されている。つまり、ウェハスケールレンズ201,202は、互いに嵌合している。
【0057】
ウェハスケールレンズ201,202は、ぞれぞれ、互いの対向面に、凹溝(溝)201b,202bが形成されている。各凹溝201b,202bには、接着剤203が充填されており、この接着剤203によって、ウェハスケールレンズ201,202が接着されている。凹溝201b,202bの詳細は、後述する。
【0058】
ウェハスケールレンズ201,202の互いの対向面は、凹溝201b,202bが形成された部分を除いて、互いに直に接している。このため、凹溝201b,202bが形成された部分以外は、ウェハスケールレンズ201のウェハスケールレンズ202との接触部201cと、ウェハスケールレンズ202のウェハスケールレンズ201との接触部202cとが、互いに面接触している。従って、接触部201c,202c間には、接着剤203が存在しない。
【0059】
次に、図7〜図9に基づいて、積層型ウェハレンズ20について、詳細に説明する。図7は、積層型ウェハレンズ20を分解した断面図であり、ウェハスケールレンズ201,202の概略構成を示している。図8は、ウェハスケールレンズ202の平面図である。図9は、積層型ウェハレンズ20の断面図である。
【0060】
図7に示すように、ウェハスケールレンズ201の裏面(ウェハスケールレンズ202との対向面)に、凹溝201bが形成されている。凹溝201bは、各レンズ光学部201aを避けて形成されている。さらに、凹溝201bは、ウェハスケールレンズ201の裏面の端から端に渡って、複数列形成されている。また、ウェハスケールレンズ201の裏面には、上述の凹部2bが形成されている。
【0061】
ウェハスケールレンズ202のおもて面(ウェハスケールレンズ201との対向面)にも、凹溝201bと同様の凹溝202bが形成されている。すなわち、ウェハスケールレンズ202のおもて面に、ウェハスケールレンズ201のレンズ光学部201aと対応する位置に、レンズ光学部202aが形成されている。凹溝202bは、このレンズ光学部202aを避けて形成されている。さらに、凹溝202bは、ウェハスケールレンズ202のおもて面の端から端に渡って、複数列形成されている。また、ウェハスケールレンズ202のおもて面には、上述の凹部2bに対応する凸部3bが形成されている。
【0062】
凹溝201b,202bは、レンズ光学部201a,202aを避けて形成されていれば、特に限定されるものではない。本実施形態の積層型ウェハレンズ20では、凹溝201b,202bが、以下の特徴的構成を有している。
【0063】
具体的には、図8は、積層型ウェハレンズ20を構成するウェハスケールレンズ202を示す平面図(上面図)である。積層型ウェハレンズ20では、凹溝202bは、ウェハスケールレンズ202のおもて面(ウェハスケールレンズ201との対向面)に、格子状に形成されている。すなわち、同図のように、縦方向および横方向に直交する複数の凹溝202bが形成されている。このため、図8のウェハスケールレンズ202では、レンズ光学部202aが、凹溝202bが包囲される。一方、ウェハスケールレンズ201の裏面にも、同様に、格子状の凹溝201bが形成されている。これにより、ウェハスケールレンズ201の接触部201cと、ウェハスケールレンズ202の接触部202cとを重ね合わせると、凹溝201b,202bによって、両端が開放された空間が形成される。具体的には、ウェハスケールレンズ201,202の各対向面に対し平行方向に横断または縦断する空間が形成される。
【0064】
さらに、図7のように、積層型ウェハレンズ20では、接触部201cと、接触部202cとを重ね合わせたときに、凹部2bと凸部3bとが互いに嵌合する。しかも、凹溝201bと凹溝202bとが、互いに重なるようになっている(図7の破線部参照)。つまり、凹溝201bと凹溝202bとがつながった単一の(共通の)凹溝が形成されることになる。より詳細には、図7のように、凹溝201bおよび凹溝202bは、いずれも、光軸方向の断面が半円である。そして、ウェハスケールレンズ201,202を重ねると、図9のように、光軸方向の断面が半円の凹溝201bおよび凹溝201bが重なり、同断面が円(または楕円)となる。従って、重なった凹溝201b,202bによって、ウェハスケールレンズ201,202の各対向面に対し平行方向に横断する、無底円筒状の中空空間が形成されることになる。そして、この空間に充填された接着剤203によって、ウェハスケールレンズ201,202が接着されている。
【0065】
さらに、後述のように、積層型ウェハレンズ20は、最終的に、ダイシング刃10等によって切断され、個々の多層レンズBに分割される。多層レンズBは、積層されたレンズ光学部201aおよびレンズ光学部202aによってレンズ機能を発揮する。積層型ウェハレンズ20では、凹溝201bおよび凹溝201bが、ダイシング刃10による切断ライン(切断領域)を含むように形成されている。しかも、凹溝201bおよび凹溝201bは、互いに隣接する多層レンズB間で、共用されるようになっている。
【0066】
また、ウェハスケールレンズ201,202に形成された凹部2bおよび凸部3bも、最終的に、ダイシング刃10等によって切断されるようになっていることが好ましい。すなわち、凹部2bおよび凸部3bは、積層型ウェハレンズ20を個々の多層レンズBに分割するための切断領域内に形成されていることが好ましい。
【0067】
このように、積層型ウェハレンズ20は、ウェハスケールレンズ201,202の互いの対向面(接着面)に、それぞれ、凹溝201b,202bが形成されている。そして、その溝に充填された接着剤203によって、隣接するウェハスケールレンズ201,202が接着されている。さらに、凹溝201b,202bが形成されていない部分については、ウェハスケールレンズ201,202の対向面どうし(接触部201c,202c)が、互いに直に接しているため、接触部201c,202c間に接着剤203が存在しない。このため、接着剤203の厚さは、ウェハスケールレンズ201,202間の距離(高さ)に、関与しない。さらに、ウェハスケールレンズ201の接触部201cと、ウェハスケールレンズ202の接触部202cとが、互いに面接触しているため、ウェハスケールレンズ201,202は、互いに平行である。従って、ウェハスケールレンズ201,202間の距離は、どの部分でも一定である。
【0068】
しかも、接触部201c,202c間に接着剤203が存在しないため、凹溝201b,202bに接着剤203が充填されていない状態または接着剤203が充填され仮接着の状態であれば、重ね合わせたウェハスケールレンズ201,202の位置を変更することができる。つまり、積層型ウェハレンズ20の特性を満たすように位置を修正した上で、ウェハスケールレンズ201,202を重ね合わせた後、ウェハスケールレンズ201,202を接着することができる。従って、ウェハスケールレンズ201,202間の位置ズレや傾きが生じない。
【0069】
それゆえ、積層型ウェハレンズ20によれば、高い精度でウェハスケールレンズが重ね合わされた積層型ウェハレンズ20を実現することができる。
【0070】
また、積層型ウェハレンズ20では、ウェハスケールレンズ201,202のいずれの対向面にも、凹溝201b,202bが形成されている。これにより、一方のウェハスケールレンズに溝が形成されている場合よりも、接着領域が広くなる。従って、接着強度を高めることができる。
【0071】
また、積層型ウェハレンズ20では、積層型ウェハレンズ20を切断して個々の多層レンズBに分割すると、切断領域内に形成された凹部2bおよび凸部3bも切断される。このため、切断後の多層レンズBには、凹部2bおよび凸部3bが残らない。従って、切断後に凹部2bおよび凸部3bのない多層レンズBを形成することができる。
【0072】
また、積層型ウェハレンズ20では、凹部2bおよび凸部3bが嵌合した状態で、隣接するウェハスケールレンズ201,202の接触部(対向面)201c,202cが、互いに接する。さらに、各接触部201c,202cは、レンズ光学部201a,202aを以外の領域で、互いに接している。これにより、凹部2bおよび凸部3bが嵌合した状態では、互いに接触した接触部201c,202cによって、各ウェハスケールレンズ201,202のレンズ光学部201a,202aが包囲(密封)される。つまり、ウェハスケールレンズ201,202の光軸および距離(高さ)が合った時点で、レンズ光学部201a,202aが封止される。従って、外部からレンズ光学部201a,202aへのゴミの侵入を確実に防ぐことができる。
【0073】
次に、図7および図9に基づいて、積層型ウェハレンズ20の製造方法について説明する。積層型ウェハレンズ20は、ウェハスケールレンズ201,202を重ね合わせる積層工程と、積層されたウェハスケールレンズ201,202の位置を調整する位置調整工程と、凹溝201b,202bに充填した接着剤によって位置調整されたウェハスケールレンズ201,202を接着する接着工程とによって製造することができる。
【0074】
具体的には、まず、積層工程では、図7のように、ウェハスケールレンズ201の凹部2bと、ウェハスケールレンズ202の凸部3bとを嵌合させ、ウェハスケールレンズ201と、ウェハスケールレンズ202とを重ね合わせる。すなわち、ウェハスケールレンズ202の接触部202c上に、ウェハスケールレンズ201の接触部201cを配置する。これにより、凹溝201bと凹溝202bとが重なる。
【0075】
次に、位置調整工程では、重ね合わせたウェハスケールレンズ201,202を接着する前に、積層型ウェハレンズ20としての特性を測定する。例えば、ウェハスケールレンズ201,202の光軸のズレ(レンズ光学部201a,202aの中止のズレ)または傾きが生じていないかどうかを測定によって確認する。そして、光軸のズレまたは傾き等によって必要な特性が得られていない場合、必要な特性を満足するように、ウェハスケールレンズ201,202の相対的な位置を調整する。例えば、再度積層工程を行い、最もレンズ特性の良い組み合わせの凹部2bと凸部3bとを嵌合させて、ウェハスケールレンズ2,3を重ね合わせ直す。
【0076】
なお、積層型ウェハレンズ20では、ウェハスケールレンズ202の接触部202c上に、直にウェハスケールレンズ201の接触部201cが配置されるため、ウェハスケールレンズ201,202間の距離は、基本的に一定である。しかし、接触部201cまたは接触部202c上にゴミなどが存在していて、その距離がずれている可能性もある。このため、積層型ウェハレンズ20としての特性を測定する際には、その距離も測定することが好ましい。
【0077】
最後に、図9のように、接着工程では、位置調整工程で位置調整されたウェハスケールレンズ201,202の凹溝201b,202bに接着剤203を充填する。前述のように、凹溝201b,202bによって、ウェハスケールレンズ201,202の各対向面に対し平行方向に、両端が開放された空間が形成される。このため、例えば、積層型ウェハレンズ20の側方から、その空間に接着剤203を注入することができる。なお、前述のように、凹溝201b,202bは、レンズ光学部201a,202aを避けて形成されており、接触部201cと接触部201cとは、互いに直に接している。このため、凹溝201b,202bに接着剤203を充填しても、レンズ光学部201a,202aに接着剤203が流れ込むことはない。
【0078】
このようにして、積層型ウェハレンズ20の製造が完了する。なお、積層型ウェハレンズ20は、図9のように、ダイシング刃10によって、隣接する多層レンズB間が切断され、個々の多層レンズBに分割される。
【0079】
以上のように、位置調整工程を行った後、接着工程を行うため、積層工程で重ね合わせたウェハスケールレンズ201,202間に位置ズレまたは傾きが生じていたとしても、位置調整工程で、その位置ズレまたは傾きを修正することができる。これにより、積層型ウェハレンズ20の特性を満たすように位置を修正した上で、ウェハスケールレンズ201,202を接着することができる。ウェハスケールレンズ201,202を特性の一番良い条件で重ね合わせて、積層型ウェハレンズ20を製造することができる。従って、高い精度でウェハスケールレンズ201,202が重ね合わされた積層型ウェハレンズ20を製造することができる。また、積層型ウェハレンズ20を、個片の多層レンズBに分割することによって、高い精度でレンズ光学部201a,202aが積層された多層レンズBを実現することができる。
【0080】
また、積層型ウェハレンズ20では、積層工程で、ウェハスケールレンズ201と、ウェハスケールレンズ202とを重ね合わせると、凹溝201b,202bが互いに重なり、凹溝201b,202bがつながった単一の(共通の)凹溝が形成される。このため、凹溝201b,202bに、同時に接着剤203を充填することができる。従って、接着領域を広くして接着強度を高めつつ、接着剤203の充填処理(充填時間)を短縮することができる。
【0081】
また、図8のように、積層型ウェハレンズ20では、凹溝201b,202bは、ウェハスケールレンズ201,202のレンズ光学部201a,202aを包囲するように形成されている。このため、凹溝201b,202bに接着剤203を充填すると、充填された接着剤203によって、レンズ光学部201a,202aが密封される。従って、充填された接着剤203によって、外部からレンズ光学部201a,202aへのゴミの侵入を防ぐことができる。
【0082】
また、図9のように、凹溝201b,202bは、個々の多層レンズBに分割する切断ライン(切断領域)を含むように形成されている。すなわち、凹溝201b,202bの幅は、ダイシング刃10の幅よりも大きい。これにより、ダイシング刃10によりその切断領域に沿って積層型ウェハレンズ20を切断して多層レンズBを形成すると、切断後の多層レンズBの側面に、接着剤203が残る。このため、切断後の多層レンズBにも、積層型ウェハレンズ20の接着状態が維持される。従って、高い精度でレンズ光学部201a,202aを重ね合わせた多層レンズBを製造することができる。
【0083】
さらに、図9のように、凹溝201b,202bは、互いに隣接する多層レンズB間で、共用される。これにより、凹溝201b,202bの数を少なくしつつ、良好な接着を実現することができる。
【0084】
また、図9のように、積層型ウェハレンズ20では、凹溝201b,202bが重なると、光軸方向の断面が円(または楕円)となる。このため、接着剤203を均一に充填できる。また、この断面が円(または楕円)であると、応力に対して強くなる。
【0085】
また、接着工程で接着剤203を充填した直後であれば、ウェハスケールレンズ201,202の位置を修正することができる。つまり、再度、位置調整工程を行うことができる。これにより、より高い精度でウェハスケールレンズ201,202が重ね合わされた積層型ウェハレンズ20を製造することができる。
【0086】
また、位置調整工程と接着工程とを、同時に行うこともできる。すなわち、積層工程によって2つのウェハスケールレンズ201,202を重ね合わせた後、凹溝201b,202bに接着剤203を充填すると共に、ウェハスケールレンズ201,202の位置修正などの調整を行うこともできる。
【0087】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0088】
例えば、上述の例では、ウェハスケールレンズの形状または材料、凹溝の形状、凹溝の配列形状、およびウェハスケールレンズの積層個数などに対して一例を挙げて説明したが、この一例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、特に、カメラ付き携帯電話、ディジタルスチルカメラ、防犯カメラ,または、携帯電話用・車両搭載用・インタホン用のカメラ等、種々の電子機器に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 積層型ウェハレンズ
2,3 ウェハスケールレンズ
2a,3a レンズ光学部
2b 凹部
3b 凸部
20 積層型ウェハレンズ
201,202 ウェハスケールレンズ
201a,202a レンズ光学部
202 ウェハスケールレンズ
B 多層レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ光学部を有するウェハスケールレンズが、複数枚重ね合わされた積層型ウェハレンズであって、
各ウェハスケールレンズは、互いに隣接するウェハスケールレンズとの対向面に、ウェハスケールレンズ自身が凹凸形状となった位置合わせ部を有しており、
上記位置合わせ部は、レンズ光学部を避けて形成されており、
上記位置合わせ部の凹凸の嵌合によって、互いに隣接するウェハスケールレンズが、位置合わせされていることを特徴とする積層型ウェハレンズ。
【請求項2】
上記位置合わせ部の凹凸は、傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載の積層型ウェハレンズ。
【請求項3】
上記位置合わせ部の凹凸は、ウェハスケールレンズの光軸方向の中心軸に対して、回転対称となるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型ウェハレンズ。
【請求項4】
上記位置合わせ部は、上記凹凸の嵌合によって、隣接するウェハスケールレンズの高さが規定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層型ウェハレンズ。
【請求項5】
上記ウェハスケールレンズおよび位置合わせ部は、成型によって形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層型ウェハレンズ。
【請求項6】
上記位置合わせ部の凹凸が嵌合した状態で、レンズ光学部を除いて、隣接するウェハスケールレンズの対向面が、互いに接していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層型ウェハレンズ。
【請求項7】
上記位置合わせ部の凹凸は、積層型ウェハレンズを個々の多層レンズに分割するための切断領域内に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層型ウェハレンズ。
【請求項8】
上記位置合わせ部の凹凸は、多面体形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層型ウェハレンズ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層型ウェハレンズが個片化されたことを特徴とする多層レンズ。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層型ウェハレンズの製造方法であって、
隣接するウェハスケールレンズの各位置合わせ部の凹凸を嵌合させる工程を含むことを特徴とする積層型ウェハレンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−13577(P2011−13577A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159221(P2009−159221)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】