説明

多点温度測定装置

【課題】被測定物の複数箇所の温度測定を行う場合、温度センサと温度測定装置とを接続する作業を簡易かつ安全に行うための多点温度測定装置を提供する。
【解決手段】被測定物の形状に応じたセンサ支持部材11の複数箇所に、共振周波数が互いに異なる複数個の圧電共振子12a〜12hを設置するとともに、圧電共振子12a〜12hの電極端子を介して、複数個の圧電共振子12a〜12hを直列に接続し、最初の圧電共振子12aの空き端子13と最後の圧電共振子12hの空き端子14とを伝導材を介して共振周波数計測部10に接続し、共振周波数計測部10は、周波数が変化する交流信号を供給し、圧電共振子12a〜12hの温度によって変化する発振周波数から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電共振子を利用して多点の温度測定を行う多点温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の温度を測定する方法として、温度センサの電気的特性(センサ素子の抵抗、起電力、発振周波数、など)を測定し、その値を温度に換算することにより、被測定物の温度を計測することが知られている。センサ素子として、温度により電気抵抗が変化する白金線、熱電対、サーミスタなどが使用され、さらに高精度のセンサ素子として、温度により共振特性が変化する水晶発振子が使用されている。
【0003】
また温度センサと温度測定装置とを接続する場合には、測定点に設定された一つの温度センサと温度測定装置間には2本のリード線が用いられる。
【0004】
一方、被測定物がある程度の大きさを持ち、複数の測定点で温度測定が必要な場合に、複数の測定点に温度センサを設置して温度測定を行うことになるが、各温度センサに2本のリード線を用いると、測定点数の2倍のリード線が必要になり、リード線を敷設する作業が煩雑になるという問題があった。さらに被測定物が壊れやすい物の場合に、その取り扱いに多くの注意を払う必要があり、リード線を敷設する作業に多くの時間を要するという問題があった。
【0005】
特許文献1には、被測定物の各所の温度を測定できるようにした多点水晶温度測定装置が開示されている。この装置では、センサ支持部材の複数箇所に共振周波数がそれぞれ異なる複数個の水晶振動子を固着配置し、複数個の水晶振動子の振動電極端子を高周波線路に対して並列的に接続し、センサ支持部材、複数個の水晶振動子、及び高周波線路を温度検出プローブとし、高周波ケーブルを介してネットワークアナライザを内蔵した温度検出装置に接続している。温度測定装置は高周波線路に周波数の変化する交流信号を供給し、流れ込む電流値を検出し、複数個の水晶温度センサの総合的なインピーダンス特性の特異点(例えばピーク点)を検出することによって、各水晶温度センサが載置されている箇所の温度を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−256519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、複数個の水晶振動子の振動電極端子を高周波線路に対して並列的に接続するために水晶振動子間には2本のリード線であり、温度センサと温度測定装置とを接続する作業を、さらに簡易化することが望まれている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、被測定物の複数箇所の温度測定を行う場合に、温度センサと温度測定装置とを接続する作業を簡易かつ安全に行うための多点温度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による多点温度測定装置は、被測定物の複数箇所の温度測定を行う多点温度測定装置であって、
被測定物または被測定物の形状に近似する形状を有するセンサ支持部材の複数箇所に、共振周波数が互いに異なる複数個の圧電共振子を設置するとともに、前記圧電共振子の電極端子を介して、前記複数個の圧電共振子を直列に接続し、最初の圧電共振子の空き端子と最後の圧電共振子の空き端子とを共振周波数計測部の2端子に接続する構成を有し、
前記共振周波数計測部は、前記複数個の圧電共振子に対して周波数が変化する交流信号を供給し、前記圧電共振子の温度によって変化する発振周波数から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による多点温度測定装置は、最初の圧電共振子の空き端子と最後の圧電共振子の空き端子とを伝導材を介して共振周波数計測部に接続する構成を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による多点温度測定装置は、最初の圧電共振子の空き端子と最後の圧電共振子の空き端子とを伝導材を介してループアンテナ1に接続し、前記共振周波数計測部の2端子を、伝導材を介してループアンテナ2に接続し、ループアンテナ1とループアンテナ2とを電磁的に結合して無線により接続する構成を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明による多点温度測定装置は、前記圧電共振子が温度によって変化する発振周波数の変化帯域幅が、個々の圧電共振子によって互いに異なることを特徴とする。
【0013】
また、本発明による多点温度測定装置は、前記圧電共振子が、水晶を用いて構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明による多点温度測定装置は、前記圧電共振子が、LTGA結晶を用いて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被測定物の複数箇所の温度測定を行う場合に、圧電共振子の電極端子を介して複数個の圧電共振子を直列に接続することで、温度センサ間および温度センサと温度測定装置間を接続する作業を簡易かつ安全に行うことが可能になるとともに、被測定物の複数箇所の温度測定を同時に行うことが可能になる。
【0016】
さらに、水晶よりも高温域(例えば500℃)で安定性が大きいLTGA結晶の特徴を利用して、圧電共振子をLTGA結晶により構成することで、高温域で精度の高い温度測定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多点温度測定装置の全体構成の一例を示した模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る多点温度測定装置の共振周波数計測部が受信する交流信号の特性をグラフ化した模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る多点温度測定装置の全体構成の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施形態により限定されるものではない。
【0019】
1.第1実施形態
(1)多点温度測定装置の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る多点温度測定装置の全体構成の一例を示した模式図である。図1に示すように、多点温度測定装置は、被測定物の複数箇所の温度測定を行う多点温度測定装置であって、被測定物または被測定物の形状に近似する形状を有するセンサ支持部材11の複数箇所に、共振周波数が互いに異なる複数個の圧電共振子12a〜12hを設置するとともに、圧電共振子12a〜12hの電極端子を介して、複数個の圧電共振子12a〜12hを直列に接続し、最初の圧電共振子12aの空き端子13と最後の圧電共振子12hの空き端子14とを伝導材15(例えば、リード線)を介して共振周波数計測部10に接続した構成を有している。
【0020】
センサ支持部材11は、被測定物(例えば、半導体ウエハ基板)の形状に近似するような形状にしており、被測定物の温度を測定したい箇所に応じてセンサ支持部材11の上に温度センサを設置することが可能である。
【0021】
圧電共振子12a〜12hは、温度センサであり、温度によって発振周波数が変化する特徴を備えている。圧電共振子12a〜12hは、被測定物の温度を測定したい箇所に応じて、センサ支持部材11の上に導熱性の高い接着剤などによって固着して設置されている。
【0022】
圧電共振子12a〜12hは、それぞれ電極端子が2個設けられており、圧電共振子12a〜12hが直列に接続されるように、電極端子間がリード線を介して接続されている。さらに最初の圧電共振子12aの空き端子13と最後の圧電共振子12hの空き端子14とがリード線を介して共振周波数計測部10に接続されている。圧電共振子12a〜12hの電極端子間を1本のリード線で接続することで、圧電共振子12a〜12h間を接続する作業を簡易かつ安全に行うことが可能になる。
【0023】
また、圧電共振子12a〜12hは、水晶やLTGA結晶などを用いて構成されている。水晶を用いた水晶振動子は良く知られているが、水晶よりも高温域(例えば500℃)で安定性が大きいLTGA結晶の特徴を利用して、圧電共振子をLTGA結晶により構成することで、高温域で精度の高い温度測定を行うことが可能になる。
【0024】
共振周波数計測部10は、圧電共振子12a〜12hに対して周波数が変化する交流信号を供給し、圧電共振子12a〜12hの温度によって変化する発振周波数から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測する。
【0025】
ここで、圧電共振子12a〜12hが温度によって変化する発振周波数の変化帯域幅は、個々の圧電共振子によって互いに異なるように設定されている。したがって、圧電共振子12a〜12hの共振周波数が互いに異なるため、被測定物の複数箇所の温度測定を同時に行うことが可能になる。
【0026】
(2)動作
次に、被測定物の複数箇所の温度測定を行う多点温度測定装置の動作について説明する。
【0027】
センサ支持部材11に設置された圧電共振子12a〜12hは、被測定物の温度によって発振周波数が変化する。共振周波数計測部10は、周波数が変化する交流信号を、リード線を介して圧電共振子12a〜12hに供給し、圧電共振子12a〜12hからの交流信号を、リード線を介して受信する。
【0028】
図2に示すように、圧電共振子12a〜12hの共振周波数が互いに異なるため、共振周波数計測部10が受信する交流信号は、周波数F1,F2,F3,・・・,Fnで共振が発生し、その信号強度が小さくなる。
【0029】
圧電共振子12a〜12hが温度によって変化する発振周波数の変化帯域幅は、個々の圧電共振子によって互いに異なるように設定されているので、例えば圧電共振子12aで共振が発生した周波数がF1であることがわかる。
【0030】
共振周波数計測部10は、共振周波数F1〜Fnを温度に換算することにより被測定物の複数箇所の温度測定を同時に行うことが可能になる。
【0031】
2.第2実施形態
図3は、本発明の第2実施形態に係る多点温度測定装置の全体構成の一例を示した模式図である。前述した第1実施形態では、最初の圧電共振子12aの空き端子13と最後の圧電共振子12hの空き端子14とを伝導材15を介して共振周波数計測部10に接続した構成としているが、本実施形態では、最初の圧電共振子12aの空き端子13と最後の圧電共振子12hの空き端子14とを伝導材15を介してループアンテナ16に接続し、共振周波数計測部10の2端子に伝導材18を介してループアンテナ17を接続し、ループアンテナ16とループアンテナ17とを電磁的に結合して無線により接続する構成としている。ループアンテナ16は、センサ支持部材11の所定の位置に設置されている。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0032】
このような構成にすることで、被測定物が回転体などの動くものである場合に、あるいは非常に高温/低温状態である場合に、温度計測作業を簡易かつ安全に行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、被測定物の複数箇所の温度測定を行う多点温度測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 共振周波数計測部
11 センサ支持部材
12a〜12h 圧電共振子
13 最初の圧電共振子12aの空き端子
14 最後の圧電共振子12hの空き端子
15 伝導材
16 ループアンテナ
17 ループアンテナ
18 伝導材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の複数箇所の温度測定を行う多点温度測定装置であって、
被測定物または被測定物の形状に近似する形状を有するセンサ支持部材の複数箇所に、共振周波数が互いに異なる複数個の圧電共振子を設置するとともに、前記圧電共振子の電極端子を介して、前記複数個の圧電共振子を直列に接続し、最初の圧電共振子の空き端子と最後の圧電共振子の空き端子とを共振周波数計測部の2端子に接続する構成を有し、
前記共振周波数計測部は、前記複数個の圧電共振子に対して周波数が変化する交流信号を供給し、前記圧電共振子の温度によって変化する発振周波数から共振周波数を測定し、その共振周波数を温度に換算することにより被測定物の温度を計測することを特徴とする多点温度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多点温度測定装置であって、
最初の圧電共振子の空き端子と最後の圧電共振子の空き端子とを伝導材を介して共振周波数計測部に接続する構成を有することを特徴とする請求項1に記載の多点温度測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の多点温度測定装置であって、
最初の圧電共振子の空き端子と最後の圧電共振子の空き端子とを伝導材を介してループアンテナ1に接続し、前記共振周波数計測部の2端子を伝導材を介してループアンテナ2に接続し、ループアンテナ1とループアンテナ2とを電磁的に結合して無線により接続する構成を有することを特徴とする請求項1に記載の多点温度測定装置。
【請求項4】
前記圧電共振子が温度によって変化する発振周波数の変化帯域幅は、個々の圧電共振子によって互いに異なることを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の多点温度測定装置。
【請求項5】
前記圧電共振子は、水晶を用いて構成されていることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載の多点温度測定装置。
【請求項6】
前記圧電共振子は、LTGA結晶を用いて構成されていることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載の多点温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−137738(P2011−137738A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298309(P2009−298309)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(502209796)株式会社福田結晶技術研究所 (17)
【出願人】(000136561)株式会社フルヤ金属 (48)
【出願人】(591273269)株式会社サーキットデザイン (29)