説明

多目的に使用する二重管式熱交換器

【課題】
屋根の融雪において、地下水や雨水を散水する方法は枯渇を招くので実施に限界があり、また屋根上や屋根裏に単管の放熱管を配管する方法は長い蛇行配管を必要とするので、既存の屋根への施工は不可能であり、しかもシステム的に複雑となり熱効率が悪く、消雪効果や燃費の点で問題があった。
【解決手段】
本発明は、外壁と内管とよりなる二重管式で、熱媒体が内管と外管の内部を循環して、同一の管体で熱媒体を往復させる熱交換器であって、屋根の垂木と垂木の間や野地根の間に挿入することによって屋根上の雪を消雪すること、さらにはこの二重管式の熱交換器を使用することによって農業用ハウスや貯蔵タンクの温度調節も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は効率が高く、取り付けが容易な多目的に使用できる二重管式の熱交換器であって、屋根の融雪や農業用ハウスの温度調節を可能とする装置である。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根に積もった雪を取り除くには人力による雪下ろし作業によるか、屋根上に地下水を散布する方法が行われていた。
最近、屋根の上や屋根裏に放熱管を蛇行配管して屋根上の雪を溶かすことが提案されている。
【特許文献1】特開2002−322828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記、従来の方法のうち、人力による方法は重労働を必要とする問題があった。
地下水を散布する方法は、地下水の枯渇を招くので実施に限界があった。
屋根の上や屋根裏に単管の放熱管を配管する方法は、長い蛇行配管を必要とするので、既存の屋根裏に施工するのが不可能で、屋根の改造を必要とするために、その施工経費が膨大になるという問題があった。
また、放熱管の蛇行配管は、管の総延長が長くなるので、システムが複雑になり、熱効率が悪く、循環液の入り口温度と出口温度の差が大きいので雪の斑消えがあった。
更に、予熱運転に長時間を必要とするので燃費が大きいのが問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記従来の設備の問題を解決し、既存の屋根でも簡単に安価で設置でき、熱効率がよく、維持管理が容易で、省エネルギーで屋根の融雪ができるばかりでなく、床や壁等の暖房にも用いられる装置を提供しようとするものである。その構成は(1)外管とその内端部に開口を有する内管を有する二重管であり、熱媒体が内管内部及び外管と内管との間隙を循環し、熱媒体の往管と戻り管とが同一管端に管寄せされている二重管式熱交換器を備えた建築物の温度調節装置。
(2)瓦棒葺き屋根の瓦棒の中空部に上記(1)記載の二重管式熱交換器を挿入し、各二重管式熱交換器が軒先の唐草部で連結管に接続固定されていることを特徴とする屋根の融雪装置。
【0005】
(3)垂木と垂木の間にT型又はL型の二重管式熱交換器を屋根裏から、軒桁の上の垂木と野地板の垂木高隙間に、軒先の鼻隠し板まで挿入し、各二重管式熱交換器を棟部で循環の往還及び戻り管に接続していることを特徴とする上記(1)記載の二重管式熱交換器を有する屋根の融雪装置。
(4)アルミニュウム箔、金属製熱伝導板等の間に上記(1)記載の二重管式熱交換器を入れ、均熱板を嵌め合わせたものを、断熱材、アルミニュウムシート、押え板で、屋根、床、壁に固定したことを特徴とする建築物の温度調節装置。
【0006】
(5)雪止め金具に縦に補助金具を付け、その補助金具の上又は下側に、上記(1)記載の二重管式熱交換器を露出するように適当な間隔に設置した屋根の融雪装置。
(6)軒先の唐草部にリップミゾ型鋼を取り付け、その中空に、上記(1)記載の二重管式熱交換器を設置してミゾ型鋼上に金属性伝導板を取り付け、トタン板を張った屋根の融雪装置。
【0007】
(7)ハウス内の支柱又は地中に上記(1)記載の二重管式熱交換器を有する建築物の温度調節装置。
(8)外管が扁平である上記(1)記載の二重管式熱交換器において、これをタンク、管等の内側又は外側に設置したことを特徴とする温度調節装置。
【発明の効果】
【0008】
以上、図面を参照して説明したように、この発明は新築に限らず既存の家屋でも利用できる温度調節装置である。
例えば、トタンの張替えや屋根の改造をしないで、設置施工が容易、安価で熱効率が優れ、維持管理が容易な融雪装置である。更に、屋根のほかに、床暖房、壁暖房、ソーラ、ロードヒーティングに利用できる。
また、農業用ハウス栽培、食品加工、乾燥、バイオ加工等の広範囲の分野に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の二重管式熱交換器は外管と内管との二重管で構成され、外管と内管の隙間が内部で連通し、熱媒体が隙間と内管を逆方向に流れる循環機能を有し、往管、戻管を同一管端に管寄せが可能になり、一本の循環式熱交換器で、新築や既存屋根の構造や形状に合う様に自由に製作できる。
【0010】
この二重管熱交換器によれば、屋根改造や放熱管の長蛇行配管の必要がなく、システム全体を大幅に簡素化し、僅かの隙間等にも簡単に設置が可能になり、大幅な資材費や施工費の低減が可能になる。
【0011】
この発明で用いる二重管式熱交換器を、銅、アルミニュウム、SUS管等で製作すれば耐食性で熱伝導率が優れているので、内管を細くして循環させる熱媒体の流量を少なく、外管の放熱面積を大きくして放熱量を増して、コンパクトで全体の温度差が小さく燃費を大幅に削減できる。
【0012】
この二重管式熱交換器を設ける場合、新築のときは言うまでもなく、既存の瓦棒葺き屋根では軒先端のキャップを外した瓦棒の中空に、二重管式熱交換器を挿入して、各二重管式熱交換器を軒先の唐草部で連結管を接続固定する。
二重管式熱交換器の伝導熱や輻射熱で瓦棒全体から野地板やトタンが温められて、効率よく屋根の融雪ができる。また、唐草部の連結管(入り口管、出口管)や熱媒体循環の往き管、戻り管からの放熱で軒先が温められてツララの発生が防止できる。
そして夏季はトタン板や屋根裏に大量に放射蓄熱される凡そ65℃以上の貫流熱や輻射熱を、二重管式熱交換器で集熱し、循環、貯湯槽で熱交換してソーラーシステムとしても使用できて、一石二鳥の屋根の融雪装置が提供できる。
【0013】
トタン葺き屋根の、垂木と垂木の間に、T型やL型に外形を変えた二重管式熱交換器を屋根裏から軒桁の上の垂木と野地板の垂木高隙間に、軒先の鼻隠し板まで挿入し野地板に密接に設置して、各二重管式熱交換器を屋根裏の棟部で循環の往き管や戻り管に接続して屋根の融雪装置として有効に使用できる。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を具体的に説明する。
図1及び図2は、二重管式熱交換器2HTで、イ図、ロ図は内部構造図及び断面図である。外管は連結管S1と一体であり、内管は連結管R1と一体で、内管と外管との二重管で構成される。外管と内管の隙間が内部で内管単部に連通し、流れの方向を変え、熱媒体が隙間と内管内部を反対の方向に流れて、循環機能を有する。連結管往き管S1、戻り管R1を二重管式熱交換器端部に管寄せが可能にして、一本の循環式熱交換になる、新築や既存の屋根の瓦棒の構造や形状に合うように製作できる二重管式熱交換器2HTである。 図2は、露出型、扁平型の二重管式熱交換器の図を示していて、ハ図上段露出型2重ヒーターであって、四角形を形成している。またハ図下段は丸型の形成体であって、共に鋼管製である。ニ図は扁平型二重管式熱交換器の図でトタン板直結型である。
【0015】
図3は、瓦棒、二重管式熱交換器の設置図でイ図の瓦棒19の、軒先の部分を示す。キャップ20を外し、外した側から瓦棒19の中空に二重管式熱交換器2HTを挿入して、各二重管式熱交換器2HTを軒先13の唐草部22で連結管S1、R1を接続、固定する。二重管式熱交換器2HTの伝導熱や輻射熱で瓦棒19と野地板9が温められ、これが均熱板となってトタン8から放熱されて屋根の融雪が斑なくできる。
又、唐草22、軒先13が温められて、軒先の積雪と融雪水によるツララの発生が防止できるようにした。図中の23は屋根裏側を示している。
【0016】
夏季にあっては、図3のイ図、ロ図に示すように、太陽熱がトタン板8、瓦棒19から野地板9、屋根裏23に大量に蓄熱され凡そ65℃の温度になる。この貫流熱や輻射熱を図5の二重管式熱交換器2HTで集熱昇温された温水は、接続管R1から戻り主管S、三方向弁V1,循環ポンプP,二重管式熱交換器2HTのS1の順に循環される。貯湯槽ST内の水が熱交換器EXで加温されて温水になり、ソーラシステムとしても使用できるようにした。
【0017】
このように、本発明装置は、冬季は二重管式熱交換器による屋根の融雪装置として使用し、夏季は自然の太陽熱を利用した給湯装置として一石二鳥で使用できる。そして、この二重管式熱交換器により大幅に装置を簡素化して安価に施工でき、熱効率を良くし、維持費が安く、維持管理が容易な二重管式熱交換器による屋根の融雪装置である。
【0018】
図4は、請求項3に対応する発明で、太陽熱の熱交換の効率を更に改善し、建築物の表面に装置が露出せず、違和感のない屋根の融雪装置を提供する施工工程図である。
図4のイ図は屋根の斜視図で、新築の場合は言うまでもなく、既存の屋根の垂木11と垂木11の間にT型やL型に製作した二重管式熱交換器(T)2HTを屋根裏23から、軒桁12の上の垂木11と、野地板9の垂木高の隙間に軒先の鼻隠し板14まで挿入し、各二重管式熱交換器2HT、連結管R1と循環の主管R、連結管S1循環主管Sを棟部で接続する。棟側循環主管に,両屋根の二重管式熱交換器2HTが連結できる請求項2の構成以上に効率の良い屋根の融雪装置の詳細図である。
【0019】
図4のロ図は、屋根、床(野地板、床板)下部に、アルミニューム箔、二重管式熱交換器2HTを,伝導板(アルミニューム板、銅板)、炭素系均熱板2(セラミックス板、その他の板)に嵌合させ、断熱材3アルミニュームシート5、押え板6で、密接に設置する図である。これを床、壁等に取り付けることによって、熱効率が更に向上した暖房が可能で、燃費節減ができる。
【0020】
図5は本発明の屋根上の二重管式熱交換器に水を循環させて湯を沸かし給湯するシステム図であって、太陽エネルギーの利用を大とする。
【0021】
図6は露出型の熱交換器を屋根に取り付けた図面でイ図は屋根に取り付けたときの全体の斜視図、ロ図は屋根上の側面図で、雪止め金具26、山形鋼27、補助山形鋼28を取り付け、山形鋼28の上側又は下側に、図2ハ図に示す積雪の重量に耐える露出型二重管式熱交換器HX(例えば外径30〜40mmの丸型,角型の鋼管、SUS管製)を適当な間隔で設置した横付け方式である。屋根の下方に3〜4本設置しておき、不凍熱媒体を循環すると雪は早く融解する。熱交換器HXの上方には25の耐熱金属箔テープや吊子金具29を設けて、雪は重力によって下に移動して順次融雪される。図中の29は吊子金具、34は放熱板を示している。そして熱源は図2ニ図に図示されている偏平型二重管式熱交換器DHを、トタン板8に直接耐熱金属箔テープ25等で接着し、屋根の融雪装置とした。
【0022】
図7は、ツララの発生防止装置であって、上記図6に記載の屋根の露出型融雪装置や、その他の屋根の融雪装置と併設するのに適している。
図7はツララ発生防止装置の軒先の図面である。軒先13の唐草部22にリップ溝形鋼21を取り付け、その中空に二重管式熱交換器2HTを設置してミゾ形鋼21の上に伝熱板(金属板)1を取り付けてトタン板を張る。二重管式熱交換器2HTの伝導熱や輻射熱によってリップミゾ型鋼21が温められて、伝導板1、野地板9、トタン板8、軒先全体が温められてツララの発生が防止できる。外観に違和感がない。
【0023】
図8は雨樋や縦樋の凍結を防止する例である。イ図は雨樋30、縦樋31の内側に二重管式熱交換器2HTを密接に設置して、内側から温めて凍結が防止できるようにした例である。
また、ロ図は二重管式熱交換器2HTを外側に設けて凍結を防止する例である。
【0024】
図9はビニールハウスH,両端側内部の支柱Bに二重管式熱交換器2HTを縦に適当な間隔に設置して、ハウス内暖房をし、畦Aの中心部に二重管式熱交換器を敷設して畦地内の加温装置や、その他の農事にも使用できるハウス暖房システムの例を示す図である。
【0025】
また、図10は、図2に示す扁平形の二重管式熱交換器を、タンクや管類の外側に密接に設置して、二重管式熱交換器DHに冷温水を循環し、冷却、加温、保温、保冷装置等に使用できる冷却加温装置である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述のように本発明の多目的に利用できる二重管式の熱交換器は、管式であるためスリムで屋根裏に利用して融雪装置として使用でき、壁や床に使用することによって家内の暖房となり、又太陽熱を利用してソーラーシステムとしても利用できるため新築の家屋にあっては羨望の的となって、その利用の度合は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】二重管式熱交換器構造図
【図2】露出型、変形二重管式熱交換器
【図3】瓦棒の二重管式熱交換器設置図
【図4】T型二重管式熱交換器設置図
【図5】システム図
【図6】露出型熱交換器の屋根取り付け図
【図7】軒先のツララ発生防止装置
【図8】雨樋、縦樋の凍結防止装置
【図9】ハウスのシステム図
【図10】タンクの温度調節システム図
【符号の説明】
【0028】
1 伝導板(金属板)
2 均熱板(炭素系)
3 断熱材
4 アルミニュウム箔
5 アルミニュウムシート
6 押え板
7 ルーヒング
8 トタン板
9 野地板
10 床板
11 垂木
12 軒桁
13 軒先
14 鼻隠し板
15 水切り
16 棟
17 破風板
18 軒天井
19 瓦棒
20 瓦棒キャップ
21 リップ溝型鋼
22 唐草
23 屋根裏
24 下地板
25 耐熱金属箔テープ
26 雪止金具
27 山形鋼
28 補助山形鋼
29 吊子金具
30 雨樋
31 縦樋
32 樋カバー
33 バンド
34 放熱板
S 一次側(往き管)
R 二次側(戻り管)
S1 二重管式熱交換器連結管(入口管)
R1 二重管式熱交換器連結管(出口管)
SUN 太陽
P 循環ポンプ
B 温水ボイラー
ST 貯湯槽
EX 熱交換器
V1 三方弁(往き)
V2 三方弁(戻り)
2HT 二重管式熱交換器
HX 露出型二重管式熱交換器(丸型、角型)
DH 扁平型二重管式熱交換器
(T)2HT T型二重管式熱交換器
A 畦
H 栽培ハウス
S 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管とその内端部に開口を有する内管を有する二重管であり、熱媒体が内管内部及び外管と内管との間隙を循環し、熱媒体の往管と戻管とが同一管端に管寄せされている多目的に使用する二重管式熱交換器を特徴とする建築物の温度調節装置。
【請求項2】
瓦棒葺き屋根の瓦棒の中空部に請求項1記載の二重管式熱交換器が挿入され、各二重管式熱交換器が軒先の唐草部で連結管に接続固定されていることを特徴とする屋根の融雪装置。
【請求項3】
垂木と垂木の間にT型又はL型の二重管式熱交換器を屋根裏から、軒桁の上の垂木と野地板の垂木高隙間から、軒先の鼻隠し板まで挿入され、各二重管式熱交換器が棟部で循環の往還及び戻り管に接続されていることを特徴とする請求項1記載の二重管式熱交換器を有する屋根の融雪装置。
【請求項4】
アルミニュウム箔、金属製熱伝導板等の間に請求項1記載の二重管式熱交換器が配置され、均熱板を嵌め合わせたものが、断熱材、アルミニュウムシート、押え板で、屋根、床、壁に固定されていることを特徴とする建築物の温度調節装置。
【請求項5】
雪止め金具に縦に補助金具を付け、その補助金具の上又は下側に、請求項1記載の二重管式熱交換器が露出するように適当な間隔に設置されている屋根の融雪装置。
【請求項6】
軒先の唐草部にリップ溝型鋼を取り付け、その中空に、請求項1記載の二重管式熱交換器を設置してミゾ型鋼上に金属性伝導板を取り付け、トタン板を張った屋根の融雪装置。
【請求項7】
ハウス内の支柱又は地中に請求項1記載の二重管式熱交換器を有する農業用ハウスの温度調節装置。
【請求項8】
外管が扁平である請求項1記載の多目的に使用できる二重管式熱交換器をタンク、管等の内側又は外側に設置したことを特徴とする温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−292412(P2007−292412A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122960(P2006−122960)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504173703)株式会社狩野設備工業 (1)
【Fターム(参考)】