説明

多目的小型電動式トラクター

【課題】畑作農作業のほとんどを機械化でき、密閉された空間でも作業が可能な多目的小型電動式トラクターと、ユニット化した小型農機具を提供する。
【解決手段】多目的小型電動式トラクター1は、荷物及び各農機具ユニットを載せる荷台8を有し、荷台8を載せる車体フレーム2にはロボットアーム10が設けられている。一対の駆動前輪3a、3bと一対の前輪駆動モータ4a、4bと一対のフリー回転の後輪9a、9bを有し、車体フレーム2に搭載されているウィンチワイヤー巻き取りドラム11と、ドラム駆動するモータ12を有している。荷台8は小型農機具ユニットを搭載して、荷台高さ調整モータ5で上下に移動可能になっている。ロボットアーム10は360度回転可能で3箇所に関節が設けられ、手首は360度回転可能で物体を挟むことが出来る。また手首部分は取り外し可能で、別種の農具を付け替えることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多目的小型電動式トラクターと小型農機具に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用に使用されるトラクターの大部分は、動力源にディーゼルエンジン等化石燃料を使用した車体の上に操縦者が乗り、これを運転して作業用機械を連結して引くトラクターがほとんどである。また一部には化石燃料エンジンに替えて電動モータを搭載したトラクターも提供されている。(例えば特許文献2参照)
また一部には燃料電池を搭載した電動式の農用トラクターも提供されている。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−225577
【特許文献2】特開2003−136970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化石燃料を使用したエンジン付きのトラクターでは、ビニールハウス等密閉された空間内での使用は排気ガスの問題で難しかった。またエンジンの構造が複雑で製造コストが高く少規模農業には向いていなかった。一部紹介されている動力源を電動モータに置き換えた機械では、車体が従来のトラクターと同等で重量が重く、尚且つ従来のままの農業用機械を連結して引くには、大電力が必要になりコストが高く電池重量も大きくなる問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を克服し、小規模畑作農業に適したコストが安く、多目的に利用できる小型電動式トラクターと、小型農機具ユニットを提供することを目指して考案された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係わる多目的小型電動式トラクターは、荷物及び小型農機具ユニットを載せる荷台を有し、荷台を載せる車体フレームにはロボットアームが設けられている。一対の駆動前輪と一対の前輪駆動モータと一対のフリー回転の後輪を有し、車体フレームに搭載されているウィンチワイヤー巻き取りドラムと、ドラムを駆動するモータを有している。荷台は高さ調整モータで上下に移動可能な構造になっている。ロボットアームは360度回転可能で3箇所に関節が設けられ手首は360度回転可能で物を挟むことが出来るような構造になっている。一対の電池13a、13bと、無線リモコン受信部と制御部とを含む電子回路を有している。
【0007】
本発明者は、現在の農用トラクターが化石燃料エンジンを動力源に使用していること、日本は小規模農家が多く農地に起伏があって大型農機具の導入が難しいこと、加えて農業従事者が高齢化していること等に鑑み、環境に配慮してビニールハウスの中でも長時間作業が可能でコストの安い農機具の開発と、ロボット化によって労力の低減を図ることをめざして本発明を完成させた。
【0008】
本発明の多目的小型電動式トラクターは、走行やロボットアームの操作、小型農機具ユニットの操作を無線式リモコン又はワイヤー式リモコンで操縦され、農作業者の労力を最小にして効率の良い畑作農業が可能である。ユニット化された小型農機具を付け替えることにより多目的に利用できる。又様々な農機具、例えば苗の植え付けや草刈りや芝生刈りの機械の開発も低コストで可能である。
【0009】
本発明の多目的小型電動式トラクターに設けられた前記ロボットアームは、前記小型農機具ユニットの取り付けや取り外しの他、農作物の採り入れの補助労力としても活用でき、手首部分は取り外し可能で、別種の農具を付け替えることが出来る構造になっている。また腕の中に組み込まれているウィンチワイヤーは農作業以外にも用途を広げることができる構造になっている。
【0010】
動力源とする電池は、汎用の自動車に搭載されている電池を利用し、充電は家庭用電力で対応でき、夜間電力を利用すればランニングコストを低減出来ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小規模畑作農業に適したコストが安く、密閉された空間でも長時間作業が可能で様々に利用できる多目的小型電動式トラクターと、小型農機具ユニットを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の多目的小型電動式トラクターの外観図である。
【図2】耕運機ユニットの外観図である。
【図3】畝床作機ユニットの外観図である。
【図4】肥料散布機ユニットの外観図である。
【図5】種播機ユニットの外観図である。
【図6】水散布器ユニットの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の多目的小型電動式トラクターを示している。
本発明の実施の形態の多目的小型電動式トラクター1は、車体フレーム2とロボットアーム10と、荷台8と一対の駆動前輪3a、3bと一対の前輪駆動モータ4a、4bと、フリー回転の後輪9a、9bと荷台高さ調整モータ5と一対の連結板7a、7bと、ウィンチワイヤー巻取りドラム11とドラム駆動モータ12と、一対の電池13a、13bと、無線リモコン受信部と制御部とを含む電子回路(図示せず)を有している。
【0014】
多目的小型電動式トラクター1は前後に走行可能であり、一対の前輪駆動モータ4a、4bを単独に操作することにより左折または右折ができる。走行を含む全ての操作は手元にあるリモコン(図示せず)で操縦される。
【0015】
荷台8はそれぞれの小型農機具ユニットの地面からの高さを調整する為に、上下に移動できる構造を有している。又折りたたみ式の床(図示せず)を取り付けることにより、荷物の運搬車としても利用できる構造を有している。
【0016】
ロボットアーム10は、3箇所に関節が設けられ腕全体が360度回転可能な構造になっている。手首部分は単独で360度回転可能な構造になっている。また手首部分は取り外し可能で、別種の農具(図示せず)を付け替えることが出来る構造になっている。腕の内部にはウィンチワイヤーを擁し手の平部分から外に引き出すことが出来る構造になっている。
【0017】
図2は本発明の実施の形態の耕運機ユニットを示している。
耕運機ユニット100は、鍬刃取り付け台101と鍬刃ユニット102と、一対の鍬刃駆動ベルト103a、103bと一対の駆動モータ104a、104bを有し、多目的小型トラクター1の荷台8の上に固定して使用される。一対の駆動モータ104a、104bは、多目的小型電動式トラクター1に設けられた電子回路(図示せず)に接続して制御される。鍬刃ユニット102の地面からの高さは、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の高さを上下に移動させることにより調整する。
【0018】
図3は本発明の実施の形態の畝床作機ユニットを示している。
畝床作機ユニット200は、畝床幅調整板201a、201bと畝床作機取り付け台204a、204bと一対の駆動モータ202a、202bと、一対の盛土スクリュー203a、203bとを有し、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の上に固定して使用される。一対の駆動モータ202a、202bは、多目的小型電動式トラクター1に設けられた電子回路(図示せず)に接続して制御される。
【0019】
畝床幅の調整は、畝床幅調整板201a、201bを移動させることにより可能な構造になっている。また畝床作機ユニット200の地面からの高さは、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の高さを上下に移動させることにより調整する。
【0020】
図4は本発明の実施の形態の肥料散布機ユニットを示している。
肥料散布機ユニット300は、肥料入れケース301と駆動モータ302と減速歯車303と、肥料送りスクリュー304と振動板305を有し、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の上に固定して使用される。駆動モータ302は、多目的小型電動式トラクター1に設けられた電子回路(図示せず)に接続して制御される。
【0021】
図5は本発明の実施の形態の種播機ユニットを示している。
種播機ユニット400は、本体シャーシ401と駆動モータ402と、テープ巻取りリールA403と種供給リール404と、種受け器405とコマ送りドラム406とテープ巻取りリールB407と、土掛けノレン408と種供給スロット409と穴開けスロット410を有し、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の上に固定して使用される。駆動モータ402は、多目的小型電動式トラクター1に設けられた電子回路(図示せず)に接続して制御される。
【0022】
種は再利用可能なエンボステープ411に収められ種供給リール404に巻かれている。種供給リール404も再利用可能な構造である。種を播く畝床上の穴の深さは、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の高さで調整する。
【0023】
図6は本発明の実施の形態の水散布器ユニットを示している。
水散布器ユニット500は、水槽501と電磁弁502とジョーロ503と水量窓504を有し、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の上に固定して使用される。
【0024】
次に作用について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態の多目的小型電動式トラクター1は、一対の駆動前輪3a、3bが一対の前輪駆動モータ4a、4bで、ベルトまたはチェーンを介して駆動される。後輪9a、9bはフリー回転の構造で、前輪駆動モータ4a、4bをそれぞれ単独に駆動することにより左折または右折走行が可能である。
荷台8の地面からの高さ調整は、荷台高さ調整モータ5で一対の荷台高さ調整用歯車6a、6bと一対の連結板7a、7bを介して調整する。
【0025】
ロボットアーム10は、車体フレーム2に固定されたモータ(図示せず)で360度回転可能な構造になっている。3箇所に設けられた関節は、内部に設けられた3個のモータ(図示せず)で駆動される。手首は内部に設けられているモータ(図示せず)で、単独に360度回転可能な構造になっている。手首の先端部分は物を挟むことができる構造になっていて、腕の内部に設けられたモータ(図示せず)で駆動される。先端部分には圧力センサー(図示せず)が設けられていて、挟む物体の損傷を防止する構造になっている。また手首部分は取り外し可能で別種の農具(図示せず)を付け替えることにより、例えばシャベルで根野菜を掘り起こすことが出来る構造になっている。
【0026】
ウィンチワイヤー巻取りドラム11に巻かれたワイヤーは、ロボットアーム10の手首の先端部分から外に引き出され、ドラム駆動モータ12で巻き取られる。
【0027】
図2に示す耕運機ユニット100は、鍬刃ユニット102を一対の駆動モータ104a、104bで、一対の鍬刃駆動ベルト103a、103bを介して回転させる。
駆動モータ104a、104bの電源と制御信号は、多目的小型電動式トラクター1の電子回路(図示せず)から供給される。駆動モータ104a、104bの起動、停止と耕運機ユニット100の走行は、手元にあるリモコン(図示せず)で操作する。耕運機ユニット100の地面からの高さ調整は、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の高さを上下に移動させることにより調整する。
【0028】
図3に示す畝床作機ユニット200は、駆動モータ202a、202bで回転される盛土スクリュー203a、203bで土を押し上げ、畝床土押さえ205で畝床の表面を整える。畝床の幅は畝床作機取り付け台204a、204bを調整する。
畝床作機ユニット200の電源と制御信号は、多目的小型電動式トラクター1の電子回路(図示せず)から供給され、走行と盛土スクリュー203a、203bの起動、停止は、手元にあるリモコン(図示せず)で操作する。地面からの高さ調整は、多目的小型電動式トラクター1の荷台8の高さを上下に移動させることにより調整する。
【0029】
図4に示す肥料散布機ユニット300は、肥料入れケース301に肥料を入れた後駆動モータ302で、肥料送りスクリュー304を回転させて肥料を送り出し、振動板305を上下に振動させて肥料落ちを良くする。肥料の量は駆動モータ302の回転を変えて調整する。駆動モータ302の電源と制御信号は、多目的小型電動式トラクター1の電子回路(図示せず)から供給される。駆動モータ302の回転制御は手元にあるリモコン(図示せず)で操作する。
【0030】
図5に示す種播機ユニット400を載せた多目的小型電動式トラクター1は、種を播く位置で走行を一旦停止し、本体シャーシ401に設けられた駆動モータ402を回転させると、穴開けスロット410で畝床上に種を入れる穴を開け、穴開けスロット410が上がると同時にコマ送りドラム406を回転させて、エンボステープ411に収められている種を種受け器405に落とす。種は種供給スロット409を通り土の穴に落ちる。駆動モータ402の回転を一旦停止し、多目的小型電動式トラクター1が再移動して、土掛けノレン408で穴に土をかける構造になっている。
【0031】
駆動モータ402の電源と制御信号は、多目的小型電動式トラクター1の電子回路(図示せず)から供給される。種播き工程は、多目的小型電動式トラクター1の電子回路(図示せず)に組み込まれているマイコンソフトで自動化されている。起動、停止は手元のリモコン(図示せず)で操作される。
【0032】
図6に示す水散布器ユニット500は、多目的小型電動式トラクター1の荷台8に載せて移動する。多目的小型電動式トラクター1の電子回路(図示せず)に接続された電磁弁502の開閉は、手元のリモコン(図示せず)で操作する。
【符号の説明】
【0033】
1 多目的小型電動式トラクター 302 駆動モータ
2 車体フレーム 303 減速歯車
3 駆動前輪 304 肥料送りスクリュー
4 前輪駆動モータ 305 振動板
5 荷台高さ調整モータ 400 種播機ユニット
6 荷台高さ調整用歯車 401 本体シャーシ
7 連結板 402 駆動モータ
8 荷台 403 テープ巻取りリールA
9 後輪 404 種供給リール
10 ロボットアーム 405 種受け器
11 ウィンチワイヤー巻取りドラム 406 コマ送りドラム
12 ドラム駆動モータ 407 テープ巻取りリールB
13 電池 408 土掛けノレン
100 耕運機ユニット 409 種供給スロット
101 鍬刃取り付け台 410 穴開けスロット
102 鍬刃ユニット 411 エンボステープ
103 鍬刃駆動ベルト 500 水散布器ユニット
104 駆動モータ 501 水槽
200 畝床作機ユニット 502 電磁弁
201 畝床幅調整板 503 ジョーロ
202 駆動モータ 504 水量窓
203 盛土スクリュー
204 畝床作機取り付け台
205 盛土押さえ
300 肥料散布機ユニット
301 肥料入れケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物及び小型農機具ユニットを載せる荷台を有し、荷台を載せる車体フレームにはロボットアームが設けられている。一対の駆動前輪と一対の前輪駆動モータと一対のフリー回転の後輪を有し、車体フレームに搭載されているウィンチワイヤー巻き取りドラムと、ドラムを駆動するモータを有している。荷台は高さ調整モータで上下に移動可能な構造になっている。一対の電池と無線リモコン受信部と制御部とを含む電子回路を有していることを特徴とする多目的小型電動式トラクター。
【請求項2】
請求項1記載の多目的小型電動式トラクターは、人が搭乗する部分を有せず走行やロボットアームの操作、小型農機具ユニットの操作を無線式リモコン、又はワイヤー式リモコンで操縦されるような構造を有することを特徴とする。
【請求項3】
請求項1記載の多目的小型電動式トラクターの荷台に載せ、固定して使用するユニット化された小型農機具は、走行車輪を有せずそれぞれ単独のモータ駆動装置を有している。また駆動装置は多目的小型トラクターの制御部に接続してコントロールされることを特徴とする。
【請求項4】
請求項1記載のロボットアームは、360度回転可能で3箇所に関節が設けられ、手首は単独に360度回転可能で、物体を挟むことが出来るような構造になっている。先端部分には圧力センサーが設けられていて挟む物体の損傷を防止する。また手首部分は取り外し可能で、別種の農具を付け替えることが出来る構造になっている。腕の内部にはウィンチワイヤーが設けられていることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279342(P2010−279342A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152916(P2009−152916)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【特許番号】特許第4553267号(P4553267)
【特許公報発行日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(509098663)
【Fターム(参考)】