説明

多缶設置ボイラ

【課題】バイオガス製造設備から供給されるガス燃料の確実な消費を図るとともに、需要先の需要に見合った蒸気量を安定した運転状態で確保する。
【解決手段】ボイラとして、蒸気発生に必要となる燃料の供給量に制限がない複数の第1ボイラ1aと、蒸気発生に必要となるガス燃料の供給量が変動するとともに、当該供給量が燃料供給側からの供給量により制限を受ける第2ボイラ1bを備え、第2ボイラ1bの発生蒸気量の不足分を第1ボイラ1aで賄える能力を第1ボイラ1aが備えて構成され,蒸気集合部8の蒸気圧力に基づいて、複数の第1ボイラ1aに対して運転指令を出力する第1ボイラ台数制御装置4と備えるとともに、第2ボイラ1bに供給されるガス燃料の圧力に基づいて、第2ボイラ1bで発生する媒体量をガス燃料の圧力に対応した量とする第2ボイラ制御装置5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用、業務用の多缶設置ボイラに関し、更に詳細には、複数台並列に設置したボイラを備え、ボイラから発生される温水、蒸気或いは油等の熱媒体である媒体を媒体集合部で集合して媒体需要先に供給する多缶設置ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
このような多缶設置ボイラは、媒体需要先の用途に応じて、必要とされる温度の媒体(温水、蒸気或いは熱媒体)を媒体需要先に媒体集合部から供給する。ここで、理解を容易とするため、以下の説明では、媒体が蒸気である場合に関して、主に説明する。
【0003】
多缶設置ボイラにおける各ボイラの運転制御形態としては、図2に示すような「個別蒸気圧台数制御」、図3に示すような「集中蒸気圧台数制御」が知られている。
【0004】
「個別蒸気圧台数制御」は、各ボイラBに圧力検出器PIと当該圧力検出器PIの検出結果に基づいて、そのボイラの発停を制御するボイラ運転制御器PS1を設け、各ボイラを制御するものであり、例えば、ボイラから発生する蒸気の圧力が設定された圧力を上回った場合には運転を停止し、設定された圧力より低下した場合に運転を再開する。具体的な制御は、設定された圧力に対応して、ボイラの運転−停止を繰り返す(ON−OFF制御する)2位置制御が良く知られている。さらに、設定圧力として、高燃焼用の高い側の圧力(高設定圧力)及び低燃焼用の低い側の圧力(低設定圧力)が設けられ、ボイラから発生する蒸気の圧力が高設定圧力を上回った場合には運転を停止し(OFF)、高設定圧力と低設定圧力との間にある場合は低燃焼状態を維持し(LOW)、低設定圧力より低下した場合に運転を高燃焼状態とする(HI)ものもあり、この形態は、燃焼状態が、高燃焼状態(HI)−低燃焼状態(LOW)−停止(OFF)間で制御されるため3位置制御と呼ばれている。
この「個別蒸気圧台数制御」において、優先的に使用したいボイラがある場合は、そのボイラの停止に係る設定圧力を他のボイラより高く設定し、当該ボイラが他のボイラより長く運転されるようにして、当該ボイラを優先的に使用する。
【0005】
「集中蒸気圧台数制御」は、各ボイラBから発生される蒸気の集合部である蒸気集合部M(媒体集合部の一例)に圧力検出器PIを設けるとともに、この圧力検出器PIの検出結果に基づいて各ボイラの発停を制御する台数制御器PS2を設け、この台数制御器PS2で運転するボイラを決定し、そのボイラに対して運転指令を出力することにより、需要先での蒸気需要量に見合った蒸気量を発生する。
この「集中蒸気圧台数制御」で優先的に使用したいボイラがある場合は、台数制御器において、優先すべきボイラ情報を記憶しておき、当該ボイラを優先的に始動するようにする。この種の台数制御は、蒸気の集合部である蒸気集合部Mに於ける蒸気圧力の他、蒸気温度に従って、複数台のボイラの台数制御が行われる場合もある。
特許文献1には、上述の台数制御と集中制御とを選択的に実行する多缶設置ボイラが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−281708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近来、地球温暖化阻止等の目的から化石燃料の消費をできるだけ減少させ、例えば、生物由来の産業残渣を利用してバイオガスを発生させ、その保有するエネルギーを燃料とすることが試みられている。この種の生物由来のガスとしては、代表的には有機成分を嫌気性発酵槽でメタンまで分解して得られるガスが知られており、このようにして得られるバイオガスは、脱硫、昇圧、貯留した後、ガス燃料としてボイラ設備に供給され、蒸気発生に利用される。この種のバイオガスは、発生に使用する産業残渣の生成状態が様々であるため、例えば、日日で、バイオガスの発生量が、定格発生量の20〜100%程度まで大きく変動する。
【0008】
この種の発生量が変動することがあるガス燃料を使用するボイラでは、蒸気発生に必要となるガス燃料の供給量が変動するとともに、当該供給量が燃料供給側からの供給量により制限を受ける。また、ガス燃料の供給量が規定の量を下回った場合、当該ボイラを停止させることとなる。
【0009】
一方、このようなボイラの停止状態において、ガス燃料供給側からの供給が継続されると、供給側のガス燃料の圧力が上昇し過ぎるため、ガス燃料を外気に放散することとなるが、この外気放散は、環境に与える影響が大きく好ましくない。
【0010】
「個別蒸気圧台数制御」の問題点
この制御形態を採用する場合、一般的には、バイオガスを可能な限り利用するため、ボイラの運転蒸気設定圧力を高めにする(蒸気圧が高い圧力になるまで運転を継続する)ことで、当該ボイラを、充分な燃料供給を受けられる他の標準ボイラよりも優先的に稼動する台数制御手法を採用することとなる。一般にバイオガスは昇圧されてボイラへ送られるが、バイオガスの発生量がボイラでの消費量より少ない状態が続いて、バイオガスの供給圧力が、ある圧力以下になるとボイラは停止する。すなわち、このようなバイオガスおよび燃料供給を必要量だけ受けることができる標準ボイラを個別蒸気圧台数制御方式で運転するとバイオガスを使用するボイラが頻繁に発停することとなり、さらに、当該ボイラが停止すると同時に、バイオガス供給圧力が上昇し、ある程度の圧力になれば、当該ボイラに運転信号が入るが、このときに、当該バイオガスを使用するボイラの再稼動のタイミングが遅れて、供給圧力が限界値まで達すると、安全弁からバイオガスが大気中に放散してしまう。
【0011】
「集中蒸気圧台数制御」の問題点
この制御形態を採用する場合、全ボイラからの蒸気が集中する蒸気集合部Mの情報により運転する台数を制御することとなり、基本的にボイラ間で、その能力に大きな差がないことが、この制御形態の基本となる。この様な状況下で、バイオガスの供給を受けるボイラを優先して使用しようとすると、最優先で運転するボイラを当該ボイラとすることとなるが、このように優先順位を設定すると、最も、優先されるボイラへ供給されるガス燃料量の変動の可能性が最も高く、供給されるガス燃料の量の規制を最優先のボイラが受けることとなり、他の通常ボイラの運転が最優先されるボイラの運転状態の影響を大きく受ける。結果、設備自体の安定した運転状態を図れない。
【0012】
本発明の目的は、ガス燃料の供給量が変動するとともに、そのガス燃料の供給量により媒体発生量が規制されるボイラを備えた多缶設置ボイラにおいて、供給されるガス燃料の確実な消費を図るとともに、需要先の需要に見合った媒体の供給を安定した運転状態で行える多缶設置ボイラを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための、複数台並列に設置したボイラを備え、ボイラから発生される媒体を媒体集合部で集合して媒体需要先に供給する多缶設置ボイラの特徴構成は、
前記ボイラとして、媒体発生に必要となる燃料の供給量に制限がない第1ボイラと、媒体発生に必要となるガス燃料の供給量が変動するとともに、当該供給量が燃料供給側からの供給量により制限を受ける第2ボイラを備え、
前記第2ボイラの発生媒体量の不足分を前記第1ボイラで賄える能力を前記第1ボイラが備えて構成され、
前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、前記第1ボイラに対して運転指令を出力する第1ボイラ制御装置と備えるとともに、
前記第2ボイラに供給されるガス燃料の量又は圧力に基づいて、前記第2ボイラで発生する媒体量を前記ガス燃料の量又は圧力に対応した量とする第2ボイラ制御装置を備えたことにある。
【0014】
この多缶設置ボイラにあっては、媒体発生に必要となる燃料の供給量に制限がない第1ボイラと、媒体発生に必要となるガス燃料の供給量が変動するとともに、当該供給量が燃料供給側からの供給量により制限を受ける第2ボイラが備えられる。
そして、第1ボイラに対しては第1ボイラ制御装置が働き、第2ボイラに対しては第2ボイラ制御装置が働く。ここで、第2ボイラ制御装置は、前記第2ボイラに供給されるガス燃料の量又は圧力に基づいて、前記第2ボイラで発生する媒体量を前記ガス燃料の量又は圧力に対応した量とすることで、第2ボイラで消費されるガス燃料量を、供給されるガス燃料の量に見合った量とする。結果、第2ボイラは、供給されるガス燃料の量が極度に低下しない限り、その運転を継続し、また、供給されるガス燃料の量に見合っただけ媒体を生成する。
【0015】
一方、第1ボイラは、媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、第1ボイラに対して運転指令を出力する第1ボイラ制御装置により制御を受け、需要先の媒体要求に見合うだけの媒体を、需要先に供給するように、第2ボイラから発生される媒体量では不足する分を発生する。
結果、ガス燃料の供給量が変動するとともに、そのガス燃料の供給量により蒸気発生量が規制されるボイラ(第2ボイラ)を備えた多缶設置ボイラにおいて、供給されるガス燃料の確実な消費を図るとともに、需要先の需要に見合った媒体の供給を安定した運転状態で行える。
【0016】
上記の特徴構成を備えた多缶設置ボイラにおいて、
前記第1ボイラ制御装置による前記第1ボイラに対する運転制御形態が、前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、第1ボイラをON−OFF制御する2位置制御形態、若しくはHI−LOW−OFF制御する3位置制御形態であり、
前記第2ボイラ制御装置による前記第2ボイラに対する運転制御形態が、前記第2ボイラに供給されるガス燃料の量又は圧力に基づいて、前記ガス燃料の量又は圧力の上昇に伴って媒体発生量を増加させる比例制御形態であることが好ましい。
【0017】
この構成を採用することにより、第1ボイラに対しては、従来どおりの、例えば「集中台数制御」を採用し、第1ボイラの運転停止を、2位置制御又は3位置制御する比較的簡易な制御で、需要先の需要に対して第2ボイラの運転だけでは不足する不足分を補える。
一方、第2ボイラでは、供給されるガス燃料の量に見合った分を媒体発生に使用・消費して、過不足なく、安定してガス燃料を消費しながら、媒体を生成できる。
【0018】
さらに、第2ボイラに供給されるガス燃料が生物由来のメタンを主成分とするバイオガス燃料であることが好ましい。
エネルギー問題及び環境問題の両観点から、メタンを主成分とするバイオガス燃料を生産して有効利用することが好ましいが、これまで説明してきた多缶設置ボイラを使用することで、生産されるバイオガス燃料をガス燃料として消費することで、上記目的を達成することができる。
また、この種のバイオガスは、その生産量が変動しやすく、生産量が通常生産量の半分以下に低下する場合もあるが、本発明の多缶設置ボイラでは、需要先の供給を満たした状態で、バイオガスの有効利用を図れる。
【0019】
これまで説明してきた多缶設置ボイラに関して、複数の前記第1ボイラを備え、前記第1ボイラ制御装置を、前記複数の第1ボイラに関して、前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、運転する第1ボイラの台数を制御する構成とすると、第1ボイラに関して、従来型の「集中台数制御」を採用し、適切に台数制御を実行して、需要先の需要に対して第2ボイラの運転だけでは不足する不足分を補える。
一方、第2ボイラでは、供給されるガス燃料の量に見合った分を媒体発生に使用・消費して、過不足なく、安定してガス燃料を消費しながら媒体を生成できる。
【0020】
また、これまで説明してきた多缶設置ボイラに関して、前記第1ボイラ制御装置が、前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、当該第1ボイラから発生する蒸気量を制御する構成とすることもできる。この場合は、第1ボイラにより、需要先の需要に対して第2ボイラの運転だけでは不足する不足分を補える。
第2ボイラに関しては、先と同様に、供給されるガス燃料の量に見合った分を媒体発生に使用・消費して、過不足なく、安定してガス燃料を消費しながら媒体を生成できる。
【0021】
従って、第2ボイラに供給されるバイオガスの供給圧力が安定して、圧力異常による外気放散や圧力低下による第2ボイラの停止頻度が軽減できる。さらに、通常、バイオガス発生プラントには、このような第2ボイラ側の流量変動の影響を吸収するために、小型のクッションタンク(ホルダー)を設ける場合が多いが、この制御システムの採用により、タンクの容量をさらに小さくするとか、省略でき、システム全体のコストダウンが図れる。
又、第2ボイラの発停頻度も少なくなり、運転効率(バイオガス消費量に対する蒸気発生量の割合)も上昇し、省エネルギーになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願に係る多缶設置ボイラの構成を示す図
【図2】「個別蒸気圧台数制御」の多缶設置ボイラの構成を示す図
【図3】「集中蒸気圧台数制御」の多缶設置ボイラの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る多缶設置ボイラ100について、図1に基づいて説明する。
この多缶設置ボイラ100は、複数台並列に設置したボイラ1を備え、ボイラ1から発生される蒸気を蒸気集合部2(媒体集合部の一例)で集合して、同図の右側に示す蒸気需要先3(媒体需要先の一例)に供給する設備である。
【0024】
多缶設置ボイラ100では、天然ガス、LPG或いは重油等の、実質的に燃料の供給量に制限がない燃料(第1燃料)と、バイオガス等の、ガス燃料の供給量が変動するとともに、当該供給量が燃料供給側からの供給量により制限を受けるガス燃料(第2燃料)とを燃料として、蒸気を発生する。
【0025】
以下、第1ボイラ1aを複数備え、第1ボイラ1aを台数制御する例をまず説明する。
多缶設置ボイラ100には、ボイラ1として、蒸気発生に必要となる燃料(例えば天然ガス、重油)の供給量に制限がない複数(図示する例では4台)の第1ボイラ1aと、蒸気発生に必要となるガス燃料の供給量が変動するとともに、当該供給量が燃料供給側からの供給量により制限を受ける第2ボイラ1bを第1ボイラ1aの総蒸気発生量より少ない総蒸気発生量又は1台当りの蒸気発生量が同等の場合は少ない台数(図示する例では1台)備えて構成されている。
【0026】
そして、この多缶設置ボイラ100では、蒸気需要先3における蒸気需要が増大し、多缶設置ボイラ100での蒸気発生量を増大する必要が発生した状態で、上述の第2ボイラ1bの蒸気発生量が当該第2ボイラ1bへのガス燃料の供給量の制限から限界がある場合にも、第2ボイラ1bの発生蒸気量の不足分を第1ボイラ1aで賄える能力を第1ボイラ1aが備える構成とされている。具体的には、第2ボイラ1bの全蒸気発生能力が、設備全体の全蒸気発生能力の30%以下と設定されており、この30%の能力の過半を、全第1ボイラ1aを最大の能力で運転した場合に賄えるように設備が構成されている。
【0027】
図1に示すように、先に説明した蒸気集合部2の蒸気圧力に基づいて、複数の第1ボイラ1aに対して運転指令を出力する第1ボイラ台数制御装置4(第1ボイラ制御装置の一例)と備えるとともに、第2ボイラ1bに供給されるガス燃料の圧力に基づいて、第2ボイラ1bで発生する蒸気量をガス燃料の圧力に対応した量とする第2ボイラ制御装置5が備えられている。
【0028】
さらに具体的には、前記第1ボイラ台数制御装置4による第1ボイラ1aに対する運転制御形態が、蒸気集合部2の蒸気圧力に基づいて、第1ボイラ1aをON−OFF制御する2位置制御とされている。一方、第2ボイラ制御装置5による第2ボイラ1bに対する運転制御形態が、第2ボイラ1bに供給されるガス燃料の圧力に基づいて、圧力の上昇に伴って蒸気発生量を増加させる比例制御形態とされている。そして、第2ボイラ1bにおいて供給されるバイオガス燃料の全量を実質的に消費するように構成されている。
【0029】
以上が、本発明に係る多缶設置ボイラ100の概略構成であるが、以下、第2ボイラ1bのガス燃料の生成、多缶設置ボイラ100の構成及び運転について説明する。
【0030】
〔ガス燃料の生成〕
図1の上段に示すように、第2ボイラ1bで使用するガス燃料は、原料受入槽10、嫌気性発酵槽11、脱硫槽12、圧縮機13、小型ガスタンク14を経て第2ボイラ1bに供給される。
原料受入槽10は、食品残渣、家畜の糞尿、人のし尿、稲わら、間伐材等を原料として受け入れる。
嫌気性発酵槽11は、これら原料を嫌気性雰囲気下で、公知の嫌気性菌により発酵処理される。嫌気性発酵槽11における嫌気性発酵処理により、原料はメタンを概略60%、炭酸ガスを概略40%含むガスとなる。
このようにして生成されるガス燃料は、脱硫槽12で、ガス燃料に含まれるイオウ成分が除去され、圧縮機13で1kPa〜100kPa程度まで圧縮される。圧縮後の加圧状態にあるガス燃料が小型ガスタンク14に貯留され、逐次、第2ボイラ1bの運転に従って供給される。
【0031】
〔多缶設置ボイラの構成及び運転〕
これまでも説明してきたように、多缶設置ボイラ100は、4台の第1ボイラ1aと1台の第2ボイラ1bとを並列に設置しており、各ボイラ1a,1bで発生させた蒸気を集合させて蒸気需要先3へ送るスチームヘッダ6を備えて構成されている。各ボイラ1a,1bとスチームヘッダ6の間は蒸気配管7によって接続され、各ボイラ1a,1bで発生させた蒸気は蒸気配管7を通してスチームヘッダ6へ送られる。各ボイラ1a,1bにはそれぞれにボイラ運転制御部8が設けられており、個々のボイラにおける燃焼制御(ボイラの運転・停止を含む)はボイラ運転制御部8によって行われる。
ここで、第1ボイラ1aに関しては、前記第1ボイラ台数制御装置4からの運転指令をボイラ運転制御部8が受けて、燃焼制御を実行する。第2ボイラ1bに関しては、前記第2ボイラ制御装置5からの運転指令をボイラ運転制御部8が受けて、燃焼制御を実行する。
【0032】
第1ボイラ台数制御
スチームヘッダ6の需要先接続端(全ボイラ1からの蒸気が集合する蒸気需要先端側)の蒸気集合部2には、この蒸気集合部2における蒸気圧力を検出する蒸気集合部圧力検出器2aが設けられており、蒸気集合部圧力検出器2aは、その検出結果を、第1ボイラ台数制御装置4に送る構成が採用されている。第1ボイラ台数制御装置4は、蒸気集合部圧力検出器2aで検出する蒸気集合部2の蒸気圧力値と第1ボイラ台数制御装置4に設定している設定圧力値との比較に基づいて、各第1ボイラ1aへの運転指令を生成し、送信する。第1ボイラ台数制御装置4では、蒸気集合部圧力検出器2aで検出した蒸気圧力値が高くなるほど第1ボイラ1aの燃焼台数を少なくし、蒸気圧力値が低下するほど第1ボイラ1aの燃焼台数を多くするように台数設定が決定する。第1ボイラ台数制御装置4は、各ボイラ1aに稼働優先順位を設定しておき、稼働優先順位の上位のものから順に、決定した台数分のボイラに対して、燃焼要求信号を通信にて出力する。ここでのボイラの稼働優先順位は、例えば、第1ボイラ1・第1ボイラ2・第1ボイラ3、第1ボイラ4の順に、第1位・第2位・第3位・第4位としておく。なお、各ボイラ1aで安全を確保するために蒸気圧力も検出していて、蒸気圧力が異常に高くなった時点でも第1ボイラ1aを停止できるように構成されている。
【0033】
第2ボイラ制御
図1に示すように、第2ボイラ1bにより発生される蒸気も蒸気配管7を介してスチームヘッダ6に送られるが、この第2ボイラ1bの運転は、本発明独特の第2ボイラ制御装置5によりその運転が制御される。同図に示すように、第2ボイラ1bにガス燃料を供給するガス燃料供給部9には、このガス燃料供給部9におけるガス燃料圧力を検出するガス燃料供給部圧力検出器9aが設けられている。ガス燃料供給部圧力検出器9aは、その検出結果を、第2ボイラ制御装置5に送る構成が採用され、第2ボイラ制御装置5は、ガス燃料供給部圧力検出器9aで検出するガス燃料圧力値に基づいて、第2ボイラ1bへの運転指令を生成し、送信する。第2ボイラ制御装置5では、ガス燃料供給部圧力検出器9aで検出したガス燃料圧力値が高くなるほど第2ボイラ1bの燃焼量を多くし、ガス燃料圧力値が低下するほど第2ボイラ1bの燃焼量を小さくする。即ち、第2ボイラ1bに供給されるガス燃料の圧力に対して、ボイラの燃焼量(換言すると蒸気発生量)は、圧力検出値の上昇に伴って蒸気発生量を増加させる比例制御形態とされており、その比例係数は、第2ボイラ1bにおいて供給されるバイオガス燃料の全量を消費するように燃焼量を決定する係数とされる。なお、安全を確保するために、蒸気圧力も検出して、蒸気圧力が異常に高くなった時点でも第2ボイラ1bを停止できる。
【0034】
従って、本発明に係る多缶設置ボイラ100では、蒸気需要先3への蒸気の供給に関して、第2ボイラ1bでは、その第2ボイラ1bに供給されるガス燃料を消費するだけ蒸気を発生し、発生した蒸気に、複数の第1ボイラ1aで発生した蒸気を追加する。結果、第1ボイラ1aは、蒸気需要先3で必要とされる全体の蒸気負荷から第2ボイラ1bで発生する蒸気量を差し引いた量に追従するように台数制御される。
【0035】
結果、本発明の多缶設置ボイラ100が設置され、通常の燃料で運転される第1蒸気発生系統101と、バイオガス等の発生量が変動し、且つ、実質的に発生量の制御が困難で、その発生量の規制を受ける第2蒸気発生系統102とを備えた蒸気発生システム(本願にいうところのバイオガスプラントでもある)において、第2ボイラ1bに関しては、その第2ボイラ1bに供給されるガス燃料を過不足なく消費して蒸気を発生しながら、第1ボイラ1aにおいて、蒸気需要先3の要求に見合う不足分を補う運転が行われる。第2ボイラ1bの運転を比較的安定したものとし、さらに、外気側への放散の機会を極力低減することができる。また、第2蒸気発生系統102に備えられるガス燃料用の圧縮機13、タンク14を比較的小型のものにできる。
【0036】
従来の設備構成に対して本発明の設備構成を採用することで、約10%の省エネルギー(バイオガスボイラの効率上昇とバイオガスの放散量減少相当分)を得ることができる。
【0037】
〔別実施形態〕
(1)
上記の実施形態では、ボイラにより発生される媒体が蒸気である例を示したが、この種の媒体は、温水、油等の熱媒体であってもよい。
(2)
上記の実施形態では、第2ボイラに供給されるガス燃料がバイオガスの例を示したが、供給量に変動があり、その供給量が第2ボイラの運転において規制となるガス燃料としては、バイオガスのみならず、所定のプロセスにおいて副産物として発生する副生ガス、コークスガス等も、本願における第2ボイラに対するガス燃料とすることができる。
(3)
上記の実施形態では、第1ボイラの燃焼形態を2位置制御としたが、媒体圧力に従って、燃焼状態を高出力、低出力、停止との間で切り換える所謂、3位置制御としてもよい。
(4)
上記の実施形態では、第1ボイラ台数制御装置が媒体集合部である蒸気集合部の蒸気圧に基づいて複数ある第1ボイラの運転台数の決定を行う例を示したが、先にも説明したように蒸気集合部の温度に基づいて複数ある第1ボイラの運転台数を決定するものとしてもよい。
一方、第2ボイラ制御装置に関しては、先の実施形態に記載のように、第2ボイラに供給されるガス燃料の圧力に応じてボイラの燃焼量を制御できる他、ガス燃料の量、即ち、第2ボイラに供給されるガス燃料における流量測定部位を流れる単位時間当たりの流量に基づいて第2ボイラの燃焼量を制御してもよい。
(5)
上記の実施形態では、第1ボイラとして複数の第1ボイラが備えられ、それら複数の第1ボイラが、第1ボイラ制御装置である第1ボイラ台数制御装置により台数制御される例を示したが、この第1ボイラ制御装置が、媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、第1ボイラに対して運転指令を出力するにおいて、複数の第1ボイラに関して、その台数制御を実行する他、少なくとも1台の第1ボイラに関して、当該媒体集合部から需要側へ供給される蒸気(媒体の一例)の量が所定の需要量条件を満たすように第1ボイラの運転状態を制御してもよい。
例えば、第1ボイラを3位置制御するものとし、需要側への供給量が不足する場合は、第1ボイラからの供給量を増加させ、需要側への供給量が過多となる場合は、第1ボイラからの供給量を減少させる、或は、第1ボイラを停止させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
バイオガスのようなガス燃料を燃料とし、その供給量が変動するとともに、そのガス燃料の供給量により蒸気発生量が規制されるボイラを備えた多缶設置ボイラにおいて、供給されるガス燃料の確実な消費を図るとともに、需要先の需要に見合った媒体の供給を安定した運転状態で行える多缶設置ボイラを得ることができた。
【符号の説明】
【0039】
1 :ボイラ
1a :第1ボイラ
1b :第2ボイラ
2 :蒸気集合部
3 :蒸気需要先
4 :第1ボイラ台数制御装置(第1ボイラ制御装置)
5 :第2ボイラ制御装置
8 :ボイラ運転制御装置
9 :ガス燃料供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台並列に設置したボイラを備え、ボイラから発生される媒体を媒体集合部で集合して媒体需要先に供給する多缶設置ボイラであって、
前記ボイラとして、媒体発生に必要となる燃料の供給量に制限がない第1ボイラと、媒体発生に必要となるガス燃料の供給量が変動するとともに、当該供給量が燃料供給側からの供給量により制限を受ける第2ボイラを備え、
前記第2ボイラの発生媒体量の不足分を前記第1ボイラで賄える能力を前記第1ボイラが備えて構成され、
前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、前記第1ボイラに対して運転指令を出力する第1ボイラ制御装置と備えるとともに、
前記第2ボイラに供給されるガス燃料の量又は圧力に基づいて、前記第2ボイラで発生する媒体量を前記ガス燃料の量又は圧力に対応した量とする第2ボイラ制御装置を備えた多缶設置ボイラ。
【請求項2】
前記第1ボイラ制御装置による前記第1ボイラに対する運転制御形態が、前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、第1ボイラをON−OFF制御する2位置制御形態、若しくはHI−LOW−OFF制御する3位置制御形態であり、
前記第2ボイラ制御装置による前記第2ボイラに対する運転制御形態が、前記第2ボイラに供給されるガス燃料の量又は圧力に基づいて、前記ガス燃料の量又は圧力の上昇に伴って媒体発生量を増加させる比例制御形態である請求項1記載の多缶設置ボイラ。
【請求項3】
前記第2ボイラに供給されるガス燃料が生物由来のメタンを主成分とするバイオガス燃料である請求項1又は2記載の多缶設置ボイラ。
【請求項4】
複数の前記第1ボイラを備え、前記第1ボイラ制御装置が、前記複数の第1ボイラに関して、前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、運転する第1ボイラの台数を制御する請求項1〜3のいずれか一項記載の多缶設置ボイラ。
【請求項5】
前記第1ボイラ制御装置が、前記媒体集合部の媒体温度又は媒体圧力に基づいて、当該第1ボイラから発生する蒸気量を制御する請求項1〜3のいずれか一項記載の多缶設置ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−247538(P2011−247538A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122873(P2010−122873)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(501246488)株式会社クリエイティブテクノソリューション (10)
【出願人】(000143477)株式会社高尾鉄工所 (5)
【Fターム(参考)】