説明

天然木積層突き板及びその製造方法

【課題】 可撓性があり且つ十分な強度を保有する天然木の薄板のみで構成された天然木積層突き板を得る。
【解決手段】 溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いにより天然木の薄板6を、その表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットして形成した芯材2の表裏両面に、天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4とを積層した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然木の薄板よりなる芯材の表裏両面に、同じく天然木の薄板よりなる表面材と裏面材を積層した可撓性に富む天然木積層突き板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然木を薄くスライスした突き板は、従来より内装材や床材等の住宅部材、家具等の木工製品に広く使用されており、突き板を曲面に貼着する場合、突き板には曲げ加工に対応できる可撓性が求められる。
しかし、天然木の薄板で構成された突き板は可撓性が少なく、そのため、薬品により改質したり、熱を加えることにより可撓性を付与して曲げ加工するといった手法が採られているが、作業性が悪く量産性に欠け、また曲率半径も大きいため曲げ加工形状の自由度が低い等の難点があり、このため、可撓性のある天然木の突き板が求められていた。
【0003】
かかる要求に応じた可撓性のある突き板として、従来、天然木の薄板の裏面に不織布を接着剤を介して積層し、表面に熱可塑性プラスチックフィルムを接着剤を介して積層し、裏面の不織布側から方向性がなく規則正しいエンボスや細かな切れ目を入れた構造のもの(例えば、特許文献1参照。)や、紙、布等のシートに接着剤を介して天然木の薄板を貼着し、この積層体を外周が平滑な上下のロールを持つロールプレス機に通して天然木の薄板に無数のわれを形成した構造のものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
これら特許文献1、2に記載された従来の可撓性のある突き板は、いずれも天然木の薄板に不織布、熱可塑性プラスチックフィルム、紙、布等のシート等を接着剤を介して積層した構成となっており、天然木の薄板だけで可撓性を付与した突き板は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−7442号公報
【特許文献2】実開昭59−35031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された従来の可撓性のある突き板は、いずれも天然木の薄板に不織布、熱可塑性プラスチックフィルム、紙、布等のシート等を接着剤を介して積層した構成となっており、特に特許文献1に記載された突き板では、天然木の薄板の表面に熱可塑性プラスチックフィルムを接着しているため、折角の天然木の素材から得られる美感や質感を損ねるものとなり、また、特許文献2に記載された突き板では、天然木の薄板に無数のわれを形成しているので、折角の天然木の素材から得られる美感や質感から程遠いものとなるといった問題がある。
天然木の薄板だけで柔軟性を付与しようとすれば、天然木をできるだけ薄くスライスすることが考えられるが、可撓性が得られるまで薄くした天然木の薄板では、天然木の素材の美感や質感が得難くなり、また強度的にも弱く取り扱いや作業性に難があるといった問題がある。
本発明者は、天然木だけの構成で可撓性があり且つ十分な使用強度を保有する突き板を得るべく試験研究を重ね本発明を完成するに到った。
【0007】
本発明の目的は、可撓性があり且つ十分な強度を保有する天然木の薄板のみで構成された天然木積層突き板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は天然木積層突き板であって、繊維カットされた天然木の薄板よりなる芯材の表裏両面に、天然木の薄板よりなる表面材と裏面材とが積層されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記芯材は、前記繊維カットされた天然木の薄板が単層或いは複数積層された構造となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の、前記繊維カットされた天然木の薄板は、その表面方向と裏面方向からの凹凸歯の噛み合わせによる圧縮により繊維カットされたものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は請求項1に記載の天然木積層突き板を製造する方法であって、
天然木の薄板を、その表面方向と裏面方向からの凹凸歯の噛み合わせで圧縮することにより繊維カットして芯材を形成する工程と、前記芯材の表裏両面に天然木の薄板よりなる前記表面材と前記裏面材とを接着して積層する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の、前記芯材は、表面に溝条部と突条部が周方向に並んだ一対の歯車式ローラーを、相互の溝条部と突条部を噛み合わせ、且つ噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に所要の間隙を設けて上下に配置し、一方の前記歯車式ローラーと他方の前記歯車式ローラーを回転させ、その間に前記天然木の薄板を、その薄板の繊維方向が前記天然木の薄板の送り方向と略平行になるようにして通し、前記天然木の薄板を前記一対の歯車式ローラーの前記溝条部と前記突条部との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットして形成することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の、前記芯材は、表面に凹凸の溝条部と突条部が交互に並んだ一対の金型を上下に配置し、上側の前記金型を上下動させることにより相互の前記溝条部と前記突条部が噛み合い、且つ上側の前記金型の最終降下位置で噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に所要の間隙を形成するようにセットし、下側の前記金型上に前記天然木の薄板を、その薄板の繊維方向が前記金型の前記溝条部と前記突条部と交叉するように載置して、上側の前記金型を最終降下位置まで降下させることにより、上側の前記金型と下側の前記金型の前記溝条部と前記突条部との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットして形成することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6のいずれか1に記載の、前記芯材を構成する天然木の薄板の厚さは0.8mm〜1.3mm、前記表面材と前記裏面材となる前記天然木の薄板の厚さは0.2mm〜0.8mm、前記溝条部と前記突条部のピッチは0.8mm〜1.3mm、前記突条部の高さは0.8mm〜1.3mm、噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に形成される間隙は0.2mm〜0.5mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の天然木積層突き板によれば、天然木の薄板よりなる芯材の表裏両面に、天然木の薄板よりなる表面材と裏面材とが積層された構造となっているが、芯材は繊維カットされているので可撓性があり、この芯材の表裏面に表面材と裏面材とが積層されているので、全体として所望の厚さを確保しながらも優れた可撓性を得ることができるものとなる。
このように、天然木だけで構成されていながら、曲率半径が小さく曲げ加工形状の自由度が高い突き板を得ることができ、例えば、家具類の曲面部への貼着の際の馴染みがよく、広い範囲で利用することができる。また、全体として所望の厚さを確保できるので、表面の歪みが抑えられ、また強度も得られるので作業性に優れ、更には天然木としての美感や質感を保持でき、意匠性、作業性に優れたものとなる。
【0016】
請求項2に記載の天然木積層突き板によれば、請求項1に記載の、前記芯材は、前記繊維カットされた天然木の薄板が単層或いは複数積層された構造となっているので、例えば使用用途により突き板に求められる厚さや強度に応じて芯材を構成する天然木の薄板の積層数を選択することができる。芯材を構成する天然木の薄板が複数積層された構造であっても、各天然木の薄板はいずれも繊維カットされているので、全体の可撓性に与える影響は僅かである。
【0017】
請求項3に記載の天然木積層突き板によれば、請求項1または2に記載の、前記繊維カットされた天然木の薄板は、その表面方向と裏面方向からの凹凸歯の噛み合わせによる圧縮により繊維カットされたものであるので、可撓性に優れ、そして天然木の薄板の繊維は効果的にカットされることになり可撓性に優れ、また、圧縮による繊維カットであって薄板への切り込みはしないので、天然木の薄板の強度に与える影響は少ない。
【0018】
請求項4に記載の天然木積層突き板を製造する方法によれば、天然木の薄板を、その表面方向と裏面方向からの凹凸歯の噛み合わせで圧縮することにより繊維カットするので、天然木の薄板の繊維を、天然木の薄板の表面に傷を付けることなく確実にカットすることができ、そして、天然木の薄板の繊維をカットして形成された芯材は可撓性に優れたものとなる。この芯材の表裏両面に天然木の薄板よりなる前記表面材と前記裏面材とを接着して積層して製造された突き板は、全体として所望の厚さを確保しながらも優れた可撓性を得ることができものとなる。
このように、天然木だけで構成されていながら、曲率半径が小さく曲げ加工形状の自由度が高く、広い範囲で利用することができ、また、全体として所望の厚さを確保できるので、表面の歪みが抑えられ、また強度も得られるので作業性に優れ、更には天然木としての美感や質感を保持でき、意匠性、作業性に優れた突き板を製造することができる。
【0019】
請求項5に記載の天然木積層突き板を製造する方法によれば、請求項4に記載の、前記芯材は、表面に溝条部と突条部が周方向に並んだ一対の歯車式ローラーを、相互の溝条部と突条部を噛み合わせ、且つ噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に所要の間隙を設けて上下に配置し、一方の前記歯車式ローラーと他方の前記歯車式ローラーを回転させ、その間に前記天然木の薄板を、その薄板の繊維方向が前記天然木の薄板の送り方向と略平行になるようにして通し、前記天然木の薄板を前記一対の歯車式ローラーの前記溝条部と前記突条部との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットして形成するので、天然木の薄板の繊維を容易に且つ確実にカットすることができ、可撓性の優れた芯材を形成することができる。
また、一方の前記歯車式ローラーと他方の前記歯車式ローラーを回転させ、その間に天然木の薄板を通すことにより繊維カットするので、特に、天然木の薄板が長尺である場合の繊維カットに適している。
【0020】
請求項6に記載の天然木積層突き板を製造する方法によれば、請求項4に記載の、前記芯材は、表面に凹凸の溝条部と突条部が交互に並んだ一対の金型を上下に配置し、上側の前記金型を上下動させることにより相互の前記溝条部と前記突条部が噛み合い、且つ上側の前記金型の最終降下位置で噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に所要の間隙を形成するようにセットし、下側の前記金型上に前記天然木の薄板を、その薄板の繊維方向が前記金型の前記溝条部と前記突条部と交叉するように載置して、上側の前記金型を最終降下位置まで降下させることにより、上側の前記金型と下側の前記金型の前記溝条部と前記突条部との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットして形成するので、天然木の薄板の繊維を容易に且つ確実にカットすることができ、可撓性の優れた芯材を形成することができる。
また、下側の前記金型上に前記天然木の薄板を、その薄板の繊維方向が前記金型の前記溝条部と前記突条部と交叉するように載置して、上側の前記金型を最終降下位置まで降下させることにより繊維カットするので、特に、前記溝条部と前記突条部の噛み合わせ形状が規制されず、前記天然木の薄板の木目に応じ、前記溝条部と前記突条部の噛み合わせ形状を繊維カットに最適な形状とすることができる。
【0021】
請求項7に記載の天然木積層突き板を製造する方法によれば、請求項4乃至6のいずれか1に記載の、前記芯材を構成する天然木の薄板の厚さは0.8mm〜1.3mmで、前記溝条部と前記突条部のピッチは0.8mm〜1.3mm、前記突条部の高さは0.8mm〜1.3mm、噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に形成される間隙は0.2mm〜0.5mmであるので、前記溝条部と前記突条部との噛み合いにより天然木の薄板を、その表面方向と裏面方向から圧縮したとき、天然木の薄板の繊維を、天然木の薄板の表面に傷を付けることなく確実にカットすることができ、そして、繊維をカットされた天然木の薄板は可撓性に優れたものとなる。
また、前記表面材と前記裏面材となる前記天然木の薄板の厚さは0.2mm〜0.8mmなので、それぞれ単体で優れた可撓性を有しており、この前記表面材と前記裏面材を前記した繊維をカットされて可撓性に優れたものとなる天然木の薄板で構成された芯材の表裏両面に接着して積層するので、製造された突き板は、全体として所望の厚さを確保しながらも優れた可撓性を得ることができものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る天然木積層突き板の実施の形態の第1例を示した横断面図である。
【図2】本発明に係る天然木積層突き板の実施の形態の第2例を示した横断面図である。
【図3】本発明に係る天然木積層突き板の製造方法の実施の形態の第1例における芯材を形成する工程を示す説明図である。
【図4】図3に示す工程で用いている上下の歯車式ローラーの正面図である。
【図5】図4のA部の拡大図である。
【図6】第1例の製造方法で天然木の薄板が繊維カットされる状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る天然木積層突き板の製造方法の実施の形態の第2例における芯材を形成する工程を示す説明図である。
【図8】上側の金型を降下させ、下側の金型と噛み合わせたときの噛み合わせ状態を示す説明図である。
【図9】第2例の製造方法で天然木の薄板が繊維カットされる状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る天然木積層突き板及びその製造方法を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る天然木積層突き板の実施の形態の第1例を示した横断面図である。
本例の突き板1は、繊維カットされた天然木の薄板よりなる芯材2の表裏両面に、同じく天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4とが接着剤5を介して積層された構造となっている。
【0025】
本発明で繊維カットされた薄板による天然木とは、薄くスライスされた薄板よりなる天然木中の繊維が短くカットされていて可撓性が付与されている状態をいう。繊維カットの方向は、板目に対して交差する方向、好ましくは板目に対して直角が好ましい。また、繊維カットされた天然木の薄板は、その表面方向と裏面方向からの凹凸歯の噛み合わせによる圧縮により繊維カットされたものとなっている。このような繊維カットにより天然木の薄板の繊維は効果的にカットされることになり可撓性に優れ、また、圧縮による繊維カットであって薄板への切り込みはしないので、天然木の薄板の強度に与える影響は少ない。
【0026】
このようにして可撓性が付与された芯材2は、後述するような各種の製造方法により製造される。天然木からなる芯材2、表面材3、裏面材4はナラやブナなどが多く使用されるが、これらに限られない。芯材2、表面材3、裏面材4となる天然木の薄板は、ロータリーレース又はスライサー等で薄くスライスして製造される。
【0027】
前記した芯材2を構成する天然木の薄板の厚さは、0.8mm〜1.3mmが好ましい。0.8mm以下であると強度不足になるおそれがあり、また1.3mmを超えると薄板の内部まで繊維カットを行えない場合があり、所望の可撓性が得られない場合がある。本例では、芯材2を構成する天然木の薄板の厚さは1.0mmとなっている。
【0028】
また、表面材3、裏面材4となる天然木の薄板の厚さは、それ自体で可撓性が得られる厚さであることを要し、0.2mm〜0.8mmが好ましい。0.2mm以下であると作業性が悪く、また、0.8mmを超えると所望の可撓性が得られない場合がある。本例では、芯材2を構成する天然木の薄板の厚さは0.5mmとなっている。
【0029】
このように構成された本例の突き板1によれば、天然木の薄板よりなる芯材2の表裏両面に、天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4とが積層された構造となっているが、芯材2は繊維カットされているので可撓性があり、この芯材2の表裏面に表面材3と裏面材4とが積層されているので、全体として所望の厚さを確保しながらも優れた可撓性が得られる。
【0030】
このように、天然木だけで構成されていながら、曲げ加工形状の自由度が高い突き板1を得ることができ、広い範囲で利用することができる。また、全体として所望の厚さを確保できるので、表面の歪みが抑えられ、また強度も得られるので作業性に優れ、更には天然木としての美感や質感を保持でき、意匠性、作業性に優れたものとなる。
【0031】
図2は、本発明に係る天然木積層突き板の実施の形態の第2例を示した横断面図であり、前述した第1例と対応する部分には同一の符号を付しその説明を省略する。
本例の突き板1は、第1例と同様、繊維カットされた天然木の薄板よりなる芯材2の表裏両面に、同じく天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4とが接着剤5を介して積層された構造となっている。
【0032】
第1例との違いは、本例では芯材2が繊維カットされた天然木の薄板を接着剤5を介して複数積層した構造となっている点だけである。本例では、2枚の繊維カットされた天然木の薄板を積層した構造となっている。
本例では、芯材2を構成する天然木の薄板の厚さは第1例と同様、1.0mmとなっており、この厚さの天然木の薄板が2枚積層されている。また、表面材3、裏面材4となる天然木の薄板の厚さも、第1例と同様、0.5mmとなっている。
【0033】
このように構成された本例の突き板1によれば、芯材2を構成する天然木の薄板の枚数を、使用用途により突き板1に求められる厚さや強度に応じて適宜選択することができる。芯材1を構成する天然木の薄板が複数積層された構造であっても、各天然木の薄板はいずれも繊維カットされているので、全体の可撓性に与える影響は僅かである。他の効果は第1例と同様である。
【0034】
図3乃至図6は前記した図1,2に示す天然木積層突き板の製造方法の実施の形態の第1例を示すものであり、図3は本例の工程で、芯材を形成する工程を示す説明図、図4は図3に示す工程で用いている上下の歯車式ローラーの概略正面図、図5は図4のA部の拡大図、図6は図3に示す工程で天然木の薄板が繊維カットされる状態を示す説明図である。
【0035】
図3に示すように、予めロータリーレース又はスライサー等で薄くスライスして製造された芯材2となる天然木の薄板6を長尺にして薄板ロール8とする。天然木の薄板6を長尺にするには、例えば、特許第2603157号公報に示すようにフィンガージョイントして長尺にする。
【0036】
天然木の薄板ロール8を巻き出し装置7にセットし、巻き出し装置7にセットした薄板ロール8から繰り出した天然木の薄板6を繊維カット装置9に送り出す。繊維カット装置9は、図3に示すように、一対の歯車式ローラー10,11を上下に対向するように備え、これら歯車式ローラー10,11をモータ12で駆動するようになっている。
【0037】
歯車式ローラー10,11は、それぞれ、表面に略V字条の溝条部13,14と突条部15,16が周方向に並んで形成されており、相互の溝条部13,14と突条部15,16を噛み合わせ、且つ噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に所要の間隙を設けて上下に配置されている。そして、歯車式ローラー10,11に、天然木の薄板6を通すことにより、天然木の薄板6を歯車式ローラー10,11の溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットするようになっている。
【0038】
歯車式ローラー10,11に形成された溝条部13,14と突条部15,16のピッチ、突条部15,16の高さ(溝条部13,14の深さ)は同じピッチ、同じ高さに形成されており、溝条部13,14と突条部15,16のピッチは0.8mm〜1.3mm、突条部15,16の高さは0.8mm〜1.3mm、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sは0.2mm〜0.5mmが好ましい。
【0039】
溝条部13,14と突条部15,16のピッチが0.8mm以下、また、突条部15,16の高さが0.8mm以下、また、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sが0.5mmを超えると、前記した図1,2に示す厚さの芯材2となる天然木の薄板6を歯車式ローラー10,11間に通したとき、天然木の薄板6の表面方向と裏面方向から噛み合う溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いが弱く天然木の薄板6に対する十分な圧縮が得られず、天然木の薄板6の内部まで繊維カットを行えない場合があり、天然木の薄板6に所望の可撓性が得られない場合がある。
【0040】
また、溝条部13,14と突条部15,16のピッチが1.3mmを超え、また、突条部15,16の高さが1.3mmを超え、また、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sが0.2mm以下であると、前記した図1,2に示す厚さの芯材2となる天然木の薄板6を歯車式ローラー10,11間に通したとき、天然木の薄板6の表面方向と裏面方向から噛み合う溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いが強すぎ、天然木の薄板6に対する過剰圧縮となって天然木の薄板6の表面に亀裂が生じる場合がある。
【0041】
本例では、溝条部13,14と突条部15,16のピッチが1.0mm、突条部15,16の高さが1.0mm、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sが0.3mmとなっている。
【0042】
前記のように構成した歯車式ローラー10,11をモータ12の駆動により回転させ、その間に、本例では厚さ0.5mmの天然木の薄板6を、その繊維方向が天然木の薄板6の送り方向と略平行になるようにして通し、天然木の薄板6を歯車式圧縮ローラー10,11の溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットし芯材2を形成する(図6参照。)。このようにして形成された芯材2は巻き取り装置17に巻き取る。
【0043】
巻き取り装置17に巻き取られた芯材2は、引き出されてその表裏両面に適宜手段により、厚さ0.2mm〜0.8mmの天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4とを接着して積層する。本例では厚さ0.5mmの天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4を積層している。このようにして、図1に示す突き板1を得る。
【0044】
また、使用用途により突き板1に求められる厚さや強度に応じて、前記のようにして形成した芯材2を接着剤5を介して複数積層し、この複数積層した芯材2の表裏両面に表面材3と裏面材4とを接着して積層することにより、図2に示す突き板1を得る。
このようにして得られた突き板1は、芯材2が繊維カットされているので可撓性があり、この芯材2の表裏面に表面材3と裏面材4とを積層するので、全体として所望の厚さを確保しながらも優れた可撓性がある。
【0045】
そして、芯材2となる天然木の薄板6の繊維カットは、歯車式ローラー10,11の溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いにより天然木の薄板6の表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットするので、天然木の薄板6の繊維を、容易に且つ確実にカットすることができ、また、歯車式ローラー10,11を回転させ、その間に天然木の薄板6を通して繊維カットするので、天然木の薄板6が長尺である場合の繊維カットに適している。
【0046】
図7乃至図9は前記した図1,2に示す天然木積層突き板の製造方法の実施の形態の第2例を示すものであり、図7は本例の工程で、芯材を形成する工程を示す説明図、図8は上側の金型を降下させ、下側の金型と噛み合わせたときの噛み合わせ状態を示す説明図、図9は第2例の製造方法で天然木の薄板が繊維カットされる状態を示す説明図である。
【0047】
本例も、前記した天然木積層突き板の製造方法の実施の形態の第1例と同様に、予めロータリーレース又はスライサー等で薄くスライスして製造された芯材2となる天然木の薄板6を長尺にして薄板ロール8とする。天然木の薄板6を長尺にするには、例えば、特許第2603157号公報に示すようにフィンガージョイントして長尺にする。
【0048】
天然木の薄板ロール8を巻き出し装置7にセットし、巻き出し装置7にセットした薄板ロール8から繰り出した天然木の薄板6を、定尺送り装置18により繊維カット装置9に間歇的に送り出す。本例における繊維カット装置9は、図7に示すように、一対の金型19,20を上下に対向するように備えている。
【0049】
一対の金型19,20は、それぞれ、表面に略V字条の溝条部13,14と突条部15,16が交互に並んで形成されており、相互の溝条部13,14と突条部15,16を噛み合わせ、且つ噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に所要の間隙を設けて上下に配置されている。そして、上側の金型19と下側の金型20の間に、天然木の薄板6をセットし、シリンダ21を操作して上側の金型19を降下させることにより、天然木の薄板6を上側の金型19と下側の金型20の溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットするようになっている。
【0050】
上側の金型19と下側の金型20に形成された溝条部13,14と突条部15,16のピッチ、突条部15,16の高さ(溝条部13,14の深さ)は同じピッチ、同じ高さに形成されており、溝条部13,14と突条部15,16のピッチは0.8mm〜1.3mm、突条部15,16の高さは0.8mm〜1.3mm、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sは0.2mm〜0.5mmが好ましい。
【0051】
溝条部13,14と突条部15,16のピッチが0.8mm以下、また、突条部15,16の高さが0.8mm以下、また、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sが0.5mmを超えると、前記した図1,2に示す厚さの芯材2となる天然木の薄板6を上側の金型19と下側の金型20で天然木の薄板6を圧縮したとき、天然木の薄板6の表面方向と裏面方向から噛み合う溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いが弱く天然木の薄板6に対する十分な圧縮が得られず、天然木の薄板6の内部まで繊維カットを行えない場合があり、天然木の薄板6に所望の可撓性が得られない場合がある。
【0052】
また、溝条部13,14と突条部15,16のピッチが1.3mmを超え、また、突条部15,16の高さが1.3mmを超え、また、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sが0.2mm以下であると、前記した図1,2に示す厚さの芯材2となる天然木の薄板6を上側の金型19と下側の金型20で天然木の薄板6を圧縮したとき、天然木の薄板6の表面方向と裏面方向から噛み合う溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いが強すぎ、天然木の薄板6に対する過剰圧縮となって天然木の薄板6の表面に亀裂が生じる場合がある。
【0053】
本例では、溝条部13,14と突条部15,16のピッチが1.0mm、突条部15,16の高さが1.0mm、噛み合った溝条部13,14と突条部15,16との間に形成される間隙Sが0.3mmとなっている。
【0054】
前記のように構成した上側の金型19と下側の金型20の間に、本例では厚さ0.5mmの天然木の薄板6を、天然木の薄板6のその繊維方向が上側の金型19と下側の金型20の溝条部13,14と突条部15,16と交叉するようにセットし、シリンダ21を操作して上側の金型19を降下させ、天然木の薄板6を上側の金型19と下側の金型20の溝条部13,14と突条部15,16との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットし芯材2を形成する(図8参照。)。このようにして形成された芯材2は巻き取り装置17に巻き取る。
【0055】
巻き取り装置17に巻き取られた芯材2は、引き出されてその表裏両面に適宜手段により、厚さ0.2mm〜0.8mmの天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4とを接着して積層する。本例では厚さ0.5mmの天然木の薄板よりなる表面材3と裏面材4を積層している。このようにして、図1に示す突き板1を得る。
また、使用用途により突き板1に求められる厚さや強度に応じて、前記のようにして形成した芯材2を接着剤5を介して複数積層し、この複数積層した芯材2の表裏両面に表面材3と裏面材4とを接着して積層することにより、図2に示す突き板1を得る。
【0056】
このようにして得られた突き板1は、芯材2は繊維カットされているので可撓性があり、この芯材2の表裏面に表面材3と裏面材4とを積層するので、全体として所望の厚さを確保しながらも優れた可撓性がある。
そして、芯材2となる天然木の薄板6の繊維カットは、下側の金型20上に天然木の薄板6を、天然木の薄板6の繊維方向が上側の金型19と下側の金型20の溝条部13,14と突条部15,16と交叉するように載置して、上側の金型19を最終降下位置まで降下させることにより繊維カットするので、上側の金型19と下側の金型20の溝条部13,14と突条部15,16の噛み合わせ形状が規制されず、天然木の薄板6の木目に応じ、溝条部13,14と突条部15,16の噛み合わせ形状を繊維カットに最適な形状とすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 突き板
2 芯材
3 表面材
4 裏面材
5 接着剤
6 芯材となる天然木の薄板
7 巻き出し装置
8 薄板ロール
9 繊維カット装置
10,11 歯車式ローラー
12 モータ
13,14 溝条部
15,16 突条部
17 巻き取り装置
18 定尺送り装置
19,20 金型
21 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維カットされた天然木の薄板よりなる芯材の表裏両面に、天然木の薄板よりなる表面材と裏面材とが積層されてなることを特徴とする天然木積層突き板。
【請求項2】
前記芯材は、前記繊維カットされた天然木の薄板が単層或いは複数積層された構造となっていることを特徴とする請求項1に記載の天然木積層突き板。
【請求項3】
前記繊維カットされた天然木の薄板は、その表面方向と裏面方向からの凹凸歯の噛み合わせによる圧縮により繊維カットされたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の天然木積層突き板。
【請求項4】
請求項1に記載の天然木積層突き板を製造する方法であって、
天然木の薄板を、その表面方向と裏面方向からの凹凸歯の噛み合わせで圧縮することにより繊維カットして芯材を形成する工程と、前記芯材の表裏両面に天然木の薄板よりなる前記表面材と前記裏面材とを接着して積層する工程とを有することを特徴とする天然木積層突き板の製造方法。
【請求項5】
前記芯材は、表面に溝条部と突条部が周方向に並んだ一対の歯車式ローラーを、相互の溝条部と突条部を噛み合わせ、且つ噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に所要の間隙を設けて上下に配置し、一方の前記歯車式ローラーと他方の前記歯車式ローラーを回転させ、その間に前記天然木の薄板を、その薄板の繊維方向が前記天然木の薄板の送り方向と略平行になるようにして通し、前記天然木の薄板を前記一対の歯車式ローラーの前記溝条部と前記突条部との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットして形成することを特徴とする請求項4に記載の天然木積層突き板の製造方法。
【請求項6】
前記芯材は、表面に凹凸の溝条部と突条部が交互に並んだ一対の金型を上下に配置し、上側の前記金型を上下動させることにより相互の前記溝条部と前記突条部が噛み合い、且つ上側の前記金型の最終降下位置で噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に所要の間隙を形成するようにセットし、下側の前記金型上に前記天然木の薄板を、その薄板の繊維方向が前記金型の前記溝条部と前記突条部と交叉するように載置して、上側の前記金型を最終降下位置まで降下させることにより、上側の前記金型と下側の前記金型の前記溝条部と前記突条部との噛み合いによりその表面方向と裏面方向から圧縮し繊維カットして形成することを特徴とする請求項4に記載の天然木積層突き板の製造方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1に記載の、前記芯材を構成する天然木の薄板の厚さは0.8mm〜1.3mm、前記表面材と前記裏面材となる前記天然木の薄板の厚さは0.2mm〜0.8mm、前記溝条部と前記突条部のピッチは0.8mm〜1.3mm、前記突条部の高さは0.8mm〜1.3mm、噛み合った前記溝条部と前記突条部との間に形成される間隙は0.2mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1に記載の天然木積層突き板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20440(P2012−20440A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158791(P2010−158791)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(510193304)株式会社 ニチモクファンシーマテリアル (1)
【Fターム(参考)】