説明

太陽光発電設備

【課題】太陽光発電パネルを設置するためのスペースを有効に利用して、電力を貯蔵するための装置を構成することができる太陽光発電設備を提供する。
【解決手段】錘として機能するように質量が設定され、多数の太陽光発電パネルを取り付けることができるパネル取付け面4aを上部に有する可動ブロック7を鉛直方向に延びる支柱2に沿って上下動し得るように設け、可動ブロック7のパネル取付け面4aに取り付けた多数の太陽光発電パネル5により太陽光発電部6を構成する。太陽光発電部の出力で駆動される電動機15の回転を変位伝達機構9により直線変位に変換して可動ブロックに伝達することにより可動ブロック7を上昇させて発電出力を位置エネルギとして貯蔵し、可動ブロック7の下降時の直線変位を変位変換機構9により回転変位に変換して発電機16に伝達することにより発電を行なわせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電設備は、例えば特許文献1に示されているように、多数の太陽光発電パネルを直並列に接続してなる太陽光発電部と、この太陽光発電部と負荷及び配電系統との間に設けられるパワーコンディショナとにより構成される。パワーコンディショナは、太陽光発電部から得られる直流電力を商用交流電力に変換するインバータと、太陽光発電部の出力が不足するときに配電系統から負荷に電力を供給(買電)し、太陽光発電部の出力が過剰であるときにインバータの出力を配電系統に供給(売電)するように、発電設備を配電系統に連係させる系統連係装置とを備えている。
【0003】
太陽光発電設備においては、特許文献2に示されているように、雨天時や夜間など、太陽光の照射を受けることができないときに備えて、太陽光発電部の出力をバッテリに蓄積しておくことが行なわれている。
【0004】
また電力系統においては、電力需要が少なくなる深夜の電力で揚水ポンプを駆動して水を高所に設けた貯水池に上げることにより電力を位置エネルギに変換して蓄積し、電力需要が増加した際に貯水池内の水を落下させて水力発電を行なわせるようにしている。
【0005】
また深夜電力を温水器に供給して、電力を熱エネルギに変換して蓄積することも行なわれている。
【0006】
更に電気エネルギを他のエネルギに変換して貯蔵する貯蔵設備として、特許文献3に示されているように、錘に取り付けたピニオンギアを立坑内を上下方向に延びるラックに噛み合わせるとともに、ピニオンギアに発電・電動装置を取り付けた地下式の電力貯蔵装置が知られている。この電力貯蔵装置では、余剰の電気エネルギにより発電・電動装置を電動機として動作させることにより錘を上昇させて電気エネルギを位置エネルギとして蓄積し、錘を落下させる際に生じるピニオンギアの回転により発電・電動装置を発電機として駆動して、位置エネルギを電気エネルギに再変換するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−284355号公報
【特許文献2】特開2000−181556号公報
【特許文献3】特開2000−261987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に示されているように、太陽光発電部の出力をバッテリに蓄積するようにした場合には、多数のバッテリのメンテナンスが必要になるため、発電設備のメンテナンスにかかるコストが高くなるのを避けられなかった。
【0009】
バッテリを用いずに太陽光発電部の出力を貯蔵するために、揚水発電による電力貯蔵設備や、特許文献3に示されたように、錘を上昇させることにより電力を位置エネルギに変換して貯蔵する電力貯蔵設備を用いることが考えられるが、これらの電力貯蔵設備を用いる場合には、多数の太陽光発電パネルを配置するために必要な広大なスペースに加えて、電力貯蔵設備を配置するためのスペースが別途必要になるため、スペースの利用効率が悪くなるのを避けられない。特に特許文献3に示されたように、電力貯蔵設備を地下に構築する場合には、その建設費が著しく高くなるのを避けられない。
【0010】
設置スペースの有効利用を図るためには、太陽光発電パネルを設置するために必要不可欠なスペースを有効に利用して電力の貯蔵を行なうことができるようにすることが好ましい。
【0011】
本発明の目的は、太陽光発電パネルを設置するためのスペースを有効に利用して、電力を貯蔵するための装置を構成することができるようにした太陽光発電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、太陽光発電部と、太陽光発電部から得られる発電電力または連係する配電系統から受電した商用電力を蓄積するエネルギ貯蔵装置とを備えた太陽光発電設備を対象とする。本発明に係わる太陽光発電設備は電力会社以外の事業者または個人により運営されて分散電源として配電系統に接続されるものでもよく、電力会社の発電設備として配電系統に接続されるものであってもよい。
【0013】
本発明に係わる太陽光発電設備は、錘としての機能を有するように質量が設定されるとともに複数の太陽光発電パネルを縦横に並べて取り付けることができるパネル取付け面を上部に有して、鉛直方向に延びる支柱に沿って上下動し得るように設けられた可動ブロックと、回転自在な入出力軸を有して該入出力軸の回転変位を前記可動ブロックを上昇させる方向の直線変位に変換して可動ブロックに伝達し、可動ブロックの下方への直線変位を回転変位に変換して前記入出力軸に伝達する変位伝達機構と、可動ブロックのパネル取付け面に縦横に並べて取り付けられて前記太陽光発電部を構成する複数の太陽光発電パネルと、変位伝達機構の入出力軸に第1の変速機を介して回転軸が結合されて、前記発電電力又は商用電力で駆動されることにより可動ブロックを上昇させる方向に変位伝達機構の入出力軸を回転駆動する電動機と、上昇させられた可動ブロックが有する位置エネルギを貯蔵するために該可動ブロックの位置を保持する可動ブロック位置保持機構と、入出力軸に第2の変速機を介して回転軸が結合されて、可動ブロック位置保持機構による可動ブロックの位置の保持が解除された際に可動ブロックの下降に伴って生じる入出力軸の回転変位により駆動されて可動ブロックが有する位置エネルギを電気エネルギに再変換して出力する発電機とを備えており、上記可動ブロックと、変位伝達機構と、電動機と、可動ブロック位置保持機構と、発電機とにより、前記電力貯蔵装置が構成されている。
【0014】
上記のように構成すると、太陽光発電部の出力または商用電源の出力により電動機を駆動して可動ブロックを上昇させることにより、電力を位置エネルギに変換することができ、可動ブロック位置保持機構により可動ブロックを上昇させた位置に保持することにより、その位置エネルギを貯蔵することができる。また太陽光発電部の出力が不足するときに可動ブロック位置保持機構による可動ブロックの保持を解除して可動ブロックを下降させることにより、発電機を駆動して、貯蔵された位置エネルギを電気エネルギに再変換して出力させることができる。
【0015】
上記のように構成すると、太陽光発電パネルを配置するスペースを有効に利用して、太陽光発電部の出力または商用電源の出力を位置エネルギに変換して貯蔵する電力貯蔵装置を構成することができるため、スペースの利用効率を高めて、電力貯蔵能力を有する太陽光発電設備の建設コストの低減を図ることができる。またメンテナンスが面倒な蓄電池を用いずに電力を貯蔵することができるため、蓄電池を用いる場合に比べてメンテナンスを容易にすることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様では、第1の変速機が、電動機の回転軸の回転を減速して入出力軸に伝達する減速機であり、第2の変速機は、入出力軸の回転を増速して発電機の回転軸に伝達する増速機である。
【0017】
本発明の好ましい態様では、変位伝達機構が、鉛直方向に伸びるようにして支柱に取り付けられたラックと、このラックに噛み合わされたピニオンギアとを備えていて、このピニオンギアにより前記入出力軸が構成される。この場合、電動機及び発電機はピニオンギアの軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ配置されて可動ブロックに固定され、電動機の回転軸は、第1の変速機を介してピニオンギアの軸線方向の一端に結合される。また発電機の回転軸は、第2の変速機を介してピニオンギアの軸線方向の他端に結合される。
【0018】
上記のように上下方向に伸びるラックと、該ラックに噛み合わされたピニオンギアとにより変位伝達機構を構成すると、可動ブロック上で変位伝達機構が占めるスペースを狭くして、パネル取付け面を広くすることができるため、太陽光発電部の発電容量を増大させることができる。
【0019】
本発明の他の好ましい態様では、変位伝達機構が、ワイヤと、前記入出力軸とともに回転するように設けられて前記ワイヤの巻取りと巻き戻しとを行なうドラムとを備えて、ワイヤがドラムに巻き取られる際に可動ブロックを上昇させ、可動ブロックが下降する際にワイヤがドラムから巻き戻されるように、ワイヤが可動ブロックと支柱とに機械的に結合される。
【0020】
上記のように変位伝達機構を構成すると、重量物を上下させる機構として汎用され、実績があるウィンチの原理を利用して変位伝達機構を構成することができ、変位伝達機構の信頼性の向上を図ることができる。また鉛直方向に長いラックを用いる必要が無いため、変位伝達機構のメンテナンスを容易にすることができる。
【0021】
上記の各態様では、可動ブロックを上昇させるために電動機を設け、可動ブロックを下降させた際に発電を行なわせるために発電機を設けているが、電動機と発電機とを設ける代わりに、外部から電力が与えられたときに電動機として機能し、回転軸が駆動された際に発電機として機能する回転電機を用いることもできる。
【0022】
上記のように、電動機と発電機とを兼ねる回転電機を用いて、電力を位置エネルギに変換して貯蔵する際に該回転電機を電動機として機能させ、貯蔵された位置エネルギを電力に再変換して出力させる際に該回転電機を発電機として機能させるようにすると、電力貯蔵装置の構成の簡素化を図ることができる。
【0023】
本発明の更に他の好ましい態様は、後記する発明の実施形態の説明の中で明らかにされる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、鉛直方向に延びる支柱に沿って上下動し得るように設けられた可動ブロックの上部にパネル取付け面を設けて、このパネル取り付け面に太陽光発電パネルを取り付けることにより太陽光発電部を構成すると共に、太陽光発電部の出力又は商用電源の出力で駆動される電動機の回転を変位伝達機構を介して可動ブロックに伝達することにより可動ブロックを上昇させるようにしたので、電力を位置エネルギに変換して貯蔵することができ、メンテナンスが面倒な蓄電池を用いることなく、太陽光発電部から得られる発電電力及び(又は)連係する配電系統から受電した電力の貯蔵を行なうことができる。
【0025】
また上昇させられた可動ブロックを下降させる際の変位を変位伝達機構を介して発電機に伝達することにより発電機を回転させるようにしたので、電力を必要とするときに可動ブロックを下降させることにより、発電機を駆動して、貯蔵されていた位置エネルギを電力に再変換して利用することができる。
【0026】
本発明によれば、太陽光発電パネルを取り付けるブロック自体を、電力を位置エネルギに変換して貯蔵するための錘として利用するので、太陽光発電パネルを設置するためのスペースを有効に利用して、電力貯蔵装置を構成することができ、太陽光により発電した電力に余裕があるときにその余剰電力を貯蔵して夜間に利用したり、深夜電力などの安価な電力を貯蔵して、十分な日照が得られない昼間に利用したりすることができる。
【0027】
また本発明に係わる発電設備を、電力事業者が運営する発電設備として利用する場合には、深夜電力により可動ブロックを上昇させて深夜に生じる余剰電力を可動ブロックの位置エネルギとして貯蔵しておき、昼間の電力需要のピーク時に可動ブロックを下降させて、発電を行なわせるような運用の仕方をすることができ、電力貯蔵装置を電力の需給を調整する手段として活用することができる。
【0028】
本発明において、電動機及び発電機を用いる代わりに、両者の機能を果たす回転電機を用いた場合には、電力を貯蔵する部分の構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係わる太陽光発電設備の一実施形態の構成を概略的に示した正面図である。
【図2】同実施形態の構成を概略的に示す平面図である。
【図3】同実施形態で用いる電動機及び発電機とラック及びピニオンギアとの関係を示した要部の拡大断面図である。
【図4】図1及び図2に示された太陽光発電設備を1ユニットとして、複数のユニットを縦横に並べて更に大規模な太陽光発電設備を構成した状態を概略的に示した平面図である。
【図5】本発明に係わる太陽光発電設備の他の実施形態で用いる変位伝達機構の構成例を概略的に示した要部の正面図である。
【図6】本発明に係わる太陽光発電設備に設けるパワーコンディショナの構成例を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び図2において、1は所定の長さ寸法L及び幅寸法Wと、厚み寸法Dとを有して、上面及び下面が長方形又は正方形の輪郭形状を有するように形成された金属製の板状可動フレーム、2は鉛直方向(上下方向)に延びるように設けられて、可動フレーム1の支持とガイドとを行なう4本の支柱である。4本の支柱2は、可動フレーム1の四つのコーナ部付近にそれぞれ設けられた4つの貫通孔1aをそれぞれゆるく貫通した状態で設けられて、それぞれの下端が設置ベース3に固定されている。4本の支柱2をそれぞれ貫通させるために可動フレームに設けられた4つの貫通孔1aは、可動フレーム1の長さ方向の端部から等距離離れ、かつ可動フレーム1の幅方向の端部から等距離離れた位置に設けられていて、4つの孔1aをそれぞれ貫通した4本の支柱2のそれぞれの中心軸線が、水平面上で正方形又は長方形の4つの角部に配置されるようになっている。
【0031】
可動フレーム1の上には、十分に大きな質量を有する直方体状のブロックからなる金属製のウェイト4が固定されている。図示のウェイト4は、可動フレーム1の幅寸法に等しい幅寸法Wと、可動フレーム1の長さ寸法Lよりも短い長さ寸法L′と、可動フレーム1の厚み寸法Dよりも大きな厚み寸法D′とを有して、その長さ方向の両端を可動フレーム1の長さ方向の両端よりも等距離y(図2参照)だけ手前の位置させ、かつその幅方向の両端を可動フレーム1の幅方向の両端に一致させた状態で配置されている。
【0032】
ウェイト4の上面は、複数の太陽光発電パネルを縦横に並べて取り付けるパネル取付け面4aとなっていて、このパネル取付け面4aに多数の矩形状の太陽光発電パネル5,5,…が、縦横に並べて取り付けられている。ウェイト4のパネル取付け面に取り付けられた多数の太陽光発電パネル5,5,…により、太陽光発電部6が構成されている。
【0033】
本実施形態では、可動フレーム1とウェイト4とにより、所定の電力を位置エネルギとして貯蔵するための錘としての機能を有するように質量が設定されるとともに、複数の太陽光発電パネル5,5,…を縦横に並べて取り付けることができるパネル取付け面4aを上部に有して、鉛直方向に延びる支柱2に沿って上下動させられる可動ブロック7が構成されている。本実施形態では、可動ブロック7を上限位置まで上昇させた際に、該可動ブロックが有する位置エネルギが、貯蔵すべき電力値に相当する大きさになるように、可動フレーム1の質量とウェイト4の質量との合計値(可動ブロック7の質量)と、可動ブロック7を上限位置まで上昇させた際の該可動ブロック7の高さとが設定される。
【0034】
可動ブロック7の長手方向の両端の端面には回転自在なローラ8が取り付けられ、このローラ8が支柱2の側面に当接されている。
【0035】
本発明においては、回転自在な入出力軸を有して該入出力軸の回転変位を可動ブロック7を上昇させる方向の直線変位に変換して可動ブロック7に伝達し、可動ブロック7の下方への直線変位を回転変位に変換して上記入出力軸に伝達する変位伝達機構9が設けられる。本実施形態では、変位伝達機構9が、鉛直方向に伸びるようにして支柱2に取り付けられたラック11と、このラックに噛み合わされたピニオンギア12とを備えていて、ピニオンギア12により、変位伝達機構9の入出力軸が構成されている。
【0036】
可動フレーム1の四隅には、各支柱2の近傍に位置させて、電動機15と発電機16とが配置されている。電動機15及び発電機16は、ピニオンギア(入出力軸)12の軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ配置されて可動ブロック7に固定されている。
【0037】
電動機15の回転軸は、エネルギ変換効率調整用の第1の変速機17と、第1のクラッチ機構18と、可動ブロック7を上昇させる方向へのピニオンギア12の回転を許容するが、可動ブロック7を下降させる方向へのピニオンギア12の回転を阻止する解除可能な可動ブロック位置保持機構19とを介してピニオンギア12の軸線方向の一端に結合されている。また発電機16の回転軸は、可動ブロック7を下降させる際にピニオンギア12の回転にブレーキを掛けるブレーキ20と、第2のクラッチ機構21と、エネルギ変換効率調整用の第2の変速機22とを介してピニオンギア12の軸線方向の他端に結合されている。
【0038】
可動ブロック位置保持機構19は、上昇させられた可動ブロック7が有する位置エネルギを貯蔵するために該可動ブロックの位置を保持する機構で、この機構は、例えば、ピニオンギア12に結合されたラチェットホイールと、該ラチェットホイールの歯に噛み合うラチェット爪と、ラチェット爪をラチェットホイール側に付勢するバネとを備えた周知のラッチェット機構により構成することができる。可動ブロック位置保持機構19をラチェット機構により構成する場合、該位置保持機構19による可動ブロック7の位置保持を電気信号に応答して解除することができるようにするため、電気信号に応答して動作するアクチュエータを用いてラチェット爪をバネの付勢力に抗してラチェットホイールから引き外すラッチェット爪引外し機構を設けておく。
【0039】
ブレーキ20としては、例えば、電磁ブレーキや、ピニオンギア12と共に回転するように設けられたディスクにブレーキシューを摩擦接触させるようにした摩擦式ブレーキを用いることができる。
【0040】
第1及び第2のクラッチ機構18及び21としては、電磁クラッチのように、電気信号により断続させることができるものを用いる。また可動ブロック7の上昇を容易に行なわせるため、電動機15とピニオンギア12との間に設ける第1の変速機17としては減速機を用いることが好ましい。発電機16とピニオンギア12との間に設ける第2の変速機22としては、通常は増速機を用いる。第1及び第2の変速機としては歯車変速機を用いるのが好ましい。
【0041】
上記支柱2と、可動ブロック7と、可動ブロックのパネル取付け面に取り付けられた多数の太陽光発電パネル5からなる太陽光発電部6と、ラック11及びピニオンギア12からなる変位伝達機構9と、電動機15及び発電機16と、可動ブロック位置保持機構19と、ブレーキ20と、第1及び第2の変速機17及び22と、第1及び第2のクラッチ機構18及び21とにより太陽光発電設備30が構成されている。
【0042】
本実施形態の太陽光発電設備を運転する際には、太陽光発電部6から得られる発電電力を商用交流電力に変換して負荷に供給する。また太陽光発電部6の出力に余裕があるときには、第1のクラッチ機構18をつなぎ、第2のクラッチ機構21を切り離した状態にして、太陽光発電部6の出力を各支柱2毎に設けられた電動機15に供給し、可動ブロック位置保持機構19により可動ブロック7の下方への変位を阻止しつつ、各電動機15の回転を変速機17により減速してピニオン12に伝達することにより、可動ブロック7を支柱2に沿ってゆっくりと上昇させる。これにより太陽光発電部6の発電電力を可動ブロック7の位置エネルギに変換して貯蔵する。
【0043】
太陽光発電部6の出力に余裕がなく、昼間可動ブロック7を上昇させることができなかったとき、又は可動ブロック7を途中までしか上昇させることができなかったときには、連系する配電系統から受電した深夜電力を各電動機15に供給して可動ブロック7を上昇させることにより、商用電力を位置エネルギに変換して貯蔵する。
【0044】
可動ブロック7を上昇させることにより貯蔵した位置エネルギは、日照が十分に得られない昼間や、夜間などに電気エネルギに再変換して負荷を駆動するために用いることができる。可動ブロック7に貯蔵された位置エネルギを電気エネルギに変換する際には、第1のクラッチ機構18を切り離し、第2のクラッチ機構21をつないだ状態で可動ブロック位置保持機構19による可動ブロックの位置保持を外して可動ブロック7の下降を許可する。この状態で、可動ブロック7を下方に変位させ、この可動ブロックの下方への変位を、ラック11及びピニオンギア12により回転変位に変換して発電機16の回転軸に伝達する。これにより発電機16に発電を行なわせ、発電機16から得られる電力を負荷に供給する。可動ブロック7が下降する際の発電機16の回転速度は、ブレーキ20により適宜に調整して、可動ブロック7が有する位置エネルギを、時間をかけて電気エネルギに変換する。
【0045】
第1の変速機17の変速比を調整することにより、電気エネルギから位置エネルギへの変換効率を調整することができ、第2の変速機22の変速比を調整することにより、位置エネルギから電気エネルギへの変換効率を適宜に調整することができる。
【0046】
上記の説明では、太陽光発電部6で発電した電力を負荷に供給することを優先したが、太陽光発電部6の出力を位置エネルギに変換して貯蔵することを優先し、可動ブロック7が上限位置まで上昇してもなお太陽光発電部6が発電を行なっているときにのみ太陽光発電部6から負荷に電力を供給するような運用の仕方をしてもよい。例えば、本実施形態の太陽光発電設備を電力事業者の発電設備として設置して、電力貯蔵装置を、電力需要のピーク時に備えて電力を貯蔵しておく装置として優先的に用い、電力需要のピーク時に貯蔵しておいた電力を放出する使い方をすることもできる。
【0047】
本発明に係わる太陽光発電設備は、スマートグリッドのように、電力の需給を効率よく制御する電力網において、電力の需給を調整する手段として役立つことが期待される。大規模な太陽光発電設備を構築する場合には、多数の太陽光発電パネルを並べるために広大な設置面積が必要になるが、本発明においては、太陽光発電パネルを配置するために必要となるスペースに、電力を位置エネルギに変換して貯蔵するための錘を構成する大型の可動ブロックを設けて、この可動ブロックを、太陽光発電パネルを保持する保持体として用いるので、太陽光発電パネルを設置するために必要となるスペースを有効に利用して、電力貯蔵装置を構成することができ、スペースの有効利用を図ることができる。
【0048】
本発明に係わる太陽光発電設備を構成するに当たり、可動ブロック7の大きさは、電動機15の能力により決まるため、可動ブロック7の大きさには限界があるが、上記の実施形態で示した太陽光発電設備30を一単位として、図4に示したように多数の太陽光発電設備30を並べることにより、利用し得るスペースの範囲で、いくらでも発電設備の大規模化を図ることができる。
【0049】
本発明に係わる太陽光発電設備は、地上に設置することができるのはもちろんであるが、洋上にも設置することが可能である。洋上では、広大なスペースを確保することが容易であるので、大規模な発電設備を構築することが容易である。太陽光発電設備を洋上に設置すると、その下の海中を魚礁として利用することができるというメリットも得られる。
【0050】
上記の実施形態では、可動ブロック7を上昇させるための駆動源として電動機15を設け、可動ブロック7の位置エネルギを電気エネルギに再変換するために発電機16を設けたが、電動機としても発電機としても動作する回転電機を設けて、この回転電機に上記電動機15としての機能と、発電機16としての機能とを持たせることができる。この場合は、回転電機の回転軸を、変速機と位置保持機構とを介して変位伝達機構の入出力軸(上記の実施形態ではピニオンギア)に結合する。変速機は、可動ブロックを上昇させる際と、可動ブロックを下降させる際とで変速比を異ならせるために、変速比を適宜に切り替えることができるように構成しておくのが好ましい。
【0051】
上記の実施形態では、回転自在な入出力軸(上記の例ではピニオンギア12)を有して該入出力軸の回転変位を可動ブロック7を上昇させる方向の直線変位に変換して可動ブロック7に伝達し、可動ブロック7の下方への直線変位を回転変位に変換して入出力軸に伝達する変位伝達機構を、ラックとピニオンギアとを用いて構成したが、本発明は、変位伝達機構をこのように構成する場合に限定されるものではない。
【0052】
例えば、ワイヤと、入出力軸とともに回転するように設けられてワイヤの巻取りと巻戻しとを行なうドラムとを備えて、ワイヤがドラムに巻き取られる際に可動ブロックを上昇させ、可動ブロックの下降に伴ってワイヤがドラムから巻き戻される際にドラムを入出力軸とともに回転させるようにワイヤが可動ブロックと支柱の上端とに機械的に結合されたウィンチ機構により変位伝達機構を構成することができる。この場合、電動機15の回転軸は、該回転軸の回転を変速する第1の変速機(通常は減速機)と可動ブロック位置保持機構とを介して入出力軸の軸線方向の一端に結合され、発電機16の回転軸は、入出力軸の回転を変速する第2の変速機(通常は入出力の回転を増速する増速機)とブレーキとを介して入出力軸の軸線方向の他端に結合される。
【0053】
変位伝達機構をウィンチ機構を用いて構成した例を図5に示した。図5に示した例では、可動フレーム1の端部側面に、各支柱2の側方に位置させて下部滑車41が取り付けられ、支柱2の上端に支持部材42を介して上部滑車43が取り付けられている。また設置ベース3上には、可動ブロック7の下方に位置させて、ワイヤ44の巻取りと巻き戻しとを行なうドラム45が固定されている。ドラム45には、該ドラムに一端が固定されたワイヤ44が捲かれる。ドラム45から繰り出されたワイヤ44は、下部滑車41を経て上方に導かれた後、上部滑車43を経由して下方に折り返され、上部滑車43で折り返されて下方に導かれたワイヤ44の他端が、可動フレーム1に固定されている。ドラム45の回転軸が変位伝達機構の入出力軸46となっていて、入出力軸46の一端に回転電機47の回転軸が、変速機と、ラチェット機構などからなる可動ブロック位置保持機構と、ブレーキとを介して結合されている。ドラム45と、ワイヤ44と、滑車41及び43とにより、変位伝達機構9′が構成されている。
【0054】
図5に示した変位伝達機構9′においては、入出力軸46に回転軸が結合された回転電機47に太陽光発電部の発電出力又は配電系統から受電した商用電力を供給して、該回転電機47を電動機として動作させることによりワイヤ44をドラム45に巻き取って可動ブロック7を上昇させる。これにより、電力を可動ブロック7の位置エネルギに変換して貯蔵する。また可動ブロック7の位置を保持する位置保持機構による可動ブロック7の位置保持を解除して、可動ブロック7を下降させることにより、ドラム45からワイヤ44を巻き戻して入出力軸46を回転させ、これにより回転電機47を発電機として動作させて、貯蔵されていた位置エネルギを電気エネルギに再変換する。
【0055】
なお図5に示した実施形態において、ワイヤ44は、ドラム45に巻き取られる際に可動ブロック7を上昇させ、可動ブロックが下降する際にドラムから巻き戻されるように、可動ブロック7と支柱2とに機械的に結合されればよく、ワイヤ44と可動ブロック7及び支柱2との結合の仕方は上記の例に限定されない。例えば、支柱2の上端に一端を固定したワイヤ44を、下方に導いた後下部滑車41の外周を経て上方に折り返し、押し返したワイヤ44を支柱2の上端に取り付けられた上部滑車43を経て下方に折り返して、折り返したワイヤの他端をドラム45に固定するようにしてもよい。
【0056】
ウィンチ機構により変位伝達機構を構成する場合に、図5に示したようにドラム45及び回転電機47を設置ベース3上に配置すると、回転電機のメンテナンスを地上で行なうことができ、また上下方向に長いラックを設ける必要が無いため、変位伝達機構のメンテナンスを容易に行なうことができる。またウィンチ機構は、重量物を上下させる機構として汎用されており、信頼性が確立された機構であるため、上記のようにウインチ機構により変位伝達機構を構成すると、変位伝達機構の信頼性を向上させることができる。
【0057】
上記の実施形態では、長方形または正方形に形成された可動ブロック7の4隅にそれぞれ4本の支柱2を設け、各支柱の位置に変位伝達機構を設けているが、支柱2及び変位伝達機構の数は、適宜に増減することができる。
【0058】
例えば、三角形の3つの頂点にそれぞれ配置された3本の支柱2を設けて、該3本の支柱に沿って可動フレームを上下させるように構成することもできる。また複数本の支柱を設ける場合に、一部の支柱の箇所にのみ変位伝達機構を設けるようにすることもできる。例えば、支柱2を可動ブロック7の中央部と、4隅とにそれぞれ設けて、4隅の支柱は可動ブロックをガイドするためにのみ用い、中央の1本の支柱の箇所にのみ変位伝達機構と、電動機及び発電機とを設けるようにすることもできる。
【0059】
図6を参照すると、本発明に係わる太陽光発電設備に設けるパワーコンディショナの構成の一例が示されている。この例では、電動機15が交流電動機であり、発電機16が交流発電機であるとする。
【0060】
図6に示した例では、太陽光発電部6の出力がDC−DCコンバータ51に入力されて商用交流電圧の波高値に等しい直流電圧に変換される。DC−DCコンバータ51から得られる直流電圧はスイッチ52を通して直流電圧を商用周波数の交流電圧に変換するインバータ53に入力され、このインバータにより、DC−DCコンバータ51から得られる直流電圧が商用周波数を有する交流電圧に変換される。インバータ53の出力はスイッチ54を通して負荷接続線路55a,55bの間に印加され、負荷接続線路55a,55bに負荷スイッチ56を通して負荷57が接続されている。負荷接続線路55a,55bは、スイッチ58a,58bを備えた系統連系装置60を通して連系する配電系統61に接続されている。
【0061】
負荷接続線路55a,55b間の電圧がスイッチ62を通して電動機15に印加され、スイッチ52,54及び62がオン状態にあるときに太陽光発電部6の出力がDC−DCコンバータ51とインバータ53とスイッチ54及び62とを通して電動機15に供給されるようになっている。またスイッチ54がオフし、スイッチ62がオンした状態で、系統連系装置60のスイッチ58a,58bがオン状態になったときに、配電系統61から受電した商用電力が電動機15に供給されるようになっている。
【0062】
また発電機16の出力が整流回路65を通してDC−DCコンバータ66に入力され、整流回路65から得られる発電機16の整流出力が、DC−DCコンバータ66により、商用交流電圧の波高値に等しい直流電圧に変換される。DC−DCコンバータ66の出力はスイッチ67を通してインバータ53に入力され、インバータ53により、DC−DCコンバータ66の出力が商用周波数を有する交流電力に変換される。DC−DCコンバータ51及び66と、インバータ53と、スイッチ52、54、62及び67と、系統連系装置60とを制御するため、コントローラ68が設けられている。この例では、DC−DCコンバータ51,66、インバータ53、整流回路65、スイッチ52,54,62,67、系統連係装置60及びコントローラ68によりパワーコンディショナ70が構成されている。
【0063】
図6に示した太陽光発電設備において、太陽光発電部6の出力で負荷57に供給する電力をまかなうことを優先する場合には、太陽光発電部6が発電しているときにスイッチ67をオフ状態にし、スイッチ52及び54をオン状態にして、太陽光発電部6の出力をDC−DCコンバータ51とインバータ53とを通して商用交流電力に変換し、この交流電力をスイッチ54と56とを通して負荷57に供給する。コントローラ68は、配電系統61の交流電圧を検出していて、インバータ53から配電系統の交流電圧と同位相の交流電圧を発生させるようにインバータ53を制御する。
【0064】
太陽光発電部6の出力が低く、太陽光発電部6が発電していないとき、又は太陽光発電部6の出力だけでは負荷57で消費する電力をまかなうことができない場合には、コントローラ68が系統連系装置60のスイッチ58a,58bをオン状態にして配電系統61から買電した電力を負荷57に供給する。
【0065】
太陽光発電部6が出力する発電電力が負荷57の消費電力を上回っているとき、又は負荷スイッチ56がオフ状態にあるとき(負荷に電力が供給されていないとき)には、コントローラ68がスイッチ54及び62をオン状態にしてインバータ53の出力を電動機15に供給する。これにより電動機15を回転させて可動ブロック7を上昇させ、太陽光発電部6の発電出力を可動ブロック7の位置エネルギに変換する。可動ブロック7は、可動ブロック位置保持機構により下方への変位が阻止されて、上昇させられた位置に保持されるため、可動ブロック7に位置エネルギが貯蔵されていく。
【0066】
図示してないが、可動ブロック7が上限位置に達したときに検出動作を行なうリミットスイッチが設けられており、コントローラ68は、このリミットスイッチから与えられる信号により可動ブロック7が上限位置に達したことを検出したときに、スイッチ62をオフ状態にして電動機15を停止させる。
【0067】
コントローラ68は、可動ブロック7が上限位置に達した状態で太陽光発電部6が発電をしていて、太陽光発電部6の出力が負荷57で消費する電力を上回っているときに、スイッチ62をオフ状態にするとともに、スイッチ54をオン状態にし、系統連系装置60のスイッチ58a,58bをオン状態にして、負荷接続線路55a,55bを配電系統61に接続する。これにより、太陽光発電部6の出力を配電系統に売電する。
【0068】
コントローラ68はまた、太陽光発電部51が発電を行なっていないときに、スイッチ62をオフ状態にするとともに、必要に応じて可動ブロック位置保持機構による可動ブロック7の位置保持を解除して、可動ブロック7を下降させる。これにより発電機16の回転軸を回転させて、該発電機16に発電を行なわせる。このときコントローラ68は、商用交流電圧の波高値に等しい大きさの直流電圧をDC−DCコンバータ66から出力させるように、該DC−DCコンバータ66を制御するとともに、スイッチ67をオフ状態にしてDC−DCコンバータ66の出力をインバータ53に入力させ、配電系統の電圧に同期した交流電圧をインバータ53から出力させるようにインバータ53を制御する。このときインバータ53が出力する交流電力は、スイッチ56を通して負荷57に供給してもよく、系統連系装置60を通して配電系統に売電してもよい。
【0069】
コントローラ68はまた、深夜電力を利用し得る時間帯にスイッチ54をオフした状態でスイッチ62をオン状態にして、配電系統61から系統連系装置60を通して電動機15に商用電力を供給する。これにより電動機15を回転させて可動ブロック7を上昇させ、深夜電力を可動ブロック7の位置エネルギに変換して貯蔵させる。可動ブロック7の位置エネルギとして貯蔵した深夜電力は、昼間太陽光発電部6の発電出力が不足するときに放出して負荷57に供給するか、または系統連系装置60を通して配電系統61に売電する。
【0070】
上記の説明では、本発明に係わる太陽光発電設備を、電力事業者以外の事業者または個人が運営する場合を想定したが、本発明に係わる太陽光発電設備を電力事業者が運営する場合には、可動ブロック7を電力の需給を調整する手段として利用することができる。例えば、電力需要が少ないときに太陽光発電部6の出力または系統の余剰電力により電動機16を駆動して可動ブロック7を上昇させ、電力需要のピーク時に可動ブロック7を下降させて、発電機16の出力を系統に供給するといった運用の仕方をすることができる。
【0071】
上記の実施形態では、可動ブロック7を可動フレーム1とウェイト4とにより構成したが、可動ブロック7は、錘としての機能を有するように質量が設定されるとともに複数の太陽光発電パネルを縦横に並べて取り付けることができるパネル取付け面を上部に有して、鉛直方向に延びる支柱に沿って上下動し得るように設けられればよく、その構成は上記の例に限定されない。例えば、可動フレーム1が十分な質量を有している場合には、ウェイト4を省略して可動フレーム1のみにより可動ブロックを構成することができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本明細書に開示した発明の主な態様をまとめて示すと下記の通りである。
(1)第1の発明
第1の発明は、太陽光発電部と、太陽光発電部から得られる発電電力または連係する配電系統から受電した商用電力を貯蔵する電力貯蔵装置とを備えた太陽光発電設備であって、錘としての機能を有するように質量が設定されるとともに複数の太陽光発電パネルを縦横に並べて取り付けることができるパネル取付け面を上部に有して、鉛直方向に延びる支柱に沿って上下動し得るように設けられた可動ブロックと、回転自在な入出力軸を有して該入出力軸の回転変位を前記可動ブロックを上昇させる方向の直線変位に変換して可動ブロックに伝達し、可動ブロックの下方への直線変位を回転変位に変換して入出力軸に伝達する変位伝達機構と、可動ブロックのパネル取付け面に縦横に並べて取り付けられて太陽光発電部を構成する複数の太陽光発電パネルと、変位伝達機構の入出力軸に第1の変速機を介して回転軸が結合されて、発電電力又は商用電力で駆動されることにより可動ブロックを上昇させる方向に変位伝達機構の入出力軸を回転駆動する電動機と、上昇させられた可動ブロックが有する位置エネルギを貯蔵するために該可動ブロックの位置を保持する可動ブロック位置保持機構と、入出力軸に第2の変速機を介して回転軸が結合されて、前記可動ブロック位置保持機構による可動フロックの位置の保持が解除された際に可動ブロックの下降に伴って生じる入出力軸の回転変位により駆動されて可動ブロックが有する位置エネルギを電気エネルギに再変換して出力する発電機とを備えていて、可動ブロックと、変位伝達機構と、電動機と、可動ブロック位置保持機構と、発電機とにより、前記電力貯蔵装置が構成されている。
【0073】
上記のように構成すると、太陽光発電パネルを取り付けるブロック自体を、電力を位置エネルギに変換して貯蔵するための錘として利用することができるので、太陽光発電パネルを設置するためのスペースを有効に利用して、電力貯蔵装置を構成することができ、太陽光により発電した電力に余裕があるときにその余剰電力を貯蔵して夜間に利用したり、深夜電力などの安価な電力を貯蔵して、十分な日照が得られない昼間に利用したりすることができる。またメンテナンスが面倒な蓄電池を用いることなく、電力を貯蔵することができるため、蓄電池を用いる場合に比べてメンテナンスを容易にすることができる。
【0074】
(2)第2の発明
第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、上記第1の変速機が、電動機の回転軸の回転を減速して入出力軸に伝達する減速機であり、第2の変速機は、入出力軸の回転を増速して発電機の回転軸に伝達する増速機である。
【0075】
上記のように第1の変速機及び第2の変速機を構成すると、電動機を駆動源として可動ブロックを無理なく上昇させることができ、また可動ブロックを下降させて位置エネルギを放出する際に、発電機を十分な回転速度で回転させて発電を行なわせることができる。
【0076】
(3)第3の発明
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に適用されるもので、本発明においては、変位伝達機構が、鉛直方向に伸びるようにして支柱に取り付けられたラックと、ラックに噛み合わされたピニオンギアとを備えていて、ピニオンギアにより前記入出力軸が構成されている。電動機及び発電機は上記ピニオンギアの軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ配置されて可動ブロックに固定され、電動機の回転軸は、第1の変速機を介してピニオンギアの軸線方向の一端に結合されている。また発電機の回転軸は第2の変速機を介してピニオンギアの軸線方向の他端に結合されている。
【0077】
上記のように構成すると、可動ブロック上で変位伝達機構が占めるスペースを狭くして、パネル取付け面を広くとることができるため、太陽光発電部の発電容量を増大させることができる。
【0078】
(4)第4の発明
第4の発明は、第1の発明又は第2の発明に適用されるもので、本発明においては、変位伝達機構が、ワイヤと、前記入出力軸とともに回転するように設けられて前記ワイヤの巻取りと巻戻しとを行なうドラムとを備えていて、ワイヤがドラムに巻き取られる際に可動ブロックを上昇させ、可動ブロックが下降する際にドラムから巻き戻されるように可動ブロックと支柱とに機械的に結合される。電動機の回転軸は、該回転軸の回転を減速する減速機を介して入出力軸の軸線方向の一端に結合され、発電機の回転軸は入出力軸の回転を増速する増速機を介して入出力軸の軸線方向の他端に結合される。
【0079】
上記のように変位伝達機構を構成すると、重量物を上下させる機構として実績があるウィンチの原理を利用して変位伝達機構を構成することができるため、変位伝達機構の信頼性の向上を図ることができる。また鉛直方向に長いラックを用いる必要が無いため、変位伝達機構のメンテナンスを容易にすることができる。更に電動機及び発電機を地上に設置することができるため、これらのメンテナンスを容易にすることができる。
【0080】
(5)第5の発明
第5の発明は、第1ないし第4の発明の何れかに適用されるもので、本発明においては、電動機の回転軸と変位伝達機構の入出力軸との間に第1のクラッチが設けられ、発電機の回転軸と入出力軸との間に第2のクラッチが設けられている。
【0081】
上記のようにクラッチを設けておくと、電動機を駆動して可動ブロックを上昇させる際に第2のクラッチを切り離しておくことにより、電動機にかかる負荷を軽減して、機械的損失を少なくすることができるため、電力から位置エネルギへの変換効率を高めることができる。
【0082】
(6)第6の発明
第6の発明は、太陽光発電部と、太陽光発電部から得られる発電電力または連係する配電系統から受電した商用電力を蓄積する電力貯蔵装置とを備えた太陽光発電設備であって、錘としての機能を有するように質量が設定されるとともに複数の太陽光発電パネルを縦横に並べて取り付けることができるパネル取付け面を上部に有して、鉛直方向に延びる支柱に沿って上下動し得るように設けられた可動ブロックと、回転自在な入出力軸を有して該入出力軸の回転変位を前記可動ブロックを上昇させる方向の直線変位に変換して前記可動ブロックに伝達し、前記可動ブロックの下方への直線変位を回転変位に変換して前記入出力軸に伝達する変位伝達機構と、前記可動ブロックのパネル取付け面に縦横に並べて取り付けられて前記太陽光発電部を構成する複数の太陽光発電パネルと、前記変位伝達機構の入出力軸に変速機を介して結合された回転軸を有して前記太陽光発電部又は商用電源の出力が入力された際に電動機として機能して可動ブロックを上昇させる方向に変位伝達機構の入出力軸を回転駆動し、可動ブロックが下降する際に生じる入出力軸の回転変位により前記回転軸が駆動されたときに発電機として機能する回転電機と、上昇させられた可動ブロックが有する位置エネルギを貯蔵するために該可動ブロックの位置を保持する可動ブロック位置保持機構とを備えていて、可動ブロックと、変位伝達機構と、回転電機と、可動ブロック位置保持機構とにより、蔵装置が構成されている。
【0083】
上記のように、電動機と発電機とを兼ねる回転電機を用いて、電力を位置エネルギに変換して貯蔵する際に該回転電機を電動機として機能させ、貯蔵された位置エネルギを電力に再変換して出力させる際に該回転電機を発電機として機能させるようにすると、電力貯蔵装置の構成の簡素化を図ることができる
【0084】
(7)第7の発明
第7の発明は第6の発明に適用されるもので、本発明においては、変速機が、回転電機の回転軸の回転を減速して入出力軸に伝達し、入出力軸の回転を増速して回転電機の回転軸に伝達するように構成される。
【0085】
(8)第8の発明
第8の発明は、第6の発明又は第7の発明に適用されるもので、本発明においては、回転電機が、可動ブロックに対して固定される。変位伝達機構は、鉛直方向に伸びるようにして支柱に取り付けられたラックと、ラックに噛み合わされたピニオンギアとを備えていて、ピニオンギアにより前記入出力軸が構成されている。回転電機は可動ブロックに固定され、回転電機の回転軸は、回転電機の回転軸の回転を減速し、ピニオンギアの回転を増速する変速機を介してピニオンギアに結合されている。
【0086】
(9)第9の発明
第9の発明は、第6の発明又は第7の発明に適用されるもので、本発明においては、変位伝達機構が、ワイヤと、前記入出力軸とともに回転するように設けられてワイヤの巻取りと巻き戻しとを行なうドラムとを備えて、ワイヤがドラムに巻き取られる際に可動ブロックを上昇させ、可動ブロックが下降する際にドラムから巻き戻されるように可動ブロックと支柱とに機械的に結合される。回転電機の回転軸は、回転電機の回転軸の回転を減速して入出力軸に伝達し、入出力軸の回転を増速して回転電機の回転軸に伝達する変速機を介して前記入出力軸に結合されている。
【符号の説明】
【0087】
1 可動フレーム
2 支柱
4 ウェイト
4a パネル取付け面
5 太陽光発電パネル
6 太陽光発電部
7 可動ブロック
8 ローラ
15 電動機
16 発電機
17 第1の変速機
18 第1のクラッチ機構
19 第1の位置保持機構
20 第2の位置保持機構
21 第2のクラッチ機構
22 第2の変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電部と、前記太陽光発電部から得られる発電電力または連係する配電系統から受電した商用電力を貯蔵する電力貯蔵装置とを備えた太陽光発電設備であって、
錘としての機能を有するように質量が設定されるとともに複数の太陽光発電パネルを縦横に並べて取り付けることができるパネル取付け面を上部に有して、鉛直方向に延びる支柱に沿って上下動し得るように設けられた可動ブロックと、
回転自在な入出力軸を有して該入出力軸の回転変位を前記可動ブロックを上昇させる方向の直線変位に変換して前記可動ブロックに伝達し、前記可動ブロックの下方への直線変位を回転変位に変換して前記入出力軸に伝達する変位伝達機構と、
前記可動ブロックのパネル取付け面に縦横に並べて取り付けられて前記太陽光発電部を構成する複数の太陽光発電パネルと、
前記変位伝達機構の入出力軸に第1の変速機を介して回転軸が結合されて、前記発電電力又は前記商用電力で駆動されることにより前記可動ブロックを上昇させる方向に前記変位伝達機構の入出力軸を回転駆動する電動機と、
上昇させられた可動ブロックが有する位置エネルギを貯蔵するために該可動ブロックの位置を保持する可動ブロック位置保持機構と、
前記入出力軸に第2の変速機を介して回転軸が結合されて、前記可動ブロック位置保持機構による可動フロックの位置の保持が解除された際に前記可動ブロックの下降に伴って生じる前記入出力軸の回転変位により駆動されて前記可動ブロックが有する位置エネルギを電気エネルギに再変換して出力する発電機と、
を具備し、
前記可動ブロックと、変位伝達機構と、電動機と、可動ブロック位置保持機構と、発電機とにより、前記電力貯蔵装置が構成されていること、
を特徴とする太陽光発電設備。
【請求項2】
前記第1の変速機は、前記電動機の回転軸の回転を減速して前記入出力軸に伝達する減速機であり、前記第2の変速機は、前記入出力軸の回転を増速して前記発電機の回転軸に伝達する増速機である請求項1に記載の太陽光発電設備。
【請求項3】
前記変位伝達機構は、鉛直方向に伸びるようにして前記支柱に取り付けられたラックと、前記ラックに噛み合わされたピニオンギアとを備えて前記ピニオンギアにより前記入出力軸が構成され、
前記電動機及び発電機は前記ピニオンギアの軸線方向の一端側及び他端側にそれぞれ配置されて前記可動ブロックに固定され、
前記電動機の回転軸は前記第1の変速機を介して前記ピニオンギアの軸線方向の一端に結合され、
前記発電機の回転軸は前記第2の変速機を介して前記ピニオンギアの軸線方向の他端に結合されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の太陽光発電設備。
【請求項4】
前記変位伝達機構は、ワイヤと、前記入出力軸とともに回転するように設けられて前記ワイヤの巻取りと巻戻しとを行なうドラムとを備えて、前記ワイヤがドラムに巻き取られる際に前記可動ブロックを上昇させ、前記可動ブロックが下降する際に前記ワイヤがドラムから巻き戻されるように前記ワイヤが前記可動ブロックと支柱とに機械的に結合され、
前記電動機の回転軸は、該回転軸の回転を減速する減速機を介して前記入出力軸の軸線方向の一端に結合され、
前記発電機の回転軸は前記入出力軸の回転を増速する増速機を介して前記入出力軸の軸線方向の他端に結合されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の太陽光発電設備。
【請求項5】
前記電動機の回転軸と前記変位伝達機構の入出力軸との間に第1のクラッチが設けられ、前記発電機の回転軸と前記入出力軸との間に第2のクラッチが設けられていることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の太陽光発電設備。
【請求項6】
太陽光発電部と、前記太陽光発電部から得られる発電電力または連係する配電系統から受電した商用電力を蓄積する電力貯蔵装置とを備えた太陽光発電設備であって、
錘としての機能を有するように質量が設定されるとともに複数の太陽光発電パネルを縦横に並べて取り付けることができるパネル取付け面を上部に有して、鉛直方向に延びる支柱に沿って上下動し得るように設けられた可動ブロックと、
回転自在な入出力軸を有して該入出力軸の回転変位を前記可動ブロックを上昇させる方向の直線変位に変換して前記可動ブロックに伝達し、前記可動ブロックの下方への直線変位を回転変位に変換して前記入出力軸に伝達する変位伝達機構と、
前記可動ブロックのパネル取付け面に縦横に並べて取り付けられて前記太陽光発電部を構成する複数の太陽光発電パネルと、
前記変位伝達機構の入出力軸に変速機を介して結合された回転軸を有して、前記発電電力又は商用電力が入力された際に電動機として機能して前記可動ブロックを上昇させる方向に前記変位伝達機構の入出力軸を回転駆動し、前記可動ブロックが下降する際に生じる前記入出力軸の回転変位により前記回転軸が駆動されたときに発電機として機能する回転電機と、
上昇させられた可動ブロックが有する位置エネルギを貯蔵するために該可動ブロックの位置を保持する可動ブロック位置保持機構と、
を具備し、
前記可動ブロックと、変位伝達機構と、回転電機と、可動ブロック位置保持機構とにより、前記電力貯蔵装置が構成されていること、
を特徴とする太陽光発電設備。
【請求項7】
前記変速機は、前記回転電機の回転軸の回転を減速して前記入出力軸に伝達し、前記入出力軸の回転を増速して前記回転電機の回転軸に伝達するように構成されている請求項6に記載の太陽光発電設備。
【請求項8】
前記回転電機は、前記可動ブロックに対して固定され、
前記変位伝達機構は、鉛直方向に伸びるようにして前記支柱に取り付けられたラックと、前記ラックに噛み合わされたピニオンギアとを備えて、前記ピニオンギアにより前記入出力軸が構成され、
前記回転電機は前記可動ブロックに固定され、
前記回転電機の回転軸は前記変速機を介して前記ピニオンギアに結合されていること、
を特徴とする請求項6又は7に記載の太陽光発電設備。
【請求項9】
前記変位伝達機構は、ワイヤと、前記入出力軸とともに回転するように設けられて前記ワイヤの巻取りと巻き戻しとを行なうドラムとを備えて、前記ワイヤがドラムに巻き取られる際に前記可動ブロックを上昇させ、前記可動ブロックが下降する際に前記ワイヤが前記ドラムから巻き戻されるように前記ワイヤが前記可動ブロックと支柱とに機械的に結合され、
前記回転電機の回転軸は、前記回転電機の回転軸の回転を減速して前記入出力軸に伝達し、前記入出力軸の回転を増速して前記回転電機の回転軸に伝達する変速機を介して前記入出力軸に結合されていること、
を特徴とする請求項6又は7に記載の太陽光発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38976(P2013−38976A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174501(P2011−174501)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(399074754)株式会社ダイ・エレクトロニクス (4)
【Fターム(参考)】