説明

好気嫌気兼用反応槽の運転方法および水処理設備

【課題】嫌気運転中における散気装置の散気孔の目詰まりを防止することができる好気嫌気兼用反応槽の運転方法を提供する。
【解決手段】被処理液に散気を行うメンブレン式の散気装置12と被処理液を攪拌する攪拌装置13とを備えた好気嫌気兼用反応槽5,7の運転方法であって、散気装置12からの散気を停止し且つ攪拌装置13で槽内の被処理液を攪拌する嫌気運転中において、散気装置12から一時的に散気を行う目詰防止工程を間欠的に実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水処理場などの水処理施設において使用される好気嫌気兼用反応槽の運転方法および水処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、好気嫌気兼用反応槽としては、例えば図12に示すように、槽内に、廃水80に対して散気を行うメンブレン式の散気装置81と、廃水80を攪拌する攪拌装置82とが備えられたものがある。散気装置81は、多数の散気孔が形成された弾性変形自在な散気膜(図示省略)を有している。
【0003】
これによると、例えば、下水処理場で下水等の廃水80を生物処理する際、冬季において反応槽84を好気条件下で運転し、夏場において反応槽84を嫌気条件下で運転することがある。好気条件下の運転では、攪拌装置82による攪拌を停止し、廃水80に対して散気装置81から散気を行っている。また、嫌気条件下の運転では、散気装置81からの散気を停止し、攪拌装置82により廃水80を攪拌している。
【0004】
上記のような好気嫌気兼用反応槽は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−289277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来形式では、季節に応じて好気運転と嫌気運転とを交互に繰り返しているが、嫌気運転中に、長期間にわたって散気装置81からの散気を停止しているため、汚泥が次第に散気装置81の散気膜上に堆積し、堆積物によって散気膜の散気孔が目詰まりするといった問題がある。このように、嫌気運転中に散気孔が目詰まりすると、嫌気運転から好気運転に切換えて散気を行う際、散気装置81の圧損が増大したり、散気量が不足する虞がある。しかし、これまで嫌気運転中に停止している散気装置81に注意が払われることはなかった。
【0007】
本発明は、嫌気運転中における散気装置の散気孔の目詰まりを防止することができる好気嫌気兼用反応槽の運転方法および水処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本第1発明は、被処理液に散気を行うメンブレン式の散気装置と被処理液を攪拌する攪拌装置とを備えた好気嫌気兼用反応槽の運転方法であって、
散気装置からの散気を停止し且つ攪拌装置で被処理液を攪拌する嫌気運転中において、散気装置から一時的に散気を行うことによって散気装置の散気孔の上の堆積物を除去する目詰防止工程を実施するものである。
【0009】
これによると、攪拌装置による攪拌を停止すると共に散気装置による散気を行う好気運転と、散気装置による散気を停止すると共に攪拌装置による攪拌を行う嫌気運転とを交互に繰り返すことによって、被処理液を生物処理することができる。
【0010】
このとき、嫌気運転中において、目詰防止工程を実施して散気装置から一時的に散気を行うことにより、散気装置の散気膜の散気孔から空気が一時的に放出されるため、嫌気運転中における散気装置の散気孔の目詰まりを防止することができる。これにより、嫌気運転から好気運転に切換えて散気を行う際、散気装置の圧損上昇が抑制され、散気量の不足が防止される。
【0011】
本第2発明における好気嫌気兼用反応槽の運転方法は、嫌気運転中において、所定の嫌気運転時間が経過する度に、目詰防止工程が間欠的に行われるものである。
これによると、所定の嫌気運転時間が経過する度に目詰防止工程が行われるので、嫌気運転中における散気孔の目詰まりを防止することができる。
【0012】
本第3発明における好気嫌気兼用反応槽の運転方法は、嫌気運転中において、散気装置の散気膜上の堆積物の堆積量に応じて目詰防止工程が行われるものである。
これによると、散気膜上の堆積物の堆積量が規定堆積量に達すると、目詰防止工程が行われる。このため、堆積物の堆積量に応じて、最適なタイミングで目詰防止工程が過不足無く実施され、嫌気運転中における散気孔の目詰まりを確実に且つ効率良く防止することができる。
【0013】
また、目詰防止工程の実施によって嫌気運転中に一時的に好気条件になるが、この好気条件になる頻度を限りなく少なくすることができる。
本第4発明における好気嫌気兼用反応槽の運転方法は、散気膜上の堆積物の堆積量を検出手段で検出するものである。
【0014】
これによると、検出された堆積物の堆積量に応じて目詰防止工程が行われるため、最適なタイミングで目詰防止工程が過不足無く実施される。
本第5発明における好気嫌気兼用反応槽の運転方法は、嫌気運転と好気運転とが交互に行われ、
嫌気運転において、散気装置からの散気を停止するとともに攪拌装置で被処理液を攪拌し、
好気運転において、散気装置から散気を行うものである。
【0015】
本第6発明は、被処理液を生物処理する水処理設備であって、
少なくとも1つの好気嫌気兼用反応槽と、好気嫌気兼用反応槽の次工程側に設けられる好気専用反応槽と、好気嫌気兼用反応槽内の被処理液に散気を行うメンブレン式の散気装置と、好気嫌気兼用反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌装置と、好気専用反応槽内の被処理液に散気を行うメンブレン式の散気装置と、各散気装置に空気を供給する給気設備と、給気設備から好気嫌気兼用反応槽内の散気装置に供給される空気を遮断する送気遮断弁とが備えられているものである。
【0016】
これによると、給気設備を稼動することにより、給気設備から好気専用反応槽内の散気装置に空気が供給され、好気専用反応槽内の散気装置から散気が行われ、好気専用反応槽に対して好気運転が行われる。
【0017】
このように、好気専用反応槽に対して好気運転を行っている状態で、好気嫌気兼用反応槽に対して好気運転と好気運転とを交互に切換えて行う。好気嫌気兼用反応槽に対して好気運転を行う場合は送気遮断弁を開く。これにより、給気設備から好気嫌気兼用反応槽内の散気装置に空気が供給され、好気嫌気兼用反応槽内の散気装置から散気が行われ、好気嫌気兼用反応槽に対して好気運転が行われる。
【0018】
また、好気嫌気兼用反応槽に対して嫌気運転を行う場合は送気遮断弁を閉じる。これにより、給気設備から好気嫌気兼用反応槽内の散気装置に供給される空気が遮断され、好気嫌気兼用反応槽内の散気装置による散気が停止し、好気嫌気兼用反応槽に対して嫌気運転が行われる。この際、攪拌装置を稼動して、好気嫌気兼用反応槽内の被処理液を攪拌する。
【0019】
このような嫌気運転中において、送気遮断弁を一時的に開き、好気嫌気兼用反応槽内の散気装置から一時的に散気を行うことによって、散気装置の散気孔の上の堆積物を除去する目詰防止工程を実施する。これにより、好気嫌気兼用反応槽内の散気装置の散気膜の散気孔から空気が一時的に放出されるため、嫌気運転中における散気孔の目詰まりを防止することができる。したがって、好気嫌気兼用反応槽において、嫌気運転から好気運転に切換えて散気を行う際、散気装置の圧損上昇が抑制され、散気量の不足が防止される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によると、嫌気運転中における散気装置の散気孔の目詰まりを防止することができ、これにより、嫌気運転から好気運転に切換えて散気を行う際、散気装置の圧損上昇が抑制され、散気量の不足が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態における水処理設備の図である。
【図2】同、水処理設備の生物処理槽の断面図である。
【図3】同、生物処理槽に設けられた散気装置の斜視図である。
【図4】同、生物処理槽に備えられた好気嫌気兼用反応槽の嫌気運転時における散気装置の散気膜の状態を示す断面図である。
【図5】同、水処理設備の制御系のブロック図である。
【図6】同、好気嫌気兼用反応槽の好気運転時のフローチャートである。
【図7】同、好気嫌気兼用反応槽の好気運転時における散気装置の散気膜の状態を示す断面図である。
【図8】同、好気嫌気兼用反応槽の嫌気運転時のフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態における水処理設備の図である。
【図10】同、水処理設備の制御系のブロック図である。
【図11】同、水処理設備に備えられた好気嫌気兼用反応槽の嫌気運転時のフローチャートである。
【図12】従来の好気嫌気兼用反応槽の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態において、図1,図2に示すように、1は下水処理場において有機性の廃水2(被処理液の一例)を生物処理する水処理設備である。水処理設備1は生物処理槽3と給気設備4とを有している。生物処理槽3は互いに隣接するように一列に配置された複数の反応槽5〜8を有している。このうち、第1および第3の反応槽5,7は好気嫌気兼用の反応槽である。また、第2および第4の反応槽6,8は、好気専用の反応槽であり、第1および第3の反応槽5,7の次工程側に配置されている。
【0023】
廃水2は、二つに分岐した供給経路24の一方の経路24aから生物処理槽3の第1の反応槽5に供給され、また、必要に応じて、他方の経路24bから第3の反応槽7にも供給される。このようにすれば、第3の反応槽7に有機物を添加することができる。
【0024】
このうち、供給経路24の一方の経路24aから第1の反応槽5に供給された廃水2は上流側の第1の反応槽5から順次下流側の第4の反応槽8へ流れ、また、供給経路24の他方の経路24bから第3の反応槽7に供給された廃水2は第3の反応槽7から下流側の第4の反応槽8へ流れ、第4の反応槽8から処理水25として排出経路26に排出される。
【0025】
好気嫌気兼用である第1および第3の反応槽5,7はそれぞれ、槽本体11内にメンブレン式の散気装置12と攪拌装置13とを有している。散気装置12は、槽内の廃水2に対して散気を行うものであり、槽本体11内の底部に複数台設置されている。
【0026】
図3に示すように、散気装置12は、ベースプレート14の上面に散気膜15を装着し、所定位置に給気口16を設けたものであり、給気口16がベースプレート14と散気膜15との間に連通している。散気膜15は合成樹脂膜または合成ゴム膜等の膨縮自在な弾性膜に多数の小さな散気孔17を設けたものであり、散気膜15の周囲を固定部18によってベースプレート14に固定した構造をなす。
【0027】
図4(a)に示すように、運転停止時に散気膜15は水圧を受けてベースプレート14の上面に当接し、この際、散気孔17は閉じた状態となる。散気時にはベースプレート14と散気膜15との間に圧縮空気を供給する。このとき、図4(b)に示すように、圧縮空気の圧力を受けて散気膜15がベースプレート14の上面から離間して膨らみ、散気孔17が開いた状態となり、散気孔17を通して廃水2中へ空気の放出が行なわれる。
【0028】
図2に示すように、攪拌装置13は、攪拌翼20と、攪拌翼20を回転させる駆動装置21とを有している。
図1,図2に示すように、好気専用である第2および第4の反応槽6,8はそれぞれ、槽本体11内に複数のメンブレン式の散気装置12を有しているが、攪拌装置13を有していない。
【0029】
給気設備4は、各反応槽5〜8の散気装置12に空気を供給するものであり、送風機28(ブロア)と、送風機28に接続された主給気管29と、主給気管29から各反応槽5〜8に対応するように分岐した複数の分岐給気管30a〜30dと、各分岐給気管30a〜30dから分岐して各散気装置12の給気口16に接続される複数の接続給気管31a〜31cとを有している。
【0030】
主給気管29には電磁式の主送気遮断弁33が設けられ、各分岐給気管30a〜30dには第1〜第4の送気遮断弁34a〜34dが設けられている。尚、第1および第3の送気遮断弁34a,34cは、例えば、電動式、空気作動式、電磁式の弁である。また、主給気管29には圧抜管36が接続され、圧抜管36には自動の圧抜弁37が設けられている。
【0031】
図5に示すように、主送気遮断弁33と第1〜第4の送気遮断弁34a〜34dと圧抜弁37とは制御部38によって制御されており、制御部38は時間を計測するタイマー機能39を備えている。
【0032】
次に、上記構成における作用を説明する。
供給経路24の一方の経路24aから生物処理槽3の第1の反応槽5に供給された廃水2は上流側の第1の反応槽5から順次下流側の第4の反応槽8へ流れながら各反応槽5〜8内で生物処理され、また、必要に応じて供給経路24の他方の経路24bから第3の反応槽7に供給された廃水2は第3の反応槽7から下流側の第4の反応槽8へ流れながら各反応槽7,8内で生物処理され、第4の反応槽8から処理水25として排出経路26に排出される。
【0033】
この際、制御部38は、冬季において、第1〜第4の各反応槽5〜8に対し、以下のような好気運転を行う。すなわち、図1および図6のフローチャートに示すように、好気運転においては、送風機28を稼動し、圧抜弁37を閉じた状態で主送気遮断弁33と第1〜第4の送気遮断弁34a〜34dとを開くことにより(図6のS−1〜S−3参照)、第1〜第4の反応槽5〜8の各散気装置12から散気が行われる。
【0034】
このとき、送風機28から主給気管29と各分岐給気管30a〜30dと各接続給気管31a〜31cとを流れた圧縮空気は給気口16からベースプレート14と散気膜15との間に供給され、これにより、図7(a)に示すように、散気膜15が圧縮空気の圧力を受けてベースプレート14の上面から離間して膨張し、散気孔17が開いて、散気孔17を通して廃水2中へ空気の放出が行なわれる。
【0035】
上記のように第1〜第4の反応槽5〜8の各散気装置12から散気を行っている状態で24時間(所定の散気時間の一例)が経過すると(S−4参照)、主送気遮断弁33を閉じ(S−5参照)、圧抜弁37を開く(S−6参照)。
【0036】
これにより、主給気管29から第1〜第4の分岐給気管30a〜30dへの空気の流れが遮断されるため、第1〜第4の反応槽5〜8の各散気装置12からの散気が停止されるとともに、主給気管29内と各分岐給気管30a〜30d内と各接続給気管31a〜31c内との空気が圧抜管36から外部へ迅速且つ確実に排気される。
【0037】
これにより、図7(b)に示すように、散気膜15は、自らの収縮力と廃水2の水圧との作用により、短時間で素早く収縮してベースプレート14の上面に当接し、散気孔17が閉じた状態となる。この際、散気膜15上に堆積していた汚泥等の堆積物41が、散気膜15の収縮に追従できずに、散気膜15の表面から剥離する。
【0038】
そして、5分間(所定の送気遮断時間の一例)が経過すると(S−7参照)、圧抜弁37を閉じ(S−1参照)、主送気遮断弁33を開いて(S−2参照)、第1〜第4の反応槽5〜8の各散気装置12からの散気を再開させることを繰り返す。これにより、図7(c)に示すように、散気孔17から放出された空気が散気膜15と堆積物41との間に入り込み、堆積物41が散気孔17上から排除される。
【0039】
また、制御部38は、夏季において、第1および第3の反応槽5,7に対し、好気運転から以下のような嫌気運転に切換えることがある。すなわち、図8のフローチャートに示すように、嫌気運転においては、送風機28を稼動し、圧抜弁37を閉じ、主送気遮断弁33と第2および第4の送気遮断弁34b,34dを開いた状態で、第1および第3の送気遮断弁34a,34cを閉じる(S−1参照)。これにより、図4(a)に示すように、第1および第3の反応槽5,7の散気装置12からの散気が停止され、散気膜15がベースプレート14の上面に当接し、散気孔17が閉じる。この際、攪拌装置13を稼動させて、第1および第3の反応槽5,7内の廃水2を攪拌する。
【0040】
上記のように第1および第3の送気遮断弁34a,34cを閉じて第1および第3の反応槽5,7における散気を停止した散気停止状態で1週間(所定の嫌気運転時間の一例)が経過すると(S−2参照)、第1および第3の送気遮断弁34a,34cを開いて目詰防止工程を実施する(S−3参照)。すなわち、目詰防止工程において、図4(b)に示すように、散気膜15が膨張し、散気孔17が開いて、第1および第3の反応槽5,7の散気装置12から散気が行われる。これにより、散気孔17の上に堆積物41が溜まっていた場合、堆積物41が除去され、散気孔17の目詰まりが防止される。
【0041】
目詰防止工程を実施して5分間(所定の目詰防止時間の一例)が経過すると(S−4参照)、第1および第3の送気遮断弁34a,34cを閉じることにより(S−1参照)、第1および第3の反応槽5,7の散気装置12からの散気が停止される。
【0042】
上記のような目詰防止工程を嫌気運転中において1週間毎に間欠的に繰り返し行うことにより、図4(b)に示すように、第1および第3の反応槽5,7の散気装置12の散気孔17から空気が一時的に放出されるため、散気孔17の周辺の堆積物41が空気の放出により飛散して排除され、嫌気運転中における散気孔17の目詰まりを防止することができる。これにより、第1および第3の反応槽5,7において、嫌気運転から好気運転に切換えて散気を行う際、第1および第3の反応槽5,7の散気装置12の圧損が抑制され、散気量の不足が防止される。
【0043】
また、反応速度の速い夏季において、第1および第3の反応槽5,7を嫌気運転することにより、第2および第4の反応槽6,8において硝化を行い、第1および第3の反応槽5,7において脱窒を行うことができる。
【0044】
上記第1の実施の形態では、所定の散気時間の一例として24時間、所定の送気遮断時間の一例として5分間、所定の嫌気運転時間の一例として1週間、所定の目詰防止時間の一例として5分間という時間や期間を挙げたが、これらの数値は一例であって、限定されるものではない。
【0045】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1および第3の反応槽5,7に対して嫌気運転を行っている際、第1および第3の反応槽5,7の散気装置12の散気膜15上の堆積物41の堆積量を検出手段で検出し、検出した堆積量に応じて上記第1の実施の形態と同様な目詰防止工程が行われる。
【0046】
図9に示すように、検出手段の一例として一方および他方の流量計50,51が用いられており、一方の流量計50は第1の分岐給気管30aに設けられ、他方の流量計51は第3の分岐給気管30cに設けられている。目詰防止工程が開始され、第1の送気遮断弁34aが開かれた場合、一方の流量計50で測定される第1の分岐給気管30a内の空気の流量と第1の反応槽5内の散気膜15上の堆積物41の堆積量D(図4(a)参照)とはほぼ反比例し、堆積量Dが増加するほど測定される流量が減少する関係にある。また、他方の流量計51で測定される第3の分岐給気管30c内の空気の流量と第3の反応槽7内の散気膜15上の堆積物41の堆積量Dとの関係も同様である。
【0047】
したがって、一方および他方の流量計50,51で測定される流量に基いて、第1および第3の反応槽5,7内の散気膜15上の堆積物41の堆積量Dをそれぞれ検出することができる。尚、図10に示すように、制御部38は、流量計50,51で測定された流量に基いて、各弁33,34a〜34d,37を制御する。
【0048】
以下、上記構成における作用を説明する。
第1および第3の反応槽5,7に対して嫌気運転を行う場合、送風機28を稼動し、圧抜弁37を閉じ、主送気遮断弁33と第2および第4の送気遮断弁34b,34dを開いた状態で、図11のフローチャートに示すように、第1および第3の送気遮断弁34a,34cを閉じる(S−1)。これにより、第1および第3の反応槽5,7の散気装置12からの散気が停止される。この際、攪拌装置13を稼動させて、第1および第3の反応槽5,7内の廃水2を攪拌する。
【0049】
上記のように第1および第3の送気遮断弁34a,34cを閉じて第1および第3の反応槽5,7における散気を停止した散気停止状態で、例えば1日1回の頻度(所定の頻度の一例)で堆積量検出工程を実施する(S−2参照)。
【0050】
堆積量検出工程において、第1および第3の送気遮断弁34a,34cを開いて第1および第3の分岐給気管30a,30cにそれぞれ所定流量の空気を流し(S−3参照)、例えば1分間(所定の堆積量検出時間の一例)だけ第1および第3の反応槽5,7の散気装置12から散気を行い(S−4参照)、この時の第1および第3の分岐給気管30a,30c内を流れる空気の流量をそれぞれ一方および他方の流量計50,51で測定する。
【0051】
例えば、上記のようにして測定された第1の分岐給気管30a内の流量が第1の送気遮断弁34aの開度との関係において規定流量未満である場合(S−5参照)、第1の反応槽5内の散気膜15上の堆積物41の堆積量Dが規定堆積量以上であると判断され、第1の反応槽5において目詰防止工程を実施し(S−6参照)、第1の反応槽5の散気装置12から5分間散気を行う。
【0052】
また、測定された第1の分岐給気管30a内の流量が第1の送気遮断弁34aの開度との関係において規定流量以上である場合(S−7参照)、第1の反応槽5内の散気膜15上の堆積物41の堆積量Dが規定堆積量未満であると判断され、第1の反応槽5において目詰防止工程を実施しない(S−8参照)。
【0053】
同様に、測定された第3の分岐給気管30c内の流量が第3の送気遮断弁34cの開度との関係において規定流量未満である場合(S−5参照)、第3の反応槽7において目詰防止工程を実施し(S−6参照)、規定流量以上である場合(S−7参照)、第3の反応槽7において目詰防止工程を実施しない(S−8参照)。
【0054】
これにより、堆積物41の堆積量Dに応じて、最適なタイミングで目詰防止工程が過不足無く実施され、嫌気運転中における第1および第3の反応槽5,7の散気孔17の目詰まりを確実に且つ効率良く防止することができる。
【0055】
また、散気孔17が完全な目詰まりを起こさないために必要な目詰防止工程の頻度を把握することができ、嫌気運転中に一時的に好気条件になる回数を少なくすることができる。
【0056】
上記第2の実施の形態では、所定の頻度の一例として、1日1回の頻度で(すなわち1日毎に)堆積量検出工程を行なっているが、1日1回に限定されるものではなく、例えば、1日に複数回或は複数日に1回の頻度であってもよい。
【0057】
上記第2の実施の形態では、堆積量検出工程において、所定の堆積量検出時間の一例として、1分間だけ第1および第3の反応槽5,7の散気装置12から散気を行っているが、1分間に限定されるものではなく、所定の目詰防止時間(例えば5分間)よりも短時間であればよい。
【0058】
上記第2の実施の形態では、図9に示すように、検出手段の一例として流量計50,51を用いたが、第1および第3の分岐給気管30a,30c内の圧力と第1および第3の反応槽5,7内の散気膜15上の堆積物41の堆積量Dとはほぼ比例する関係にあるため、流量計50,51の代わりに、第1の分岐給気管30a内の圧力を測定する一方の圧力計と、第3の分岐給気管30c内の圧力を測定する他方の圧力計とを用いてもよい。この場合においても、嫌気運転中における第1および第3の反応槽5,7の散気孔17の目詰まりを確実に且つ効率良く防止することができ、散気孔17が完全な目詰まりを起こさないために必要な目詰防止工程の頻度を把握することができる。
【0059】
また、検出手段として、上記流量計50,51や圧力計以外のセンサーを用いてもよい。
上記各実施の形態では、図1,図9に示すように、好気嫌気兼用の反応槽5,7を2台(複数台)設けているが、1台又は3台以上設けてもよい。また、好気専用の反応槽6,8を2台(複数台)設けているが、1台又は3台以上設けてもよく、或は、設けなくてもよい。但し、処理水25の溶存酸素確保と未処理有機物を無くすために、好気嫌気兼用の反応槽5,7の次工程(後工程)側に好気専用の反応槽6,8を配置するのが望ましい。
【0060】
上記各実施の形態では、各反応槽5〜8内にそれぞれ散気装置12を3台ずつ設置しているが、3台以外の複数台又は1台ずつ設置してもよい。
上記各実施の形態では、冬季において好気運転を行い、夏季において嫌気運転を行っている態様について説明したが、季節に関わらず、好気運転と嫌気運転とを所定期間毎に切換えて行ってもよい。
【0061】
上記各実施の形態では、図3に示すように、四角形状の散気装置12を用いたが、四角形状に限定されるものではなく、例えば円形状であってもよい。また、散気装置12はベースプレート14の上面に散気膜15を装着した構造を有しているが、ベースプレート14の代りに、シート状の膜を設け、このシート状の膜とシート状の散気膜15とによって袋状に形成された散気装置を用いてもよい。また、管状に形成された筒形の散気膜15を有する散気装置であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 水処理設備
2 廃水(被処理液)
4 給気設備
5 第1の反応槽(好気嫌気兼用反応槽)
6 第2の反応槽(好気専用反応槽)
7 第3の反応槽(好気嫌気兼用反応槽)
8 第4の反応槽(好気専用反応槽)
12 散気装置
13 攪拌装置
15 散気膜
34a,34c 送気遮断弁
41 堆積物
50,51 流量計(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液に散気を行うメンブレン式の散気装置と被処理液を攪拌する攪拌装置とを備えた好気嫌気兼用反応槽の運転方法であって、
散気装置からの散気を停止し且つ攪拌装置で被処理液を攪拌する嫌気運転中において、散気装置から一時的に散気を行うことによって散気装置の散気孔の上の堆積物を除去する目詰防止工程を実施することを特徴とする好気嫌気兼用反応槽の運転方法。
【請求項2】
嫌気運転中において、所定の嫌気運転時間が経過する度に、目詰防止工程が間欠的に行われることを特徴とする請求項1記載の好気嫌気兼用反応槽の運転方法。
【請求項3】
嫌気運転中において、散気装置の散気膜上の堆積物の堆積量に応じて目詰防止工程が行われることを特徴とする請求項1記載の好気嫌気兼用反応槽の運転方法。
【請求項4】
散気膜上の堆積物の堆積量を検出手段で検出することを特徴とする請求項3記載の好気嫌気兼用反応槽の運転方法。
【請求項5】
嫌気運転と好気運転とが交互に行われ、
嫌気運転において、散気装置からの散気を停止するとともに攪拌装置で被処理液を攪拌し、
好気運転において、散気装置から散気を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の好気嫌気兼用反応槽の運転方法。
【請求項6】
被処理液を生物処理する水処理設備であって、
少なくとも1つの好気嫌気兼用反応槽と、好気嫌気兼用反応槽の次工程側に設けられる好気専用反応槽と、好気嫌気兼用反応槽内の被処理液に散気を行うメンブレン式の散気装置と、好気嫌気兼用反応槽内の被処理液を攪拌する攪拌装置と、好気専用反応槽内の被処理液に散気を行うメンブレン式の散気装置と、各散気装置に空気を供給する給気設備と、給気設備から好気嫌気兼用反応槽内の散気装置に供給される空気を遮断する送気遮断弁とが備えられていることを特徴とする水処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−27810(P2013−27810A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164883(P2011−164883)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】