説明

安全なデスモプレシン投与

ヒト患者において、均一な低用量のデスモプレシンを投与して安全な抗利尿を達成するための鼻腔内噴霧ディスペンサーのファミリーが開示される。本発明のディスペンサーは、夜間多尿、原発性夜間遺尿症、失禁、頻尿、尿崩症、あるいはデスモプレシン治療が有用である、または安全で一時的な尿生成抑制により有益な健康上の効果もしくは排尿調節の増加した利便性がもたらされ得る任意の疾患もしくは症状の治療に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2009年6月18日に出願され、その全開示が参照により援用される米国特許仮出願第61/268,954号に基づき、その優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、患者が低ナトリウム血症に苦しむ可能性を最小限にしながら、患者において排尿を延期するなどの抗利尿効果を誘導するためのデスモプレシンの鼻腔内投与用の組成物およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
デスモプレシン(1-デスアミノ-8-D-アルギニンバソプレシン、dDAVP(登録商標))は、バソプレシンのアナログである。デスモプレシンは、バソプレシンと比較して、低下した昇圧活性および増加した抗利尿活性を有し、バソプレシンとは異なり、血圧調節に有害な効果を及ぼさない。これにより、デスモプレシンは、血圧の有意な上昇を引き起こすことなく、抗利尿のために臨床的に使用できるようになる。デスモプレシンは酢酸塩として市販されており、一般に、原発性夜間遺尿症(PNE)および中枢性尿崩症に処方される。
【0004】
デスモプレシンは小ペプチドであり、生物学的利用能が乏しいことを特徴とする。頭部尿崩症などの重症な疾患の治療のために、デスモプレシンは、本質的に100%生物学的に利用可能である経路の静脈内または皮下で投与され得る。商品化された経口、舌下および鼻腔噴霧送達の用量形態を採用する場合、生物学的利用能は乏しい。経口用量(丸薬)は、1%よりもかなり低い生物学的利用能を有し、多くの要因に応じて薬物の広範囲の血中濃度を生じ、一般的に不確定の抗利尿作用持続時間を生じる。口腔内粘膜を介しての経皮的なデスモプレシンの投与も提案されている。鼻腔内投薬形態は、PNEの治療には承認されているが、現在、市販品(MinirinTM)は、この使用には安全でないと明らかにされている。
【0005】
低ナトリウム血症は、血漿中のナトリウム濃度が非常に低く、例えば約135mmol/L未満になる状態である。重度の低ナトリウム血症は、心臓不整脈、心臓麻痺、発作または拍動を引き起こし得る電解質異常を生じることがある。デスモプレシン療法を施された患者における低ナトリウム血症状態は、患者の腎臓の水チャネルが薬物により活性化され、患者が液体を飲んだ場合に起こる。しかしながら、これは、血液浸透圧の低下、ナトリウム濃度の低下、その結果の神経学的損傷を常に引き起こし得るわけではない。デスモプレシンの投薬計画を受けた患者には、薬物の投与後、長期間何も起こらずに突然低ナトリウム血症を起こすものがある。治療計画の非常に早期に該状態を発症するものもある。要するに、低ナトリウム血症の発症率は、ほとんど、薬物効果の持続中に液体の摂取を避けるだけで回避可能な、抗利尿デスモプレシン療法の確率論的な副作用であると見なされている。
【0006】
最近の低ナトリウム血症による死は、デスモプレシンの影響下で水の過剰摂取が原因となっている。これらの経験の結果として、米国食品医薬品局は、最近、医師に、デスモプレシンの使用を縮小すべきであること、原発性夜間遺尿症(PNE)などの特定の状態にはもはや適切であるとはいえず、該薬物が「ブラックボックス」を有することを警告した。最近の警告では、「原発性夜間遺尿症(PNE)のために[酢酸デスモプレシン]の鼻腔内製剤で治療された小児を含む特定の患者は、発作または死を引き起こし得る重度の低ナトリウム血症を発症する危険がある」ことが示された。
【0007】
現在、PNEの治療のために鼻腔内投与されるデスモプレシンについて承認された表示には、製剤における生物学的利用能が3〜5%であることが示され、1日あたり10〜40マイクログラムを投与することが推奨されている。PNE用デスモプレシンの典型的な鼻腔内用量(各鼻孔中20μg、10μg)で達成される平均の最大血漿/血清濃度(Cmax)は、6〜10倍の範囲で、3〜5%の生物学的利用能に基づいて少なくとも約20〜30pg/mlである。デスモプレシンの既存の製剤は、これらの臨床適応に使用された場合には多くの患者に適切であることが明らかにされているが、変化しやすい効果およびしばしば起こる低ナトリウム血症の発現は、上述の変動性と関連する課題となり続けている。
【0008】
米国特許第7,405,203号には、抗利尿治療方法およびデスモプレシン投薬形態が開示されている。該特許文献には、ヒトにおけるデスモプレシンの抗利尿効果の活性化のための閾値血漿濃度は非常に低く、約1.0pg/ml未満であることが開示され、部分的にこの観察に基づいて、確率論的で予測できない低ナトリウム血症の発症を実質的に回避し得る新規の低用量デスモプレシン投薬形態の使用が提案され、該投薬形態の作製および使用方法が教示される。このことは、該薬物の非常に低い用量、閾値(例えば、約0.5pg/ml)をほんのわずかに超える約1.0〜約10、ある患者においてはおそらくは血液1mlあたり15pg程度の薬物であるが、好ましくは約10pg/ml以下に血中のデスモプレシン濃度を上昇させるには充分な用量で投与されることにより達成される。この低濃度は、制限されて制御された持続時間の有効な抗利尿効果を誘導するには充分であることが発見された。したがって、健常人において公知の約90+分のデスモプレシンの半減期と組み合わせた該低血中濃度は、薬物活性の「オフスイッチ」を制御するように機能して、それにより抗利尿の持続時間が制限され得る。これは、薬物が生理学的に活性である間隔中に患者が充分な液体を飲むと、患者のホメオスタシス機構が押しつぶされ、血中ナトリウム濃度が危険なレベルまで下がる可能性を非常に有意に低減する。
【0009】
例えば、夜間多尿(夜中に排尿のために目覚める)の治療において、例えば5〜7pg/mlの血中濃度を生じる低用量を就寝時に投与し得る。約1時間半よりも短い間に、デスモプレシン濃度はその最大の約7pg/mlになり、尿生成が抑制される。2時間(1半減期)後、デスモプレシン濃度は約3.5pg/mlに低下し、3.5時間(第2半減期)で、濃度は約1.75になり、5時間で約0.85、および6時間で濃度は活性化閾値(多くの患者において約0.5pg/ml)より低くなり、患者は正常に尿を生成する。患者が11:00 PMに就寝する場合、最初の6時間の間は、患者は尿をほとんどまたは全く生成せず、患者の膀胱は本質的に空になり、したがって患者の排尿の衝動は抑制される。5 AMごろまでに、尿の生成は回復し、1時間または2時間のうちに患者は排尿のために目覚める。別の例として、鼻腔内でまたは経皮もしくは皮内パッチにより投与される小用量、すなわち2〜3pg/mlは、正常な尿生成が回復する前の約3時間の間、安全な抗利尿を誘導し得る。
【0010】
鼻腔内投与は魅力的な投薬経路であり、'203号特許に開示される所望の低用量範囲内またはその付近で、デスモプレシン血中濃度を確実に生じる鼻腔内投薬形態を調製し得る場合、低ナトリウム血症の副作用の発生は低減または排除され、該薬物は深刻で厄介な状態の管理のためだけでなく、便利なものとして安全に使用され得る。実用的でありかつ安全な抗利尿を再現可能に誘導する低用量鼻腔内デスモプレシン製剤を製造することは当業者に明白であるが、理想的な鼻腔内用量形態は、1回目の投与から次の投与まで、およびバッチからバッチまで、比較的狭い標的血中濃度範囲内の血中濃度を一定して生じさせる。より長期間の抗利尿を引き起こして低ナトリウム血症を潜在的に発症させ得る濫用(複数回投与)の機会を最小限にするために、かかる製品を調製することも望ましい。ヒトの鼻腔粘膜の変化しやすさ、鼻腔粘膜の透過性、1用量あたりの少量の活性ペプチド、および鼻腔内薬物製品の自己投与に伴う多くの物理的要因のために、製品の生物学的利用能は、使用者毎に、および使用毎に必ず変化する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、標的患者集団のメンバーにおいて、該集団のメンバーが低ナトリウム血症を発症するリスクを低減しつつ、抗利尿効果を誘導するための、便利な、鼻腔内デスモプレシン安全ディスペンサーを提供する。該ディスペンサーは、複数の薬物用量を構成するのに充分な量のデスモプレシンの製剤および鼻腔膜透過促進剤を含む組成物をその中に配置したリザーバを含む。該リザーバは流出口と連絡しており、該リザーバにはポンプ、好ましくは使い捨てポンプ、および好ましくは圧搾ボトル作動ディスペンサーなどの手動で作動され得るもの、またはガラスボトル上に装着されたプランジャーポンプが適合される。該ポンプにより、スプレーの形態で、リザーバから流出口を通って患者の1つまたは複数の鼻孔に複数の規定用量を連続して分配させ、鼻腔内粘膜または他の表面上に一定の大きさの用量を配置させることが可能になる。該ポンプは、デスモプレシンの用量を放出した後、細菌汚染された外気がディスペンサーに侵入することを防ぐシールを含み得る。
【0012】
それぞれのスプレーは、好ましくはD10について20μmからD90について約300μmの範囲の平均体積分布を有する多数の液滴を含む。これは、液滴の約10%の直径が約20μmよりも小さく、90%の直径が300μmよりも小さいことを意味する。それぞれの噴霧用量は、好ましくは、患者の体重1kgあたり0.5ngのデスモプレシンから患者の体重1kgあたり75ngのデスモプレシンを含むような重量およびデスモプレシン濃度である。例えば、噴霧用量は、主に患者の体格および抗利尿効果の所望の持続時間に応じて、約0.05μg〜5.0μgのデスモプレシンを含み得る。スプレーは、約5%より高いデスモプレシン生物学的利用能を特徴とし、すなわち組成物中の約5%〜25%の活性物が実際に患者の血流に侵入して薬物効果に寄与し、残りは典型的に消化により分解される。一般的に、スプレーの生物学的利用能が高くなるほど、鼻腔内に送達されることが必要なスプレーあたりのデスモプレシンは少なくなり、逆も同じであり、目的は、患者集団のメンバーにおいて、より一定して標的デスモプレシン最大血中濃度(Cmax)を達成することである。
【0013】
噴霧用量の液滴は、ディスペンサーのノズルから噴出される際に柱状噴出(plume)を形成する。液滴は直線の流れでは噴出されず、むしろ一般に円錐形の柱状噴出を形成する。さらに、液滴は、柱状噴出中で均一には分散されないが、進行(travel)は主に円錐の外辺に近づき、円錐中の単位体積あたりの液滴の数は、円錐の中心軸の通常の方向に(in a direction normal to)増加する。このように、円錐状体積の頂点(噴霧デバイスのノズル)から3センチメートル程の距離にある円錐状体積の軸方向の断面は、好ましくは、中心に液滴がほとんどなく外辺に沿って実質的な濃度を有する液滴の円環板を示す。ほとんどの例において、柱状噴出の断面は、実質的に環状であるが、当然ながらある程度の楕円率は許容され得る。液滴の多くが円錐状体積の外辺のより近位に進行するデスモプレシン噴霧柱状噴出は、鼻腔管腔内粘膜表面との接触およびより予測可能な生物学的利用能を促進する。
【0014】
本発明によると、噴霧ディスペンサーの性能とそれが含む組成物の組合せにより、噴霧のそれぞれの用量が、キログラムあたりを基準とした患者の血流中に生じるデスモプレシンの濃度を比較的狭い範囲に制限するために効果的になり、それにより比較的一定な抗利尿の時間制限された持続時間が達成される。換言すると、それぞれの連続的な噴霧用量は、鼻腔内粘膜を通過する薬物輸送により、患者中で比較的に一定なデスモプレシンのCmaxを確立する。同じディスペンサーから同じ人物への反復投与についての血流への薬物の送達量は、好ましくは100%以下、好ましくは50%未満で異なるはずである。ディスペンサーの変動係数は、同じ標的Cmaxを達成するように設計されたデスモプレシンの連続皮下投与により生じるCmaxの変動係数と同様である。好ましくは、鼻腔内送達によるそれぞれの連続噴霧用量は、患者において、同じ標的Cmaxを達成するように設計されたデスモプレシンの皮下投与により生じるCmaxの変動係数の約50%以内、より好ましくは約25%以内の変動係数を有するデスモプレシンのCmaxを確立するのに充分である。
【0015】
この生物学的利用能の一定性は、本発明のディスペンサーの別の性能にも反映され、すなわち、ディスペンサーは、鼻腔内粘膜を通過する薬物輸送により、患者において、患者の鼻孔(1つまたは複数)に分配されるデスモプレシンの質量に実質的に正比例するデスモプレシン血中濃度の送達を確立するように働く。これにより、患者が所望する抗利尿の長さの自己滴定が可能になる。一般に、デスモプレシンCmaxは、約0.5pg/ml〜約10.0pg/mlの範囲のCmaxで、鼻腔投与されたデスモプレシンの量に正比例する。
【0016】
標的Cmaxの値は、分配される組成物を設計して誘導される抗利尿間隔の持続時間に応じて変化し得る。例えば、7〜8時間間隔の尿生成抑制のために設計された製品は、15+/-3pg/ml以下のCmaxを送達するように設計され得る。したがって、例示により、小児用に設計された7時間製品は、20%の生物学的利用能および噴霧あたり0.75μgまたは750ngのデスモプレシン負荷を有し得る。これは、約150ngの薬物が患者の血流に到達すること、33kg(約75lb.)の小児が約15pg/mlの標的Cmaxを達成することを意味する。同じ製品の別の態様は、10%の生物学的利用能および噴霧あたり1.5μgまたは1500ngのデスモプレシン負荷を有し得、再度、患者の血流中に約150ngの薬物および約15pg/mlの標的Cmaxを生じる。別の例示的製品は、3〜4時間の尿遮断のために設計され得、約3pg/ml以下のCmaxを送達し得る。例えば、平均60kg(約130lb.)の女性による使用のために設計されたかかる製品は、25%生物学的に利用可能であり、噴霧あたり250ngデスモプレシン負荷を含むか、または15%生物学的に利用可能であり、350ng負荷を含む。両方の場合において、生物学的に利用可能な用量は、約50ngデスモプレシンであり、Cmaxは約3pg/mlである。
【0017】
代替的に、パッケージ挿入物または医師の指示にしたがって使用した場合、例えば噴霧あたり200ngまたは500ngを送達する単一のディスペンサーは、単に投与事象あたりに送達される噴霧の数を変えるだけで、例えば同じ人物において異なる抗利尿の持続時間、または75kgの小児もしくは150kgの成人において同じ抗利尿の持続時間を達成するように働き得る。典型的に、本発明の医薬組成物の投与の約20分後、治療された個体における1分当たりの平均尿産出量は約4ml/分未満、好ましくは約1ml/分未満に低下し、所望の時間例えば180分、240分、300分、360分または420分の間この低い範囲のままである。投与の約20分後、平均尿浸透圧は、約300mOsmol/kgより高くなり、180分、240分、300分、360分、または420分までの範囲の時間、高濃度で持続する。
【0018】
本発明の投薬形態の主なかつ重要な特性は、該投薬形態が比較的狭い時間および用量の範囲で、噴霧あたり最大の血中濃度を一定に送達し、そのため予想される抗利尿効果よりも長い抗利尿効果を生じる大用量の偶発的な送達および低ナトリウム血症の誘導の可能性を回避または最小化することである。本明細書で使用する場合、一定送達は、非常に低い用量のデスモプレシンを皮下注入により送達する場合に観察される範囲と同様の範囲内、またはおそらくは少し広い範囲内で、反復可能であることを意味するために用いられるべきである。かかる一定性は、一般に、より高い生物学的利用能を有する製剤を開発することでより容易に達成され、したがって少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%および好ましくはさらに高い生物学的利用能が好ましい。より高い生物学的利用能は、調製技術を開発すること、特に透過促進剤を使用すること、および本明細書に開示される噴霧組成物の化学的開発により達成される。
【0019】
一態様において、該ディスペンサーは、特定の用量を超える、例えば第1の用量の分配後所定の時間間隔で約10〜12pg/mlを超える血中濃度を生じるのに充分な用量を超える第2のデスモプレシン噴霧または連続噴霧の分配を阻害するための手段をさらに含み得る。これは、例えばその開示が参照により本明細書に援用される米国特許第7,335,186号に開示されるような噴霧機構の設計の結果として、受動的に達成され得る。代替的に、所定の間隔、例えば8時間またはおよそ6〜24時間の経過まで第2の分配を妨げるように設計されたそれ自体公知の機構と共に、電池により動力供給される能動タイマー(active timer)、機械式バネ、またはディスペンサー内の圧縮ガスが含まれ得る。かかる機構は、製品の濫用を防ぎ、さらに患者が非常に長い時間、不都合にまたは意図的に抗利尿を自己誘導し得る機会を最小限にし得る。
【0020】
種々の態様において、該ディスペンサーは、標的患者集団において、6時間未満、2〜4時間、または4〜7時間抗利尿を誘導するように調製され得る。約8時間より長く抗利尿状態を維持することは推奨されない。例えば、標的患者集団は、小児、体重35kg未満の小児、体重35〜50kgの小児、成人女性、体重50〜75kgの女性、成人男性、体重70〜85kgの男性、または体重が85kgより重い男性であり得る。
【0021】
デスモプレシン安全ディスペンサーを提供することに加えて、本発明はまた、デスモプレシンを鼻腔管腔内粘膜表面に送達するための噴霧柱状噴出を提供する。それぞれの柱状噴出は、柱状噴出の形態の、好ましくは定量噴霧デバイスのノズルから一定間隔の間射出される鼻腔内デスモプレシン用量を含む組成物である。該柱状噴出は、全体として中心軸および噴霧デバイスのノズルに頂点を有する円錐体積を規定する一定体積の移動液滴を含み、該円錐体積の頂点から約3センチメートル以下の表面での軸方向の断面は、好ましくは液滴の円環板を示す。円錐体積内の液滴密度は、軸の通常の方向に(in a direction normal to)増加する。時間間隔にわたり柱状噴出を形成する液滴は、任意の特定の時点で全用量が柱状噴出中に存在する必要はないが、最終的に約0.05μg〜5.0μgのデスモプレシンを含む。好ましくは、柱状噴出の液滴は、水中油エマルジョンを形成し、1つ以上の透過促進剤を含み得、任意に保存剤を含まない。
【0022】
製剤における使用のための現在の好ましい透過促進剤は、Exeter、New HampshireのCPEX Pharmaceuticals (以前はBentley)から市販される「Hsieh enhancers」(U.S. 5,023,252参照)である。本発明の製造の物品に有用なHsieh enhancersの分類にある好ましいものは、U. S. 7,112,561およびU.S. 7,112,561に開示されるものであり、U. S. 7,244,703に開示されるもの、例えばCPE-215の商標で公知であるシクロペンタデカノリドが現在最も好ましい。多くの他の促進剤が使用されてもよい。
【0023】
デスモプレシン柱状噴出は、所望のピークデスモプレシン血中濃度(15+/-3pg/ml、10+/-3pg/ml、または7+/-3pg/mlと同じぐらいのピーク血中濃度など)を生じるのに充分なデスモプレシンを患者の血流に経粘膜送達するように調製され得る。(ピークデスモプレシン血中濃度が達成される)標的患者集団としては、例えば体重35kgの小児、体重70kgの成人、体重35kg未満の小児、体重35〜50kgの小児、成人女性、成人男性、体重50〜75kgの女性、体重70〜85kgの男性および体重が85kgより重い男性が挙げられる。標的集団に応じて、例示的な用量範囲(すなわち時間の間柱状噴出に放出されるデスモプレシンの総量)は、約0.05μg〜5.0μgのデスモプレシン、約0.2μg〜1.0μgのデスモプレシン、約0.5μgのデスモプレシン、または約0.75μgのデスモプレシンを含み得る。
【0024】
本発明はさらに、患者に上述のデスモプレシン柱状噴出を鼻腔内投与することにより、該患者において抗利尿効果を誘導する方法を提供する。これらの方法により、安全で効果的なピークデスモプレシン濃度を患者の血流中で達成するためのデスモプレシンの確実な投与が可能になる。患者および抗利尿の所望の持続時間に応じて、標的ピークデスモプレシン濃度は、例えば血液中15+/-3pg/ml、10+/-3pg/mlまたは7+/-3pg/mlのデスモプレシンを含み得る。所望の場合、本発明の方法は、比較的に短い期間、例えば6時間未満もしくは2〜4時間の期間、または約4〜7時間などのより長い期間の抗利尿を達成するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、鼻腔の模式図を示す。
【図2】図2は、本発明による使用のための鼻腔噴霧デバイスの模式図を示す。図2Aは、作動前の鼻腔噴霧デバイスを示す。図2Bは、デバイスの作動後の鼻腔噴霧デバイスによる柱状噴出の形成を示す。
【図3】図3は、形成段階、安定段階および崩壊段階を含む、従来の噴霧柱状噴出の形成の段階の一連の写真である。
【図4】図4は、形成段階、安定段階および崩壊段階を含む、本発明の噴霧柱状噴出の形成の段階の一連の写真である。
【図5】図5は、噴霧パターンの模式図である。
【図6】図6は、食塩水溶液の4種類の噴霧パターンを示す。
【図7】図7は、デスモプレシンプラシーボの4種類の噴霧パターンを示す。
【図8】図8は、本発明の2000ngの鼻腔内投与デスモプレシン組成物で治療した男性および女性についての平均尿産出対時間(600分)のグラフである。
【図9】図9は、本発明の同一の組成物で治療した男性および女性についての平均尿浸透圧対時間のグラフである。
【図10】図10は、デスモプレシンを含む噴霧デバイスの6種類の作動のそれぞれにおいて生じた噴霧パターンを示す。図10A〜10Cは、3cmの高さでの噴霧パターンを示し、図10D〜10Fは、6cmの高さでの噴霧パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
説明
用語生物学的利用能は、全身循環に到達する薬物の投与用量の画分を説明するために使用される。規定により、医薬が静脈投与された場合、その生物学的利用能は100%である。しかし、他の経路、例えば鼻腔内で投与された場合は、不完全な吸収および他の要因のために、生物学的利用能は低下する。このように、生物学的利用能は、全身循環に到達し、作用部位で利用可能である治療活性薬物の程度の基準である。問題になっている薬物の化学的および物理的特性ならびにその投与経路に応じて、生物学的利用能は大きく異なる。本発明の鼻腔内投与される組成物の量は、噴霧ノズルを出て鼻孔(1つまたは複数)に入る量のことをいう。本発明の送達される組成物の量は、実際に血流に到達する、すなわち生物学的に利用可能となる量のことをいう。タンパク質およびペプチドは比較的大きく、もろい分子であり、その活性は一般にその三次構造に依存する。非経口以外で投与されるタンパク質およびペプチドの治療薬の生物学的利用能は、乏しいことが知られ、変動性である。
【0027】
本明細書で使用される場合、変動係数Cvは、同じ薬物用量形態を同じ様式で、多くの投与を経て同じヒトに、または多くの異なるヒトに投与した場合に活性薬物が血流に入る量および速度の変化の基準である、パーセントで表される数のことをいう。変動係数は、Cmax、Tmax(Cmaxが達成される時間)、またはAUC(曲線下面積)について測定され得る。変動係数はしばしば、一組の測定値の標準偏差対測定値の平均の比で表される。一般に、任意の薬物の静脈内または皮下投与は、経皮または経口投与と比較して、本質的に小さいCvを有する。デスモプレシンの鼻腔内投与は、乏しい生物学的利用能だけでなく、高いCvも特徴とする。したがって、市販のMinirin(登録商標)鼻腔噴霧製品は、1回の鼻腔噴霧用量あたりに達成されるCmaxを基準にして、皮下注入の2〜2.5倍高いCvを有する。したがって、見かけ上同じ経路で同じ薬物を使用した同じ体重の2人の患者は、Cmaxを使用して測定した場合、例えば6〜10倍の範囲を有し得る大きく異なるデスモプレシンの血中濃度を生じ得る。
【0028】
変動係数は、測定された血中濃度から計算される。したがって、生データを含む測定値を作成するために使用される分析技術の不正確さは、Cvに起因する。固有の大きなエラーバーを有するアッセイは、小さなエラーバーを有するアッセイよりも大きな測定Cvを生じる。測定値の標準偏差が大きいアッセイのダイナミックレンジの低いほうの末端で測定値を作成した場合、該データに基づいて計算したCvは、同じ方法で投与され、同じアッセイを使用して測定された同じ薬物の大きな用量のCvよりも大きくなる。
【0029】
用語「透過促進剤」は、本明細書で使用する場合、デスモプレシンなどの活性ペプチドと一緒に調製された場合に、粘膜表面を通過し、血流に侵入する鼻腔粘膜表面に適用されたペプチドの画分を増加させる、すなわち生物学的利用能を増加させる効果を有する物質の1つまたは混合物をいう。多くのかかる透過促進剤は、本明細書に記載されるように公知である。一般に、鼻腔内投与用に設計されたペプチド薬物製剤に透過促進剤を添加することで、循環に到達するペプチドの画分が、少なくとも約25%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも約100%増加する。したがって、組成物1は促進剤を含まず、組成物2はさらなる物質を含む以外は、同じ組成物の2つの鼻腔内製剤を考える。組成物1を投与して50pg/mlの血中濃度を生じる場合、組成物2が少なくとも62.5pg/ml(25%改善)の血中濃度を生じるならば、該物質は、促進剤の規定に該当する。好ましい透過促進剤は、約100pg/ml(100%改善)の血中濃度を生じる。
【0030】
用語「長軸」は、本明細書で使用する場合、適合された噴霧パターン中に描かれ得、基本単位(mm)で該パターンを交差する最長の弦のことをいう。
【0031】
用語「短軸」は、本明細書で使用する場合、適合された噴霧パターン中に描かれ得、基本単位(mm)で該パターンを交差する最小の弦のことをいう。
【0032】
用語「楕円率(ellipticity)」は、本明細書で使用する場合、長軸と短軸の比のことをいう。
【0033】
用語「D10」は、本明細書で使用する場合、試料の全液体体積の10%がより小さい直径(μm)の液滴で構成されるための液滴の直径のことをいう。
【0034】
用語「D50」は、本明細書で使用する場合、試料の全液体体積の50%がより小さい直径(μm)の液滴で構成されるための液滴の直径のことをいい、質量メジアン直径としても公知である。
【0035】
用語「D90」は、本明細書で使用する場合、試料の全液体体積の90%がより小さい直径(μm)の液滴で構成されるための液滴の直径のことをいう。
【0036】
用語「範囲(span)」は、本明細書で使用する場合、測定値の分布の幅のことをいい、小さいほうの値は狭いほうの分布に相関する。
【0037】
用語「% RSD」は、本明細書で使用する場合、パーセント相対標準偏差のことをいい、標準偏差を一連の平均で割り、100をかけたもので、% CVとしても公知である。
【0038】
本明細書において、本発明は、より一定かつより低いデスモプレシン用量を、所定の時間制限抗利尿効果を誘導するように、鼻腔粘膜表面を介して循環に送達することを特徴とする、デスモプレシン鼻腔噴霧デバイスの改善を提供する。鼻腔噴霧薬物製品は、デスモプレシンおよびペプチド薬物の鼻腔粘膜の透過を促進するように機能する粘膜透過促進剤を含む。該活性物は、典型的に賦形剤(例えば、保存剤、粘度調整剤、乳化剤、緩衝化剤等)の溶液または混合物に、一定用量を含む噴霧の制御量を特異的に1つまたは両方の鼻孔に送達する加圧ディスペンサーで溶解または懸濁されるが、好ましくは非加圧ディスペンサーで溶解または懸濁される。典型的に、用量は、典型的に指または手で作動される噴霧ポンプにより定量される。鼻腔スプレーは、多数回の噴霧用量、例えば10〜100以上の放出用に設計される。鼻腔スプレーは、所定用量を各鼻孔に複数回の噴霧、例えば2回噴霧、例えば1回で、もしくは単回噴霧として投与するように、または患者の体重、性別もしくは成熟度にしたがって用量を変化させるように、あるいは患者により抗利尿の持続時間の変化を可能にするように設計され得る。
【0039】
安全噴霧デバイスの設計の目的は、一定の低濃度のデスモプレシン(「標的濃度」)を血流に、例えば一般に15+/-3pg/ml、好ましくは10pg/ml未満の最大血中濃度を生じるのに充分な量以下で送達する可能な程度を確実にすることである。多くの場合、デバイスは、5+/-3pg/ml以下の血中濃度を達成する薬物の量を送達する。
【0040】
この目的を達成することの技術的な困難さは、鼻孔内投与されたデスモプレシンなどのペプチドの低い可変性の生物学的利用能、非常に少量の活性物が投与されること、および低い血中濃度にある。一定の生物学的利用能を促進するために、噴霧あたりの活性薬物成分の濃度および噴霧あたりの活性物の質量(量または負荷)は、鼻経路(passage)に侵入する活性物の量を正確に制御するように制御される必要がある。これには、薬物の調製および公知の方法を使用したポンプスプレーの設計パラメーターの選択が含まれる。しかしながら、鼻腔粘膜に到達する活性物の量は、他の要因、スプレーの物理的組成、すなわち注入される全量、粘度などの流体の性質、噴霧の時間、およびその液滴の大きさの分布に依存し得る。これらの性質も、製剤の化学的性質および噴霧ノズル特性により制御される。これらに重ねて、生物学的利用能を決定する要因は、粘膜に到達する活性物の画分の一部のみがこの膜を成功裡に通過し、血流に侵入するということである。吸収されなかった薬物は飲み込まれるか、そうでなければ分解されて生物学的に利用可能ではなくなる。ペプチドの経粘膜経路は、該製剤に、透過促進剤として作用する特定の物質を含ませることにより促進される。当然ながら、一定でない噴霧過程および患者の個々の鼻腔解剖学も一役を担うが、これらの要因のための薬物取り込みの不一定さは、明確で、明らかで、患者によって追従される使用のための医師および/または梱包指示書によっては制御できない。
【0041】
本出願人は、本明細書に開示されるようにこれらの設計原理を組み合わせて利用して鼻腔内噴霧ディスペンサーを作製することで、デスモプレシンを安全に投与することが可能であることを発見した。
【0042】
例えば成人の夜間多尿(睡眠を妨げる夜間の排尿)を治療するため、小児の夜尿(原発性夜間遺尿症)を治療するため、または失禁に苦しむ人物の夜尿を予防するために設計された製品は、理想的には、就寝時の排尿後に患者に摂取される。理想的には、該用量は少なくとも5時間、理想的には6〜6時間半、可能ならば8時間尿生成を抑制する。3または4時間の車での旅行などのために日中に尿生成を数時間中断させるように設計された製品は、尿生成を2〜3時間中断させるはずである。抗利尿間隔の終わりに、健常な生体は、迅速にホメオスタシスを求め、尿が正常に生成される。したがって、排尿の衝動は、1時間後または数時間後に戻る。本明細書に記載される製品は、当然ながら、好ましくは医師の管理下で、中枢性尿崩症などのより重篤な疾患のために使用され得る。
【0043】
所定の用量を摂取した任意の人物において達成される抗利尿の持続時間が一定の時間間隔変動性を有するように、当然ながら、上記の全ての時間はおおよそである。しかしながら、本発明の実施の目的および効果は、可能な範囲で、夜間持続するように設計された用量が実際にはわずか3時間の抗利尿しか生じず、早期に目覚めるか、不本意に排尿することがないことを確実にする。より重要なことに、本発明の実施の効果は、抗利尿の間隔が、予期せず長く、例えば10または12時間持続し、目覚めた患者が液体を飲み、低ナトリウム血症を発症し得る可能性を最小限にすることである。
【0044】
尿生成抑制は、患者のデスモプレシン血中濃度が近位腎細管中の水チャネルの活性化閾値を超えた際に開始し、該濃度が閾値未満に下がると終了する。任意の個体において水チャネルを活性化するのに充分な正確な濃度は異なり、正確に測定することが困難なほどに低いが、米国特許第7,405,203号に開示されるように、実験により、該閾値は、1.0pg/mlより少し低いかまたは約0.5pg/mlであり、しばしば少し低いことがあると示唆される。
【0045】
表1は本発明の種々の態様の特定の重要な特徴を示す。この表を参照すると、用量パラメーター、最大予測血中濃度の範囲、種々の患者集団のメンバーの平均体重、および各集団についての抗利尿の予測持続時間が開示される。特許請求の範囲において他に示されない限り、列挙される全ての用量形態は例示的なだけであり、限定と見なされるべきでない。全てのこれらの製品は、1噴霧が1用量に等しいことを確実にする。当然ながら、同じ用量を達成するために多数の噴霧を使用することができ、一定の取り込みが促進される場合これは望ましくあり得る。
【0046】
最初の2つの製品は、成人男性における夜間多尿の治療のための抗利尿を達成する代替的な方法を例示する。両方が約5〜8pg/mlのCmaxを生じるが、第一の製品は10%の生物学的利用能を有して噴霧あたり1.0〜1.6μgのデスモプレシンを送達し、一方第二の製品は約20%の生物学的利用能を有し、そのため噴霧あたりの同等の活性物として約半分だけを必要とする。両方は、約100〜160ngの薬物を患者の血流に送達し、この量は循環して所望の血中濃度(Cmax)を生じる。例示的な製品3は、小児における遺尿を治療するように設計される。小児が35kgの平均体重を有する場合は、彼または彼女は300〜400ngの鼻腔内用量で15%の生物学的利用能により5〜7時間の抗利尿を経験する。これは、45〜70ngのデスモプレシンを小児の循環に送達し、所望の5〜8pg/mlの濃度を生じ、閾値が5〜7時間経過した後正常なクリアランス機構により薬物濃度が低減されて閾値濃度未満に下がる。例示的な製品4は、例えば平均体重60kgの女性において、短い尿抑制の持続を誘導するように設計される。この場合、間隔は、望ましくは短く、例えば約3時間である。これは、1〜2pg/mlのCmaxを生じる用量の鼻腔内投与により達成され得る。この血中濃度は、15%の生物学的利用能を特徴とする100〜200ngの負荷を送達するディスペンサーの適切な使用により、確実に達成され得る。製品5および6は、60kgの女性または200kgの男性において、夜間多尿の治療または尿生成の一時的抑制を含む他の治療のために設計されたさらなる他の製品を示す。
【0047】

【0048】
ここで安全ディスペンサーの設計の詳細を再度見ると、ガラスボトルおよびプラスチック圧搾ボトルなどの適切な薬物リザーバが広く利用可能であり、薬物分配に使用される。好ましくは、リザーバおよびスプレーポンプは使い捨てである。プラスチック部分および金属バネを含む指作動型ポンプスプレーは、例えばPfeiffer of America, Inc、Princeton、New Jerseyから市販される。これらは液滴サイズ分布を調節して種々の詳細を満たすための設計に利用可能である。本発明の種々の態様において、噴霧あたりの体積は、例えば50μl〜150μlで変化し得るが、鼻腔内製品における使用のために、該ポンプは、典型的に狭い噴霧パターンで100μlの負荷を送達する。多くの種々のかかる定量薬物ポンプ設計を本発明の使用に適合し得る。非限定的な例が米国特許第4,860,738号、4,944,429号、6,321,942号、6,446,839号、6,705,493号、6,708,846号、6,772,915号および7,182,226号に開示される。
【0049】
該ポンプにより送達される噴霧パターンは、送達される薬物の生物学的利用可能用量の再現性に、実質的に影響し得る。図1に示すように、鼻孔は、頭部の前面に向かって大きくなり、後方に伸びる鼻腔に広がる。鼻腔は、鼻気道を前から後ろに分割する一連の突起である「甲介」を含む。これらの甲介は、粘膜で覆われ、一緒になって鼻腔内の粘膜の大部分を構成する。鼻腔のかなり遠くの端は咽頭の先端(「鼻咽頭」)であり、これは食道の方に伸びる。
【0050】
鼻腔スプレーを投与すると、鼻腔の粘膜上、例えば甲介上に堆積した液滴は、実質的かつ確実な生物学的利用能を有するデスモプレシンの経粘膜送達を可能にする。対照的に、咽頭に達した液滴は、粘膜の流れによりかなり迅速に除去され得、最終的に消化器系に到達し、そこで投与されたデスモプレシンは本質的に消失する。流れの中かそうでなければ中心軸に沿った液滴の鼻腔内送達は、最も良好に回避され、生物学的利用能の実質的な変動性は、投与の角度により液滴が甲介に誘導されるかまたは咽頭に誘導されるかに依存して、起こり得る。対照的に、本発明は、比較的少ない液滴が中心軸に沿って移動する(travel)噴霧柱状噴出を生じる。結果的に、分配されたデスモプレシンは主に鼻腔の粘膜上に堆積し、吸収変動性が最小限になる。咽頭を通るデスモプレシン製剤の通過を最小限にすることによるさらなる利点は、デスモプレシン製剤に伴う不快な味または後味が最小限になることである。
【0051】
都合のよい噴霧パターンに加えて、スプレーのデバイスから発射する際の発散角度、スプレーの断面の楕円率および均一性、ならびにスプレーを発生させる時間進行が、分配デバイスにより生じるCmaxの変動性の限定に寄与し得る。柱状噴出幾何学および噴霧パターンを測定するための装置は、Proveris Scientific Corporation of Marlborough、Massから入手可能である。
【0052】
本発明による使用に適切な噴霧デバイスの模式図を図2に示す。図2Aおよび2Bは、連動前(図2A)および連動後(図2B)の安全ディスペンサー10を示す。安全ディスペンサー10は、中にデスモプレシンが入ったリザーバ12、この場合ボトル、およびリザーバ12に取り付けられてリザーバ12中のデスモプレシン製剤と流体連絡しているポンプ14を含む。ポンプ14を作動または連動させるとポンプは、デスモプレシンの噴霧柱状噴出16を、ポンプ14の流出口15を通して押し出す。噴霧柱状噴出16は、ポンプ14を出る際に発射角度20を有する。噴霧柱状噴出16は、デスモプレシン製剤の移動液滴で形成されており、全体として中心軸21および噴霧デバイスのノズルに隣接した先端23を有する円錐体積を規定する。
【0053】
本発明の安全ディスペンサーにより、従来の鼻腔噴霧デバイスにより生じる柱状噴出と比較して、改善された特性を有する柱状噴出が可能になる。図3に示すように、従来の鼻腔噴霧デバイスの噴霧柱状噴出の形成の段階は、形成段階、安定段階および崩壊段階である。形成段階(図3A)中に、液体の大きな液滴が最初に生成され、直線状に上に向かって移動する。安定段階(図3B)中に、微細な霧の形成が起こる。崩壊段階において、ボトル内の真空圧が消え始め、柱状噴出が狭くなり崩壊する(図3C)。最終的に、柱状噴出の最終段階(図3D)に、形成および崩壊段階のスプレーは、再度液体の線状流を生じ、柱状噴出の中心に着地する。
【0054】
対照的に、図4に、本発明の柱状噴出の形成を示す。水圧がバネの力よりも高くなると、チップシール(バルブ)が開き、鼻腔噴霧作動機により液体が分配される。ノズルの幾何学により、製品が微細な霧に分解され、従来の鼻腔噴霧デバイスを用いると最初に形成される線状流とは異なり、形成段階(図4A)から円錐状の柱状噴出が生成される。円錐柱状噴出は、従来の鼻腔噴霧デバイスを使用すると崩壊段階中に形成される線状流とは異なり、安定段階(図4B)および崩壊段階(図4C)を通じて維持される。分配工程の終わりに、水圧が消え、鼻腔作動機中の別のバルブのバネが開口部(orifice)のすぐ下のチップシールに近づき、柱状噴出を止める(図4D)。柱状噴出形成の段階を通じて、円錐柱状噴出の形成は、液滴と腔内粘膜表面との接触を増加させ、そのために生物学的利用能が増加し、一回の投与と次の投与の変動性が低減し得る。
【0055】
噴霧柱状噴出の特性は、噴霧パターンを分析することによっても評価し得る。再度図2を参照すると、噴霧パターンは、柱状噴出の任意の高さで噴霧柱状噴出16の断面の写真を撮ることにより決定される。噴霧パターンの模式的な画像を図5に示す。図5の噴霧パターンは長軸24と短軸26を有する楕円である。
【0056】
標準的な食塩水を噴霧して得られた例示的な噴霧パターンを図6に示す。食塩水噴霧の4つの作動を示す。食塩水噴霧の噴霧パターンは、食塩水が、噴霧柱状噴出の断面中に均一に分配されることを示す。
【0057】
対照的に、同じディスペンサーを使用して実施例2に記載される製剤(ただしデスモプレシンは除いた)を分配した際に達成された噴霧パターンは、図7に示すように、大きく異なる。4つの例示的な作動を示す。柱状噴出の断面中に液滴が存在する図6の噴霧パターンとは異なり、デスモプレシンプラシーボの液滴は、噴霧柱状噴出の外辺の外側で再現可能に濃縮される。デスモプレシンプラシーボは典型的な鼻腔スプレーよりも低い表面張力を有するエマルジョンである。理論に拘束されることを望まないが、表面張力の低下により、噴霧柱状噴出の外辺に沿ってより確実に噴出される小さな液滴が提供されると考えられる。
【0058】
現在の好ましい噴霧装置は、5.0mlのガラスボトルが適合された、「Advanced Preservative Free」または「APF」鼻腔ポンプとして販売されPfeiffer of America (Princeton、NJ)から入手可能なポンプである。該装置は、定量された100μlの負荷を狭い噴霧パターンで送達する。該ポンプは、先端にバルブおよび微生物汚染を防ぐマイクロフィルターを含む。バルブは、ポンプが作動してバネの力を超えてバルブが開いて製剤が霧として分配されるのに充分な水圧を生じるまで、先端を密閉する。用量の送達が完了し、水圧が消えると、バネが再度先端を密閉し、薬物のさらなる放出が止まる。
【0059】
好ましくは、一定性を促進するために、スプレーは、D10について30μmからD90について約200μmの範囲の平均体積分布を有する液滴の多重度として、活性製剤を送達する。これは、液滴の約10%が直径約30μmよりも小さく、90%が直径200μmよりも小さいことを意味する。他の分布を使用してもよい。非常に小さい液滴は、吸入されやすく、循環に到達することもしないこともある。大きな液滴は、鼻腔を充分には貫通せず、漏れおよび消失をもたらし得る。かかる定量ポンプは、適切な注入プロトコルを用いて、各使用により定量された量の放出がもたらされることを確実にし、比較的一定の量が鼻腔粘膜表面と接触して終わることを確実にする。
【0060】
リザーバ中に配置される組成物は、抗利尿ホルモン、1-デスアミノ-8-D-アルギニンバソプレシン、またはdDAVPとも称されるデスモプレシンを含む。デスモプレシンは、1069.23の分子量を有する水溶性バソプレシンアナログである。薬物等級の物質は、酢酸塩として広く市販されている。用語デスモプレシンは、本明細書で使用する場合、1-デスアミノ-8-D-アルギニンバソプレシン、ならびにヒトバソプレシンの活性対立遺伝子バリアントのアナログおよび他のアニオンなどの抗利尿活性を有する全ての他のかかるアナログのことをいう。例えばUS 3,980,631およびUS 4,148,787を参照。
【0061】
該組成物はまた、少なくとも1つの透過促進剤として作用する物質、すなわち鼻腔からその背後にある毛細管床へと、粘膜を通過する正味のペプチド輸送を増加させる物質を必ず含む。多くの透過促進剤が当該技術分野に公知であり、かかる促進剤をペプチド薬物に配合してその生物学的利用能を効果的に増加させるための多くの方法がある。透過促進剤は、一般的に粘膜の上皮細胞間に形成された密着結合を開放することにより機能し、それにより膜中へのおよび膜を介した治療剤の拡散を可能にする。
【0062】
インシュリンの鼻腔内投与の開発を目的として、鼻腔膜を通過する生物学的利用能を上昇させるための重要な研究が行われた。例えばU.S. 5,112,804およびU.S. 7,112,561を参照。これらの努力からの知識を、経粘膜生物学的利用能の改善のためのデスモプレシン組成物の調製に適用し得る。一般的に、デスモプレシンの標的血中濃度は、効果的なインシュリン用量よりも数桁小さく、デスモプレシンはかなり小さいポリペプチド(MW 1069対5808)であるので、インシュリン輸送を促進するために使用される促進剤は、経粘膜デスモプレシン生物学的利用能の改善に、より効果的である。
【0063】
本発明の組成物に使用される透過促進剤には、ペプチド投与に適合性であり、鼻腔粘膜を通過するペプチドの吸収を容易にする任意の実体が含まれる。現在の好ましい促進剤は、いわゆるHsieh促進剤である。U.S. 5,023,252、5,731,303、7,112,561および7,244,703を参照。これらは、大環状エステル、ジエステル、アミド、ジアミド、アミジン、ジアミジン、チオエステル、ジチオエステル、チオアミド、ケトンまたはラクトンである。該大環状部分は、しばしば少なくとも12個の炭素原子を含む。好ましい群は、5,023,252および7,112,561に開示されるシクロペンタデカノリドである。シクロペンタデカラクトンまたはシクロヘキサデカノンが現在好ましい、7,244,703を参照。現在好ましい種は、シクロペンタデカノリドであり、商品名CPE-215で、Exeter、New HampshireのCPEX, Incにより販売されている。
【0064】
粘膜組織障壁、例えば皮膚、GI管または他の粘膜表面の通過の促進に有用である、当該技術分野に開示される多くの他の好ましさの低い促進剤も、本発明の製品における使用に適合され得る。非限定的な例としては、胆汁塩および他の脂肪酸、糖エステルまたは長鎖脂肪族酸のソルビタンエステルなどの糖アルコールエステルが挙げられる(米国特許5,122,383;5,212,199および5,227,169を参照)。乳酸の脂肪族アルコールエステルを使用した膜(皮膚)透過促進はU.S. 5,154,122に開示される。U.S. 5,314,694には、脂肪酸アルコールのエステル、すなわちラウリルアルコールおよび乳酸の使用が開示される。潜在的に有用な透過促進剤としては、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸塩、デオキシコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、タウロコール酸塩、およびウルソデオキシコール酸塩、リトコール酸ナトリウム、ケノコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、ウルソコール酸塩、ウルソデオキシコール酸塩、ヒオデオキシコール酸塩、デヒドロコール酸塩、グリコケノコール酸塩、タウロケノコール酸塩、およびタウロケノデオキシコール酸塩などの胆汁塩が挙げられる。また、ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、ジメチルスルフォキシド(「DMSO」)、ラウリル硫酸ナトリウム、飽和および不飽和脂肪酸の塩および他の誘導体、界面活性剤、胆汁塩アナログまたは天然もしくは合成の胆汁塩の誘導体などの他の透過促進剤も有用である。US 5,719,122には、透過促進剤として使用され得、商品名Gelucire RTM、例えばGelucire RTM.33/01、35/10、37/02または44/14で入手可能なものなどのC8-C18グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルからなる飽和ポリグリコライズド(polyglycolysed)グリセリド;商品名Labrafil RTM、例えばLabrafil RTM WL 2609 BSまたはM 2125 CSで入手可能なものなどのC16-C20グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルからなる不飽和ポリグリコライズドグリセリド;ならびに商品名Labrasolで入手可能なものなどの飽和ポリグリコライズドC8-C1Oグリセリドを含むポリグリコライズドグリセリドが開示される。かかるポリグリコライズドグリセリドの混合物、例えばGelucire 44/14およびLabrasolを使用してもよい。
【0065】
GI管を通過して血流に侵入する薬物調製物の調製における使用に適した透過促進剤も、潜在的に本発明における使用に適合され得る。これらとしては、限定されることなく、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、上述されるものなどの胆汁塩透過促進剤、ならびにカプリン酸(caprate)ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸、ラウリン酸、およびカプリル酸などの脂肪酸透過促進剤、パルミトイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、ミリストイルカルニチンおよびラウロイルカルニチンなどのアシルカルニチン、ならびにサリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸およびサリチル酸メチルなどのサリチル酸塩などのU.S. 20030232078に開示されるものが挙げられる。U.S. 4,548,922および4,746,508にはまた、粘膜表面を通過する薬物の効果的な輸送を促進するために両親媒性ステロイドファミリーの低毒性透過促進剤、例えばフシジン酸誘導体を使用した、鼻腔内または他の経粘膜経路によるタンパク質およびポリペプチドを送達するための系が開示される。開示された組成物は一般的に水系であり、ヒトにおいて、インシュリン、ヒト成長ホルモンおよびサケカルシトニンなどの種々のタンパク質およびペプチドの鼻腔内送達に有用であることが示されており、本発明のディスペンサーの組成物成分において潜在的に有用である。
【0066】
どの促進剤が任意の薬物に対して最も良好に作用するかを予測することは非常に困難である。デスモプレシンの透過促進のために、促進剤の実際の有効性を、例えばブタまたはラットモデルを使用して、当業者に公知の性質の常套的な実験により検証すべきである。本発明の製剤成分に含まれる透過促進剤の量は、一般に、約1wt%〜約30wt%の範囲である。促進剤の正確な性質および量は、例えば特定の透過促進剤または選択された促進剤組成物、および製剤中の他の成分の性質に応じて変化する。したがって、医薬媒体中の透過促進剤の濃度は、該促進剤の能力に応じて変化し得る。促進剤濃度の上限は、毒性効果または粘膜の刺激限界により設定される。医薬媒体中の該促進剤の可溶性も、促進剤濃度を制限し得る。
【0067】
該組成物は、水溶性透過促進剤分子または多成分透過促進剤組成物を含む、単純で、典型的に弱酸性のデスモプレシンの水溶液として調製され得る。代替的に、該組成物は、疎水層および親水層を有する2層系として調製され得る。当然ながら該組成物は、安定化および噴霧ノズル構造中の液滴形成の促進を補助するための乳化剤または界面活性剤、保存寿命を高めるか室温貯蔵を可能にするための保存剤、安定化剤、浸透圧調整剤(塩)、ならびにバッファーまたはバッファー系などの他の従来の成分を含み得る。製剤は、経験により最も良好に最適化される。任意の候補製剤は、実験動物、例えばブタまたはラットへの鼻腔内投与により、またはヒトへの適切な前臨床試験後に適正な承認を受けて試験され得る。血液の周期的なサンプリングにより、投与後の種々の時点でのデスモプレシン濃度が明らかとなり、Cmaxおよび他の変数の計算、ならびに患者間および患者内の両方の連続投与における循環への送達の一定性の計算が可能になる。
【実施例】
【0068】
実施例
実施例1:製剤試験プロトコルの例
この実施例では、鼻腔粘膜を通過する輸送における効果について、所定の候補製剤をどのように試験するかを記載する。該実施例は、水溶性透過促進剤「A」および「B」を含む組成物の試験を想定し、鼻腔粘膜を透過して低用量範囲で血流に侵入するデスモプレシンの画分を測定すること、ならびにこれらの異なる促進剤の同一性および濃度の関数としてこの生物学的利用能がどのように変化するかを測定することを求める。
【0069】
したがって、実施例で、以下の組成を有する4つの製剤を調製し得る。
【0070】

【0071】
それぞれの製剤のl0μlの液滴は、0.02μg(20ng)のデスモプレシンを含む。それぞれの候補組成物の液滴を、麻酔した3匹のラット、例えば体重225〜250グラムのそれぞれの鼻孔に適用する。投与前ならびに投与の10、20、40、60および120分後に血液を採取する。それぞれの血液試料のデスモプレシン濃度を、例えば試料中の低pgデスモプレシン濃度で充分な感度を有するイムノアッセイを使用して測定する。これらのデータから、それぞれの製剤についてCmaxを計算し得、試験した全ての組成物は、ラット鼻腔粘膜組織を通過するデスモプレシンの有効通過について評価し得る。有望な製剤は、例えば所定処方、体積およびデスモプレシン濃度のスプレーの試験ブタの鼻孔への導入によりさらに試験し得る。再度、血液試料を採取し、Cmax、AUCまたは薬物生物学的利用能の他の測定値を測定し得る。これらのデータは、順に、正確に使用された場合に低用量標的濃度範囲内のデスモプレシン薬物濃度を一定に生じる安全ディスペンサーの設計を目的として、フェーズI臨床試験における使用のための試験製剤の調製を可能にする。
【0072】
実施例2:例示的製剤
エマルジョン保存溶液 エマルジョン保存溶液を作製するために、以下の重量部の成分を、攪拌棒を備えた容器に添加し、15分間、60〜65℃で混合する。
180部のソルビタンモノラウレート(Span-20)水溶液(12 mg/ml)
30部のポリソルベート20(Tween-20)水溶液(2mg/ml)
400部の綿実油水性エマルジョン(26.6mg/ml)
600部のシクロペンタデカノリド(CPE-215)水性エマルジョン(40mg/ml)
1,500グラムの合計バッチサイズを生じる水
混合後、製剤は、6500 RPM+で高速混合を使用して、20〜25分間均質化し、微細エマルジョンを得る。この溶液をオートクレーブにかけ確実に滅菌する。
【0073】
バッファー溶液 クエン酸バッファー保存溶液を作製するために、以下の重量部の成分を、攪拌棒を備えた容器に添加して、60〜65℃で5分間混合する。
6200部の水
16部の無水クエン酸水溶液(1.85mg/ml)
76部のクエン酸ナトリウム二水和物水溶液(8.9mg/ml)
104部のポリソルベート20(Tween-20)水溶液(12mg/ml)
8,500グラムの合計バッチサイズを生じる水
【0074】
デスモプレシン溶液 デスモプレシン保存溶液を作製するために、0.111部の酢酸デスモプレシン三水和物を充分なバッファー保存溶液に添加し、100.0mlの溶液を得、全てのデスモプレシンが溶解するまで攪拌して、100μgデスモプレシン/mlの濃度を有する保存溶液を作製する。希釈して、この保存溶液から10μg/mlの溶液を調製した。
【0075】
10μg/mlのアリコートの溶液をろ過して、任意の細菌汚染を除去し、等容量のエマルジョン保存溶液で希釈して、5μg/mlのデスモプレシンを含み、pH 5.5で、2%シクロペンタデカノリドを含む無菌の保存剤非含有用量形態を作製した。これらを、定量噴霧あたり100μl、または噴霧あたり0.50μgデスモプレシンもしくは500ngデスモプレシンを送達するPfeiffer APFポンプ噴霧器を備えた滅菌ポンプ噴霧ボトルに詰めた。該液体は検出可能な微生物を含まない。市販の使い捨てPfeiffer APFポンプは、ポンプを作動させた後、潜在的に汚染された空気の埋め戻しを防ぎ、それにより各分配用量の実質的な滅菌性を維持する機構を含む。これらをヒトについて試験して、送達された血中濃度、抗利尿の持続時間、薬物動態特性等を以下に記載のように測定した。
【0076】
実施例3:プロトタイプ製品の臨床試験
水負荷状態のヒト成人被験体において、上述の本発明の態様の安全ディスペンサーを使用した臨床試験により、500ng〜2000ng(1〜4噴霧)の鼻腔内投与された用量が、用量と正比例関係にある2〜7時間の持続時間の抗利尿効果を生じたことを示した。ピーク血中濃度は約1.25〜約10pg/mlの範囲であった。何らかの薬物に関連する血清ナトリウムの減少を示した被験体はいなかった。
【0077】
雛形ディスペンサーの効果および薬物動態学の非盲検予備試験を、おおむね以下に記載されるプロトコルにしたがって、6名の男性および6名の女性の健常な、水負荷、非喫煙志願者被験体で行った。要約すると、それぞれの被験体は、1週間かけて、一日おきに用量投与して、4回まで投与された。1、3および5日目に、被験体に、上述の低用量デスモプレシン鼻孔噴霧製剤の上昇用量を鼻腔内投与した。7日目に、被験体に、比較として皮内または皮下で低用量デスモプレシンの単一ボーラス注入を与えた。最初の治療前に全ての被験体を、病歴の評価、鼻咽頭検査を含む完全身体検査、血清浸透圧を含む血清化学、尿浸透圧を含む尿検査などでスクリーニングした。
【0078】
1日目に、全ての被験体に、朝、朝食前に排尿したかたずね、その後被験体は水負荷プロセスを開始した。水負荷は、患者が内因性バソプレシンを産生しないことを確実にし、したがって外因性デスモプレシンの効果の分離を可能にする。安定状態の利尿を達成するために、患者に、体重の少なくとも1.5%から3%までに対応する体積の水を飲むように指示した。最初の被験物質の投与の2時間前に水負荷プロセスが開始した。20分毎に、被験体に排尿したかたずねた。連続水負荷状態を確実にするために、被験体は、尿産出消失を同等量の液体で補充した。無感覚な消失は測定せずに、補充しなかった。被験体において、2回の連続した測定で尿産出速度が10ml/分を超えたときに(水負荷状態として規定)、投与を始めた。液体消失に対して同等の液体取り込みにより、被験体を水負荷状態で維持した。
【0079】
次いで、それぞれの被験体に、右または左の鼻孔に鼻腔噴霧製剤の一回噴霧(0.5μgのデスモプレシンを含む100μl)を鼻腔内投与した。水負荷の開始(投与の少なくとも2時間前)から、投与後被験体の尿産出がベースラインに戻るまで(3回の連続して20分の測定において尿産出レベルが10mL/分を超える)、20分間隔で尿体積を測定した。血清浸透圧およびナトリウムを、投与前ならびに投与の2、4、6および8時間後に測定した。
【0080】
投与の1、1.5、2、3、4および6時間後に薬物動態測定のために血液サンプリングを行った。各時点で、7mlの血液試料を2回採取した。検証ラジオイムノアッセイによりデスモプレシンの濃度を測定した。血漿中のデスモプレシンの濃度は、市販のソフトウェアWinNonlinTMPro、ver. 3.2 (Pharsight Corporation, USA)を使用した非コンパートメント法により、各群の個々の志願者について分析した。定量限界(「LOQ」)未満の血漿濃度値に該限界を超える値が続くものを、分析および濃度の記述統計学について、「LOQ/2」で設定した。LOQ未満の値にLOQを超える値が続かないもの分析から除外して、濃度の記述統計学においてゼロと設定した。
【0081】
2、4および6日目に、午後8時から翌日の朝食まで被験体を絶食させ、午後7時から午後9時の間に1〜2リットルの水を飲ませた。その後、翌日の水負荷の開始まで被験体は自由に液体を飲んだ。
【0082】
3日目に、被験体に1噴霧のデスモプレシン鼻孔噴霧製剤を各鼻孔に与えた(1000ngのデスモプレシンと同等の200μlの合計体積)。該用量レベル以外は、全ての手順は1日目について記載したものと同じであった。
【0083】
5日目に、全ての被験体に合計容量2000ngのデスモプレシンを与えた(各鼻孔に一回の鼻腔噴霧、その5分後各鼻孔に2回目の噴霧)。用量レベル以外は、全ての手順は1日目に付いて記載したものと同じであった。
【0084】
7日目に、3名の男性および3名の女性に、デスモプレシン溶液の単回ボーラス皮内注入を与え(120ngのデスモプレシンと同等の150μlの0.8μg/ml溶液)、他の6名の被験体にはデスモプレシンの単回ボーラス皮下注入を与えた(120ngのデスモプレシンと同等の150μlの0.8μg/ml溶液)。用量範例以外は、全ての手順は1日目について記載したものと同じであった。
【0085】
薬物動態パラメーターは、血液試料中に見られるデスモプレシンの個々の濃度対デスモプレシンの時間曲線から誘導され、AUCおよびCmaxを含んだ。濃度の平均化のために、デスモプレシンイムノアッセイの検出限界未満のアッセイ値(<1.25pg/ml)を、ゼロと同等と設定した。AUCの計算のために、2つの非ゼロ濃度間に生じた検出レベル未満のアッセイ値は「紛失(missing)」とみなした。0.5μg用量試験からの血中濃度測定は、しばしば不確実で検出限界未満となったので行なわなかった。従来の分析では多くの被験体/治療の組み合わせがT1/2またはAUCについて評価できなかったので、任意の被験体について、半減期は治療ごとに一定であると仮定した。そのため、3回の治療のうちで1回でも評価可能な最終半減期が生じれば、その値は、評価可能な半減期を有さない治療についてのAUCを推定するために使用し得た。したがって、被験体中で、評価可能な半減期を有する治療を含む各被験体について平均最終半減期(Avg T1/2)を計算した。12名の被験体中10名が、少なくとも1回の治療について評価可能な半減期を有した。計算した平均T1/2値を使用して、各治療および被験体について、AUCを計算し得た。
【0086】
該試験において、1名の異常な患者のほかは、11名全ての患者が2000ng容量レベルで、3.9〜10pg/mlのピークデスモプレシン薬物濃度を有したことが測定された。さらに11名の内9名は、5.18〜8.4pg/mlの間の薬物濃度を達成した。これは単独で、上述の雛形ディスペンサーを使用して達成された血中濃度の一定性を示す。さらに、該試験の結果として、以下のAUCおよびCmax値を計算した。各データ点の計算された変動係数を括弧内に示す。
【0087】

【0088】
これらのデータから2つの結論が導かれ得る。第1に、1000ng用量についての本発明の安全ディペンサーを使用して鼻腔内投与されたデスモプレシンのCmaxの変動係数(51.6%)は、皮下投与されて同等の低血中濃度を生じるように設計されたデスモプレシンの用量のCmaxの変動係数よりも、わずかに約30%高い。2000ng用量について本発明の分配組成物を使用して鼻腔内投与されたデスモプレシンの測定されたCmaxの変動係数(36.0%)は、皮下用量のCmaxの変動係数とほぼ同等である。これらの予備的なデータにより、本発明の製剤は、実際に、同等の低血中濃度を達成するように設計された皮下デスモプレシン用量のCmaxの変動係数と同等のCmaxの変動係数を特徴とするという仮説が支持される。これは、かなり高い血中濃度を送達するように設計されているが、低ナトリウム血症状態の推計学的な誘導に寄与するかなり高いCmaxの変動性を有する市販の鼻腔内デスモプレシン用量形態とはかなり対照的である。
【0089】
第2に、本発明にしたがって鼻腔内に分配されたこの製剤により生じたAUCおよびCmaxは両方、用量に正比例しているように思われることに注意されたい。したがって、1000ng鼻腔内用量により2.79+/-1.44pg/mlのCmaxが生じ、2000ng用量により6.24+/-2.25の値が生じ、1000ng鼻腔内用量により、5.36+/-5.92のAUCがもたらされ、これは用量を2倍にするとおよそ2倍の11.59+/-7.9になる。このことは、デスモプレシンは確実に鼻腔内分配され、患者集団のメンバーが低ナトリウム血症を発生するリスクを実質的に有することなく、制限された持続時間の抗利尿効果を再現可能に達成し得ることを示唆する。低用量を送達するディスペンサーは、任意の患者においていくつかの抗利尿持続時間のいずれかを達成するように多数回噴霧で使用され得ること、または任意の集団において任意の持続時間の効果を生じるためにどれだけの量のスプレーを使用すべきかについての適切な指示書がある場合には、1つのディスペンサーを販売して、異なる患者集団に役立て得ることも示唆される。
【0090】
この試験の結果により、本発明の態様の低用量デスモプレシン鼻腔噴霧は、比較的一定の低血中濃度で、改善されたより再現性の高い薬物動態パラメーターを提供し、投与された用量に比例するCmaxを送達することが示唆される。
【0091】
2000ngのデスモプレシンの医薬組成物の鼻腔投与の直前、および投与後約10時間(600分)までの間に尿産出および尿浸透圧を測定した。図8には、男性および女性被験体についての平均尿産出を示す。データで明らかなように、尿産出は、鼻によるデスモプレシンの投与後20分以内に8ml/分未満に低下した(水負荷個体中)。尿産出は、投与後約400分までの間8ml/分未満のままであった。図9には、図8と同じ男性および女性の被験体の集団についての平均尿浸透圧を示す。尿浸透圧は、2μgのデスモプレシンの鼻腔内投与後40分以内で約400mOsmol/kgよりも高くまで増加し、鼻によるデスモプレシンの投与後約250分間は約400mOsmol/Kgよりも高いままであった。
【0092】
夜間多尿を有する成人患者における第二の別の試験により、(1回または2回噴霧で鼻腔内投与された)500および1000ngの用量で、43名の患者中41名の患者で、一晩あたり1回以下の夜間排尿回数の劇的な治療的減少が生じることが確立された。血清ナトリウムレベルは、治療を通して正常限界内のままであった。
【0093】
実施例4:噴霧パターン試験
デスモプレシン製剤の噴霧柱状噴出の特性を評価するために、Proveris's Viota(登録商標)ソフトウェアプラットフォームにより作動するSpray VIEW装置を使用した。柱状噴出の所定の高さより上の噴霧柱状噴出の断面の写真を撮って、噴霧パターンを測定した。噴霧パターン測定値は、長軸、短軸、楕円率、包含、傾斜、Dmin、Dmax、楕円性、周長、面積および%面積を含んだ。柱状噴出は、Pfeiffer of America (Princeton、NJ)から入手可能であり、「Advanced Preservative Free」または「APF」鼻ポンプとして販売されているポンプを使用して発生させた。
【0094】
図10は、デスモプレシンを含む鼻噴霧デバイスの6回の作動のそれぞれで生じた例示的な噴霧パターンを示す。図10A〜10Cは、デバイスの先端から3cmの高さで測定した噴霧パターンを示し、図10D〜10Fは、デバイスの先端から6cmの高さで測定した噴霧パターンを示す。高および中液滴密度を有する断面の面積を明るい灰色の影および白色で示す。最低液滴密度を有する断面の面積を暗い灰色の影および黒色で示す。それぞれの噴霧パターンにより、液滴の密度は柱状噴出の外辺に沿って高く、柱状噴出の中心で低いことが示される。表4は、図10A〜Fの噴霧パターン測定値を示す。
【0095】

【0096】
表5は、本発明の例示的なデスモプレシン柱状噴出についての液滴サイズ分布を示す。液滴サイズ分布を測定するために、3回の鼻噴霧デバイス(「ボトル」)の作動(「発射」)により生じた液滴のサイズを、レーザー回折により測定した。示されるように、噴霧デバイスの先端から3cmまたは6cmの高さから測定値を得た。
【0097】
「D10」は、試料の全液体体積の10%が小さい直径の液滴を構成する液滴の直径(μm)のことをいう。「D50」は、試料の全液体体積の50%が小さい直径の液滴を構成する液滴の直径(μm)のことをいい、質量メジアン直径としても知られる。「D90」は、試料の全液体体積の90%が小さい直径の液滴を構成する液滴の直径(μm)のことをいう。
【0098】
「範囲」は、分布の幅の測定値のことをいい、小さな値は狭い分布に相関する。「% RSD」は、パーセント相対標準偏差のことをいい、標準偏差を一連の平均で割り、100をかけたもので、% Cvとしても公知である。
【0099】

【0100】
本明細書に参照される特許公報の全ての開示は、参照により本明細書に援用される。
【0101】
他の態様は、以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の時間間隔にわたり、定量噴霧デバイスのノズルから射出される柱状噴出の形態の鼻腔内デスモプレシン用量を含む組成物であって、
該柱状噴出は、中心軸および噴霧デバイスのノズルに先端を有する円錐体積を全体として規定する一定体積の移動液滴を含み、該円錐体積内の液滴密度(単位体積あたりの液滴の数)は、該軸の通常の方向に(in a direction normal to)増加し、該液滴は、全体として約0.05μg〜5.0μgのデスモプレシンを含み、該柱状噴出は、該液滴と鼻腔内粘膜表面との接触を増加するように働く、組成物。
【請求項2】
前記液滴が水中油エマルジョンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
先端から約3cm以下の表面での円錐体積の軸方向断面が、液滴の円環板を示す、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
該柱状噴出が、体重70kgの患者の血流に、15+/-3pg/ml以下のデスモプレシン血中濃度を生じるのに充分なデスモプレシンを経粘膜送達するのに効果的であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の組成物。
【請求項5】
該柱状噴出が、10+/-3pg/ml以下のデスモプレシン血中濃度を生じるのに効果的であることを特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
該柱状噴出が、7+/-3pg/ml以下のデスモプレシン血中濃度を生じるのに効果的であることを特徴とする、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
該柱状噴出が、体重35kgの患者の血流に、15+/-3pg/ml以下のデスモプレシン血中濃度を生じるのに充分なデスモプレシンを経粘膜送達するのに効果的であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
該柱状噴出が、10+/-3pg/ml以下のデスモプレシン血中濃度を生じるのに効果的であることを特徴とする、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
該柱状噴出が、7+/-3pg/ml以下のデスモプレシン血中濃度を生じるのに効果的であることを特徴とする、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
該液滴が、全体として約0.05μg〜1.0μgのデスモプレシンを含む、前記請求項いずれか記載の組成物。
【請求項11】
該液滴が、全体として約0.2μg〜1.0μgのデスモプレシンを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
該液滴が、全体として約0.5μgのデスモプレシンを含む、請求項1〜10いずれか記載の組成物。
【請求項13】
該液滴が、全体として約0.75μgのデスモプレシンを含む、請求項1〜12いずれか記載の組成物。
【請求項14】
該液滴が、透過促進剤をさらに含む、前記請求項いずれか記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14いずれかに記載の組成物を患者に鼻腔内投与する工程を含む、患者において抗利尿効果を誘導する方法。
【請求項16】
該投与により、患者の血流において15+/-3pg/ml以下のデスモプレシン濃度が生じる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
該投与により、患者の血流において10+/-3pg/ml以下のデスモプレシン濃度が生じる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
該投与により、患者の血流において7+/-3pg/ml以下のデスモプレシン濃度が生じる、請求項15記載の方法。
【請求項19】
該投与により、約6時間未満の間の抗利尿が誘導される、請求項15〜18いずれか記載の方法。
【請求項20】
該投与により、約2〜4時間の間の抗利尿が誘導される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
該投与により、約4〜7時間の間の抗利尿が誘導される、請求項15〜18いずれか記載の方法。
【請求項22】
患者集団のメンバーが低ナトリウム血症を発症し得るリスクを低減しつつ、該患者集団のメンバーにおいて抗利尿効果を誘導するための安全ディスペンサーであって、該ディスペンサーは、
複数薬物用量を構成するのに充分な量のデスモプレシン製剤および鼻腔膜透過促進剤を含む組成物がその中に配置されたリザーバ、前記組成物は、5%より高いデスモプレシン生物学的利用能を特徴とする;
前記リザーバと連絡した流出口;ならびに
前記リザーバから前記流出口を通って患者の鼻腔内表面に、スプレーの形態の前記組成物の定量用量を連続的に分配するための手動作動可能ポンプ
を含み、
それぞれのスプレーの用量は、約0.05μg〜5.0μgのデスモプレシンを含み、液滴と近位鼻腔粘膜との接触を促進するように、円錐柱状噴出の外辺で、その内部体積での密度よりも高い液滴密度(単位体積当たりの液滴の数)を有する液体スプレー液滴の円錐柱状噴出を生じる、ディスペンサー。
【請求項23】
D10について20μmからD90について約300μmの範囲の平均体積分布を有する多数の液滴を含む、請求項22記載のディスペンサー。
【請求項24】
前記組成物が、10%より高いデスモプレシン生物学的利用能を特徴とする、請求項22または23記載のディスペンサー。
【請求項25】
前記組成物が、15%より高いデスモプレシン生物学的利用能を特徴とする、請求項22〜24いずれか記載のディスペンサー。
【請求項26】
前記組成物が、20%より高いデスモプレシン生物学的利用能を特徴とする、請求項22〜24いずれか記載のディスペンサー。
【請求項27】
保存剤を含まない、請求項22〜26いずれか記載のディスペンサー。
【請求項28】
前記ポンプが、前記組成物の分配後に細菌汚染外気の埋め戻し(backfill)を防ぐ、請求項22〜27いずれか記載のディスペンサー。
【請求項29】
第1のそれぞれの用量の分配後の所定の時間間隔の間、前記リザーバからの第2のそれぞれの用量の分配を阻害するための手段をさらに含む、請求項22〜28いずれか記載のディスペンサー。
【請求項30】
それぞれの用量が、約0.05μg〜1.0μgのデスモプレシンを含む、請求項22〜29いずれか記載のディスペンサー。
【請求項31】
それぞれの用量が約0.2μg〜1.0μgのデスモプレシンを含む、請求項22〜29いずれか記載のディスペンサー。
【請求項32】
それぞれの用量が約0.5μgのデスモプレシンを含む、請求項22〜29いずれか記載のディスペンサー。
【請求項33】
それぞれの用量が約0.75μgのデスモプレシンを含む、請求項22〜29いずれか記載のディスペンサー。
【請求項34】
患者の鼻腔内粘膜を通過する薬物輸送により、患者の鼻孔(1つまたは複数)内に分配されたデスモプレシンの質量に実質的に正比例するデスモプレシンの血中濃度を確立する、請求項22〜33いずれか記載のディスペンサー。
【請求項35】
それぞれの用量が、小児、体重35kg未満の小児、体重35〜50kgの小児、成人女性、成人男性、体重50〜75kgの女性、体重70〜85kgの男性および体重が85kgよりも重い男性からなる群より選択される患者集団のメンバーにおいて、18pg/ml未満の血液の標的Cmaxを達成するように調製される、請求項22〜34いずれか記載のディスペンサー。
【請求項36】
それぞれの用量が、70kgの患者において18pg/mlより低い血液の標的Cmaxを達成する、請求項35記載のディスペンサー。
【請求項37】
それぞれの用量が、70kgの患者において15pg/mlよりも低い血液の標的Cmaxを達成する、請求項35記載のディスペンサー。
【請求項38】
それぞれの用量が、70kgの患者において10pg/mlよりも低い血液の標的Cmaxを達成する、請求項35記載のディスペンサー。
【請求項39】
それぞれの用量が、35kgの患者において18pg/mlよりも低い血液の標的Cmaxを達成する、請求項35記載のディスペンサー。
【請求項40】
それぞれの用量が、35kgの患者において15pg/mlよりも低い血液の標的Cmaxを達成する、請求項35記載のディスペンサー。
【請求項41】
それぞれの用量が、35kgの患者において10pg/mlよりも低い血液の標的Cmaxを達成する、請求項35記載のディスペンサー。
【請求項42】
それぞれの用量が、前記患者において以下の血中濃度範囲(血液中pg/ml):1〜3、2〜5、3〜6、4〜7、5〜8、6〜9、7〜10の1つのデスモプレシンのCmaxを確立する、請求項35〜41いずれか記載のディスペンサー。
【請求項43】
前記患者において約6時間未満の間の抗利尿を誘導するように調製された、請求項35〜42いずれか記載のディスペンサー。
【請求項44】
前記患者において約2〜4時間の抗利尿を誘導するように調製された、請求項43記載のディスペンサー。
【請求項45】
前記患者において約4〜7時間の抗利尿を誘導するように調製された、請求項35〜42いずれか記載のディスペンサー。
【請求項46】
患者において、鼻腔内粘膜を通過する薬物輸送により、前記患者の鼻孔(1つまたは複数)に分配されたデスモプレシンの質量に実質的に正比例する約15+/-3pg/ml未満の範囲のデスモプレシンの血中濃度を確立する、請求項35〜45いずれか記載のディスペンサー。
【請求項47】
それぞれの用量が、同じ標的Cmaxを達成するように設計されたデスモプレシンの皮下用量により生じるCmaxの変動係数の50%以内の変動係数を有するデスモプレシンのCmaxを確立する、請求項22〜46いずれか記載のディスペンサー。
【請求項48】
それぞれの用量が、同じ標的Cmaxを達成するように設計されたデスモプレシンの皮下用量により生じるCmaxの変動係数の25%以内の変動係数を有するデスモプレシンのCmaxを確立する、請求項47記載のディスペンサー。
【請求項49】
それぞれの用量が、100%以下で変動する連続投与された用量中のデスモプレシンのCmaxを確立する、請求項22〜48いずれか記載のディスペンサー。
【請求項50】
それぞれの用量が、50%以下で変動する連続投与された用量中のデスモプレシンのCmaxを確立する、請求項49記載のディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−530708(P2012−530708A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516198(P2012−516198)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/038663
【国際公開番号】WO2010/147981
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】