説明

安定状態表示装置

【課題】運転者に対し、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知すること。
【解決手段】運転者による運転の不安定状態を示す指標を表示の限界である上限値以下の範囲で表示領域に表示する。そして、範囲外変動表示手段が、不安定状態を示す指標のうち、上限値を超える範囲の指標の変動を表示手段の表示領域において表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者による運転の安定状態に関する情報を表示する安定状態表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の運転状態に関する情報を表示する装置として、特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1に記載の技術では、運転者のペダルやシフト操作の単調度やステアリング操作による車両の蛇行率から求められる覚醒度を順次記憶しておき、運転者の覚醒度に関する情報を時系列の棒グラフとして表示し、所定の覚醒度より低くなると音声等で運転者に警報している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−152438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、運転者の覚醒度に関する情報を棒グラフによって表示している。そのため、警報が必要となる覚醒度が低い時は、棒グラフ等のグラフが、表示されないことになり、音声等の警報が作動するまで運転者に対して運転状態の傾向を適確に報知することが困難である。
即ち、従来の技術においては、運転者に対し、運転の安定状態に関する情報を適確に知らせることが困難であった。
本発明の課題は、運転者に対し、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る安定状態表示装置は、運転者による運転の不安定状態を示す指標を表示の限界である上限値以下の範囲で表示領域に表示する。そして、不安定状態を示す指標のうち、上限値を超える範囲の指標の変動を表示手段の表示領域において表示する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運転者による運転の不安定状態を運転の不安定状態を示す指標で推定し、表示領域に表示する上限値を超える範囲の指標の変動を表示領域において表示する。
このため、運転者に対し、不安定状態を示す指標の変動を表示領域において報知することができる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る自動車1の構成を示す概略図である。
【図2】自動車1が備える安定状態表示装置1Aを示すシステム構成図である。
【図3】コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
【図4】指標A〜Cを設定するための特性の一例を示す図である。
【図5】コントローラ70が表示するバーグラフの一例を示す図である。
【図6】コントローラ70が表示するバーグラフおよびベクトルの一例を示す図である。
【図7】コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
【図8】補正係数kの特性を示す図である。
【図9】不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
【図10】コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
【図11】バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度DrStateMemおよび不安定度の指標の補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
【図12】コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
【図13】補正係数lの特性を示す図である。
【図14】不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
【図15】コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
【図16】補正係数mの特性を示す図である。
【図17】不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
【図18】コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
【図19】タイマ値Tとディレイ時間tとの関係を示す図である。
【図20】不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を適用した自動車の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車1の構成を示す概略図である。
また、図2は、自動車1が備える安定状態表示装置1Aを示すシステム構成図である。
図1および図2において、自動車1は、アクセルペダル開度センサ10と、車間距離センサ20と、ウィンカレバー30と、操舵角センサ40と、車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLと、カーナビゲーションシステム60と、コントローラ70と、ブザー80と、メータディスプレイ90と、ナビディスプレイ100とを備えている。
アクセルペダル開度センサ10は、アクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセルペダル開度を検出し、検出したアクセルペダル開度を示す信号をコントローラ70に出力する。
【0009】
車間距離センサ20は、超音波あるいはミリ波等を用いて自車両と前方車両との距離(車間距離)を測定し、測定した車間距離を示す信号をコントローラ70に出力する。
ウィンカレバー30は、運転者が方向指示のために操作するレバーであり、右方あるいは左方への方向指示操作が行われると、方向指示の内容を示す信号をコントローラ70に出力する。
操舵角センサ40は、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、操舵角を示す信号をコントローラ70に出力する。
車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLは、各車輪の回転速度を示すパルス信号を、コントローラ70に出力する。
【0010】
カーナビゲーションシステム60は、GPS(Global Positioning System)、VICS(Vehicle Information and Communication System)および地図データベースシステムを備えている。そして、カーナビゲーションシステム60は、自車両の現在位置、現在時刻および渋滞情報を取得したり、目的地までの移動経路や、目的地までに存在するサービスエリアあるいは店舗等を含むナビゲーション情報を提供したりする。なお、カーナビゲーションシステム60は、現在位置や地図上の移動経路等のナビゲーション情報をナビディスプレイ100に表示したり、コントローラ70に出力したりする。
【0011】
コントローラ70には、アクセルペダル開度センサ10、車間距離センサ20、ウィンカレバー30、操舵角センサ40、車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLおよびカーナビゲーションシステム60からの信号が入力する。そして、コントローラ70は、これらの信号を基に、後述する運転状態表示処理を実行し、運転者に対して、運転の安定状態に関する情報を提供する。
【0012】
具体的には、コントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ROM(Read Only Memory)等を備えたマイクロコンピュータであり、自動車1全体を制御している。また、コントローラ70は、運転状態表示処理のための運転状態表示処理プログラムをROMに記憶している。そして、コントローラ70は、イグニションオンと共に、CPUによってROMに記憶している運転状態表示処理プログラムを読み出し、各種データをメモリに記憶しながら、運転状態表示処理を繰り返し実行する。
【0013】
コントローラ70は、運転状態表示処理の処理結果を、ナビディスプレイ100に表示したり、ブザー80から音を出力させたりする。
なお、図示しないが、自動車1は、ブレーキペダル踏量センサ、加速度センサ等の各種センサを備えており、コントローラ70には、これらのセンサが検出した検出信号が入力する。
ブザー80は、コントローラ70の指示信号に応じて音を発する装置である。
メータディスプレイ90は、自動車1のインストルメントパネルに設置したディスプレイであり、コントローラ70の指示に従って、車速、エンジン回転数、燃料計、方向指示表示あるいは各種警報ランプ等の表示を行う。
ナビディスプレイ100は、カーナビゲーションシステム60が提供する情報を表示したり、コントローラ70が指示する情報を表示したりする。
【0014】
(運転状態表示処理)
次に、コントローラ70が実行する運転状態表示処理について説明する。
図3は、コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
コントローラ70は、イグニションオンと共に、運転状態表示処理を繰り返し実行する。
図3において、運転状態表示処理を開始すると、コントローラ70は、運転者の操作に関するデータ(操舵角、アクセルペダル・ブレーキペダルの操作およびウィンカレバーの操作)、車両運転状態に関するデータ(車速、前後加速度、横加速度および運転開始からの経過時間)を取得する(ステップS101)。
【0015】
次に、コントローラ70は、運転者による運転の不安定度を示す指標を算出する(ステップS102)。
具体的には、コントローラ70は、不安定度を推定する要素として、ステアリング操作およびペダル操作に基づく指標(指標A)、短い車間距離となる頻度に基づく指標(指標B)、および、加減速度または横加速度に基づく指標(指標C)を算出する。
【0016】
指標Aは、運転中の連続的な操作内容を指標としたものであり、例えば、ステアリングエントロピやペダル操作の乱れを指標Aとすることができる。ここで、ペダル操作の乱れとは、目標値に対してのペダルの操作度合いを示すものであり、例えば単位時間当たりの操作回数で表すことができる。
指標Bは、前方車両との車間距離が設定した閾値より小さくなる(即ち、短い車間距離となる)頻度を検出して算出することができる。
【0017】
指標Cは、前後方向の加速度および左右方向の加速度が適正な範囲内にあるか否かに基づいて算出することができ、これらの加速度が適正な範囲を超えている度合いを指標Cとすることができる。
図4は、指標A〜Cを設定するための特性の一例を示す図であり、図4(a)はステアリングエントロピと不安定度との関係を示す図、図4(b)はペダル操作の乱れと不安定度との関係を示す図である。また、図4(c)は短い車間距離となる頻度と不安定度との関係を示す図である。さらに、図4(d)は前後方向の加減速度と不安定度との関係を示す図、図4(e)は左右方向の加速度と不安定度との関係を示す図である。
【0018】
コントローラ70は、図4に示す関係から、各横軸の項目に対する不安定度を取得し、指標A〜Cそれぞれの不安定度を算出する。このとき、1つの指標に含まれる各項目の不安定度を合計したり、乗算したり、あるいは、最大値を採用する等によって、その指標を表す不安定度とする。また、指標A〜Cを表す不安定度を合計したり、乗算したり、あるいは、最大値を採用する等によって、総合的な不安定度の指標DrStateを算出する。
なお、コントローラ70は、このとき算出した各不安定度の指標を履歴としてRAMに記憶し、以後の情報提供において、過去の不安定度をバーグラフとして表示する際に利用する。
【0019】
次に、コントローラ70は、取得した不安定度の指標を基に、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値(表示の限界)以上であるか否かの判定を行う(ステップS103)。
即ち、コントローラ70は、総合的な不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であるか否かの判定を行う。
ステップS103において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上でないと判定した場合、コントローラ70は、RAMに記憶されている不安定度の指標DrStateを基に、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(ステップS104)。
【0020】
このとき、コントローラ70は、設定した区分時間毎に不安定度の指標DrStateの代表値を定め、その代表値からバーグラフを示す変数BarDispを算出する。そして、コントローラ70は、一定の時間区分数(例えば8個)の不安定度の指標(代表値)に対応する変数BarDispを算出し、算出した変数BarDispに応じた高さのバーグラフをそれぞれ表示する。
【0021】
ここで、代表値を定めるためには、その時間区分に属する不安定度の指標DrStateにおける最大値を代表値としたり、平均値を代表値としたりする手法を用いることができる。また、バーグラフを示す変数BarDispは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満であれば、不安定度の指標DrStateに比例した値となり、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であれば、バーグラフで表示可能な上限値DrStateTHに相当する値となる。
【0022】
図5は、ステップS104においてコントローラ70が表示するバーグラフの一例を示す図である。
図5に示すように、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値未満に収まっている場合、各時間区分の不安定度の指標(代表値)に対応する高さのバーグラフをそれぞれ表示する。バーグラフを表示する場合には、バーグラフの高さに応じて、バーグラフの表示色を異なるものとできる。例えば、上限値までの高さを3段階に分け、最も低い高さ範囲では緑、最も高い高さ範囲では赤、その中間では黄色としてバーグラフを表示することができる。
【0023】
なお、図5における網掛け領域は、バーグラフで表示可能な上限値以下の範囲を示しており、折れ線は、不安定度の推定結果を示している。これらの網掛けおよび折れ線は、参考のために示したものであり、実際の表示画面には表示しない。以下、バーグラフの表示画面に関する各図において同様である。
ステップS104の後、コントローラ70は、運転状態表示処理を繰り返す。
一方、ステップS103において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上であると判定した場合、コントローラ70は、不安定度の変動を検出する(ステップS105)。
【0024】
このとき、コントローラ70は、直前の時間区分における不安定度の指標(代表値)に対する、現在の時間区分における不安定度の指標(代表値)の比DrStateComを、不安定度の変動を示す値として算出する。そして、コントローラ70は、その比DrStateComが0.8未満であれば変化率のフラグ“−1”を設定し、1.2より大きければ変化率のフラグ“+1”を設定し、それ以外(0.8以上1.2以下)であれば変化率のフラグ“0”を設定する。
【0025】
次いで、コントローラ70は、RAMに記憶されている不安定度の指標DrStateを基に、不安定度の履歴をバーグラフで表示すると共に、不安定度の変動を示すベクトル(矢印)を表示する(ステップS106)。
このとき、コントローラ70は、ステップS104と同様にバーグラフを表示すると共に、バーグラフと併せて、不安定度の変動を示すベクトルを表示することにより、不安定度の状態を運転者に報知する。
具体的には、コントローラ70は、不安定度の変化率のフラグが“+1”であれば右上を向くベクトルを表示し、不安定度の変化率のフラグが“−1”であれば右下を向くベクトルを表示し、不安定度の変化率のフラグが“0”であれば右を向くベクトルを表示する。
【0026】
図6は、ステップS106においてコントローラ70が表示するバーグラフおよびベクトルの一例を示す図である。
図6に示すように、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている場合、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値未満の各時間区分については、不安定度の指標(代表値)に対応する高さのバーグラフをそれぞれ表示する。また、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上の各時間区分については、バーグラフで表示可能な上限値に対応するバーグラフと、その時間区分における不安定度の変動を示すベクトルを表示する。
これにより、バーグラフでは変化の状態を表示できない範囲の不安定度についても、運転者に不安定度の変動を報知することが可能となる。
ステップS106の後、コントローラ70は、運転状態表示処理を繰り返す。
【0027】
(動作)
次に、動作を説明する。
本発明に係る安定状態表示装置1Aは、イグニションオンと共に運転状態表示処理を繰り返し実行している。
安定状態表示装置1Aは、運転者による運転中、運転者の不安定度を示す指標DrStateを算出し、この指標がバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であるか否かの判定を行っている。
【0028】
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満であるときには、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(図5参照)。
また、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となったとき、不安定度の変動を検出し、バーグラフと併せて、不安定度の変動を示すベクトルを表示する(図6参照)。
【0029】
これにより、バーグラフで表示可能な不安定度を超えた範囲においても、運転者に対し、不安定度の変化の状態を速やかに、理解容易な形態で報知することが可能となる。
即ち、運転者による運転の不安定度がバーグラフの上限値を超えていて、不安定度を運転者が確認できない場合に、直近の運転の状態を、不安定度の増減を示す図形として直接表示するため、運転者が安定な運転を行なうモチベーションを高めることができる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る安定状態表示装置1Aは、運転者による運転の不安定度を取得し、その不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えているときには、バーグラフと併せて、不安定度の変動を示すベクトル(矢印の図形)を表示する。
このため、運転者に対し、不安定度の変動を速やかに、理解容易な形態で報知することができる。
【0031】
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
なお、本実施形態において、アクセルペダル開度センサ10、車間距離センサ20、操舵角センサ40および車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLが運転状態検出手段に対応する。また、コントローラ70が不安定状態推定手段に対応し、コントローラ70およびナビディスプレイ100が表示手段および範囲外変動表示手段に対応する。
【0032】
(第1実施形態の効果)
(1)運転者による運転の不安定状態を運転の不安定状態を示す指標で推定し、表示領域に表示する上限値を超える範囲の指標の変動を表示領域において表示する。
このため、運転者に対し、不安定状態を示す指標の変動を表示領域において報知することができる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
(2)範囲外変動表示手段が、不安定状態推定手段によって推定される指標のうち、上限値を超える範囲の指標の変動の方向を示す図形を前記表示手段の表示領域に表示させるため、運転者に対し、不安定度の変動を速やかに、理解容易な形態で報知することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態に係る安定状態表示装置1Aのシステム構成は、第1実施形態における図2と同様であるため、異なる部分である運転状態表示処理について主として説明する。
(運転状態表示処理)
図7は、コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
コントローラ70は、イグニションオンと共に、運転状態表示処理を繰り返し実行する。
図7におけるステップS201〜S203の処理は、第1実施形態の図3におけるステップS101〜S103とそれぞれ同様である。
ステップS203において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上であると判定した場合、コントローラ70は、不安定度の変動を検出する(ステップS204)。
【0034】
このとき、第1実施形態と同様に、コントローラ70は、直前の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState1)に対する、現在の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState2)の比DrStateCom(=DrState2/DrState1)を算出する。
そして、コントローラ70は、不安定度の指標DrStateを、算出した不安定度の指標(代表値)の比DrStateComと補正係数kとによって補正する(ステップS205)。
【0035】
図8は、補正係数kの特性を示す図である。
図8に示すように、補正係数kは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満の場合は“0”である。一方、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上の場合、不安定度の指標DrStateが大きくなるほど、補正係数kは小さい値(絶対値がより大きい負の値)となる。
【0036】
この補正係数kは、不安定度の指標DrStateの微分値の重みを決定する変数である。
ステップS205では、この補正係数kを用いて、
DrStateMod=DrState+k/DrStateCom
なる式によって、不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを算出する。
ステップS203において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上でないと判定した場合、および、ステップS205の後、コントローラ70は、RAMに記憶されている不安定度の指標DrStateあるいはステップS205において算出した不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを基に、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(ステップS206)。
【0037】
図9は、不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
図9に示すように、不安定度の指標を補正してバーグラフを表示した場合、バーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となる範囲においても、不安定度の指標が減少傾向にあるときには、バーグラフによって不安定度の指標の減少を報知することが可能となる。
ステップS206の後、コントローラ70は、運転状態表示処理を繰り返す。
【0038】
(動作)
次に、動作を説明する。
本発明に係る安定状態表示装置1Aは、イグニションオンと共に運転状態表示処理を繰り返し実行している。
安定状態表示装置1Aは、運転者による運転中、運転者の不安定度を示す指標DrStateを算出し、この指標がバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であるか否かの判定を行っている。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満であるときには、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(図5参照)。
【0039】
また、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となったとき、不安定度の変動DrStateComを検出し、不安定度の変動DrStateComと補正係数kとを用いて、不安定度の指標を補正する。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標の補正値DrStateModを不安定度の履歴として、バーグラフを表示する(図9参照)。
【0040】
これにより、バーグラフで表示可能な不安定度を超えた範囲においても、運転者に対し、不安定度の変化の状態をバーグラフによって速やかに報知することが可能となる。
即ち、運転者による運転の不安定度がバーグラフの上限値を超えていて、不安定度を運転者が確認できない場合に、運転の不安定度の改善によりバーグラフ表示への応答を高める補正を行うため、運転者が安定な運転を行なうモチベーションを高めることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る安定状態表示装置1Aは、運転者による運転の不安定度を取得し、その不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えているときには、取得した不安定度の指標を不安定度の減少傾向に応じて補正し、補正した不安定度の指標を基に、バーグラフを表示する。
このため、運転者に対し、不安定度の変動をバーグラフによって速やかに報知することができる。
【0042】
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
なお、本実施形態において、アクセルペダル開度センサ10、車間距離センサ20、操舵角センサ40および車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLが運転状態検出手段に対応する。また、コントローラ70が不安定状態推定手段に対応し、コントローラ70およびナビディスプレイ100が表示手段および範囲外変動表示手段に対応する。
【0043】
(第2実施形態の効果)
(1)運転者の不安定状態を示す指標のうち、上限値を超える範囲の指標の減少傾向となる変動を基に、運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って表示手段に表示する。
そのため、運転者に対し、表示手段が表示する不安定状態を示す指標として、不安定状態の変動を速やかに報知することができる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態に係る安定状態表示装置1Aのシステム構成は、第1実施形態における図2と同様であるため、異なる部分である運転状態表示処理について主として説明する。
(運転状態表示処理)
図10は、コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
コントローラ70は、イグニションオンと共に、運転状態表示処理を繰り返し実行する。
【0045】
図10におけるステップS301〜S303の処理は、第1実施形態の図3におけるステップS101〜S103とそれぞれ同様である。
ステップS303において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上でないと判定した場合、コントローラ70は、ステップS302において算出した不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemをRAMに記憶する(ステップS304)。
【0046】
一方、ステップS303において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上であると判定した場合、コントローラ70は、不安定度の変動を検出する(ステップS305)。
このとき、第1実施形態と同様に、コントローラ70は、直前の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState1)に対する、現在の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState2)の比DrStateCom(=DrState2/DrState1)を算出する。
【0047】
次に、コントローラ70は、不安定度の変動が“1”以上であるか否かの判定を行い(ステップS306)、不安定度の変動が“1”以上であると判定した場合、RAMに記憶している不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemを読み出す(ステップS307)。
一方、ステップS306において、不安定度の変動が“1”以上でないと判定した場合、コントローラ70は、RAMに記憶している不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemを読み出し、不安定度の変動DrStateComによって、読み出した不安定度の指標を補正する(ステップS308)。
【0048】
具体的には、コントローラ70は、
DrStateMod=DrStateMem×DrStateCom
なる式によって、不安定度の指標の補正値DrStateModを算出する。
ステップS304、ステップS307およびステップS308の後、コントローラ70は、RAMに記憶している不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemおよびステップS308で算出した不安定度の指標の補正値DrStateModを基に、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(ステップS309)。
【0049】
図11は、バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度DrStateMemおよび不安定度の指標の補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
図11に示すように、バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度DrStateMemおよび不安定度の指標の補正値DrStateModを用いてバーグラフを表示した場合、コントローラ70は、バーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となる範囲において、不安定度が増加しているときには、バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度DrStateMemを表示する。
一方、コントローラ70は、バーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となる範囲において、不安定度が減少しているときには、バーグラフで表示可能な上限値を上限として、上記不安定度の補正値DrStateModを表示する。
ステップS309の後、コントローラ70は、運転状態表示処理を繰り返す。
【0050】
(動作)
次に、動作を説明する。
本発明に係る安定状態表示装置1Aは、イグニションオンと共に運転状態表示処理を繰り返し実行している。
安定状態表示装置1Aは、運転者による運転中、運転者の不安定度を示す指標DrStateを算出し、この指標がバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であるか否かの判定を行っている。
【0051】
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満であるときには、不安定度の指標DrStateをRAMに記憶し、その不安定度の履歴をバーグラフで表示する(図5参照)。
また、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となったとき、不安定度の変動DrStateComを検出し、RAMに記憶した不安定度の指標DrStateと不安定度の変動DrStateComとを用いて、不安定度の指標を補正する。
【0052】
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標の補正値DrStateModを不安定度の履歴として、バーグラフを表示する(図11参照)。
これにより、バーグラフで表示可能な不安定度を超えた範囲においても、運転者に対し、不安定度の変化の状態をバーグラフによって速やかに報知することが可能となる。
即ち、運転者による運転の不安定度がバーグラフの上限値を超え、運転者から不安定度の状況を確認できない状況を避けるため、バーグラフ表示の上限値を越えない不安定度の指標を保持することで、直近の運転の不安定度の確認を行うことが可能となる。そのため、運転者が安定な運転を行なうモチベーションを高めることができる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る安定状態表示装置1Aは、運転者による運転の不安定度を取得し、不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超える直前の不安定度の指標を記憶する。そして、不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えており、かつ、不安定度が増加傾向にあるときには、記憶した不安定度の指標を表示する。一方、不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えており、かつ、不安定度が減少傾向にあるときには、記憶した不安定度の指標を不安定度の減少度合いに応じて補正し、補正した不安定度の指標を基に、バーグラフを表示する。
【0054】
このため、運転者に対し、不安定度の変動をバーグラフによって速やかに報知することができる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
なお、本実施形態において、アクセルペダル開度センサ10、車間距離センサ20、操舵角センサ40および車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLが運転状態検出手段に対応する。また、コントローラ70が不安定状態推定手段に対応し、コントローラ70およびナビディスプレイ100が表示手段および範囲外変動表示手段に対応する。
【0055】
(第3実施形態の効果)
(1)運転者の不安定状態を示す指標が上限値を超える直前の値を保持し、指標の変動が減少傾向を示したときに、指標の変動に応じて、保持している運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って表示手段に表示する。
そのため、運転者に対し、表示手段が表示する不安定状態を示す指標として、不安定状態の変動をより速やかに報知することができる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態に係る安定状態表示装置1Aのシステム構成は、第1実施形態における図2と同様であるため、異なる部分である運転状態表示処理について主として説明する。
(運転状態表示処理)
図12は、コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
コントローラ70は、イグニションオンと共に、運転状態表示処理を繰り返し実行する。
図12におけるステップS401〜S403の処理は、第1実施形態の図3におけるステップS101〜S103とそれぞれ同様である。
ステップS403において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上でないと判定した場合、コントローラ70は、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間をカウントするためのタイマの値をリセットし、ゼロに設定する(ステップS404)。
【0057】
一方、ステップS403において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上であると判定した場合、コントローラ70は、タイマの値を1つインクリメントし(ステップS405)、不安定度の変動を検出する(ステップS406)。
このとき、第1実施形態と同様に、コントローラ70は、直前の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState1)に対する、現在の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState2)の比DrStateCom(=DrState2/DrState1)を算出する。
そして、コントローラ70は、不安定度の指標DrStateを、算出した不安定度の指標(代表値)の比DrStateComと補正係数k,lとによって補正する(ステップS407)。
【0058】
図13は、補正係数lの特性を示す図である。
図13に示すように、補正係数lは、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間をカウントするためのタイマの値Tが増加するにつれて、“1”から減少する特性を有している。
この補正係数lにより、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間が長いほど、不安定度の指標DrStateの補正量が少ないものとなる。
なお、補正係数kは、第2実施形態と同様のものである。
【0059】
ステップS407では、この補正係数k,lを用いて、
DrStateMod=DrState+k×l/DrStateCom
なる式によって、不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを算出する。
ステップS404およびステップS407の後、コントローラ70は、ステップS402において取得した不安定度の指標DrStateあるいはステップS407において算出した不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを基に、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(ステップS408)。
【0060】
図14は、不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
図14に示すように、不安定度の指標を補正してバーグラフを表示した場合、バーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となる範囲においても、不安定度の指標が減少傾向にあるときには、バーグラフによって不安定度の指標の減少を報知することが可能となる。また、不安定度の指標がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間が長いほど、補正量が少なくなり、運転者の不安定状態の継続時間を反映させて、不安定度の変動をバーグラフによって報知することができる。
ステップS408の後、コントローラ70は、運転状態表示処理を繰り返す。
【0061】
(動作)
次に、動作を説明する。
本発明に係る安定状態表示装置1Aは、イグニションオンと共に運転状態表示処理を繰り返し実行している。
安定状態表示装置1Aは、運転者による運転中、運転者の不安定度を示す指標DrStateを算出し、この指標がバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であるか否かの判定を行っている。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満であるときには、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(図5参照)。
【0062】
また、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となったとき、不安定度の変動DrStateComを検出し、不安定度の変動DrStateComと補正係数k,lとを用いて、不安定度の指標を補正する。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標の補正値DrStateModを不安定度の履歴として、バーグラフを表示する(図14参照)。
【0063】
これにより、バーグラフで表示可能な不安定度を超えた範囲においても、運転者に対し、不安定度の変化の状態をバーグラフによって速やかに報知することが可能となる。また、運転者の不安定状態の継続時間に応じた不安定度の補正値を提示することが可能となる。
即ち、運転者による運転の不安定度がバーグラフの上限値を超える状況となったときに、再度、不安定度が上限値を超える状況とならないよう、不安定度がバーグラフの上限値を超えていた時間を用いて、バーグラフの高さを補正している。そのため、運転者における安定な運転を行なうモチベーションを維持させることができる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る安定状態表示装置1Aは、運転者による運転の不安定度を取得し、その不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えているときには、取得した不安定度の指標を不安定度の変動状態および閾値以上の不安定状態の継続時間に応じて補正し、補正した不安定度の指標を基に、バーグラフを表示する。
このため、運転者に対し、不安定度の変動をバーグラフによって速やかに報知することができる。
【0065】
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
なお、本実施形態において、アクセルペダル開度センサ10、車間距離センサ20、操舵角センサ40および車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLが運転状態検出手段に対応する。また、コントローラ70が不安定状態推定手段に対応し、コントローラ70およびナビディスプレイ100が表示手段および範囲外変動表示手段に対応する。
【0066】
(第4実施形態の効果)
(1)運転者の不安定状態を示す指標の変動が減少傾向を示したときに、指標が上限値を超えてからの継続時間に応じた遅延時間を経過した後、指標の変動に応じて、保持している運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って表示手段に表示する。
そのため、運転者に対し、不安定状態を示す指標が上限値を超えていた時間を反映させつつ、表示手段が表示する不安定状態を示す指標として、不安定状態の変動を報知することができる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
【0067】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態に係る安定状態表示装置1Aのシステム構成は、第1実施形態における図2と同様であるため、異なる部分である運転状態表示処理について主として説明する。
(運転状態表示処理)
図15は、コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
コントローラ70は、イグニションオンと共に、運転状態表示処理を繰り返し実行する。
図15におけるステップS501〜S503の処理は、第1実施形態の図3におけるステップS101〜S103とそれぞれ同様である。
ステップS403において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上でないと判定した場合、コントローラ70は、不安定度の指標DrStateの最大値として保持している値DrStateMaxをクリアし、ゼロを設定する(ステップS504)。
【0068】
一方、ステップS503において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上であると判定した場合、コントローラ70は、不安定度の指標の最大値として保持している値DrStateMaxと、ステップS402において算出した不安定度の指標DrStateを比較し、より大きい方を選択して保持する(ステップS505)。
即ち、ステップS505では、
DrStateMax=Max(DrStateMax,DrState)
なる式によって、不安定度の指標の最大値として保持している値DrStateMaxと、ステップS402において算出した不安定度の指標DrStateとのうち一方をセレクトハイする。
【0069】
次に、コントローラ70は、不安定度の変動を検出する(ステップS506)。
このとき、第1実施形態と同様に、コントローラ70は、直前の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState1)に対する、現在の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState2)の比DrStateCom(=DrState2/DrState1)を算出する。
そして、コントローラ70は、保持している不安定度の指標の最大値DrStateMaxを、算出した不安定度の指標(代表値)の比DrStateComと補正係数k,mとによって補正する(ステップS507)。
【0070】
図16は、補正係数mの特性を示す図である。
図16に示すように、補正係数mは、不安定度の指標の最大値DrStateMaxが増加するにつれて、“1”から減少する特性を有している。
この補正係数mにより、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値以上となっており、その値が大きいほど、不安定度の指標DrStateの補正量が少ないものとなる。
なお、補正係数kは、第2実施形態と同様のものである。
【0071】
ステップS507では、この補正係数k,mを用いて、
DrStateMod=DrState+k×m/DrStateCom
なる式によって、不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを算出する。
ステップS504およびステップS507の後、コントローラ70は、ステップS502において取得した不安定度の指標DrStateあるいはステップS507において算出した不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを基に、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(ステップS508)。
【0072】
図17は、不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
不安定度の指標を補正してバーグラフを表示した場合、バーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となる範囲においても、不安定度の指標が減少傾向にあるときには、バーグラフによって不安定度の指標の減少を報知することが可能となる。また、不安定度の指標がバーグラフで表示可能な上限値以上となっており、その値が大きいほど、補正量が少なくなり、運転者の不安定状態の程度を反映させて、不安定度の変動をバーグラフによって報知することができる。
ステップS508の後、コントローラ70は、運転状態表示処理を繰り返す。
【0073】
(動作)
次に、動作を説明する。
本発明に係る安定状態表示装置1Aは、イグニションオンと共に運転状態表示処理を繰り返し実行している。
安定状態表示装置1Aは、運転者による運転中、運転者の不安定度を示す指標DrStateを算出し、この指標がバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であるか否かの判定を行っている。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満であるときには、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(図5参照)。
【0074】
また、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となったとき、不安定度の指標の最大値DrStateModを取得すると共に、不安定度の変動DrStateComを検出し、不安定度の変動DrStateComと補正係数k,mとを用いて、不安定度の指標を補正する。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標の補正値DrStateModを不安定度の履歴として、バーグラフを表示する(図17参照)。
【0075】
これにより、バーグラフで表示可能な不安定度を超えた範囲においても、運転者に対し、不安定度の変化の状態をバーグラフによって速やかに報知することが可能となる。また、運転者の不安定状態の程度に応じた不安定度の補正値を提示することが可能となる。
即ち、運転者による運転の不安定度がバーグラフの上限値を超える状況となったときに、再度、不安定度が上限値を超える状況とならないよう、不安定度がバーグラフの上限値を超えていたときの最大値を用いて、バーグラフの高さを補正している。そのため、運転者における安定な運転を行なうモチベーションを維持させることができる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る安定状態表示装置1Aは、運転者による運転の不安定度を取得し、その不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えているときには、取得した不安定度の指標を不安定度の変動状態および不安定状態の程度(最大値)に応じて補正し、補正した不安定度の指標を基に、バーグラフを表示する。
このため、運転者に対し、不安定度の変動をバーグラフによって速やかに報知することができる。
【0077】
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
なお、本実施形態において、アクセルペダル開度センサ10、車間距離センサ20、操舵角センサ40および車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLが運転状態検出手段に対応する。また、コントローラ70が不安定状態推定手段に対応し、コントローラ70およびナビディスプレイ100が表示手段および範囲外変動表示手段に対応する。
【0078】
(第5実施形態の効果)
(1)運転者による運転の不安定状態を示す指標が上限値を超えているときの最大値および指標の変動に応じて、運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って表示手段に表示する。
そのため、運転者に対し、不安定状態を示す指標が上限値を超えていたときの程度(最大値)を反映させつつ、表示手段が表示する不安定状態を示す指標として、不安定状態の変動を報知することができる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
【0079】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態に係る安定状態表示装置1Aのシステム構成は、第1実施形態における図2と同様であるため、異なる部分である運転状態表示処理について主として説明する。
(運転状態表示処理)
図18は、コントローラ70が実行する運転状態表示処理を示すフローチャートである。
コントローラ70は、イグニションオンと共に、運転状態表示処理を繰り返し実行する。
図18におけるステップS601〜S603の処理は、第1実施形態の図3におけるステップS101〜S103とそれぞれ同様である。
【0080】
ステップS603において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上でないと判定した場合、コントローラ70は、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間をカウントするためのタイマの値Tをリセットし、ゼロに設定する(ステップS604)。
そして、コントローラ70は、ステップS602において算出した不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemをRAMに記憶する(ステップS605)。
一方、ステップS603において、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上であると判定した場合、コントローラ70は、不安定度の変動を検出する(ステップS606)。
【0081】
このとき、第1実施形態と同様に、コントローラ70は、直前の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState1)に対する、現在の時間区分における不安定度の指標(代表値:DrState2)の比DrStateCom(=DrState2/DrState1)を算出する。
次に、コントローラ70は、不安定度の変動が“1”以上であるか否かの判定を行い(ステップS607)、不安定度の変動が“1”以上であると判定した場合、タイマを1つインクリメントし(ステップS608)、RAMに記憶している不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemを読み出す(ステップS609)。
【0082】
一方、ステップS603において、不安定度の変動が“1”以上でないと判定した場合、コントローラ70は、RAMに記憶している不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemを読み出し、不安定度の変動DrStateComによって、読み出した不安定度の指標を補正する(ステップS610)。
具体的には、コントローラ70は、
DrStateMod=DrStateMem×DrStateCom
なる式によって、不安定度の指標の補正値DrStateModを算出する。
そして、コントローラ70は、タイマ値Tに応じて、バーグラフの表示を遅延させるディレイ時間tを設定する(ステップS611)。
【0083】
図19は、タイマ値Tとディレイ時間tとの関係を示す図である。
図19に示すように、ディレイ時間tは、タイマ値Tに比例する値となっている。
ステップS611において、コントローラ70は、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上である状態から、不安定度の指標DrStateが減少傾向に転じた後、最初のループでは、ディレイ時間tとして、カウントされているタイマの値Tに比例する値を設定する(図19参照)。一方、コントローラ70は、運転の不安定度がバーグラフで表示可能な上限値以上である状態から、不安定度の指標DrStateが減少傾向に転じた後、最初のループ以外では、ディレイ時間tとしてゼロを設定する(即ち、遅延なしでバーグラフを表示する状態とする)。
【0084】
ステップS609およびステップS611の後、コントローラ70は、ステップS602において取得した不安定度の指標DrStateあるいはステップS610において算出した不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを基に、不安定度の履歴をバーグラフで表示する(ステップS612)。
このとき、コントローラ70は、ステップS611の後にバーグラフの表示を行う場合、ステップS611において設定したディレイ時間tだけ、RAMに記憶している不安定度の指標(バーグラフで表示可能な範囲の最新の不安定度)DrStateMemを基に不安定度の履歴をバーグラフで表示する。これにより、バーグラフの表示がディレイ時間tだけ遅延されることとなる。
【0085】
図20は、不安定度の指標DrStateの補正値DrStateModを用いて表示したバーグラフの一例を示す図である。
図20に示すように、不安定度の指標を補正してバーグラフを表示した場合、バーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となる範囲においても、不安定度の指標が減少傾向にあるときには、バーグラフによって不安定度の指標の減少を報知することが可能となる。また、不安定度の指標がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間が長いほど、補正量が少なくなり、運転者の不安定状態の継続時間を反映させて、不安定度の変動をバーグラフによって報知することができる。さらに、不安定度の指標がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間が長いほど、不安定度の指標が減少していることを報知するタイミングが遅くなり、運転者の運転状態をより安定な状態に誘導することが可能となる。
ステップS612の後、コントローラ70は、運転状態表示処理を繰り返す。
【0086】
(動作)
次に、動作を説明する。
本発明に係る安定状態表示装置1Aは、イグニションオンと共に運転状態表示処理を繰り返し実行している。
安定状態表示装置1Aは、運転者による運転中、運転者の不安定度を示す指標DrStateを算出し、この指標がバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上であるか否かの判定を行っている。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH未満であるときには、不安定度の指標DrStateをRAMに記憶し、その不安定度の履歴をバーグラフで表示する(図5参照)。
【0087】
また、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標DrStateがバーグラフで表示可能な上限値DrStateTH以上となったとき、不安定度の変動DrStateComを検出し、RAMに記憶した不安定度の指標DrStateと不安定度の変動DrStateComとを用いて、不安定度の指標を補正する。
そして、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標の補正値DrStateModを不安定度の履歴として、バーグラフを表示する(図20参照)。
【0088】
このとき、安定状態表示装置1Aは、不安定度の指標がバーグラフで表示可能な上限値以上となっている時間が長いほど、不安定度の指標が減少していることを報知するタイミングを遅いものとする。
これにより、バーグラフで表示可能な不安定度を超えた範囲においても、運転者に対し、不安定度の変化の状態をバーグラフによって報知することが可能となる。また、不安定度の変化を報知するタイミングを遅らせることで、運転者の運転状態をより安定な状態に誘導することとなる。
【0089】
即ち、運転者による運転の不安定度がバーグラフの上限値を超える状況となったときに、再度、不安定度が上限値を超える状況とならないよう、不安定度がバーグラフの上限値を超えていた時間を用いて、バーグラフの高さを低くするタイミングを遅らせている。そのため、運転者における安定な運転を行なうモチベーションを維持させることができる。
【0090】
以上のように、本実施形態に係る安定状態表示装置1Aは、運転者による運転の不安定度を取得し、不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超える直前の不安定度の指標を記憶する。そして、不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えており、かつ、不安定度が増加傾向にあるときには、記憶した不安定度の指標を表示する。一方、不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えており、かつ、不安定度が減少傾向にあるときには、記憶した不安定度の指標を不安定度の減少度合いに応じて補正する。そして、補正した不安定度の指標を基に、不安定度がバーグラフで表示可能な上限値を超えていた時間に応じてタイミングを遅らせて、バーグラフを表示する。
【0091】
このため、運転者に対し、不安定度の変動をバーグラフによって報知することができる。また、不安定度の変化を報知するタイミングを遅らせることで、運転者の運転状態をより安定な状態に誘導することが可能となる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
なお、本実施形態において、アクセルペダル開度センサ10、車間距離センサ20、操舵角センサ40および車輪速センサ50FR,50FL,50RR,50RLが運転状態検出手段に対応する。また、コントローラ70が不安定状態推定手段に対応し、コントローラ70およびナビディスプレイ100が表示手段および範囲外変動表示手段に対応する。
【0092】
(第6実施形態の効果)
(1)運転者による不安定状態の指標の変動が減少傾向を示したときに、指標が上限値を超えてからの継続時間に応じた遅延時間を経過した後、指標の変動に応じて、保持している運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って表示手段に表示する。
そのため、運転者に対し、表示手段が表示する不安定状態を示す指標として、不安定状態の変動を報知することができる。また、不安定状態の変化を報知するタイミングを遅らせることで、運転者の運転状態をより安定な状態に誘導することが可能となる。
したがって、本発明によれば、運転の安定状態に関する情報をより適確に報知することが可能となる。
【0093】
(応用例)
上記第2実施形態〜第6実施形態において、不安定度を示す指標がバーグラフで表示可能な上限値を超えている状態から、バーグラフで表示可能な上限値以下の状態に遷移した場合に、バーグラフの表示を違和感のないものとしながら通常の表示に戻すことが可能である。
具体的には、不安定度を示す指標を補正してバーグラフを表示している状態から、補正なしでバーグラフを表示する状態とする際に、不安定度を示す指標が減少しているにも関わらず、バーグラフがより高い表示となることを避ける処理を行う。
【0094】
例えば、不安定度を示す指標を補正なしでバーグラフを表示する状態とするときに、不安定度を示す指標を補正して表示したバーグラフより低い状態となるまで、補正して表示したバーグラフと同一のものを表示することができる。
これにより、不安定度を示す指標が減少しているにも関わらず、バーグラフがより高い表示となることを避けることができ、運転者に違和感を与える事態を防止できる。
【符号の説明】
【0095】
1 自動車、1A 安定状態表示装置、10 アクセルペダル開度センサ、20 シフト位置センサ、30 ウィンカレバー、40 操舵角センサ、50FR,50FL,50RR,50RL 車輪速センサ、60 カーナビゲーションシステム、70 コントローラ、80 ブザー、90 メータディスプレイ、100 ナビディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による車両の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段が検出した車両の運転状態を基に、運転者による運転の不安定状態を示す指標を推定する不安定状態推定手段と、
前記不安定状態推定手段によって推定した前記指標を表示の限界である上限値以下の範囲で表示領域に表示する表示手段と、
前記不安定状態推定手段によって推定した前記指標のうち、前記上限値を超える範囲の指標の変動を前記表示手段の表示領域において表示する範囲外変動表示手段と、
を備えることを特徴とする安定状態表示装置。
【請求項2】
前記範囲外変動表示手段は、前記不安定状態推定手段によって推定した前記上限値を超える範囲の前記指標の減少傾向となる変動を基に、前記運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1記載の安定状態表示装置。
【請求項3】
前記範囲外変動表示手段は、前記不安定状態推定手段によって推定される前記指標が前記上限値を超える直前の値を保持し、前記指標の変動が減少傾向を示したときに、該指標の変動に応じて、保持している前記運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2記載の安定状態表示装置。
【請求項4】
前記範囲外変動表示手段は、前記指標の変動が減少傾向を示したときに、前記指標が前記上限値を超えてからの継続時間に応じた遅延時間を経過した後、前記指標の変動に応じて、保持している前記運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項3記載の安定状態表示装置。
【請求項5】
前記範囲外変動表示手段は、前記不安定状態推定手段によって推定される前記指標が前記上限値を超えてからの継続時間および前記指標の変動に応じて、前記運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2記載の安定状態表示装置。
【請求項6】
前記範囲外変動表示手段は、前記不安定状態推定手段によって推定される前記指標が前記上限値を超えているときの最大値および前記指標の変動に応じて、前記運転の不安定状態を示す指標を減少させる補正を行って前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項2記載の安定状態表示装置。
【請求項7】
前記範囲外変動表示手段は、前記不安定状態推定手段によって推定される前記指標のうち、前記上限値を超える範囲の前記指標の変動の方向を示す図形を前記表示手段の表示領域に表示させることを特徴とする請求項1記載の安定状態表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−35808(P2012−35808A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179733(P2010−179733)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】