説明

定容積型電磁ポンプ

【課題】
定容積型電磁ポンプにおいて、定容量の精度を高めることから、吐出通路に設けられる逆流防止弁の閉弁を速くすると共に開弁を機械的に行わせするようにしたこと。
【解決手段】
吸入弁20と吐出弁27とピストン25及びそれに連結の電磁プランジャ35と、この電磁プランジャに定ストローク量を与えて、一ストローク量当り定出力量を得る電磁プランジャポンプ1において、前記吐出弁より吐出孔に至る吐出通路59に逆流防止弁49を設け、この逆流防止弁49は、ばね定数の大きいものを採用して閉弁速度を早め、その開弁を電磁プランジャ35の往復動を用いてプッシュロッド40を介して機械的(強制的に)行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関等の排気ガスの浄化用の窒素酸化物(Nox)を還元するSCR(Selective Catalistic Reduction)の目的に使用する尿素水の噴射のための供給ポンプ、ディーゼル機関の黒煙を集めるDPF(Diesel Particular Filter)の自動クリーニング装置に燃料を送油する供給ポンプ、燃料電池の改質水ポンプ等に用いられ、比較的吐出し背圧が高圧であるものに使用される定容積型電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このような用途に用いられる定容積型電磁ポンプは、吐出通路に最後流部に逆止弁(逆流防止弁)を設けて、外部機器が有する圧力(背圧)の影響を受け無くしている。例えば、特許文献1のようなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−278148号公報
【0004】
この定容積型電磁ポンプは、その吐出し量が、吐出し背圧の変動に対し変化量が少ないことを特徴としている。用いられている背圧防止弁は、プランジャの往動時(加圧時)に加圧流体の流れの慣性力によって開弁し、復動時に流体吐出し圧力の低下とともに閉弁する。
【0005】
この定容積型電磁ポンプがエアアトマイザに用いられる場合には、背圧防止弁の後流側に液体尿素等と噴霧用空気が気水混合状態で圧力を備えて存在する。一方、電磁プランジャが上死点を過ぎて下死点に向かう復動時には、背圧防止弁の前流(上流)側と吐出弁の後流(下流)側(主に電磁プランジャ駆動空間内)との流体圧力は、背圧防止弁や吐出弁の開弁のタイムラグにより低下する。その際に背圧防止弁の後流(下流)側には、背圧が存在し、そのために、電磁プランジャが上死点を過ぎた時点から背圧弁及び吸入弁が閉弁するまでの所謂閉弁時間にあっては、気水混合流体がポンプ内に逆流して滞留し、ポンプの吐出し量が不安定となる。先行特許文献1にあっては、逆流防止弁を設けたことから、それが無い場合よりも性能は向上したが、未だに前述のような不都合を残している。
【0006】
また、燃料電池の改質水ポンプのようにエアアトマイザでない場合にも改質原料がLPGの場合のように比較的改質器の圧力が高くポンプから見て、高背圧になるような場合においては吐出し量の定量性も更に悪化する。
【0007】
しかし、定容積型電磁ポンプにあって、定容量の精度の要求は厳しく、最後流部の逆流防止弁や吐出弁の閉弁速さを速くすることが前記の流体の逆流量を抑制することになり、逆流防止弁の上流側液圧≦下流側液圧の関係が成り立つ時点で、戻しばねのばね力で逆流防止弁を閉弁すれば良く、具体的には逆流防止弁の戻しばねのばね定数を高くすれば良いことになる。
【0008】
しかしながら、現実の戻しばねの設計では、ばね定数を高く取ると、必然的にばね荷重も大きくなり、逆流防止弁のクラック圧力も高くなってしまい、前記の加圧流体の流れの慣性力(圧力)のみでは開弁不能に陥る。
【0009】
そこで、この発明は、逆流防止弁に対する戻しばね定数を増加させると共に、逆流防止弁を機械的(強制的)に開弁するようにし、閉弁及び開弁の確実性を狙ったものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかる定容積型電磁ポンプは、吸入弁と吐出弁とピストン及びそれに連結の電磁プランジャと、この電磁プランジャに往復動を与える電磁コイルとを備え、前記プランジャに定ストローク量を与えて、一ストローク量当り定出力量を得る電磁プランジャポンプにおいて、前記吐出弁より吐出孔に至る下流側の吐出通路に戻しばねで付勢の逆流防止弁を配すると共に、前記電磁プランジャにプッシュロッドを取付け、このプッシュロッドを介して前記電磁プランジャの動きにより、前記逆流防止弁を戻しばねに抗して機械的に開弁せしめることを特徴としている(請求項1)。
【0011】
定容積型電磁ポンプは、パルス電圧を印加して電磁コイルから発生する周期的・断続的な起磁力で電磁プランジャを戻しばねを圧縮しながら、ロワステータに吸引する復路工程と、次のパルス電圧に至るまでの電圧がゼロのときに、電磁プランジャが戻しばねによって戻される往路工程とを繰り返す。
【0012】
電磁プランジャには、ピストンが一体的に固定されており、このピストンは中心軸方向に貫通孔が形成されるとともに、その上流側端部に吐出弁を設け、この吐出弁の上流側に吸入弁が設けられている。
前述した通り、電磁プランジャの往復動は、ピストンを往復動させ、前記吐出弁と吸入弁との協同作業によりポンプ作業を行っている。
【0013】
電磁プランジャの下流側端部には、前記逆流防止弁の開弁用のプッシュロッドが設けられ、この電磁プランジャの往復動の上死点位置側で前記逆流防止弁が、前記プッシュロッドにより突き上げられ、機械的・強制的に開弁させられる。
逆流防止弁は、高ばね定数・高荷重であって、吐出流体の慣性力(圧力)のみでは開弁することが困難であり、そのために、プッシュロッドをもって、機械的・強制的に開弁される。
【0014】
前記電磁プランジャが、上死点位置側にあるときに、前記逆流防止弁は開かれ、下死点位置側にあるときに閉じられることを特徴としている(請求項2)。それから前記逆流防止弁の開弁と閉弁との比は、前記プッシュロッドの先端と前記逆流防止弁との電磁プランジャの下死点時の離間距離により制御されることを特徴としている(請求項3)。即ち、逆流防止弁の開弁と閉弁とが、電磁プランジャの往復動に従って従動するプッシュロッドで制御され、その開弁又は閉弁との比は、プッシュロッドの先端と前記逆流防止弁との上死時の離間距離により制御され、この離間距離が大きくなるにつれて閉弁範囲が増え、その分開弁範囲が減少する。
【0015】
前記電磁プランジャの往復動方向に一対のアッパ及びロアのストッパが設けられていることを特徴としていることから(請求項4)電磁プランジャは両ストッパ間の一定の距離をストロークし、定出力量が得られる。
【0016】
前記逆流防止弁は、その上流側に受けロッドが設けられ、この受けロッドが前記プッシュロッドに対峙していることを特徴としても良い(請求項5)。前記電磁プランジャに設けられたプッシュロッドの先端と、前記逆流防止弁とは、具体的実施例では、逆流防止弁側に受けロッドを備えている。
【0017】
また、逆流防止弁は、その反受けロッド側にクリーニングロッドが設けられ、このクリーニングロッドは吐出孔に緩く挿入されていることを特徴としている(請求項6)。これにより、逆流防止弁の開閉により従動してクリーニングロッドも往復動が繰り返され、吐出孔内をクリーニングし、目詰まりを防止できるし、クリーニングロッドと吐出孔の円径の差、即ち微小隙間による粘性ダンパ効果も有し、逆流防止弁のジャンピング,逆流の防止作用も果たしている。
【0018】
上述の請求項1の構成の定容積型電磁ポンプにあって、前記電磁プランジャの電磁プランジャ稼動室を構成する前記アッパストッパが、それが取付られるアッパステイタに対して前記プランジャ稼動室内の圧力が所定の圧力を越えると戻しばねに抗して動かされるようにしたことを特徴とする(請求項7)。電磁ポンプの運転停止中にあって、ポンプ内部の流体が吸入弁、吐出弁、閉止弁の閉止されることにより閉じ込められる。このような構造から、周囲温度が上昇すると、内部の流体の熱膨張によってポンプ内部の圧力が上昇し、その時点でその圧力が作動に支障を来たすか、又は場合によっては、液漏れに至ることがある。逆に低温下にあっては、水系の流体の場合、氷結が生じて修復不能なダメージを被ることがある。
【0019】
前述のように、この定容積型電磁ポンプは、運転停止時に流体の流れ方向にて閉じる閉止弁を内蔵するために電磁プランジャや稼動室内は密閉状態となり、前記凍結、流体の熱膨張によって流体圧力が過昇する。この過昇圧力を逃すため、前記閉止弁の弁座を兼ねるアッパストッパをばねに抗して移動せしめて、前記閉止弁と弁座を兼ねるアッパストッパとの間に隙間を生じさせて過昇圧力を下流側に排出する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、請求項1の発明によれば、電磁プランジャが上死点を過ぎて下死点に向かう復動時に、逆流防止弁が戻しばねにて閉じられ、吐出孔以降に存在する流体圧力(背圧)による逆流は防がれる。それから、進んで上死点近くに至ると、プッシュロッドが前記逆流防止弁に当接するようになり、逆流防止弁は突き上げられて開弁する。この際、すでに吐出弁は弁座に着座されていて、逆流が起きることがない。それから、次の工程の電磁プランジャならびにピストンの復動工程時に逆流防止弁の閉弁タイムラグが短くなるため、定吐出し量が確保される。
【0021】
電磁プランジャが下死点から上死点に向かう往動時の初期にあっては、逆流防止弁は未だ閉弁状態にある。それから、進んで上死点近くに至ると、プッシュロッドが電磁プランジャと共に、アッパステイタ側に移動するため、プッシュロッドが逆流防止弁を突き上げ、逆流防止弁は弁座から離れて電磁プランジャ稼動室内の流体は吐出孔より外部機器へ吐出される。同時に吐出弁は閉弁、吸入弁は開弁されポンプ内に流体が吸入される。次に電磁プランジャが上死点から下死点に向かう復動には、逆流防止弁は閉弁、吐出弁は開弁、吸入弁は閉弁となって、吐出弁と吸入弁の間(ポンプ室)の流体は吐出弁の下流部である電磁プランジャ稼動室に移送される。
【0022】
請求項2の発明及び請求項3の発明によれば、逆流防止弁の開弁と閉弁との比は、前記プッシュロッドの先端と逆流防止弁との上死点時の離間距離により制御され、この離間距離が小さければ、逆流防止弁の開弁率が大きく、逆に大きくなれば閉弁率が大きくなる。
【0023】
請求項4の発明によれば、一対のアッパ及びロアのストッパにより、電磁プランジャはその往復動が規制され、一定の距離をストロークし、定出力量が得られる。
【0024】
請求項5の発明によれば、前記プッシュロッドと逆流防止弁との当接構造を、逆流防止弁側に受けロッドを設けて、それを介して、前記プッシュロッドと当接することから、受けロッドが弁座の通孔を通ることでガイドとなり、逆流防止弁の片寄りが防がれ、流体をスムーズに吐き出しすることができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、逆流防止弁の反受けロッド側に設けられたクリーニングロッドは、逆流防止弁の動き(開閉)により動かされ、吐出孔に析出する物質(例えばSCRの場合は尿素の結晶)を取り除くことで、目詰まりが防がれる。また、クリーニングロッドと吐出孔の円径の差、即ち微小隙間による粘性ダンパ効果を持ち、逆流防止効果も持つと共に、逆流防止弁のジャンピングの防止が図られている。
【0026】
請求項7の発明によれば、電磁ポンプの稼動停止時に電磁プランジャ稼動室が吸入弁、吐出弁のみならず閉止弁により閉塞されたことにより、内部が密閉状態となり、その内部に溜まっている流体が周囲温度の上昇により、熱膨張による体積増となって内部圧が異常上昇すると、アッパストッパが戻しばねに抗して動かされ、閉止弁との間が開き、通孔から吐出通路に逃されることから、内部の機器の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】は、この発明の実施例の縦断面である。
【図2】は、前記吐出弁付近の拡大図である。
【図3】は、逆流防止弁とプッシュロッドの関係を示し、上死点位置にあるときにプッシュロッドにより逆流防止弁は突き上げられて開かれている逆流防止弁付近の拡大図である。
【図4】は、逆流防止弁とプッシュロッドとの関係を示し、下死点位置にあるときにプッシュロッドは後退して逆流防止弁から離れ、戻しばねの力により逆流防止弁は閉じられている逆流防止弁付近の拡大図である。
【図5】ピストン(電磁プランジャ)の動きと、逆流防止弁の開と閉の関係を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0029】
図1乃至4において、内燃機関の排ガス中の窒素酸化物(Nox)を還元するSCRの尿素水噴射用のエアアトマイザに用いられる定容積型電磁ポンプ1が示され、鉄などの磁性材で製造されたケース2内にパルス電流が印加されるコイル3を備え、このコイル3は樹脂製のボビン4に電線が巻装されて構成され、ボビン4の中心を貫通して形成された貫通孔には、非磁性材より成るガイドパイプ6が嵌挿されている。
【0030】
このガイドパイプ6の図1上の上方に磁性材より成るアッパステイタ8が、下方に磁性材よりなるロアステイタ9がそれぞれ接続され、内部に下記する電磁プランジャ稼動室10が構成されている。
前記ロアステイタ9は、その軸方向にシリンダ等収納孔12を有し、下方に至るにしたがって小径となり、その下方端では、吸入孔13となっている。この吸入孔13を構成する部位は吸入継手14となっている。
【0031】
前記シリンダ等収納孔12は、その軸方向の下端(吸入通路側)より、吸入弁ブロック15、非磁性体のシリンダ16、スペーサ17、最後にゴムや樹脂製のロアストッパ18が配されている。前記吸入弁ブロック15には、その内部に逆止弁である吸入弁20と、その吸入弁20が着座する弁座21と、吸入弁20と弁座21に着座させる戻しばね22とが配され、また前記弁座21にストレーナ23が設けられている。
【0032】
シリンダ16は、円筒形の部材で、イオンの溶出が少ないポリエーテルケトン(PEEK)や金属により構成され、内部に下記するピストン25が摺動自在に挿入されている。ピストン25は、金属材で製造され、中心で軸方向に貫通孔26を持つ円筒体で、前記シリンダ16に摺動自在に挿入され、下記する電磁プランジャ35の往復動に従動される。このピストン25の最下端に逆止弁である吐出弁27が固装されている。
【0033】
吐出弁27は、図2に拡大して示すように、この吐出弁27が着座する弁座28と、吐出弁27を弁座28に着座させる戻しばね29より構成されている。
具体的には、貫通孔26へ戻しばね29、吐出弁27を挿入し、それから弁座28を圧入して取付られている。
【0034】
ポンプ室31は、シリンダ16と、この下端側の吸入弁20と、ピストン25と、この最下端に固装の吐出弁27とより成り、ピストン25の往復動により容積変化をおこしポンプ作用が行われる。
【0035】
前記シリンダ16の図1上の上端に、前記したように、スペーサ17とロアストッパ18が配され、このロアストッパ18は前記ロアステイタ9に固定され、前記シリンダを固定すると共に下記する電磁プランジャ35の下方動を規制し、且つ騒音と振動を防いでいる。このロアストッパ18は弾性体のフッソゴム等が用いられている。
【0036】
電磁プランジャ35は、磁性材により作られ、前記電磁プランジャ稼動室10内に配され、前記スペーサ17を介してシリンダ16の間に設けられた戻しばね36によって反シリンダ側に押圧され、下記するアッパストッパ42に当接されている。したがって、電磁プランジャ35は、前記したロアストッパ18とアッパストッパ42にて規制され、所定の定ストロークAを有することになる。
【0037】
この電磁プランジャ35の下端には、下方に向けて開口の有底の孔37が形成され、この有底の孔37に前記ピストン25が嵌着されて、ピストン25は下方へ伸びている。また電磁プランジャ35の上端には、閉止弁39ならびにプッシュロッド40が設けられている。前記閉止弁39はリング状で、プッシュロッド40の周りに嵌着して設けられ、無通電時に、アッパステイタ8に嵌合して設けられているアッパストッパ42に当接している。
【0038】
アッパストッパ42は、非磁性の金属または合成樹脂等が用いられ、その中心軸方向に通孔43が形成され、前記したアッパステイタ8に摺動可能に配されている。このアッパステイタ8は戻しばね45により付勢され、アッパステイタ8に形成のつば部46に押し付けられており、前記電磁プランジャ稼動室10の一面を構成している。
【0039】
また、このアッパストッパ42に形成の通孔43は、前記電磁プランジャ稼動室10内の流体を下流に逃す働きをしていると共に、通孔43に前記プッシュロッド40が緩く挿入され、その先端がこの通孔43より突出している。また、通孔43は電磁プランジャ35の上死点位置では、プッシュロッド40の外周に嵌合の前記閉止弁39がアッパストッパ42に着座されて閉じられている。
【0040】
前記アッパストッパ42は、前記した通り、前記電磁プランジャ35の上方側のストッパ作用を得るだけでなく、電磁プランジャ稼動室10の一面を構成するものであるから、ポンプの停止時に内部圧が異常に上昇すると、その圧力を下流へ逃すために、アッパストッパ42が戻しばね45に抗して動かされる。すると、閉止弁39との間が開き、異常圧力は通孔43より流出させ、吐出し側へ排出される。この実施例では、内部圧が0.5Mpa/cm2となるとアッパストッパ42は開かれる。
【0041】
この電磁プランジャ稼動室10は、前述したごとく電磁プランジャ35の往復動が行われるのみならず前記吐出弁27以降の貫通孔26、及び前記アッパストッパ42に形成の通孔43を介して下記する逆流防止弁49の上流側の吐出通路59による第2のポンプ室となっている。即ち、電磁プランジャ35の往復動により、ピストン25のシリンダ16からの伸び及び縮みによる室の容積変化を起こしている。
【0042】
ちなみに電磁プランジャ35の往動時は容積は減少し、復動時には容積が拡大する。この容積変化作用は前記ポンプ室31の容積変化とは逆となっている。このため、電磁プランジャの復動時に、前記ポンプ室31は圧縮工程にあり、ポンプ室31内の流体は吐出弁27を開いて吸入工程の電磁プランジャ稼働室10内に流出されるため、流体は、ポンプ室31から電磁プランジャ稼動室10内に入れ換るいわゆる移送作用が行われる。そして、電磁プランジャ35が往動時に至ると、電磁プランジャ稼動室10内の容積の減少から流体は吐出孔60より吐出される。尚、その際ポンプ室31は吸入工程となっている。
【0043】
逆流防止弁49は、前記通孔43より吐出孔60に至る吐出通路59内に配され、逆流防止弁ブロック51と、通孔54を持つ弁座52と、逆流防止弁49を弁座52に着座させる戻しばね53とを備えているいわゆる逆止弁である。
【0044】
この逆流防止弁49は、弁座側に突出の受けロッド55と、吐出孔側に突出のクリーニングロッド56とがそれぞれ弁を挟んで設けられている。前記受けロッド55は、弁座52の通孔54に緩く挿入されて、この通孔54より突出し、前記プッシュロッド40の先端に対峙している。また、クリーニングロッド56は前記吐出孔60内に緩く挿入され、往復動されることで、析出する物質による目詰まりを防止できるし、また、クリーニングロッドと吐出孔60の円径の差、即ち微小隙間による粘性ダンパ効果を有し、逆流の防止作用と逆流防止弁49のジャンピング防止作用も有している。
【0045】
この逆流防止弁49は、吐出流体の流れ方向に対向するように配され、しかも戻しばね53のばね定数が大きく設定してあるため、吐出流体の慣性力(圧力)によっては開弁できない。そこで、この逆流防止弁49の開弁を、前記したプッシュロッド40により行わせる。
【0046】
図3、図4の拡大図面から逆流防止弁49の受けロッド55と電磁プランジャ35に設けられた前記プッシュロッド40との当接関係を説明すると、電磁プランジャ35が上死点位置にある時は図3の状態に、下死点位置にある時は、図4の状態にある。上死点時には、プッシュロッド40が上昇し、受けロッド55に当接して、受けロッド55を押し、この受けロッド55を介して逆流防止弁49が戻しばね53に抗して動かされる。これにより逆流防止弁49が突き上げられ、強制的に弁座52から離され、通孔54は開口する。下死点時には、プッシュロッド40が下降し、受けロッド55と離れ、プッシュロッド40との間に隙間距離Bが生じる。したがって、この下死点時にあっては、逆流防止弁49は弁座52に戻しばね53により着座されることになり、吐出孔60から外部背圧による流体の逆流が防がれる。
【0047】
図5において、電磁プランジャ35のストロークと逆流防止弁49の開弁と閉弁との関係を示す特性線図が示され、上死点付近では開弁範囲となり、逆に下死点付近では、閉弁範囲となっている。この開弁範囲と閉弁範囲とは、前記プッシュロッド40と受けロッド55との下死点時の離間距離B(図4に示す。)により変更され、この離間距離Bが大きくなるにつれて閉弁範囲が大きく、その分、開弁範囲が小さくなる。従って、下死点時の離間距離Bを変更することで、逆流防止弁の開閉特性を選ぶことができる。
【0048】
上述構成の定容積型電磁ポンプ1が尿素水噴射用のエアアトマイザに用いられる場合には、吐出孔60の先に加圧空気が供給される加圧ポンプ用継手62と、尿素噴射するノズルへ接続の尿素噴射用継手63とがそれぞれ接続されるが、その他の機器は図示されておらず説明は省略する。
【0049】
定容積型電磁ポンプ1は、そのコイル3にパルス電流を流すと、オン時にコイル3が励磁され、アッパステイタ8、ロアステイタ9、電磁プランジャ35が磁化され、電磁プランジャ35が戻しばね36に抗して下方へ動き、その下端がロアストッパ18に当接し、下方動が止められる。この電磁プランジャ35の動きは、ピストン25に伝えられ、このピストン25は下方へ従動し、ポンプ室31は、図1の状態(上死点位置)から、下死点位置までその容積が縮小する。これによりポンプ室31内の流体が吐出弁27の下流側即ち貫通孔26へ移送される。同時に、貫通孔26、電磁プランジャ稼動室10等の逆流防止弁49までの第2ポンプ室の容積は、ピストン25がシリンダ16内に入り込むため、拡大する。
【0050】
パルス電流がオフとなると、アッパステイタ8、ロアステイタ9、電磁プランジャ35が消磁され、電磁プランジャ35が戻しばね36により、上方へ動かされ、その上端がアッパストッパ42に当接し、上方動が止められる。その際に、ピストン25も上方へ従動し、電磁プランジャ稼動室10の第2のポンプ室の容積が、ピストン25がシリンダ16から抜け出した体積分だけ縮小すると共に、プッシュロッド40が当接して逆流防止弁49を開き、流体が吐出孔60から吐出される。同時にピストン25の貫通孔26の吐出弁27は閉弁され、吸入弁20が開弁されるので、流体は吸入孔13からポンプ室31に吸入される。
【0051】
そして、パルス電流が再びオンになると、電磁プランジャ35及びピストン25が下方動し、移送作用が開始される。このような作用が繰り返され、ポンプ作用が行われるが、所定のストロークAを持って往復動されるため、定容量が連続して吐出しされる。
【0052】
このような構成を取ることで印加されるパルスに対応して定容量が連続して吐出されるが、定容量の精度の要求は厳しく、逆流による容量の不安定になるのを防ぐため、吐出通路が設けられる逆流防止弁の閉弁及び開弁を速く且つ確実性を狙ったもので、その目的を達成するため、前述した通りの、逆流防止弁49に対しばね定数の大きな戻しばねを用いて速く閉弁させ、また開弁は、電磁プランジャ35の往復動を利用し、プッシュロッド40を介して機械的に行なわせるように構成した。このような構成及び作用は前述した通りである。
【符号の説明】
【0053】
1 定容積型電磁ポンプ
3 コイル
8 アッパステイタ
9 ロアステイタ
10 電磁プランジャ稼動室
16 シリンダ
18 ロアストッパ
20 吸入弁
22 戻しばね
25 ピストン
26 貫通孔
27 吐出弁
31 ポンプ室
35 電磁プランジャ
36 戻しばね
39 閉止弁
40 プッシュロッド
42 アッパストッパ
43 通孔
49 逆流防止弁
53 戻しばね
54 通孔
55 受けロッド
56 クリーニングロッド
59 吐出通路
60 吐出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入弁と吐出弁とピストン及びそれに連結の電磁プランジャと、この電磁プランジャに往復動を与える電磁コイルとを備え、前記プランジャに定ストローク量を与えて、一ストローク量当り定出力量を得る電磁プランジャポンプにおいて、前記吐出弁より吐出孔に至る吐出通路に戻しばねで付勢の逆流防止弁を配すると共に、前記電磁プランジャにプッシュロッドを取付け、このプッシュロッドを介して前記電磁プランジャの動きにより、前記逆流防止弁を戻しばねに抗して機械的に開弁せしめることを特徴とする定容積型電磁ポンプ。
【請求項2】
前記電磁プランジャが上死点位置側にあるときに前記逆流防止弁は開かれ、下死点位置側にあるときに閉じられることを特徴とする請求項1記載の定容積型電磁ポンプ。
【請求項3】
前記逆流防止弁の開弁と閉弁の比は、前記プッシュロッドの先端と前記逆流防止弁との電磁プランジャの下死点時の離間距離により制御されることを特徴とする請求項1又は2記載の定容積型電磁ポンプ。
【請求項4】
前記電磁プランジャの往復動方向端に一対のアッパ及びロアのストッパが設けられていることを特徴とする請求項1記載の定容積型電磁ポンプ。
【請求項5】
前記逆流防止弁は、その上流側に受けロッドが設けられ、この受けロッドが前記プッシュロッドに対峙していることを特徴とする請求項1又は3記載の定容積型電磁ポンプ。
【請求項6】
前記逆流防止弁の反受けロッド側にクリーニングロッドが設けられ、このクリーニングロッドは、吐出孔に緩く挿入されたことを特徴とする請求項1又は5記載の定容積型電磁ポンプ。
【請求項7】
前記電磁プランジャの電磁プランジャ稼動室を構成する前記アッパストッパが、それが取付られるアッパステイタに対して前記電磁プランジャ稼動室内の圧力が所定の圧力を越えると戻しばねに抗して動かされるようにしたことを特徴とする請求項1記載の定容積型電磁ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169189(P2011−169189A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32298(P2010−32298)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000228693)日本コントロール工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】