説明

定量注出装置

【課題】タンク内の飲料をその水頭圧により送出することでタンク内の飲料の量により飲料の流量が変化するとともに注出バルブを閉止させるのに僅かに遅れ時間があるときにも注出目標重量となるように正確に注出することができるディスペンサを提供する。
【解決手段】定量注出装置10の制御装置20は、重量センサ15により計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出する重量変化勾配算出手段と、重量変化勾配から注出目標重量となる注出残り時間を算出する注出残り時間算出手段と、注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間以内であるか否かを判定する判定手段とを備え、判定手段により注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間以内と判定されると注出バルブ13を閉止させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に貯留した飲料等の液体をカップ等の飲用容器に目標重量となるように注出する定量注出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ビール樽等の飲料容器から炭酸ガスの圧力により供給されるビール等の飲料の送出経路に設けられた開閉バルブと、送出口の下方に設けられてカップやジョッキ等の飲用容器を載置する載置台と、載置台上に負荷する重量を検出する重量検出手段と、重量検出手段によって検出された重量に応じて開閉バルブを閉止させる制御手段を備えた飲料ディスペンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−234595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の飲料ディスペンサは、重量検出手段によって検出された飲料の重量がジョッキ等の飲用容器の容量に対応した目標重量となると開閉バルブを閉止させるように制御している。このような飲料ディスペンサにおいては、開閉バルブにモータバルブを用いたときには、開閉バルブを閉止させるのに僅かな遅れ時間が生じることがあり、重量検出手段により目標重量となることを検出してから開閉バルブを閉止させたのではこの僅かな遅れ時間に余分な量の飲料が注出されていた。これが、ジョッキのような比較的大きな飲用容器に余分な量の飲料を注出したときには目標重量に対して大きな誤差とならないが、小さなカップに注出したときには目標重量に対して大きな誤差となっていた。
【0005】
そこで、このような飲料ディスペンサにおいては、開閉バルブを閉止させるのに要する僅かな遅れ時間により注出される余分な飲料の量を引いた重量を検出して開閉バルブを閉止させれば、飲用容器に目標重量となるように注出することができる。しかし、例えばタンク内に蓄えた飲料の水頭圧により飲料を送出するようにした飲料ディスペンサでは、タンク内の飲料の高さによって変化する水頭圧により飲料の流量が変化するので、僅かな遅れ時間により注出される飲料の量が一定とならず、飲料の目標重量に対する誤差を解消することができなかった。
【0006】
このような飲料ディスペンサにおいては、例えば、開閉バルブの僅かな遅れ時間が0.5秒として、飲料の流量が水頭圧により10g〜50g/秒の範囲で変化するものでは、開閉バルブの僅かな遅れ時間に5g〜25gの範囲の飲料が注出されることになり、この僅かな遅れ時間により注出される量は水頭圧の違いにより20gの違いが生じていた。この飲料ディスペンサにより、小さな紙コップ等で100gを目標重量として注出するものでは、水頭圧の違いにより最大2割の注出量の違いが生じることになっていた。
【0007】
そこで、飲料の送出路に流量センサを設けるようにして、この流量センサによって検出される飲料の流量により目標重量となる時間を算出すれば、開閉バルブの遅れ時間に対応した時間に開閉バルブを閉止させることができるが、飲料の送出経路に流量センサを設けるとその近傍に汚れが付着するおそれがあるので衛生上の理由から設けることができなかった。本発明は、このような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、液体を貯留するタンクと、タンク内から送出される液体の送出路を開閉する注出バルブと、注出バルブの開閉により注出される液体の重量を検出する重量センサと、重量センサの検出重量に基づきタンクから送出される液体が所定の目標重量となるように注出バルブの開閉を制御する制御装置とを備えた定量注出装置において、制御装置は、重量センサにより計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出する重量変化勾配算出手段と、重量変化勾配から目標重量となる注出残り時間を算出する注出残り時間算出手段と、注出残り時間が注出バルブを閉止させるのに要する所定時間以内であるか否かを判定する判定手段と、判定手段による判定結果に基づいて注出バルブの開閉を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする定量注出装置を提供するものである。
【0009】
上記のように構成した定量注出装置においては、制御装置は重量センサにより計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出する重量変化勾配算出手段と、重量変化勾配から目標重量となる注出残り時間を算出する注出残り時間算出手段と、算出した注出残り時間が注出バルブを閉止させるのに要する所定時間以内であるか否かを判定する判定手段と、判定手段による判定結果に基づいて注出バルブの開閉を制御する制御手段とを備えたので、タンク内から送出される液体の流量が変化する場合でも目標重量となる注出残り時間を算出することができ、算出した注出残り時間が注出バルブを閉止させるのに要する所定時間以内となると予め注出バルブを閉止させることができるので、たとえ液体の流量が変化する場合であっても目標重量となるように正確に注出することができるようになる。また、この定量注出装置は、重量センサにより計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出しているので、液体の送出路に流量センサのような障害物を設けることなく流量となる重量変化勾配を算出することができ、液体の送出路に障害物を設けることによる汚れの付着のおそれがない。
【0010】
上記のように構成した定量注出装置においては、制御装置は注出バルブを開放したときに重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が増加しないことを検出すると、タンク内の液体が液切れ状態であることを検知する検知手段を備えるのが好ましく、このようにすれば、水位センサ等の新たなセンサ等を設けることなくタンク内の液体が液切れ状態であることを検知することができるようになる。
【0011】
上記のように構成した定量注出装置においては、制御装置は注出バルブを開放して液体を注出しているときに重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が所定値より低下したことを検出すると、タンク内の液体が液切れ状態であることを検知する検知手段を備えるようにするのが好ましく、このようにしたときにも、水位センサ等の新たなセンサ等を設けることなくタンク内の液体が液切れ状態であることを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る定量注出装置の一実施形態であるディスペンサの概略図である。
【図2】制御装置による重量変化勾配を算出するプログラムを示すフローチャートである。
【図3】制御装置による注出制御のプログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る定量注出装置の一実施形態である飲料を注出するディスペンサ10の実施形態を図面を参照して説明する。本発明に係るディスペンサ10は、飲料(液体)を貯留するタンク11と、タンク11の下部から延出されて同タンク11内から送出される飲料の送出管(送出路)12を開閉する注出バルブ13と、送出管12の送出口の下側に設けられて注出バルブ13の開閉により注出される飲料を受けるカップCを載置する載置台14と、注出バルブ13の開閉により注出される飲料の重量を検出する重量センサ15と、注出目標重量(目標重量)を選択して注出を開始させるための操作スイッチ16と、重量センサ15の検出重量に基づきタンク11から送出される飲料が所定の注出量となるように注出バルブ13の開閉を制御する制御装置20とを備えている。而してこのディスペンサ10の制御装置20は、重量センサ15により計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出する重量変化勾配算出手段と、重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配から注出目標重量となる注出残り時間を算出する注出残り時間算出手段と、注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間以内であるか否かを判定する判定手段と、判定手段による判定結果に基づいて注出バルブ13の開閉を制御する制御手段とを備えている。以下に、このディスペンサ10について詳述する。
【0014】
このディスペンサ10は、タンク11内に貯えた飲料をその水頭圧により送出するものであり、注出バルブ13を開放するとタンク11内の飲料がその水頭圧により送出管12を通って載置台14上に載置されたカップCに注出する。このディスペンサ10のタンク11内に十分量の飲料が充填されている状態では、タンク11内の飲料はその水頭圧により15g/秒〜50g/秒の流量で送出される。注出バルブ13は、内蔵するモータを回転させることによりバルブの開閉をさせるモータバルブである。本実施形態のような飲料のディスペンサ10は、飲料の送出経路にある部品等を必要に応じて分解して洗浄する必要があり、また、バルブの開閉を手動でも可能とする必要があるために、この注出バルブ13は分解洗浄をしにくく手動で操作ができない電磁弁によるものでなく、分解洗浄を可能とするとともに手動でも操作可能なモータバルブを採用している。この注出バルブ13は、モータバルブであるためにバルブを閉止させるのに0.5秒の所定時間を要するものである。操作スイッチ16は、カップCの大きさに応じた注出量を選択する注出量選択スイッチ16aと、注出バルブ13を開放させて注出を開始させる注出スイッチ16bとを備えている。
【0015】
ディスペンサ10は、注出バルブ13、重量センサ15及び操作スイッチ16に接続された制御装置20を備えている。制御装置20はマイクロコンピュータを備えており、図3に示すフローチャートに対応するプログラムを実行して、重量センサ15による検出重量に基づいて注出バルブ13の作動を制御して、カップCに飲料を所定の注出量となるように注出制御するものである。また、制御装置20は、メモリ21と2つのタイマ22,23とを備えており、メモリ21には、注出量選択スイッチ16aにより選択されるカップCの大きさに対応した注出量を定める注出量テーブルが予め記憶されている。また、メモリ21には、注出バルブ13を閉止させるのに要する時間が予め記憶されており、この注出バルブ13を閉止させるのに要する時間は本実施形態においては0.5秒と設定されている。また、メモリ21はタイマ22による経過時間と重量センサ15による検出重量を記録するための1〜30のインデックスを付した第1のリングバッファ領域とを備えており、この第1のリングバッファ領域には、1秒間に20回の間隔で検出されたタイマ22の経過時間Xと、重量センサ15の検出重量Yとがインデックス順に繰り返し記録される。また、メモリ21には、後述する重量変化勾配と算出重量とを記録するための1〜30のインデックスを付した第2のリングバッファ領域を備えており、第2のリングバッファ領域には、算出された重量変化勾配と算出重量とがインデックス順に繰り返し記録される。
【0016】
また、制御装置20は、重量センサ15により計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出する重量変化勾配算出手段と、重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配から注出目標重量となる注出残り時間を算出する注出残り時間算出手段と、注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間より短いか否かを判定する判定手段と、判定手段による判定結果に基づいて注出バルブ13の開閉を制御する制御手段とを備えている。
【0017】
重量変化勾配算出手段は、所定間隔として1秒間に20回の間隔で検出するタイマ22の経過時間と、重量センサ15の検出重量とをメモリ21の第1のリングバッファ領域にインデックスの順番に記録して、これらメモリ21の第1のリングバッファ領域に記録した経過時間と検出重量とを基にしてy=ax+b(x:時間、y:重量)よりなる回帰直線を求める。この回帰直線の傾きaが重量変化勾配となり、切片bが回帰直線から算出される飲料の重量(以下、重量センサ15により検出される検出重量と区別するために算出重量という)となる。この重量変化勾配と算出重量とを求めるプログラムを図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0018】
図2に示すように、制御装置20は、ステップ100に示すプログラムを繰り返し実行する。ステップ101においては、制御装置20は、重量センサ15による検出重量を0にし、タイマ22による検出時間を0にし、各リングバッファ領域のインデックスを0にして各設定値を初期設定値とする。次に、ステップ102において、制御装置20は、第1のリングバッファ領域の1〜30の全てのインデックスにタイマ22の経過時間Xと重量センサ15の検出重量Yが記録されるのを待機してからステップ103に進める。ステップ103において、制御装置20は、メモリ21の第1のリングバッファ領域で各インデックスに記録したタイマ22の各経過時間Xと重量センサ15による各検出重量Yを読み出し、制御装置20は、ステップ104〜ステップ110による処理を実行してステップ103において読み出したタイマ22の各経過時間Xと重量センサ15による各検出重量Yから時間をxとし重量をyとしたy=ax+bよりなる回帰直線を求める。
【0019】
ステップ104において、制御装置20は、ステップ103にて取得したタイマ22の最も新しい経過時間をx0とする。また、制御装置20は、xの総和であるΣx=0、xxの総和であるΣxx=0、xyの総和であるΣxy=0、yの総和であるΣy=0とする。また、制御装置20は、次のステップ105の処理回数をカウントするための変数i=0、第1のリングバッファ領域のインデックスを特定するための変数j=最も新しい経過時間x0が記録されたインデックス数として、タイマ22をリセットする。
【0020】
次に、制御装置20は、ステップ105〜109による処理を20回実行して回帰直線を求めるためのΣx、Σxx、Σxy、Σyを算出する。ステップ105において、制御装置20は、ステップ103において取得したタイマ22による経過時間X、重量センサ15による検出重量Yを用いて、x0からの経過時間x(経過時間xは最も新しい経過時間x0より前の経過時間を用いている)とこの経過時間xのときの検出重量yとを求め、これら経過時間xと検出重量yとを各々用いて算出するxの総和であるΣx、xxの総和であるΣxx、xyの総和であるΣxy、yの総和であるΣyを算出する。具体的にはx、y、Σx、Σxx、Σxy、Σyは下式のように算出する。
x=x0−インデックスjに記録された経過時間X
y=インデックスjの検出重量Y
Σx=Σx+x
Σxx=Σxx+xx
Σxy=Σxy+xy
Σy=Σy+y
【0021】
次に、ステップ106において、制御装置20は、変数iに1を加算し、変数jに1を減算する。ステップ107において、制御装置20は、ステップ106において減算された変数jが0以下となっているか否かを判定し、変数jが0以下でなければNOと判定してステップ109に進める。これに対し、変数jが0以下であれば第1のリングバッファ領域において該当するインデックスがないので、ステップ107においてYESと判定してステップ108に進め、ステップ108において、制御装置20は変数jを30としてからステップ109に進める。これにより、変数jが0となって該当する第1のリングバッファ領域のインデックスが無くなると、第1のリングバッファ領域のインデックスを30に戻すようにしている。
【0022】
次に、ステップ109において、制御装置20は、ステップ105における処理が20回繰り返されて各総和Σx、Σxx、Σxy、Σyが20回の総和であるか否かを判定するために変数iが20より小さいか否かを判定し、変数iが20より小さいときには「NO」と判定してステップ105に戻す。
【0023】
ステップ105〜109の処理を繰り返し実行して、1つずつ減算される変数jにより最も新しい経過時間x0が記録されたインデックスより1つずつ前に戻されるインデックスに記録した検出時間Xと検出重量Yとを用いて経過時間xと検出重量yを求め、これら経過時間xと検出時間yとから各総和Σx、Σxx、Σxy、Σyを繰り返し算出しているなかで、各総和Σx、Σxx、Σxy、Σyが20回の総和となってi=20となると、ステップ109において、制御装置20は「YES」と判定して、ステップ110において、制御装置20は、y=ax+b(x:時間、y:重量)よりなる回帰直線の傾きaと切片bと算出する。具体的には、傾きa=(i×Σxy−Σx×Σy)/(i×Σxx−Σx×Σy)により求められ、切片b=(Σxx×Σy−Σxy×Σx)/(i×Σxx−Σx×Σy)により求められ、この傾きaは重量偏差勾配であり、切片bは算出重量となる。制御装置20は、これら傾きaよりなる重量偏差勾配と切片bよりなる算出重量とを第2のリングバッファ領域にインデックスの順番に記録している。
【0024】
ステップ111において、制御装置20は、第2のリングバッファ領域のインデックスに1を加算してステップ112に進める。ステップ112において、制御装置20は、第2のリングバッファ領域のインデックスがこのバッファ領域の大きさである30より大きいか否かの判定をする。ステップ112において、制御装置20は、第2のリングバッファ領域のインデックスが30より小さければ「NO」と判定して、ステップ103に戻してステップ103から始まる処理を繰り返し実行する。これに対し、第2のリングバッファ領域のインデックスが30以上となれば、制御装置20は「YES」と判定してステップ113に進めてステップ113においてインデックスを0にしてからステップ102に戻してステップ102から始まる処理を繰り返し実行する。このようにして、制御装置20は、上記の回帰直線から求められる傾きaにより重量変化勾配と、切片bにより算出重量を常時算出している。
【0025】
注出残り時間算出手段は、注出目標重量から重量変化勾配算出手段により算出された算出重量を減算した値に重量変化勾配算出手段により算出した重量変化勾配を除算することにより注出残り時間を算出する。判定手段は、注出残り時間算出手段により算出された注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間として0.5秒以内であるか否かを判定するものである。判定手段は、上記の注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間より短いか否かの判定とともに、重量センサ15による検出重量が注出目標重量に対して所定量として50g以内であるか否かを判定する。なお、検出重量が注出目標重量に対して50g以内となっているか否かの判定は、注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間以内となっていても、タンク11内の飲料が途中で無くなる等して注出目標重量に対してまだ十分に注出されていないときに注出が完了したと判定されないようにするために行っている。制御手段は、上記の判定手段により注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間より短いとの判定と、重量偏差が所定の注出残量以下であるとの判定結果に基づいて注出バルブ13の閉止させる。
【0026】
制御装置20は、注出バルブ13を開放したときに重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が増加しないことを検出すると、タンク11内の飲料が液切れ状態であることを検知する検知手段と、注出バルブ13を開放して飲料を注出しているときに重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が所定値として10g/秒より低下したことを検出すると、タンク11内の飲料が液切れ状態であることを検知する検知手段を備えている。
【0027】
次に、ディスペンサ10の制御装置20による注出制御のプログラムについて説明する。制御装置20は、上述したステップ100に示すプログラムを常時繰り返し実行して重量変化勾配と算出重量とを常時算出しているなかで、図3に示すように、ステップ200のプログラムを繰り返し実行する。ステップ201において、制御装置20は操作スイッチ16の注出スイッチ16bによる注出信号があるか否かを繰り返し判定して「NO」と判定するなかで、注出スイッチ16bによる注出信号があれば「YES」と判定してステップ202に進める。ステップ202においては、制御装置20は、ステップ201において注出スイッチ16bとともに入力された注出量選択スイッチ16aによる注出量信号からメモリ21の注出量テーブルに記憶された注出量を確定する。次に、制御装置20は、ステップ203において、重量センサ15により入力された検出重量に注出量を足した量を注出目標重量と決定し、注出制御用のタイマ23をリセットし、注出バルブ13を開放する。注出バルブ13を開放すると、タンク11内の飲料が送出管12を通って載置台14上に載置したカップCに注入される。
【0028】
ステップ203による処理後、制御装置20は、ステップ204において、注出制御用のタイマ23による計測時間が2秒以上経過したか否の判定と、ステップ100にて算出された最新の重量変化勾配が15g/秒以上であるか否かの判定を繰り返し実行する。タンク11内の飲料が無いときには重量変化勾配が0g/秒であり重量変化勾配が増加しないので、制御装置20は、ステップ204、205において各々「NO」と繰り返し判定しているなかで、所定時間として計測時間が2秒以上経過すればステップ204において「YES」と判定してステップ211に進める。ステップ211において、制御装置20はタンク11内の飲料が液切れ状態であると検知してステップ212に進め、ステップ112において制御装置20は注出バルブ13を閉止させる。なお、制御装置20は、タンク11内の飲料が液切れ状態であると検知したときに、図示しないランプなどを点灯させて液切れ状態であることを報知させてもよい。
【0029】
一方、タンク11内の飲料が送出管12を通って載置台14上に載置したカップCに正常に注入されていると、ステップ100にて算出された最新の重量変化勾配が15g/秒以上となり、制御装置20は、ステップ204における「NO」との判定の後に、ステップ205において「YES」と判定してステップ206に進める。
【0030】
次に、制御装置20は、カップC内に注入される飲料が注出目標重量となるようにステップ206〜210の処理を繰り返し実行する。ステップ206において、制御装置20は、重量センサ15による検出重量が注出目標重量であるか否かの判定をし、検出重量が注出目標重量となっていなければ「NO」と判定してステップ207に進める。ステップ207において、制御装置20は、ステップ100にて算出された最新の重量偏差勾配と算出重量から注出残り時間算出手段により注出残り時間を算出してステップ208に進める。ステップ208において、制御装置20は、重量センサ15による検出重量が注出目標重量に対して50g以内となっているか否かと、ステップ207にて算出した注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間として0.5秒以内であるか否かとを判定する。検出重量が注出目標重量に対して50g以内となっていない、または注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間より長いときには、制御装置20はステップ208において「NO」と判定して、ステップ209に進める。ステップ209において、制御装置20は、ステップ100にて算出された重量偏差勾配が10g/秒より小さい状態が連続しているか否かの判定をし、タンク11内の飲料が載置台14上のカップCに注入されているときには重量偏差勾配が10g/秒以上であるので「NO」と判定してステップ210に進める。ステップ210において、制御装置20は、注出制御用のタイマ23により計測される注出バルブ13の開放時間が所定の注出制限時間として20秒以上経過したか否かを判定して、注出バルブ13の開放時間が所定の注出制限時間内であれば「NO」と判定してステップ206に戻す。
【0031】
上記ステップ206〜210のプログラムを繰り返し実行しているなかで、カップC内に注出目標重量の飲料が注入されると、重量センサ15による検出重量が注出目標重量より大きくなり、ステップ206において、制御装置20は「YES」と判定してステップ212に進め、ステップ212において、制御装置20は注出バルブ13を閉止させる。
【0032】
また、上記ステップ206〜210のプログラムを繰り返し実行しているなかで、カップC内に注入されている飲料が注出目標重量に対して50g以内となり、ステップ207において算出された注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間以内となっていれば、制御装置20はステップ206における「NO」の判定と、ステップ207の処理後に、ステップ208において、「YES」と判定してステップ212に進め、ステップ212において、制御装置20は注出バルブ13を閉止させる。
【0033】
また、上記ステップ206〜210のプログラムを繰り返し実行しているなかで、タンク11内の飲料が底部に僅かに残る程度となると、重量偏差勾配算出手段により算出された重量偏差勾配が10g/秒より小さくなり、制御装置20はステップ206における「NO」の判定と、ステップ207の処理と、ステップ208における「NO」の判定後に、ステップ209において「YES」と判定してステップ211に進める。ステップ211において、制御装置20はタンク11内が液切れであると検知してステップ212に進め、ステップ212において制御装置20は注出バルブ13を閉止させる。なお、制御装置20は、タンク11内の飲料が液切れ状態であると検知したときに、図示しないランプなどを点灯させて液切れ状態であることを報知させてもよい。
【0034】
これに対し、タンク11内の飲料が残り少なくステップ100にて算出された最新の重量偏差勾配が10g/秒より大きいが少しずつしか注出されないために注出目標重量とならないときに、所定の注出制限時間として20秒を経過すると、ステップ210において、制御装置20は「YES」と判定してステップ212に進め、ステップ212において、制御装置20は注出バルブ13を閉止させる。各ステップから進められたステップ212による処理により注出バルブ13を閉止させると、制御装置20はステップ213に進めて、ステップ213において、注出制御用のタイマ23をリセットしてステップ201に戻して再び操作スイッチ16の注出スイッチ16bによる注出信号があるか否かを繰り返し判定する。
【0035】
上記のように構成したディスペンサ10においては、注出バルブ13にモータバルブのようにバルブを閉止させるのに0.5秒の所定時間を要するものを採用し、タンク11内の飲料をその水頭圧で送出するときのように飲料の流量が変化する場合でも、注出目標重量となる注出残り時間を算出し、算出した注出残り時間が注出バルブ13を閉止させるのに要する所定時間以内となると予め注出バルブ13を閉止させるようにしているので、たとえ注出バルブ13を閉止させるのに所定時間を要するとともに水頭圧により飲料の流量が変化する場合であっても注出目標重量となるように正確に注出することができるようになる。なお、上記のようなディスペンサ10においては、飲料を注出中に水頭圧が変化することで重量変化勾配が変化するが、注出中における重量変化勾配の変化は僅かな変化であるので飲料を所定の注出目標重量まで注出するときに大きな影響はないものである。また、このディスペンサ10は、重量センサ15により計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出しているので、飲料の送出管12に流量センサのような障害物を設けることなく流量となる重量変化勾配を算出することができ、飲料の送出管12に障害物を設けることによる汚れの付着のおそれがない。
【0036】
また、ディスペンサ10の制御装置20は、注出バルブ13を開放させたときに重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が増加しないことを検出すると、タンク11内の飲料が液切れ状態であることを検知する検知手段を備えたので、水位センサ等の新たなセンサ等を設けることなくタンク11内の飲料が液切れ状態であることを検知することができるようになる。
【0037】
また、ディスペンサ10の制御装置20は、注出バルブ13を開放して飲料を注出しているときに重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が所定値として10g/秒より低下したことを検出すると、タンク11内の液体が液切れ状態であることを検知する検知手段を備えているので、水位センサ等の新たなセンサ等を設けることなくタンク11内の液体が液切れ状態であることを検知することができる。
【0038】
本実施形態においては、定量注出装置として飲料を注出するディスペンサに適用したもので説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、飲料でなく液体の薬品等を目標重量となるように注出するものにも適用されるものである。
【符号の説明】
【0039】
10…定量注出装置(ディスペンサ)、11…タンク、12…送出路(送出管)、13…注出バルブ、15…重量センサ、20…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、
前記タンク内から送出される液体の送出路を開閉する注出バルブと、
前記注出バルブの開閉により注出される液体の重量を検出する重量センサと、
前記重量センサの検出重量に基づき前記タンクから送出される液体が所定の目標重量となるように前記注出バルブの開閉を制御する制御装置とを備えた定量注出装置において、
前記制御装置は、前記重量センサにより計時的に検出される検出重量から重量変化勾配を算出する重量変化勾配算出手段と、
前記重量変化勾配から前記目標重量となる注出残り時間を算出する注出残り時間算出手段と、
前記注出残り時間が前記注出バルブを閉止させるのに要する所定時間以内であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づいて前記注出バルブの開閉を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする定量注出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定量注出装置において、
制御装置は前記注出バルブを開放したときに前記重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が増加しないことを検出すると、前記タンク内の液体が液切れ状態であることを検知する検知手段を備えたことを特徴とする定量注出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の定量注出装置において、
前記制御装置は前記注出バルブを開放して前記液体を注出しているときに前記重量変化勾配算出手段により算出された重量変化勾配が所定値より低下したことを検出すると、
前記タンク内の液体が液切れ状態であることを検知する検知手段を備えたことを特徴とする定量注出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−235175(P2010−235175A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86765(P2009−86765)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】