説明

室内園芸装置

【課題】 植物に与える水の管理を容易にでき、室内の環境を悪化させることなく、必要水分量の異なる複数の植物を一箇所で栽培することが可能な室内装飾性に優れた室内園芸装置を提供する。
【解決手段】 枠体12の内部空間を不透水性の材料からなり、上面のみが開口した区画容器14で区画するようにしているので、必要水分量が異なる複数種の植物を一箇所で栽培することができる。また、この区画容器14は枠体12内において着脱自在に移動させることができるため、植物を植付けた各区画容器14の配置を替えることによって室内園芸装置10における植物のレイアウトを簡単且つ自由に変更することができる。そして、用土16として保水力や吸着力に優れる粉状化した焼成多孔質体16aを使用しているので、毎日の水やりが不要になると共に、植物に与えた水が用土16全体で保持される結果、植物の根腐れを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内での植物栽培に用いる装置に関し、特に、必要水分量の異なる複数の植物を一箇所で栽培することが可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、園芸を手段として心身の状態を改善する園芸療法など植物栽培の有用性が注目されてきている。このため、園芸用のスペースを確保することが困難な都会などでは、観葉植物を中心とした室内での植物栽培が広く行われている。
【0003】
植物を栽培する際、水,光,温度,土壌および肥料などの各条件に配慮する必要があるが、室内で植物を栽培する場合には、特に水の管理が重要となる。
【0004】
従来より、室内で植物を栽培する場合、受け皿の上に素焼きの植木鉢を載置し、この植木鉢の中に培養土を充填したものが用いられているが、このような装置では、植物に水を与え過ぎた場合、受け皿に泥水が溜まるようになる。このため、培養土が常時水浸しとなり、植物が根腐れを起こして枯死するようになるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決し得る技術として、貯水量を示す機構が設けられ、かつ側面および底面が実質的に閉じている貯水槽の上に、所定の空間を介して底面が通水性かつ通気性の材料で構成された培養土容器を配設した室内植物栽培用容器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
かかる技術によれば、植物に水を与え過ぎた場合、過剰に与えた水は貯水槽へと排出される。また、貯水槽の貯水面と培養土容器の底面との間には空間があるので、貯水槽に貯められた水が培養土容器内へ上昇するのを防止することができる。したがって、培養土が水浸しとなることがなく、植物の根腐れを防止することができる。
【特許文献1】特開平5−244826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上面が開放した貯水槽を有する上述の室内植物栽培用容器では、特に夏場において、貯水槽に貯まった泥水が臭気を発すると共に、貯水槽内に虫類が発生するようになるという問題があった。一方、暖房を使用する冬場では、貯水槽の水が蒸発し、これが結露となり、室内にカビ等が発生しやすくなるという問題があった。
【0008】
さらに、上述の室内植物栽培用容器では、必要水分量が異なる様々な種類の植物を一箇所に寄せ植えした場合、ある種の植物にとっては最適な水分量であっても他の種の植物にとっては水分過剰或いは不足となる。このため、単一種類の植物しか栽培できず、室内装飾性に劣るという問題もあった。
【0009】
それゆえに、本発明の主たる課題は、植物に与える水の管理を容易にでき、室内の環境を悪化させることなく、必要水分量の異なる複数の植物を一箇所で栽培することが可能な室内装飾性に優れた室内園芸装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した発明は、「上面が開口した有底枠体(12)と、不透水性の材料からなり、有底枠体(12)の内部空間に着脱自在に収容され、内部空間を自在に区画する上面が開口した区画容器(14)とを備えると共に、区画容器(14)内に充填する用土(16)として粉状化した焼成多孔質体(16a)を用いる」ことを特徴とする室内園芸装置(10)である。
【0011】
この発明では、用土(16)として保水力や吸着力に優れる粉状化した焼成多孔質体(16a)を使用しているので、植物に与えられた水は、まず焼成多孔質体(16a)に吸収・保水された後、必要に応じて焼成多孔質体(16a)から植物へと供給される。このため、毎日の水やりが不要となり、水の管理を容易にすることができる。またこれと同時に、植物に与えた水が用土(16)全体で保持される結果、区画容器(14)の底部に水が溜まらず、区画容器(14)として上面のみが開口したものを用いた場合でも、植物の根腐れを防止することができる。
【0012】
また、特に本発明の室内園芸装置(10)では、上述のような用土(16)を用いると共に、有底枠体(12)の内部空間を不透水性の材料からなり、上面が開口した区画容器(14)で区画するようにしているので、各区画容器(14)のそれぞれに必要水分量が異なる植物を植付け、各区画容器(14)毎に水分管理をすることによって、必要水分量が異なる複数種の植物を一箇所で栽培することができる。
【0013】
そして、この区画容器(14)は有底枠体(12)内において着脱自在に移動させることができるため、植物を植付けた各区画容器(14)の配置を替えることによって室内園芸装置(10)における植物のレイアウトを簡単且つ自由に変更することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、用土として保水力や吸着力に優れる粉状化した焼成多孔質体を使用することによって、水の管理を容易にすることができると共に、区画容器に植付けた植物の根腐れを防止することができる。また、枠体の内部空間を区画容器で区画するようにしているので、各区画容器のそれぞれに必要水分量が異なる植物を植付け、各区画容器毎に水分管理をすることで、必要水分量が異なる複数種の植物を一箇所で栽培することができる。そして、この区画容器は枠体内において着脱自在に移動させることができるため、植物を植付けた各区画容器の配置を替えることによって室内園芸装置における植物のレイアウトを簡単且つ自由に変更することができる。
【0015】
したがって、植物に与える水の管理を容易にでき、室内の環境を悪化させることなく、必要水分量の異なる複数の植物を一箇所で栽培することが可能な室内装飾性に優れた室内園芸装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面に従って詳述する。図1は、本発明の一実施例(第1実施例)の室内園芸装置(10)を示す斜視図であり、図2は、図1におけるA-A線断面図である。このように本実施例の室内園芸装置(10)は、大略、有底枠体(12),区画容器(14)および用土(16)などで構成されている。
【0017】
有底枠体(12)は、屋内園芸装置(10)の外枠を形成するものであり、具体的には、プラスチック,ガラス,陶器またはコンクリート等の不透水性の材料からなる上面が開口した矩形の筺体である。
【0018】
この有底枠体(12)の内部空間には、複数の区画容器(14)が着脱自在に配設されており、この区画容器(14)によって有底枠体(12)の内部空間が複数の区画に仕切られている。
【0019】
なお、この有底枠体(12)は、室内の所望の場所に設置できるよう持運び可能にしてもよいし、予め室内の所定の場所に移動不能に常設するようにしてもよい。
【0020】
区画容器(14)は、プラスチック,ガラスまたは陶器などの不透水性の材料からなる上面のみが開口した矩形の容器である。この区画容器(14)は上述したように有底枠体(12)の内部空間を着脱自在に区画すると共に、その内部に用土(16)が充填され、植物(V)が植付けられる。
【0021】
用土(16)は、区画容器(14)に植付けた植物が転倒しないよう根元を保持するためのものであり、粒径が1〜5mm程度となるように粉状化した焼成多孔質体(16a)によって構成されている。
【0022】
この用土(16)を構成する焼成多孔質体(16a)としては、天然あるいは人工のゼオライトを500〜800℃程度の温度で焼成したものが好ましい。直径30nm以下の微細孔構造を有し、且つ経済的に入手することが可能なゼオライトをかかる温度で焼成することによって、多孔質体に付着した微生物や菌を除去できると共に、当該多孔質体の吸水能力や有機物吸着能力を格段に向上させることができるからである。
【0023】
なお、粉状化した焼成多孔質体(16a)は、植物(V)の生命維持に必要な窒素,リン酸,カリ等の基本要素を殆ど供給できないため、用土(16)には別途肥料を添加する必要がある。ここで、肥料を添加することにより室内に肥料臭が漂い、室内環境が悪化することが懸念されるが、肥料臭は焼成多孔質体(16a)に吸着されるため、室内環境が悪化する問題は生じない。
【0024】
以上のように構成された室内園芸装置(10)を使用して植物(V)を育てる際には、まず、各区画容器(14)の底から約1/3程度の高さまで用土(16)を入れ、移植する植物(V)の根が配置される部分に肥料を敷設する。続いて、移植(植付け)する植物(V)を所定位置に配設し、区画容器(14)の上面近傍まで用土(16)を補充して植物(V)の根元を用土(16)で被覆した後、区画容器(14)に充填した用土(16)の高さまで水を注入する。すると用土(16)を構成する焼成多孔質体(16a)が急速に水を吸収して固まるようになる。このため、多少大きな植物(V)でも転倒することなく、区画容器(14)への植物(V)の移植が完了する。
【0025】
そして、植物(V)の移植が完了した各区画容器(14)を有底枠体(12)内部空間の所定位置に配置し、区画容器(14)どうしの隙間に用土(16)を充填して区画容器(14)が簡単に移動しないように固定する。これにより、室内園芸装置(10)への植物(V)の植付けが完了する。
【0026】
このように本実施例の室内園芸装置(10)では、用土(16)として保水力や吸着力に優れる粉状化した焼成多孔質体(16a)を使用しているので、植物(V)に与えられた水は、まず焼成多孔質体(16a)に吸収・保水された後、必要に応じて焼成多孔質体(16a)から植物(V)へと水が供給される。このため、毎日の水やりが不要となり、水の管理を容易にすることができる。また、植物(V)に与えた水が用土(16)全体で保持される結果、区画容器(14)の底部に水が溜まらず、植物の根腐れを防止することができる。
【0027】
また、特に本発明の室内園芸装置(10)では、上述のような用土(16)を用いると共に、有底枠体(12)の内部空間を不透水性の材料からなり、上面が開口した区画容器(14)で区画するようにしているので、各区画容器(14)のそれぞれに必要水分量が異なる植物(V)を植付け、各区画容器(14)毎に水分管理をすることによって、必要水分量が異なる複数種の植物(V)を一箇所で栽培することができる。
【0028】
そして、この区画容器(14)は有底枠体(12)内において着脱自在に移動させることができるため、植物(V)を植付けた各区画容器(14)の配置を替えることによって室内園芸装置(10)における植物(V)のレイアウトを簡単且つ自由に変更することができる。
【0029】
なお、上述した実施例では、有底枠体(12)の内部空間に配置した各区画容器(14)が簡単に移動しないように、区画容器(14)どうしの隙間に用土(16)を充填する例を示したが、区画容器(14)どうしの隙間のみならず、有底枠体(12)に配設した区画容器(14)を覆い隠すように有底枠体(12)の上面近傍まで用土(16)を充填するようにしてもよい。このように有底枠体(12)内に配設した区画容器(14)を隠すことで、各区画容器(14)のそれぞれに植付けた植物に一体感を与えることができ、植物(V)を植付けた室内園芸装置(10)の室内装飾性を向上させることができる。
【0030】
また、有底枠体(12)および区画容器(14)として、それぞれ矩形のものを示したが、上面が開口し、且つ底面および側面が閉じられた形状のものであれば、如何なる形状であってもよい。
【0031】
次に、図3に示す他の実施例について説明する。図3に示す室内園芸装置(11)は、上述した第1実施例の室内園芸装置(10)に自動給水手段(18)を取り付けたものである。したがって、自動給水手段(18)以外の構成部分については第1実施例の室内園芸装置(10)と同じであるので、上述した第1実施例の室内園芸装置(10)の説明を援用して本実施例の説明に代える。
【0032】
この自動給水手段(18)は、大略、土壌水分センサ(20),制御部(22)および給水ポンプ(24)などで構成されている。
【0033】
土壌水分センサ(20)は、区画容器(14)に充填した用土(16)中の水分量を計測するものであり、その一例として、本体とこの本体から突出して用土(16)中に挿入されるロッドとを備え、本体に内蔵した発振器から電磁波をロッドに放射し、ロッド先端で反射して来る電磁波の往復伝搬時間を測定するTDR(Time Domain Reflectometry)方式のものを挙げることができる。なお、この土壌水分センサ(20)は用土(16)中の水分量を計測できるものであれば、その種類、構成、作動原理等は上述した方式に限定されるものではない。また、この土壌水分センサ(20)は、信号ケーブル(L1)を介して制御部(22)に接続されている。
【0034】
制御部(22)は、土壌水分センサ(20)が計測した用土(16)中の水分量に基づいて、給水ポンプ(24)の運転を制御するためのものであり、土壌水分センサ(20)がセンシングした用土(16)中の水分量をデータ処理するデータロガー(22a)と、データロガー(22a)が処理したデータに基づいて作動するリミットスイッチ(22b)とを有する。なお、この制御部(22)は、信号ケーブル(L2)を介して給水ポンプ(24)に接続されている。
【0035】
給水ポンプ(24)は、貯水タンク(26)とスプレーノズル(28)との間に介装される給水管(30)上に取り付けられ、貯水タンク(26)の水(W)を区画容器(14)に植付けられた植物(V)に供給するためのものである。
【0036】
次に、以上のように構成された自動給水手段(18)の作用について説明する。まず、自動給水手段(18)の制御部(22)に予め水分量の目標値を入力すると共に、土壌水分センサ(20)を区画容器(14)に充填した用土(16)中に接続し、自動給水手段(18)各部の電源をオンにする。なお、水分量の目標値となる値は、区画容器(14)に植付けた植物(V)の生育に最適な用土(16)水分量である。
【0037】
すると、土壌水分センサ(20)が区画容器(14)中の用土(16)の水分量を計測し、この計測値(実測値)が信号ケーブル(L1)を介して制御部(22)のデータロガー(22a)に与えられる。データロガー(22a)に与えられた前記計測値は、予め入力された目標値と対比される。
【0038】
ここで、土壌水分センサ(20)の実測値がこの目標値より低い場合には、リミットスイッチ(22b)が作動し、その信号が信号ケーブル(L2)を介して給水ポンプ(24)に与えられ、給水ポンプ(24)の運転が開始される。これにより、貯水タンク(26)の水(W)が給水ポンプ(24),給水管(30)およびスプレーノズル(28)を介して区画容器(14)に植付けた植物(V)に対して与えられる。一方、土壌水分センサ(20)の実測値がこの目標値より高い場合には、給水ポンプ(24)は作動されないか、もしくは給水ポンプ(24)が作動していた場合には、リミットスイッチ(22b)が作動して給水ポンプ(24)の運転が停止される。
【0039】
このように本実施例によれば、各区画容器(14)のそれぞれに対して、上述のような自動給水手段(18)を装着することにより、室内園芸装置(10)に植付けた植物(V)への水やりを完全に自動化することができ、水の管理をより一層容易化することができる。
【0040】
なお、上述の例では、自動給水手段(18)として、土壌水分センサ(20)や制御部(22)を備え、用土(16)の実測水分量に応じて水やりを制御する方式のものを示したが、区画容器(14)に植付けた植物(V)の生育に最適な用土(16)水分量を保つことができるものであれば、その方式は如何なるものであってもよく、例えば、タイマーを使って所定時間に所定量の水を供給するようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例の室内園芸装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】本発明の他の実施例の室内園芸装置(自動給水式)を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
(10),(11)…室内園芸装置
(12)…枠体
(14)…区画容器
(16)…用土
(16a)…焼成多孔質体
(18)…自動給水手段
(20)…土壌水分センサ
(22)…制御部
(24)…給水ポンプ
(26)…貯水タンク
(28)…スプレーノズル
(30)…給水管
(V)…植物
(L1),(L2)…信号ケーブル
(W)…水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した有底枠体と、不透水性の材料からなり、前記有底枠体の内部空間に着脱自在に収容され、前記内部空間を自在に区画する上面が開口した区画容器とを備えると共に、前記区画容器内に充填する用土として粉状化した焼成多孔質体を用いることを特徴とする室内園芸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−166775(P2006−166775A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362894(P2004−362894)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(504460924)
【Fターム(参考)】