説明

害虫忌避マルチフィルム及び畝の被覆構造

【課題】 本発明は、作物の害虫の発生及び伝染を抑制し且つ畝面の雑草繁茂も抑制し、更に、作物の育成に必要な土壌の地温上昇も確保することができるマルチフィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の害虫忌避マルチフィルムは、熱可塑性樹脂100重量部及びアルミニウム粉末0.1〜5重量部が含有され且つ緑色色素を含有していない銀色層と、この銀色層に積層一体化されて、熱可塑性樹脂100重量部及び緑色色素0.1〜5重量部が含有され且つアルミニウム粉末を含有していない緑色層とを含有し、上記銀色層が最外層となるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫忌避マルチフィルム、特に農作物の害虫による被害を防止する害虫忌避マルチフィルム及びこの害虫忌避マルチフィルムを用いた畝の被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畝面の雑草繁茂の抑制、水分蒸散の調整、地温を調整する目的で畝面をマルチフィルムで覆って農作物を栽培する方法が一般的に行われている。例えば、透明タイプのマルチフィルムは地温上昇に必要な太陽光線の透過率が良いため、地温が上昇し易く農作物の生育促進には有利であるものの、太陽光線の透過は同時に雑草繁茂を促進させてしまう問題点があった。
【0003】
一方、黒色タイプのマルチフィルムは、太陽光線を遮蔽するため、フィルム下の雑草の繁茂は抑制できるものの、地温を上昇させる効果が十分ではなく、農作物の生育促進が満足に行えなかった。そこで地温をある程度上昇させ農作物の生育を促し、かつ雑草の繁茂を抑制する機能を兼ね備えることを目的に緑色色素を配した緑色タイプのマルチフィルムが特許文献1に提案されている。
【0004】
しかしながら、この緑色マルチフィルムでは土壌が適度な温度になってしまうため、土壌環境が作物の害虫にとって好適な環境となり、害虫の発生と、害虫の伝染を助長するという問題があった。そこで、特許文献2には、害虫の発生を抑制する目的で銀色層と白色層と黒色層をこの順に積層させたマルチフィルムが提案されている。しかしながら、上記マルチフィルムでは表面の銀色層での太陽光線の反射により害虫の発生・伝染は防止できるものの、地温を上昇させる効果が十分ではなかった。
【0005】
更に、緑色色素とアルミニウム粉末を同じ層に含有させたマルチフィルムが提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、このようなマルチフィルムでも、雑草繁茂はある程度抑制できるものの、光線透過率が低いため、地温を上昇させる効果が不十分であり、更に、緑色色素をアルミニウム粉末と共に同じ層に含有させていることから、アルミニウム粉末による反射が十分なものではなく、害虫の発生・伝染の抑制効果も十分ではなかった。
【0006】
【特許文献1】特公昭51−13688号公報
【特許文献2】特開2003−38046号公報
【特許文献3】特開2004−16208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、作物の害虫の発生及び伝染を抑制し且つ畝面の雑草繁茂も抑制し、更に、作物の育成に必要な土壌の地温上昇も確保することができる害虫忌避マルチフィルム及びこの害虫忌避マルチフィルムを用いた畝の被覆構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の害虫忌避マルチフィルムは、熱可塑性樹脂100重量部及びアルミニウム粉末0.1〜5重量部が含有され且つ緑色色素を含有していない銀色層と、この銀色層に積層一体化されて、熱可塑性樹脂100重量部及び緑色色素0.1〜5重量部が含有され且つアルミニウム粉末を含有していない緑色層とを含有し、上記銀色層が最外層となるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の害虫忌避マルチフィルムの銀色層及び緑色層に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、これらは単独で使用されても、二種以上が併用されてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンが特に好ましい。なお、銀色層と緑色層とに用いられる熱可塑性樹脂は同一であっても異なっていてもよい。
【0010】
ここで、エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられ、又、プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0011】
そして、銀色層には、アルミニウム粉末が含有されており、このようなアルミニウム粉末としては、金属アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、アルミニウム−亜鉛− マグネシウム(Al−Zn−Mg)系のアルミニウム合金粉末、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム−銅(Al−Zn−Mg−Cu)系のアルミニウム合金粉末などが挙げられ、金属アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末が好ましく、金属アルミニウム粉末がより好ましい。
【0012】
又、アルミニウム粉末の形態については限定されないが、燐片状、フレーク状、針状が好ましい。なお、アルミニウム粉末は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記アルミニウム粉末の平均粒径は、小さいと、銀色層の反射率が低下し、飛来してくる害虫に対する忌避効果が低下する一方、大きいと、害虫忌避マルチフィルムの光透過率が低くなり、地温を上昇させる効果が低下すると共に、害虫忌避マルチフィルムのフィルム強度も低下するので、3〜15μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。なお、アルミニウム粉末の平均粒径は、レーザー回折法によって測定されたものをいう。
【0014】
又、銀色層におけるアルミニウム粉末の含有量は、少ないと、銀色層の反射率が低下し、飛来してくる害虫に対する忌避効果が低下し、或いは、害虫忌避マルチフィルムの全光線透過率が高くなり、雑草の繁茂を防止することができない一方、多いと、害虫忌避マルチフィルムの機械的強度が低下するので、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部に限定され、1〜3重量部が好ましい。
【0015】
そして、緑色層には緑色色素が含有されている。このような緑色色素としては、特に限定されないが、油溶性の染顔料が好ましく、耐候性に優れていることから、フタロシアニン系の色素がより好ましく、フタロシアニングリーンを含有していることが特に好ましい。
【0016】
ここで、色素が緑色色素であるか否かについては下記の要領で判断する。先ず、顔料試験方法−第2部:色の比較JIS K5101−2に準拠して、判断対象となる色素を含有する試験片を作製し、この試験片について分光光度計を用いて測定した反射光の主波長が490〜560nmにピークを有する場合、判断対象の色素を緑色色素とする。
【0017】
更に、緑色色素としては、単一種類の色素からなるものであってもよいが、複数種類の色素を混合することによって緑色色素としてもよい。複数種類の色素を混合して緑色色素とする場合、緑色色素であるか否かの判断をするにあたっては、複数種類の色素を予め均一に混合してなる混合色素を作製し、この混合色素を用いて上述の要領で緑色色素であるか否かを判断すればよい。
【0018】
又、緑色色素の平均粒径は、小さいと、害虫忌避マルチフィルムの着色度合いが低くなって、光合成に有効な波長領域の光の光線透過率が高くなり、雑草の繁茂を防止することができないことがある一方、大きいと、色素の製造が困難となることがあるので、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。
【0019】
更に、緑色層中に含有されている緑色色素の含有量は、少ないと、害虫忌避マルチフィルムの着色度合いが低くなって、光合成に有効な波長領域の光の光線透過率が高くなり、雑草の繁茂を防止することができない一方、多いと、地温を上昇させる波長領域の光の光線透過率が低くなり、作物の育成に支障をきたすので、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部に限定され、1〜3重量部が好ましい。
【0020】
本発明では、上述のように、アルミニウム粉末を含有する銀色層と、この銀色層に積層一体化され且つ緑色色素を含有する緑色層とを含有しており、アルミニウム粉末と緑色色素とを同一の層に含有させておらず、別異の層に別々に含有させている。即ち、本発明では、銀色層には緑色色素を含有させていないと共に、緑色層にはアルミニウム粉末を含有させていない。
【0021】
従って、アルミニウム粉末の表面が緑色色素によって着色されるようなことはなく、アルミニウム粉末の反射効果による害虫の忌避効果を確実に発揮させることができると共に、緑色色素による光合成に有効な波長領域の光の吸収と、アルミニウム粉末による光の反射効果とによって、雑草の繁茂を防止することができる。
【0022】
本発明の害虫忌避マルチフィルムは、例えば、図1に示したように、銀色層1及び緑色層2のそれぞれを一層づつ含有しておればよく、図2に示したように、銀色層1又は緑色層2(2a、2b)の何れか一方或いは双方が二層以上含有していてもよい。
【0023】
又、銀色層又は緑色層の何れか一方或いは双方が二層以上含有している場合において、二つ以上の層が互いに同一の組成、即ち、同一の樹脂組成物から形成されているようなとき、害虫忌避マルチフィルムの製造時において、これらの同一の組成を有する層がそれぞれ、互いに別々の押出機から押出された樹脂組成物から形成されているような場合には、同一の組成を有する層同士が互いに隣接した状態に積層一体化されているときにあっても、これらの隣接した同一組成を有する層はそれぞれ独立した層とする。
【0024】
例えば、図2に示したように、銀色層1、緑色層2a、緑色層2bがこの順序で積層一体化されてなる害虫忌避マルチフィルムにおいて、緑色層2aと緑色層2bとが全く同一の樹脂組成物から構成されていても、緑色層2aと緑色層2bとが互いに別々の押出機から押出された樹脂組成物から構成されている場合には、緑色層2aと緑色層2bとは互いに独立した層として考え、害虫忌避マルチフィルムは、一つの銀色層1と、二つの緑色層2a、2bとからなるとする。
【0025】
又、緑色層が二層以上含有している場合、銀色層が緑色層によって被覆された状態となっていると、銀色層による害虫の忌避効果が低減するので、例えば、図2に示したように、銀色層1が最外層となり、害虫忌避マルチフィルムの少なくとも一面が銀色層1で構成されていることが必要である。
【0026】
害虫忌避マルチフィルムの銀色層及び緑色層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、防霧剤、滑剤などが添加されてもよい。
【0027】
そして、酸化防止剤としては、従来公知の任意のものが挙げられ、熱安定剤としての効果を兼ね備えるものが好ましい。このような酸化防止剤としては、カルボン酸の金属塩、フェノール系抗酸化剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0028】
又、紫外線吸収剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどのトリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0029】
更に、ヒンダードアミン系光安定剤としては、従来公知の任意のものが使用され、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス[4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N,−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N,−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジン、ビス−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシネート、2,4,6−トリス[N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−n−ブチルアミノ]−s−トリアジンなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
そして、防霧剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、シリコーン系、フッ素系などの界面活性剤が挙げられる。又、上記滑剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられる。
【0031】
更に、上記害虫忌避マルチフィルムに、その表面に生じた結露水を水膜状にして円滑に下方に向かって流下させるために、本発明の効果を阻害しない範囲で、防曇剤を練りこんでもよい。このような防曇剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、グリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ソルビトールグリセリンステアリン酸エステルなどの多価アルコール飽和脂肪酸エステル;グリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステルなどの多価アルコール不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
又、害虫忌避マルチフィルムに防曇剤を練りこむ代わりに、害虫忌避マルチフィルムの表面に防曇性被膜を形成してもよい。このような防曇性被膜としては、例えば、コロイダルシリカやコロイダルアルミナに代表される無機酸化物ゾルのコーティング膜、界面活性剤を主成分とする液のコーティング膜、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、多糖類、ポリアクリル酸などの親水性樹脂を主成分とする膜が挙げられる。なお、コロイダルシリカやコロイダルアルミナを主成分とする無機酸化ゾルのコーティング膜には、必要に応じて、界面活性剤、合成樹脂を添加してもよい。そして、上記防曇性被膜を害虫忌避マルチフィルムの表面に形成させる方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート法、バーコード法、ディップコート法、スプレー法、はけ塗り法などが挙げられる。
【0033】
次に、本発明の害虫忌避マルチフィルムの製造方法としては、特に限定されず、通常のフィルムの製造方法が採用され、例えば、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法などが挙げられる。
【0034】
本発明の害虫忌避マルチフィルムの厚さは、薄いと、害虫忌避マルチフィルムの機械的強度が低下する一方、厚いと、裁断、接合、展張作業などが困難となり、取り扱い性が低下することがあるので、10〜50μmが好ましく、15〜30μmがより好ましい。
【0035】
そして、本発明の害虫忌避マルチフィルムは、その銀色層を外側にして畝の表面に密着させた状態で畝に被覆させて用いられ、銀色層に含有されたアルミニウム粉末による光の反射によって、害虫が畝に近づくのを防止し、害虫の忌避効果を発揮すると共に、緑色層に含有された緑色色素及びアルミニウム粉末によって、雑草の成長に必要な波長領域の太陽光線を低減して雑草の繁茂を防止しつつ、畝の地温の上昇に必要な波長領域の太陽光線を畝に照射させて、畝に植えた植物の成長を確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の害虫忌避マルチフィルムは、熱可塑性樹脂100重量部及びアルミニウム粉末0.1〜5重量部が含有され且つ緑色色素を含有していない銀色層と、この銀色層に積層一体化されて、熱可塑性樹脂100重量部及び緑色色素0.1〜5重量部が含有され且つアルミニウム粉末を含有していない緑色層とを含有し、上記銀色層が最外層となるように構成されていることを特徴とするので、アルミニウム粉末による光反射によって害虫を効果的に忌避することができると共に、緑色色素による光合成に有効な波長領域の光の吸収と、アルミニウム粉末による光の反射効果とによって、雑草の繁茂を防止することができる一方、地温上昇に必要な波長領域の太陽光線の透過を確保することができ、よって、害虫の発生や伝染を防止し、土壌の地温を上昇させることができると共に、雑草の繁茂を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1〜6、比較例1〜6)
直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:0.7g/10分)、低密度ポリエチレン(密度:0.922g/cm3、メルトフローレイト:0.4g/10分)、フレーク状の金属アルミニウム粉末(三協立山アルミ社製、平均粒径:8μm)及び緑色色素(日本ピグメント社製 成分名「フタロシアニングリーン」、平均粒径:0.3μm)をそれぞれ表1に示した所定量づつ含有してなる第一樹脂組成物を第一押出機に供給して溶融混練し、 直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:0.7g/10分)、低密度ポリエチレン(密度:0.922g/cm3、メルトフローレイト:0.4g/10分)、フレーク状の金属アルミニウム粉末(三協立山アルミ社製、平均粒径:8μm)、緑色色素(日本ピグメント社製 成分名「フタロシアニングリーン」、平均粒径:0.3μm)及び酸化チタン(平均粒径:0.2μm)をそれぞれ表1に示した所定量づつ含有してなる第二樹脂組成物を第二押出機に供給して溶融混練し、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:0.7g/10分)、低密度ポリエチレン(密度:0.922g/cm3、メルトフローレイト:0.4g/10分)、フレーク状の金属アルミニウム粉末(三協立山アルミ社製、平均粒径:8μm)、緑色色素(日本ピグメント社製 成分名「フタロシアニングリーン」、平均粒径:0.3μm)及びカーボンブラック(平均粒径:0.02μm)をそれぞれ表1に示した所定量づつ含有してなる第三樹脂組成物を第三押出機に供給して溶融混練し、第一〜第三押出機の全てを接続してなる共押出ダイに第一〜第三樹脂組成物を供給し、インフレーション法にて共押出成形して、第一樹脂組成物からなる層(A)、第二樹脂組成物からなる層(B)及び第三樹脂組成物からなる層(C)がこの順序で積層一体化してなる厚さが20μmの害虫忌避マルチフィルムを得た。なお、上記緑色色素として用いたフタロシアニングリーンは、分光光度計を用いて測定した反射光の主波長が500nmにピークを有していた。
【0039】
実施例1〜5及び比較例1〜6の害虫忌避マルチフィルムでは、層(A)、層(B)及び層(C)の厚さを全て同一厚さとした。実施例6の害虫忌避マルチフィルムでは、層(C)は設けず、層(B)の厚さを層(A)の厚さの2倍とした。
【0040】
なお、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンのメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して温度190℃、荷重21.18Nの条件下にて測定されたものをいう。
【0041】
得られた害虫忌避マルチフィルムについて、全光線透過率、光線反射率、地温及び雑草防除性について下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0042】
(全光線透過率)
害虫忌避マルチフィルムの全光線透過率を、ヘーズ測定機(日本電飾社製 商品名「NDH2000」)を用いてJIS K 7105に準拠して測定した。
【0043】
(光線反射率)
害虫忌避マルチフィルムの銀色層側からの光線反射率を、自記分光光度計(日立製作所製 商品名「U−4000」)を用いて400〜700nmにおける光線反射率を測定し、最大となる光線反射率を光線反射率とした。
【0044】
(地温)
積水フィルム株式会社の仙台工場内の農地に、畝幅50cm、高さ20cm、長さ5mの畝を作り、この畝を害虫忌避マルチフィルムで銀色層を外側にして畝面に密着した状態に被覆し、畝の上端面から垂直方向に深さ5cmの位置の畝内に熱電対を設置した。そして、平成17年7月15日(快晴)午後2時の畝内の温度を測定した。
【0045】
一方、上記と同様の畝を別に作り、この畝に害虫忌避マルチフィルムを被覆させることなく、この畝の上端面から垂直方向に深さ5cmの位置の畝内に熱電対を設置した。そして、平成17年7月15日(快晴)午後2時の畝内の温度を測定した。
【0046】
そして、畝に害虫忌避マルチフィルムを被覆したときの畝内の温度と、畝に害虫忌避マルチフィルムを被覆しなかったときの畝内の温度との差を算出し、下記基準に基づいて評価した。
○:温度差が5℃未満
△:温度差が5℃以上10℃未満
×:温度差が10℃以上
【0047】
(雑草防除性)
積水フィルム株式会社の仙台工場内の農地に、畝幅50cm、高さ20cm、長さ5mの畝を作り、この畝を害虫忌避マルチフィルムで銀色層を外側にして畝面に密着した状態に平成17年7月1日に被覆し、平成17年7月31日時点での畝における雑草の繁茂状況を下記基準により評価した。
○:雑草の繁茂なし
△:雑草が少量繁茂
×:雑草が多量に繁茂
【0048】
(機械強度)
ストログラフ(東洋精機製作所)により、JIS K6781に準拠して引っ張り試験を行って害虫忌避マルチフィルムの破断点荷重を求め、下記基準により判断した。
○:破断点荷重が2000g以上であった。
△:破断点荷重が1000g以上で且つ2000g未満であった。
×:破断点荷重が1000g未満であった。
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の害虫忌避マルチフィルムを示した断面図である。
【図2】本発明の害虫忌避マルチフィルムを示した断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 銀色層
2 緑色層
2a 緑色層
2b 緑色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100重量部及びアルミニウム粉末0.1〜5重量部が含有され且つ緑色色素を含有していない銀色層と、この銀色層に積層一体化されて、熱可塑性樹脂100重量部及び緑色色素0.1〜5重量部が含有され且つアルミニウム粉末を含有していない緑色層とを含有し、上記銀色層が最外層となるように構成されていることを特徴とする害虫忌避マルチフィルム。
【請求項2】
アルミニウム粉末の平均粒径が3〜15μmであることを特徴とする請求項1に記載の害虫忌避マルチフィルム。
【請求項3】
緑色色素の平均粒径が0.05〜1μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の害虫忌避マルチフィルム。
【請求項4】
熱可塑性樹脂100重量部及びアルミニウム粉末0.1〜5重量部が含有され且つ緑色色素を含有していない銀色層と、この銀色層に積層一体化されて、熱可塑性樹脂100重量部及び緑色色素0.1〜5重量部が含有され且つアルミニウム粉末を含有していない緑色層とを含有し、上記銀色層が最外層となるように構成されている害虫忌避マルチフィルムでその銀色層が外側となるように畝面を被覆してなることを特徴とする畝の被覆構造。
【請求項5】
アルミニウム粉末の平均粒径が3〜15μmであることを特徴とする請求項4に記載の畝の被覆構造。
【請求項6】
緑色色素の平均粒径が0.05〜1μmであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の畝の被覆構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−11773(P2008−11773A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185854(P2006−185854)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】