説明

害虫防除剤収納容器

【課題】害虫を防除するのに好適であると共に、使用前及び使用時においても害虫防除剤に含まれる有効成分の漏れを起こすことがなく、取扱性を向上させた害虫防除剤収納容器を提供する。
【解決手段】装着時に容器本体11と蓋体12との間で画成される収納空間30に収納される薬剤含浸体13は、容器本体11の内底面14に設けられた支持部19によりその内底面14から離間するように配置され、そして蓋体12表面に設けられた揮散孔25から害虫防除剤の有効成分を外部へ揮散させる。これにより、使用前及び使用時においても、接触面を伝って漏れ出ることがなく、例えば、箪笥、引き出し、流し台収納部、食器棚等、害虫防除剤との接触が好ましくないものが収納される空間に設置されたとしても、害虫防除剤が外部へ漏れ出ることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精油等を揮散させて、例えばゴキブリ、コクゾウムシ等の害虫を防除するために用いられる害虫防除剤収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害虫防除剤収納容器としては、害虫を忌避するためアクセサリーケース内に液体揮散忌避成分を収納した害虫防除剤収納容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に開示された害虫防除剤収納容器では、薬剤含浸体として多孔質セラミックスに液体揮散忌避成分を染み込ませており、この多孔質セラミックスをアクセサリーケース内に収納して、そしてアクセサリーケースに設けられた揮散孔から液体揮散忌避成分を揮散させるようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−302409(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示されたものは、アクセサリーケース内に液体揮散忌避成分が染み込んだ多孔質セラミックスをその容器内部に、単に収納しているのみであり、液体揮散忌避成分がアクセサリーケースから外部へ漏れる虞があり、使用時に漏れが生じてしまうとアクセサリーケース101の周囲の人体や被服に直接付着して好ましいものではなかった。
【0006】
ここで、この種の害虫防除剤収納容器で発生する漏れは、多孔質セラミックスが接触設置されるアクセサリーケースの内底面をこの多孔質セラミックス自体から漏れ出た液体揮散忌避成分が直接伝って起きる場合、加えてアクセサリーケースがポリプロピレン等の樹脂材で成形されているときには、この樹脂材に液体揮散忌避成分が染み込んで起きる場合、等が考えられ、特に液体揮散忌避成分が精油等、油性の薬剤であった場合には、この漏れの問題は顕著になるが、この種の従来の害虫防除剤収納容器では、このような漏れを防止することは難しかった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、害虫を防除するのに好適であると共に、使用前及び使用時においても害虫防除剤に含まれる有効成分の漏れを起こすことがなく、取扱性を向上させた害虫防除剤収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前述の目的は、下記の構成により達成される。
(1) 所定の面に載置するための平坦面を有する容器本体と、当該容器本体に装着される蓋体と、害虫防除剤を保持する薬剤含浸体と、を有し、前記容器本体に前記蓋体が装着されることで画成される収納空間に前記薬剤含浸体が収納される害虫防除剤収納容器であって、
前記蓋体の表面には、前記収納空間に連通される揮散孔が設けられ、
前記容器本体の内底面には、前記薬剤含浸体を前記内底面から離間配置するための支持部が設けられている
ことを特徴とする害虫防除剤収納容器。
(2) 前記支持部は、前記内底面の周方向に所定の間隔で複数配設されている
ことを特徴とする上記(1)の害虫防除剤収納容器。
(3) 前記容器本体は、前記内底面の中央部から立設される容器本体側環状内方壁と、前記内底面から立設され且つ当該容器本体側環状内方壁を径方向で包囲する容器本体側環状外方壁と、前記内底面の周縁から立設される容器本体側外壁と、を有し、一方
前記蓋体は、内天面の中央部から立設される蓋体側環状内方壁と、当該内天面から立設され且つ当該蓋体側環状内方壁を径方向で包囲する蓋体側環状外方壁と、前記内天面の周縁から立設される蓋体側外壁と、を有し、そして
前記容器本体に前記蓋体が装着された時に、前記容器本体側環状外方壁は、前記蓋体側環状外方壁と前記蓋体側外壁との間に嵌め込まれ、且つ前記容器本体側環状内方壁は前記蓋体側環状内方壁と前記蓋体側環状外方壁との間に嵌め込まれるように構成されている
ことを特徴とする上記(1)又は(2)の害虫防除剤収納容器。
(4) 前記容器本体側環状外方壁、前記蓋体側環状外方壁、及び前記蓋体側外壁の少なくとも一方に係止突起が設けられ、そして
前記容器本体側環状外方壁、前記蓋体側環状外方壁、及び前記蓋体側外壁の少なくとも他方に、前記容器本体に前記蓋体が装着された時に、前記係止突起に対応して係合される係合部が設けられる
ことを特徴とする上記(3)の害虫防除剤収納容器。
(5) 更に、前記容器本体に、前記収納空間に連通される揮散孔が設けられる
ことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つの害虫防除剤収納容器。
(6) 前記蓋体に設けられる前記揮散孔が、前記所定の面から所定の高さ以内の範囲に位置するように設けられる
ことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つの害虫防除剤収納容器。
【0009】
上記(1)の構成によれば、装着時に容器本体と蓋体との間で画成される収納空間に収納される薬剤含浸体は、容器本体の内底面に設けられた支持部によりその内底面から離間するように配置され、そして蓋体表面に設けられた揮散孔から害虫防除剤の有効成分を外部へ揮散させる。これにより、使用前及び使用時においても、接触面を伝って漏れ出ることがなく、例えば、箪笥、引き出し等、害虫防除剤との接触が好ましくないものが収納される空間に設置されたとしても、害虫防除剤が外部へ漏れ出ることがない。また、薬剤含浸体に保持されている害虫防除剤が薬剤含浸体本体から漏れ出たとしても、支持部上の薬剤含浸体と内底面との間には隙間空間が存在するため、この隙間空間に一旦貯留された後にこの隙間空間内で気流等が発生して自然に揮散されることになり、外部への漏れを抑制することができる。したがって、害虫を防除するのに好適であると共に、使用前及び使用時においても外部への害虫防除剤に含まれる有効成分の漏れを起こすことがなく、取扱性を向上させることができる。さらに、容器本体には所定の面に載置するための平坦面が設けられているので、箪笥、引き出し、流し台収納部、食器棚等に安定して害虫防除剤収納容器を設置することができる。
上記(2)の構成によれば、装着時に容器本体と蓋体との間で画成される収納空間に収納される薬剤含浸体は、内底面の周方向に所定の間隔で複数配設されている支持部上に配置される。このため、雰囲気に対する薬剤含浸体全体の露出面積をより増大することができるので、薬剤含浸体の揮散性を向上させることができる。加えて、薬剤含浸体に保持されている害虫防除剤が薬剤含浸体本体から漏れ出たとしても、害虫防除剤が、前述した支持部上の薬剤含浸体と内底面との間の隙間空間に加えて、支持部それぞれの周方向間には空隙も存在するため、これら空間内でさらに自然に揮散されることになり、外部への漏れをより抑制することができる。
上記(3)の構成によれば、蓋体が容器本体に装着された時、容器本体側環状外方壁が蓋体側環状外方壁と蓋体側外壁との間に嵌め込まれると同時に容器本体側環状内方壁は蓋体側環状内方壁と蓋体側環状外方壁との間に嵌め込まれ、このことにより二重嵌合が実現されることになる。このため、密閉性に優れ使用前の害虫防除剤の漏れ(容器外部への有効成分の漏れ)を防ぐと共に害虫防除剤収納容器の傾きや倒れが生じたとしても、この二重嵌合で蓋体及び容器本体が密着されているので、蓋体と容器本体との間から漏れが生ずることがなく、取扱性を向上させることができる。なお、この二重嵌合が実現できれば、容器本体側環状内方壁、容器本体側環状外方壁、容器本体側外壁、及び蓋体側環状内方壁、蓋体側環状外方壁、蓋体側外壁のそれぞれは、種々の形状を採用することができ、例えば、円形状、多角形状、星形状、そして、これに加えて、動物、植物、キャラクター等の意匠性を有した形状とすることができる。
上記(4)の構成によれば、蓋体が容器本体に装着された時、容器本体側環状外方壁、蓋体側環状外方壁、及び蓋体側外壁の少なくともいずれか一方に設けられた係止突起が、前記容器本体側環状外方壁、前記蓋体側環状外方壁、及び前記蓋体側外壁の少なくとも他方に設けられた係合部に係合されることで、嵌め合わせ感が適度に付与できて、蓋体と容器本体との装着が確実に行われたことを作業者や使用者に促すことができると共に上記(3)の効果をより高めることができる。
上記(5)の構成によれば、容器本体側にも揮散孔が設けられるので、害虫防除剤の有効成分をより多く、外部へ揮散させることができ、使用時における揮散性をより高めて、害虫防除効果の向上を図ることができる。
上記(6)の構成によれば、蓋体に設けられる揮散孔が、所定の面、即ち設置面から所定の高さ以内の範囲に位置するように設けられ、揮散孔と設置面との距離が近くなるので、その揮散孔から揮散させられた害虫防除剤の有効成分がその設置面に沿って放射状に拡散されることになる。このため、対象とする害虫が、ゴキブリ、コクゾウムシ等の匍匐害虫とされる場合には、害虫防除効果をより高めることができ、また引き出し等の高さが低い空間での使用に適している。
【0010】
ここで、害虫防除剤の有効成分としては精油を含み、この精油としては、例えば、リナロール、α―ピネン、β−ピネン、リモネン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、ヒノキオイル、月桃オイル、ヒバオイル、スペアミントオイル、バジルオイル、バラオイル、ジャスミンオイル、ユーカリオイル、キュベバオイル、ハッカオイル、オレンジオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、ライムオイル、ペチバーオイル、レモングラスオイル、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、イランイランオイル、ティートリーオイル、ボアドローズオイル、マジョラムオイル、ホップオイル、シソオイル、ベルガモットオイル、ゼラニウムオイル、ニームオイル、防虫菊オイル、カモミールオイル、等を例示することができる。
また、この他にも常温で揮散性を有する、例えば、エムペントリン、トランスフルトリン、プロフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系化合物を用いることができる。
【0011】
そして、このような害虫防除剤が含浸される薬剤含浸体としては、効率よく自然揮散させる上で、薄型で化合物の自然揮散を妨げない構造のものを使用する。このような薬剤含浸体は、その容積が小さくても揮散性に優れ、また殺虫又は/及び忌避効果を維持できるので、薬剤含浸体を小型化することができる。
【0012】
このような薬剤含浸体としては、例えば、紙、糸(撚り糸等)、不織布、木材、パルプ、無機高分子物質、無機多孔質物質(ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト等)、有機高分子物質(セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等)、昇華性物質(アダマンタン、シクロドデカン、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳等)、樹脂類などが挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することができる。また、自重の数倍以上を保持できる薬剤含浸体、例えば連続気泡の発泡体などを用い、より小型化をしてもよい。そして、害虫防除剤を薬剤含浸体に均一に含浸させるために、水、アルコール、等の溶媒等を併用してもよい。
【0013】
また、薄型で害虫防除剤の自然揮散を妨げない構造を有する限り、薬剤含浸体の形態、形状や大きさは任意であり、各種の形態、形状(例えば立体形状、板状形状、シート形状)で使用することができるが、本発明では容器内に薄型に収納する必要があることからシート形状とするのが好ましく、また通気性に優れ表面積を広くすることができるハニカム形状、ネット形状とするのもよい。
【0014】
薬剤含浸体に害虫防除剤を保持させる方法として、例えば滴下塗布、浸漬塗布、スプレー塗布、含浸、薬剤含浸体への練り込み等の方法が挙げられる。害虫防除剤の保持量は、匍匐害虫等の害虫の防除に有効な量を持続的に放出できる量であるのが好ましい。即ち、害虫防除剤の含浸量を1〜200mg/cmより好ましくは、10〜100mg/cmに設定するとよい。
【0015】
害虫防除剤の有効成分の揮散量としては、精油を用いる場合には、一日当たり0.04mg/リットル以上を目安に揮散孔の数、総面積を設定すればよく、例えば、20〜30リットルの容積を有する引き出し等においては、一日当たり1mg以上、好ましくは3mg以上とするのがよい。
例えば、精油の揮散量を一日当たり約5mgとして用いる際には、本発明に係る害虫防除剤収納容器の寸法が直径2〜10cm、高さ1〜3cmとした場合には、蓋体に、径1mm×2個〜径1.5mm×4個程度の揮散孔を設けるとよい。
【0016】
本発明に係る害虫防除剤収納容器を適用するのに好適な害虫としては、例えば、ゴキブリ、アリ、ノシメマダラメイガ、イガ、カツオブシムシ、コクゾウムシ、コイガ等の匍匐性の衛生害虫、食品害虫、衣料害虫等を例示することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、害虫を防除するのに好適であると共に、使用前及び使用時においても害虫防除剤に含まれる有効成分の漏れを起こすことがなく、取扱性を向上させた害虫防除剤収納容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図3は本発明に係る害虫防除剤収納容器の一実施形態を示すものであり、図1は本発明の一実施形態に係る害虫防除剤収納容器の分解斜視図であり、図2は図1の害虫防除剤収納容器の組立前の縦断面図であり、図3は図2の害虫防除剤収納容器の組立後の縦断面図である。
【0019】
図1に示すように、害虫防除剤収納容器10は、容器本体11と、蓋体12と、円板シート状の薬剤含浸体13と、を備えて構成され、例えば、箪笥、引き出し、流し台収納部、食器棚等の準密閉空間の中に設置されるものである。
【0020】
容器本体11は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合樹脂{例えば、エバール(商品名)等}、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等の樹脂材により一体射出成形されたものであり、その底部に平坦面11aを有したお椀形状をなして、内底面14と、この内底面14の中央部から立設された容器本体側円環状内方壁(容器本体側環状内方壁)15と、この容器本体側円環状内方壁15と略同心円状になるように内底面14から立設され且つこの容器本体側円環状内方壁15を径方向で包囲する容器本体側円環状外方壁(容器本体側環状外方壁)16と、その内底面14の周縁から立設される容器本体側外壁17と、を有している。
なお、内底面14の中央部には、例えば曲げに対する応力分散のため、内側に突出して容器本体11の裏面と表面とで湾曲形状をなす突部18が形成されている。
【0021】
容器本体側円環状内方壁15は、容器本体11に設けられた3個の壁15,16,17のうち最も小さい径寸法を有し、図1中上方に向けて円筒形状に突出形成されている。そして、容器本体側円環状内方壁15の内周縁に沿って、薬剤含浸体13を支持するための16個の支持部19が内底面14上に形成されている。この支持部19は、略直方体形状に形成されており容器本体側円環状内方壁15の内周縁に沿って円周方向に等間隔で設けられている。このため、円周方向に空隙29が設けられていることになる。
【0022】
容器本体側円環状外方壁16は、容器本体側円環状内方壁15と比べて大きい径寸法を有し、容器本体側円環状内方壁15の外方に配設されており、上方に向けて円筒形状に突出形成されている。
【0023】
容器本体側外壁17は、容器本体11の外壁を構成するものであり、容器本体側円環状外方壁16と比べて大きい径寸法を有し、容器本体側円環状外方壁16の外方に配設されて、湾曲した略円筒形状で上方に向けて突出形成されている。
【0024】
蓋体12は、容器本体11と同様に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合樹脂{例えば、エバール(商品名)等}、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等の樹脂材により一体射出成形されたものであり、天部に平坦面12aを有したお椀形状をなして、内天面20と、この内天面20の中央部から立設される蓋体側円環状内方壁(蓋体側環状内方壁)21と、この蓋体側円環状内方壁21と略同心円状になるように内天面20から立設され且つ蓋体側円環状内方壁21を径方向で包囲する蓋体側円環状外方壁22(蓋体側環状外方壁)と、内天面20の周縁から立設される蓋体側外壁23と、を有する。
なお、内天面20の中央部には、例えば曲げに対する応力分散のため、内側に突出して蓋体12の表面と裏面とで湾曲形状をなす5個の突部24が形成されており、これら突部24の間には、4個の揮散孔25が蓋体12の表裏で貫通形成されている。
また、この揮散孔25は、害虫防除剤収納容器10が載置されたときの設置面から所定高さ以内の範囲に位置するように設けられており、この高さを50mmと設定するのがよく、さらに好ましくは10〜20mmと設定するのがよい。
【0025】
蓋体側円環状内方壁21は、蓋体12に設けられた3個の壁21,22,23のうち最も小さい径寸法を有し、図1中左下方向に向けて円筒形状に突出形成されている。蓋体側円環状外方壁22は、蓋体側円環状内方壁21と比べて大きい径寸法を有し、蓋体側円環状内方壁21の外方に配設されており、図1中左下方に向けて円筒形状に突出形成されている。そして、蓋体側外壁23は、蓋体12の外壁を構成するものであり、蓋体側円環状外方壁22と比べて大きい径寸法を有し、蓋体側円環状外方壁22の外方に配設されて、湾曲した略円筒形状で図1中左下方に向けて突出形成されている。
【0026】
薬剤含浸体13は、容器本体側円環状内方壁15の径寸法よりも僅かに小さい径寸法を有し、所定の高さ寸法を有して円板形状に形成された含浸性を有する基材(シート)に、精油等を含む害虫防除剤が含浸されている。
【0027】
そして、図2に示すように、蓋体12の上面(表面)には、使用前に揮散孔25を閉塞しておくための1枚のバージンシール26が貼り付けられている。このバージンシール26は分割式に構成されており、使用時に所定の箇所で部分的に剥されることで揮散孔25が開放される。また、その残りの部分に使用を開始した日付等を書き込むことができるように構成されていてもよく、この場合には使い勝手をよくすることができる。
【0028】
また、容器本体側円環形状内方壁15の内径寸法R1は、蓋体側円環形状内方壁21の内径寸法R2よりも僅かに大きく、この蓋体側円環形状内方壁21の外径寸法R3よりも僅かに小さくなるように設定されている。
【0029】
また、容器本体側円環形状外方壁17の突出先端部には、周方向に渡って係止突起27が設けられており、そして蓋体側外壁23の突出先端部の内面には、周方向に渡って係合凹部(係合部)28が設けられている。係止突起27の外径寸法R4は、蓋体側円環状外方壁22の外径寸法R5よりも大きく、係合凹部28の内径寸法R6と同等である。
【0030】
支持部19は、内底面14から高さ寸法L1となるように形成されているので、支持部19上に薬剤含浸体13が載置されると、薬剤含浸体13と内底面14との間に、高さ寸法L1の隙間空間が画成されることになる。より具体的には、その高さ寸法L1を1〜5mm程度に設定するとよく、低すぎると内底面14と薬剤含浸体13との距離が近くなりすぎて漏れを抑制する効果を十分に発揮できない虞があり、一方高すぎると、容器全体の嵩が高くなるので好ましくない。
【0031】
図3に示すように、薬剤含浸体13が容器本体11の容器本体側円環形状内方壁15の内側において支持部19上に載置され、そして蓋体12が容器本体11に装着されることで、薬剤含浸体13が、容器本体11の容器本体側内方壁15と蓋体12の蓋体側円環状内方壁21とにより包囲される収納空間30内に収納されることになる。
【0032】
このとき、容器本体側円環状外方壁16が蓋体側円環状外方壁22と蓋体側外壁23との間に嵌め込まれると同時に容器本体側円環状内方壁15が蓋体側円環状内方壁21と蓋体側円環状外方壁22との間に嵌め込まれ、そして蓋体側外壁23の係合凹部28が、容器本体側円環状外方壁16の係止突起27に係合され、蓋体12が容器本体11に閉塞されることになる。これにより、蓋体側外壁23と蓋体側円環形状外方壁22との間への容器本体側円環形状外方壁16の嵌合と、蓋体円環形状外方壁22と蓋体側円環形状内方壁21との間への容器本体側内方壁15の嵌合と、による二重嵌合が実現されて、含浸体収納部30が密閉されることになる。
【0033】
このような害虫防除剤収納容器10は、使用時に、バージンシール26が剥されることにより蓋体12に設けられた揮散孔25が開放される。そして、箪笥、引き出し、流し台収納部、食器棚等の所定の設置面に容器本体11の平坦面11aが接触配置されるように設置される。このため、収納空間30内に収納されている薬剤含浸体13から、害虫防除剤の有効成分が揮散し始めて、所定空間に害虫が定着しないように忌避することができて、害虫を防除することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、装着時に容器本体11と蓋体12との間で画成される収納空間30に収納される薬剤含浸体13は、容器本体11の内底面14に設けられた支持部19によりその内底面14から離間するように配置され、そして蓋体12表面に設けられた揮散孔25から害虫防除剤の有効成分を外部へ揮散させる。これにより、使用前及び使用時においても、接触面を伝って漏れ出ることがなく、例えば、箪笥、引き出し、流し台収納部、食器棚等、害虫防除剤との接触が好ましくないものが収納される空間に設置されたとしても、害虫防除剤が外部へ漏れ出ることがない。また、薬剤含浸体13に保持されている害虫防除剤が薬剤含浸体13本体から漏れ出たとしても、支持部19上の薬剤含浸体13と内底面14との間には隙間空間が存在するため、この隙間空間に一旦貯留された後にこの隙間空間内で気流等が発生して自然に揮散されることになり、外部への漏れを抑制することができる。したがって、害虫を防除するのに好適であると共に、使用前及び使用時においても外部への害虫防除剤に含まれる有効成分の漏れを起こすことがなく、取扱性を向上させることができる。さらに、容器本体11には所定の面に載置するための平坦面11aが設けられているので、箪笥、引き出し、流し台収納部、食器棚等に安定して害虫防除剤収納容器10を設置することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、装着時に容器本体11と蓋体12との間で画成される収納空間30に収納される薬剤含浸体13は、内底面14の円周方向に所定の間隔で複数配設されている支持部19上に配置される。このため、雰囲気に対する薬剤含浸体13全体の露出面積をより増大することができるので、薬剤含浸体13の揮散性を向上させることができる。加えて、薬剤含浸体13に保持されている害虫防除剤が薬剤含浸体13本体から漏れ出たとしても、害虫防除剤が、前述した支持部19上の薬剤含浸体13と内底面14との間の隙間空間に加えて、支持部19それぞれの周方向間には空隙29も存在するため、これら空間内でさらに自然に揮散されることになり、外部への漏れをより抑制することができる。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、蓋体12が容器本体11に装着された時、容器本体側円環状外方壁16が蓋体側円環状外方壁22と蓋体側外壁23との間に嵌め込まれると同時に容器本体側円環状内方壁15は蓋体側円環状内方壁21と蓋体側円環状外方壁22との間に嵌め込まれ、このことにより二重嵌合が実現されることになる。このため、密閉性に優れ使用前の害虫防除剤の漏れ(容器外部への有効成分の漏れ)を防ぐと共に害虫防除剤収納容器10の傾きや倒れが生じたとしても、この二重嵌合で蓋体12及び容器本体11が密着されているので、蓋体12と容器本体11との間から漏れを生ずることがなく、取扱性を向上させることができる。
【0037】
そして、本実施形態によれば、蓋体12が容器本体11に装着された時、容器本体側円環状外方壁17に設けられた係止突起27が、蓋体側外壁23に設けられた係合凹部28に係合されることで、嵌め合わせ感が適度に付与できて、蓋体12と容器本体12との装着が確実に行われたことを作業者や使用者に促すことができると共により、密封性及び取扱性を向上させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、蓋体12に設けられる揮散孔25が、所定の面、即ち設置面から所定の高さ以内の範囲に位置するように設けられ、揮散孔25と設置面との距離が近くなるので、その揮散孔25から揮散させられた害虫防除剤の有効成分がその設置面に沿って放射状に拡散されることになる。このため、対象とする害虫が、ゴキブリ、コクゾウムシ等の匍匐害虫とされる場合には、害虫防除効果をより高めることができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明に係る害虫防除剤収納容器の作用効果を確認するために行った複数の実施例について説明する。
【0040】
(実施例1)
まず、本発明に係る害虫防除剤収納容器の害虫防除効果(特に忌避効果)を確認するため設置空間における定着阻止率試験を行った。設置空間として引き出しの空間を想定し、22Lの空間を有するチャンバを用意して試験を行った。
より具体的には、図4に示すように、1m×1m×25cmのチャンバ500内に25cm×25cm×35cmのボックス501,502を2つ配置する。そして、この2つのボックス501,502のうちの一方のボックス501にのみ、本発明に係る害虫防除剤収納容器(全体 径:5cm 高さ:1.5cm)を配置し(この害虫防除剤収納容器が配置されるボックス501を「処理区」、配置されないボックス502を「無処理区」とも言う。)、クロゴキブリの雄雌各25頭をチャンバ内に放した上で、25℃、40%RHの環境条件下で、明暗を12hおきに繰り返して、この2つのボックス501,502それぞれにおける定着阻止率を調べた。また、チャバネゴキブリ雄雌各30頭についても同様な試験を行った。
なお、試験時、ボックス501,502のいずれも不透明塩ビ材の蓋を行い、バット500内に固形飼料が入れられた容器503及び水が入れられた容器504を配置し、そして、害虫防除剤として、ゴキブリに対して忌避作用を有するローズマリーオイル(250mg)を薬剤含浸体に含浸させて用いた。また、薬剤含浸体としては、円形状のパルプ製シートを用い、その径を33mm、厚みを2.8mmと設定した。
【0041】
クロゴキブリの定着阻止率を表1に、チャバネゴキブリの定着阻止率を表2に示す。
なお、定着阻止率は以下の数式を用いて算出した。
【0042】
【数1】

【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
表1及び表2により明らかなように、クロゴキブリ及びチャバネゴキブリは、いずれも処理区に定着しないことがわかる。これにより、本発明に係る害虫防除剤収納容器の害虫防除効果が確認された。
【0046】
(実施例2)
次に、本発明に係る害虫防除剤収納容器の漏れ(使用前の容器外部への有効成分の漏れ)防止の効果を確認するための試験を行った。
この試験として、本発明に係る害虫防除剤収納容器(全体 径:5cm 高さ1.5cm)と、比較例として前述の容器本体側円環状内方壁及び蓋体側円環形状内方壁が設けられていない害虫防除剤収納容器(以下、この害虫防除剤収納容器を「比較例」とも言う。)と、を用意した。いずれの薬剤含浸体にも、害虫防除剤の有効成分としてローズマリーオイルを50%含んだ香料(500mg)を含浸させてそれぞれの害虫防除剤収納容器に収納させ容器本体と蓋体とを装着して、25℃の環境条件下に放置した。そして、1週間後に薬剤含浸体の質量を測定し、その減少量からその薬剤の漏れ量を求めた。
【0047】
本発明及び比較例について複数個の検体(本発明: n=3、比較例:n=7)で行い、本発明のものではその漏れ量が平均0mgであったに対し、比較例では平均105mgであった。これにより、本発明に係る害虫防除剤収納容器が、使用前の有効成分の漏れ防止効果に優れていることが確認された。
【0048】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0049】
例えば、揮散孔25の数は、図示した4個に限定されず、1個であっても、4個以外の複数個であっても良く、害虫防除剤収納容器の揮散性の程度によってその数は適宜選定されて、揮散孔25全体からの揮散量が調整されることになる。さらに、前述した実施形態では、揮散孔を蓋体12のみに設けたが、容器本体11側にも設けてもよい。この場合には、害虫防除剤の有効成分をより多く、外部へ揮散させることができ、使用時における揮散性をより高めて、害虫防除効果の向上を図ることができる。
【0050】
また、前述した実施形態では、支持部19を16個設けたが、これに限らず、薬剤含浸体13を安定して支持できればよく、その個数は3〜20個がよい。少なすぎると薬剤含浸体13を安定に支持できず、一方多すぎると支持部19間に設けられる空隙29が少なくなってしまい、漏れを抑制する効果を損なってしまうことになるので好ましくない。
【0051】
さらに、変形例として、図5に示すように、容器本体11の容器本体側外壁17の周方向等間隔の4箇所で設置面に向かって棒状に延出した4本の脚部111が設けられた害虫防除剤収納容器110とすることもできる。この形態では、設置面に対し安定して載置でき、また容器本体11の底面に揮散孔が設けられた場合には、容器上方だけではなく、下方からも害虫防除剤の有効成分を揮散できて、害虫防除効果を高めることができる。
【0052】
また、別の変形例として、図6に示すように、傘部材212を有した害虫防除剤収納容器210とすることもできる。即ち、蓋体12の天面(上面)の中央部にボス部211が設けれ、このボス部211の先端部には係合突起211aが突出形成されている。一方、傘部材212は、円形状の平板部212bと、この平板部212bの中央部に設けられると共に係合溝212cを有したボス部212aと、を有して構成されている。そして、この両ボス部211、212aを合わせ、係合突起211aと係合溝212cとを嵌め合わせることで傘部材212が取り付けられる。
したがって、本変形例によれば、揮散孔25から揮散された有効成分は、傘部材212と蓋体12の天部とにより画成された略円環状の空間の周方に向かって流れることなり、その後、害虫防除剤収納容器210の外壁23、17を沿って設置面に流れ、そして設置面の面方向に沿って放射状に拡散されることになる。このため、対象とする害虫が、ゴキブリ、コクゾウムシ等の匍匐害虫とされる場合には、害虫防除効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る害虫防除剤収納容器の分解斜視図である。
【図2】図1の害虫防除剤収納容器の組立前の縦断面図である。
【図3】図2の害虫防除剤収納容器の組立後の縦断面図である。
【図4】実施例に用いた試験装置の概略図である。
【図5】害虫防除剤収納容器の変形例を示す縦断面図である。
【図6】害虫防除剤収納容器の更に別の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 害虫防除剤収納容器
11 容器本体
11a 平坦面
12 蓋体
13 薬剤含浸体
14 内底面
15 容器本体側円環状内方壁(容器本体側環状内方壁)
16 容器本体側円環状外方壁(容器本体側環状外方壁)
17 容器本体側外壁
19 支持部
20 内天面
21 蓋体側円環状内方壁(蓋体側環状内方壁)
22 蓋体側円環状外方壁(蓋体側環状外方壁)
23 蓋体側外壁
25 揮散孔
27 係止突起
28 係合凹部(係合部)
30 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の面に載置するための平坦面を有する容器本体と、当該容器本体に装着される蓋体と、害虫防除剤を保持する薬剤含浸体と、を有し、前記容器本体に前記蓋体が装着されることで画成される収納空間に前記薬剤含浸体が収納される害虫防除剤収納容器であって、
前記蓋体の表面には、前記収納空間に連通される揮散孔が設けられ、
前記容器本体の内底面には、前記薬剤含浸体を前記内底面から離間配置するための支持部が設けられている
ことを特徴とする害虫防除剤収納容器。
【請求項2】
前記支持部は、前記内底面の周方向に所定の間隔で複数配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の害虫防除剤収納容器。
【請求項3】
前記容器本体は、前記内底面の中央部から立設される容器本体側環状内方壁と、前記内底面から立設され且つ当該容器本体側環状内方壁を径方向で包囲する容器本体側環状外方壁と、前記内底面の周縁から立設される容器本体側外壁と、を有し、一方
前記蓋体は、内天面の中央部から立設される蓋体側環状内方壁と、当該内天面から立設され且つ当該蓋体側環状内方壁を径方向で包囲する蓋体側環状外方壁と、前記内天面の周縁から立設される蓋体側外壁と、を有し、そして
前記容器本体に前記蓋体が装着された時に、前記容器本体側環状外方壁は、前記蓋体側環状外方壁と前記蓋体側外壁との間に嵌め込まれ、且つ前記容器本体側環状内方壁は前記蓋体側環状内方壁と前記蓋体側環状外方壁との間に嵌め込まれるように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫防除剤収納容器。
【請求項4】
前記容器本体側環状外方壁、前記蓋体側環状外方壁、及び前記蓋体側外壁の少なくとも一方に係止突起が設けられ、そして
前記容器本体側環状外方壁、前記蓋体側環状外方壁、及び前記蓋体側外壁の少なくとも他方に、前記容器本体に前記蓋体が装着された時に、前記係止突起に対応して係合される係合部が設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の害虫防除剤収納容器。
【請求項5】
更に、前記容器本体に、前記収納空間に連通される揮散孔が設けられる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の害虫防除剤収納容器。
【請求項6】
前記蓋体に設けられる前記揮散孔が、前記所定の面から所定の高さ以内の範囲に位置するように設けられる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の害虫防除剤収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−153400(P2009−153400A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332279(P2007−332279)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】