説明

家屋の壁構築方法

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な家屋の壁構築方法を提供することを目的とする。
【解決手段】家屋の柱などの縦骨材間にパネル体1を配して成る家屋の壁構築方法であって、下方に配されるパネル体1の上端部と、この下方のパネル体1の上方に配されるパネル体1の下端部とを、この上下のパネル体1同志間に横設される横材4を介して連結する家屋の壁構築方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の壁構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、家屋の壁構築方法として、例えば特開2002−129680号に開示される枠組壁工法(以下、従来工法)が提案されている。
【0003】
この従来工法は、例えば基礎の上部に床組50A(プラットフォーム)を設け、この床組50Aの上に軸組50Bを立ち上げて壁を形成して下階を設け、この下階の軸組50Bの上に床組50Aを設け、この床組50Aの上に軸組50Bを立ち上げて壁を形成して上階を設けるという、各階において床組50Aと軸組50Bを順に積み上げていく工法である。
【0004】
この従来工法により構築された家屋は、図9に図示したような壁構造を具備し、左右に立設される縦骨材(隅柱)間に設けられる間柱51同志の間隔は、図示省略のころび止め及び下枠52と上枠53との間に架設される図示省略の筋交いを介して保持される。
【0005】
符号54は頭つなぎ、55は側根太、56は床根太、57は床下張り、58は土台、59は布基礎である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−129680公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、日本各地で地震が頻発しており、木造建築家屋に対してより強い耐震性が求められる中、この従来の枠組壁工法で構築された家屋は、強度上不十分であるとされる。
【0008】
具体的には、この従来工法で構築された家屋は、下階の壁構造と上階の壁構造との間に継ぎ目が発生してしまう構造であり(この下階と上階との継ぎ目部分が揺れに弱い)、その他にも、前述した各構成部材同志を釘やボルトなど止着部材60で止着する際、この止着部材60を部材同志の継ぎ目に対して斜め方向に挿入して連結する構造であるなど、種々の理由から強度上不十分であるとされる。
【0009】
本発明は、前述した問題点に着目し、種々の実験・研究を繰り返し行った結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な家屋の壁構築方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
家屋の柱などの縦骨材間にパネル体1を配して成る家屋の壁構築方法であって、下方に配されるパネル体1の上端部と、この下方のパネル体1の上方に配されるパネル体1の下端部とを、この上下のパネル体1同志間に横設される横材4を介して連結することを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0012】
また、家屋の柱などの縦骨材間にパネル体1を配して成る家屋の壁構築方法であって、下階の壁構造となるパネル体1の上端部と、この下階のパネル体1の上方に配され上階の壁構造となるパネル体1の下端部とを、左右に立設される縦骨材間に架設される横材4を介して連結することを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1,2のいずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記パネル体1は、平板2と該平板2の側端部に連結される縦部材3とで構成されていることを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0014】
また、請求項3記載の家屋の壁構築方法において、前記パネル体1の長さ方向の端部にして前記縦部材3の表裏面の少なくとも一方には、前記横材4を配設する配設部5が設けられていることを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0015】
また、請求項4記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部5は、前記縦部材3の表面及び裏面に設けられていることを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0016】
また、請求項4,5いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部5は、前記縦部材3を切欠して形成された切欠部であることを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0017】
また、請求項4,5いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部5は、前記平板2を前記縦部材3の端面から突出して形成した場合における該平板2の端部両側であることを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0018】
また、請求項4〜7いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部5は、前記パネル体1の長さ方向の両端部に設けられていることを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【0019】
また、請求項1〜8いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記横材4は根太であることを特徴とする家屋の壁構築方法に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のように構成したから、例えば下階の壁構造と上階の壁構造とが堅固に連結されることになり極めて耐震性に秀れた家屋が得られ、しかも、構成材(材料)が少なくて済み簡易な構造であるから、極めて施工性に秀れてコスト安であるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な家屋の壁構築方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて簡単に説明する。
【0022】
下方に配されるパネル体1の上端部と、この下方のパネル体1の上方に配されるパネル体1の下端部とを、この上下のパネル体1同志間に横設される横材4を介して連結する。
【0023】
具体的には、下階の壁構造となるパネル体1の上端部と、この下階のパネル体1の上方に配され上階の壁構造となるパネル体1の下端部とを、左右に立設される縦骨材(例えば柱)間に架設される横材4(例えば根太)を介して連結する。
【0024】
従って、前述した従来工法に比し、下階の壁構造と上階の壁構造との一体化が強く、よって、堅固な家屋を構築することができ、しかも、材料が少なくて済み簡易な構造であるから(前述した従来工法における下枠52、上枠53、ころび止め、筋交い、頭つなぎ54及び間柱51は不要となる。)、極めて施工性に秀れてコスト安となり、しかも、構成材(材料)が少なく済むことで資源の枯渇問題にも適した工法と言える。
【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、家屋の柱などの縦骨材間にパネル体1を配して成る家屋の壁構築方法であり、下記構成のパネル体1を用いて家屋を構築する。
【0027】
パネル体は、図1,2に図示したように木製の平板2と該平板2の左右側端部2aに連結する木製の縦部材3とで構成されている。
【0028】
この縦部材3の内面には凹溝3aが形成されており、この凹溝3aに平板2の側端部2aを嵌合して連結している。この平板2に対する連結に際しては、凹溝3a内に接着剤が塗布される。
【0029】
また、縦部材3には、図1,2に図示したように縦部材3の長さ方向の端部(上下端部)にして平板2に連設する部位以外の前後部位に段部3b(切欠部)が形成されている。
【0030】
この切欠部3bを設けることにより、パネル体1の上下端部には、後述する横材4を平板2の表裏面に重合状態で連結するための配設部5が形成される。尚、この配設部5の構成として、縦部材3の上下端部から平板2の上下端部を突出させただけの構成(平板2を縦部材3の端面から突出して形成した場合における該平板2の端部両側とした構成)としても良いが、前述したように縦部材3の上下端部を一部残した場合には、横材4を連結した際の強度をより一層強くすることができる。
【0031】
尚、本実施例では、パネル体1の上下端部双方に配設部5を設けているが、他の階と連結する一方の端部のみに設けるようにしても良い。
【0032】
以上の構成のパネル体1は、例えば工場において下記のような製造方法において量産される。
【0033】
具体的には、図3中(a)に図示したように長尺の平板2の左右側端部に長尺の縦部材3を連結して長尺パネル体1Aを得る。
【0034】
続いて、図3中(b)に図示したように長尺パネル体1Aを所定長さ位置で切断して短尺パネル体1Bを得る。
【0035】
続いて、図3中(c)に図示したように短尺パネル体1Bの縦部材3の上下端部にして平板2に連設する部位以外の前後部位に切欠部3bを形成し、配設部5を上下端部に有するパネル体1が完成する。
【0036】
次に、前述したパネル体1を用いた家屋の壁構築方法について説明する。尚、本実施例では、パネル体1を配する部位及びその周辺部位のみの構築方法について説明する。
【0037】
先ず、布基礎8の上面に土台としての機能を発揮する一対の根太9(側根太)を配設する。この一対の側根太9は隙間S1を介して配設され、図示省略のアンカーボルトを介して布基礎8に固定される。
【0038】
続いて、床根太12を配設し、この床根太12の上面に床下張り11を配設する。符号10は床下張り受け材である。
【0039】
続いて、並設する複数のパネル体1の下端配設部5を該側根太9の隙間S1に嵌挿させ、パネル体1を側根太9の上に立設状態として一階の壁構造を形成する。このパネル体1の下端配設部5と側根太9とは重合状態となり、この重合状態での連結は、該側根太9の外側から水平方向に嵌挿させた止着部材としてのボルト17の止着により行われる(図4,6参照)。
【0040】
また、図8に図示したようにこの複数並設されるパネル体1の左右部位にして側根太9の上面所定位置には縦骨材としての柱6が立設され、この柱6に隣接するパネル体1の縦部材3は柱6に対してボルト17を介して連結されるとともに、隣接するパネル体1の縦部材3同志はボルト17を介して連結される。
【0041】
続いて、この各パネル体1の上端配設部5の表裏面に一対の横材4を重合状態に配して連結する。この一対の横材4は前述した左右の縦骨材としての柱6同志間に架設される根太(側根太)であり、このパネル体1の上端配設部5と側根太4との重合状態での連結は、該側根太4の外側から水平方向に嵌挿させた止着部材としてのボルト17の止着により行われる(図4,6参照)。この際、一対の側根太4同志間には隙間S2が形成される。
【0042】
また、各パネル体1の上端部内側の切欠部3b同志間には側根太4及び床根太16を受ける受け材14が架設されている。
【0043】
続いて、床根太16を配設し、この床根太16の上面に床下張り15を配設する。符号13は床下張り受け材である。
【0044】
続いて、並設する各パネル体1の下端配設部5を側根太4の隙間S2に嵌挿させ、パネル体1を側根太4の上に立設状態として二階の壁構造を形成する。このパネル体1の下端配設部5と側根太4とは重合状態となり、この重合状態での連結は、該側根太4の外側から水平方向に嵌挿させた止着部材としてのボルト17の止着により行われる(図4,6参照)。尚、図5は二階の壁構造を形成するパネル体1に係る縦部材3の下端部を切欠して平板2にまで床下張り15が届くように設けた場合であり、家屋を構成する部材同志の一体化をより高めることができる。
【0045】
以上のように、本実施例は、パネル体1を用いて図4,6に図示したような上下の各階の壁構造が構築される。
【0046】
また、本実施例では、窓を設ける為の開口部Wを形成する場合、図6に図示したように開口部Wとなる部位の上下位置に小型化したパネル体1’を配設することで構成しており、下方に配されるパネル体1’の上端配設部5の表裏面には一対の横材7(まぐさ)が重合状態に配されて連結され、上方に配されるパネル体1’の下端配設部5の表裏面には一対の横材7(まぐさ)が重合状態に配されて連結される。この各まぐさ7は、開口部Wとなる部位の左右位置に配されるパネル体1同志の間に架設されており、この各パネル体1に係る一側の縦部材3は図7に図示したようにまぐさ7を配する凹部3cが形成されている。
【0047】
また、開口部Wとなる部位の上方位置に配されるパネル体1’の上端配設部5と、二階の壁構造を形成するパネル体1の下端配設部5とは、各配設部5の表裏面に一対の側根太4が重合状態に配されて連結される。
【0048】
この形成方法で構築された開口部Wは、従来工法で構築された場合に比し、家屋の強度を飛躍的に向上することができる点を実験により確認している。
【0049】
尚、本実施例では、止着部材としてボルト17を採用しているが、釘やネジやビスなどでも良いのは勿論である。
【0050】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来工法に比し、下階の壁構造と上階の壁構造との一体化が強く、堅固な家屋を構築することができ、しかも、材料が少なくて済み簡易な構造であるから(前述した従来工法における下枠52、上枠53、ころび止め、筋交い、頭つなぎ54及び間柱51は不要となる。)、極めて施工性に秀れてコスト安となり、しかも、構成材(木材)が少なく済むことで資源の枯渇問題にも適した工法となる。
【0051】
また、本実施例は、パネル体1の配設部5に対して一対の横材4を重合状態とし、この重合部位に対して水平方向からボルト17(止着部材)を嵌挿させて連結する構造であるから、引き抜き力に対する抵抗を、ボルト17の引き抜き抵抗からボルト17のせん断抵抗へと置換されることになり、抵抗力が飛躍的に向上することになり、しかも、ボルト17を部材同志の継ぎ目に対して斜め方向から挿入する従来工法に比し、簡易に且つ良好にボルト17を挿入することができることになる為、堅固な連結状態が確実に得られることになる。
【0052】
また、本実施例は、パネル体1の平板2に対して一対の横材4を重合状態としてこの重合部位にボルト17を嵌挿させて連結する構造である為、単なる一枚の板材と一枚の板材との連結構造に比し、例えばこの連結部位に付与された振動が分散されることになり強度上秀れることになる。
【0053】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施例に係るパネル体1を示す斜視図である。
【図2】本実施例に係るパネル体1を示す分解斜視図である。
【図3】本実施例に係るパネル体1の製造工程説明図である。
【図4】本実施例により構築される壁構造の説明断面図である。
【図5】本実施例により構築される別の壁構造の説明断面図である。
【図6】本実施例に係る家屋の壁構築方法の説明図である
【図7】本実施例に係るパネル体1の縦部材3の一部を切り欠いた状態を示す斜視図である。
【図8】本実施例により構築される壁構造の説明平断面図である。
【図9】従来工法により構築される壁構造の説明断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 パネル体
3 縦部材
4 横材
5 配設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋の柱などの縦骨材間にパネル体を配して成る家屋の壁構築方法であって、下方に配されるパネル体の上端部と、この下方のパネル体の上方に配されるパネル体の下端部とを、この上下のパネル体同志間に横設される横材を介して連結することを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項2】
家屋の柱などの縦骨材間にパネル体を配して成る家屋の壁構築方法であって、下階の壁構造となるパネル体の上端部と、この下階のパネル体の上方に配され上階の壁構造となるパネル体の下端部とを、左右に立設される縦骨材間に架設される横材を介して連結することを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記パネル体は、平板と該平板の側端部に連結される縦部材とで構成されていることを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項4】
請求項3記載の家屋の壁構築方法において、前記パネル体の長さ方向の端部にして前記縦部材の表裏面の少なくとも一方には、前記横材を配設する配設部が設けられていることを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項5】
請求項4記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部は、前記縦部材の表面及び裏面に設けられていることを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項6】
請求項4,5いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部は、前記縦部材を切欠して形成された切欠部であることを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項7】
請求項4,5いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部は、前記平板を前記縦部材の端面から突出して形成した場合における該平板の端部両側であることを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項8】
請求項4〜7いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記配設部は、前記パネル体の長さ方向の両端部に設けられていることを特徴とする家屋の壁構築方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の家屋の壁構築方法において、前記横材は根太であることを特徴とする家屋の壁構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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