説明

容器入りゼリー飲料及びその製造方法

【課題】本物の果実を食した時のような新しい食感を有する容器入りゼリー飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】容器入りゼリー飲料(1)は、第1ゼリー体(2)が第2ゼリー体(4)に分散された状態で容器(6)に充填されており、飲用前に当該容器(6)を振とうすることにより、第2ゼリー体(4)を流動化することで飲用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入りゼリー飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の食品に対する嗜好が多様化するにつれ、従来から存在する飲料にない新規なタイプの飲料を求める傾向が特に若年層の間で強まっており、缶、ペットボトル等の密閉容器入り飲料においてもこの傾向にあわせて新規なタイプの飲料の開発が進められている。
この種の飲料には、本物の果実の果肉や繊維を飲料液に混入させた果汁飲料に代わり、果肉に似せた粒状ゼリーを擬似果肉として飲料液に混入させたゼリー含有飲料がある。
【0003】
具体的には、エステル化度10%以下のLMペクチンを主成分とするゲル化剤を添加したゼリー液を、飲食品の原料液中に投入することにより、ゼリー液をゲル化させて、飲食品原料液中にゼリー小体、すなわち粒状ゼリーを形成させるゼリー含有飲食品の製造方法およびゼリー含有飲食品が知られている(特に特許文献1参照)。
また、このような粒状ゼリーを工業的に安定して製造し得る粒状ゼリーの製造装置及び粒状ゼリー含有飲料の製造方法が開示されている(特に特許文献2参照)。
【0004】
更に、ゲル化剤溶液を緩やかに攪拌しながら酸性溶液を滴下分散すると、直ちに微小繊維状セルロースの外周にゲルが形成されて微小繊維状セルロースが被覆され、果実様ゲル化物が調製され、一方、寒天及びゼラチンを粉体混合し、これに水を加えて加熱溶解し、上記調製した果実様ゲル化物を加え、この溶液を冷却して全体をゲル化して果肉様組織、すなわち粒状ゼリーを有するゼリー食品およびその製造法が開示されている(特に特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−31387号公報
【特許文献2】特許第3571329号公報
【特許文献3】特許第3512557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2では、飲料液に粒状ゼリーを擬似果肉として含むゼリー含有飲料を提供可能であり、上記特許文献3では、粒状ゼリーを擬似果肉として含むゼリー食品、すなわちデザート菓子を提供可能である。上記ゼリー含有飲料は飲料液を飲用したときに口中や喉越しにて粒状ゼリーを果肉の食感として感じることができ、また、上記デザート菓子はゼリー全体をスプーンなどの食器を介して食したときに口中や喉越しにてゼリー全体及び粒状ゼリーを果肉の食感として感じることができる。
【0007】
しかしながら、これらはあくまでも飲料液やデザート菓子に粒状ゼリーを混入したものであり、本物の果実を直接口でほおばって食した時のような新しい食感を実現するには依然として課題が残されている。
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、従来の粒状ゼリーが含有された飲料液を飲用するタイプのゼリー含有飲料とは異なり、飲用する直前に振とうすることにより流動化されたゼリーを飲用するタイプのゼリー飲料に関し、その目的とするところは、本物の果実を食した時のような新しい食感を有する容器入りゼリー飲料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の容器入りゼリー飲料は、当該容器内において、第1ゼリー体が第2ゼリー体に分散された状態で充填されており、第2ゼリー体は当該容器を振とうすることにより流動化されて飲用が可能となることを特徴としている(請求項1)。この容器入りゼリー飲料によれば、本物の果実を直接口でほおばって食した時のような新しい食感を実現可能である。
【0009】
このようなゼリー飲料の新しい食感は、ゼリー飲料を組成の異なる複数のゼリー体から構成することによって実現される。具体的には、第1ゼリー体は、第1ゲル化剤を酸性下で二価の金属イオンと反応させて形成したもの(請求項2)、好ましくは、第1ゼリー体は、LMペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、ジェランガムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の第1ゲル化剤の溶液と、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の二価の金属イオンを含むゲル化促進剤の溶液とを反応して形成したもの(請求項3)である。
【0010】
また、第2ゼリー体は、カラギーナンおよびグルコマンナンからなる第1成分に、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の第2成分を配合した第2ゲル化剤から形成したものであり(請求項4)、好ましくは、第2ゲル化剤は、第1成分としてカラギーナン10〜80重量%とグルコマンナン10〜50重量%を含み、第2成分を10〜50重量%含むものである(請求項5)。また、第2ゼリー体は、さらにゲル化温度調製剤としてカリウム塩を含み、第2ゲル化剤のゲル化温度を35〜45℃の範囲としたものである(請求項6)。
【0011】
更に、本発明の容器入りゼリー飲料の製造方法は、第1ゲル化剤を酸性下で二価の金属イオンと反応させて第1ゼリー体を調製する第1調製工程と、第1調製工程にて調製された第1ゼリー体に第2ゲル化剤を添加し、第1ゼリー体および第2ゲル化剤が分散した溶液を調製する第2調製工程と、第2調製工程にて調製された溶液を加熱して第2ゲル化剤を溶解するとともに、溶液を殺菌する加熱殺菌工程と、加熱殺菌工程にて殺菌された溶液を容器に充填する充填工程と、充填後の容器を冷却して第2ゼリー体を形成する冷却工程とを含む(請求項7)。このゼリー飲料の製造方法によれば、第1ゼリー体を予め調製し、調製済みの第1ゼリー体を第2ゼリー体の原料に分散させた状態で第2ゼリー体を形成することができるため、上述したゼリー飲料の新しい食感を容易にして実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜6に記載の容器入りゼリー飲料および請求項7に記載の容器入りゼリー飲料の製造方法によれば、ゼリー飲料を組成の異なる第1及び第2ゼリー体から構成することにより、第2ゼリー体によって果実をほおばった時のような弾力があって滑らか且つみずみずしい食感を飲料全体に与えることができ、更に、第1ゼリー体によって果実の果肉片、繊維などの食感を飲料全体に与えることができるため、これらの食感の組み合わせによって本物の果実を食した時のような新しい食感を有するゼリー飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のゼリー飲料がペットボトルに充填された状態を示す図である。
【図2】図1のペットボトルを数回振った後のゼリー飲料の状態を示す図である。
【図3】図1のゼリー飲料の製造工程の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の容器入りゼリー飲料の形態について図面に基づき説明する。
図1に示されるように、ゼリー飲料1は、多数の粒状ゼリー(第1ゼリー体)2と、各粒状ゼリー2が分散して配されたソフトゼリー(第2ゼリー体)4とから構成され、粒状ゼリー2及びソフトゼリー4は例えばPET製の樹脂ボトル(容器、以下ペットボトルという)6に充填されている。なお、粒状ゼリー2及びソフトゼリー4はこれらの流動性や食感から便宜上このように称するものであり、実際の形状や特性を厳密に表すものではない。
【0015】
ペットボトル6は透明であって、開口がキャップ8で閉栓され、商品名等が印刷されるラベル10が装着されており、ペットボトル6のラベル10の無い箇所からはゼリー飲料1の色を視認できるようになっている。なお、実際は粒状ゼリー2とソフトゼリー4とは視覚上の区別がし難いものの、図1と後で説明する図2との一部断面箇所においては、説明上、粒状ゼリー2とソフトゼリー4とが区別できるように図示してある。
【0016】
ゼリー飲料1は、飲料液の中に一部ゼリーが混入されたいわゆるゼリー含有飲料ではなく、大部分が組成の異なる2種類のゼリー2,4から構成された、いわばゼリー・イン・ゼリー構造のゼリー飲料である。ゼリー飲料1の飲用時には、ペットボトル6を軽く数回振って動かし、ソフトゼリー4を振とうにより破砕して流動化させた後にペットボトル6のキャップ8を開栓し、ペットボトル6をその開口が下側になるようにして傾斜することによって、通常はペットボトル6の開口に口をつけた状態でペットボトル6からゼリー2,4を直接に口中に流下させて飲用する。
【0017】
粒状ゼリー2は第1ゲル12であって、ゼリー飲料1において果実の果肉片、繊維を想定した擬似果肉としての食感を演出している。第1ゲル12は、少なくともソフトゼリー4よりも大きなゲル強度(かたさ)を有し、このゲル強度はペットボトル6を振っても容易に破砕されず、ゼリー飲料1を飲用して口中に含んだときも本物の果実の繊維と同様に破砕されない程度に大きい強度を有するのが好ましい。
【0018】
上述したような第1ゲル12のゲル強度を実現するために、第1ゲル12は、第1ゲル化剤を酸性下で二価の金属イオンと反応させることで形成される。第1ゲル化剤は、コロイド粒子が分散された液体(ゾル)をゲル化して固化する増粘安定剤であり、上記コロイド粒子を共有結合などによって比較的安定して結合させ、第1ゲル12を例えば化学ゲルとして形成する。
【0019】
第1ゲル化剤には、特に限定されないが、例えば、LMペクチン(low methoxyl pectin)、アルギン酸、アルギン酸塩、ジェランガム等のうちの1種類以上が使用される。二価の金属イオンには、特に限定されないが、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のうちの1種類以上が使用され、カルシウムイオンを使用する場合には、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム等がカルシウム塩の形態で用いられ、また、マグネシウムイオンを使用する場合には、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等がマグネシウム塩の形態で用いられる。
【0020】
第1ゲル12を粒状ゼリー2に成形するために、例えばカルシウムイオンに、酸味料、香料、色素などの添加剤を添加してゲル化促進剤の溶液を調合し、一方、例えばLMペクチンに所定の香料などの添加や加水を行った上で、これを加熱、攪拌、溶解してゼリー溶液を調合する。
そして、図示しない攪拌機で攪拌されるゲル化促進剤の溶液中に、ゲル化促進剤溶液に浸漬される位置に設けられた図示しない噴射ノズルからゼリー溶液を噴射させて添加することにより、ゲル化反応によって第1ゲル12が形成され、同時に第1ゲル12が攪拌によって乱流状態となったゲル化促進剤溶液の剪断力で千切られるようにして一見して粒状に形成され、効率的に大量の粒状ゼリー2を製造することができる。
【0021】
好ましくは、この第1ゲルを含む溶液をさらにストレーナーに加圧通過することによって、より均一な粒度の粒状ゼリー2を製造することが可能となる。粒状ゼリー2はその断面形状が複雑になり、このことは粒状ゼリー2の意外性のある異食感の演出に貢献している。この粒状ゼリーの調製は、例えば、前述の特許文献2に開示された方法及び装置を用いることができる。
【0022】
一方、ソフトゼリー4は、第1ゲル12とは組成の異なる第2ゲル14であって、ペットボトル6を振る前には、図1に示されるように、あたかもゲル強度の比較的大きなゼリー食品の如く流動性を有しないように見受けられる。しかし、図2に示されるように、ペットボトル6を軽く数回、具体的には5回程度振ると第2ゲル14は適度に破砕されて多数の第2ゲル塊14aを形成し、ペットボトル6内で円滑に流動可能となる。
【0023】
第2ゲル塊14aは、ゼリー飲料1の飲用時にペットボトル6をその開口が下側になるようにして傾斜することによって、ペットボトル6の開口から円滑に流下されて飲用可能となる程度の大きさ及び流動性を有している。具体的には、第2ゲル塊14aの流動性は、第2ゲル塊14aがペットボトル6の開口よりも若干大きくても、この開口から円滑に流下されて飲用可能となるように、例えば、ゼリー飲料1の飲用前にはペットボトル6を軽く5回程度振ること、ゼリー飲料1の飲用時のペットボトル6の一般的な傾斜角度、ペットボトル6の胴部から開口にかけての形状、などの前提に基づいて決定される。このような第2ゲル塊14aの大きさ及び流動性は、ゼリー飲料1において果実をほおばって食した時のような弾力があって滑らか且つみずみずしい食感の演出に大きく貢献している。
【0024】
上述したように、第2ゲル14(ソフトゼリー4)は、容器を軽く数回振って動かすことで破壊され流動化する適度なゲル強度が必要となる。本発明では、このゲル強度について、破断荷重(ゲル体の硬さを表す)ともろさ荷重(ゲル体のねばりを表す)を指標として試験を行った結果、破断荷重が100〜500gfまたはもろさ荷重が15〜30gfの少なくとも一方を満たし、かつ、破断荷重/もろさ荷重=4〜20の要件を満たしたゲル体が好ましいことがわかった。なお、このゲルの破断強度試験については、後述の実施例にて詳細に説明する。
【0025】
このような第2ゲル14のゲル強度、破砕後の流動性を実現するために、第2ゲル14は、増粘安定剤としての第2ゲル化剤によって共有結合よりは結合が弱い分子間力などで結合された例えば物理ゲルなどとして形成される。このような物理ゲルは化学ゲルとは異なり、ゲル化反応が可逆的であり、ゲルに作用する温度や応力の変化によって液体に戻し、ゾル化することが可能である。
【0026】
第2ゲル化剤は、特に限定されないが、例えば、カラギーナン、グルコマンナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムを組み合わせることにより調製することができる。好ましくは、カラギーナンおよびグルコマンナンからなる第1成分に、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムから選ばれる第2成分を配合した第2ゲル化剤を混合したものである。より好ましくは、第2ゲル化剤は、第1成分としてカラギーナン10〜80重量%とグルコマンナン10〜50重量%を含み、第2成分を10〜50重量%を含むものである。
【0027】
第2ゲル14は、塩類を添加することでゲル化温度を調製することができる。好ましい塩類はカリウム塩であり、特に塩化カリウムが好ましい。この塩類を使用する第2ゲル化剤の組成に応じて適量添加することで、第2ゲルのゲル化温度を20〜30℃程度に調製することができる。この温度範囲は、一般的なゼリー状のデザート菓子のゲル化剤のゲル化温度(34℃程度)に比して高いものであり、ソフトゼリー4は平均的な体温とほぼ同じ温度でゲル化する。こうして第2ゲル化剤は最終的に調製され、加水された後に果汁、香料、色素などを更に添加して、攪拌、加熱溶解、冷却することにより最終的に第2ゲル14が調製される。
【0028】
また、第1及び第2ゲル12,14は、ゲル強度、流動性などが異なるものの、いずれも色素等によって果実の果肉を想定した色に色付けされていても良い。第1及び第2ゲル12,14が同系色に色付けされている場合は、ペットボトル6を振る前(図1)と振った後(図2)とのいずれの状態においても、ゼリー飲料1が異なる組成の2つの第1及び第2ゲル12,14、すなわち粒状ゼリー2及びソフトゼリー4から構成されているとは一見して区別できない。
【0029】
すなわち、ゼリー飲料1は外観上あたかも1つの組成から形成されているような一体性を有している。このようなゼリー飲料1の一体性は、ゼリー飲料1の外観を本物の果実に極力似せることが可能であるとともに、実際に飲用して始めてゼリー飲料1がゼリー・イン・ゼリー構造となっていることがわかるため、ゼリー飲料1の意外性のある食感の演出に貢献している。
【0030】
また、第1及び第2ゲル12,14は略同一の比重を有するように調製され、ペットボトル6を振る前(図1)と振った後(図2)とのいずれの状態においても、第1ゲル12、すなわち粒状ゼリー2は、第2ゲル14、すなわちソフトゼリー4中において適度に分散して配され、固まって集まることが抑制されている。このことは、ゼリー飲料1の外観上における更なる一体性の形成に貢献するとともに、ゼリー飲料1を飲用するときに最初から最後まで変わらない食感を提供可能としている。
【0031】
このように調製された粒状ゼリー2(第1ゲル12)及びソフトゼリー4(第2ゲル14)は、飲用者の嗜好に合わせて適宜配合割合を変更して製造することができるが、概ね、ゼリー飲料1全体として、粒状ゼリー2が5〜15重量%、ソフトゼリー4が85〜95重量%の配合割合とすることが好ましい。
次に、図3を参照して本発明のゼリー飲料1の製造方法を説明する。
(1)第1調製工程
所定量の二価金属イオンと香料等を含む水溶液に、例えば有機酸を添加して酸性サイドのゲル化促進剤の溶液を調製し、一方、所定量の第1ゲル化剤を含むゼリー溶液を調製する。そして、攪拌されるゲル化促進剤の溶液中にゼリー溶液を噴射して添加することで多数の粒状ゼリー2を形成する(ステップS1)。
(2)第2調製工程
第1調製工程にて調製された粒状ゼリー2を含む溶液に、ソフトゼリー4の原料として所定量の第2ゲル化剤を添加し、その後に果汁、香料、砂糖、クエン酸、塩類などを添加して攪拌することにより、多数の粒状ゼリー2と第2ゲル化剤が分散した状態の溶液を調製する(ステップS2)。
(3)加熱殺菌工程
第2調製工程にて調製された多数の粒状ゼリー2と第2ゲル化剤が分散した状態の溶液を約95℃以上で約30秒間加熱して殺菌する。このとき、第2ゲル化剤が溶解されてゾルになるものの、粒状ゼリー2は溶解せず第1ゲル12のまま維持されている(ステップS3)。
(4)充填工程
加熱殺菌工程にて殺菌された溶液は、常法によって、例えばペットボトル等の容器に充填される(ステップ4)。そして、ペットボトル6の開口をキャップ8で閉栓する。
(5)冷却工程
充填工程にて溶液が充填されたペットボトル6は、第2ゲル化剤のゲル化温度以下まで冷却される(ステップS5)。冷却手段は水冷または放冷の手段で行われる。この過程においてゾル状の第2ゲル化剤はゲル化し、ソフトゼリー4が形成される。
【0032】
そして、最後に、ペットボトル6にラベル10を装着し、種々の検査を経た後に箱詰めされて入庫され、ゼリー飲料1の製造が終了する。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0034】
[実施例1]
(処方およびゼリー飲料の製造)
乳酸カルシウム0.2g、無水クエン酸0.01g、ピーチ系香料0.01gに水10gを加えゲル化促進剤の溶液を調製した。また、第1ゲル化剤としてLMペクチン0.2gを80℃以上の温水20gで溶解しゼリー溶液を調製した。攪拌機でゲル化促進剤の溶液を攪拌しながら、噴射口を有する噴射ノズルからゼリー溶液をゲル化促進剤の溶液中に加圧噴射させた。噴射されたゼリー溶液はゲル化促進剤の溶液との接触によってゲル化が生じ、紐状のゲルとして溶液中に形成された。この紐状のゲルは溶液の攪拌による剪断力を受けて粒状化し、多数の粒状ゼリーが懸濁した溶液を得た。そして、この溶液に、カラギーナン25%、グルコマンナン25%およびローカストビーンガム50%からなる第2ゲル化剤0.23g、ピーチ系香料0.2g、白桃果汁2.0g、砂糖11g、無水クエン酸0.15gおよび塩化カリウム0.1gを加えて攪拌し、多数の粒状ゼリーおよび第2ゲル化剤が懸濁した溶液を得た。この溶液を飲料全体量が100gになるまで加水した後、95℃で30秒間加熱殺菌した。ペットボトルに充填可能な温度まで放冷した後、ペットボトルに充填しキャップにて閉栓した。そして、溶液が充填されたペットボトルを35℃以下まで冷却水で冷却したところ、飲料全体がゲル化し、ペットボトルを逆さにしても当該ゲルが崩れ落ちないことが確認された。
(ゲルの破断強度試験)
第2ゼリー体のゲル強度(かたさ)を調べるため破断強度試験を行った。測定機器は株式会社山電製のクリープメータ(RE2−3305B)を用いた。測定時の条件は以下のとおりであった。この測定方法は、円盤状の冶具を備えたロードセルにより所定の速度で被験試料(ゲル体)を押圧し、該試料が破砕された時の破断荷重(ゲル体の硬さを表す指標)ともろさ荷重(ゲル体のねばりを表す指標)を測定するものである。
【0035】
・ ロードセル:20N
・ 使用冶具:30mmの円盤ジグ
・ 測定速度:10mm/sec
・ 圧縮距離:試料の表面から64mm
・ 測定温度:20℃
(流動性および破断強度試験結果)
流動性試験は、ペットボトルを5回振り動かしてキャップを開栓し、水平方向から約30°程度傾斜させたときにゼリーが流下するか否かを目視で確認した。その結果、良好な流動性があることを確認した。また、破断強度試験の結果、破断荷重が124gf、もろさ荷重が17gf、破断荷重/もろさ荷重の値は7.2であった。
(官能試験結果)
官能試験は、専門のパネラー10名で行い、本物の果実(例えば白桃)をほおばって食した時により近い食感の順に、◎かなり食感が近い、○やや食感が近い、△やや食感が異なる、×食感が異なる、で評価した。その結果、8名が◎、2名が○と評価し、総評として果実をほおばった時のような弾力があって滑らかなみずみずしい良好な食感が確認された。
【0036】
[実施例2]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン40%、グルコマンナン40%およびローカストビーンガム20%に変更し、その添加量を0.22gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に記載した。
【0037】
[実施例3]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン30%、グルコマンナン40%およびローカストビーンガム30%に変更し、その添加量を0.21gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に、破断強度試験の結果を表3に記載した。
【0038】
[実施例4]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン10%、グルコマンナン45%およびローカストビーンガム45%に変更し、その添加量を0.21gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に、破断強度試験の結果を表3に記載した。
【0039】
[実施例5]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン65%、グルコマンナン25%およびローカストビーンガム10%に変更し、その添加量を0.24gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に、破断強度試験の結果を表3に記載した。
【0040】
[実施例6]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン40%、グルコマンナン40%およびジェランガム20%に変更し、その添加量を0.15gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に、破断強度試験の結果を表3に記載した。
【0041】
[実施例7]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン34%、グルコマンナン33%およびジェランガム33%に変更し、その添加量を0.27gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に、破断強度試験の結果を表3に記載した。
【0042】
[実施例8]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン40%、グルコマンナン40%およびペクチン20%に変更し、その添加量を0.15gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に、破断強度試験の結果を表3に記載した。
【0043】
[比較例1]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン20%およびグルコマンナン80%に変更し、その添加量を0.30gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に記載した。
【0044】
[比較例2]
第2ゲル化剤の配合組成をカラギーナン65%およびローカストビーンガム35%に変更し、その添加量を0.24gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に記載した。
【0045】
[比較例3]
第2ゲル化剤の配合組成をグルコマンナン20%およびローカストビーンガム80%に変更し、その添加量を0.30gとした以外は実施例1と同じ処方および製造方法でゼリー飲料を作成した。流動性試験および官能試験の結果を表2に記載した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
上述したように、ゼリー飲料1を組成の異なる2種類のゼリー2,4から構成することにより、ソフトゼリー4によって果実をほおばった時のような弾力があって滑らか且つみずみずしい食感を飲料全体に与えることができ、更に、粒状ゼリー2によって果実の果肉片、繊維などの異食感を飲料全体に与えることができるため、これらの食感の組み合わせによって本物の果実を食した時のような新しい食感を有するゼリー飲料を提供することができる。
【0050】
本発明は上述の実施例に制約されるものではなく、更に種々の変形が可能である。
具体的には、上述したようなソフトゼリー4のゲル強度や流動性を実現するために、ソフトゼリー4の第2ゲル化剤は、カラギーナン、グルコマンナン、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガム等の組成比率を変えることによって好ましいゼリーに調製することができる。また、粒状ゼリー2は、少なくともソフトゼリー4よりもゲル強度が大きく、且つ加熱殺菌工程において溶解しない程度に溶解温度(ゾル化温度)が高ければ良く、そのようなゲルであれば粒状ゼリー2を化学ゲルに限らず物理ゲルとして形成しても良い。また、粒状ゼリー2はソフトゼリー4と同一の色にする必要はなく、異なる色であっても良い。更に、ソフトゼリー4に粒状ゼリー2の他に粒状ゼリー2とは組成の異なる別の粒状ゼリーを分散して配しても良く、すなわちゼリー飲料1を3種類以上の組成の異なるゼリーから構成しても良い。
【0051】
更にまた、ゼリー飲料1をペットボトル6以外の缶、瓶等の密閉容器に充填して飲用可能としても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 ゼリー飲料
2 粒状ゼリー(第1ゼリー体)
4 ソフトゼリー(第2ゼリー体)
6 ペットボトル(容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ゼリー体が第2ゼリー体に分散された状態で容器に充填されており、飲用前に当該容器を振とうすることにより、前記第2ゼリー体を流動化することで飲用が可能となることを特徴とする容器入りゼリー飲料。
【請求項2】
前記第1ゼリー体は、第1ゲル化剤を酸性下で二価の金属イオンと反応させて形成されることを特徴とする請求項1に記載の容器入りゼリー飲料。
【請求項3】
前記第1ゼリー体は、LMペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、ジェランガムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の前記第1ゲル化剤の溶液と、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の前記二価の金属イオンを含むゲル化促進剤の溶液とを反応して形成されることを特徴とする請求項2に記載の容器入りゼリー飲料。
【請求項4】
前記第2ゼリー体は、カラギーナンおよびグルコマンナンからなる第1成分に、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の第2成分を配合した第2ゲル化剤から形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の容器入りゼリー飲料。
【請求項5】
前記第2ゲル化剤は、前記第1成分としてカラギーナン10〜80重量%とグルコマンナン10〜50重量%を含み、前記第2成分を10〜50重量%含むことを特徴とする請求項4に記載の容器入りゼリー飲料。
【請求項6】
前記第2ゼリー体は、前記第2ゲル化剤のゲル化温度を35〜45℃の範囲とするゲル化温度調製剤としてカリウム塩をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の容器入りゼリー飲料。
【請求項7】
第1ゲル化剤を酸性下で二価の金属イオンと反応させて第1ゼリー体を調製する第1調製工程と、
前記第1調製工程にて調製された前記第1ゼリー体に第2ゲル化剤を添加し、前記第1ゼリー体および前記第2ゲル化剤が分散した溶液を調製する第2調製工程と、
前記第2調製工程にて調製された前記溶液を加熱して前記第2ゲル化剤を溶解するとともに殺菌する加熱殺菌工程と、
前記加熱殺菌工程にて殺菌された前記溶液を容器に充填する充填工程と、
前記充填工程にて前記溶液が充填された前記容器を冷却して第2ゼリー体を形成する冷却工程と、
を含むことを特徴とする容器入りゼリー飲料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−115162(P2011−115162A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249749(P2010−249749)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】