説明

容器詰飲料

【課題】高齢者の口腔乾燥症を的確に改善させる容器詰飲料を提供する。
【解決手段】口腔乾燥症を改善させる口腔乾燥症改善飲料を容器の開口から前記容器内に充填し、繰り返し密栓及び開放できる蓋にて前記開口を閉じる。この容器詰飲料は、高齢者の口腔乾燥症を改善するために好適である。容器は、ペットボトル容器であることが好ましい。容器内の口腔乾燥症改善飲料は、ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩、コラーゲン、ポリグルタミン酸又はその薬学的に許容される塩等を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔乾燥症を改善させる飲料を容器に詰めた容器詰飲料に関し、特に高齢者の口腔乾燥症の改善に好適なペットボトル容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
本邦は世界に類を見ない高齢化社会を迎えており、高齢化率の上昇傾向は2050年頃まで見込まれている。人口動態の変化に伴い口腔領域においても、疾病構造の変化が認められ、高齢者特に要介護高齢者の日常生活の質(QOL:Quality of Life)を大きく低下させる口腔乾燥症(ドライマウス)の増大が深刻な問題と考えられている。
【0003】
口腔乾燥とは、歯牙などの口腔硬組織や歯肉や舌、頬粘膜などの口腔軟組織の潤い・滑らかさが失われ、口が乾いた状態であり、喉が乾くという口渇乾燥とは区別される。口渇乾燥は、健常者でも運動をして発汗した時に発生し、また病的には例えば甲状腺機能亢進による過度の発汗に伴って発生する。口渇乾燥は原因が比較的明確であり、疾患の治療と水分を摂取することで解決される場合が多い。
【0004】
しかし、口腔乾燥は加齢に伴う唾液腺萎縮による唾液の分泌量の減少に加え、義歯を入れている、長期的に何らかの治療薬を服用している、精神緊張が続いている等の要因が複雑に絡んでいる場合が多く、若年者より高齢者に多くみられ、診断及び治療が比較的困難である。
【0005】
口腔乾燥症の症状は多岐にわたり、例えば、(1)口腔内の灼熱感、舌のひりつき、唇の皮がむける等といった口腔・口唇粘膜の炎症、(2)しゃべりにくい、食べ物の嚥下障害、総義歯がはずれやすい等といった機能障害、(3)食べ物の味がわかりにくい等といた味覚障害、(4)頬粘膜や口唇粘膜に皺襞や亀裂の発生、舌乳頭の萎縮や舌背の平滑化等といった粘膜の乾燥、(5)唾液による自浄作用が低下するため、プラークや食物残渣が歯や周辺の粘膜に多く付着し、歯周病やう触が多くなる、口臭が出る等といった口腔内の汚れ、更には(6)口角に治りにくい糜爛や潰瘍をつくる、口腔カンジダ症を起こす等といった余病併発等がある。
【0006】
本邦においては前期高齢者の約50%、後期高齢者の約60%に口腔乾燥の訴えを認めているといわれ、他の先進諸国でも同様の報告がある。唾液量の低下は咀嚼・嚥下機能等の口腔機能低下を引き起こし、心臓血管系や中枢神経系等の他疾患が合併した場合では日常生活活動(ADL:Activities of Daily Living)やQOLに対する影響は更に顕著になるため口腔乾燥症の改善は極めて重要である。
【0007】
口腔乾燥症の改善を目的とした薬剤又は組成物としては種々のものが開発されており、例えば特許文献1には、乳酸菌及びキシリトールを有効成分とする口腔乾燥症用組成物が記載されている。また、特許文献2には、水、多価アルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルピロリドンを含む口腔乾燥症改善剤が記載されている。また、特許文献3には、スピロオキサチオランキヌクリジン誘導体又はその酸付加塩を有効成分とする口腔乾燥症治療剤が記載されている。また、特許文献4には、オリーブ油、トリメチルグリシン、及びキシリトールを含んでなる口腔乾燥症治療用組成物が記載されている。
【0008】
特許文献1記載の口腔乾燥症用組成物は、チューインガム、キャンデー、チョコレート等の食品又は口腔用組成物の形態にて使用される。また、特許文献2記載の口腔乾燥症改善剤は、洗口剤や含嗽剤として使用される。また、特許文献3記載の口腔乾燥症治療剤は、カプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、トローチのような固形組成物、又はシロップ、懸濁液のような液状組成物にて経口的投与にて使用される。また、特許文献4記載の口腔乾燥症治療用組成物は、練り歯磨き、口内洗浄剤、代用唾液、スプレー、ゲル、チューインガム、錠剤、菓子、含浸口腔ガーゼとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−115464号公報
【特許文献2】特開2009−242349号公報
【特許文献3】特開平8−12575号公報
【特許文献4】特表2010−519279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これら上述の従来技術では、高齢者の口腔乾燥症を改善させることは極めて困難である。なぜならば、スプレー形態の使用においては、高齢者の場合、口腔内に向けて的確にスプレー動作を行うことが困難であり、場合によっては噴霧剤の咽頭部刺激が強く咳反射及び嘔吐反射の発生を促すことがある。また、練り歯磨き、口内洗浄剤、洗口剤、含嗽剤形態の使用においては、高齢者の場合は口腔内筋肉組織の機能が低下していることがあり、使用後にこれら含嗽剤等を口から吐き出すことが困難である。また、カプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、トローチのような固形組成物、又はシロップ、懸濁液のような液状組成物では、高齢者の場合、通常日常的に多量の常備薬を使用しているため、薬物使用について既に嫌悪感を抱いている場合が多く、そのためこのような使用形態では高齢者の口腔乾燥症の改善を促進させることは困難である。また、チューインガム、キャンデー等の食品形態の使用においては、高齢者の場合は口腔内において噛む機能や舐め転がす機能が低下していることがあり、チューインガム等から滲み出る有効成分を口腔内に行き渡らせることが困難である。以上のように、高齢者の口腔乾燥症を的確に改善させる手法は乏しく、高齢化社会を迎えた昨今、その手段が切望される。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであって、高齢者の口腔乾燥症を的確に改善させる容器詰飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る容器詰飲料は、開口が該開口の密閉及び開放を繰り返して行うことのできる蓋により閉じられる容器内に、口腔乾燥症を改善させる口腔乾燥症改善飲料が前記開口から充填されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の容器詰飲料は、高齢者の口腔乾燥症を改善するために好適でコンプライアンスの向上(患者が処方どおりに服薬できること)が期待される。ここで、高齢者とは、特に限定されるものではないが、例えば60歳以上の者であり、加齢により日常的に口腔乾燥症を有している者をいう。また、ここで口腔乾燥症(ドライマウスとも言われる。)とは、口腔粘膜疾患に分類される歯科疾患であり、唾液の分泌量が低下して口腔内が乾く歯科疾患であって、加えて自覚症状として口腔乾燥を訴える広義の口腔乾燥(ドライマウス)をも含む。
【0014】
また、前記容器は、ペットボトル容器であることが好ましい。
【0015】
前記口腔乾燥症改善飲料は、ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩、コラーゲン、ポリグルタミン酸又はその薬学的に許容される塩、ポリ−γ−グルタミン酸又はその薬学的に許容される塩、プロピレングリコール、加水分解水添デンプン、及び乳タンパクエキスのうち少なくとも何れか一つを含む保湿成分を含有することが好ましい。
【0016】
また、前記口腔乾燥症改善飲料は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸及びコハク酸のうち少なくとも何れか一つを含む有機酸又はその薬学的に許容される塩を有する唾液分泌促進成分を含有することが好ましい。
【0017】
また、前記口腔乾燥症改善飲料は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びリン酸二カリウムのうち少なくとも何れか一つを含む唾液成分を含有することが好ましい。
【0018】
また、前記口腔乾燥症改善飲料は、リゾチーム、塩化リゾチーム、ラクトフェリン、ヒスタチン、ペルオキシダーゼ、シアロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、アグルチニン、ディフェンシン、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チオシアン酸カリウム、ベータDグルコース、及び、免疫グロブリンのうちうち少なくとも何れか一つを含む清掃補助成分を含有することが好ましい。
【0019】
また、前記口腔乾燥症改善飲料は、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、還元乳糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びグリセリンのうち少なくとも何れか一つを含む多価アルコールを含有することが好ましい。
【0020】
また、前記口腔乾燥症改善飲料は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、カラギーナン、及びアルギン酸ナトリウムのうち少なくとも何れか一つを含む水溶性高分子物質を含有することが好ましい。
【0021】
また、前記口腔乾燥症改善飲料は、グルコサミン、コンドロイチン、ルテイン、葉酸、脂肪酸、果実抽出物、野菜抽出物、ビタミン剤、ミネラル剤、ホスファチジルセリン、リポ酸、メラトニン、アロエベラ(Aloe Vera)、グーグル(Guggul)、アミノ酸、リコピン、ハーブ、カテキン類、カフェイン、果実のフラボノイド構成物質、月見草油、及び亜麻仁油のうち少なくとも何れか1つを含む栄養補助成分を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高齢者の口腔乾燥症を的確に改善させることができる。これにより高齢者の咀嚼機能、嚥下機能、構音機能を向上させ、ADL及びQOL並びに社会生活に欠かせないコミュニケーション能力を維持させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0024】
本発明者らは、いかにしたら高齢者が違和感無く且つ的確に口腔乾燥症改善成分を摂取することができかにつき、高齢者の性癖を鋭意研究したその結果、口腔乾燥症を改善させる口腔乾燥症改善飲料が容器の開口(瓶口)から容器内に充填され、繰り返し密栓及び開放できる蓋にて開口が閉じられた容器詰飲料が最適であることを見いだして本発明を完成させた。
【0025】
即ち、高齢者の性癖として新しいものを好まず、日常的に見慣れた身近な使用感を有するものを受け入れやすいという習性がある。そして高齢者の場合、例えばペットボトル容器等のような、繰り返し密栓及び開放できる蓋を有して何処へでも持ち運びができる容器に、茶等を充填して日常的に携帯している。この日常的に携帯されている容器詰飲料に口腔乾燥症改善成分を含有させるから、高齢者の性癖に逆らわず違和感なく口腔乾燥症改善成分を接種させることが可能となる。また、高齢者の場合、通常日常的に多量の常備薬を使用しているため薬物使用について既に嫌悪感を抱いている場合が多いが、この日常的に形態されている容器詰飲料に口腔乾燥症改善成分を含有させたものであれば、薬物のイメージを抱く可能性は極めて低いので、拒絶反応を有することなく口腔乾燥症改善成分を接種させることが可能となる。また、スプレー動作のような接種技能を要求させるものではなく、洗口剤や含嗽剤のように使用後に吐き出すことを要求させるものではなく、更には噛む・舐め転がす等の口腔運動機能を要求させるものではなく、簡易な動作である飲料形態としているからこそ、口腔乾燥症改善成分を的確に接種させることが可能となる。また、1回使い捨てのユニットボトルのようなものではなく、繰り返し密栓及び開放できる蓋にて開口を閉じた容器詰飲料に口腔乾燥症改善飲料を充填したからこそ、高齢者は何処へでも携帯して持ち運びができ、口腔乾燥感を感じるたびにそのつど蓋を開けて開口を口に当て、必要な量だけ使用することができる。更には高齢者の場合、体温調節機能が低下する等の理由により熱中症にかかりやすい傾向があるところ、本発明によれば副次的効果として熱中症の予防に効果的である。また高齢者の脱水症の予防にも効果的である。
【0026】
口腔乾燥症改善飲料が充填される容器は、高齢者の携帯に適するものであれば特に限定されるものではなく、アルミニウム等の軽金属製容器、紙パック容器等の種々の容器が使用されるが、軽量且つ安価で耐久性を有するため例えばプラスチック容器が好ましい。プラスチック容器は、特に限定されるものではなく種々のものが使用されるが、中でも上述したように高齢者が日常的に携帯していることが多いため、ペットボトル容器が好ましい。ペットボトル容器とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂から成形された容器である。容器の蓋は、繰り返し密栓及び開放でき内部の口腔乾燥症改善飲料の品質保持ができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば螺子蓋を使用することができる。
【0027】
容器に充填される口腔乾燥症改善飲料は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩、コラーゲン、ポリグルタミン酸又はその薬学的に許容される塩、ポリ−γ−グルタミン酸又はその薬学的に許容される塩、プロピレングリコール、加水分解水添デンプン、及び乳タンパクエキスのうち少なくとも何れか一つを含む保湿成分を含有することが可能である。特にヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩及びコラーゲンの少なくとも何れかを用いる場合にあっては、口腔乾燥症の改善のみならず、肌の保湿性や弾力性の維持効果が得られ、肌荒れや小じわ等を予防・改善することができるので美容面においても好適である。
【0028】
ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩の由来は特に限定されず、鶏冠、臍帯、ヒアルロン酸を産生する微生物等から分離、精製されたヒアルロン酸を用いることができる。ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、又はジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との塩のうち、薬学的に許容される塩を用いることができる。ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩の重量平均分子量は、特に限定されないが、20万〜200万程度が好ましく、40万〜140万程度がより好ましく、50万〜120万程度が特に好ましい。また、ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩は、好ましくは10〜26dl/g、より好ましくは12〜22dl/g、特に好ましくは10〜14dl/gの極限粘度を有する。ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩の濃度は、高齢者の飲み易さ等を適宜考慮して設定され特に限定されるものではないが、例えば0.001〜5%(w/v)が好ましく、より好ましくは0.01〜3%(w/v)程度であり、更に好ましくは0.05〜1%(w/v)程度であり、特に好ましくは0.1〜0.4%(w/v)程度である。
【0029】
コラーゲンの由来は特に限定されず、例えばウシや豚等の動物の骨、腱等から抽出されたゼラチンを酵素や酸で加水分解して得られる平均分子量が300〜30,000程度のもの、好ましくは700〜20,000程度のもの、特に好ましくは1000〜10,000程度のものである。又は魚皮、魚骨、魚鱗、牛皮、牛骨、豚皮、豚骨、豚肝臓等から抽出されたコラーゲンを上記と同様の加水分解により低分子化して得られる平均分子量が500〜20,000程度のもの、好ましくは1,000〜10,000程度のもの、特に好ましくは2,000〜8,000程度のペプチドである。なお、コラーゲンが含有されている場合にあっては、コラーゲンペプチドの魚臭や獣臭をマスキングしていことが望ましく、例えばピーチ、オレンジ、マスカット等のフルーツの風味を利用してマスキングをすることが可能である。コラーゲンの濃度は、高齢者の飲み易さ等を適宜考慮して設定され特に限定されるものではないが、例えば0.001〜4%(w/v)が好ましく、より好ましくは0.01〜3%(w/v)程度であり、更に好ましくは0.05〜2%(w/v)程度であり、特に好ましくは0.2〜1.2%(w/v)程度である。
【0030】
ポリグルタミン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば化学的に合成されるα又はγ−ポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩、あるいは各種菌株からの発酵生産物として得られる天然のα又はγ−ポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩が使用できるが、口腔用として使用することから天然のポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩が好ましく、特に原料としての生産性が高いγ−ポリグルタミン酸のナトリウム又はカリウム塩がより好適である。ポリグルタミン酸塩の濃度は、高齢者の飲み易さ等を適宜考慮して設定され特に限定されるものではないが、例えば0.01〜5%(w/v)であり、好ましくは0.1〜3%(w/v)であり、特に好ましくは0.2〜1%(w/v)である。ポリグルタミン酸塩の粘度は特に限定されず、例えば10〜220mPa・s、特に30〜120mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0031】
また、口腔乾燥症改善飲料は、特に限定されるものではないが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸及びコハク酸のうち少なくとも何れか一つを含む有機酸又はその薬学的に許容される塩を有する唾液分泌促進成分を含有することが可能である。これらの塩としては特に限定されるものではないが、例えばNa、K、Ca、Mg、アミン等の塩やFe、Al等が結合したキレート物質も含む。これら唾液分泌促進成分の濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.01〜6%(w/v)、好ましくは0.1〜4%(w/v)、特に好ましくは0.2〜1%(w/v)である。
【0032】
また、口腔乾燥症改善飲料は、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びリン酸二カリウムのうち少なくとも何れか一つを含む唾液成分を含有することが可能である。このような無機電解質成分組成を含有することにより、ヒトの正常な唾液と類似の成分とすることができる。塩化ナトリウムの濃度は特に限定さるものではないが、例えば0.01〜0.5%(w/v)であり、好ましくは0.02〜0.2%(w/v)であり、より好ましくは0.03〜0.1%(w/v)である。塩化カリウムの濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.01〜0.3%(w/v)であり、好ましくは0.02〜0.2%(w/v)であり、より好ましくは0.1〜0.15%(w/v)である。塩化カルシウムの濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.001〜0.05%(w/v)であり、好ましくは0.005〜0.03%(w/v)であり、より好ましくは0.01〜0.02%(w/v)である。塩化マグネシウムの濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.001〜0.01%(w/v)であり、好ましくは0.002〜0.008%(w/v)であり、より好ましくは0.004〜0.006%(w/v)である。リン酸二カリウムの濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.001〜0.08%(w/v)であり、好ましくは0.006〜0.06%(w/v)であり、より好ましくは0.01〜0.04%(w/v)である。
【0033】
また、口腔乾燥症改善飲料は、特に限定されるものではないが、例えば、リゾチーム、塩化リゾチーム、ラクトフェリン、ヒスタチン、ペルオキシダーゼ、シアロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、アグルチニン、ディフェンシン、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チオシアン酸カリウム、ベータDグルコース、及び、免疫グロブリンのうちうち少なくとも何れか一つを含む清掃補助成分を含有することが可能である。例えばリゾチームは、細菌の細胞壁に作用して分解させる働きがあり、細胞壁が分解されると細胞は自然と溶解し始め、結果として細菌の繁殖を抑制する。また例えば塩化リゾチームは、ペプチドグリカンのグリコシド結合を加水分解することにより細菌の細胞壁を消化し、バクテリアを溶解させる。また例えばラクトフェリンは、口腔内の第二鉄イオンと結合する働きがあり、第二鉄イオンは細菌が成長するために必要な成分であるため、第二鉄イオンが補充を抑制して細菌の繁殖を抑制できる。
【0034】
また、口腔乾燥症改善飲料は、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、還元乳糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びグリセリンのうち少なくとも何れか一つを含む多価アルコールを含有することが可能である。これらの多価アルコールの濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.01〜10%(w/v)であり、好ましくは0.04〜6%(w/v)であり、より好ましくは0.2〜2%(w/v)である。
【0035】
また、口腔乾燥症改善飲料は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、カラギーナン、及びアルギン酸ナトリウムのうち少なくとも何れか一つを含む水溶性高分子物質を含有することが可能である。これらの水溶性高分子物質の濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.001〜4%(w/v)であり、好ましくは0.004〜2%(w/v)であり、より好ましくは0.01〜1%(w/v)である。
【0036】
また、口腔乾燥症改善飲料は、グルコサミン、コンドロイチン、ルテイン、葉酸、脂肪酸、果実抽出物、野菜抽出物、ビタミン剤、ミネラル剤、ホスファチジルセリン、リポ酸、メラトニン、アロエベラ(Aloe Vera)、グーグル(Guggul)、アミノ酸又はその塩、リコピン、ハーブ、カテキン類、カフェイン、果実のフラボノイド構成物質、月見草油、及び亜麻仁油のうち少なくとも何れか1つを含む栄養補助成分を含有することが可能である。
【0037】
ビタミン剤としては、特に限定されるものではないが、例えばビタミンA、ビタミンB、ビタミンE、及びビタミンD等を含有させることが可能である。ビタミンBとしてはイノシトール、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシ塩酸塩、シアノコバラミンから選ばれるビタミンB群があげられる。またミネラル剤としては、特に限定されるものではないが、例えばカルシウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等を含有させることが可能であり、好ましいミネラルとしてはマグネシウム、リン及び鉄である。
【0038】
また、ハーブとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アニス、スターアニス、ローレル、ラベンダー、セージ、コリアンダー、フェンネル、ヒソップ、オレガノ、ペパーミント、ローズマリー、スペアーミント、キャラウェー、オレンジピール、レモンピール、ヤチヤナギ、ジャスミン、バジル、及びゆず皮のような香り付与のハーブを用いることが可能である。また、例えば、アグリモニー、アーベンス、ベトニー、ゴボウ、クローブ、ジュニパー、コストマリー、ドッグローズ、エレキャンペーン、アイブライト、ゲンチアン、グランドアイビー、マグワート、ルー、セント・ジョーンズ・ワート、ワームウッド、ヤロー、アルカネット、ペニーロイヤル、ハイビスカス、ステビア、レモングラス、レモンバーム、カモミール、しょうが、タイム、ペッパー、マロウ・ブルー、及びリンデンのような味付与のハーブを用いることが可能である。
【0039】
また、アミノ酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルギニン、オルニチン、システイン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、及びヒスチジンを含有させることが可能であり、特に、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの9種類のアミノ酸が人体では合成できず、人体にとって必要不可欠なアミノ酸として知られているためこれらを含有することが好ましい。アミノ酸の塩としては無機酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸)、有機酸(例えば、プロピオン酸、酢酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、アスコルビン酸)との酸付加塩;アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)、アンモニウム等の無機塩基との塩;アミン(例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン)、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)等の有機塩基との塩等が挙げられる。アミノ酸又はその塩の濃度は、好適な風味及び生理的効果が得られるならば特に限定されるものではないが、例えば0.01〜5.6%(w/v)、好ましくは0.04〜3.8%(w/v)、より好ましくは0.2〜2.2%(w/v)である。
【0040】
また、カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類、及び、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類のいずれも含有される。カテキン類を含有させることにより、コレステロール上昇抑制作用やアミラーゼ活性阻害作用等を好適に得ることが可能となる。更には肝機能(GOT、GPT他)を改善することも可能となる。カテキン類の含有濃度は、好適な風味及び生理的効果が得られるならば特に限定されるものではないが、例えば0.02〜0.6%(w/v)、好ましくは0.04〜0.4%(w/v)、より好ましくは0.08〜0.2%(w/v)である。
【0041】
また、カフェインとは、カフェイン又はカフェインとカフェイン誘導体との混合物である。カフェインは、例えばコーヒー豆、ガラナ、ココア等の抽出物や抽出物の濃縮物から得られる。また例えばCamellia属、例えばC. sinensis、C. assaimica、又はそれらの雑種から得られる茶葉から抽出して得られる。
【0042】
上述した保湿成分、唾液分泌促進成分、唾液成分、清掃補助成分、多価アルコール、水溶性高分子物質、及び栄養補助成分を溶解させる媒体は特に限定されるものではないが、例えば水、緩衝液、生理食塩水等を用いることができる。
【0043】
口腔乾燥症改善飲料には、口腔乾燥症改善の性質を維持する限りにおいて、更に他の物質を適宜添加することも可能であり、例えば添加剤や、薬理活性成分等を挙げることができる。
【0044】
添加剤としては、着色剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤、乳化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、分散剤、基剤、増粘剤、甘味料、矯味剤、香料、清涼化剤等、通常医薬に用いられるものが例示される。
【0045】
例えば、緩衝剤としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等が例示される。pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が例示される。等張化剤としては、ブドウ糖、D−マンニトール、果糖、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム等が例示される。安定化剤としては、酢酸、グリシン、乳酸又はこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等)、ヨウ素含有の還元剤(ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等の金属ヨウ化化合物類等)、硫黄含有の還元剤(チオ硫酸カリウム、及びチオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸金属塩類、チオシアン酸カリウム、及びチオシアン酸ナトリウム等のチオシアン酸金属塩類、チオ尿素、チオセミカルバジド、チオペンタール等のチオケトン類、L−メチオニン等のスルフィド類等)が例示される。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジン等が例示される。矯味剤としては、アスコルビン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クマザサエキス、オレンジ油、レモン油、ローズ油等が例示される。清涼化剤としては、1-メントール、カンフル、ハッカ油等が例示される。
【0046】
香料としては、ハッカ油、スペアミント油、チモール、ヒノキチオール、ラベンダー油等が例示されるが、特に果汁(フルーツジュース)が嗜好性を高めるために好ましい。好ましい果汁はリンゴ、ナシ、レモン、ライム、マンダリン、グレープフルーツ、クランベリー、オレンジ、ストロベリー、ブドウ、キゥイ、パイナップル、パッションフルーツ、マンゴ、グァバ、ラズベリー及びチェリーを使用できる。更には、ジャスミン、カミツレ、バラ、ペパーミント、サンザシ、キク、ヒシ、サトウキビ、レイシ、タケノコ等の天然フレーバーを含有させることも可能である。果汁の濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.001〜26%(w/v)、好ましくは0.01〜18%(w/v)、より好ましくは0.04〜12%(w/v)とすることが可能である。
【0047】
甘味料としては、特に限定されるものではないが、例えば、果糖、ブドウ糖、ショ糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、オリゴ糖等を含有させることが可能である。ブドウ糖含有量は、例えば0.00001〜22%(w/v)、好ましくは0.0001〜18%(w/v)、より好ましくは0.001〜12%(w/v)である。果糖含有量は、例えば0.00001〜21%(w/v)、好ましくは0.0001〜16%(w/v)、より好ましくは0.001〜12%(w/v)である。果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖の各含有量は、例えば0.001〜8%(w/v)、好ましくは0.01〜6%(w/v)、より好ましくは0.1〜4%(w/v)である。オリゴ糖としては、例えば、ショ糖、マルトデキストリン、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、アガペエキス、メイプルシロップ、シュガーケーン、蜂蜜等が挙げられ、中でもショ糖が好ましい。ショ糖の形態としては、グラニュー糖、液糖、上白糖等が挙げられる。また、甘味料としては、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、シクラメート、アセスルフェーム−K、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル、L−アスパルチル−D−アラニンアミド、L−アスパルチル−D−セリンアミド、L−アスパルチル−ヒドロキシメチルアルカンアミド、L−アスパルチル−1−ヒドロキシエチルアルカンアミド、スクラロース等の人工甘味料を含有させることも可能である。
【0048】
また薬理活性成分としては、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸等のグリコサミノグリカン、漢方薬(例えば、オウゴンエキス、麦門冬湯、白虎加人参湯、五苓散、八味地黄丸、半夏厚朴湯、紫苓湯、小柴胡湯、十全大補湯、乾姜、生姜、半夏、知母、茯苓、天門冬、五味子、葛根、人参、紫根等)、公知の抗炎症剤、鎮痛剤、抗菌剤、成長因子、接着因子、抗菌剤等が挙げられる。
【0049】
口腔乾燥症改善飲料の粘度は、高齢者の飲み易さ、口腔内における持続性等を適宜考慮して設定され特に限定されるものではないが、例えば25℃において剪断速度1秒−1で測定した場合の値は、好ましくは1〜9000mPa・s、より好ましくは5〜4000mPa・s、特に好ましくは10〜1400mPa・sである。
【0050】
口腔乾燥症改善飲料は、高齢者の飲みやすさを考慮して非炭酸飲料とすることが望ましいが、炭酸ガスにより適度な気泡性を有する炭酸飲料又は微炭酸飲料とすることも可能である。これにより清涼感を付与させることが可能となる。また、口腔乾燥症改善飲料は、茶系飲料とすることも、非茶系飲料とすることも可能である。茶系飲料としては、緑茶飲料等の不発酵茶飲料、烏龍茶飲料等の半発酵茶飲料、紅茶飲料等の発酵茶飲料とすることが可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る容器詰飲料は、例えば商品として流通過程に置く場合、容器の外周面に「口腔乾燥症を改善させる」趣旨の表示を行うことも可能である。また、本実施形態に係る容器詰め飲料は、口腔乾燥症の症状を改善させるものである限り、健康飲料、医薬部外品、第一類医薬品、第二類医薬品、又は第三類医薬品のいずれも可能である。
【0052】
上述の実施形態において、本実施形態に係る容器詰飲料は、高齢者の口腔乾燥症の改善を主眼とするものであったが、このような実施形態に限定されるものではなく、本実施形態に係る容器詰飲料は、広く口腔乾燥症疾患を患う者に対して適用することが可能である。また、本実施形態に係る容器詰飲料は、一時的又は持続的口腔乾燥症の何れであっても使用することができる。一時的な口腔乾燥症は、例えば急激な脱水状態、高熱、出血、ストレス等で起こるものである。持続的な口腔乾燥症は、例えば唾液腺の老人性萎縮、顔面や頚頭部への放射線照射、シェーグレン症候群、ミクリッツ病、慢性唾液腺炎等の唾液腺疾患、尿崩症、糖尿病、慢性腎不全、甲状腺機能異常、ビタミンB群欠乏症、貧血、薬剤(例えば降圧剤、利尿剤、向精神薬、神経弛緩剤、制癌剤等)投与等により起こるものであり、本実施形態に係る容器詰飲料はこれらの症状を好適に抑制させることができる。
【実施例】
【0053】
口腔乾燥症改善飲料の保湿成分としてヒアルロン酸ナトリウムを用い、口腔乾燥症改善飲料の(1)使用感(使用時)、(2)持続感(使用後)、(3)口腔乾燥感以外の影響につき各々官能試験を行った。
【0054】
1%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム水溶液: (Purified sodium hyaluronate, (C14H20NaO11)n、平均分子量50-120万)を蒸留水にて希釈し、0.5%(w/v)、0.25%(w/v)、0.1%(w/v)、0.05%(w/v)、0.01%(w/v)、0.005%(w/v)の同水溶液を用いた。なお混入後、十分な攪拌を行った。官能試験は、口腔乾燥症の疾患について理解の十分な歯科医師3名にての0-10段階評価による盲目下無作為試験を行った。
【0055】
まず、(1)使用感(使用時)については、a;口腔粘膜の触覚(うるおい感(滑らかさ))、
b;嗅覚所見の有無(*基本的にノンフレーバーで無臭、不快症状の検出目的に設定)、c;異味感(*基本的に無添加無味(ナトリウム塩による塩味はのぞく)、不快症状の検出目的)、d;痛覚感(*基本的に無刺激、不快症状の検出目的)、及び、e;使用直後の総合的評価(「不快」から「快」の10段階)について試験を行った。
【0056】
次に、(2)持続感(使用後)については、a;使用後の口腔粘膜の触覚(うるおい感(滑らかさ))、b;使用後の嗅覚の変化の有無(0-10段階評価)、c;使用後の味覚の変化の有無(0-10段階評価)、d;使用後の痛覚の変化の有無(0-10段階評価)、e;使用後(1分後)の総合的評価(「持続感有」から「持続感無」の10段階)、f;使用後(10分後)の総合的評価(「持続感有」から「持続感無」の10段階)、及び、g;使用後(60分後)の総合的評価(「持続感有」から「持続感無」の10段階)について試験を行った。
【0057】
次に、(3)口腔乾燥感以外の影響については、a;咽頭違和感の有無(0-10段階評価)及びb;鼻粘膜違和感の有無(0-10段階評価)について試験を行った。
【0058】
口腔乾燥症の疾患について理解の十分な歯科医師3名にての盲目下無作為試験の結果は、下記に示す表1〜4に示す如くの結果であった。表1はA検査者の評価であり、表2はB検査者の評価であり、表3はC検査者の評価であり、表4は各検査者3名の平均値である。
【0059】
0.5%(w/v)ヒアルロン酸ナトリウム水溶液では、(1)使用感(使用時)につき、a;口腔粘膜の触覚(うるおい感、滑らかさ)にて、3名の検査者全員により10の評価結果が得られた。また、0.25%(w/v)では平均で9.0、0.1%(w/v)では平均で4.0、0.05%(w/v)では平均で2.0、0.01%(w/v)では平均で1.3、0.005%(w/v)では平均で0の結果が得られた。
【0060】
また、e;使用直後の総合的評価「不快」から「快」の0-10段階評価では、0.5%(w/v)では3.0、0.25%(w/v)では6.0、0.1%(w/v)では6.7、0.05%(w/v)では7.0、0.01%(w/v)では7.0、0.005%(w/v)では7.0では0の評価であった。
【0061】
一方、不快的な症状としては、b;嗅覚所見の有無にて、0.5%(w/v)で平均1.7を示した。0.025%(w/v)以下ではいずれの検査者でも0であった。c;異味感、d;痛覚感はいずれも0であった。
【0062】
(2)持続感(使用後)について、a;使用後の口腔粘膜の触覚(うるおい感(滑らかさ))にて、平均で、0.5%(w/v)では10.0、0.25%(w/v)では9.3、0.1%(w/v)では5.7、0.05%(w/v)では1.7、0.01%(w/v)では平均で1.0、0.005%(w/v)では平均で0、0.001%(w/v)では平均で1.0の結果が得られた。
【0063】
e;使用後(1分後)の総合的評価では、0.5%(w/v)、0.25%(w/v)、0.1%(w/v)では、いずれも10.0の評価で、0.05%(w/v)では5.0、0.01%(w/v)では3.0、0.005%(w/v)では0の評価であった。
【0064】
f;使用後(10分後)の総合的評価では、0.5%(w/v)では8.7、0.25%(w/v)では7.3、0.1%(w/v)では4.7、0.05%(w/v)では1.7、0.01%(w/v)では1.7、0.005%(w/v)では1.0の評価であった。
【0065】
g;使用後(60分後)の総合的評価では、0.5%(w/v)では5.3、0.25%(w/v)では3.7、0.1%(w/v)では2.0、0.05%(w/v)では0.3、0.01%(w/v)では0、0.005%(w/v)では0の評価であった。
【0066】
(3)口腔乾燥感以外の影響について、a;咽頭違和感の有無は、0.5%(w/v)では2.3、0.25%(w/v)では0.3、0.1%(w/v)、0.05%(w/v)、0.01%(w/v)、0.005%(w/v)では0の評価であった。
【0067】
また、b;鼻粘膜違和感の有無は、0.5%(w/v)では0.7、0.25%(w/v)、0.1%(w/v)、0.05%(w/v)、0.01%(w/v)、0.005%(w/v)では0の評価であった。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
ヒアルロン酸ナトリウム水溶液の保湿性を、口腔粘膜の触覚がうるおい感ないし滑らかさとして自覚しやすい濃度は、0.25%(w/v)前後(例えば0.20〜0.30%(w/v))であり、0.1%(w/v)未満となると、使用者によっては自覚出来ない可能性が考えられた。また、使用後の結果においても、うるおい感、滑らかさは、0.1%(w/v)未満になると自覚しにくいと考えられた。一方、不快的な症状としては、0.5%(w/v)では異味感を僅かに感じる結果を今回得た。加えて、0.5%(w/v)では、咽頭違和感、鼻粘膜違和感も僅かに自覚した。結果からも不快症状は、僅かに自覚する程度で、ヒアルロン酸ナトリウムの極量設定は無く特に摂取量に制限があるわけではないと考えられるが、高齢者の使用感を向上させるためには、濃度についてある程度の閾値を設定する方が良いと考えられ、口腔乾燥症改善飲料の保湿成分としてヒアルロン酸ナトリウムを用いた場合にあっては、0.20〜0.30%(w/v)が好ましく、特に0.25%(w/v)が、不快症状がほとんど認められず、口腔粘膜のうるおい感、滑らかさを自覚できると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は高齢者の口腔乾燥症の治療に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が該開口の密閉及び開放を繰り返して行うことのできる蓋により閉じられる容器内に、口腔乾燥症を改善させる口腔乾燥症改善飲料が前記開口から充填されていることを特徴とする容器詰飲料。
【請求項2】
高齢者の口腔乾燥症を改善するためのものである請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】
前記容器は、ペットボトル容器であることを特徴とする請求項1又は2記載の容器詰飲料。
【請求項4】
前記口腔乾燥症改善飲料は、ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩、コラーゲン、ポリグルタミン酸又はその薬学的に許容される塩、ポリ−γ−グルタミン酸又はその薬学的に許容される塩、プロピレングリコール、加水分解水添デンプン、及び乳タンパクエキスのうち少なくとも何れか一つを含む保湿成分を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の容器詰飲料。
【請求項5】
前記口腔乾燥症改善飲料は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸及びコハク酸のうち少なくとも何れか一つを含む有機酸又はその薬学的に許容される塩を有する唾液分泌促進成分を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の容器詰飲料。
【請求項6】
前記口腔乾燥症改善飲料は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びリン酸二カリウムのうち少なくとも何れか一つを含む唾液成分を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の容器詰飲料。
【請求項7】
前記口腔乾燥症改善飲料は、リゾチーム、塩化リゾチーム、ラクトフェリン、ヒスタチン、ペルオキシダーゼ、シアロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、アグルチニン、ディフェンシン、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チオシアン酸カリウム、ベータDグルコース、及び、免疫グロブリンのうちうち少なくとも何れか一つを含む清掃補助成分を含有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の容器詰飲料。
【請求項8】
前記口腔乾燥症改善飲料は、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、還元乳糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴等の糖アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びグリセリンのうち少なくとも何れか一つを含む多価アルコールを含有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の容器詰飲料。
【請求項9】
前記口腔乾燥症改善飲料は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、カラギーナン、及びアルギン酸ナトリウムのうち少なくとも何れか一つを含む水溶性高分子物質を含有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の容器詰飲料。
【請求項10】
前記口腔乾燥症改善飲料は、グルコサミン、コンドロイチン、ルテイン、葉酸、脂肪酸、果実抽出物、野菜抽出物、ビタミン剤、ミネラル剤、ホスファチジルセリン、リポ酸、メラトニン、アロエベラ(Aloe Vera)、グーグル(Guggul)、アミノ酸、リコピン、ハーブ、カテキン類、カフェイン、果実のフラボノイド構成物質、月見草油、及び亜麻仁油のうち少なくとも何れか1つを含む栄養補助成分を含有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の容器詰飲料。

【公開番号】特開2012−44918(P2012−44918A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189772(P2010−189772)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】