説明

密閉型鉛蓄電池用セパレータ及び密閉型鉛蓄電池

【課題】 本発明は、テーナとセパレータの機能を併せ持つ微細ガラス繊維シートからなる密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、従来両立し得なかった密閉型鉛蓄電池の二つの寿命劣化原因(圧迫力低下と電解液成層化)に対する改善要求事項である圧迫力低下防止効果と電解液成層化防止効果の向上を同時にもたらすことができ、かつ、高率放電特性を向上させるべくセパレータ内部での電解液の移動を促進させることのできるセパレータとそれを用いた密閉型鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、微細ガラス繊維を主体とした湿式抄造シートからなる密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記微細ガラス繊維として平均繊維径0.4〜1.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が3.5μm以下である細繊維層と、前記微細ガラス繊維として平均繊維径1.3〜4.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が4.0μm以上かつ前記細繊維層の1.5倍以上である太繊維層とが、セパレータの厚さ方向に、2層の前記細繊維層で1層の前記太繊維層を両面から覆うように3層の積層構造をなした構造体であり、全層における前記ガラス繊維の平均繊維径が1.2μm以上で、全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90〜50/50であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータを極板とともに積層した極板群を形成してなる密閉型鉛蓄電池(JIS C 8707(陰極吸収式シール形据置鉛蓄電池)またはJIS C 8704−2(制御弁式据置鉛蓄電池)に定義される)においてリテーナとセパレータの機能を併せ持つ微細ガラス繊維シートからなる密閉型鉛蓄電池用セパレータに関する。また、そのセパレータを用いた密閉型鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような密閉型鉛蓄電池用セパレータとしては、リテーナとセパレータの機能を併せ持たせるために、微細ガラス繊維、特に、平均繊維径が1μm程度のガラス繊維を主体として構成した平均孔径が3.7μm程度の、積層あるいは複合構造を有しない単層・単一構成の不織布シート(湿式抄造シート)が主流として使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
密閉型鉛蓄電池は、主に、コンピュータ機器や通信用機器のバックアップ用電源、電動車の動力源、ビルや病院等の非常用電源などに使用され、自動車用途には、主に液式鉛蓄電池が使用されているが、最近の自動車において、アイドリングストップアンドスタートシステムが採用されるようになり、液式鉛蓄電池よりもサイクル寿命特性に優れ取り扱いが安全かつ楽で設置場所が制限されない密閉型鉛蓄電池が搭載されるようになっている。したがって、このような用途の密閉型鉛蓄電池には、長寿命化と、エンジン始動性を向上させるための高率放電特性の向上が求められる。
【0004】
最近の密閉型鉛蓄電池の寿命劣化モードとして、主に、極板群における電解液含浸後の圧迫力の低下(セパレータ厚さの低下が主因。以下「圧迫力低下」という)と、電解液の成層化(充放電の繰り返しにより電池上下で電解液の比重差が生じる現象。以下「電解液成層化」または「成層化」という)という二つの原因が指摘されている。したがって、最近の密閉型鉛蓄電池において電池寿命を一層向上させる理想の電池を得るには、前記した二つの寿命劣化原因(圧迫力低下と電解液成層化)を同時に改善することが必要とされる。また、高率放電特性を向上させるためには、電池内の電解液の移動を促進させることが必要とされる。
【0005】
しかしながら、前記した従来主流の積層あるいは複合構造を有しない単層・単一構成のセパレータにおいては、前記した二つの寿命劣化原因(圧迫力低下と電解液成層化)のうち個々の寿命劣化原因を改善する技術については提案がなされているものの、前記した二つの寿命劣化原因(圧迫力低下と電解液成層化)を同時に改善する技術についてはこれまで提案がなされていない。この理由は、前記した二つの寿命劣化原因(圧迫力低下と電解液成層化)を改善するために行われるセパレータの改善事項は、相反する挙動を示すものとなるため、積層あるいは複合構造を有しない単層・単一構成のセパレータ上でこの相反する挙動を両立させることが困難であったためと考えられる。
【0006】
また、前記した従来主流の積層あるいは複合構造を有しない単層・単一構成のセパレータにおいては、高率放電特性を向上させるための電池内の電解液の移動の考え方として、極板とセパレータの界面での電解液の移動を改善する技術については提案がなされているものの、セパレータ内部での電解液の移動を改善する技術についてはこれまで提案がなされていない。この理由は、積層あるいは複合構造を有しない単層・単一構成のセパレータでは、セパレータ内部は均一の孔構造を有するため、セパレータ内部で電解液の移動を制御することが困難であったためと考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来の問題点に鑑み、リテーナとセパレータの機能を併せ持つ微細ガラス繊維シートからなる密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、従来両立し得なかった密閉型鉛蓄電池の二つの寿命劣化原因(圧迫力低下と電解液成層化)に対する改善要求事項である圧迫力低下防止効果と電解液成層化防止効果の向上を同時にもたらすことができ、かつ、高率放電特性を向上させるべくセパレータ内部での電解液の移動を促進させることのできるセパレータとそれを用いた密閉型鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記目的を達成するため、鋭意検討した結果、以下の知見を得た。電解液成層化は、極板から放出された高比重の硫酸が主にセパレータ内を通って下方に移動することで起きる現象であることから、極板から放出された硫酸を極板と接するセパレータ層で下方に移動させることなくできるだけ保持するように改善できれば、電解液成層化防止効果をもたらすことができることに着目した。特に、この電解液成層化防止効果をもたらす技術的ポイントとして、セパレータ全層の中でも特に極板面と接するセパレータ表面層部分の電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)を如何に高めるかがポイントとなることに着目した。
【0009】
一方、圧迫力低下防止効果をもたらすには、ガラス繊維径を太くし繊維層の孔径を大きくして反発力を高めることが有効であり、そのためには、セパレータ全層でのガラス繊維平均繊維径を高めることが有効である。したがって、圧迫力低下防止効果と電解液成層化防止効果を同時にもたらすセパレータを得る思想としては、従来主流のガラス繊維平均繊維径が約1μmで平均孔径が約3.7μmの単層・単一構成のセパレータを基準に、全層でのガラス繊維平均繊維径を1μmよりも高めに設定することで、圧迫力低下防止効果を確保した上で、電解液成層化防止効果をもたらすために、セパレータの厚さ方向にガラス繊維平均繊維径の高低(平均孔径の高低)を設け、極板面と接するセパレータ表面層部分のみを、ガラス繊維平均繊維径を1μmよりも低め(平均孔径を3.7μmよりも低め)に設定して電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)を局部的に高めることを見出した。
【0010】
また、短時間大電流放電性能である高率放電特性を向上させるには、セパレータに保持された電解液を極板側へ如何に素早く供給するかがポイントであり、従来、極板とセパレータの界面での電解液の移動を促進しようとする考え方(極板とセパレータの密着性を高める方法,セパレータ表面部の電解液保持量を高める方法など)が提案されていたが、本発明者等は、従来考えの及ばなかったセパレータ内部の電解液の移動についても、セパレータの厚さ方向に繊維層の平均孔径の高低を設けることで、これを制御できることを見出した。つまり、セパレータの厚さ方向に平均孔径の異なる繊維層を積層状態に構成するようにし、セパレータの厚さ方向に各層で電解液吸収力を変化させることで、セパレータの厚さ方向での電解液の移動を促進することができ、結果として電解液の供給量を高めることができることを見出した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づきなされた発明であって、本発明の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、前記目的を達成するべく、請求項1に記載の通り、微細ガラス繊維を主体とした湿式抄造シートからなる密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記微細ガラス繊維として平均繊維径0.4〜1.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が3.5μm以下である細繊維層と、前記微細ガラス繊維として平均繊維径1.3〜4.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が4.0μm以上かつ前記細繊維層の1.5倍以上である太繊維層とが、セパレータの厚さ方向に、2層の前記細繊維層で1層の前記太繊維層を両面から覆うように3層の積層構造をなした構造体であり、全層における前記ガラス繊維の平均繊維径が1.2μm以上で、全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90〜50/50であることを特徴とする。
【0012】
ここでは、セパレータ全層におけるガラス繊維平均繊維径を1.2μm以上とすることで、圧迫力低下防止効果の向上を図るようにした。また、極板面と接するセパレータ両面の表面層部分に、ガラス繊維平均繊維径0.9μm以下(平均孔径3.5μm以下)の細繊維層を設け、電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)を局部的に高めることで、電解液成層化防止効果の向上を図るようにした。また、セパレータ全層に対しセパレータの厚さ方向にガラス繊維平均繊維径の高低(平均孔径の高低)を設けることで、全層におけるガラス繊維平均繊維径を1.2μm以上と高めながらも、極板面と接するセパレータ表面層部分の電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)の向上を図るようにした。また、極板面と接しないセパレータ中間層部分を、ガラス繊維平均繊維径1.3μm以上の太繊維層とすることで、極板面と接するセパレータ表面層部分の電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)の向上を図るようにしながらも、全層におけるガラス繊維平均繊維径を1.2μm以上とし圧迫力低下防止効果の向上を図るようにした。また、セパレータ全層に対しセパレータの厚さ方向に平均孔径の高低を設けることで、セパレータ中間層である太繊維層(孔径大)からセパレータ表面層である細繊維層(孔径小)への液移動性を高め高率放電時の電解液供給能力の向上を図るようにした。また、セパレータ全層における細繊維層と太繊維層との厚さ比率を10/90〜50/50とすることで、極板面と接するセパレータ表面層部分に設けた電解液保持力を局部的に高めた層の電解液保持量を確保し、当該層の電解液保持力と電解液保持量を確保して確実に電解液成層化防止効果の向上と高率放電時の電解液供給能力の向上を図るようにした。
【0013】
また、請求項2に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、請求項1に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記2層の細繊維層の厚さは略同一であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、請求項1または2に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記2層の細繊維層の平均孔径は略同一であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、請求項1乃至3の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記セパレータが実質的に前記微細ガラス繊維のみから構成され、前記細繊維層を構成する前記微細ガラス繊維の平均繊維径が0.4〜0.9μmであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、請求項1乃至4の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90以上25/75未満であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、請求項1乃至5の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記細繊維層が、前記微細ガラス繊維を50質量%以上、耐酸性及び熱融着性を有する有機繊維を0〜30質量%、無機質微粉体を0〜30質量%含むことを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、請求項1乃至6の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記太繊維層が、前記微細ガラス繊維を70質量%以上、耐酸性及び熱融着性を有する有機繊維を0〜30質量%含むことを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、請求項1乃至7の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記細繊維層と前記太繊維層は、前記湿式抄造シートを得る湿式抄造工程において湿潤状態のまま3層の積層構造体に形成されたものであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の密閉型鉛蓄電池は、前記目的を達成するべく、請求項9に記載の通り、請求項1乃至8の何れか1項に記載のセパレータを使用したことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の密閉型鉛蓄電池は、前記目的を達成するべく、請求項10に記載の通り、微細ガラス繊維を主体とした湿式抄造シートからなるセパレータが極板間に配置された密閉型鉛蓄電池において、前記セパレータは、前記微細ガラス繊維として平均繊維径0.4〜1.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が3.5μm以下である細繊維層と、前記微細ガラス繊維として平均繊維径1.3〜4.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が4.0μm以上かつ前記細繊維層の1.5倍以上である太繊維層とが、セパレータの厚さ方向に、2層の前記細繊維層で1層の前記太繊維層を両面から覆うように3層の積層構造をなした構造体で、全層における前記ガラス繊維の平均繊維径が1.2μm以上、全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90〜50/50のセパレータであり、前記極板面と接する面は前記細繊維層のみであることを特徴とする。
【0022】
また、請求項11に記載の密閉型鉛蓄電池は、請求項10に記載の密閉型鉛蓄電池において、前記セパレータは、前記全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90以上25/75未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リテーナとセパレータの機能を併せ持つ微細ガラス繊維シートからなる密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、従来両立し得なかった密閉型鉛蓄電池の二つの寿命劣化原因(圧迫力低下と電解液成層化)に対する改善要求事項である圧迫力低下防止効果の向上と電解液成層化防止効果の向上を効率的に与えることができ、密閉型鉛蓄電池の一層の寿命向上をもたらす。また、セパレータの厚さ方向の電解液移動性が促進されることで、高率放電時の電解液供給能力が高まり密閉鉛蓄電池の一層の充放電特性の向上をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の密閉型鉛蓄電池用セパレータは、微細ガラス繊維を主体とした湿式抄造シートからなるセパレータであって、前記微細ガラス繊維として平均繊維径0.4〜1.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が3.5μm以下である細繊維層(A層)と、前記微細ガラス繊維として平均繊維径1.3〜4.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が4.0μm以上かつ前記細繊維層の1.5倍以上である太繊維層(B層)とが、セパレータの厚さ方向に、2層の前記細繊維層(A層)で1層の前記太繊維層(B層)を両面から覆うように3層の積層構造(A−B−A積層構造)をなしたシート状の構造体であり、セパレータ全層における前記ガラス繊維の平均繊維径が1.2μm以上で、セパレータ全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90〜50/50であることを条件とする。
【0025】
セパレータ全層におけるガラス繊維平均繊維径を1.2μm以上とすることで、セパレータ全層の反発力が高まり圧迫力低下防止効果の向上を図ることができる。また、極板面と接するセパレータ両面の表面層部分に、ガラス繊維平均繊維径1.0μm以下かつ平均孔径3.5μm以下、あるいは、ガラス繊維平均繊維径0.9μm以下の細繊維層を設けることで、極板面と接するセパレータ両面の表面層部分の電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)を高め、電解液成層化防止効果の向上を図ることができる。また、セパレータ全層に対しセパレータの厚さ方向にガラス繊維平均繊維径の高低(平均孔径の高低)を設けることで、セパレータ全層の反発力を高めながら、セパレータ表面層部分の電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)の向上を図ることができる。また、極板面と接しないセパレータ中間層部分を、ガラス繊維平均繊維径1.3μm以上かつ平均孔径4.0μm以上の太繊維層とすることで、セパレータ表面層部分の電解液保持能力(電解液下方移動防止能力)の向上を図りながらも、セパレータ全層におけるガラス繊維平均繊維径を1.2μm以上とし圧迫力低下防止効果の向上を図ることができる。また、セパレータ全層に対しセパレータの厚さ方向に平均孔径の高低を設けることで、つまり、太繊維層の平均孔径を細繊維層の1.5倍以上とすることで、セパレータ中間層の太繊維層(孔径大)から極板面と接するセパレータ表面層の細繊維層(孔径小)への液移動性を高め、高率放電時の電解液供給能力の向上を図ることができる。また、セパレータ全層における細繊維層と太繊維層との厚さ比率を10/90以上(セパレータ全層における細繊維層の厚さ合計を全層厚さの10%以上)とすることで、極板面と接するセパレータ両面の表面層部分に設けた電解液保持力を局部的に高めた層の電解液保持量を確保し、当該層の電解液保持力と電解液保持量を確保して確実に電解液成層化防止効果の向上を図ることができる。
【0026】
尚、セパレータ全層における細繊維層と太繊維層との厚さ比率が50/50を超えると、圧迫力低下防止効果の向上を図りにくくなるとともに、セパレータ全層に占める0.9μm以下のガラス繊維材料の割合が高くなりセパレータ全層でのガラス繊維材料単価が高くなるので不適である。よって、セパレータ全層における細繊維層と太繊維層との厚さ比率は40/60以下、更には25/75未満であることがより好ましい。
【0027】
また、細繊維層を構成するガラス繊維の平均繊維径が0.4μm未満であると、圧迫力低下防止効果の向上と電解液成層化防止効果の向上の両立を図りにくくなるともに、細繊維層の密度が向上して空隙率が低下し電気抵抗を高めるとともに、セパレータ全層でのガラス繊維材料単価が高くなるので不適である。よって、細繊維層を構成するガラス繊維の平均繊維径は0.5μm以上、更には0.6μm以上であることがより好ましい。尚、同様の理由により、細繊維層の平均孔径は、0.5μm以上、更には1.0μm以上であることがより好ましい。
【0028】
また、太繊維層を構成するガラス繊維の平均繊維径が4.0μmを超えると、圧迫力低下防止効果の向上と電解液成層化防止効果の向上の両立を図りにくくなるとともに、太繊維層の含水率(電解液保持力)が低下するとともに、太繊維層の強度が得られにくくなるので不適である。よって、太繊維層を構成するガラス繊維の平均繊維径は3.5μm以下、更には3.0μm以下であることがより好ましい。尚、同様の理由により、太繊維層の平均孔径は、17μm以下、更には15μm以下、更には13μm以下であることがより好ましい。
【0029】
また、太繊維層の両面に配置する2層の細繊維層は、2層の厚さ合計が全層厚さの10%以上であればよいが、2層が正極板面と負極板面の両方に接し、一方の層が正極板面と接する層(正極板当接層)で他方の層が負極板面と接する層(負極板当接層)となる場合に、電池設計上正極板当接層と負極板当接層の異なる厚さ比率を適宜設定することが求められる場合など、特別の理由がない通常の場合は、細繊維層を設けたことによる電解液成層化防止効果の向上を図り易くするとともに、圧迫力低下防止効果の向上と電解液成層化防止効果の向上の両立を図り易くするとともに、セパレータ中間層の太繊維層からセパレータ表面層の細繊維層への液移動性及び液移動量をセパレータ両面(正極板当接層と負極板当接層)で均一化するため、2層の細繊維層の厚さは略同一とすることが好ましい。尚、同様の理由により、2層の細繊維層の平均孔径は略同一とすることが好ましい。
【0030】
また、太繊維層の両面に配置する2層の細繊維層は、実際の電池設計に応じて、互いに異なる厚さとなるようにしてもよい。この場合、前記2層の細繊維層の一方の層の厚さは、他方の層の厚さの105〜300%であることが好ましい。更に、前記2層の細繊維層が正極板面と負極板面の両方に接し、一方の層が正極板面と接する層(正極板当接層)で他方の層が負極板面と接する層(負極板当接層)となる場合には、前記2層の細繊維層のうちより厚さの大きい層が負極板側に向けて構成される(負極板当接層とされる)ことが好ましい。鉛蓄電池の充放電反応において、正極板表面では充電時には水を吸収すると同時に硫酸を放出し放電時には硫酸を吸収すると同時に水を放出し、負極板表面では充電時には硫酸を放出し放電時には硫酸を吸収している。このように、特に密閉型鉛蓄電池の極板表面では、隣接層である電解液保持力を有したセパレータ層との間で活発な電解液の授受が行われており、セパレータ層はそれに見合う電解液の授受能力(保持容量と保持速度並びに供給容量と供給速度)を有するよう設計される。ところで、前記2層の細繊維層は極板から放出された硫酸を当該層に保持し電解液成層化防止効果を高めることが求められているが、前述の通り、正極板表面では、充電時、放電時いずれにおいても電解液の吸収と放出とが同時に行われるのに対し、負極板表面では、充電時には電解液の放出のみが行われ放電時には電解液の吸収のみが行われており、極板表面とそれに隣接するセパレータとの間での見掛け上の電解液移動量は、正極板表面での移動量よりも負極板表面での移動量の方が高くなることから、負極板表面に当接する側のセパレータ表面層では、正極板表面に当接する側のセパレータ表面層よりも、より高度な電解液授受能力(保持容量と保持速度並びに供給容量と供給速度、特にここでは保持容量と供給容量すなわちタンク機能)が必要とされる。したがって、前述のように、前記2層の細繊維層の一方の層の厚さを他方の層の厚さの105〜300%とし、より厚さの大きい細繊維層が負極板側に向けて構成され、より厚さの小さい細繊維層が正極板側に向けて構成されるようにすれば、正極側、負極側での極板表面とそれに隣接するセパレータとの間での見掛け上の電解液移動量の違いに合わせ、移動量の低い正極板側には厚さが小さくタンク機能が低い細繊維層を構成し、移動量の高い負極板側には厚さが大きくタンク機能が高い細繊維層を構成することができ、2層の細繊維層による電解液成層化防止効果を発揮しつつ、負極板表面との電解液授受能力を高め、負極側の電池反応を効率良く行わせることができ、電池全体として電池能力が向上する。ただし、前記2層の細繊維層の一方の層の厚さが他方の層の厚さの300%を超えると、より厚さの小さい細繊維層の厚さが小さくなりすぎ、本発明の目的である細繊維層による電解液成層化防止効果が損なわれる危険性が生じるため、好ましくない。
【0031】
また、太繊維層の両面に配置する2層の細繊維層は、実際の電池設計に応じて、互いに異なる平均孔径となるようにしてもよい。この場合、前記2層の細繊維層の一方の層の平均孔径は、他方の層の平均孔径の105〜200%(ただし、3.5μm以下)であることが好ましい。更に、前記2層の細繊維層が正極板面と負極板面の両方に接し、一方の層が正極板面と接する層(正極板当接層)で他方の層が負極板面と接する層(負極板当接層)となる場合には、前記2層の細繊維層のうちより平均孔径の大きい細繊維層が負極板側に向けて構成される(負極板当接層とされる)ことが好ましい。前述の通り、密閉型鉛蓄電池の正極側、負極側での極板表面とそれに隣接するセパレータとの間での見掛け上の電解液移動量の違いに合わせ、移動量の低い正極板側には厚さが小さくタンク機能が低い細繊維層を構成し、移動量の高い負極板側には厚さが大きくタンク機能が高い細繊維層を構成するようにすることで、負極板表面との電解液授受能力を高め、負極側の電池反応を効率良く行わせることができるが、ここでは負極板表面との電解液授受能力として保持容量と供給容量の能力(タンク機能)に着目しているが、保持速度と供給速度の能力に着目すると、細繊維層の平均孔径が大きいほど電解液の保持速度や供給速度(液移動速度)は高くなる。したがって、前述のように、前記2層の細繊維層の一方の層の平均孔径を他方の層の平均孔径の105〜200%(ただし、3.5μm以下)とし、より平均孔径の大きい細繊維層が負極板側に向けて構成され、より平均孔径の小さい細繊維層が正極板側に向けて構成されるようにすれば、正極側、負極側での極板表面とそれに隣接するセパレータとの間での見掛け上の電解液移動量の違いに合わせ、移動量の低い正極板側には平均孔径が小さく液移動速度が低い細繊維層を構成し、移動量の高い負極板側には平均孔径が大きく液移動速度が高い細繊維層を構成することができ、2層の細繊維層による電解液成層化防止効果を発揮しつつ、負極板表面との電解液授受能力を高め、負極側の電池反応を効率良く行わせることができ、電池全体として電池能力が向上する。ただし、前記2層の細繊維層の一方の層の平均孔径が他方の層の平均孔径の200%を超えると、より平均孔径の大きい細繊維層の平均孔径が大きくなりすぎ、本発明の目的である細繊維層による電解液成層化防止効果が損なわれる危険性が生じるため、好ましくない。
【0032】
本発明のセパレータは、微細ガラス繊維を主体とした湿式抄造シートからなるセパレータであり、本発明の目的を損なわない範囲であれば、求められる仕様や要求特性に応じて、例えば、湿式抄造シートの機械的強度を高めるための有機繊維といったような各種副材料や、電池の充放電により発生するデンドライト(樹枝状鉛)(電池短絡の原因物質)の成長を抑制するための無機質微粉体といったような各種添加材を混合使用することができるが、圧迫力低下防止効果の向上と電解液成層化防止効果の向上を図り易くするためには、実質的にガラス繊維のみから構成されることが好ましい。
【0033】
有機繊維としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド等からなる耐酸性と熱融着性を有した有機繊維が使用できる。熱融着性の有機繊維もしくはフィブリル化する有機繊維を混合使用することで、バインダー効果が発揮され、繊維層やセパレータの強度を補うことができる。
【0034】
無機質微粉体としては、シリカ、珪藻土、ガラス、スメクタイト等からなる無機質微粉体が使用できる。このような無機質微粉体を混合使用することで、繊維層やセパレータの孔径を縮小化及び孔構造を複雑化し、電池短絡の原因物質であるデンドライトの成長抑制効果を付与することができる。このため、無機質微粉体は、比表面積が50m/g以上、更には100m/g以上であることが好ましい。
【0035】
前述の通り、有機繊維及び無機質微粉体といった各種副材料や各種添加材は、本発明のセパレータにおいては、本発明の目的を損なわない範囲で、求められる仕様や要求特性に応じて最小限の量を使用するものである。この考え方に従い、前記した目的のために有機繊維、無機質微粉体を混合使用する形態としては、細繊維層の構成として、微細ガラス繊維を50質量%以上、耐酸性及び熱融着性を有する有機繊維を0〜30質量%、無機質微粉体を0〜30質量%含む構成が好ましく、太繊維層の構成として、微細ガラス繊維を70質量%以上、耐酸性及び熱融着性を有する有機繊維を0〜30質量%含む構成が好ましい。尚、無機質微粉体は、極板面と接するセパレータの細繊維層に含ませることにより、負極板表面より析出、成長するデンドライトの成長を効率的に抑制することができる。
【0036】
本発明のガラス繊維としては、例えば、耐酸性のCガラスを、火炎法(溶融炉の底部のノズルから溶融ガラスを糸状に流下させ高速の火炎で吹き飛ばす方法)あるいは遠心法(溶融ガラスを高速回転するスピナーと呼ばれる周壁に多数のオリフィスを穿設した円筒容器へ供給し遠心力によって紡糸し高速気流で吹き飛ばす方法)といった方法によって繊維化、製造したウール状ガラス繊維(ガラス短繊維)であって、粒径30μm以上の粒状物及び直径10μm以上の繊維状物の含有率が0.1質量%以下とされたものであることが好ましい。前記ガラス短繊維においては、本来のガラス短繊維に混じって、繊維の端部に涙滴状の塊状物が付いたもの、繊維が部分的に太くなったもの、火炎や高速気流で吹き飛ばす前の太い繊維がそのまま残ったもの等の本来のガラス短繊維に対して比較的大きなサイズを有した粒状物や繊維状物が少量混入する場合がある(通常これをショットと呼んでいる)。
【0037】
本発明のセパレータは、前記した特徴の細繊維層と前記した特徴の太繊維層が前記した特徴の3層積層構造を有したものであればよく、その積層状態については、一体化されていてもよいし一体化されていなくてもよい。例えば、本発明の細繊維層と太繊維層の3層構造を有した湿式抄造シートセパレータは、細繊維層となる湿式抄造シートと、太繊維層となる湿式抄造シートとを、積層一体化して得られるか、湿式抄造シートを得る湿式抄造工程において細繊維層と太繊維層とを形成するとともに(あるいは、形成すると同時に)湿潤状態のまま積層一体化して得られる(湿紙同士を重ね合わせる「抄き合わせ法」、湿紙の上に別層を抄きながら層形成して重ねる「抄き重ね法」など)か、あるいは、前者及び後者の方法を組み合わせて得られるものであることが好ましいが、積層一体化した層間の密着性が良好である点で、後者の湿式抄造シートを得る湿式抄造工程において細繊維層と太繊維層とを形成するとともに(あるいは、形成すると同時に)湿潤状態のまま積層一体化して得られるものがより好ましい。尚、本発明のセパレータの全層厚さについては、特に制限はないが、例えば、1〜3mm程度とすることができる。
【0038】
本発明の密閉型鉛蓄電池は、前記した特徴の細繊維層と前記した特徴の太繊維層が前記した特徴の3層積層構造を有した湿式抄造シートセパレータを、極板間に配置した構成であればよく、例えば、電池組立時に、細繊維層と太繊維層が積層一体化したセパレータを組み込むようにしてもよいし、細繊維層となる湿式抄造シートと太繊維層となる湿式抄造シートを重ね合わせて組み込むようにしてもよい。
【0039】
また、本発明の密閉型鉛蓄電池は、極板表面に設けるペースティングペーパーを、前記した特徴の細繊維層のごとく構成し、前記した特徴の太繊維層のごとくセパレータを構成するようにしても、実質的に、前記した特徴の3層積層構造を有した湿式抄造シートセパレータを極板間に配置した電池構成と同様の構成となり、前記した本発明の作用効果と同様の作用効果をもたらすことができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例を比較例とともに詳細に説明する。
(比較例1)
平均繊維径0.5μmのCガラス短繊維100質量%を湿式抄造した湿潤状態のままのシート(細繊維シート)と、平均繊維径1.2μmのCガラス短繊維100質量%を湿式抄造した湿潤状態のままのシート(太繊維シート)とを、細繊維シート−太繊維シート−細繊維シートの順となるように積層し湿潤状態のまま一体化し、乾燥して、3層の積層構造のセパレータ(厚さ2.0mm)を得た。
(実施例1〜50、比較例2〜4)
比較例1と同様に、それぞれ、表1〜4に示す各条件に従い、3層の積層構造のセパレータ(厚さ2.0mm)を得た。
(実施例51)
平均繊維径0.8μmのCガラス短繊維85質量%と、耐酸性及び熱融着性を有する有機繊維として平均繊度1.3dtex、平均繊維長5mmで、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点約245℃)で鞘成分が共重合ポリエステル(融点約110℃)のポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル芯鞘型複合繊維(芯成分と鞘成分の重量比50:50)15質量%とを湿式抄造した湿潤状態のままのシート(細繊維シート)と、平均繊維径1.5μmのCガラス短繊維100質量%を湿式抄造した湿潤状態のままのシート(太繊維シート)とを、細繊維シート−太繊維シート−細繊維シートの順となるように積層し湿潤状態のまま一体化し、乾燥して、3層の積層構造のセパレータ(厚さ2.0mm)を得た。
(実施例52)
平均繊維径0.9μmのCガラス短繊維75質量%と、実施例51で使用したポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル芯鞘型複合繊維25質量%とを湿式抄造した湿潤状態のままのシート(細繊維シート)と、平均繊維径1.8μmのCガラス短繊維85質量%と、実施例51で使用したポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル芯鞘型複合繊維15質量%とを湿式抄造した湿潤状態のままのシート(太繊維シート)とを、細繊維シート−太繊維シート−細繊維シートの順となるように積層し湿潤状態のまま一体化し、乾燥して、3層の積層構造のセパレータ(厚さ2.0mm)を得た。
(実施例53)
平均繊維径1.0μmのCガラス短繊維65質量%と、実施例51で使用したポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル芯鞘型複合繊維15質量%と、比表面積が200m/gのシリカ微粉体20質量%とを湿式抄造した湿潤状態のままのシート(細繊維シート)と、平均繊維径1.8μmのCガラス短繊維85質量%と、実施例51で使用したポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル芯鞘型複合繊維15質量%とを湿式抄造した湿潤状態のままのシート(太繊維シート)とを、細繊維シート−太繊維シート−細繊維シートの順となるように積層し湿潤状態のまま一体化し、乾燥して、3層の積層構造のセパレータ(厚さ2.0mm)を得た。
(比較例5)
平均繊維径0.6μmのCガラス短繊維100質量%を湿式抄造し、乾燥して、単層構造のセパレータ(厚さ2.0mm)を得た。
(比較例6〜10)
比較例5と同様に、それぞれ、表4に示す各条件に従い、単層構造のセパレータ(厚さ2.0mm)を得た。
【0041】
次に、上記にて得られた実施例1〜53、比較例1〜10の各セパレータについて、以下の試験方法により、厚さ、平均孔径、引張強度、含水率、圧迫力(注液反発力)、液降下速度、平均孔径、液移動量を測定した。結果を表1〜4に示す。
〈厚さ〉
電池工業会規格SBA S 0406に準じた方法で測定した。
〈平均孔径〉
外層・中間層個別におのおの1.5mm厚さのセパレータ試料に測定用液体を充分含ませ、Porous Material, Inc.社のCapillary Flow Porometer(型式CFP−1200AEC)で32mmΦの専用金網アダプターを使用し、測定した。
〈引張強度〉
電池工業会規格SBA S 0406に準じた方法で測定した。
〈含水率〉
セパレータを10cm×10cmに裁断し試料とし、重量(W)を測定する。試料を水中に1時間浸漬後引き上げて、ピンセットで試料の角部を掴んで斜め45゜の状態に持ち上げ保持し、試料から落下する水滴の間隔が5秒以上となった時点の試料重量(W)を測定する。次式により、含水率(%)を算出する。
含水率(%)=(W−W)÷ W × 100
〈圧迫力〉
10cm×10cmに裁断したセパレータ試料を総厚さ約6mmとなるように重ねてポリ袋に入れた後、ロードセルを備えた横型加圧装置に圧力40kg/100cmの条件で挟み、比重1.3の硫酸液を5g間隔で注液していき、各注液時の圧力を測定する。注液は、硫酸液がセパレータ試料内部から表面に溢れ出るようになるまで行う。次に、セパレータ試料の表面に溢れ出た硫酸液を抜き取り、抜き取った液量とその時の圧力を測定する。次に、セパレータ試料内部に保持されている硫酸液を注射器により強制的に抜き取り、抜き取りの都度、抜き取った液量とその時の圧力を測定する。この操作は、セパレータ試料から硫酸液が抜き出せなくなるまで行う。これら測定結果を基に、横軸に注液量(セパレータ試料の液付着量)、縦軸に圧力を取って、特開平5−67463号公報の図1に示すようなグラフを作成する。グラフに表されるおよその挙動は、注液開始後、徐々に圧力は下がっていき、ある時点で圧力は下がり切り、その後圧力は徐々に上がっていき、最後は、圧力は上がり切り変化しなくなる。この圧力が上がり切って変化しなくなり始める時点(特開平5−67463号公報の図1ではA点)の横軸の液量(セパレータ試料の液付着量)を、セパレータ試料の硫酸液飽和度100%の時点とし、硫酸液をセパレータ試料から抜き出す操作を行った時のグラフ曲線(特開平5−67463号公報の図1ではA点からC点に向かう曲線)から、セパレータ試料の硫酸液飽和度が65%の時の圧力(kg/100cm)を読み取り、圧迫力(kg/100cm)とする。
〈液降下速度〉
セパレータ試料を水を十分含ませた状態で50kg/100cmの圧力となるようにアクリル板で挟み、上部から比重1.3の着色硫酸液を流し込み、60分後の着色硫酸液の降下距離(mm)を測定し、液降下速度(mm/hr)とする。
〈液移動量〉
同一厚さとした10cm×10cm寸法のセパレータ試料A,B,C(A:外層,B:中間層,C:外層)を用意し、重量(A,B1,C)を測定する。次に、セパレータ試料Bに水を十分含ませ、45゜の傾斜板上で5分間放置する。このときのセパレータ試料Bの重量(B)を測定する。次に、セパレータ試料Bを両側からセパレータ試料A,Cで挟み、50kPaの加圧を掛けて60分間放置する(セパレータ試料Bが含んでいる水をセパレータ試料A,Cに滲み込ませる)。このときのセパレータ試料A,B,Cの重量(A,B,C)を測定する。
尚、事前に、セパレータ試料Bが50kPa加圧時に保持できる液量(B)を測定しておく。まず、10cm×10cm寸法のセパレータ試料Bの重量(B)を測定する。次に、セパレータ試料Bに水を十分含ませた後、50kPaの加圧を掛け、余分な水分を除去し、60分間放置して、重量(B)を測定する。セパレータ試料Bが50kPa加圧時に保持できる液量(B)を(B−B)にて算出する。
次に、セパレータ試料間で移動した液移動量(g/100cm/hr)を、次式にて算出する。
(1)中間層Bから外層Aへの液移動量 A = A−A−[(B−B)÷2]
(2)中間層Bから外層Cへの液移動量 C = C−C−[(B−B)÷2]
(3)中間層Bから外層A,Cへの液移動量 D = A + C
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細ガラス繊維を主体とした湿式抄造シートからなる密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、前記微細ガラス繊維として平均繊維径0.4〜1.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が3.5μm以下である細繊維層と、前記微細ガラス繊維として平均繊維径1.3〜4.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が4.0μm以上かつ前記細繊維層の1.5倍以上である太繊維層とが、セパレータの厚さ方向に、2層の前記細繊維層で1層の前記太繊維層を両面から覆うように3層の積層構造をなした構造体であり、全層における前記ガラス繊維の平均繊維径が1.2μm以上で、全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90〜50/50であることを特徴とする密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項2】
前記2層の細繊維層の厚さは略同一であることを特徴とする請求項1に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項3】
前記2層の細繊維層の平均孔径は略同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項4】
前記セパレータが実質的に前記微細ガラス繊維のみから構成され、前記細繊維層を構成する前記微細ガラス繊維の平均繊維径が0.4〜0.9μmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項5】
前記全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90以上25/75未満であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項6】
前記細繊維層が、前記微細ガラス繊維を50質量%以上、耐酸性及び熱融着性を有する有機繊維を0〜30質量%、無機質微粉体を0〜30質量%含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項7】
前記太繊維層が、前記微細ガラス繊維を70質量%以上、耐酸性及び熱融着性を有する有機繊維を0〜30質量%含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項8】
前記細繊維層と前記太繊維層は、前記湿式抄造シートを得る湿式抄造工程において湿潤状態のまま3層の積層構造体に形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の密閉型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のセパレータを使用したことを特徴とする密閉型鉛蓄電池。
【請求項10】
微細ガラス繊維を主体とした湿式抄造シートからなるセパレータが極板間に配置された密閉型鉛蓄電池において、前記セパレータは、前記微細ガラス繊維として平均繊維径0.4〜1.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が3.5μm以下である細繊維層と、前記微細ガラス繊維として平均繊維径1.3〜4.0μmのガラス繊維で構成され平均孔径が4.0μm以上かつ前記細繊維層の1.5倍以上である太繊維層とが、セパレータの厚さ方向に、2層の前記細繊維層で1層の前記太繊維層を両面から覆うように3層の積層構造をなした構造体で、全層における前記ガラス繊維の平均繊維径が1.2μm以上、全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90〜50/50のセパレータであり、前記極板面と接する面は前記細繊維層のみであることを特徴とする密閉型鉛蓄電池。
【請求項11】
前記セパレータは、前記全層における前記細繊維層と前記太繊維層との厚さ比率が10/90以上25/75未満であることを特徴とする請求項10に記載の密閉型鉛蓄電池。

【公開番号】特開2011−238492(P2011−238492A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109582(P2010−109582)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】