説明

寝装側地および寝装品

【課題】中綿が吹き出しにくく、かつムレが生じにくい寝装側地および寝装品を提供する。
【解決手段】単繊維径が10〜1,500nmのフィラメント糸Aを用いて織物寝装側地を構成する。フィラメントの摩擦係数が高いため、織物を構成する糸と糸の摩擦が大きくなり外力がかかっても織目変形し難く、通気性を維持しつつ、寝装品内部からの中綿の吹き出しを防止できることを見だした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中綿が吹き出しにくく、かつムレが生じにくい寝装側地および寝装品に関する。
【背景技術】
【0002】
寝装側地に要求される特性としては、まず、側地からなる袋の中に中綿を詰め込んで使用するので、中綿が吹き出てこないようにする必要がある。そのために、織密度を上げたり、加熱ローラーの間を織物を通して加圧する、いわゆる目潰し加工が行われている。
しかしながら、織密度を上げすぎると通気性が低下し、使用の際にムレが生じるという問題があった。このように、中綿の吹き出し防止と適度な通気性とを両立させることは困難であった。
【0003】
なお、比較的繊度の小さい繊維で寝具類やぬいぐるみなどの側地を構成することは知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−261496号公報
【特許文献2】実開平4−103195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、中綿が吹き出しにくく、かつムレが生じにくい寝装側地および寝装品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を達成するため鋭意検討した結果、単繊維径が10〜1,500nmと極めて単繊維径が小さいフィラメント糸を用いて織物を得て寝装側地とすると、該フィラメント糸の摩擦係数が高いため、織物を構成する糸と糸の摩擦が大きくなり、外力がかかっても織目変形し難く、その結果、ある程度の通気性を維持しつつ、寝装品内部からの中綿の吹き出しを防止できることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「単繊維径が10〜1,500nmのフィラメント糸Aを含む織物で構成されることを特徴とする寝装側地」が提供される。
その際、前記フィラメント糸Aが、ポリエステル、ナイロン、アクリルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記フィラメント糸Aのフィラメント数は500本以上であることが好ましい。また、前記織物に、他のフィラメント糸として、単繊維径が1,500nmより大のフィラメント糸Bが含まれることが好ましい。また、前記フィラメント糸Bが、ポリエステル、ナイロン、アクリル、綿、絹からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記フィラメント糸Bのフィラメント数は1〜500本の範囲内であることが好ましい。また、下記に定義する織物のカバーファクター(CF)が2,000〜4,500の範囲内であることが好ましい。
【0008】
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0009】
また、本発明の寝装側地では、織物の組織がツイル組織であることが好ましい。また、JIS L1096A法 フラジール型試験機を使用して測定した通気度が、2〜20cm/cm・秒の範囲内であることが好ましい。
さらに、寝装側地の内側面において、前記フィラメント糸Aが前記フィラメント糸Bよりも多く露出し、かつ寝装側地の外気側面において、前記フィラメント糸Bが前記フィラメント糸Aよりも多く露出していることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、前記の寝装側地を用いてなる寝装品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中綿が吹き出しにくく、かつムレが生じにくい寝装側地および寝装品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の寝装側地は、単繊維径が10〜1,500nmのフィラメント糸Aを含む織物で構成される。
【0013】
ここで、前記フィラメント糸A(以下、「ナノファイバー」と称することもある。)において、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜1,500nm(好ましくは250〜800nm、特に好ましくは510〜800nm)の範囲内であることが肝要である。前記単繊維径が10nmよりも小さい場合は、繊維強度が低下するため実用上好ましくない。逆に、前記単繊維径が1,500nmよりも大きい場合は、織物を構成する糸と糸の摩擦が小さくなり、外力がかかった場合に織目が変形しやすく、その結果、中綿が吹き出しやすくなるため好ましくない。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0014】
前記フィラメント糸Aにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、織物を構成する糸と糸との滑りにくさやソフトな風合いを得る上で500本以上(より好ましくは2,000〜50,000本)であることが好ましい。また、フィラメント糸Aの総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、50〜800dtexの範囲内であることが好ましい。
【0015】
前記フィラメント糸Aの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。また、前記フィラメント糸Aとして2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記フィラメント糸Aを形成するポリマーの種類としては特に限定されずいずれのポリマーでもよいが、繊維強度の点でポリエステルまたはナイロンまたはアクリルが好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルや、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸でもよい。前記ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0017】
本発明の寝装側地を構成する織物は、前記のフィラメント糸Aだけで構成されていてもよいが、この場合、織物の両面とも表面の滑りが悪く(摩擦係数が高く)寝装側地の取り扱い性が悪くなるので、前記織物に、他のフィラメントとして、単繊維径が1,500nmより大のフィラメントBが含まれることが好ましい
【0018】
その際、前記フィラメント糸Bは、その単繊維径が1,500nmより大(好ましくは2〜33μm)であることが好ましい。前記単繊維径が1,500nm(1.5μm)以下であると、織物の両面とも表面の滑りが悪く(摩擦係数が高く)寝装側地の取り扱い性が悪くなるおそれがある。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、前記と同様、透A過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
前記フィラメント糸Bにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、1〜300本の範囲内であることが好ましい。また、かかるフィラメント糸Bの繊維形態は特に限定されず紡績糸でもよいが、長繊維(マルチフィラメント糸)やポリウレタン繊維等、あるいは両者を使用することが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえなく、また前記フィラメント糸Bは2種類以上でもよい。
【0019】
前記フィラメント糸Bを形成するポリマーの種類としては、特に限定されずいずれのポリマーでもよいが、繊維強度の点でポリエステルまたはナイロンまたはアクリルまたは綿または絹が好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステル、ポリエーテルエステル、ウレタンなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルやポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸でもよいが、滑り止め効果をより追及する場合はポリエーテルエステルやポリウレタンなどの弾性樹脂が好ましい。前記ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0020】
なお、前記フィラメント糸Aおよびフィラメント糸Bにおいて、繊維は複数の組合わせが好ましく、例えば、ポリウレタン繊維やポリエーテルエステル系繊維などからなる弾性繊維糸条と、ポリエステル系繊維糸条またはナイロン繊維糸条とをインターレース空気ノズルなどにより空気混繊させた複合糸や、ポリウレタン繊維やポリエーテルエステル系繊維などからなる弾性繊維糸条のまわりにポリエステル系糸条またはナイロン繊維糸条をカバリングした複合糸などや、紡績糸との複合糸、またはこれを交織してもよい。
【0021】
前記織物の織物組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示されるがこれらに限定されない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。なかでも、ある程度高密度の織物とする上でツイル組織が最も好ましい。
【0022】
ここで、前記フィラメント糸Aとフィラメント糸Bとを用いて織物を構成し、フィラメント糸Aが多く露出する面を内側に、フィラメント糸Bが多く露出する面を外気側に使用すると、寝装側地の外気側表面の滑りがよく、取り扱い性が向上し好ましい。
【0023】
本発明の寝装側地は、例えば以下の製造方法により製造することができる。
まず、海成分と、ポリエステルからなりその径が10〜1,500nmである島成分とで形成される海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維)を用意する。かかる海島型複合繊維としては、特開2007−2364号公報に開示された海島型複合繊維マルチフィラメント(島数100〜1,500)が好ましく用いられる。
【0024】
すなわち、海成分ポリマーとしては、繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4,000〜12,000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
【0025】
一方、島成分ポリマーは、繊維形成性の良好なポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。前記ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0026】
前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。また、島成分の径は、10〜1,500nmの範囲とする必要がある。その際、島成分の形状が真円でない場合は外接円の直径を求める。前記の海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
【0027】
かかる海島型複合繊維マルチフィラメント糸は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型断面複合繊維マルチフィラメント糸は、冷却風によって固化され、好ましくは4,00〜60,00m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。かかる海島型複合繊維マルチフィラメント糸において、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度0.5〜10.0dtex、フィラメント数5〜75本、総繊度30〜170dtexの範囲内であることが好ましい。
【0028】
一方、必要に応じて、単繊維繊度が0.1dtex以上(好ましくは0.1〜0.9dtex)であるフィラメントBを用意する。最終的に得られる生地内のフィラメント糸Bの単繊維径を1,500nmより大とする上で、単繊維繊度を前記の範囲内とすることが好ましい。
【0029】
かかるフィラメント糸Bにおいて、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれフィラメント数1〜300本(より好ましくは100〜300本)、総繊度10〜800dtexの範囲内であることが好ましい。また、かかるフィラメント糸としては、沸水収縮率10%以上(より好ましくは20〜40%)の範囲内の高収縮ポリエステルや、弾性糸(ポリウレタン弾性糸またはポリエーテルエステル弾性糸)であってもよい。
【0030】
次いで、前記海島型複合繊維マルチフィラメント糸と、必要に応じてフィラメント糸Bとを用いて、織物を常法により織成する。その際、前記海島型複合繊維フィラメント糸とフィラメント糸Bとが混繊糸として織編物中に含まれていてもよいが、前記フィラメント糸Aと前記フィラメントBとを交織することにより織物を織成することが好ましい。なお、前記海島型複合繊維フィラメント糸とフィラメント糸Bとの総繊度比としては、90:10〜20:80の範囲内であることが好ましい。
【0031】
次いで、前記の織物(生地)にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維フィラメント糸を単繊維径が10〜1,500nmのフィラメント糸Aとすることにより、本発明の寝装側地が得られる。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。
【0032】
また、前記アルカリ水溶液による溶解除去の前および/または後に生地に染色加工を施してもよい。カレンダー加工(加熱加圧加工)やエンボス加工を施してもよい。さらに、常法の起毛加工、撥水加工、さらには、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0033】
かかる織物において、織物のカバーファクター(CF)が2,000〜4,500の範囲内であることが好ましい。より好ましくは2,000〜3,500の範囲であることが良い。カバーファクターが2,000よりも小さいと、中綿が吹き出すおそれがある。一方、カバーファクターが4,500よりも大きいと、通気性が小さくなり、ムレが生じるおそれがある。
【0034】
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0035】
また、寝装側地は、ソフトでドレープ性のある生地が好まれるので、前記織物の目付としては、50〜200g/m(より好ましくは80〜120g/m)の範囲内であることが好ましい。目付が50g/mよりも小さいと、うすっぺらくペーパーライクな風合いになるし中綿も吹き出しやすくなるおそれがある。逆に、目付が200g/mよりも大きくなると、硬くなるだけでなく寝具としては重くなりすぎるおそれがある。
【0036】
本発明の寝装側地では、JIS L1096A法 フラジール型試験機を使用して測定した通気度が、2〜20cm/cm・秒(より好ましくは3〜15cm/cm・秒)の範囲内であることが好ましい。前記通気度が2cm/cm・秒よりも小さいと、ムレが生ずるおそれがある。逆に、前記通気度が20cm/cm・秒よりも大きいと、中綿が吹き出すおそれがある。
【0037】
次いで、前記織物単独か、必要に応じて他の生地と併用して常法により寝装側地を縫製する。その際、前記織物のみで寝装側地を構成してもよいが、例えば通常のポリエステル織編物との多層構造としてもよい。
【0038】
かくして得られた寝装側地において、寝装側地を構成する織物に前記フィラメント糸A(ナノファイバー)が含まれているので、織物を形成する糸と糸との接触面積が大きくなるため外力がかかっても織目変形しにくく、その結果、通気性が安定しており(すなわちムレ感があまりなく)、中綿が吹き出しにくい。
【0039】
次に、本発明の寝装品について説明する。
本発明に係る寝装品は前記の寝装側地を用いてなる寝装品である。かかる寝装品は前記の寝装側地を用いているので、使用の際、中綿が吹き出しにくく、かつムレ(ムレ感)が生じにくい。なお、かかる寝装品には、ふとん、まくら、ソファーなどが含まれる。また、中綿は、例えば、天然繊維または合成繊維の詰綿に限定されず、羊毛、羽毛等であってもよい。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0041】
<溶融粘度>
乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットする。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1,000秒−1の時の溶融粘度を見る。
【0042】
<溶解速度>
海・島成分の各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1,000〜2,000m/分の紡糸速度で糸を巻き取り、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製する。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0043】
<カバーファクター(CF)>
カバーファクター(CF)は、次式で算出した。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0044】
<通気度>
JIS L1096A法 フラジール型試験機を使用して測定した。
【0045】
<羽毛吹き出し評価>
日本紡績検査協会の中綿吹き出し試験で測定し、非常に優れているものを◎、優れているものを○、やや劣るものを△、劣るものを×とした。
【0046】
<目付>
JIS L1096で目付を算出した。
【0047】
<総合評価>
複数の専門家による評価により、非常に優れているものを◎、優れているものを○、やや劣るものを△、劣るものを×とした。
【0048】
[実施例1]
島成分としてポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1,200ポイズ、艶消し剤の含有量:0重量%)、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4,000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1,750ポイズ)を用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1,500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。
【0049】
得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維、延伸糸)は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は700nmであった。
【0050】
得られた海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維、延伸糸)を通常の撚糸方法により2本合撚(S方向100回/m)し、110dtex/20filの撚糸糸条(a)を得た。
【0051】
一方、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸56dtex/144fil(フィラメント糸B、帝人ファーバー(株)製)を用意した。
【0052】
次いで、前記ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸56dtex/144filを経糸に、前記撚糸糸条(a)を緯糸に配して通常の製織方法により、組織2/1ツイル、経密度206本/2.54cm、緯密度89本/2.54cmの生機を得た。
【0053】
次いで、該生機を50℃にて湿熱処理した後、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、2.5%NaOH水溶液で、55℃にて30%減量(アルカリ減量)した。その後、常法の湿熱加工、乾熱加工を行った。
【0054】
得られた織物において、前記撚糸糸条(a)における海成分除去後のフィラメント糸Aの平均単繊維径は700nmであり、構成単繊維(フィラメント)本数は8,360本であった。一方、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸56dtex/144fil(フィラメント糸B)の平均繊維径は6,050nmであった。また、織物のカバーファクターCFは2,600であった。また、目付は120g/mであった。また、通気度は7cm/cm・秒であった。
【0055】
この織物を寝装側地として、羽毛布団を作成した。このものの羽毛吹き出し評価は○であり、総合評価は◎であった。なお、この寝装側地では、内側面において、前記フィラメント糸Aが前記フィラメント糸Bよりも多く露出し、かつ寝装側地の外気側面においては前記フィラメント糸Bが前記フィラメント糸Aよりも多く露出していることが観察された。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、前記撚糸糸条(a)の替わりにポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント66dtex/144fil(帝人ファイバー(株)製)を用いて同様に織物を得た。次いで、常法の湿熱加工、乾熱加工を行った。得られた織物において、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント66dtex/144filの平均繊維径は6,600nmであり、前記ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸56dtex/144fil(フィラメント糸B)の平均繊維径は6,050nmであった。また、織物のカバーファクターCFは2,600であり、目付は121g/mであった。織物の通気度は8cm/cm・秒であった。羽毛吹き出し評価は×であった。総合評価は×であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、中綿が吹き出しにくく、かつムレが生じにくい寝装側地および寝装が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維径が10〜1,500nmのフィラメント糸Aを含む織物で構成されることを特徴とする寝装側地。
【請求項2】
前記フィラメント糸Aが、ポリエステル、ナイロン、アクリルの少なくとも1種からなる、請求項1に記載の寝装側地。
【請求項3】
前記フィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上である、請求項1または請求項2に記載の寝装側地。
【請求項4】
前記織物に、他のフィラメントとして、単繊維径が1,500nmより大のフィラメント糸Bが含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載の寝装側地。
【請求項5】
前記フィラメント糸Bが、ポリエステル、ナイロン、アクリル、綿、絹の少なくとも1種からなる、請求項4に記載の寝装側地。
【請求項6】
前記フィラメント糸Bのフィラメント数が1〜500本の範囲内である、請求項4または請求項5に記載の寝装側地。
【請求項7】
下記に定義する織物のカバーファクター(CF)が2,000〜4,500の範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載の寝装側地。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【請求項8】
織物の組織がツイル組織である、請求項1〜7のいずれかに記載の寝装側地。
【請求項9】
JIS L1096A法 フラジール型試験機を使用して測定した通気度が、2〜20cm/cm・秒の範囲内である、請求項1〜8のいずれかに記載の寝装側地。
【請求項10】
寝装側地の内側面において、前記フィラメント糸Aが前記フィラメント糸Bよりも多く露出し、かつ寝装側地の外気側面において、前記フィラメント糸Bが前記フィラメント糸Aよりも多く露出している、請求項4〜9のいずれかに記載の寝装側地。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の寝装側地を用いてなる寝装品。

【公開番号】特開2010−174399(P2010−174399A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17738(P2009−17738)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【出願人】(000196129)西川産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】