説明

封水保護機能付き排水トラップ

【課題】トラップ内に貯留された封水が蒸発し、枯渇しても臭気の逆流が防止できるように、排水経路へ設置される封水保護機能付きのU字型の排水トラップを提供する。
【解決手段】耐熱樹脂材料からなるU字型の排水トラップ本体10と、その上流側に連結されるT字型の管継手20と、T字型の管継手の上部に連結される点検筒30とから構成される排水トラップとして、封水の蒸発および臭気の逆流を防止するために、U字型排水トラップの入り口に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の弁座プレートと、弁座プレートの開口径より大きな直径を有し水に対して浮力を有する球状のフロートと、T字型の管継手の側壁に設けられた排水流入口から排水が流入した時、浮力により弁座から離れて開口部を開放し、排水流入口から排水の流入がない時は、自重により弁座へ着座して開口部を閉塞する封水保護ユニット5を備えた排水トラップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下流側排水管からの臭気の逆流を防止するための封水式のU字型排水トラップに関し、特に排水の温度が高いためにトラップ内に貯留された封水が蒸発して枯渇してしまい、このため臭気の逆流が完全に防止できないような排水経路へ設置される封水保護機能付きのU字型の排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、家庭用貯湯式温水器等では、湯水の沸し上げを行う際に内部の圧力上昇により発生する膨張水や貯湯タンクの点検する際の水抜き水を機器本体の外部へ排出する必要がある。このため、温水器から排出されるドレン排水等の温度は90℃近くに達する場合がある。また排水は、温度によらず通常の排水経路と同様に下流側排水本管へ接続しなければならないため、通常は排水経路の途中に下流側排水管からの臭気の逆流防止を目的として封水式のU字型排水トラップが設置される。
【0003】
ところで、上述のとおり温水器から排出される排水は高温である場合があるため、温水器から一度に多量の高温排水が排出されるような場合はU字型排水トラップ内に貯留される封水の温度が50〜70℃の高温となることがある。このため、通常の封水式のU字型排水トラップでは、トラップ内に貯留された封水が温水器の排水管とその下の排水ホッパーとの間に設けられた縁切り用の開口部より蒸発してしまい、直接悪臭を放つという問題があった。また、このような状態を放置しておくと今度はトラップ内に貯留された封水が枯渇してしまい、その結果、下流側排水管から臭気が排水トラップを通過して逆流してしまうという問題が生じることもあった。さらには最悪の場合、高温の封水の貯留により排水トラップが変形して破損してしまうという問題もあった。
【0004】
一方、このような問題に対し、従来より実開平6−8468号公報に記載されているような封水式の排水トラップとフロート式の開閉弁を併用したタイプの排水トラップが提案されている。しかしながら、これらのタイプの排水トラップは、勢いの強い排水が流れてきた時に封水式排水トラップの直上に設けられた第2の排水口から排水が逆流してしまうのを防止する目的で設計されているため、トラップ内に高温の封水が貯留された場合、構造的に蒸発による悪臭の発生や封水の枯渇、およびその結果生じる下流側排水管からの臭気の逆流を防止することができなかった。
【0005】
また、実開昭52−3057号公報、実開昭60−169372号公報、特開2002−256609号公報および特開2007−225146号公報では、何らかの原因でトラップ内の封水が切れてしまった場合においても下流側排水管からの臭気の逆流を防止することができる封水式の排水トラップとフロート式の開閉弁を併用した他のタイプの排水トラップが提案されている。しかしながら、これらのタイプの排水トラップは、いずれもトラップ内に高温の封水が貯留されること及び高温の封水の貯留により排水経路の上流側開口部(機器排水管と排水ホッパーとの縁切り部)へ封水が蒸発してしまうことをまったく考慮していないため、先述の従来例と同様に、構造的に封水が上流側へ蒸発することにより生じる直接的な悪臭の発生や封水の枯渇を防止することができなかった。また、高温の封水の貯留により排水トラップが変形して破損してしまうという問題が生じる場合あった。
【0006】
さらに、特開2002−256609号公報および特開2007−225146号公報に記載されている排水トラップではフロート式の開閉弁を上流側排水の流入口の直下に配置する構造であるため、上流側からの排水の流れによりフロートが上から押さえ付けられてフロートがスムーズに浮上できなくなり配管詰まりを生じるという問題もあった。
【特許文献1】実開平6−8468号公報
【特許文献2】実開昭52−3057号公報
【特許文献3】実開昭60−169372号公報
【特許文献4】特開2002−256609号公報
【特許文献5】特開2007−225146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、高温の排水が排出される排水経路においても変形等することなく使用することができる排水トラップであって、高温の封水がトラップ内に貯留された場合でも、上流側への封水の蒸発を防止することにより直接的な悪臭の発生や封水の枯渇を防止することができ、さらに封水が切れた場合でも、下流側排水管からの臭気の逆流を防止することができる封水保護機能付きのU字型の排水トラップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、U字型の排水トラップ内に高温の封水が貯留された場合の特性について鋭意検討を重ねた結果、U字型の排水トラップの上流側であって上流側排水の流入口の側部に、トラップ内に貯留された封水の蒸発を防止するフロート式の開閉弁を配置するのが最も効果的であるとの結論に達し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、耐熱樹脂材料からなるU字型の排水トラップ本体と、前記U字型排水トラップ本体の上流側に連結されるT字型の管継手と、そして前記T字型の管継手の上部に連結される点検筒とから構成される排水トラップにおいて、トラップ内に貯留される封水の蒸発および臭気の逆流を防止するため、前記T字型の管継手は、その内部に前記T字型管継手の受口と前記U字型排水トラップの差口先端部との間に挟み込むことにより固定する、中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の弁座プレートと、前記弁座プレートの開口径より大きな直径を有し、水に対して浮力を有する球状のフロートと、そしてT字型の管継手の側壁に設けられた排水流入口から排水が流入した時、浮力により弁座から離れて開口部を開放し、排水流入口から排水の流入がない時、自重により弁座へ着座して開口部を閉塞するように前記フロート動きを規制する、前記弁座プレートへ装着された案内手段とからなる封水保護ユニットを備えていることを特徴とする前記排水トラップが提供される。
【0010】
本発明の排水トラップ内において排水の流路を形成する基本的な構成部品は、U字型の排水トラップ本体と、その上流側に連結されるT字型の管継手と、そしてその上部に連結される点検筒とからなる。したがって、本発明において基本的な構造をなす部品はすべて市場で入手することができる通常の規格品から構成することができるため、極めて安価に本発明の排水トラップを製作することができる。ただし、本発明の排水トラップは必ずしもこのような規格品のみから構成する必要はなく、各構成部品の中の幾つかを結合させてなる一体成形品を含んでいてもよい。
【0011】
本発明では高温排水による排水トラップの変形及び破損を防止するために耐熱樹脂材料が用いられているが、その中でU字型の排水トラップ本体のみが耐熱樹脂材料から成形されているのは、該排水トラップ本体にのみ50〜70℃の高温の排水(封水)が長時間滞留する場合があり、他の部分は高温排水との接触が全くないか若しくは比較的短時間で終了することが判明したからである。
【0012】
具体的には、U字型の排水トラップ本体は耐熱温度が一般的に90℃程度である耐熱塩化ビニル材料から成形されていることが好ましく、T字型の管継手など他の部分は耐熱温度が60〜65℃である通常の塩化ビニル材料から成形されていることが好ましい。このため、本発明の排水トラップでは高価な耐熱塩化ビニル材料の使用を必要最小限度に抑えることができるため、安価な製品を提供することができる。
【0013】
また、本発明において、T字型の管継手の上部にさらに点検筒が連結されている理由は、主に後述される封水保護ユニットの点検および交換などを容易にするためであり、その胴部の長さは本発明による排水トラップの埋設深さ応じて切断等することにより適宜調整される。そして点検筒の頂部には、点検および非点検時の安全の確保のため蓋体および該蓋体を着脱可能に固定するための蓋枠が取り付けられる。
【0014】
次に、本発明の排水トラップでは、T字型の管継手の内部に、中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の弁座プレートと、水に対して浮力を有する球状のフロートと、そして前記フロートの動きを規制する案内手段とからなるフロート式の弁構造を有する封水保護ユニットが装着される。
【0015】
封水保護ユニットのフロートは、温水器等から排出される排水がT字型の管継手の側壁に設けられた排水流入口から流入すると浮力により弁座から離れて開口部を開放し、そして排水はその下部へ連結されたU字型の排水トラップ内へ排出される。一方、T字型の管継手の排水流入口から排水の流入がない時、フロートは自重により弁座へ着座して開口部を閉塞しているので、下部トラップ内に高温の排水(封水)が滞留している場合であっても該排水の蒸発を防止することができ、さらには何らかの原因で封水が切れてしまった場合においても、下流側排水管からの臭気の逆流を確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明では、排水流入口をT字型の管継手の側壁に配置することにより該排水流入口から流入する排水が球状のフロートの側面へ衝突するように設計されている。このため、一度に多量の排水が流れ込んでくるような場合においても球状のフロートは、排水により上から押さえ込まれることなく側面から掬い上げられるようにしてスムーズに浮上することができ、排水効率を向上させる。
【0017】
封水保護ユニットの弁座プレートは、その外周部がT字型管継手の受口とU字型排水トラップ本体の差口先端部(又はその逆のU字型排水トラップ本体の受口とT字型管継手の差口先端部であってもよい)との間に挟み込まれることにより固定される。このため、弁座プレートへ固定されているフロート案内手段及びその中のフロートも、弁座プレートを固定する際に該弁座プレートを介してT字型管継手の内部で一体的に支持される。したがって、本発明によれば、封水保護ユニットは排水トラップを組み立てる際にU字型排水トラップ本体とT字型管継手との間に簡単に取り付けることができ、全体としてもU字型排水トラップ本体、T字型管継手、点検筒および封水保護ユニットからなる本発明の排水トラップを短時間に組み立てることが可能となる。
【0018】
また、弁座プレートは、必ずしもT字型管継手とU字型排水トラップ本体の間に挟み込むことにより固定するタイプに限定されるものではなく、例えばT字型管継手の側壁に設けられた排水流入口より下側位置において内壁面から内側に張り出すように一体成形されたタイプや、同じ位置において圧入固定又は接着固定されるタイプのものであってもよい。
【0019】
弁座プレートがT字型管継手と一体成形されるタイプのものは、一体成形により管継手の内部形状がやや複雑となるが、強度的に信頼性がさらに向上し特に大量生産に適している。また、弁座プレートの直径をT字型管継手の管径より僅かに大きく製作することによりT字型管継手の内部に圧入固定及び/又は接着固定するタイプものは、弁座プレートの取り付けタイミングの自由度が拡大し、本発明による排水トラップ施工時の作業性が一段と向上する。
【0020】
また、弁座プレートは、中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の形状を有している。したがって、弁座プレートに載せられたフロートはT字型の管継手の排水入口から排水の流入がない時、その自重により円盤の中心に設けられた開口部または漏斗状の曲面に案内されてスムーズに弁座へ着座して開口部を閉塞する。また、弁座プレートが円盤状である場合は、開口部の周辺に該開口部へ向けて下向きに傾斜する面又は縁を有するガイド部材を複数個設置することによっても漏斗状の弁座プレートを採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0021】
さらに、弁座プレートには、フロートが開口部へ着座した時、フロートと接触する部分にゴムやウレタンなど弾性材料からなるシールリングを設けてもよく、またフロートの表面を前記弾性材料で被覆するようにしてもよい。このような弾性のあるシール部材をフロート又は弁座へ適用すると、フロートと弁座の密着性が向上して両者の間のシールがより一層完全なものとなる。
【0022】
球状のフロートは、排水の流れにより弁座プレートに設けられた開口部を開閉する弁として作用するものであるため、弁座プレートの開口径より大きな直径を有する真球または繭形状のような縦断面が楕円形状の球体、若しくは一部に開口径より大きな径の球面形状を有している半球などからできている。また、その材質や構造は、水に対して浮力を有するものであれば特に限定されることはなく、したがってプラスチック製の他、木製などから作ることもでき、また中実、中空のいずれであってもよい。
【0023】
さらに、弁座プレートには、T字型の管継手の排水流入口から排水が流入した時は浮力により弁座から離れて開口部を開放し、排水流入口から排水の流入がない時は自重により弁座へ着座して開口部を閉塞するようにフロートの動きを規制する案内手段が装着される。該案内手段の設置により、フロートはT字型の管継手内での自由な動きが規制され、弁座プレートの開口部を確実に開閉することができるようになる。
【0024】
案内手段は大別して、フロートを周囲から取り囲むことにより間接的にフロートの動きを規制するタイプと、フロートと直結してフロートの動きを直接的に規制するタイプとがある。
【0025】
例えば、フロートの動きを間接的に規制するタイプのもとしては、複数の梁部材、網部材又は側壁に開口部を有する筒体、若しくはこれらを組み合わせることより、天井を含めフロートの周囲を筒状の鳥かごのように取り囲む間接ガイド装置などがある。一方、フロートの動きを直接的に規制するタイプのもとしては、フロートの頂部にフロートから直接延びた棒部材を連結し、フロートと直結された該棒部材をスライド可能に通過させることにより棒部材の水平方向の動きを規制する、換言すれば棒部材の上下運動のみを許容する筒体とから構成される直接ガイド装置などがある。
【0026】
特に後者のタイプのガイド装置の場合、フロートの弁座と接する面のみが開口径より大きな径を有する球面形状や円錐形状で形成されておればよく、必ずしも完全な球形である必要はない。したがって、繭形状のような縦断面が楕円形状の球体や半球の形状を有するフロートを使用することもできる。
【0027】
間接ガイド装置の場合、フロートの周囲を複数の梁部材または側壁に開口部を有する筒体で囲む場合は、球状のフロートが外部へ飛び出さないように各梁部材の間隔および筒体の開口部の大きさをフロートの直径より小さくなるように設定しなければならない。しかしながら、弁座プレートに配置される梁の本数や筒体により形成される側壁の面積は、案内手段の周りを通過する排水の流れを阻害することがないように必要最小限の本数や大きさに抑えられていることが好ましい。
【0028】
また、フロートの周囲を取り囲む案内手段は、典型的にはフロートを外周に配置された梁部材、網部材又は筒体に接触させた状態で、かつフロートの中心を弁座プレートの開口部の中心から最も遠ざかるように配置した時、該フロートの中心(重心)が弁座プレートの開口部の内部領域に位置するように配置される。ただし、弁座プレートが漏斗状の形状を有している場合や開口部へ向けて下向きに傾斜するガイド部材が備え付けられている場合など、開口部周辺に排水の流入がない時にフロートを開口部へ向けて案内する手段が施されている場合、フロートの周囲を取り囲む案内手段の配置は、開口部に対するフロートの中心(重心)位置によらず適当に決定することができる。
【0029】
さらに、本発明では弁座プレートを、T字型管継手の受口とU字型排水トラップ本体の差口先端部との間に固定するリング状の外側弁座プレートと、案内手段が一体的に装着され、かつ中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の内側弁座プレートとへ着脱可能に分割することができる。したがって、この場合は封水保護ユニットを排水トラップの中に組み付けた後においても、外側弁座プレートから内側弁座プレートと一体となった案内手段を容易に取り外すことが可能となり、点検、掃除および部品交換などをする際の作業性が大幅に向上する。
【0030】
また、案内手段は、その上部から点検筒の上部へ向けて延びた点検用ハンドルを具備することができ、ハンドルの形状はI字型、逆L字型又は逆U字型など封水保護ユニットの組み付け、および組付け後、点検筒の上部から点検筒の下部に位置する封水保護ユニットを引き上げる際に便利な形状であればよい。したがって、特に上述されたように弁座プレートが着脱自在に分割されている場合、外側弁座プレートから案内手段および内側弁座プレートを容易に取り外し及び取り付けすることができるようになる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、通常の封水式のU字型排水トラップで得られる封水による臭気の逆流防止効果に加えて、温水器など高温の排水が排出される排水経路においても変形等することなく使用することが可能となり、さらに高温の封水がトラップ内に貯留された場合でも、上流側への封水の蒸発を防止することにより直接的な悪臭の発生や封水の枯渇を防止することができる。そして、何らかの原因で封水が切れた場合でも、下流側排水管からの臭気の逆流を確実に防止することが可能になるという極めて優れた効果が得られる。
【0032】
また、本発明によれば、本発明の排水トラップの基本的な構造をなす部品は市販の規格部品から構成することができ、かつその内部に装着される封水保護ユニットもその弁座プレートをU字型排水トラップ本体とT字型管継手の間に挟み込むことにより固定することができるので、現場での据え付け作業が極めて容易となり、かつ極めて安価に製作することができる。
【0033】
さらに、本発明によれば、本発明の排水トラップに専用の点検筒を設け、かつ排水トラップの内部には着脱可能に分割された封水保護ユニットを固定することができるため、封水保護ユニットの下部に連結されるU字型排水トラップ本体の内部まで点検し完全に掃除等することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態に係る封水保護機能付きのU字型の排水トラップについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0035】
図1は、本発明の一実施例を示す封水保護機能付きのU字型の排水トラップ1の模式的な接続図である。本発明によるU字型の排水トラップ1は、通常、高温の排水が排出される場合のある温水器(図示せず)などの下流側排水経路の途中に設置される。図1において排水経路の最も上流側には、温水器などから排出される排水を集水するための排水ホッパー2が示されており、その下流側はストレート管およびエルボなどの通常の排水管を介して排水トラップ1の上流側排水流入口21へ接続される。また、本実施例の排水トラップ1の下流側排水流出口13は、排水ます3を介して下流側排水本管4へ接続される。
【0036】
図2には、本実施例に係るU字型の排水トラップ1の全体構成を示した断面図が示されている。本実施例の排水トラップ1内において排水の流路を形成する基本的な構成は、耐熱塩化ビニル材料からなるU字型の排水トラップ本体10と、前記U字型排水トラップ本体10の上流側に連結されるT字型の管継手20と、そして前記T字型の管継手20の上部に連結される点検筒30とから構成されている。また、本実施例において基本的な構造をなす部品はすべて市場で入手することができる通常の規格品から構成されているが、必ずしもこのような規格品のみから構成する必要はなく、各構成部品の中の幾つかを結合させてなる一体成形品を含んでいてもよい。
【0037】
本実施例では高温排水による排水トラップ1の変形及び破損を防止するために耐熱塩化ビニル材料が用いられているが、その中でU字型の排水トラップ本体10のみが耐熱温度が90℃程度である耐熱塩化ビニル材料から成形されているのは、該排水トラップ本体10にのみ50〜70℃の高温の排水(封水)が長時間滞留する場合があるからである。したがって、本実施例において高温の排水との接触が比較的短時間で終了するT字型管継手20と高温の排水との接触がない点検筒30は、耐熱温度が60〜65℃である通常の塩化ビニル材料から作られている。
【0038】
この結果、本実施例の排水トラップ1では高価な耐熱塩化ビニル材料の使用が必要最小限度の範囲に抑えられているため、極めて安価に製品を製作することができる。
【0039】
また、本実施例においてT字型の管継手20の上部にさらに点検筒30を連結しているのは、主に後述される封水保護ユニット5の点検および交換などを容易にするためであり、その胴長は本実施例による排水トラップ1の埋設深さ応じて切断することにより調整される。そして点検筒30の頂部には、点検および非点検時の安全の確保のため蓋体40および該蓋体40を着脱可能に固定するための蓋枠41が取り付けられる。
【0040】
次に、図3には、本実施例に係るU字型の排水トラップ1のT字型の管継手20の内部に固定された封水保護ユニット5の断面図が図示されている。図3を参照して理解されるとおり、本実施例の封水保護ユニット5は中心に円形の開口部51を有する円盤状の弁座プレート50と、水に対して浮力を有する球状のフロート60と、そして前記フロート動きを規制する案内手段70とからなり、T字型の管継手20の内部に固定される。
【0041】
封水保護ユニット5のフロート60は、温水器等から排出される排水がT字型の管継手20の側壁に設けられた排水流入口21から流入すると浮力により弁座52から離れて開口部51を開放し、そして排水をその下部へ連結されたU字型の排水トラップ11内へ排出する。一方、T字型の管継手20の排水流入口21から排水の流入がない時は、フロート60は自重により弁座52へ着座して開口部51を閉塞しているので、下部トラップ11内に高温の排水(封水)が滞留している場合であっても該排水の蒸発を防止し、さらには何らかの原因で封水が切れてしまった場合においても、下流側排水管からの臭気の逆流を確実に防止する。
【0042】
また、本実施例では、排水流入口21をT字型の管継手20の側壁に配置することにより該排水流入口21から流入する排水が球状のフロート60の側面へ衝突するように設計されている。このため、一度に多量の排水が流れ込んでくるような場合においても球状のフロート60は、排水により上から押さえ込まれることなく側面から掬い上げられるようにしてスムーズに浮上することができ、排水効率を向上させている。
【0043】
封水保護ユニット5の弁座プレート50は、その外周部53がT字型管継手20の受口22とU字型排水トラップ本体10の差口先端部12との間に挟み込まれることにより固定される。このため、弁座プレート50へ脚71を介して固定されるフロート案内手段70及びその中のフロート60も、弁座プレート50を固定する際に該弁座プレート50を介してT字型管継手20の内部で一体的に支持されている。ただし、弁座プレート50は、必ずしもT字型管継手20とU字型排水トラップ本体10の間に挟み込むことにより固定するタイプに限定されるものではなく、例えばT字型管継手20の側壁に設けられた排水流入口21より下側位置において内壁面から内側に張り出すように一体成形されたタイプや、同じ位置において圧入固定又は接着固定されるタイプのものであってもよい。
【0044】
この結果、本実施例によれば、封水保護ユニット5は排水トラップ1を組み立てる際にU字型排水トラップ本体10とT字型管継手20との間に簡単に取り付けることができ、全体としてもU字型排水トラップ本体10、T字型管継手20、点検筒30および封水保護ユニット5からなる本実施例の排水トラップ1を短時間に組み立てることが可能となる。
【0045】
また、図示しないが、弁座プレート50にはフロート60が開口部51へ着座した時、フロート60と接触する部分にゴムやウレタンなど弾性材料からなるシールリングを設けることができ、又はフロート60の表面を前記弾性材料で被覆するようにしてもよい。このような弾性のあるシール部材をフロート60又は弁座52へ適用すると、フロート60と弁座52の密着性が向上し両者の間のシールをより一層完全なものとすることができる。
【0046】
球状のフロート60は、排水の流れにより弁座プレート50に設けられた開口部51を開閉する弁として作用するものであるため、弁座プレート50の開口径より大きな直径を有する真球でできており、本実施例の場合はプラスチックから成形されている中空の球体である。また、フロート60と案内手段70の脚71との隙間が十分に小さく設定されている場合は、繭形状のような縦断面が楕円形状の球体や半球の形状を有するフロート(いずれも図示せず)を使用することもできる。
【0047】
さらに、弁座プレート50には、T字型の管継手20の排水流入口21から排水が流入した時は浮力により弁座52から離れて開口部51を開放し、排水流入口21から排水の流入がない時は自重により弁座52へ着座して開口部51を閉塞するようにフロート60の動きを規制する案内手段70が装着されている。該案内手段70の設置により、フロート60はT字型の管継手20内での自由な動きが規制され、弁座プレート50の開口部51を確実に開閉することができるようになる。
【0048】
具体的には、本実施例によるフロート60の案内手段70は、フロート60の周囲を複数の梁部材71および該梁部材に支持された天板72とからなる鳥かごのような構造体で取り囲む構造を有している(図5参照)。したがって、各梁部材71の間隔は球状のフロート60が外部へ飛び出さないようにフロート60の直径より小さくなるように設定されている。しかしながら、本実施例の場合、弁座プレート50上に配置されている梁部材71は、案内手段70の周りを通過する排水の流れを阻害することがないように4本に抑えられている。
【0049】
また、フロートの周囲を取り囲む梁部材71は、フロート60を外周に配置された梁部材71へ接触させた状態で、かつフロート60の中心を弁座プレート50の開口部51の中心から最も遠ざかるように配置した時、該フロート60の中心(重心)が弁座プレート50の開口部51の内部領域に位置するように配置されている。ただし、弁座プレート50が漏斗状の形状を有している場合など、開口部51周辺に排水の流入がない時にフロー60トを開口部51へ向けて案内する手段を設けている場合(図示せず)、フロート60の周囲を取り囲む梁部材71の配置は、開口部51に対するフロート60の中心(重心)位置によらず適当に決定することが可能である。
【0050】
さらに、フロートの案内手段には、図4に示されるようなフロート60’の動きを直接的に規制する他のタイプの案内手段70’を採用することも可能である。具体的には、図4に示される案内手段70’は、フロート60’の頂部にフロートから直接延びた棒部材61’を、弁座プレート50から複数の脚71’を介して支持された円形のフランジ部72’を有する筒体73’にスライド可能に通過させることにより、該棒部材61’およびフロート60’の水平方向の動きを規制する、換言すれば棒部材61’およびフロート60’の上下運動のみを許容する構造を有している。したがって、このタイプの案内手段70’の場合、フロート60’の弁座52と接する面は常に同じであるため、弁座52と接する面のみが球面形状や円錐形状で形成されておれば他の部分はどのような形状であってもよいという利点がある。
【0051】
図5には、本実施例に係るU字型の排水トラップ1のT字型の管継手20の内部に固定される分割型封水保護ユニット5の分離された状態を示す斜視図が示されている。本実施例では弁座プレート50が、T字型管継手20の受口22とU字型排水トラップ本体10の差口先端部12との間に固定されるリング状の外側弁座プレート54と、梁部材71を介して案内手段70が一体的に装着されている中心に円形の開口部51を有する円盤状の内側弁座プレート55とへ着脱可能に分割されている。したがって、本実施例の封水保護ユニット5は、排水トラップ1の中に組み付けた後においても、外側弁座プレート54から内側弁座プレート55と一体となった案内手段70を容易に取り外すことができ、点検、掃除および部品交換などをする際の作業性が大幅に向上する。
【0052】
なお、弁座プレート50を分割した場合の外側弁座プレート54と内側弁座プレート55との着脱機構は、装着後、両者を実質的に密閉する着脱機構であれば特に制限されることなく公知の着脱機構を採用することができる。本実施例の場合、両者54,55の着脱機構は、外側弁座プレート54の上に内側弁座プレート55をセットした後、後述する案内手段70のハンドル74を介して内側弁座プレート55を回転することにより、外側弁座プレート54の内周突起部分56と内側弁座プレート55の外周突起部分57及びそれぞれに隣り合う内周突起部分56’と外周突起部分57’とが互いに上下逆となるように係合することにより内側弁座プレート55を外側弁座プレート54へ固定する機構が採用されている(図5参照)。
【0053】
また、本実施例の案内手段70では、上述のようにその上部から点検筒30の上部へ向けて延びた点検ハンドル74を具備しており、これにより外側弁座プレート54から案内手段70および内側弁座プレート55を容易に取り外し及び取り付けすることができるようになっている。なお、ハンドル74の形状はI字型、逆L字型又は逆U字型など封水保護ユニット5の組み付け、および組付け後、点検筒30の上部から点検筒の下部に位置する封水保護ユニット5を引き上げる際に便利な形状であれば特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による一実施例に係る封水保護機能付きのU字型の排水トラップの模式的接続図である。
【図2】図1に示されたU字型の排水トラップの全体構成を示す断面図である。
【図3】図1に示されたU字型の排水トラップの内部に固定された間接ガイドタイプの封水保護ユニットの断面図である。
【図4】U字型の排水トラップの内部に固定された直接ガイドタイプの封水保護ユニットの断面図である。
【図5】図3に示された分割型封水保護ユニット5の分離された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 封水保護機能付きU字型の排水トラップ
2 排水ホッパー
3 排水ます
4 下流側排水本管
5 封水保護ユニット
10 U字型排水トラップ本体
11 排水トラップ
12 差口先端部
13 下流側排水流出口
20 T字型管継手
21 排水流入口
22 受口
30 点検筒
40 蓋体
41 蓋枠
50 弁座プレート
51 開口部
52 弁座
53 外周部
54 外側弁座プレート
55 内側弁座プレート
56,56 内周突起部分
57,57’ 外周突起部分
60,60’ フロート
61’ 棒部材
70,70’ フロート案内手段
71,70’ 梁部材(脚)
72,70’ 天板(フランジ部)
73’ 筒 体
74 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱樹脂材料からなるU字型の排水トラップ本体と、
前記U字型排水トラップ本体の上流側に連結されるT字型の管継手と、そして
前記T字型の管継手の上部に連結される点検筒と、
から構成される排水トラップにおいて、
トラップ内に貯留される封水の蒸発および臭気の逆流を防止するため、前記T字型の管継手は、その内部に前記T字型管継手の受口と前記U字型排水トラップの差口先端部との間に挟み込むことにより固定する、中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の弁座プレートと、
前記弁座プレートの開口径より大きな直径を有し、水に対して浮力を有する球状のフロートと、そして
T字型の管継手の側壁に設けられた排水流入口から排水が流入した時、浮力により弁座から離れて開口部を開放し、排水流入口から排水の流入がない時、自重により弁座へ着座して開口部を閉塞するように前記フロートの動きを規制する、前記弁座プレートへ装着された案内手段と、からなる封水保護ユニットを備えていることを特徴とする前記排水トラップ。
【請求項2】
耐熱樹脂材料からなるU字型の排水トラップ本体と、
前記U字型排水トラップ本体の上流側に連結されるT字型の管継手と、そして
前記T字型の管継手の上部に連結される点検筒と、
から構成される排水トラップにおいて、
トラップ内に貯留される封水の蒸発および臭気の逆流を防止するため、前記T字型の管継手は、側壁に設けられた排水流入口より下側位置において内壁面から内側に張り出すように一体成形された中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の弁座プレートと、
前記弁座プレートの開口径より大きな直径を有し、水に対して浮力を有する球状のフロートと、そして
前記排水流入口から排水が流入した時、浮力により弁座から離れて開口部を開放し、排水流入口から排水の流入がない時、自重により弁座へ着座して開口部を閉塞するように前記フロートの動きを規制する、前記弁座プレートへ装着された案内手段と、からなる封水保護ユニットを備えていることを特徴とする前記排水トラップ。
【請求項3】
耐熱樹脂材料からなるU字型の排水トラップ本体と、
前記U字型排水トラップ本体の上流側に連結されるT字型の管継手と、そして
前記T字型の管継手の上部に連結される点検筒と、
から構成される排水トラップにおいて、
トラップ内に貯留される封水の蒸発および臭気の逆流を防止するため、前記T字型の管継手は、側壁に設けられた排水流入口より下側位置において圧入固定及び/又は接着固定された中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の弁座プレートと、
前記弁座プレートの開口径より大きな直径を有し、水に対して浮力を有する球状のフロートと、そして
前記排水流入口から排水が流入した時、浮力により弁座から離れて開口部を開放し、排水流入口から排水の流入がない時、自重により弁座へ着座して開口部を閉塞するように前記フロートの動きを規制する、前記弁座プレートへ装着された案内手段と、からなる封水保護ユニットを備えていることを特徴とする前記排水トラップ。
【請求項4】
前記弁座プレートは、T字型管継手の内部に固定されるリング状の外側弁座プレートと、案内手段が一体的に装着され、かつ前記外側弁座プレートの内側で該外側弁座プレートと着脱自在に嵌合する中心に円形の開口部を有する円盤状または漏斗状の内側弁座プレートとへ分割されていることを特徴とする請求項1ないし3に記載の排水トラップ。
【請求項5】
前記案内手段は、その上部から点検筒の上部へ向けて延びた点検用ハンドルを備えていることを特徴とする請求項4に記載の排水トラップ。
【請求項6】
前記案内手段は、フロートの周囲を筒状の鳥かごのように取り囲む複数の梁部材、網部材又は側壁に開口部を有する筒体、若しくはこれらの組み合わせからなる間接ガイド装置である請求項1ないし5のいずれかに記載の排水トラップ。
【請求項7】
前記案内手段は、フロートと連結され、かつフロートから直接延びた棒部材と、前記棒部材をスライド可能に通過させることにより棒部材の上下運動のみを許容する筒体とから構成されている直接ガイド装置である請求項1ないし6のいずれかに記載の排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228307(P2009−228307A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75018(P2008−75018)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】