説明

導電性支持基体の再生方法および再生装置

【課題】表面性状を損なうことなく安価で効率よく電子写真感光体ドラムの導電性支持基体を再生する再生方法および再生装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも感光層が形成されその下引き層を有するか有しない円筒形または円柱形の導電性支持基体9を、感光層の外周側部分を溶解可能な第1の溶剤にて外周側部分を溶解して除去し、外周側部分が除去された導電性支持基体9を保持し回転させ、感光層の内周側残部を溶解可能な第2の溶剤を含浸させた剥離部材12を内周側残部の表面に接触させた状態で導電性支持基体9の軸方向に移動させることにより、内周側残部と存在しうる下引き層を導電性支持基体9から拭き取って除去する工程を備える導電性支持基体の再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムに用いられる導電性支持基体の再生方法および再生装置に関する。さらに詳しくは、感光層を導電性支持基体から容易に簡便な方法で剥離して再使用可能な状態に再生する方法および再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体ドラムは、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に広く使用されている。この感光体ドラムは、アルミニウム、銅、ニッケルなどからなる素管(導電性支持基体)の外周面上に、有機や無機の材料からなる感光層を形成したものである。特に、コスト、材料設計の自由度、有毒性などを考慮して有機系の感光層が広く用いられている。
感光層を形成する方法としては、有機感光体塗布液を満たした塗工槽に素管を浸漬させ、その後、一定速度または任意の速度で素管を引き上げることにより、素管の外周面上に感光層を形成する浸漬塗布法(浸漬塗工法ともいう)が広く用いられている。
【0003】
現在、電子写真式画像形成装置はデジタル方式が一般的になり、その光源として半導体レーザーを用いることが主流である。このため、前記素管の表面(外周面)は、レーザー光が感光層で干渉することにより起こる干渉縞を防止する目的で機械加工や化学的な表面処理により粗面化されている。つまり、素管の表面性状は、素管に光学的機能を付与するものであり、良好な画像形成を行うために非常に重要である。
【0004】
また、近年は電子写真式画像形成装置のフルカラー化が急速に進んできている。一般的なフルカラーの画像形成装置は、通常、黒、シアン、マゼンタおよびイエローの4色のトナーを用い、それらを混色することによりフルカラーを実現している。そのため、各色のトナーに対して個別の感光体ドラムが使用されており、感光体ドラムの生産数は増加の傾向にある。
このフルカラー向けの感光体ドラムは、混色時に色ズレなどの異常画像を生じないように、常に安定した性能や高い品質レベルが要求される。このため、素管の外周面に感光層を形成する際に発生する塗布ムラおよび感光層中への微小な異物の混入などの欠陥は、従来以上に厳しく検査され、不合格品は製造不良ドラムとなる。
【0005】
通常、感光体ドラムは、ある一定期間使用すると感光層が消耗し、必要な特性が得られなくなるため、新しい感光体ドラムに交換する必要がある。
回収された使用済みの感光体ドラムおよび前述の製造不良ドラムは、資源の有効活用の観点から原材料として再利用される。
近年、さらなる資源保護、環境負荷の軽減、製造コスト削減のために、製造不良感光体ドラムおよび使用済み感光体ドラムは、原材料として再利用されるのみならず、再使用可能な部材については再使用可能な状態に再生することが望ましい。
【0006】
表面性状を損なわないように素管の外周面から感光層を剥離すれば、感光体ドラム用素管として再使用可能な状態に再生することができる。
素管の再生方法としては、一般的には有機溶剤や界面活性剤などを単独または組み合わせた剥離溶剤に感光体ドラムを浸漬した状態で揺動または超音波洗浄を行うことにより、感光層を溶解して素管から剥離する方法(従来技術1)が多数提案されている。
また、剥離溶剤と共にゴムローラーまたはブレードを用いて感光層を剥離する方法(従来技術2)が提案されている。
【0007】
また、他の再生方法としては、圧縮空気により噴射したドライアイス粒子を噴き付けて素管の表面から感光層を剥離する方法(従来技術3:例えば特許文献1参照)が提案されている。
さらに他の再生方法として、感光体ドラムを膨潤剥離液に浸漬し、膨潤した感光層の下層の下引き層の一端を保持し螺旋状に引き剥がすことにより除去する方法(従来技術4:例えば特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2005−227703号公報
【特許文献2】特開2000−314965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来技術1では、剥離溶剤に可溶な感光材料のみで形成された感光層部分は容易に剥離することができるが、顔料系の感光材料を含む感光層部分の剥離においては剥離ムラが発生し易い。顔料系の感光材料を含む感光層部分を完全に剥離するには、感光体ドラムを剥離溶剤に長時間浸漬する必要がある上、きれいな剥離溶剤で複数回濯ぐ工程が必要であり、溶剤使用量も多くなる。また、感光層が完全に剥離する前に、素管の表面が部分的に白濁し表面性状が不均質な状態になる場合もあり、そうなると良好な画像形成を行うことができなくなる。
【0009】
前記従来技術2では、ゴムローラーやブレードは剥離溶剤を含浸することができないため、前処理として感光層を剥離溶剤で膨潤および溶解するか、剥離溶剤を供給しながら剥離する必要がある。さらに、ゴムローラーやブレードは、剥離した感光層の構成物質を保持しにくいため、剥離効率が悪く、剥離に使用したゴムローラーやブレードの清掃も必要となるため、時間的にも溶剤の使用量的にも効率が悪いという問題がある。
【0010】
前記従来技術3では、ドライアイスを取り扱うための設備や噴き付け装置が必要となるため、設備の導入に費用がかかる。さらに、ドライアイスは超低温であり、また昇華して見えなくなるため維持管理も難しく、安全性にも問題がある。
【0011】
前記従来技術4では、下引き層が薄い場合や金属酸化物などの顔料を含んでいる場合は、下引き層自体の強度が小さいため千切れ易く、そのため素管から綺麗に引き剥がすことは困難である。また、下引き層とその上層の電荷発生層の接着力が小さい場合は、電荷発生層のみが引き剥がされてしまい下引き層は剥離されないという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、表面性状を損なうことなく安価で効率よく電子写真感光体ドラムの導電性支持基体を再生する再生方法および再生装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かくして、少なくとも感光層が形成されその下引き層を有するか有しない円筒形または円柱形の導電性支持基体を、前記感光層の外周側部分を溶解可能な第1の溶剤にて前記外周側部分を溶解して除去し、該外周側部分が除去された前記導電性支持基体を保持し回転させ、感光層の内周側残部を溶解可能な第2の溶剤を含浸させた剥離部材を前記内周側残部の表面に接触させた状態で導電性支持基体の軸方向に移動させることにより、内周側残部と存在しうる前記下引き層を導電性支持基体から拭き取って除去する工程を備え、前記剥離部材における前記軸方向の幅をa(mm)、剥離部材における導電性支持基体の円周方向の長さをb(mm)、導電性支持基体の回転数をc(rpm)、剥離部材の軸方向の移動速度をd(mm/sec)、導電性支持基体の円周方向の長さをe(mm)としたとき、式(1)
3≦(a/d)×(c/60)×(b/e)≦60 ・・・(1)
を満足する導電性支持基体の再生方法が提供される。
【0014】
また、本発明の別の観点によれば、前記請求項1に記載の導電性支持基体の再生方法によって前記感光層の内周側残部と存在しうる下引き層を除去する際に用いられる導電性支持基体の再生装置であって、前記感光層の外周側部分を除去した後の導電性支持基体を保持し回転させる保持回転手段と、感光層の内周側残部を溶解可能な第2の溶剤を含浸可能でかつ該第2の溶剤に不溶な可撓性素材からなる剥離部材と、前記剥離部材を保持しかつ前記内周側残部の表面に接触可能に昇降させる昇降手段と、剥離部材を内周側残部に接触させた状態で前記昇降手段を導電性支持基体の軸方向に移動させる移動手段とを備えた導電性支持基体の再生装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面性状を損なうことなく直ちに再使用可能な状態に効率よく安価に電子写真感光体ドラムの導電性支持基体を再生することができるため、使用済みおよび製品不良の導電性支持基体を原材料としてリサイクルして、再び導電性支持基体として製造し直すのに比べて、時間的、エネルギー的、コスト的な効率が大幅に向上する。本発明は、特に、従来技術では剥離が難しかった顔料系材料を含む感光層部分を導電性支持基体から再生可能な状態にムラなくきれいに剥離する再生方法および再生装置として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(導電性支持基体の再生方法の説明)
本発明の導電性支持基体の再生方法は、少なくとも感光層が形成されその下引き層を有するか有しない円筒形または円柱形の導電性支持基体を、前記感光層の外周側部分を溶解可能な第1の溶剤にて前記外周側部分を溶解して除去し、該外周側部分が除去された前記導電性支持基体を保持し回転させ、感光層の内周側残部を溶解可能な第2の溶剤を含浸させた剥離部材を前記内周側残部の表面に接触させた状態で導電性支持基体の軸方向に移動させることにより、内周側残部と存在しうる前記下引き層を導電性支持基体から拭き取って除去する工程を備え、前記剥離部材における前記軸方向の幅をa(mm)、剥離部材における導電性支持基体の円周方向の長さをb(mm)、導電性支持基体の回転数をc(rpm)、剥離部材の軸方向の移動速度をd(mm/sec)、導電性支持基体の円周方向の長さをe(mm)としたとき、式(1)
3≦(a/d)×(c/60)×(b/e)≦60 ・・・(1)
を満足することを特徴とする。
【0017】
つまり、本発明者らは、感光体ドラムのリサイクルについて鋭意実験を重ねた結果、顔料を含まない外周側の感光層部分は第1の溶剤による溶解で容易かつ効率よく除去でき、顔料を含む除去し難い内周側の感光層部分に対しては、第2の溶剤を含浸させた剥離部材にて拭き取って除去することで容易かつ効率よく除去できることを見出し、さらに、第2の溶剤および剥離部材の使用量の低減と拭き取り時間の短縮を図りながら、導電性支持基体の表面性状をよりよいものにするには、前記式(1)を満たすことが必要であることを見出して、本発明を発明するに至った。
【0018】
したがって、前記式(1)から逸脱して顔料を含む感光層部分の拭き取りを行なうと、剥離ムラ、導電性支持基体の表面性状の劣化、導電性支持基体上に感光層を再塗布した再生感光体ドラムの外観不良や塗布欠陥の発生、再生感光体ドラムを用いて形成したトナー画像の画像不良等の問題が生じる傾向にある。
【0019】
本発明の導電性支持基体の再生方法は、主として導電性支持体の外周面上に、顔料を含む下引き層を介して、顔料を含む電荷発生層とこの上に積層された(顔料を含まない)電荷輸送層とを有してなる感光層が形成された感光体ドラムに適しているが、下引き層を有していない感光体ドラムおよび感光層上にさらに表面保護層が形成された感光体ドラムにも適用可能である。
そして本発明は、特に、導電性支持基体から顔料をそれぞれ含んだ電荷発生層および下引き層を除去する点に特徴を有している。下引き層を有さない場合は無論のことである。ここで、本発明において、前記「感光層の外周側部分」とは、主として電荷発生層の上に積層された電荷輸送層を含む全ての層を意味し、電荷発生層上に表面保護層が形成されている場合はこれも含み、かつ、電荷発生層の外周側部分が含まれていることを否定するものではない。つまり、第1の溶剤によって電荷発生層の外周側部分が溶解除去されても構わない。また、本発明において、前記「感光層の内周側残部」とは、主として電荷発生層から下の全ての層を意味し、下引き層を有する場合はこれも含む。
【0020】
なお、第1の溶剤を用いた感光層の外周側部分の除去を省略し、第2の溶剤を含浸させた剥離部材を用いて感光層全体および下引き層を拭き取ることも可能ではある。しかしながら、感光層の外周側部分の電荷輸送層は、電荷発生層および下引き層に比べ膜厚が大きいため、剥離部材が拭取り範囲全長を移動する前に剥離部材の拭き取り可能な容量(能力)に達してしまう。よって、1つの剥離部材での拭き取りは困難なため、剥離部材を頻繁に交換する手間および剥離部材の使用量が増加してしまい、現実的な方法ではない。
そのため、本発明では、前処理として感光層の外周側部分を第1の溶剤にて溶解除去して拭取り除去する膜の膜厚を薄くし、その後に第2の溶剤を含浸させた剥離部材にて容易かつきれいに残部を拭き取るようにしている。この拭き取りが適用可能な膜の膜厚としては40μm程度以下である。
【0021】
上述のように、感光層の下層に下引き層を有している場合、一般的に下引き層の膜厚の方が電荷発生層の膜厚よりも厚いため、拭き取りに使用する第2の溶剤としては下引き層を溶解可能な溶剤を主溶剤として含んでいることが好ましく、電荷発生層を溶解可能な溶剤が混合していてもよい。
【0022】
本発明において、感光層の外周側部分を除去する際に、第1の溶剤に感光層を含む導電性支持基体を浸漬し、かつ第1の溶剤にて濯ぐことによって前記外周側部分を除去する工程を含み、この工程を1回または2回以上繰り返すようにしてもよい。また、第1の溶剤に導電性支持基体を浸漬した状態において、感光層の外周側部分を短時間で膨潤させる上で、導電性支持基体を振動または回転させる、第1の溶剤を攪拌する、第1の溶剤を超音波で振動させる、あるいはこれらを組み合わせるようにしてもよい。
【0023】
感光層上に表面保護層を有さない場合、第1の溶剤として電荷輸送層を溶解可能な溶剤を用いて浸漬および濯ぎの工程を基本的に1回行えばよい。感光層上に表面保護層が形成されている場合は、第1の溶剤として表面保護層を溶解可能な溶剤と電荷輸送層を溶解可能な溶剤が用いられ、まず表面保護層を溶解可能な溶剤を用いて浸漬および濯ぎの工程を行って表面保護層を溶解除去し、次に電荷輸送層を溶解可能な溶剤を用いて浸漬および濯ぎの工程を行って電荷輸送層を溶解除去する。なお、表面保護層には無機フィラーが含まれている場合があるが、無機フィラーの添加量は少量であるため、前記方法で表面保護層を容易に除去することができる。
【0024】
本発明が適用可能な導電性支持基体の材料および外周面の表面状態としては特に限定されるものではないが、例えば、導電性支持基体の外周面のJIS B0601-1994に基く十点平均粗さRzは0.3以上3.0以下が好ましく、0.5以上2.0以下がさらに好ましい。
なお、十点平均粗さRzが0.3以上3.0以下の範囲外では、感光層の内周側残部を剥離した後の導電性支持基体上に感光層(任意に下引き層を含む)を再塗布した再生感光体ドラムは、その表面にクスミが見られる傾向があるが、このような美観的な問題を除いては感光体ドラムとして十分機能できる程度に再生することは可能である。
【0025】
本発明において、導電性支持基体上の感光層の内周側残部をムラ無く拭き取る上で、剥離部材の電荷発生層への接触圧力fとしては2.0×10-3kPa以上4.0×10-2kPa以下に設定することができ、3.0×10-3kPa以上3.0×10-2kPa以下であることが好ましい。
なお、接触圧力fが2.0×10-3kPa以上4.0×10-2kPa以下の範囲外では、前記内周側残部の剥離後の導電性支持基体上に感光層(任意に下引き層を含む)を再塗布した再生感光体ドラムは、その表面に乾きシミが見られる傾向があるが、このような美観的な問題を除いては感光体ドラムとして十分機能できる程度に再生することは可能である。
【0026】
本発明が適用可能な感光体ドラムは円筒形または円柱形である。
したがって、再生しようとする感光体ドラムの外径寸法および長さに応じて、剥離部材の幅aおよび長さb、感光体ドラムの回転数c、剥離部材の移動速度dを設定する。
例えば、感光体ドラムの外径が30mm、長さが357mmであるとき、前記式(1)を満たすように、剥離部材の幅aを60〜180mmにかつ長さbを31〜94mmに設定し、感光体ドラムの回転数cを100〜200rpmに設定し、剥離部材の移動速度dを10〜11mm/secに設定すればよい。
【0027】
上述の導電性支持基体の再生方法による導電性支持基体の再生は、以下で説明する再生装置を用いて行なうことができる。以下、図面を参照しながら、導電性支持基体の再生装置について説明する。
【0028】
図1は本発明の導電性支持基体の再生装置の一実施形態を示す概略斜視図であり、図2は図1の再生装置による感光層の内周側残部の剥離開始状態を示す概略斜視図であり、図3は図1の再生装置による感光層の内周側残部の剥離中状態を示す部分横断面図である。なお、図1〜図3において、導電性支持基体の外周面全体には感光層の内周側残部が存在しているが、その符号は省略している。
【0029】
この再生装置は、感光層の外周側部分を除去(場合によって表面保護層も除去)した後の導電性支持基体9を保持し回転させる保持回転手段と、感光層の内周側残部を溶解可能な第2の溶剤を含浸可能でかつ該第2の溶剤に不溶な可撓性素材からなる剥離部材12と、剥離部材12を保持しかつ内周側残部の表面に接触可能に昇降させる昇降手段17と、剥離部材12を内周側残部に接触させた状態で昇降手段17を導電性支持基体9の軸方向に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とし、保持回転手段にて保持した導電性支持基体9を回転させ、かつ第2の溶剤を含浸させた剥離部材12を昇降手段17にて所定の接触圧力で感光層の内周側残部に接触させながら、移動手段18にて導電性支持基体9の軸方向の一端から他端へ向かって剥離部材12を所定の移動速度で移動させて、内周側残部を導電性支持基体9から拭き取って除去するように構成されている。
【0030】
さらに詳しく説明すると、この再生装置は、保持回転手段、昇降手段17および移動手段18を上載する基台10を備える。
保持回転手段としては、感光層の内周側残部に接触しないよう、導電性支持基体9の軸方向両端を保持し回転できる構成であれば特に限定されるものではない。
導電性支持基体9の保持方法は、エアーピッカー等により感光体ドラムの内面をチャッキングする方法、または、三角コーンやフランジにより導電性支持基体9を軸方向の両端より挟み込む方法、上述の方法を組み合わせた方法等が挙げられる。特に、内面チャックとフランジによる挟み込みを組み合わせた保持方法は、感光層の内周側残部剥離時の回転精度に優れ、剥離部材12との接触を精度よく保てるため好ましい。
【0031】
本実施形態では、保持回転手段は、導電性支持基体9の軸方向の前記一端および他端を挟み込んで保持する回転可能な第1保持部13Aおよび第2保持部13Bと、第1保持部13Aおよび第2保持部13Bの少なくとも一方を回転させるモータ14とを有する構成の場合を例示している。
【0032】
第1保持部13Aと第2保持部13Bとで導電性支持基体9を挟み込んで保持するには、例えば、第1保持部13Aおよび第2保持部13Bのうち一方の保持部は基台10に固定され、他方の保持部は一方の保持部と共働して導電性支持基体9を軸方向から挟み込むよう移動可能に基台10に取り付けられた構成により達成することができる。
この場合、固定側の保持部をモータ14にて回転させることが装置構造を簡素化できる上で好ましく、本実施形態では第1保持部13Aを基台10に固定し、第2保持部13Bを基台10に移動可能に取り付け、モータ14にて第1保持部13Aを回転させるように構成した場合を例示している。
【0033】
さらに、各保持部を詳しく説明すると、剥離開始側である導電性支持基体9の一端側の第1保持部13Aは、水平軸心周りに回転する円柱形の剥離開始側フランジ13Aaと、剥離開始側フランジ13Aaの先端面(第2保持部13Bと対向する端面)に一体状に連設された保持突起部13Abと、剥離開始側フランジ13Aaの基端を水平軸心周りに回転可能かつ着脱可能に支持する支持部13Acとを有している。
なお、本実施形態では、支持部13Acの内部にモータ14が配置された場合を例示しているが、モータ14は支持部13Acの外部に配置されてもよい。また、モータ14は、剥離動作に耐えうる回転トルクを有していればよく、さらには、回転数(回転速度)を任意に調整可能であることが好ましい。
【0034】
剥離開始側フランジ13Aaは、導電性支持基体9の外径と同じ外径で、かつ剥離部材12の幅aの1/5倍以上1倍以下の長さに設定されている。このとき、剥離開始側フランジ13Aaの外径と導電性支持基体9の外径が同じとは、剥離部材12が剥離開始側フランジ13Aaの表面と電荷発生層の表面との間をスムーズに移動できる程度であって、外径差が−0/+100μmの範囲が好ましい。なお、剥離終了側フランジ13Baについては、外径差が−100/+0μmの範囲が好ましい。
このように構成すれば、図2に示すように、感光層の内周側残部の剥離を開始する準備状態において、昇降手段17によって剥離部材12を降下させて剥離開始側フランジ13Aaの上面に所定の接触圧力fで接触させることができ、この接触圧力fを維持したままモータ14にて導電性支持基体9を回転しかつ移動手段18にて剥離部材12を軸方向に移動させることにより、感光層の内周側残部の拭き取り始めの剥離条件を同一にできる。
【0035】
つまり、剥離開始側フランジ13Aaの位置から剥離を開始することで感光層の内周側残部全体にわたって接触圧力および移動速度を一定条件にすることができ、剥離ムラおよび剥離残しを防止することができる。
さらに、剥離開始側フランジ13Aaが導電性支持基体9と同一径であるため、剥離開始側フランジ13Aaと導電性支持基体9との間に段差が生じず、前記一定条件での拭き取りをスムーズに行うことができる。
【0036】
保持突起部13Abは、円筒形の導電性支持基体9に対応したものであって、導電性支持基体9の一端側(剥離開始側)の開口部に隙間無く挿入される外径を有する円柱形に形成されている。つまり、保持突起部13Abは、導電性支持基体9の一端側(剥離開始側)の開口部に隙間無く挿入されて開口部付近の内面を支持するものである。
【0037】
支持部13Acは、基台10に固定された固定部と、固定部に軸受を介して水平軸心周りに回転可能に支持されたシャフト部とを有し、シャフト部は、一端がモータ14のシャフトと連結され、他端には雄ネジが形成されている。一方、剥離開始側フランジ13Aaの基端面の中心位置には、シャフト部の雄ネジと螺合するネジ穴が形成されている。
なお、保持突起部13Abを有する剥離開始側フランジ13Aaは、再生しようとする導電性支持基体9の外径および開口部の内径に応じて交換できるよう、異なるサイズのものが複数備えられていてもよい。
【0038】
剥離終了側である導電性支持基体9の他端側の第2保持部13Bは、水平軸心周りに回転する円柱形の剥離終了側フランジ13Baと、剥離終了側フランジ13Baの先端面(第1保持部13Aと対向する端面)に一体状に連設された保持突起部13Bbと、剥離終了側フランジ13Baの基端を水平軸心周りに回転可能に支持する支持部13Bcと、支持部13Bcを前記水平軸心と平行に移動させるガイドレール13Bdとを有している。
【0039】
剥離終了側フランジ13Baは、導電性支持基体9の外径と同じ外径で、かつ剥離部材12の前記幅a以上の長さを有している。この構成により、剥離終了側フランジ13Baまで剥離部材12の全体を移動させて感光層の内周側残部の剥離を終了することができ、感光層の内周側残部の拭き取り終わりの剥離条件を同一に保つことができる。つまり、感光層の内周側残部の他端側で剥離部材12の移動を停止して引き上げると、感光層の内周側残部の剥離ムラ、拭き残しおよび拭き取った膜物質の再付着が生じるおそれがあるが、剥離部材12全体を剥離終了側フランジ13Baの位置まで移動させれば感光層の内周側残部全体にわたって剥離条件を一定にすることができ、剥離ムラ、拭き残しおよび再付着を防止することができる。この場合も、剥離終了側フランジ13Baが導電性支持基体9と同一径であるため、剥離終了側フランジ13Baと導電性支持基体9との間に段差が生じず、前記一定条件での拭き取りをスムーズに行うことができる。
【0040】
保持突起部13Bbは、第1保持部13Aの保持突起部13Abと同様に、円筒形の導電性支持基体9の他端側(剥離終了側)の開口部に隙間無く挿入される外径を有し、その開口部付近の内面を支持するものである。
【0041】
支持部13Bcは、後述するガイドレール21に沿って走行可能な移動部と、移動部に軸受を介して水平軸心周りに回転可能に支持されたシャフト部とを有し、シャフト部は一端に雄ネジが形成されている。一方、剥離終了側フランジ13Baの基端面の中心位置には、シャフト部の雄ネジと螺合するネジ穴が形成されている。また、支持部13Bcは、第1および第2保持部13A、13Bにて導電性支持基体9を挟持した位置で固定されるよう、図示しない固定部材が設けられている。この固定部材としては、例えば、支持部13Bcの外面に取り付けられたL字形部材と、L字形部材の水平片部に形成されたネジ穴に螺着されたネジ部材とを有し、固定位置においてネジ部材を基台10の上面に押し付けて支持部13Bcを固定する機構が挙げられる。
なお、保持突起部13Bbを有する剥離終了側フランジ13Baも、再生しようとする導電性支持基体9の外径および開口部の内径に応じて交換できるよう、異なるサイズのものが複数備えられていてもよい。
【0042】
ガイドレール21は、第1保持部13Aの剥離開始側フランジ13Aaの軸心と平行に基台10上に敷設されており、このガイドレール21上支持部13Bcが走行可能に、かつ剥離終了側フランジ13Baの軸心を剥離開始側フランジ13Aaの軸心と一致させるようにして上載されている。
【0043】
なお、感光体ドラムは円筒形のものが主流であるため、本再生装置では円筒形導電性支持基体9の導電性支持基体を保持する機構を例示したが、第1保持部および第2保持部にて円柱形の感光体ドラムを保持するように構成することも可能である。
この場合、支持基体9の端部(両端)が回転駆動用フランジ13Ab、13Bbが勘合できるようになっていれば特に問題はない。
【0044】
昇降手段17は、後述する移動手段18のガイドレール18aに沿って走行可能に設けられた移動部17aと、移動部17aに沿って上下方向にスライド可能に取り付けられた倒立L字形の昇降部17bと、剥離部材12を保持する剥離部材保持部17cと、剥離部材保持部17cを回転手段の剥離開始側フランジ13Aaの上方に位置させるよう剥離部材保持部17cを前記昇降部17bに連結する連結部17dと、前記移動部17aと昇降部17bとの間に設けられた図示しない昇降機構部とを備えている。
【0045】
前記昇降機構部としては、ボールねじ機構あるいはラック・ピニオン機構等が挙げられる。図1において、符号17eは、移動部17aに対して昇降部17bを上下動させるための昇降機構部の回転つまみである。
【0046】
剥離部材保持部17cは、感光層の内周側残部の拭き取り時に剥離部材12が外れたりずれたりしないように保持し、かつ剥離部材12が感光層の内周側残部表面に均一に接触できるように構成されていればよい。剥離部材保持部17cは、例えば、図3に示すように、連結部17dと連結された板状部17caと、板状部17caに剥離部材12の折り曲げた端部の複数箇所を掴むクリップ部17cbとを有する構成とすることができる。また、板状部は、導電性支持基体9の外周面の曲面に沿った円弧形状とすることで、剥離部材12の下面全体を均一な圧力で感光層の内周側残部に接触させることができ、かつ接触面積を増加できる上で好ましいが、平板形の板状部でも拭取り可能である。また、筒材を半分に縦割りした2つの円弧形状の板状部によって導電性支持基体9の全周に沿うように構成し、剥離部材12が感光層の内周側残部の全周と接触できるようにしてもよい。
【0047】
昇降手段17によって剥離部材12を感光層の内周側残部表面(電荷発生層)へ所定圧力で接触させる際の接触圧力の調整は、例えば以下のようにして行うことができる。
剥離部材保持部17cにて保持できるサイズの剥離部材12を剥離開始側フランジ13Aaに適当な接触圧力で押圧し、この状態のときの剥離部材12の剥離開始側フランジ13Aaへの接触面積を測定すると共に、この状態から剥離部材12を剥離部材保持部17cと剥離開始側フランジ13Aaの間から引き出すときの引出し荷重を例えばバネ量りにて測定し、接触面積と引出し荷重とから接触圧力を算出することができる。このとき、第2の溶剤を含浸させた剥離部材12で測定することが好ましい。このようにして、予め幾つかのパターンで接触面積および引出し荷重を測定しておく。そして、実際の剥離工程時では、使用する剥離部材12のサイズによって接触面積は概ね決まるため、前記接触圧力と引出し荷重との関係から算出される所定の接触圧力となるよう、所定の引出し荷重となるまで昇降手段17にて剥離部材12を電荷発生層に押圧する。
【0048】
移動手段18は、第2保持部13Bのガイドレール13Bdと平行に基台10上に敷設された前記ガイドレール18aと、昇降手段17の移動部17aと連結された連結部18bと、連結部18bを介して移動部17aをガイドレール18aに沿って往復移動させる往復動機構部18cとを備える。
往復動機構部18cとしては、ボールネジ機構、単軸のロボットステージ、電動シリンダー、エアーシリンダーなどを用いて、剥離動作開始位置や剥離動作終了位置の設定が可能で、かつ移動速度を任意に設定できるように構成することができる。
【0049】
前記剥離部材12としては、第2の溶剤を含浸でき、第2の溶剤に不溶であり、かつ電荷発生層表面への接触の際の密着性が良好な柔らかい可撓性素材からなり、硬度は導電性支持基体9の表面性状が変化しないように導電性支持体9の硬度と比較して十分小さければよく、さらには第2の溶剤にて拭き取られた膜物質を良好に保持できる素材が好ましい。このような可撓性素材としては織布、不織布、綿またはスポンジ(海綿を含む)が挙げられ、これらの中でも繊維間に適度の空隙を有し、耐溶剤性にも優れるとの理由で不織布ベンコット(旭化成せんい株式会社製)が好ましい。
第2の溶剤としては、感光層の内周側残部の結着樹脂を膨潤および溶解することが可能で、導電性支持基体9を侵食しないものが使用できる。このため、電荷発生層および/または下引き層の溶媒として用いた溶剤を使用すればよい。
【0050】
このような構成の再生装置によれば、感光層の内周側残部に接触することなく導電性支持基体9を保持し回転させることが可能であり、第2の溶剤を含浸させた剥離部材12を保持して電荷発生層に対して均一な圧力となるように接触させることができ、回転している導電性支持基体9の軸方向に剥離部材12を移動させることが可能となる。感光層の内周側残部は剥離部材12に含浸した第2の溶剤により膨潤および溶解し、導電性支持基体9を回転させることにより剥離される。この状態で剥離部材12を導電性支持基体9の軸方向に移動させることにより感光層の内周側残部をムラ無く拭き取ることができる。この際、剥離部材12の幅をa(mm)、剥離部材12の長さをb(mm)、導電性支持基体9の回転数をc(rpm)、剥離部材12の軸方向の移動速度をd(mm/sec)、導電性支持基体9の円周長さをe(mm)としたとき、3≦(a/d)×(c/60)×(b/e)≦60を満足させる。
【0051】
剥離動作が終了した後、保持回転手段の回転を停止し、再生した導電性支持基体から剥離部材12を上昇させて離接する。再生した導電性支持基体(素管)を第1および第2保持部13A、13Bより取り外して再生処理の一連の動作が終了する。
感光層、下引き層等を剥離した導電性支持基体は剥離性、表面性状および外観の検査が行われる。
剥離性の評価方法としては、剥離不良や剥離ムラは目視検査を行えばよい。微量な残留膜に対しては、結着樹脂として使用される有機物は赤外光に固有の吸収を有することを利用して赤外の分光吸収量を測定すればよく、定量的な評価が行いやすい。また、分光吸収量の測定は、剥離不良か導電性支持基体の表面性状の変化か区別がつきにくいときにも有効である。
【0052】
表面性状の評価方法は、表面性状を変化させないため非破壊で検査する必要がある。擦りキズ、円周キズのように見えるものは目視検査で行えばよく、表面粗さの確認はレーザー式の非接触の表面粗さ測定装置を使用して検査することができる。また、未使用の導電性支持基体を基準とした分光反射率の差分による評価、液体による接触角を計測して導電性支持基体の表面張力の変化による評価、あるいはこれらの方法を組み合わせて行う方法が挙げられる。
剥離性、表面性状および外観検査に合格した導電性支持基体(合格品)は、通常生産と同様の感光体製造に再使用可能である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0053】
(感光体ドラムの説明)
図4は本発明に適用可能な電子写真感光体ドラムを示す縦断面図である。
この感光体ドラムは、円筒形の前記導電性支持基体(素管)9および導電性支持基体9の外周面に形成された感光層を含む積層膜からなる感光体ドラム本体9aと、感光体ドラム本体9aの両端の開口部を施蓋する一対のフランジ9bとから構成されている。
使用済みの感光体ドラムを再生する場合は、図5に示すように、一対のフランジ9bを感光体ドラム本体9aから取り外した後、上述の再生装置にセットして再生処理を行えばよい。また、導電性支持基体9に損傷、汚損がない製造不良ドラムも同様に再生処理を行うことができる。
【0054】
図6および図7は、本発明に適用可能な各種の感光体ドラムの部分断面図を示す。
図6に示す感光体ドラムは、導電性支持基体9の外周面上に、下引き層2と、電荷発生材料を含む電荷発生層3および発生した電荷を輸送する材料を含む電荷輸送層4とからなる感光層5とがこの順に積層されてなる。この様な積層型の感光体ドラムが広く用いられている。
図7に示す感光体ドラムは、図6に示す感光体ドラムの感光層5上にさらに表面保護層6が積層されてなる。
【0055】
<導電性支持基体(素管)>
導電性支持基体9の材料としては、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス、真鍮等が用いられている。なお、これらの材料を円筒形または円柱形に加工して導電性支持基体が製造されている。この導電性支持基体9の表面は、レーザー光が感光層で干渉することにより起こる干渉縞を防止する目的で機械加工や化学的な表面処理により粗面化されており、例えばJIS B0601-1994に基づく十点平均粗さRzが0.5以上2.0以下とされている。
【0056】
<下引き層(中間層)>
下引き層2は、導電性支持基体9上に、素管表面の傷や凹凸の被覆、電荷注入した感光層における帯電性の劣化防止等の目的で、導電性支持基体9への下地層として設けられている。
下引き層2の材料としては、ポリアミド、共重合ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、フェノール樹脂、カゼイン、セルロース、ゼラチン等が挙げられ、これらを水および溶剤に溶解し、導電性支持基体9上に塗布する。下引き層2の材料としては、特に、アルコール可溶性の共重合ナイロンが望ましい。
上記溶剤としてはメタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコール類、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤とアルコール溶剤の混合溶剤等が用いられる。
【0057】
下引き層2の体積抵抗率の調整、低温および低湿環境下での繰り返しエージング特性の向上等を目的として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、シリカ、酸化アンチモン等の無機顔料が下引き層2中に含まれていてもよい。この場合、顔料と樹脂の重量比が60/40〜95/5程度となるように樹脂中に無機顔料を分散含有させることが好ましい。
この下引き層6は、膜厚が0.3〜5.0μm程度になるように、前記材料と溶媒(水および溶剤)と任意に無機顔料とを溶解分散混合した下引き層材料液を導電性支持基体9上に塗布することが好ましい。
【0058】
<電荷発生層>
電荷発生層3は、光照射により電荷を発生する電荷発生材料を主成分とし、バインダ樹脂、必要に応じて公知の結合剤、可塑剤、増感剤等から形成される。
電荷発生材料としては、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物等のペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノン等の多環キノン系顔料、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格、ジスチリルカルバゾール骨格等の骨格を有するアゾ顔料、フローレン環及びフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンを含有するビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料等が挙げられる。
【0059】
電荷発生材料のバインダ樹脂としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。これらは、1種類を単独または2種類以上を併用して使用することができる。
【0060】
電荷発生材料用バインダ樹脂の有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらは、1種類を単独または2種類以上を併用して使用することができる。
【0061】
電荷発生材料をバインダ樹脂と必要に応じて他の添加剤と共に有機溶媒に溶解分散した電荷発生層形成材料液を調製する際、電荷発生材料の割合は、電荷発生層形成材料液全体の30〜90重量%程度が好ましい。また、電荷発生層形成材料液を下引き層6上に塗布する際は、電荷発生層7の膜厚が0.1〜5μm程度になるように塗布することが好ましい。
【0062】
<電荷輸送層>
電荷輸送層4は、電荷発生層7で生じた電荷を輸送する能力を持つ電荷輸送材料を主成分とし、バインダ樹脂、必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤等の添加剤から形成される。
【0063】
電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルメタート及びその誘導体、ビレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルビレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキソジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルビラゾリン、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物等の電子供与性物質、或いはフルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インテノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インテノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ〔C〕シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノン等の電子需要性物質等が挙げられる。
【0064】
電荷輸送材料のバインダ樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリスルホン等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは、1種類または2種類以上を併用することができる。
【0065】
電荷輸送材料用バインダ樹脂の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶剤が挙げられ、これらは1種類または2種類以上を併用して使用することができる。
【0066】
電荷輸送材料をバインダ樹脂と必要に応じて他の添加剤と共に有機溶媒に溶解分散して電荷輸送層形成材料液を調製する際、電荷輸送材料の割合は、電荷輸送層形成材料液全体の3〜15重量%程度であることが好ましい。また、電荷輸送層形成材料液を電荷発生層3上に塗布する際は、電荷輸送層4の膜厚が5〜50μm程度になるように塗布することが好ましい。
【0067】
<表面保護層>
表面保護層6は、感光層5の耐久性を向上させる機能を有し、樹脂などで構成され、感光体の応答性を向上させるために、電荷輸送物質を含んでもよい。
表面保護層6のバインダ樹脂は、電荷発生層3に含まれるものと同様のバインダ樹脂の1種または2種以上を使用できる。
電荷輸送物質は、電荷輸送層4に含まれるものと同様の電荷輸送物質の1種または2種以上を使用できる。
表面保護層6のバインダ樹脂の有機溶剤は、電荷発生層形成材料液に用いられるものと同様の溶剤の1種または2種以上を使用できる。
【0068】
表面保護層には、耐摩耗性を向上する目的でフィラーを添加するのが好ましい。
フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、アモルファスカーボン粉末など有機性フィラー;銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウムなどの金属酸化物、チタン酸カリウムなどのチタン酸のアルカリ金属塩などの無機性フィラーが挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性の観点から無機性フィラーが好ましい。無機性フィラーは好適な硬さを有するので、表面保護層に無機性フィラーを添加することによって、特に優れた耐摩耗性を付与することができる。無機性フィラーの中でも、金属酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンが特に好ましい。
表面保護層中のフィラーの含有量は、表面保護層を構成する全固形分の5〜50重量%であるのが好ましく、10〜30重量であるのが特に好ましい。
表面保護層21の膜厚は特に制限されないが、0.1〜10μm程度が好ましい。
【0069】
下引き層2、電荷発生層3、電荷輸送層4および表面保護層6の塗工方法としては、浸漬塗工、ブレード塗工、スプレー塗工等、様々な塗工方法が挙げられる。塗工後に加熱乾燥や熱処理を行うことで感光体ドラムを作成することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、これにより本発明は何ら限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
まず、再生に用いられる感光体ドラムについて説明する。
外径30mm、長手方向の長さ357 mm、表面粗さRz=1.0のアルミニウム製円筒形素管(導電性支持基体)の外周面上に、下引き層を形成した。この際、酸化チタン(TTO55A:石原産業社製)10重量部および共重合ナイロン(CM8000:東レ社製)10重量部を、メタノール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して、下引き層の形成材料となる下引き層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布槽に満たし、塗布液中に素管を浸漬した後引上げ、自然乾燥して層厚1.5μmの下引き層を形成した。
【0072】
続いて、下引き層の上に電荷発生層を形成した。この際、結晶型のオキソチタニウムフタロシアニン結晶2重量部と、ブチラール樹脂(積水化学社製:エスレックBM−2)1重量部と、メチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散して、電荷発生層の形成材料となる電荷発生層用塗布液を調製した。この塗布液を、下引き層の場合と同様の浸漬塗布法にて、先に形成した下引き層上に塗布し、自然乾燥して層厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0073】
次に、電荷発生層の上に電荷輸送層を形成した。この際、下記の式(2)
【化1】

で表される、電荷輸送材料5重量部と、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂G400(出光興産株式会社製)9重量部と、酸化防止剤としてスミライザーBHT(住友化学株式会社製)0.05重量部とを混合し、テトラヒドロフラン47重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調製し、浸漬塗布法にて、電荷輸送層膜を形成し、その後、温度130℃で1時間熱処理して、層厚25μmの感光層を有するトータル厚が約27μmの感光体ドラム(図6参照)を作製し、これを再生処理に用いた。
再生処理を以下の手順で行なった。
【0074】
まず、前記電荷輸送層は全て可溶性の材料により構成されており、顔料系の感光材料を含んでいないため、電荷輸送層の塗液溶媒であるテトラヒドロフランにより溶解剥離を行った。この際、感光体ドラムをテトラヒドロフランに2分間浸漬した後、少量のテトラヒドロフランで濯ぐことにより電荷輸送層を剥離した。
【0075】
次に、下引き層と電荷発生層はともに顔料系の感光材料を有しているため、上述の剥離部材を用いた拭取りによって電荷発生層および下引き層を除去した。
電荷発生層は下引き層に比べかなり薄いことと、導電性支持基体上に下引き層が形成されていることから、第2の溶剤として、下引き層の塗液溶媒であるメタノール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤を用いた。
剥離部材としては、ベンコットM−3(旭化成せんい株式会社製)を4つ折りにして使用した。この4つ折りした剥離部材の寸法は、幅120mm(導電性支持基体の全長の1/3)、長さ47mm(導電性支持基体の全周の1/2)である。
【0076】
以下、図1および図2を参照しながら説明すると、剥離部材12に前記第2の溶剤を20cc含浸させ、それを上述の再生装置における昇降手段17の剥離部材保持部17cにセットすると共に、導電性支持基体9を一対の第1保持部13Aおよび第2保持部13Bにて挟持した。その後、剥離部材保持部17cを下降させて剥離部材12を剥離開始側フランジ13Aaおよび電荷発生層に接触圧力5.0×10-3kPaで接触させ、モータ14を駆動させて導電性支持基体9を回転速度100rpmで回転させ、移動手段18にて剥離部材12を移動速度10mm/secで移動させて電荷発生層と下引き層を同時に剥離して、導電性支持基体の再生品を得た。
その後、再度、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0077】
(実施例2)
4つ折り状の剥離部材12の寸法は、幅60mm(導電性支持基体の全長の1/6)、長さ31mm(導電性支持基体の全周の1/3周)とし、剥離部材12の移動速度を11mm/secとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0078】
(実施例3)
4つ折り状の剥離部材12の長さを94mm(導電性支持基体の全長の1/1)とし、導電性支持基体9の回転速度を150rpmとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0079】
(実施例4).
4つ折り状の剥離部材12の寸法は、幅180mm(導電性支持基体の全長の1/2)、長さ94mm(導電性支持基体の全周の1/1)とし、導電性支持基体9の回転速度を200rpmとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0080】
(比較例1)
4つ折り状の剥離部材12の寸法は、幅60mm(導電性支持基体の全長の1/6)、長さ31mm(導電性支持基体の全周の1/3)とし、剥離部材12の移動速度を30mm/secとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0081】
(比較例2)
剥離部材12の移動速度を50mm/secとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0082】
(比較例3)
4つ折り状の剥離部材12の長さを94mm(導電性支持基体の全周の1/1)とし、導電性支持基体9の回転速度を200rpmとし、剥離部材12の移動速度を5mm/secとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0083】
(比較例4)
4つ折り状の剥離部材12の寸法は、幅240mm(導電性支持基体の全長の2/3)、長さ94mm(導電性支持基体の全周の1/1周)とし、導電性支持基体9の回転速度を200rpmとし、剥離部材12の移動速度を8mm/secとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0084】
(評価)
上記の実施例1〜4および比較例1〜4での条件で感光層および下引き層を剥離した導電性支持基体と、この導電性支持基体の表面に下引き層および感光層を再度形成した感光体ドラムについて、以下の4つの評価を行った。
【0085】
<評価項目A>
剥離性の評価として、導電性支持基体表面からの感光層および下引き層の剥離残しおよび剥離ムラの有無を目視検査した。
[評価基準]
○・・・剥離不良なし。
△・・・僅かな剥離残りあり、実使用で問題ないレベル。
×・・・剥離不良あり。
【0086】
<評価項目B>
導電性支持基体の表面性状の評価として、剥離による擦りキズおよびクスミの発生の有無を目視検査した。
[評価基準]
◎・・・キズなし、表面きれい。 ○・・・キズ、クスミなし。
△・・・僅かなクスミあり、実使用で問題ないレベル。
×・・・キズ、クスミあり。 −・・・評価不能。
【0087】
<評価項目C>
感光体ドラムの目視検査を行い、塗布欠陥の有無および外観不良を評価した。
[評価基準]
○・・・塗布欠陥、外観不良なし。 ×・・・塗布欠陥、外観不良あり。
【0088】
<評価項目D>
感光体ドラムを電子写真装置に搭載し、画像不良の発生の有無を検査した。
[評価基準]
○・・・画像不良なし。 ×・・・画像不良あり。 −・・・目視検査不合格。
【0089】
実施例1〜4および比較例1〜4の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0090】
表1に示すように、実施例1〜4においては、剥離性および剥離後の導電性支持基体の表面性状ともに問題なく、再生使用可能であることがわかった。
これに対して、比較例1、2から式1の値が3より小さいときには、電荷発生層および下引き層が十分に剥離できず、比較例3、4から式1の値が60より大きいときには、電荷発生層および下引き層を剥離した導電性支持基体の表面性状に問題が発生することがわかった。
【0091】
(実施例5)
導電性支持基体の表面粗さがRz=0.5であること以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
(実施例6)
導電性支持基体の表面粗さがRz=2.0であること以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
(実施例7)
導電性支持基体の表面粗さがRz=0.3であること以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
(実施例8)
導電性支持基体の表面粗さがRz=3.0であること以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0092】
(評価)
前記実施例1、5〜8での条件で感光層および下引き層を剥離した導電性支持基体と、この導電性支持基体の表面に下引き層および感光層を再度形成した感光体ドラムについて、上述の評価項目CとDに加え、以下の評価項目Eについて評価した。
【0093】
<評価項目E>
剥離後の導電性支持基体の評価方法として、未使用の導電性支持基体の分光反射率と感光層および下引き層を有する感光体ドラムの分光反射率の差を100としたとき、未使用の導電性支持基体の分光反射率と感光層および下引き層を剥離した後の導電性支持基体(実施例1、5〜8)の分光反射率との差の割合を用いて評価した。
[評価基準]
◎・・・1以下。 ○・・・3以下。 △・・・5以下(実使用問題ないレベル)
【0094】
実施例1、5〜8の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0095】
表2に示すように、評価項目Eについては、導電性支持基体の表面粗さRzが好ましい範囲である0.5〜2.0の実施例1、5および6が実施例7および8よりも良好であり、評価項目Cについては実施例1、5〜8の全てに実質的な問題はないが、実施例7および8は極僅かなクスミがあり美観的にやや劣ることがわかった。
【0096】
(実施例9)
前記接触圧力を3.0×10-3kPaとしたこと以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
(実施例10)
前記接触圧力を3.0×10-2kPaとしたこと以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
(実施例11)
前記接触圧力を2.0×10-3kPaとしたこと以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
(実施例12)
前記接触圧力を4.0×10-2kPaとしたこと以外は実施例1と同様にして電荷発生層と下引き層を同時に剥離し、その後、上述と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0097】
(評価)
前記実施例1、9〜12での条件で感光層を剥離した導電性支持基体と、この導電性支持基体の表面に感光層を再度形成した感光体ドラムについて、上述の評価項目C、DおよびEについて評価した。
前記実施例1、9〜12の評価結果を表3に示す。
【表3】

【0098】
表3に示すように、評価項目Eについては、接触圧力が好ましい範囲である3.0×10-3kPa以上3.0×10-2kPa以下の実施例1、9および10が実施例11および12よりも良好であり、評価項目Cについては実施例1、9〜12の全てに実質的な問題はないが、実施例11および12は極僅かな乾きシミがあり美観的にやや劣ることがわかった。
【0099】
(実施例13)
下引き層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして電荷発生層を剥離し、その後、電荷発生層および電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
(比較例5)
下引き層を形成しないこと、および、4つ折り状の剥離部材12の寸法は、幅60mm(導電性支持基体の全長の1/6)、長さ31mm(導電性支持基体の全周の1/3周)とし、剥離部材12の移動速度を30mm/secとしたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層を同時に剥離し、その後、上述と同様に電荷発生層および電荷輸送層を形成し再生感光体ドラムを作製した。
【0100】
(評価)
前記実施例13および比較例5での条件で感光層を剥離した導電性支持基体と、この導電性支持基体の表面に感光層を再度形成した感光体ドラムについて、上述の評価項目A〜Dについて評価した。
前記実施例13および比較例5の評価結果を表4に示す。
【表4】

【0101】
表4に示すように、下引き層を有さない実施例13においても、感光層の剥離性および感光層剥離後の導電性支持基体の表面性状ともに問題なく、再生使用可能であることがわかった。
これに対して、比較例5から式1の値が3より小さいときには、感光層が十分に剥離できず、導電性支持基体の再生使用ができないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に備えられた電子写真感光体ドラムの導電性支持基体(素管)を容易に効率よく再生する方法および装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の導電性支持基体の再生装置の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の再生装置による感光層の内周側残部の剥離開始状態を示す概略斜視図である。
【図3】図1の再生装置による感光層の内周側残部の剥離中状態を示す部分横断面図である。
【図4】本発明に適用可能な電子写真感光体ドラムを示す縦断面図である。
【図5】図4の感光体ドラムを再生する際に分解する状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明に適用可能な感光体ドラムの部分断面図を示す。
【図7】本発明に適用可能な他の感光体ドラムの部分断面図を示す。
【符号の説明】
【0104】
2 下引き層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 感光層
6 表面保護層
9 導電性支持基体(素管)
9a 感光体ドラム本体
9b フランジ
12 剥離部材
17 昇降手段
18 移動手段
13A 第1保持部
13Aa 剥離開始側フランジ
13Ab 保持突起部
13Ac 支持部13
13B 第2保持部
13Ba 剥離終了側フランジ13
13Bb 保持突起部
13Bc 支持部
13Bd ガイドレール
14 モータ
17a 移動部
17b 昇降部
17c 剥離部材保持部
17d 連結部
18a ガイドレール
18b 連結部
18c 往復動機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも感光層が形成されその下引き層を有するか有しない円筒形または円柱形の導電性支持基体を、前記感光層の外周側部分を溶解可能な第1の溶剤にて前記外周側部分を溶解して除去し、該外周側部分が除去された前記導電性支持基体を保持し回転させ、感光層の内周側残部を溶解可能な第2の溶剤を含浸させた剥離部材を前記内周側残部の表面に接触させた状態で導電性支持基体の軸方向に移動させることにより、内周側残部と存在しうる前記下引き層を導電性支持基体から拭き取って除去する工程を備え、
前記剥離部材における前記軸方向の幅をa(mm)、剥離部材における導電性支持基体の円周方向の長さをb(mm)、導電性支持基体の回転数をc(rpm)、剥離部材の軸方向の移動速度をd(mm/sec)、導電性支持基体の円周方向の長さをe(mm)としたとき、式(1)
3≦(a/d)×(c/60)×(b/e)≦60 ・・・(1)
を満足することを特徴とする導電性支持基体の再生方法。
【請求項2】
前記導電性支持基体における前記外周面のJIS B0601-1994に基く十点平均粗さRzが0.5以上2.0以下である請求項1に記載の導電性支持基体の再生方法。
【請求項3】
前記剥離部材の前記電荷発生層への接触圧力fが3.0×10-3kPa以上3.0×10-2kPa以下である請求項1または2に記載の導電性支持基体の再生方法。
【請求項4】
前記感光層が、前記下引き層上に形成された電荷発生層と、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層とを有してなり、
前記第2の溶剤が、前記下引き層を溶解可能な溶剤を含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の導電性支持基体の再生方法。
【請求項5】
前記感光層の外周側部分を除去する際に、前記第1の溶剤に導電性支持基体を浸漬し、かつ第1の溶剤にて濯ぐことによって前記外周側部分を除去する工程を含み、この工程を1回または2回以上繰り返す請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電性支持基体の再生方法。
【請求項6】
前記請求項1に記載の導電性支持基体の再生方法によって前記感光層の内周側残部と存在しうる下引き層を除去する際に用いられる導電性支持基体の再生装置であって、
前記感光層の外周側部分を除去した後の導電性支持基体を保持し回転させる保持回転手段と、感光層の内周側残部を溶解可能な第2の溶剤を含浸可能でかつ該第2の溶剤に不溶な可撓性素材からなる剥離部材と、前記剥離部材を保持しかつ前記内周側残部の表面に接触可能に昇降させる昇降手段と、剥離部材を内周側残部に接触させた状態で前記昇降手段を導電性支持基体の軸方向に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする導電性支持基体の再生装置。
【請求項7】
前記保持回転手段が、前記導電性支持基体の軸方向の一端および他端を挟み込んで保持する回転可能な第1保持部および第2保持部と、該第1保持部および第2保持部の少なくとも一方を回転させるモータとを有し、
剥離開始側である導電性支持基体の一端側の前記第1保持部が、導電性支持基体の外径と同じ外径で、かつ剥離部材の前記軸方向の幅の1/5倍以上1倍以下の長さの剥離開始側フランジを有する請求項6に記載の導電性支持基体の再生装置。
【請求項8】
剥離終了側である導電性支持基体の他端側の前記第2保持部が、感光体ドラムの外径と同じ外径で、かつ剥離部材の前記軸方向の幅以上の長さの剥離終了側フランジを有する請求項7に記載の導電性支持基体の再生装置。
【請求項9】
前記剥離部材が、織布、不織布、綿またはスポンジからなる請求項6〜8のいずれか1つに記載の導電性支持基体の再生装置。
【請求項10】
前記第1保持部および第2保持部は、剥離開始側フランジと剥離終了側フランジとが対向する端面に、円筒形の導電性支持基体の軸方向両端の開口部に挿入されて開口部内面を支持する支持突起部を有する請求項8に記載の導電性支持基体の再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−128372(P2009−128372A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299618(P2007−299618)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】