小口切断用バンドソー
【課題】安全性と操作性に優れる新規な形態の手動操作式の小口切断用バンドソーを提供することを課題としている。
【解決手段】走行する帯刃23を有する切断装置20と、それを揺動可能に吊り下げる水平支軸3と、帯刃の移動路4dと拘束壁4cが設けられた作業テーブル4と、被切断物の先端を受け止める当て板を備え、切断装置20は、第1グリップ10を作業者が手で掴んで手前側から前方に押し動かし、その操作で帯刃23が水平支軸3と直角な面内を移動し、上から下に向けて走行しながら作業テーブル4と拘束壁4cに支えられた被切断物Wに切り込まれて切断がなされる構造にした。
【解決手段】走行する帯刃23を有する切断装置20と、それを揺動可能に吊り下げる水平支軸3と、帯刃の移動路4dと拘束壁4cが設けられた作業テーブル4と、被切断物の先端を受け止める当て板を備え、切断装置20は、第1グリップ10を作業者が手で掴んで手前側から前方に押し動かし、その操作で帯刃23が水平支軸3と直角な面内を移動し、上から下に向けて走行しながら作業テーブル4と拘束壁4cに支えられた被切断物Wに切り込まれて切断がなされる構造にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブロック肉などを小さく切断するのに適した作業性や安全性に優れる手動操作方式の小口切断用バンドソー(帯鋸盤)に関する。ここで言う手動操作方式とは、帯刃を被切断物に対して手作業で切り込ませて小口切断を行なう方式を言う。
【背景技術】
【0002】
ブロック肉やブロック状冷凍食品などの小口切断には、丸刃や帯刃を使用したスライサーや縦型のバンドソーが利用されている。このうち、帯刃を使用したスライサーは、例えば、下記特許文献1,2に開示されたものなどがあり、また、縦型の帯鋸盤は下記特許文献3に開示されたものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−34281号公報
【特許文献2】特開2006−224262号公報
【特許文献3】特開2007−160433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたスライサーは、肉箱の前端からブロック肉を突出させて当て板に当て、この状態で肉箱を水平面内で一方向に往復移動させて定位置で縦向きに走行する帯刃を肉箱からのブロック肉突出部に切り込ませ、その動作を繰り返してブロック肉を一定厚みに連続的にスライスする。
【0005】
また、特許文献2に記載されたスライサーは、ブロック肉を保持した肉箱を略上下方向に往復移動させながら肉箱から間歇的に送り出されるブロック肉に定位置で水平向きに走行する帯刃を上から下に向けて切り込ませ、その動作を繰り返してブロック肉を一定厚みにスライスする。
【0006】
これ等のスライサーによる切断作業は完全に機械化されており、そのために、作業者は帯刃に近づく必要がなく、作業の安全性に優れる。
【0007】
しかしながら、これ等のスライサーは、ブロック肉を一定厚さの肉片に大量にスライスするときには威力を発揮するが、手作業に対応した切断装置ではないため、大きさ、形状、処理量などが頻繁に変化する被切断物を所望長さに小口切断する用途には向かない。
【0008】
一方、前記特許文献3に記載された帯鋸盤は、ワークテーブル上に載せた被切断物を作業者が手で送り込んで縦に走行する帯刃で切断を行なう。
【0009】
この特許文献3の帯鋸盤は、安全性を考慮して、帯刃の各部のうち、切断に必要な領域だけが開放し、それ以外の箇所では開放領域の大きさが被切断物の大きさに応じて変化するカバーに覆われるようにしているが、帯刃の刃先が作業者の側を向いており、作業者が走行中の帯刃に近づきながら切断を進めるため、真に安全な切断装置とは言えない。
【0010】
例えば、冷凍魚や冷凍肉などを切断する場合、作業者が着用している手袋などが冷凍品に凍りついて帯刃の位置に巻き込まれる虞がある。また、特許文献3の帯鋸盤は、被切断物の送り込みに加えて引き戻しも繰り返す必要があり、作業性も良くない。
【0011】
なお、金属加工用の帯鋸盤の中には、帯刃と駆動源とカバーとフレームを組み合わせて切断装置を構成し、その切断装置を、先端側に配置される水平支軸を支点にして上下に揺動させ、被切断物に帯刃を上から切り込ませるものがある。
【0012】
しかしながら、そのような構造の食品切断用バンドソーを試作してブロック肉の切断試験を行ったところ、ブロック肉に対する帯刃の接触長さが長くて摩擦が大きくなるケースでは特に、肉塊がほぼ水平向きに走行する帯刃に引きずられて切断がうまくなされず、また、作業者が腕を大きく上げ下げして切断装置を揺動させる必要があるため作業もし辛く、実用上満足できる性能と良好な操作性を確保するのが困難であった。
【0013】
このほかに、対の起立支柱間に切断装置を横架し、それを昇降させるタイプのものもあるが、これは、切断装置の昇降に時間がかかって高能率作業が望めない。また、帯刃が水平向きに走行することから、肉塊などの切断では安定した性能が発揮されない。
【0014】
この発明は、手動操作でブロック肉やブロック状冷凍食品などを小さく切断する際の作業性と安全性を高めた新規な形態の小口切断用バンドソーを実現して提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、この発明においては、以下のように構成された小口切断用バンドソーを提供する。
対をなす駆動ホイールと従動ホイール、それ等のホイール間に掛け渡す無端の帯刃、前記駆動ホイールの回転駆動源、前記帯刃の露出不要域を囲うカバー、これらを支持するフレーム及びそのフレームに取り付ける第1グリップを組み合わせた切断装置と、
その切断装置を前記駆動ホイールのある側を上にして揺動可能に吊り下げる水平支軸と、その水平支軸を支持する支柱と、前記帯刃の移動路と被切断物を帯刃の移動方向前方で支える拘束壁が設けられた作業テーブルと、その作業テーブル上で被切断物の先端を受け止める受け止め位置を調整可能な当て板を有し、
前記切断装置は、前記第1グリップを作業者が手で掴んで前記従動ホイールのある下側を作業者のいる手前側から前方(奥の側)に向けて押し動かし、その操作で前記切断装置が前記水平支軸を支点にして揺動して前記帯刃が前記水平支軸と直角な面内を通るように構成され、その切断装置が押し動かされるときに作業者に対して背を向けた帯刃が上から下に向けて走行しながら前記作業テーブルと前記拘束壁に支えられた被切断物に切り込まれて切断がなされる。
【0016】
かかるバンドソーの好ましい形態を以下に列挙する。
(1)前記作業テーブル上で前記当て板に対向させる押し板と、その押し板を前記当て板側に向かって進退可能、かつ、前記作業テーブル上から退避可能に支えるスライド機構と、前記第1グリップが作業者によって掴まれていることを検知して検知信号を出力する第1の検知手段を備え、前記第1の検知手段から検知信号が出力されているときに切断装置が駆動されるようにしたもの。
(2)前記押し板が第2グリップを有し、その第2グリップが作業者に掴まれたことを検知する第2の検知手段を有し、前記第1の検知手段と第2の検知手段の双方から検知信号が出力されているときに切断装置が駆動されるようにしたもの。
(3)作業テーブルから落した被切断物の切り取り部位を受けて所定の方向に滑落させるシュータを作業テーブルの下方に備えたもの。
(4)前記作業テーブルが、互いに分割された固定テーブルと可動テーブルを有し、前記可動テーブルが前記固定テーブルに対して接近、離反可能に配置されて前記固定テーブルと前記可動テーブルとの間に被切断部位を落下させる隙間を作り出せるようにしたもの。
(5)切断終了点に押し動かされた前記切断装置を初期位置(作業者が押し動かす前の位置)に戻す復帰手段を備えたもの。その復帰手段は前記フレームに取り付けるバランスウエイトで構成されたものが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明のバンドソーは、揺動可能に吊り下げた切断装置を作業者が手前から前方に押し動かし、走行する帯刃を被切断物に切り込ませる。そのような構造であるので、外部に露出させる往路の帯刃が作業者に対して背を向ける。しかも、切断が進行するに従って帯刃が作業者から遠ざかる方向に逃げていく。
そのために、安全性が高く、作業者が誤って帯刃に触れて怪我をすることがなくなる。
【0018】
また、切断装置を手前から前方に押し動かして帯刃を被切断物に切り込ませるので、作業者が腕を大きく上げ下げする必要がなく、操作性が良くて作業がしやすい。
【0019】
さらに、往路の帯刃が上から下に向けて走行して作業テーブルに支えられた被切断物に切り込まれるので、被切断物の支えが安定し、切断が安定して円滑、かつ、確実になされる。
【0020】
特に、板状にカットされた食肉などは、厚み方向が縦になる姿勢にすることで支持の安定性を高め、帯刃の接触長さも水平走行の帯刃で切断を行なうときに比べて短くすることができ、これらのことも切断の安定性向上に寄与する。
【0021】
なお、押し板を設けたものや、これに加えてさらに前記第1、第2の検知手段を設け、第1グリップが作業者によって掴まれ、なおかつ、押し板が作業者によって操作されているときのみに切断装置の帯刃の駆動がなされるようにしたものは、帯刃の駆動中には作業者の両手が操作のために利用されているため、駆動中の帯刃の位置に作業者が誤って手を持っていくことがない。従って、作業の安全性がさらに高まり、手指の怪我や切断事故が皆無になる。
【0022】
また、押し板に第2グリップを設け、その第2グリップが作業者に掴まれたことを前記押し板が作業者によって操作されていることの検知信号として利用するものは、第2の検知手段を安価なオン、オフスイッチで構成することができる。
【0023】
さらに、作業テーブルに被切断物の切り取り部位を落下させる隙間と、落下した切り取り部位を受けて所定の方向に滑落させるシュータが設けられたものは、作業者が帯刃の前方に手を移動させて被切断物の切り取り部位を取り出す作業が不要になるため、作業性がより向上し、停止している帯刃に手を引っ掛けるなどの事態も防止される。
【0024】
このほか、切断装置を復帰手段で初期位置に戻すようにしたものは、切断装置の復帰が自然になされて作業者の作業負担が軽減される。また、その復帰手段をバランスウエイトで構成したものは、復帰手段の経時的な機能劣化などが起こらず、復帰手段についての保守点検、交換などが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明のバンドソーの全体の概要を示す斜視図
【図2】図1のバンドソーの側面図
【図3】図1のバンドソーの背面図
【図4】図1のバンドソーの平面図
【図5】図1のバンドソーの作業テーブルの平面図
【図6】図1のバンドソーに設けられた当て板をバンドソーの正面側から見た図
【図7】図1のバンドソーに設けられたシュータの断面図
【図8】図1のバンドソーに設けられた押し板の平面図
【図9】図1のバンドソーに設けられた押し板の側面図
【図10】図1のバンドソーに設けられた切断装置の正面図
【図11】図1のバンドソーに設けられた切断装置の縦断断面図
【図12】図1のバンドソーの切断装置が送り込み終点に移動したときの帯刃と拘束壁の位置関係を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面の図1〜図12に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1〜図4に示すように、この発明の小口切断用バンドソーは、台座1と、その上に立設する支柱2と、その支柱に支持される水平支軸3と、台座1上に設ける作業テーブル4と、その作業テーブル上に必須の要素として設ける当て板5と、必要に応じて設ける押し板6と、操作盤7と、シュータ8と、切断装置20と、その切断装置の復帰手段9を組み合わせて構成されている。切断装置20には、作業者Aが片方の手(図示の装置では右手)で掴んで押し動かす第1グリップ10が設けられている。
【0028】
支柱2は、図1及び図3に示すように、2本を対にし、それを平行姿勢が保たれるように起立させて台座1の左右に設置している。そしてその2本の支柱2、2間に水平支軸3を横架し、その水平支軸3で切断装置20を揺動可能に吊り下げている。
【0029】
支柱2は、水平支軸3を片持ち構造にする場合には1本でよいが、図のように、2本設けて両支柱で水平支軸3を両持ち構造にすることで、切断装置20の吊下安定性を高めることができる。
【0030】
作業テーブル4は、図5に示す幅方向に2分割されたテーブル4a、4bと、テーブル4aの背面側(作業者Aの側から見て奥の側)の縁に沿って設ける起立した拘束壁4cとからなり、テーブル4a、4b間に帯刃の移動路(通路となる隙間)4dを有する。テーブル4aは固定テーブルとし、テーブル4bはテーブル4aから離反する方向(図6において右方)に移動可能な可動テーブルにしている。
【0031】
可動テーブル4bは、水平支軸3と平行なスライドガイドの含まれたスライド機構(図示せず)を設け、そのスライド機構のスライダで支持することで水平支軸3の長手方向に可動となすことができる。図示の可動テーブル4bはそのような構造にしているが、テーブル4bが可動であることは必須ではない。
【0032】
当て板5は、作業テーブル4上で被切断物Wの先端を受け止める板であり、受け止め位置、すなわち、図6に示した移動路4dからその当て板5までの距離Lを調整することで被切断物Wの切断長さを変化させる。
【0033】
その機能を付与するために、図6に示すスライドガイド11a(これは水平支軸3と平行)と、それに案内されるスライダ11bを備えたスライド機構11を設けてスライダ11bで当て板5を支持しており、スライダ11bを動かして水平支軸3と平行方向に移動させることができる。スライダ11bは、数値制御などを行なって駆動源の力で所定の位置に自動的に移動させるもの、手で動かすもののどちらでもよい。
【0034】
押し板6は、図8に示すように、作業テーブル4上で当て板5に対向させている。その押し板6は、水平支軸3と平行なスライドガイド12aと、手動式のスライダ12bを備えたスライド機構12を設け、スライダ12bに押し板6を取り付けることでスライダ12bと共に当て板5側に向かって進退可能となしている。
【0035】
また、スライドガイド12aを所謂丸棒で構成し、それにスライダ12bを隙間嵌めすることで図9に示すように、スライダ12bをスライドガイド12a上でそのガイドを軸にして回動可能となし、その回動により、押し板6を作業テーブル4上から退避させることを可能にしている。
【0036】
押し板6をヒンジでスライダ12bに連結する構造でも押し板6を退避させることができる。スライドガイド12aに作業テーブル4の外に延び出す延長部を設け、押し板6をその延長部に退避させることも可能であり、退避のための機構は回動式に限定されない。
【0037】
押し板6には、作業者Aが他方の手(図示の装置では左手)で掴む第2グリップ13が設けられている。押し板6の押し込み方向後方に配置したその第2グリップ13に力を加えて押し板6をスライドさせ、その押し板6で被切断物Wを当て板5側に押し動かす。
【0038】
操作盤7は、内部にバンドソーの各部の動作を制御する制御回路を格納しており、表面に起動スイッチや表示パネルなどを有する。この操作盤7は、台座1に取り付けて作業テーブル4の下側に配置しているが、設置場所は特に限定されない。
【0039】
シュータ8は、平面に対して所定の傾斜角を付与した滑り台であって、作業テーブル4の下側に配置される。このシュータ8は、後述する切断装置20のフレーム26に連結されており、切断装置20と一緒になって揺動する。切断装置20が初期位置に復帰したときに、シュータ8の一端側(入口側)はテーブル4bの手前側にせり出し、テーブル4bの手前側の縁から落下した切り取り部位をその一端側(入口側)で受けて所定の方向(図のバンドソーは背面側)に流し、出口にセットされる運搬用のトレーなどに滑落させる。
【0040】
復帰手段9は、ばねやシリンダアクチュエータなどで構成することもできるが、安価で機能劣化の懸念がなく、保守点検、交換などが不要なバランスウエイトが好ましい。例示のバンドソーに採用した復帰手段9は、切断装置20よりも重量の大きいバランスウエイトで構成しており、そのバランスウエイトが水平支軸3の直下に移動するところまで切断装置20が復帰する。
【0041】
この復帰手段9は、作業負担を軽減する好ましい要素である。ただし、切断装置20は作業者が復帰させることもできる。
【0042】
切断装置20の復帰終点は同装置の初期位置であり、その初期位置では、切断装置20が図2に示すように傾斜し、その装置の下側が水平支軸3よりも作業者Aの側(手前側)に置かれる。
【0043】
切断装置20は、図10、図11に示した対をなす駆動ホイール21と従動ホイール22、それ等のホイール間に掛け渡す無端の帯刃23、駆動ホイール21の回転駆動源(モータ)24、帯刃23の露出不要域を囲うカバー25、これらを支持するフレーム26及びそのフレームに取り付ける第1グリップ10を組み合わせて構成されている。
【0044】
図示の切断装置20は、駆動ホイール21のある側が上、従動ホイール22のある側が下になる向きにして上側を水平支軸3で水平支軸3を支点にした揺動が可能となるように支えているが、駆動ホイール21が下、従動ホイール22が上にあっても構わない。
【0045】
駆動ホイール21と従動ホイール22は、それぞれの回転中心の軸が切断装置20の揺動方向を向く姿勢にしており、そのために、両ホイール間に掛け渡した帯刃23は水平支軸3の長手方向に厚みをもつ状態になる。
【0046】
帯刃23は、刃先が前を向き、作業者に対して背を向ける。この帯刃23は、切断に関与する領域23a(往路の一部分)をカバー25から露出させている。また、切断に関与する往路の側でその帯刃23が上から下に走行し、水平支軸3を支点にした切断装置20の揺動でその帯刃23が水平支軸3と直角な面内を移動するように構成されている。この帯刃23は、図12に示すように、刃先が拘束壁4cの壁面を通り越す位置まで切り込み方向に動く。
【0047】
第1グリップ10には、その第1グリップ10が作業者によって掴まれていることを検知して信号を出力するレバー操作式の第1の検知手段14(図1参照)を設けている。また、第2グリップ13にも、第2グリップ13が作業者によって掴まれていることを検知して検知信号を出力するボタン操作の第2の検知手段15(図8参照)を設けている。
【0048】
図示の第1の検知手段14、第2の検知手段15は、指先で操作可能なスイッチで構成しているが、スイッチ以外の検知手段であっても構わない。
【0049】
第2の検知手段15は、押し板6が作業者によって操作されていることを検知して検知信号を出力するものである。従って、押し板6に押された被切断物Wが当て板5に受け止められていることを感圧センサなどで検知する形態に置き換えて同一目的を達成することも可能である。ただし、この第2の検知手段15は必須ではない。
【0050】
なお、例示のバンドソーは、作業者Aが右手で切断装置20を動かす構造になっているが、各要素の右左の位置関係を入れ替えて左手で切断装置20を動かす構造にしても構わない。以下の説明は、作業者が右手で切断装置20を操作する場合を例に挙げて行なう。
【0051】
例示の小口切断用バンドソーは、作業者Aが左手で被切断物Wを当て板5に押し付け、右手で第1グリップ10を掴んで切断装置20の下側を作業者のいる手前側から前方に押し動かす。
【0052】
被切断物Wの長さ(送り込み方向寸法)が長いときには押し板6を作業テーブル4上から退避させて被切断物Wを左手で直接送り込めるようにしており、そのときには、第1の検知手段14から検知信号が出力されていることをもって切断装置20の駆動がなされるようにしている。
【0053】
また、小口切断が進行して被切断物Wが短くなり、送り込みを行なう作業者の左手が移動路4dに近づくときには、押し板6を作業テーブル4上に戻し、第2グリップ13を作業者が左手で掴んで同時に第2の検知手段15を指先でオンにし、この状況で作業を行うことで、第1,第2の検知手段14、15の双方から検知信号が出力されている状況下でのみ切断装置20が作動する構造にしている。
【0054】
このように、回転駆動源24の駆動回路を切り替え可能となして切断装置20を第1の検知手段14からの検知信号のみに基づいて作動させる形態と、第1、第2の検知手段14,15の両者からの検知信号に基づいて作動させる形態を選択可能にしたものは、被切断物Wが長過ぎるなどの理由で押し板6を使用できないときにも切断が行なえる利点がある。
なお、第2の検知手段15を省き、第1の検知手段14の検知信号に基づいて切断装置20を作動させ、この状況で被切断物の送り込みを行なう場合にも、被切断物を押す左手を右手で操作した帯刃の前方に無理に持っていくことはなく(押し板6を使用することで持っていく必要性がなくなる)、あえて持っていかざるを得ない場合には、作業者が危険性を十分に認識して作業を行うことになるので、安全性が十分に確保される。
【0055】
切断装置20を揺動させてその装置の下側を押し動かすと、駆動された帯刃23が作業テーブル4上の被切断物Wに切り込まれる。このとき、帯刃23は上から下に向けて走行しながら前方に移動し、そのために、被切断物Wは作業テーブル4のテーブル面と帯刃の移動方向前方の拘束壁4cに押し付けられ、これにより、被切断物Wが帯刃23に引きずられて動くなどの不具合が起こらず、安定した切断がなされる。
【0056】
また、切断完了後の切断装置20は、復帰手段9から復帰力が加えられているため、大きな力を加えなくても初期位置に復帰する。作業者は、左手で被切断物Wを送り込み、第1グリップ10を掴んだ右手を前にのばして切断装置20を押し動かせばよく、腕を上から下に動かす必要がないため疲れ難く、作業負担の軽減と作業性の向上が図れる。また、作業者に対して背を向けた帯刃を逃がしながら切断を行なうので安全性も高い。
【0057】
なお、被切断物Wの小口切断される部位が小さければ、固定テーブル4aと可動テーブル4bとの間に、排出に必要な隙間を生じさせて切断部位を切断された位置から直接シュータ8上に落下させることができる。
【0058】
小口切断される部位が比較的大きいときには、固定テーブル4aと可動テーブル4b間に切断部位よりも大きな隙間を作り出すのは被切断物の支持安定性が悪化して好ましくないので、切断装置が復帰しているときに小口切断された部位を作業者が手前側に引き寄せてテーブル4bの手前側の縁からシュータ8上に落下させるとよい。
【実施例】
【0059】
高さ:2000mm、幅:1300mm、奥行き:1150mmの例示の構造のバンドソーを試作した。そして、このバンドソーで冷凍ブロック肉、非冷凍ブロック肉、鶏の骨付き腿肉、あばら骨の付いた豚肉などの切断試験を行った。
【0060】
その結果、帯刃が水平方向に走行する構造の試作バンドソー(比較例)では、肉塊が帯刃に引きずられて切断がうまくなされなかったのに対し、この発明のバンドソーでは安定した切断がなされた。
【0061】
また、作業者が腕を大きく上げ下げする必要がなく、また、帯刃が切断時に作業者から逃げていくため作業も楽に安全に行えた。
【符号の説明】
【0062】
1 台座
2 支柱
3 水平支軸
4 作業テーブル
4a 固定テーブル
4b 可動テーブル
4c 拘束壁
4d 帯刃の移動路
5 当て板
6 押し板
7 操作盤
8 シュータ
9 復帰手段
10 第1グリップ
11,12 スライド機構
11a,12a スライドガイド
11b,12b スライダ
13 第2グリップ
14 第1の検知手段
15 第2の検知手段
20 切断装置
21 駆動ホイール
22 従動ホイール
23 帯刃
24 回転駆動源
25 カバー
26 フレーム
A 作業者
W 被切断物
L 帯刃の移動路から当て板までの距離
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブロック肉などを小さく切断するのに適した作業性や安全性に優れる手動操作方式の小口切断用バンドソー(帯鋸盤)に関する。ここで言う手動操作方式とは、帯刃を被切断物に対して手作業で切り込ませて小口切断を行なう方式を言う。
【背景技術】
【0002】
ブロック肉やブロック状冷凍食品などの小口切断には、丸刃や帯刃を使用したスライサーや縦型のバンドソーが利用されている。このうち、帯刃を使用したスライサーは、例えば、下記特許文献1,2に開示されたものなどがあり、また、縦型の帯鋸盤は下記特許文献3に開示されたものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−34281号公報
【特許文献2】特開2006−224262号公報
【特許文献3】特開2007−160433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたスライサーは、肉箱の前端からブロック肉を突出させて当て板に当て、この状態で肉箱を水平面内で一方向に往復移動させて定位置で縦向きに走行する帯刃を肉箱からのブロック肉突出部に切り込ませ、その動作を繰り返してブロック肉を一定厚みに連続的にスライスする。
【0005】
また、特許文献2に記載されたスライサーは、ブロック肉を保持した肉箱を略上下方向に往復移動させながら肉箱から間歇的に送り出されるブロック肉に定位置で水平向きに走行する帯刃を上から下に向けて切り込ませ、その動作を繰り返してブロック肉を一定厚みにスライスする。
【0006】
これ等のスライサーによる切断作業は完全に機械化されており、そのために、作業者は帯刃に近づく必要がなく、作業の安全性に優れる。
【0007】
しかしながら、これ等のスライサーは、ブロック肉を一定厚さの肉片に大量にスライスするときには威力を発揮するが、手作業に対応した切断装置ではないため、大きさ、形状、処理量などが頻繁に変化する被切断物を所望長さに小口切断する用途には向かない。
【0008】
一方、前記特許文献3に記載された帯鋸盤は、ワークテーブル上に載せた被切断物を作業者が手で送り込んで縦に走行する帯刃で切断を行なう。
【0009】
この特許文献3の帯鋸盤は、安全性を考慮して、帯刃の各部のうち、切断に必要な領域だけが開放し、それ以外の箇所では開放領域の大きさが被切断物の大きさに応じて変化するカバーに覆われるようにしているが、帯刃の刃先が作業者の側を向いており、作業者が走行中の帯刃に近づきながら切断を進めるため、真に安全な切断装置とは言えない。
【0010】
例えば、冷凍魚や冷凍肉などを切断する場合、作業者が着用している手袋などが冷凍品に凍りついて帯刃の位置に巻き込まれる虞がある。また、特許文献3の帯鋸盤は、被切断物の送り込みに加えて引き戻しも繰り返す必要があり、作業性も良くない。
【0011】
なお、金属加工用の帯鋸盤の中には、帯刃と駆動源とカバーとフレームを組み合わせて切断装置を構成し、その切断装置を、先端側に配置される水平支軸を支点にして上下に揺動させ、被切断物に帯刃を上から切り込ませるものがある。
【0012】
しかしながら、そのような構造の食品切断用バンドソーを試作してブロック肉の切断試験を行ったところ、ブロック肉に対する帯刃の接触長さが長くて摩擦が大きくなるケースでは特に、肉塊がほぼ水平向きに走行する帯刃に引きずられて切断がうまくなされず、また、作業者が腕を大きく上げ下げして切断装置を揺動させる必要があるため作業もし辛く、実用上満足できる性能と良好な操作性を確保するのが困難であった。
【0013】
このほかに、対の起立支柱間に切断装置を横架し、それを昇降させるタイプのものもあるが、これは、切断装置の昇降に時間がかかって高能率作業が望めない。また、帯刃が水平向きに走行することから、肉塊などの切断では安定した性能が発揮されない。
【0014】
この発明は、手動操作でブロック肉やブロック状冷凍食品などを小さく切断する際の作業性と安全性を高めた新規な形態の小口切断用バンドソーを実現して提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、この発明においては、以下のように構成された小口切断用バンドソーを提供する。
対をなす駆動ホイールと従動ホイール、それ等のホイール間に掛け渡す無端の帯刃、前記駆動ホイールの回転駆動源、前記帯刃の露出不要域を囲うカバー、これらを支持するフレーム及びそのフレームに取り付ける第1グリップを組み合わせた切断装置と、
その切断装置を前記駆動ホイールのある側を上にして揺動可能に吊り下げる水平支軸と、その水平支軸を支持する支柱と、前記帯刃の移動路と被切断物を帯刃の移動方向前方で支える拘束壁が設けられた作業テーブルと、その作業テーブル上で被切断物の先端を受け止める受け止め位置を調整可能な当て板を有し、
前記切断装置は、前記第1グリップを作業者が手で掴んで前記従動ホイールのある下側を作業者のいる手前側から前方(奥の側)に向けて押し動かし、その操作で前記切断装置が前記水平支軸を支点にして揺動して前記帯刃が前記水平支軸と直角な面内を通るように構成され、その切断装置が押し動かされるときに作業者に対して背を向けた帯刃が上から下に向けて走行しながら前記作業テーブルと前記拘束壁に支えられた被切断物に切り込まれて切断がなされる。
【0016】
かかるバンドソーの好ましい形態を以下に列挙する。
(1)前記作業テーブル上で前記当て板に対向させる押し板と、その押し板を前記当て板側に向かって進退可能、かつ、前記作業テーブル上から退避可能に支えるスライド機構と、前記第1グリップが作業者によって掴まれていることを検知して検知信号を出力する第1の検知手段を備え、前記第1の検知手段から検知信号が出力されているときに切断装置が駆動されるようにしたもの。
(2)前記押し板が第2グリップを有し、その第2グリップが作業者に掴まれたことを検知する第2の検知手段を有し、前記第1の検知手段と第2の検知手段の双方から検知信号が出力されているときに切断装置が駆動されるようにしたもの。
(3)作業テーブルから落した被切断物の切り取り部位を受けて所定の方向に滑落させるシュータを作業テーブルの下方に備えたもの。
(4)前記作業テーブルが、互いに分割された固定テーブルと可動テーブルを有し、前記可動テーブルが前記固定テーブルに対して接近、離反可能に配置されて前記固定テーブルと前記可動テーブルとの間に被切断部位を落下させる隙間を作り出せるようにしたもの。
(5)切断終了点に押し動かされた前記切断装置を初期位置(作業者が押し動かす前の位置)に戻す復帰手段を備えたもの。その復帰手段は前記フレームに取り付けるバランスウエイトで構成されたものが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明のバンドソーは、揺動可能に吊り下げた切断装置を作業者が手前から前方に押し動かし、走行する帯刃を被切断物に切り込ませる。そのような構造であるので、外部に露出させる往路の帯刃が作業者に対して背を向ける。しかも、切断が進行するに従って帯刃が作業者から遠ざかる方向に逃げていく。
そのために、安全性が高く、作業者が誤って帯刃に触れて怪我をすることがなくなる。
【0018】
また、切断装置を手前から前方に押し動かして帯刃を被切断物に切り込ませるので、作業者が腕を大きく上げ下げする必要がなく、操作性が良くて作業がしやすい。
【0019】
さらに、往路の帯刃が上から下に向けて走行して作業テーブルに支えられた被切断物に切り込まれるので、被切断物の支えが安定し、切断が安定して円滑、かつ、確実になされる。
【0020】
特に、板状にカットされた食肉などは、厚み方向が縦になる姿勢にすることで支持の安定性を高め、帯刃の接触長さも水平走行の帯刃で切断を行なうときに比べて短くすることができ、これらのことも切断の安定性向上に寄与する。
【0021】
なお、押し板を設けたものや、これに加えてさらに前記第1、第2の検知手段を設け、第1グリップが作業者によって掴まれ、なおかつ、押し板が作業者によって操作されているときのみに切断装置の帯刃の駆動がなされるようにしたものは、帯刃の駆動中には作業者の両手が操作のために利用されているため、駆動中の帯刃の位置に作業者が誤って手を持っていくことがない。従って、作業の安全性がさらに高まり、手指の怪我や切断事故が皆無になる。
【0022】
また、押し板に第2グリップを設け、その第2グリップが作業者に掴まれたことを前記押し板が作業者によって操作されていることの検知信号として利用するものは、第2の検知手段を安価なオン、オフスイッチで構成することができる。
【0023】
さらに、作業テーブルに被切断物の切り取り部位を落下させる隙間と、落下した切り取り部位を受けて所定の方向に滑落させるシュータが設けられたものは、作業者が帯刃の前方に手を移動させて被切断物の切り取り部位を取り出す作業が不要になるため、作業性がより向上し、停止している帯刃に手を引っ掛けるなどの事態も防止される。
【0024】
このほか、切断装置を復帰手段で初期位置に戻すようにしたものは、切断装置の復帰が自然になされて作業者の作業負担が軽減される。また、その復帰手段をバランスウエイトで構成したものは、復帰手段の経時的な機能劣化などが起こらず、復帰手段についての保守点検、交換などが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明のバンドソーの全体の概要を示す斜視図
【図2】図1のバンドソーの側面図
【図3】図1のバンドソーの背面図
【図4】図1のバンドソーの平面図
【図5】図1のバンドソーの作業テーブルの平面図
【図6】図1のバンドソーに設けられた当て板をバンドソーの正面側から見た図
【図7】図1のバンドソーに設けられたシュータの断面図
【図8】図1のバンドソーに設けられた押し板の平面図
【図9】図1のバンドソーに設けられた押し板の側面図
【図10】図1のバンドソーに設けられた切断装置の正面図
【図11】図1のバンドソーに設けられた切断装置の縦断断面図
【図12】図1のバンドソーの切断装置が送り込み終点に移動したときの帯刃と拘束壁の位置関係を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面の図1〜図12に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1〜図4に示すように、この発明の小口切断用バンドソーは、台座1と、その上に立設する支柱2と、その支柱に支持される水平支軸3と、台座1上に設ける作業テーブル4と、その作業テーブル上に必須の要素として設ける当て板5と、必要に応じて設ける押し板6と、操作盤7と、シュータ8と、切断装置20と、その切断装置の復帰手段9を組み合わせて構成されている。切断装置20には、作業者Aが片方の手(図示の装置では右手)で掴んで押し動かす第1グリップ10が設けられている。
【0028】
支柱2は、図1及び図3に示すように、2本を対にし、それを平行姿勢が保たれるように起立させて台座1の左右に設置している。そしてその2本の支柱2、2間に水平支軸3を横架し、その水平支軸3で切断装置20を揺動可能に吊り下げている。
【0029】
支柱2は、水平支軸3を片持ち構造にする場合には1本でよいが、図のように、2本設けて両支柱で水平支軸3を両持ち構造にすることで、切断装置20の吊下安定性を高めることができる。
【0030】
作業テーブル4は、図5に示す幅方向に2分割されたテーブル4a、4bと、テーブル4aの背面側(作業者Aの側から見て奥の側)の縁に沿って設ける起立した拘束壁4cとからなり、テーブル4a、4b間に帯刃の移動路(通路となる隙間)4dを有する。テーブル4aは固定テーブルとし、テーブル4bはテーブル4aから離反する方向(図6において右方)に移動可能な可動テーブルにしている。
【0031】
可動テーブル4bは、水平支軸3と平行なスライドガイドの含まれたスライド機構(図示せず)を設け、そのスライド機構のスライダで支持することで水平支軸3の長手方向に可動となすことができる。図示の可動テーブル4bはそのような構造にしているが、テーブル4bが可動であることは必須ではない。
【0032】
当て板5は、作業テーブル4上で被切断物Wの先端を受け止める板であり、受け止め位置、すなわち、図6に示した移動路4dからその当て板5までの距離Lを調整することで被切断物Wの切断長さを変化させる。
【0033】
その機能を付与するために、図6に示すスライドガイド11a(これは水平支軸3と平行)と、それに案内されるスライダ11bを備えたスライド機構11を設けてスライダ11bで当て板5を支持しており、スライダ11bを動かして水平支軸3と平行方向に移動させることができる。スライダ11bは、数値制御などを行なって駆動源の力で所定の位置に自動的に移動させるもの、手で動かすもののどちらでもよい。
【0034】
押し板6は、図8に示すように、作業テーブル4上で当て板5に対向させている。その押し板6は、水平支軸3と平行なスライドガイド12aと、手動式のスライダ12bを備えたスライド機構12を設け、スライダ12bに押し板6を取り付けることでスライダ12bと共に当て板5側に向かって進退可能となしている。
【0035】
また、スライドガイド12aを所謂丸棒で構成し、それにスライダ12bを隙間嵌めすることで図9に示すように、スライダ12bをスライドガイド12a上でそのガイドを軸にして回動可能となし、その回動により、押し板6を作業テーブル4上から退避させることを可能にしている。
【0036】
押し板6をヒンジでスライダ12bに連結する構造でも押し板6を退避させることができる。スライドガイド12aに作業テーブル4の外に延び出す延長部を設け、押し板6をその延長部に退避させることも可能であり、退避のための機構は回動式に限定されない。
【0037】
押し板6には、作業者Aが他方の手(図示の装置では左手)で掴む第2グリップ13が設けられている。押し板6の押し込み方向後方に配置したその第2グリップ13に力を加えて押し板6をスライドさせ、その押し板6で被切断物Wを当て板5側に押し動かす。
【0038】
操作盤7は、内部にバンドソーの各部の動作を制御する制御回路を格納しており、表面に起動スイッチや表示パネルなどを有する。この操作盤7は、台座1に取り付けて作業テーブル4の下側に配置しているが、設置場所は特に限定されない。
【0039】
シュータ8は、平面に対して所定の傾斜角を付与した滑り台であって、作業テーブル4の下側に配置される。このシュータ8は、後述する切断装置20のフレーム26に連結されており、切断装置20と一緒になって揺動する。切断装置20が初期位置に復帰したときに、シュータ8の一端側(入口側)はテーブル4bの手前側にせり出し、テーブル4bの手前側の縁から落下した切り取り部位をその一端側(入口側)で受けて所定の方向(図のバンドソーは背面側)に流し、出口にセットされる運搬用のトレーなどに滑落させる。
【0040】
復帰手段9は、ばねやシリンダアクチュエータなどで構成することもできるが、安価で機能劣化の懸念がなく、保守点検、交換などが不要なバランスウエイトが好ましい。例示のバンドソーに採用した復帰手段9は、切断装置20よりも重量の大きいバランスウエイトで構成しており、そのバランスウエイトが水平支軸3の直下に移動するところまで切断装置20が復帰する。
【0041】
この復帰手段9は、作業負担を軽減する好ましい要素である。ただし、切断装置20は作業者が復帰させることもできる。
【0042】
切断装置20の復帰終点は同装置の初期位置であり、その初期位置では、切断装置20が図2に示すように傾斜し、その装置の下側が水平支軸3よりも作業者Aの側(手前側)に置かれる。
【0043】
切断装置20は、図10、図11に示した対をなす駆動ホイール21と従動ホイール22、それ等のホイール間に掛け渡す無端の帯刃23、駆動ホイール21の回転駆動源(モータ)24、帯刃23の露出不要域を囲うカバー25、これらを支持するフレーム26及びそのフレームに取り付ける第1グリップ10を組み合わせて構成されている。
【0044】
図示の切断装置20は、駆動ホイール21のある側が上、従動ホイール22のある側が下になる向きにして上側を水平支軸3で水平支軸3を支点にした揺動が可能となるように支えているが、駆動ホイール21が下、従動ホイール22が上にあっても構わない。
【0045】
駆動ホイール21と従動ホイール22は、それぞれの回転中心の軸が切断装置20の揺動方向を向く姿勢にしており、そのために、両ホイール間に掛け渡した帯刃23は水平支軸3の長手方向に厚みをもつ状態になる。
【0046】
帯刃23は、刃先が前を向き、作業者に対して背を向ける。この帯刃23は、切断に関与する領域23a(往路の一部分)をカバー25から露出させている。また、切断に関与する往路の側でその帯刃23が上から下に走行し、水平支軸3を支点にした切断装置20の揺動でその帯刃23が水平支軸3と直角な面内を移動するように構成されている。この帯刃23は、図12に示すように、刃先が拘束壁4cの壁面を通り越す位置まで切り込み方向に動く。
【0047】
第1グリップ10には、その第1グリップ10が作業者によって掴まれていることを検知して信号を出力するレバー操作式の第1の検知手段14(図1参照)を設けている。また、第2グリップ13にも、第2グリップ13が作業者によって掴まれていることを検知して検知信号を出力するボタン操作の第2の検知手段15(図8参照)を設けている。
【0048】
図示の第1の検知手段14、第2の検知手段15は、指先で操作可能なスイッチで構成しているが、スイッチ以外の検知手段であっても構わない。
【0049】
第2の検知手段15は、押し板6が作業者によって操作されていることを検知して検知信号を出力するものである。従って、押し板6に押された被切断物Wが当て板5に受け止められていることを感圧センサなどで検知する形態に置き換えて同一目的を達成することも可能である。ただし、この第2の検知手段15は必須ではない。
【0050】
なお、例示のバンドソーは、作業者Aが右手で切断装置20を動かす構造になっているが、各要素の右左の位置関係を入れ替えて左手で切断装置20を動かす構造にしても構わない。以下の説明は、作業者が右手で切断装置20を操作する場合を例に挙げて行なう。
【0051】
例示の小口切断用バンドソーは、作業者Aが左手で被切断物Wを当て板5に押し付け、右手で第1グリップ10を掴んで切断装置20の下側を作業者のいる手前側から前方に押し動かす。
【0052】
被切断物Wの長さ(送り込み方向寸法)が長いときには押し板6を作業テーブル4上から退避させて被切断物Wを左手で直接送り込めるようにしており、そのときには、第1の検知手段14から検知信号が出力されていることをもって切断装置20の駆動がなされるようにしている。
【0053】
また、小口切断が進行して被切断物Wが短くなり、送り込みを行なう作業者の左手が移動路4dに近づくときには、押し板6を作業テーブル4上に戻し、第2グリップ13を作業者が左手で掴んで同時に第2の検知手段15を指先でオンにし、この状況で作業を行うことで、第1,第2の検知手段14、15の双方から検知信号が出力されている状況下でのみ切断装置20が作動する構造にしている。
【0054】
このように、回転駆動源24の駆動回路を切り替え可能となして切断装置20を第1の検知手段14からの検知信号のみに基づいて作動させる形態と、第1、第2の検知手段14,15の両者からの検知信号に基づいて作動させる形態を選択可能にしたものは、被切断物Wが長過ぎるなどの理由で押し板6を使用できないときにも切断が行なえる利点がある。
なお、第2の検知手段15を省き、第1の検知手段14の検知信号に基づいて切断装置20を作動させ、この状況で被切断物の送り込みを行なう場合にも、被切断物を押す左手を右手で操作した帯刃の前方に無理に持っていくことはなく(押し板6を使用することで持っていく必要性がなくなる)、あえて持っていかざるを得ない場合には、作業者が危険性を十分に認識して作業を行うことになるので、安全性が十分に確保される。
【0055】
切断装置20を揺動させてその装置の下側を押し動かすと、駆動された帯刃23が作業テーブル4上の被切断物Wに切り込まれる。このとき、帯刃23は上から下に向けて走行しながら前方に移動し、そのために、被切断物Wは作業テーブル4のテーブル面と帯刃の移動方向前方の拘束壁4cに押し付けられ、これにより、被切断物Wが帯刃23に引きずられて動くなどの不具合が起こらず、安定した切断がなされる。
【0056】
また、切断完了後の切断装置20は、復帰手段9から復帰力が加えられているため、大きな力を加えなくても初期位置に復帰する。作業者は、左手で被切断物Wを送り込み、第1グリップ10を掴んだ右手を前にのばして切断装置20を押し動かせばよく、腕を上から下に動かす必要がないため疲れ難く、作業負担の軽減と作業性の向上が図れる。また、作業者に対して背を向けた帯刃を逃がしながら切断を行なうので安全性も高い。
【0057】
なお、被切断物Wの小口切断される部位が小さければ、固定テーブル4aと可動テーブル4bとの間に、排出に必要な隙間を生じさせて切断部位を切断された位置から直接シュータ8上に落下させることができる。
【0058】
小口切断される部位が比較的大きいときには、固定テーブル4aと可動テーブル4b間に切断部位よりも大きな隙間を作り出すのは被切断物の支持安定性が悪化して好ましくないので、切断装置が復帰しているときに小口切断された部位を作業者が手前側に引き寄せてテーブル4bの手前側の縁からシュータ8上に落下させるとよい。
【実施例】
【0059】
高さ:2000mm、幅:1300mm、奥行き:1150mmの例示の構造のバンドソーを試作した。そして、このバンドソーで冷凍ブロック肉、非冷凍ブロック肉、鶏の骨付き腿肉、あばら骨の付いた豚肉などの切断試験を行った。
【0060】
その結果、帯刃が水平方向に走行する構造の試作バンドソー(比較例)では、肉塊が帯刃に引きずられて切断がうまくなされなかったのに対し、この発明のバンドソーでは安定した切断がなされた。
【0061】
また、作業者が腕を大きく上げ下げする必要がなく、また、帯刃が切断時に作業者から逃げていくため作業も楽に安全に行えた。
【符号の説明】
【0062】
1 台座
2 支柱
3 水平支軸
4 作業テーブル
4a 固定テーブル
4b 可動テーブル
4c 拘束壁
4d 帯刃の移動路
5 当て板
6 押し板
7 操作盤
8 シュータ
9 復帰手段
10 第1グリップ
11,12 スライド機構
11a,12a スライドガイド
11b,12b スライダ
13 第2グリップ
14 第1の検知手段
15 第2の検知手段
20 切断装置
21 駆動ホイール
22 従動ホイール
23 帯刃
24 回転駆動源
25 カバー
26 フレーム
A 作業者
W 被切断物
L 帯刃の移動路から当て板までの距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす駆動ホイール(21)と従動ホイール(22)、それ等のホイール間に掛け渡す無端の帯刃(23)、前記駆動ホイールの回転駆動源(24)、前記帯刃の露出不要域を囲うカバー(25)、これらを支持するフレーム(26)及びそのフレームに取り付ける第1グリップ(10)を組み合わせた切断装置(20)と、
その切断装置(20)を、前記駆動ホイール(21)のある側を上にして揺動可能に吊り下げる水平支軸(3)と、
その水平支軸(3)を支持する支柱(2)と、
前記帯刃の移動路(4d)と、被切断物(W)を帯刃の移動方向前方で支える拘束壁(4c)が設けられた作業テーブル(4)と、
その作業テーブル上で被切断物(W)の先端を受け止める受け止め位置を調整可能な当て板(5)を有し、
前記切断装置(20)は、前記第1グリップ(10)を作業者が手で掴んで前記従動ホイール(22)のある下側を作業者のいる手前側から前方に向けて押し動かし、その操作で前記切断装置(20)が前記水平支軸(3)を支点にして揺動して前記帯刃(23)が前記水平支軸(3)と直角な面内を通るように構成され、
その切断装置(20)が押し動かされるときに作業者に対して背を向けた帯刃が上から下に向けて走行しながら前記作業テーブル(4)と前記拘束壁(4c)に支えられた被切断物(W)に切り込まれて切断がなされるように構成された小口切断用バンドソー。
【請求項2】
前記作業テーブル(4)上で前記当て板(5)に対向させる押し板(6)と、その押し板を前記当て板(5)側に向かって進退可能、かつ、前記作業テーブル(4)上から退避可能に支えるスライド機構(12)と、前記第1グリップ(10)が作業者によって掴まれていること検知して検知信号を出力する第1の検知手段(14)を備え、前記第1の検知手段(14)から検知信号が出力されているときに前記切断装置(20)が駆動されるようにした請求項1に記載の小口切断用バンドソー。
【請求項3】
前記押し板(6)が第2グリップ(13)を有し、その第2グリップ(13)が作業者に掴まれたことを検知する第2の検知手段(15)を有し、前記第1の検知手段(14)と第2の検知手段(15)の双方から検知信号が出力されているとき前記切断装置(20)が駆動されるようにした請求項2に記載の小口切断用バンドソー。
【請求項4】
作業テーブル(4)から落した被切断物の切り取り部位を受けて所定の方向に滑落させるシュータ(8)を作業テーブル(4)の下部に備えた請求項1〜3のいずれかに記載の小口切断用バンドソー。
【請求項5】
切断終了点に押し動かされた前記切断装置(20)を初期位置に戻す復帰手段(9)を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の小口切断用バンドソー。
【請求項1】
対をなす駆動ホイール(21)と従動ホイール(22)、それ等のホイール間に掛け渡す無端の帯刃(23)、前記駆動ホイールの回転駆動源(24)、前記帯刃の露出不要域を囲うカバー(25)、これらを支持するフレーム(26)及びそのフレームに取り付ける第1グリップ(10)を組み合わせた切断装置(20)と、
その切断装置(20)を、前記駆動ホイール(21)のある側を上にして揺動可能に吊り下げる水平支軸(3)と、
その水平支軸(3)を支持する支柱(2)と、
前記帯刃の移動路(4d)と、被切断物(W)を帯刃の移動方向前方で支える拘束壁(4c)が設けられた作業テーブル(4)と、
その作業テーブル上で被切断物(W)の先端を受け止める受け止め位置を調整可能な当て板(5)を有し、
前記切断装置(20)は、前記第1グリップ(10)を作業者が手で掴んで前記従動ホイール(22)のある下側を作業者のいる手前側から前方に向けて押し動かし、その操作で前記切断装置(20)が前記水平支軸(3)を支点にして揺動して前記帯刃(23)が前記水平支軸(3)と直角な面内を通るように構成され、
その切断装置(20)が押し動かされるときに作業者に対して背を向けた帯刃が上から下に向けて走行しながら前記作業テーブル(4)と前記拘束壁(4c)に支えられた被切断物(W)に切り込まれて切断がなされるように構成された小口切断用バンドソー。
【請求項2】
前記作業テーブル(4)上で前記当て板(5)に対向させる押し板(6)と、その押し板を前記当て板(5)側に向かって進退可能、かつ、前記作業テーブル(4)上から退避可能に支えるスライド機構(12)と、前記第1グリップ(10)が作業者によって掴まれていること検知して検知信号を出力する第1の検知手段(14)を備え、前記第1の検知手段(14)から検知信号が出力されているときに前記切断装置(20)が駆動されるようにした請求項1に記載の小口切断用バンドソー。
【請求項3】
前記押し板(6)が第2グリップ(13)を有し、その第2グリップ(13)が作業者に掴まれたことを検知する第2の検知手段(15)を有し、前記第1の検知手段(14)と第2の検知手段(15)の双方から検知信号が出力されているとき前記切断装置(20)が駆動されるようにした請求項2に記載の小口切断用バンドソー。
【請求項4】
作業テーブル(4)から落した被切断物の切り取り部位を受けて所定の方向に滑落させるシュータ(8)を作業テーブル(4)の下部に備えた請求項1〜3のいずれかに記載の小口切断用バンドソー。
【請求項5】
切断終了点に押し動かされた前記切断装置(20)を初期位置に戻す復帰手段(9)を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の小口切断用バンドソー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−148033(P2011−148033A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10747(P2010−10747)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000229519)日本ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000229519)日本ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
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