説明

小型ポンプ車

【課題】電動ポンプとバッテリーを機体の低位に纏めて並列状に設置し、重心を低くし走行安定性を向上させると共に、運搬車としても使用することができる利便性に優れたユニット構造の小型ポンプ車を提供する。
【解決手段】左右の車輪2を有する機体フレーム8の後部に杆状のハンドル10を立設した台車3に、フィルター6a付の吸込管6とノズル7a付の吐出管7を備える電動ポンプ5及び、該電動ポンプ5に電源を供給するバッテリー4を並列状に載置して備えた小型ポンプ車とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型ポンプ車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、苗の植え付けと同時に施肥を行う移植機は、作業の中途で液体肥料(ぺースト肥料)を収容する施肥タンクが空になったとき、路上に待機させた肥料供給機(ポンプ車)から、施肥タンクに対しぺースト肥料の補給作業が行われる。
このような補給作業に使用されるポンプ車は、特許文献1で示される構成のものが既に公知である。このポンプ車は、車輪を有し後部にハンドルを設けた機体フレームに、ぺースト肥料を貯留する肥料タンクと、エンジン並びに液体ポンプとを前後方向に搭載した構成となっている。
【特許文献1】特開2003−38011公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示されるポンプ車は、機体フレームに重量のある肥料タンク及び液体ポンプの上部にエンジンを搭載するので、重心が高く走行安定性に劣り凹凸やぬかるみ等のある路面条件が劣悪な農道(畦道等)を走行することが困難な問題がある。
また液体ポンプは吸込管を肥料タンクの底部に直結固定した補給作業専用のポンプにしているため、このポンプ車を利用して例えば、移植機を洗車する際の洗車ポンプや消毒液を散布する薬液ポンプ等として多用途の作業に使用できず、ポンプ用途及びポンプ車の使途が限定される等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明の小型ポンプ車は、第1に、左右の車輪2を有した機体フレーム8の後部に杆状のハンドル10を立設した台車3に、フィルター6a付の吸込管6とノズル7a付の吐出管7を備える電動ポンプ5及び、該電動ポンプ5に電源を供給するバッテリー4を並列状に載置して備えたことを特徴としている。
【0005】
第2に、吸込管6又は吐出管7等のホース類を巻き掛け支持する支持杆15を、ハンドル10の中途部に前後方向に向けて横設したことを特徴としている。
【0006】
第3に、電動ポンプ5とバッテリー4の上方を覆う蓋カバー9aを開閉可能に設けて物置台を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明による小型ポンプ車は、車輪を有する機体フレームの後部にステー型のハンドルを立設した台車に、フィルター付の吸込管とノズル付の吐出管を備える電動ポンプと駆動電源のバッテリーを、機体の低位に纏めて並列状に設置したことにより、走行安定性及び多様なポンプ作業や移動等の利便性に優れ、また軽量でコンパクトなユニット構造の小型ポンプ車を簡潔な構成によって廉価に提供することができる。
【0008】
ハンドルの中途部で前後方向に、ホース類を巻き掛け支持可能な支持杆を設けたことにより、非作業時に長い吸込管や吐出管を機体の側方にはみ出させることなくコンパクトに巻き掛けて収納支持することができる。
【0009】
電動ポンプとバッテリーの上方を開閉可能な蓋カバーで覆うことにより、肥料供給や洗
車等の作業に伴う肥料滴下や水飛沫から、電動ポンプ及びバッテリーの汚損を防止することができる。
また蓋カバーは肥料タンク等の物品を載置可能な物置台に兼用することができ、運搬にも利用可能な利便性の高い小型ポンプ車にすることができる。また支持杆の下方に位置する蓋カバーはホース載台に利用することができるから、吸込管や吐出管の繰り出し及び巻き掛け作業を行い易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。符号1は車輪2を左右に配置した台車3に、バッテリー4から供給される電源によって駆動される電動ポンプ5を搭載した小型ポンプ車である。上記電動ポンプ5はバキュームスイッチを有するポンプ部と、該ポンプ部を駆動する駆動モータを一体化させた公知の構成からなり、その吸込口と吐出口にフィルター6aを有する吸込管6と、ノズル7aを有する吐出管7をそれぞれ備え、吸込管6側から吸い込んだぺースト肥料又は薬液或いは水等の液体を、吐出管7のノズル7aから吐出することができる。
【0011】
この実施形態において小型ポンプ車1の使用例は、農道や畦等の路上に待機させると共に、近隣に準備されたぺースト肥料タンクから、図示しない苗の植付作業と同時にペースト肥料を施肥する移植機の肥料タンクに対し、電動ポンプ5を作動しぺースト肥料を吸込み吐出して供給する場合について説明する。
【0012】
小型ポンプ車1の台車3は、左右の車輪2を有する方形平坦面状の機体フレーム8の上部に、電動ポンプ5とバッテリー4を左右に並べた状態で着脱可能に取付固定される。また機体フレーム8の外周縁には輪郭に沿う板状のカバー側壁9を立設し、内部の電動ポンプ5及びバッテリー4を側方から囲んだ状態でカバーをする。また平面視方形状に立設されるカバー側壁9の開口上部には、物置台として利用可能な蓋カバー9aを後述する構成によって設ける。
【0013】
また台車3はカバー側壁9の後部で杆状体からなる左右のハンドル10を後傾斜状に立設している。この左右のハンドル10は把持部を後方に向け屈曲形成しており、左右の下部を後方に向けて突出させる物置台11で連結し、且つ物置台11の裏側は機体フレーム8から延設した支持杆12と連結することにより剛体構造にする。
【0014】
図示例のハンドル10の左右には、その上方中途位置に棒状の支持杆15を前後方向に向けて略水平姿勢で横設し、ハンドル10の前側と後側に突出する支持杆15,15の下方に広い空間部を形成する。これにより前側の支持杆15に吸込管6及び吐出管7等のホース類を巻き掛けるとき、空間部を利用し整然と纏めながらホース類を機体の側方に大きくはみ出させることなくコンパクトに収納させることができる。このときホース類の重量はハンドル10の前側寄りに位置するので、支持杆15に長いホース類を支持させても、機体バランスを損なうことなく走行安定性を高めることができる。
尚、後側の支持杆15にはぺースト肥料や水等の液体を収容した袋13等を随意に掛け止め支持したり、ホース類の一部を支持させることができる。
【0015】
また車輪2の後方でハンドル基部の略直下には、停止時に機体を略水平姿勢に支持するスタンド16を設置している。スタンド16は機体フレーム8側に設けた支持軸17を介し回動可能に軸支され、支点越え用のスプリング19によって引っ張り付勢している。この構成によりスタンド16は、図1の実線で示すようにスプリング19によって前側のストッパ20に接当して保持状態となりスタンド姿勢にすることができる。またスタンド16を後方回動させると、スプリング19が支持軸17を支点越えして付勢し、支持杆12に接当させた状態の非スタンド姿勢に切り換え保持することができる。
【0016】
次に蓋カバー9aについて説明する。蓋カバー9aはカバー側壁9の後方を部分的に閉鎖する固定カバー21と、該固定カバー21の前側に設けたヒンジ部22を介して開閉回動可能に設けた開閉カバー23とからなる。これにより立設されたカバー側壁9の開口部は蓋カバー9aの広巾な平坦面によって覆われ、カバー側壁9内を防水構造で閉鎖することができ、肥料供給や洗車等の作業時に発生する肥料の滴下や飛散及び水飛沫を遮断し、内部の電動ポンプ5及びバッテリー4の汚損を防止することができる。
【0017】
また電動ポンプ5及びバッテリー4が機体フレーム8に並列状に載置されるため、蓋カバー9aはその高さをできるだけ低く抑えることができ、カバー面上に肥料タンクやホース類等の物品を簡単に載せることができる物置台に兼用することができる。従って、この小型ポンプ車1は電動ポンプ5及びバッテリー4を載置した、簡潔で廉価なユニット構造の小型運搬台車として、他用途にも利用可能な利便性の高いものにすることができる。
【0018】
カバー側壁9の後端部に取付固定される固定カバー21は、後方に延長することにより物置台としての面積を拡張し、延長した後端部を左右のハンドル10の中途部に連結することにより、固定カバー21とハンドル10を互いに補強し合う剛体構造にしている。
また開閉カバー23は後方のヒンジ部22を支点に前側から上方に開動することができるので、電動ポンプ5及びバッテリー4のメンテナンス作業を行う際に、支持杆15に巻き掛けたホース類を外すことなく開閉することができる。
【0019】
バッテリー4と電動ポンプ5はカバー側壁9内に設置されるとき、左右の車輪2の車軸2aを結ぶ軸線上に左右に並べて配置することにより、機体の重心安定性及び走行安定性を高めるようにしている。
またバッテリー4及び電動ポンプ5は機体フレーム8に着脱可能に取付固定しており、両者のメンテナンスを行い易くしている。また電動ポンプ5はバッテリー4に対し長いコード25を介して接続し、且つ取っ手26を備えて設置される。
【0020】
この構成により電動ポンプ5は機体フレーム8との固定を解除したとき、取っ手26を把持して機外への取り出し移動を簡単に行うことができる。これにより例えば小型ポンプ車1の走行移動が困難な場所で、肥料タンクや水源が離間した供給位置にあるとき、小型ポンプ車1を敢えて移動することなく電動ポンプ5及び吸込管6と吐出管7のみを移動させて、供給位置から液体を簡単に吸込吐出することができる。
【0021】
また車輪2はバッテリー4の直流電源によって正逆回転駆動可能とされる走行モーター27を車軸2aに設置している。この走行モーター27及び電動ポンプ5の運転操作は、ハンドル10の把持部に設置されたコントロールボックス29によって行われる。
尚、電動ポンプ5は電源切り換え構造の付設により、家庭用電源を利用した運転も行うことができる。また小型ポンプ車1は軽量構造であるため走行モーター27を省略し手押し走行させることもできる。
【0022】
以上のように構成される小型ポンプ車1は開閉カバー23を閉じ、且つスタンド16をスタンド姿勢に切り換えた定置状態で、図示しない準備された最寄りの液体タンク内に支持杆15から外した吸込管6を挿入し、且つ吐出管7を移植機の肥料タンク内に挿入する。次いでコントロールボックス29のポンプスイッチを操作し電動ポンプ5を駆動することにより、液体タンク内のぺースト肥料を移植機の肥料タンクに供給することができる。

【0023】
ぺースト肥料の供給作業を終了した後は、電動ポンプ5の駆動を停止し、吸込管6及び吐出管7を支持杆15に巻き掛けて収納する。このような供給作業を行うとき、フィルタ
ー6a或いはノズル7aから蓋カバー9a上にぺースト肥料が液垂れすることがあるが、落下したぺースト肥料は蓋カバー9aの固定カバー21及び開閉カバー23によって遮られるので、内部のバッテリー4及び電動ポンプ5の汚損を防止することができる。
【0024】
また長い吐出管7及び吸込管6等のホース類を支持杆15に巻き掛ける際には、開閉カバー23を閉じた状態の蓋カバー9aの上に、ホース類を一旦載せて姿勢を整えた状態で巻き掛け作業を行うことができ、長いホース類を手際よく整然と揃えながらホース類を傷めることなく能率よく収納することができ、また次期のホース類の使用も行い易くすることができる。
【0025】
さらに、電動ポンプ5及びバッテリー4は車軸2aの軸心に近接させ重心安定性よく設置されるから、これらの側方を覆う高さ程度にカバー側壁9を立設し、蓋カバー9aを比較的低い位置に構成することができ、この上に液体タンクを載置する場合に、安定よく支持することができる。
従って、蓋カバー9aに液体タンクを載置して運搬をしたり、載置された液体タンクに吸込管6を差し込んで行う供給作業を能率よく簡単に行うことができる。
【0026】
また大型の液体タンクを常設せず袋掛け用の支持杆15を備え、且つバッテリー4とバキュームスイッチを有する電動ポンプ5を備える小型ポンプ車1は、肥料袋13を支持杆15に掛けた状態において、吸込管6を挿入し電動ポンプ5を作動すると、肥料を吸い込み吐出管7から移植機に簡単に供給することができる。
この際、肥料袋13内の肥料が無くなると、バキュームスイッチが作動し電動ポンプ5を自動停止させるので、この段階で新たな肥料袋13を交換セットし、再び電動ポンプ5を作動し供給作業を連続して行うことができる。
【0027】
肥料の供給作業が終了され、この小型ポンプ車1を利用して移植機の洗車を行う場合には、最寄りの用水路等の水源に吸込管6を挿入して電動ポンプ5を作動させると、吸込管6から吸い込んだ水を吐出管7から移植機に向けて吐出させ、移植機の洗浄作業を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わる小型ポンプ車の側面図である。
【図2】図1の要部の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 小型ポンプ車
2 車輪
3 台車
4 バッテリー
5 電動ポンプ
6 吸込管
7 吐出管
8 機体フレーム
9 カバー側壁
9a 蓋カバー
10 ハンドル
11 物置台
15 支持杆
21 固定カバー
23 開閉カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪(2)を有する機体フレーム(8)の後部に杆状のハンドル(10)を立設した台車(3)に、フィルター(6a)付の吸込管(6)とノズル(7a)付の吐出管(7)を備える電動ポンプ(5)及び、該電動ポンプ(5)に電源を供給するバッテリー(4)を並列状に載置して備えた小型ポンプ車。
【請求項2】
吸込管(6)又は吐出管(7)等のホース類を巻き掛け支持する支持杆(15)を、ハンドル(10)の中途部に前後方向に向けて横設した請求項1記載の小型ポンプ車。
【請求項3】
電動ポンプ(5)とバッテリー(4)の上方を覆う蓋カバー(9a)を開閉可能に設けて物置台を形成した請求項1又は2記載の小型ポンプ車。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−101802(P2006−101802A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295081(P2004−295081)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】