少容量に充填したプロバイオティクス含有組成物
【課題】 本発明の課題は、溶解性が高く、少量ずつの分包が可能であるプロバイオティクス含有組成物を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、プロバイオティクス菌末の分散剤として、顆粒デキストリンを用いることにより、溶解性が高く、少量ずつの分包が可能なプロバイオティクス含有組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、プロバイオティクス菌末の分散剤として、顆粒デキストリンを用いることにより、溶解性が高く、少量ずつの分包が可能なプロバイオティクス含有組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、顆粒デキストリンを分散剤として含有する、少量に分包された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロバイオティクス機能を有する菌株に注目が集められており、これらの菌の摂取による消化管内の改善・健常化とそれに伴う免疫調整作用による予防医学の研究が盛んに行われている。例えば、ビフィズス菌を有効成分とするアレルギー予防/治療用組成物(特許文献1)、Bifidobacterium bifidumの処理物を含有する免疫賦活用組成物(特許文献2)、ビフィズス菌または乳酸菌を含有する感染予防効果を有する組成物(特許文献3)などが報告されている。
【0003】
低出生体重児を含む乳児に対するプロバイオティクスの研究も進められており、プロバイオティクスによる感染予防(非特許文献1〜3)、下痢予防(非特許文献4)、アレルギー発症予防(非特許文献5〜7)、壊死性腸炎の発症予防等(非特許文献8〜10)の様々な有効性に関する研究が行われ、数々の成果が報告されている。
【0004】
ところが、低出生体重児を含む乳児が摂取できるプロバイオティクス含有組成物の量は微量であり、このため例えば、新生児集中治療室(NICU)の極低出生体重児にプロバイオティクスを投与する際には、栄養補給に経口または経鼻的に胃へ挿入した非常に細い(3Fr)カテーテルを用いる必要があるところ、でん粉等を分散剤として用いた従来のプロバイオティクス含有組成物では、母乳等の液体に溶解しきれずに残った固まりがカテーテルに詰まってしまう問題が生じていた。この場合、カテーテルの交換が必要となり、低出生体重児に大きな負担となっていた。
【0005】
しかも、極低出生体重児が1回に飲むミルクの量は1mL程度と極めて少ないが、これにプロバイオティクス菌末含有組成物が十分に溶解する量に適量に分包された適切な形態の組成物はこれまでのところ存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−273852
【特許文献2】WO2006/087913
【特許文献3】WO2007/020884
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Br J Nutr. 2009 Jun;101(11):1722-6.
【非特許文献2】Pediatrics. 2008 Jul;122(1):8-12.
【非特許文献3】Pediatrics. 2005 Jan;115(1):5-9.
【非特許文献4】Asia Pac J Clin Nutr. 2007;16(3):435-42.
【非特許文献5】J Allergy Clin Immunol. 2007 May;119(5):1174-80.
【非特許文献6】J Allergy Clin Immunol. 2008 Jan;121(1):116-121.
【非特許文献7】Lancet. 2001 Apr 7;357(9262):1076-9.
【非特許文献8】Int J Infect Dis. 1999 Summer;3(4):197-202.
【非特許文献9】Lancet. 2007 May 12;369(9573):1614-20.
【非特許文献10】Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2009; 297: G940-G949.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、従来の成人や乳児用に製造されたプロバイオティクス含有組成物では一包内の含有量が多すぎるために母乳等の液体に溶解しきれないことにより生じる極低出生体重児などに用いられるカテーテルでの目詰まりが起こらないよう、十分に溶解することができ、かつ分割して用いる必要のない少量に分包されたプロバイオティクス含有組成物であれば、上記の問題点が一挙に解決できることに着目した。したがって本発明の課題は、前記の問題点を解消し、溶解性が高く、かつ極低出生体重児などにも用いることができる程度に少量ずつに分包されたプロバイオティクス含有組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プロバイオティクスの分包量については、1.2gに満たない少量で分包可能な分散剤としては、乳糖やグラニュー糖の結晶質、低粘度の液体状の物質が知られているが、乳糖やグラニュー糖を分散剤として用いたプロバイオティクス含有組成物の場合では、極低出生体重児に与える投与液中の浸透圧を高めるために乳児の腸管に負荷が生じる問題に加え、乳児の血糖等に与える影響が懸念される。
【0010】
一方、デキストリンを主成分とする組成物を少量で分包することはこれまで行われていないが、本発明者らは、プロバイオティクス含有組成物における分散剤としてデキストリンが有用と考え、これをあえて使用して、少量分包を可能にすべく鋭意研究を重ねる中で、少量に分包しようとすると分散剤が計量升に張り付いて計量升から落ちなくなったり、分散剤が充填ラインにへばり付く等の問題により質量にバラつきが生じてしまい、均一に正確に分包することの困難性に直面した。この問題を解決すべくさらに研究を進めたところ、分散剤を顆粒デキストリンの形態とすることにより、計量升から問題なく落下し、充填ラインへのへばり付きが軽減されて前記の問題が解消され、例えばスティック状の包装材に安定的に、正確に分包することを可能にすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、顆粒デキストリンを含有し、0.1g〜1.1gで分包されてなる組成物に関する。
また、本発明は、0.1g〜0.9gで分包されてなる、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、0.1g〜0.6gで分包されてなる、前記の組成物に関する。
【0012】
また本発明は、さらにプロバイオティクス菌末を含有する、前記組成物に関する。
さらに本発明は、顆粒デキストリンを50重量%以上含有する、前記組成物に関する。
【0013】
また本発明は、102〜1011cfu/分包のプロバイオティクスを含有する、前記のプロバイオティクス含有組成物に関する。
さらに本発明は、プロバイオティクスが乳酸菌および/またはビフィズス菌である、前記のプロバイオティクス含有組成物に関する。
【0014】
また本発明は、顆粒デキストリンが乾燥処理された顆粒デキストリンである、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、顆粒デキストリンの水分活性が0.0〜0.3である、前記の組成物に関する。
【0015】
また本発明は、顆粒デキストリンの55%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの30%以上が粒度100メッシュ以下である、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、顆粒デキストリンの65%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの40%以上が粒度100メッシュ以下である、前記の組成物に関する。
【0016】
また本発明は、低出生体重児に投与するための、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、一包に含有された組成物を、0.1〜2mlの液体に溶解し、得られた溶液を3〜4Frカテーテルを用いて、一回で低出生体重児に胃内投与するための、前記の組成物に関する。
【0017】
また本発明は、プロバイオティクス含有組成物を製造する方法であって、顆粒デキストリンおよびプロバイオティクス菌末を混合する工程、
混合して得られた組成物を、0.1g〜1.1gずつ分包する工程、
を含む、前記方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、分包が、混合して得られたスティック状の包装体に落下させることにより行われる、前記の製造方法に関する。
また本発明は、顆粒デキストリンを混合する前に予め乾燥する工程を含む、前記の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の組成物は、分散剤としてデキストリンを用いるため、極低出生体重児に与える投与液中の浸透圧を高めるために乳児の腸管に負荷や、乳児の血糖等に影響を与えることがなく、さらに、デキストリンを顆粒とすることにより、溶解性が高いだけでなく、充填性能が高いため、少量での分包を可能にする。かかる組成物は、少量の液体に溶解可能な量の組成物を一包に包装することが可能なため、開封後に一包内の組成物を分割して用いる必要がなく、1回に飲むミルクの量が少ない低出生体重児においても、1回投与分を衛生的に利用することができる。
【0020】
また、顆粒状のデキストリンとすることにより、包装材料に落下させて分包するだけで質量分布にばらつきがなく正確な分包を可能にするという製造上の利点をも有する。
【0021】
さらに、溶解性が高いため、3Frなどの非常に細いカテーテルを用いた経鼻または経口胃内投与において、カテーテルに組成物が詰まる問題が起こることもなく、カテーテルの出し入れが大きな負担となる低出生体重児においても、安心して使用することができる。
【0022】
さらに、本発明の別の態様によれば、顆粒デキストリンの水分活性を低減させることにより、すなわち、例えば顆粒デキストリンをプロバイオティクス菌末と混合する前に加熱乾燥することにより、水分活性を低下させ、プロバイオティクス菌末の生残性を高め、分包されたプロバイオティクス含有組成物の長期保存後の使用における有効性を確かなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】粉末デキストリンの溶解性(10秒後)を示す図。
【図2】粉末デキストリンの溶解性(20秒後)を示す図。
【図3】顆粒デキストリンの溶解性(10秒後)を示す図。
【図4】顆粒デキストリンの溶解性(20秒後)を示す図。
【図5】デキストリン0.5g充填における充填量の分布図
【図6】デキストリンの粒度分布図
【図7】0.5g充填における充填量の分布図。
【図8】0.8g充填における充填量の分布図。
【図9】1.0g充填における充填量の分布図。
【図10】1.5g充填における充填量の分布図。
【図11】40℃での保存性を示す図。
【図12】50℃での保存性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書における「顆粒デキストリン」とは、でんぷんの加水分解により得られたデキストリンを、造粒することにより顆粒状とした粉末を意味する。
本発明における顆粒デキストリンの粒径は、とくに限定されることはないが、少量の分包を実現する観点から、プロバイオティクス等の有効成分と均一に混合できれば、出来る限り粒径の大きな顆粒デキストリンを用いることが好ましい。
【0025】
しかし、大きな粒径の顆粒を用いた場合、通常は粉末状であるプロバイオティクスの生菌末と均一に混合することは難しく、顆粒デキストリンをプロバイオティクス含有組成物の分散剤に用いることは容易ではない。一方、小さな粒径の顆粒デキストリンの性質は、かさ比重が0.6g/cm3程度である粉末状のデキストリンの性質に類似し、べた付きやすい性質を持つようになり、かさ比重が重いがために少量分包が困難となる。
【0026】
そこで、粉末状であるプロバイオティクスの生菌末と混合する粒径の小さな粒径の顆粒デキストリンで、少量での分包が可能な顆粒デキストリンを見出すことを試みた結果、プロバイオティクスの生菌の分散剤として少量での分包に適した粒径の顆粒デキストリンとしては、顆粒デキストリンの55%以上、とくに65%以上が150メッシュ以下の粒径(150メッシュの粒径と同じかまたはそれより大きい粒径)で占められ、顆粒デキストリンの30%以上、とくに40%以上が100メッシュ以下の粒径で占められていることが好ましい。
【0027】
また本発明における顆粒デキストリンのかさ比重は、とくに限定されないが、少量での充填への適性などの観点から、0.6g/cm3よりも軽いことが好ましいと考えられる。
【0028】
本発明書において「分包」とは、所定量の組成物を小分けに包装することを意味する。本発明において、1回使用量ずつ包装すること、および複数個で1回使用量となるように包装することが好ましく、1回使用量を包装することがとくに好ましい。
本発明において、分包される組成物における顆粒デキストリンの含有量は、少量で分包する適性、水分活性を低く維持するなどの観点から、好ましくは50重量%、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは90重量%である。
【0029】
本明細書において「プロバイオティクス」とは、腸内微生物が形成する腸内フローラのバランスを改善することによって宿主動物に有益に働く生菌を意味する。
本発明におけるプロバイオティクスとしては、例えば、乳酸菌およびビフィズス菌が挙げられ、とくに限定されないが、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ラクトバシルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス属(Lactococcus)等に属する菌類が例示できる。
【0030】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)株、ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)株、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)株、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)株、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)株等が挙げられる。これらのうち好適なものは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)株であり、さらに好ましくは、Bifidobacterium bifidum OLB6378である。
【0031】
本発明で用いるビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacteriumbifidum)OLB6378株は下記の条件で寄託申請した。
(1) 受領機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2) 連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 電話番号0438−20−5580
(3) 受領番号:NITE BP−31
(4) 識別のための表示:Bifidobacterium bifidum OLB6378
(5) 受領日: 平成16年10月26日
【0032】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)OLB6378株は、以下の菌学的性質を有するものである。
【0033】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)OLB6378株は、ヒト乳幼児糞便由来のグラム陽性偏性嫌気性桿菌である。Lactobacilli MRS Broth(BD)に本菌を接種し、AnaeroPack・ケンキ(三菱ガス化学製)使用による嫌気状態にて37℃、18時間培養すると、Y字型の菌形態が観察される。また、Bifidobacteirum bifidumの特異的プライマー(腸内フローラシンポジウム8、腸内フローラーの分子生物学的検出・同定、光岡知足、松本隆広)、具体的には、16S rDNAの種特異的プライマーであるBiBIF−1:CCA CAT GAT CGC ATG TGA TT、およびBiBIF−2:CCG AAG GCT TGC TCC CAA Aを用いたPCRでPCR産物が認められた。
【0034】
ラクトバシルス(Lactobacillus)属としては、例えばラクトバシルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)株、ラクトバシルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)株等が挙げられる。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属としては、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)株等が挙げられる。
【0035】
しかし、本発明はこれらの種に限定されるものではなく、またこれらの菌株については、単独あるいは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
本明細書における「プロバイオティクス菌末」とは、プロバイオティクスの生菌を培養したものに、分散剤・保護剤等の添加剤を加えた菌体液を凍結乾燥等により調製した粉末を意味する。本発明における、プロバイオティクス菌末に用いられる添加剤としては、とくに限定されないが、糖質、タンパク質、脂質、例えば、デキストリン、トレハロース、ショ糖、オリゴ糖、乳タンパク質等が挙げられる。しかし、極低出生体重児に投与するプロバイオティクスとして用いる場合では、その製造工程で不溶性のデンプンを使用することは好ましくない。
【0037】
また、プロバイオティクス菌末は、顆粒デキストリンとは異なる粉体とすることにより、高温の加熱処理を伴う造粒処理を施す必要がなく、プロバイオティクス生菌の生残性を高く保持することができる。
本発明のプロバイオティクス含有組成物の製造方法において、組成物の分包の方法はとくに限定されないが、生産効率、秤量の精度、衛生面等の観点から、原料を落下させて包装体中に充填する自動スティック充填機などにより行うことが好ましい。
また、本発明の組成物の分包形状はとくに限定されないが、輸送時、保管時、投与時などの取り扱いやすさの観点から、スティック状の包装体が好ましい。
【0038】
本発明において、極低出生体重児に用いるプロバイオティクスを実現するための一包に分包されるプロバイオティクス含有組成物の量は、1.2g以上になると1.0mlの母乳に溶解する必要性を有する低出生体重児用としては実用的ではなく、好ましくは1.1g以下、より好ましくは0.9g以下、さらに好ましくは0.6g以下である。一包に含有される組成物の量の下限値は、有効量のプロバイオティクス含有せしめる範囲であり、かつ技術的に可能な範囲であれば、とくに限定されることはなく、例えば、0.1gに設定することができる。
【0039】
また、包装性、取り扱いやすさなどの観点から、一包に分包される組成物の量は、0.1〜1.1g、好ましくは0.1g〜0.9g、さらに好ましくは0.1g〜0.6gである。
【0040】
本発明におけるプロバイオティクス菌末の含有量は、有効量のプロバイオティクス生菌を提供せしめる量であれば、とくに限定されることはない。好ましいプロバイオティクス生菌の含有量は、102〜1011cfu/分包であり、さらに好ましくは105〜1011cfu/分包、とくに好ましくは108〜1011cfu/分包である。
【0041】
本発明における顆粒デキストリンは、菌の生残性などの観点から、水分含有量が低いことが望ましい。顆粒デキストリンの水分活性(Aw)は、好ましくは0.0〜0.3さらに好ましくは0.0〜0.2である。
【0042】
本発明における顆粒デキストリンの乾燥処理の方法はとくに限定されないが、真空乾燥、乾熱乾燥などにより行うことができ、微生物学的な衛生面などの観点から、乾熱乾燥が好ましい。
顆粒デキストリンの乾燥処理は、プロバイオティクス菌末との混合の前に行うことが好ましい。これにより、プロバイオティクス菌末の高温における加熱処理が不要なため、プロバイオティクス生菌の生残性を保ちつつ、プロバイオティクス含有組成物全体の水分活性を低くすることができる。
【0043】
本発明において、プロバイオティクス菌末と顆粒デキストリンとの配合比は、とくに限定されることはなく、一包に含有される、有効量のプロバイオティクス生菌を含み、また、組成物全体の量が、分包工程や、分包された後の取り扱いなどを考慮して、適宜調節することができるが、少量で分包する適性、水分活性を低く維持するなどの観点から、顆粒デキストリンの配合量は好ましくは1:1〜1:50以上、より好ましくは、さらに好ましくは1:10〜1:35、とくに好ましくは1:20〜1:25である。
【0044】
本明細書において「低出生体重児」とは、出生2,500g未満の新生児を意味し、出生1,500g未満の極低出生体重児、出生1,000g未満の超低出生体重児も含まれる。
【0045】
低出生体重児に投与するための本発明において、組成物を溶解する液体の容量は、低出生体重児が1回に摂取できる範囲であればよく、例えば、0.1〜2ml程度である。液体および本発明の組成物の摂取量は、低出生体重児の成長に合わせて徐々に増加することができ、成長後では10ml程度の溶液を投与してもよい。
この場合の「液体」とは、通常的に新生児に投与される白湯、調製乳、母乳等の液体であればとくに限定されることはないが、栄養的な観点から、母乳および調製乳が好ましく、母乳がとくに好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例に基づいて更に詳細に説明を加えるが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
実施例1
乾熱乾燥により水分活性を0.2以下とした顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)960gをOLB6378株凍結乾燥原菌末40gと混合し、1000gの組成物を得た。顆粒デキストリンのかさ比重を計測したところ、0.44g/cm3であった。
【0048】
比較例1
実施例に用いた顆粒デキストリンと同組成の粉末デキストリン(松谷化学、粉末タイプTK-16)を乾熱乾燥した粉末デキストリンを960gをOLB6378株凍結乾燥原菌末40gを混合し、1000gの組成物を得た。粉末デキストリンのかさ比重を計測したところ、0.60g/cm3であった。
【0049】
[試験例1]溶解性試験
調製乳および母乳では濁りが強く、溶解性を確認するのが困難であるため、白湯を用いて試験を実施した。加えて凍結乾燥菌末を含む組成物を用いて試験した場合でも、菌体によって液がわずかに濁るため、溶解性を明確に示すことは難しいため、デキストリンのみを用いて溶解性試験を実施した。
比較例1よび実施例1で使用したデキストリン1.0gを、それぞれ蒸留水(GIBCO)9mlに添加して軽く撹拌し、10秒後および20秒後の状態を観察した。
【0050】
粉末デキストリンは、10秒後では“飴状”になり(図1)、20秒後の状態も10秒後の飴状から変化することはなかった(図2)。
一方、顆粒デキストリンは、速やかに溶解され、10秒後では僅かに未溶解の組成物が確認された程度で(図3)、20秒後ではほぼ完全に溶解された(図4)。
【0051】
[試験例2]少量の白湯における溶解性試験
白湯1.0mlに、比較例1および実施例1で使用したデキストリンをそれぞれ0.5gを添加して、軽く攪拌した。
粉末デキストリンは、完全に溶解されることはなく、飴状となった。一方、顆粒デキストリンは、ほぼ完全に溶解された。
また、得られた溶液を3Frのカテーテルにシリンジを用いて送液したところ、顆粒デキストリンの溶液はスムーズに全量を送液できたが、粉末デキストリンの溶液は目詰まりを起こし送液できない場合があった。
【0052】
[試験例3]少量の調製乳における溶解性試験
乳児用調製粉乳(明治ほほえみ:明治乳業)約27gを200mlの白湯(約70℃)に溶解し、調製乳を得た。得られた調製乳1.0mlに、比較例1および実施例1で得られたプロバイオティクス含有組成物をそれぞれ0.5gを添加して、軽く攪拌した。
粉末デキストリンを用いた組成物(比較例1)は、完全に溶解されることはなく、飴状となった。一方、顆粒デキストリンを用いた組成物(実施例1)は、ほぼ完全に溶解された。
【0053】
また、得られた溶液を3Frのカテーテルにシリンジを用いて送液したところ、顆粒デキストリンを用いた組成物(実施例1)は、スムーズに全量を送液できたが、粉末デキストリンを用いた組成物(比較例1)は、目詰まりを起こし送液できない場合があった。
この結果から粉末デキストリンを用いた比較例1の組成物と比較して、顆粒デキストリンを用いた実施例1の組成物の溶解性が顕著に高いことがわかる。
【0054】
[試験例4]デキストリンのスティック充填適性試験:0.5g充填
(4−1)顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)を4連のスティック充填機(NP600:三光機械)のホッパーに入れ、充填量を0.55gに設定し、スティック100本を充填した。
(4−2)同様に、顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)をスピードミル(メッシュ42:岡田精工)で粉砕して得られた粒径の小さな顆粒デキストリンのミル処理物を用いて、スティック100本を充填した。
【0055】
(4−3)同様に、顆粒デキストリンのミル処理物と顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)とを1:1で混合した混合物を用いて、スティック100本を充填した。
(4−4)同様に、粉末デキストリン(松谷化学、粉末タイプTK-16)を用いて、スティック100本を充填した。
【0056】
粉末デキストリン(4−4)、および顆粒デキストリンのミル処理物(4−2)を充填した際では、デキストリンが小さな計量マスに張り付いて計量マスから落下しない現象、およびスティック内容物を計量マスからスティックに誘導するノズル部位で粉末組成物が詰まる現象を生じた。そのため、スティック内に粉末組成物が充填されないばかりでなく、ノズル部位で詰まった大量の粉末組成物がスティック内に一度に入る状況となり、スティック充填量を測定するに至らなかった。
【0057】
顆粒デキストリンのミル処理物と顆粒デキストリンとを1:1で混合した混合物(4−3)を充填した際では、スティック100本の充填量は0.571±0.041(最小充填量は0.433g、最大充填量は0.661g)であった。
顆粒デキストリン(4−1)を充填した際では、スティック100本の充填量は0.548±0.023(最小充填量は0.511g、最大充填量は0.622g)であった。充填量の分布を図5に示す。
【0058】
デキストリンのスティック充填適性試験に於いて、試験例4で供試したデキストリンによって大きな差が認められたため、供試したデキストリンの粒度を測定し、少量の充填が可能となる顆粒デキストリンの粒径を見出した。デキストリンの粒度分布を図6に示す。
【0059】
[試験例5]プロバイオティクス含有組成物のスティック充填適性試験:0.5g充填
実施例1および比較例1で得られた組成物を4連のスティック充填機(NP600:三光機械)のホッパーに入れ、充填量を0.55gに設定し、スティック100本を充填した。これを4回繰り返し、各スティック中の充填量を測定した。
【0060】
比較例1の粉末組成物は、小さな計量マスに張り付いて計量マスから落下しない現象、およびスティック内容物を計量マスからスティックに誘導するノズル部位で粉末組成物が詰まる現象を生じた。そのため、スティック内に粉末組成物が充填されないばかりでなく、ノズル部位で詰まった大量の粉末組成物がスティック内に一度に入る状況となり、スティック充填量を測定するに至らなかった。
【0061】
実施例1の顆粒組成物は、小さな計量マスからスティック内に落下し、とくに問題なく良好に充填された。スティック400本の充填量は0.540±0.009(最小充填量は0.518g、最大充填量は0.563g)であった。充填量の分布を図7に示す。
【0062】
[試験例6]プロバイオティクス含有組成物のスティック充填適性試験:0.8g充填
充填量を0.85gに設定し、試験例5と同様にスティック充填を行った。
スティック400本の充填量はそれぞれ、実施例1の組成物は、0.845±0.012(最小充填量0.816g、最大充填量0.879g)、比較例1の組成物は0.899±0.053(最小充填量0.815、最大充填量1.420)であった。それぞれの充填量の分布を図8に示す。
【0063】
[試験例7]プロバイオティクス含有デキストリンのスティック充填適性試験:1.0g充填
充填量を1.05gに設定し、試験例5と同様にスティック充填を行った。
スティック400本の充填量はそれぞれ、実施例1の組成物は1.035±0.012g(最小充填量1.009g、最大充填量1.067g)、比較例1の組成物は1.115±0.033g(最小充填量1.026g、最大充填量1.295g)であった。それぞれの充填量の分布を図9に示す。
【0064】
[参考例1]プロバイオティクス含有デキストリンのスティック充填適性試験:1.5g充填
充填量を1.55gに設定し、試験例5と同様にスティック充填を行った。
スティック400本の充填量はそれぞれ、実施例1の組成物は1.551±0.019g(最小充填量1.510g、最大充填量1.614g)、比較例1の組成物は1.614±0.032g(最小充填量1.512g、最大充填量1.719g)であった。それぞれの充填量の分布を図10に示す。
【0065】
<充填適性の判断>
試験例4〜8および参考例1において、充填量が目標値を下回ることがないことを目的し、充填量の設定は、目標値+0.05gとした。
試験例5〜8および参考例1において、顆粒デキストリンを用いた組成物の充填量平均値と、粉末デキストリンを用いた組成物の充填量平均値とに大きな開きがあり、粉末デキストリンを用いた組成物では設定した充填量を著しく乖離した値であった。さらに、標準偏差についても、顆粒デキストリンを用いた組成物の標準偏差が粉末デキストリンを用いた組成物の標準偏差よりも小さく、顆粒デキストリンを用いた組成物の充填に適していた。
【0066】
これにより、粉末デキストリンを用いた比較例1の組成物と比較して、顆粒デキストリンを用いた実施例1の組成物は最小充填量と最大充填量の幅が狭く、標準偏差(SD)も小さいことから、顆粒デキストリンを用いた組成物の充填適性が顕著に高いことが分かる。また、充填量の設定値が小さいほど、分散剤として顆粒デキストリンを用いる必要性が高いことが分かる。
【0067】
実施例2
実施例1で用いた顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK-16)の未乾燥物(水分活性:0.43)960gとOLB6378株凍結乾燥原菌末40gと混合し、1000gの組成物を得た。
【0068】
[試験例8]生菌保存性試験
実施例1(乾燥処理した顆粒デキストリンを用いて調製したプロバイオティクス組成物)および実施例2(乾燥処理していない顆粒デキストリンを用いて調製したプロバイオティクス組成物)で得られた組成物をそれぞれ、試験例5と同様に0.5gスティック充填を行った。得られたスティックを、それぞれ充填直後に加え、40℃または50℃で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の間保存した後、スティック内の生菌数をBL寒天培地(栄研)で測定した。
【0069】
試験例8における、保存温度別(40℃、50℃)の保存性を示す結果を図11および図12に示す。
これらの結果、乾燥処理を施した顆粒デキストリンを分散剤とした組成物は、乾燥処理を施していないものと比較して、プロバイオティクス生菌の生残性が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、溶解性が高く、少量ずつの分包が可能なプロバイオティクス含有組成物、とくに、少量の液体に溶解可能な量のプロバイオティクス含有組成物が一包に包装された、1回投与分を低出生体重児に衛生的に投与することのできる、プロバイオティクス含有組成物を提供することができる。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、顆粒デキストリンを分散剤として含有する、少量に分包された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロバイオティクス機能を有する菌株に注目が集められており、これらの菌の摂取による消化管内の改善・健常化とそれに伴う免疫調整作用による予防医学の研究が盛んに行われている。例えば、ビフィズス菌を有効成分とするアレルギー予防/治療用組成物(特許文献1)、Bifidobacterium bifidumの処理物を含有する免疫賦活用組成物(特許文献2)、ビフィズス菌または乳酸菌を含有する感染予防効果を有する組成物(特許文献3)などが報告されている。
【0003】
低出生体重児を含む乳児に対するプロバイオティクスの研究も進められており、プロバイオティクスによる感染予防(非特許文献1〜3)、下痢予防(非特許文献4)、アレルギー発症予防(非特許文献5〜7)、壊死性腸炎の発症予防等(非特許文献8〜10)の様々な有効性に関する研究が行われ、数々の成果が報告されている。
【0004】
ところが、低出生体重児を含む乳児が摂取できるプロバイオティクス含有組成物の量は微量であり、このため例えば、新生児集中治療室(NICU)の極低出生体重児にプロバイオティクスを投与する際には、栄養補給に経口または経鼻的に胃へ挿入した非常に細い(3Fr)カテーテルを用いる必要があるところ、でん粉等を分散剤として用いた従来のプロバイオティクス含有組成物では、母乳等の液体に溶解しきれずに残った固まりがカテーテルに詰まってしまう問題が生じていた。この場合、カテーテルの交換が必要となり、低出生体重児に大きな負担となっていた。
【0005】
しかも、極低出生体重児が1回に飲むミルクの量は1mL程度と極めて少ないが、これにプロバイオティクス菌末含有組成物が十分に溶解する量に適量に分包された適切な形態の組成物はこれまでのところ存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−273852
【特許文献2】WO2006/087913
【特許文献3】WO2007/020884
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Br J Nutr. 2009 Jun;101(11):1722-6.
【非特許文献2】Pediatrics. 2008 Jul;122(1):8-12.
【非特許文献3】Pediatrics. 2005 Jan;115(1):5-9.
【非特許文献4】Asia Pac J Clin Nutr. 2007;16(3):435-42.
【非特許文献5】J Allergy Clin Immunol. 2007 May;119(5):1174-80.
【非特許文献6】J Allergy Clin Immunol. 2008 Jan;121(1):116-121.
【非特許文献7】Lancet. 2001 Apr 7;357(9262):1076-9.
【非特許文献8】Int J Infect Dis. 1999 Summer;3(4):197-202.
【非特許文献9】Lancet. 2007 May 12;369(9573):1614-20.
【非特許文献10】Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2009; 297: G940-G949.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、従来の成人や乳児用に製造されたプロバイオティクス含有組成物では一包内の含有量が多すぎるために母乳等の液体に溶解しきれないことにより生じる極低出生体重児などに用いられるカテーテルでの目詰まりが起こらないよう、十分に溶解することができ、かつ分割して用いる必要のない少量に分包されたプロバイオティクス含有組成物であれば、上記の問題点が一挙に解決できることに着目した。したがって本発明の課題は、前記の問題点を解消し、溶解性が高く、かつ極低出生体重児などにも用いることができる程度に少量ずつに分包されたプロバイオティクス含有組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プロバイオティクスの分包量については、1.2gに満たない少量で分包可能な分散剤としては、乳糖やグラニュー糖の結晶質、低粘度の液体状の物質が知られているが、乳糖やグラニュー糖を分散剤として用いたプロバイオティクス含有組成物の場合では、極低出生体重児に与える投与液中の浸透圧を高めるために乳児の腸管に負荷が生じる問題に加え、乳児の血糖等に与える影響が懸念される。
【0010】
一方、デキストリンを主成分とする組成物を少量で分包することはこれまで行われていないが、本発明者らは、プロバイオティクス含有組成物における分散剤としてデキストリンが有用と考え、これをあえて使用して、少量分包を可能にすべく鋭意研究を重ねる中で、少量に分包しようとすると分散剤が計量升に張り付いて計量升から落ちなくなったり、分散剤が充填ラインにへばり付く等の問題により質量にバラつきが生じてしまい、均一に正確に分包することの困難性に直面した。この問題を解決すべくさらに研究を進めたところ、分散剤を顆粒デキストリンの形態とすることにより、計量升から問題なく落下し、充填ラインへのへばり付きが軽減されて前記の問題が解消され、例えばスティック状の包装材に安定的に、正確に分包することを可能にすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、顆粒デキストリンを含有し、0.1g〜1.1gで分包されてなる組成物に関する。
また、本発明は、0.1g〜0.9gで分包されてなる、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、0.1g〜0.6gで分包されてなる、前記の組成物に関する。
【0012】
また本発明は、さらにプロバイオティクス菌末を含有する、前記組成物に関する。
さらに本発明は、顆粒デキストリンを50重量%以上含有する、前記組成物に関する。
【0013】
また本発明は、102〜1011cfu/分包のプロバイオティクスを含有する、前記のプロバイオティクス含有組成物に関する。
さらに本発明は、プロバイオティクスが乳酸菌および/またはビフィズス菌である、前記のプロバイオティクス含有組成物に関する。
【0014】
また本発明は、顆粒デキストリンが乾燥処理された顆粒デキストリンである、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、顆粒デキストリンの水分活性が0.0〜0.3である、前記の組成物に関する。
【0015】
また本発明は、顆粒デキストリンの55%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの30%以上が粒度100メッシュ以下である、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、顆粒デキストリンの65%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの40%以上が粒度100メッシュ以下である、前記の組成物に関する。
【0016】
また本発明は、低出生体重児に投与するための、前記の組成物に関する。
さらに本発明は、一包に含有された組成物を、0.1〜2mlの液体に溶解し、得られた溶液を3〜4Frカテーテルを用いて、一回で低出生体重児に胃内投与するための、前記の組成物に関する。
【0017】
また本発明は、プロバイオティクス含有組成物を製造する方法であって、顆粒デキストリンおよびプロバイオティクス菌末を混合する工程、
混合して得られた組成物を、0.1g〜1.1gずつ分包する工程、
を含む、前記方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、分包が、混合して得られたスティック状の包装体に落下させることにより行われる、前記の製造方法に関する。
また本発明は、顆粒デキストリンを混合する前に予め乾燥する工程を含む、前記の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の組成物は、分散剤としてデキストリンを用いるため、極低出生体重児に与える投与液中の浸透圧を高めるために乳児の腸管に負荷や、乳児の血糖等に影響を与えることがなく、さらに、デキストリンを顆粒とすることにより、溶解性が高いだけでなく、充填性能が高いため、少量での分包を可能にする。かかる組成物は、少量の液体に溶解可能な量の組成物を一包に包装することが可能なため、開封後に一包内の組成物を分割して用いる必要がなく、1回に飲むミルクの量が少ない低出生体重児においても、1回投与分を衛生的に利用することができる。
【0020】
また、顆粒状のデキストリンとすることにより、包装材料に落下させて分包するだけで質量分布にばらつきがなく正確な分包を可能にするという製造上の利点をも有する。
【0021】
さらに、溶解性が高いため、3Frなどの非常に細いカテーテルを用いた経鼻または経口胃内投与において、カテーテルに組成物が詰まる問題が起こることもなく、カテーテルの出し入れが大きな負担となる低出生体重児においても、安心して使用することができる。
【0022】
さらに、本発明の別の態様によれば、顆粒デキストリンの水分活性を低減させることにより、すなわち、例えば顆粒デキストリンをプロバイオティクス菌末と混合する前に加熱乾燥することにより、水分活性を低下させ、プロバイオティクス菌末の生残性を高め、分包されたプロバイオティクス含有組成物の長期保存後の使用における有効性を確かなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】粉末デキストリンの溶解性(10秒後)を示す図。
【図2】粉末デキストリンの溶解性(20秒後)を示す図。
【図3】顆粒デキストリンの溶解性(10秒後)を示す図。
【図4】顆粒デキストリンの溶解性(20秒後)を示す図。
【図5】デキストリン0.5g充填における充填量の分布図
【図6】デキストリンの粒度分布図
【図7】0.5g充填における充填量の分布図。
【図8】0.8g充填における充填量の分布図。
【図9】1.0g充填における充填量の分布図。
【図10】1.5g充填における充填量の分布図。
【図11】40℃での保存性を示す図。
【図12】50℃での保存性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書における「顆粒デキストリン」とは、でんぷんの加水分解により得られたデキストリンを、造粒することにより顆粒状とした粉末を意味する。
本発明における顆粒デキストリンの粒径は、とくに限定されることはないが、少量の分包を実現する観点から、プロバイオティクス等の有効成分と均一に混合できれば、出来る限り粒径の大きな顆粒デキストリンを用いることが好ましい。
【0025】
しかし、大きな粒径の顆粒を用いた場合、通常は粉末状であるプロバイオティクスの生菌末と均一に混合することは難しく、顆粒デキストリンをプロバイオティクス含有組成物の分散剤に用いることは容易ではない。一方、小さな粒径の顆粒デキストリンの性質は、かさ比重が0.6g/cm3程度である粉末状のデキストリンの性質に類似し、べた付きやすい性質を持つようになり、かさ比重が重いがために少量分包が困難となる。
【0026】
そこで、粉末状であるプロバイオティクスの生菌末と混合する粒径の小さな粒径の顆粒デキストリンで、少量での分包が可能な顆粒デキストリンを見出すことを試みた結果、プロバイオティクスの生菌の分散剤として少量での分包に適した粒径の顆粒デキストリンとしては、顆粒デキストリンの55%以上、とくに65%以上が150メッシュ以下の粒径(150メッシュの粒径と同じかまたはそれより大きい粒径)で占められ、顆粒デキストリンの30%以上、とくに40%以上が100メッシュ以下の粒径で占められていることが好ましい。
【0027】
また本発明における顆粒デキストリンのかさ比重は、とくに限定されないが、少量での充填への適性などの観点から、0.6g/cm3よりも軽いことが好ましいと考えられる。
【0028】
本発明書において「分包」とは、所定量の組成物を小分けに包装することを意味する。本発明において、1回使用量ずつ包装すること、および複数個で1回使用量となるように包装することが好ましく、1回使用量を包装することがとくに好ましい。
本発明において、分包される組成物における顆粒デキストリンの含有量は、少量で分包する適性、水分活性を低く維持するなどの観点から、好ましくは50重量%、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは90重量%である。
【0029】
本明細書において「プロバイオティクス」とは、腸内微生物が形成する腸内フローラのバランスを改善することによって宿主動物に有益に働く生菌を意味する。
本発明におけるプロバイオティクスとしては、例えば、乳酸菌およびビフィズス菌が挙げられ、とくに限定されないが、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ラクトバシルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス属(Lactococcus)等に属する菌類が例示できる。
【0030】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)株、ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)株、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)株、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)株、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)株等が挙げられる。これらのうち好適なものは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)株であり、さらに好ましくは、Bifidobacterium bifidum OLB6378である。
【0031】
本発明で用いるビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacteriumbifidum)OLB6378株は下記の条件で寄託申請した。
(1) 受領機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2) 連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 電話番号0438−20−5580
(3) 受領番号:NITE BP−31
(4) 識別のための表示:Bifidobacterium bifidum OLB6378
(5) 受領日: 平成16年10月26日
【0032】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)OLB6378株は、以下の菌学的性質を有するものである。
【0033】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)OLB6378株は、ヒト乳幼児糞便由来のグラム陽性偏性嫌気性桿菌である。Lactobacilli MRS Broth(BD)に本菌を接種し、AnaeroPack・ケンキ(三菱ガス化学製)使用による嫌気状態にて37℃、18時間培養すると、Y字型の菌形態が観察される。また、Bifidobacteirum bifidumの特異的プライマー(腸内フローラシンポジウム8、腸内フローラーの分子生物学的検出・同定、光岡知足、松本隆広)、具体的には、16S rDNAの種特異的プライマーであるBiBIF−1:CCA CAT GAT CGC ATG TGA TT、およびBiBIF−2:CCG AAG GCT TGC TCC CAA Aを用いたPCRでPCR産物が認められた。
【0034】
ラクトバシルス(Lactobacillus)属としては、例えばラクトバシルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)株、ラクトバシルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)株等が挙げられる。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属としては、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)株等が挙げられる。
【0035】
しかし、本発明はこれらの種に限定されるものではなく、またこれらの菌株については、単独あるいは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
本明細書における「プロバイオティクス菌末」とは、プロバイオティクスの生菌を培養したものに、分散剤・保護剤等の添加剤を加えた菌体液を凍結乾燥等により調製した粉末を意味する。本発明における、プロバイオティクス菌末に用いられる添加剤としては、とくに限定されないが、糖質、タンパク質、脂質、例えば、デキストリン、トレハロース、ショ糖、オリゴ糖、乳タンパク質等が挙げられる。しかし、極低出生体重児に投与するプロバイオティクスとして用いる場合では、その製造工程で不溶性のデンプンを使用することは好ましくない。
【0037】
また、プロバイオティクス菌末は、顆粒デキストリンとは異なる粉体とすることにより、高温の加熱処理を伴う造粒処理を施す必要がなく、プロバイオティクス生菌の生残性を高く保持することができる。
本発明のプロバイオティクス含有組成物の製造方法において、組成物の分包の方法はとくに限定されないが、生産効率、秤量の精度、衛生面等の観点から、原料を落下させて包装体中に充填する自動スティック充填機などにより行うことが好ましい。
また、本発明の組成物の分包形状はとくに限定されないが、輸送時、保管時、投与時などの取り扱いやすさの観点から、スティック状の包装体が好ましい。
【0038】
本発明において、極低出生体重児に用いるプロバイオティクスを実現するための一包に分包されるプロバイオティクス含有組成物の量は、1.2g以上になると1.0mlの母乳に溶解する必要性を有する低出生体重児用としては実用的ではなく、好ましくは1.1g以下、より好ましくは0.9g以下、さらに好ましくは0.6g以下である。一包に含有される組成物の量の下限値は、有効量のプロバイオティクス含有せしめる範囲であり、かつ技術的に可能な範囲であれば、とくに限定されることはなく、例えば、0.1gに設定することができる。
【0039】
また、包装性、取り扱いやすさなどの観点から、一包に分包される組成物の量は、0.1〜1.1g、好ましくは0.1g〜0.9g、さらに好ましくは0.1g〜0.6gである。
【0040】
本発明におけるプロバイオティクス菌末の含有量は、有効量のプロバイオティクス生菌を提供せしめる量であれば、とくに限定されることはない。好ましいプロバイオティクス生菌の含有量は、102〜1011cfu/分包であり、さらに好ましくは105〜1011cfu/分包、とくに好ましくは108〜1011cfu/分包である。
【0041】
本発明における顆粒デキストリンは、菌の生残性などの観点から、水分含有量が低いことが望ましい。顆粒デキストリンの水分活性(Aw)は、好ましくは0.0〜0.3さらに好ましくは0.0〜0.2である。
【0042】
本発明における顆粒デキストリンの乾燥処理の方法はとくに限定されないが、真空乾燥、乾熱乾燥などにより行うことができ、微生物学的な衛生面などの観点から、乾熱乾燥が好ましい。
顆粒デキストリンの乾燥処理は、プロバイオティクス菌末との混合の前に行うことが好ましい。これにより、プロバイオティクス菌末の高温における加熱処理が不要なため、プロバイオティクス生菌の生残性を保ちつつ、プロバイオティクス含有組成物全体の水分活性を低くすることができる。
【0043】
本発明において、プロバイオティクス菌末と顆粒デキストリンとの配合比は、とくに限定されることはなく、一包に含有される、有効量のプロバイオティクス生菌を含み、また、組成物全体の量が、分包工程や、分包された後の取り扱いなどを考慮して、適宜調節することができるが、少量で分包する適性、水分活性を低く維持するなどの観点から、顆粒デキストリンの配合量は好ましくは1:1〜1:50以上、より好ましくは、さらに好ましくは1:10〜1:35、とくに好ましくは1:20〜1:25である。
【0044】
本明細書において「低出生体重児」とは、出生2,500g未満の新生児を意味し、出生1,500g未満の極低出生体重児、出生1,000g未満の超低出生体重児も含まれる。
【0045】
低出生体重児に投与するための本発明において、組成物を溶解する液体の容量は、低出生体重児が1回に摂取できる範囲であればよく、例えば、0.1〜2ml程度である。液体および本発明の組成物の摂取量は、低出生体重児の成長に合わせて徐々に増加することができ、成長後では10ml程度の溶液を投与してもよい。
この場合の「液体」とは、通常的に新生児に投与される白湯、調製乳、母乳等の液体であればとくに限定されることはないが、栄養的な観点から、母乳および調製乳が好ましく、母乳がとくに好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例に基づいて更に詳細に説明を加えるが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
実施例1
乾熱乾燥により水分活性を0.2以下とした顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)960gをOLB6378株凍結乾燥原菌末40gと混合し、1000gの組成物を得た。顆粒デキストリンのかさ比重を計測したところ、0.44g/cm3であった。
【0048】
比較例1
実施例に用いた顆粒デキストリンと同組成の粉末デキストリン(松谷化学、粉末タイプTK-16)を乾熱乾燥した粉末デキストリンを960gをOLB6378株凍結乾燥原菌末40gを混合し、1000gの組成物を得た。粉末デキストリンのかさ比重を計測したところ、0.60g/cm3であった。
【0049】
[試験例1]溶解性試験
調製乳および母乳では濁りが強く、溶解性を確認するのが困難であるため、白湯を用いて試験を実施した。加えて凍結乾燥菌末を含む組成物を用いて試験した場合でも、菌体によって液がわずかに濁るため、溶解性を明確に示すことは難しいため、デキストリンのみを用いて溶解性試験を実施した。
比較例1よび実施例1で使用したデキストリン1.0gを、それぞれ蒸留水(GIBCO)9mlに添加して軽く撹拌し、10秒後および20秒後の状態を観察した。
【0050】
粉末デキストリンは、10秒後では“飴状”になり(図1)、20秒後の状態も10秒後の飴状から変化することはなかった(図2)。
一方、顆粒デキストリンは、速やかに溶解され、10秒後では僅かに未溶解の組成物が確認された程度で(図3)、20秒後ではほぼ完全に溶解された(図4)。
【0051】
[試験例2]少量の白湯における溶解性試験
白湯1.0mlに、比較例1および実施例1で使用したデキストリンをそれぞれ0.5gを添加して、軽く攪拌した。
粉末デキストリンは、完全に溶解されることはなく、飴状となった。一方、顆粒デキストリンは、ほぼ完全に溶解された。
また、得られた溶液を3Frのカテーテルにシリンジを用いて送液したところ、顆粒デキストリンの溶液はスムーズに全量を送液できたが、粉末デキストリンの溶液は目詰まりを起こし送液できない場合があった。
【0052】
[試験例3]少量の調製乳における溶解性試験
乳児用調製粉乳(明治ほほえみ:明治乳業)約27gを200mlの白湯(約70℃)に溶解し、調製乳を得た。得られた調製乳1.0mlに、比較例1および実施例1で得られたプロバイオティクス含有組成物をそれぞれ0.5gを添加して、軽く攪拌した。
粉末デキストリンを用いた組成物(比較例1)は、完全に溶解されることはなく、飴状となった。一方、顆粒デキストリンを用いた組成物(実施例1)は、ほぼ完全に溶解された。
【0053】
また、得られた溶液を3Frのカテーテルにシリンジを用いて送液したところ、顆粒デキストリンを用いた組成物(実施例1)は、スムーズに全量を送液できたが、粉末デキストリンを用いた組成物(比較例1)は、目詰まりを起こし送液できない場合があった。
この結果から粉末デキストリンを用いた比較例1の組成物と比較して、顆粒デキストリンを用いた実施例1の組成物の溶解性が顕著に高いことがわかる。
【0054】
[試験例4]デキストリンのスティック充填適性試験:0.5g充填
(4−1)顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)を4連のスティック充填機(NP600:三光機械)のホッパーに入れ、充填量を0.55gに設定し、スティック100本を充填した。
(4−2)同様に、顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)をスピードミル(メッシュ42:岡田精工)で粉砕して得られた粒径の小さな顆粒デキストリンのミル処理物を用いて、スティック100本を充填した。
【0055】
(4−3)同様に、顆粒デキストリンのミル処理物と顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK−16)とを1:1で混合した混合物を用いて、スティック100本を充填した。
(4−4)同様に、粉末デキストリン(松谷化学、粉末タイプTK-16)を用いて、スティック100本を充填した。
【0056】
粉末デキストリン(4−4)、および顆粒デキストリンのミル処理物(4−2)を充填した際では、デキストリンが小さな計量マスに張り付いて計量マスから落下しない現象、およびスティック内容物を計量マスからスティックに誘導するノズル部位で粉末組成物が詰まる現象を生じた。そのため、スティック内に粉末組成物が充填されないばかりでなく、ノズル部位で詰まった大量の粉末組成物がスティック内に一度に入る状況となり、スティック充填量を測定するに至らなかった。
【0057】
顆粒デキストリンのミル処理物と顆粒デキストリンとを1:1で混合した混合物(4−3)を充填した際では、スティック100本の充填量は0.571±0.041(最小充填量は0.433g、最大充填量は0.661g)であった。
顆粒デキストリン(4−1)を充填した際では、スティック100本の充填量は0.548±0.023(最小充填量は0.511g、最大充填量は0.622g)であった。充填量の分布を図5に示す。
【0058】
デキストリンのスティック充填適性試験に於いて、試験例4で供試したデキストリンによって大きな差が認められたため、供試したデキストリンの粒度を測定し、少量の充填が可能となる顆粒デキストリンの粒径を見出した。デキストリンの粒度分布を図6に示す。
【0059】
[試験例5]プロバイオティクス含有組成物のスティック充填適性試験:0.5g充填
実施例1および比較例1で得られた組成物を4連のスティック充填機(NP600:三光機械)のホッパーに入れ、充填量を0.55gに設定し、スティック100本を充填した。これを4回繰り返し、各スティック中の充填量を測定した。
【0060】
比較例1の粉末組成物は、小さな計量マスに張り付いて計量マスから落下しない現象、およびスティック内容物を計量マスからスティックに誘導するノズル部位で粉末組成物が詰まる現象を生じた。そのため、スティック内に粉末組成物が充填されないばかりでなく、ノズル部位で詰まった大量の粉末組成物がスティック内に一度に入る状況となり、スティック充填量を測定するに至らなかった。
【0061】
実施例1の顆粒組成物は、小さな計量マスからスティック内に落下し、とくに問題なく良好に充填された。スティック400本の充填量は0.540±0.009(最小充填量は0.518g、最大充填量は0.563g)であった。充填量の分布を図7に示す。
【0062】
[試験例6]プロバイオティクス含有組成物のスティック充填適性試験:0.8g充填
充填量を0.85gに設定し、試験例5と同様にスティック充填を行った。
スティック400本の充填量はそれぞれ、実施例1の組成物は、0.845±0.012(最小充填量0.816g、最大充填量0.879g)、比較例1の組成物は0.899±0.053(最小充填量0.815、最大充填量1.420)であった。それぞれの充填量の分布を図8に示す。
【0063】
[試験例7]プロバイオティクス含有デキストリンのスティック充填適性試験:1.0g充填
充填量を1.05gに設定し、試験例5と同様にスティック充填を行った。
スティック400本の充填量はそれぞれ、実施例1の組成物は1.035±0.012g(最小充填量1.009g、最大充填量1.067g)、比較例1の組成物は1.115±0.033g(最小充填量1.026g、最大充填量1.295g)であった。それぞれの充填量の分布を図9に示す。
【0064】
[参考例1]プロバイオティクス含有デキストリンのスティック充填適性試験:1.5g充填
充填量を1.55gに設定し、試験例5と同様にスティック充填を行った。
スティック400本の充填量はそれぞれ、実施例1の組成物は1.551±0.019g(最小充填量1.510g、最大充填量1.614g)、比較例1の組成物は1.614±0.032g(最小充填量1.512g、最大充填量1.719g)であった。それぞれの充填量の分布を図10に示す。
【0065】
<充填適性の判断>
試験例4〜8および参考例1において、充填量が目標値を下回ることがないことを目的し、充填量の設定は、目標値+0.05gとした。
試験例5〜8および参考例1において、顆粒デキストリンを用いた組成物の充填量平均値と、粉末デキストリンを用いた組成物の充填量平均値とに大きな開きがあり、粉末デキストリンを用いた組成物では設定した充填量を著しく乖離した値であった。さらに、標準偏差についても、顆粒デキストリンを用いた組成物の標準偏差が粉末デキストリンを用いた組成物の標準偏差よりも小さく、顆粒デキストリンを用いた組成物の充填に適していた。
【0066】
これにより、粉末デキストリンを用いた比較例1の組成物と比較して、顆粒デキストリンを用いた実施例1の組成物は最小充填量と最大充填量の幅が狭く、標準偏差(SD)も小さいことから、顆粒デキストリンを用いた組成物の充填適性が顕著に高いことが分かる。また、充填量の設定値が小さいほど、分散剤として顆粒デキストリンを用いる必要性が高いことが分かる。
【0067】
実施例2
実施例1で用いた顆粒デキストリン(松谷化学、顆粒タイプTK-16)の未乾燥物(水分活性:0.43)960gとOLB6378株凍結乾燥原菌末40gと混合し、1000gの組成物を得た。
【0068】
[試験例8]生菌保存性試験
実施例1(乾燥処理した顆粒デキストリンを用いて調製したプロバイオティクス組成物)および実施例2(乾燥処理していない顆粒デキストリンを用いて調製したプロバイオティクス組成物)で得られた組成物をそれぞれ、試験例5と同様に0.5gスティック充填を行った。得られたスティックを、それぞれ充填直後に加え、40℃または50℃で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の間保存した後、スティック内の生菌数をBL寒天培地(栄研)で測定した。
【0069】
試験例8における、保存温度別(40℃、50℃)の保存性を示す結果を図11および図12に示す。
これらの結果、乾燥処理を施した顆粒デキストリンを分散剤とした組成物は、乾燥処理を施していないものと比較して、プロバイオティクス生菌の生残性が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、溶解性が高く、少量ずつの分包が可能なプロバイオティクス含有組成物、とくに、少量の液体に溶解可能な量のプロバイオティクス含有組成物が一包に包装された、1回投与分を低出生体重児に衛生的に投与することのできる、プロバイオティクス含有組成物を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒デキストリンを含有し、0.1g〜1.1gで分包されてなる組成物。
【請求項2】
0.1g〜0.9gで分包されてなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.1g〜0.6gで分包されてなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
プロバイオティクス菌末を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
顆粒デキストリンを50重量%以上含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
102〜1011cfu/分包のプロバイオティクスを含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
プロバイオティクスが乳酸菌および/またはビフィズス菌である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
顆粒デキストリンが乾燥処理された顆粒デキストリンである、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
顆粒デキストリンの水分活性が0.0〜0.3である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
顆粒デキストリンの55%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの30%以上が粒度100メッシュ以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
顆粒デキストリンの65%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの40%以上が粒度100メッシュ以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
低出生体重児に投与するための、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
一包に含有された組成物を、0.1〜2mlの液体に溶解し、得られた溶液を3〜4Frカテーテルを用いて、一回で胃内投与するための、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
プロバイオティクス含有組成物を製造する方法であって、
顆粒デキストリンおよびプロバイオティクス菌末を混合する工程、
混合して得られた組成物を、0.1g〜1.1gずつ分包する工程、
を含む、前記方法。
【請求項15】
分包が、混合して得られたスティック状の包装体に落下させることにより行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
顆粒デキストリンを混合する前に予め乾燥する工程を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項1】
顆粒デキストリンを含有し、0.1g〜1.1gで分包されてなる組成物。
【請求項2】
0.1g〜0.9gで分包されてなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
0.1g〜0.6gで分包されてなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
プロバイオティクス菌末を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
顆粒デキストリンを50重量%以上含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
102〜1011cfu/分包のプロバイオティクスを含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
プロバイオティクスが乳酸菌および/またはビフィズス菌である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
顆粒デキストリンが乾燥処理された顆粒デキストリンである、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
顆粒デキストリンの水分活性が0.0〜0.3である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
顆粒デキストリンの55%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの30%以上が粒度100メッシュ以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
顆粒デキストリンの65%以上が粒度150メッシュ以下および/または顆粒デキストリンの40%以上が粒度100メッシュ以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
低出生体重児に投与するための、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
一包に含有された組成物を、0.1〜2mlの液体に溶解し、得られた溶液を3〜4Frカテーテルを用いて、一回で胃内投与するための、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
プロバイオティクス含有組成物を製造する方法であって、
顆粒デキストリンおよびプロバイオティクス菌末を混合する工程、
混合して得られた組成物を、0.1g〜1.1gずつ分包する工程、
を含む、前記方法。
【請求項15】
分包が、混合して得られたスティック状の包装体に落下させることにより行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
顆粒デキストリンを混合する前に予め乾燥する工程を含む、請求項14または15に記載の方法。
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図11】
【図12】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−201840(P2011−201840A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73270(P2010−73270)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】
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