説明

屋根材

【課題】火災に対する延焼防止性能、いわゆる耐飛び火性に優れた屋根材を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部、無機化合物(B)10〜30質量部及び、シリコーン系難燃剤(C)0.01〜5質量部を含む組成物からなる基層と、該基層の少なくとも片面に無機化合物(D)60〜90質量%および熱可塑性樹脂(E)10〜40質量%を含む組成物からなる表層を設けてなる屋根材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材に関し、さらに詳しくはポリカーボネート樹脂を含む組成物からなる基層と、特定の無機化合物を含む組成物からなる表層が積層され、火災に対する延焼防止性能、いわゆる耐飛び火性に優れた屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の屋根材として、ポリ塩化ビニル樹脂やポリカーボネート樹脂等を用いて成形された平板、波板、折板がそのままの形状、湾曲加工、あるいはドーム状に加工したトップライト等が種々の建築分野で使用されている。しかしながら、これらの合成樹脂製の屋根材は、火災時に飛び火が飛来すると、その熱で溶融して孔があいて延焼することがあり、延焼防止性能に劣るという問題があった。
【0003】
そこで、上記の合成樹脂製の屋根材を使用しても、火災に対する延焼防止性能、いわゆる耐飛び火性に優れた屋根材であって、建築基準法に定める飛び火試験に合格する屋根材が要望されている。このような屋根材として、熱可塑性樹脂からなる基板の少なくとも片面にガラスクロスを積層することにより耐飛び火性を改良する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、屋根材本体の裏面に金属メッシュシートやパンチングメタル等からなる不燃性裏面材を積層一体化することにより耐飛び火性を改良する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−92272号公報
【特許文献2】特開2007−9523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように基板の少なくとも片面にガラスクロスを積層した屋根材では、通常、使用する基板とガラスクロス間の接着性を向上させるために、基板と相溶性を有する樹脂をガラスクロス表面にコーティングした後、ガラスクロスを基板に積層することがなされる。このような、コーティングと積層作業は面倒で手間がかかり、生産性の低下を招き易いという問題がある。
【0007】
また、特許文献2のように屋根材本体の裏面に金属メッシュシートやパンチングメタル等からなる不燃性裏面材を積層一体化した屋根材でも、不燃性裏面材に接着剤等を用いて屋根材本体に積層することがなされるが、上記と同様に積層一体化する作業は面倒で手間がかかり、生産性の低下を招き易いという問題がある。さらに、不燃性裏面材を止具等を用いて屋根材本体の裏面に固定することがなされるが、構造の複雑化と取り付け作業の煩雑化を招くといった問題があり、しかも金属メッシュシート等の使用により屋根材の重量が増加するため、取扱いにくく施工しずらいという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、従来の合成樹脂製の屋根材と同様の簡単な作業で屋根を施工でき、火災時には耐飛び火性に優れており延焼の恐れが少ない屋根材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上述の問題を解決するために鋭意検討した結果、下記本発明に想到し当該課題を解決することができた。すなわち、本発明は、
1.ポリカーボネート樹脂(A)100質量部、無機化合物(B)10〜30質量部及び、シリコーン系難燃剤(C)0.01〜5質量部を含む組成物からなる基層と、該基層の少なくとも片面に無機化合物(D)60〜90質量%および熱可塑性樹脂(E)10〜40質量%を含む組成物からなる表層を設けてなる屋根材、
2.無機化合物(B)がマイカであることを特徴とする上記1に記載の屋根材、
3.無機化合物(D)がバーミキュライト、又は焼成バーミキュライトから選ばれてなることを特徴とする上記1に記載の屋根材、
4.熱可塑性樹脂(E)がポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の屋根材を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の屋根材は、耐飛び火性に優れており、火災時に飛来する飛び火の熱で合成樹脂製の屋根材本体が熱溶融せず、溶融樹脂が落下したり孔が開いたりすることを防止することができ、充分な防火性能を発揮する。しかも、臭素、塩素系化合物を含有する従来の難燃剤を使用しないため燃焼時に臭素、塩素を含むハロゲンガスの発生の懸念もなく、環境負荷低減の面からも極めて優れている。また、従来の屋根構造材に取り付けることが容易にできるため、構造の複雑化、作業の煩雑化及びコストの増大を招くことなく、従来の屋根材と同様の簡単な取り付け作業で屋根を施工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施形態に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明の範囲が以下の実施形態に制限されるものではない。
【0012】
<屋根材の構成>
本実施形態の屋根材(「本屋根材」という)は、特定の組成物からなる基層と、該基層の少なくとも片面に特定の組成物からなる表層を設けたことを特徴とするものである。表層は、上記基層の片面のみならず、その両面に設けてもよい。
【0013】
(基層)
上記基層は、ポリカーボネート樹脂(A)、無機化合物(B)及び、シリコーン系難燃剤(C)を含む組成物からなり、
ポリカーボネート樹脂(A)とは、主鎖中に炭酸エステル結合を含む線状高分子であり、例えば種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとをホスゲン法により反応させたり、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとをエステル交換法で反応させたりして得ることができる重合体等である。具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂を挙げることができるが、これに限るものではない。
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限するものではない。通常の押出成形によりシート成形可能な粘度平均分子量が1.5万〜3万程度のものが好ましい。
【0014】
基層に用いられる無機化合物(B)としては、マイカ、タルク、ガラス繊維、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、パーライト、セピオライト等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの無機化合物の中では、樹脂用フィラーとして、剛性強化及び低ソリ化を目的としてマイカが好適に使用される。
使用するマイカとして、具体的には、天然マイカ(マスコバイト、フロゴパイト、セリサイト、スゾライト、白雲母、黒雲母、金雲母等)、合成マイカ、焼成された天然又は合成マイカが挙げられる。
【0015】
無機化合物(B)の平均粒径は0.01〜200μm程度、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは、1〜10μmである。平均粒径が0.01μm以上であれば、樹脂成分との混合や溶融混練に伴うハンドリングがさほど困難ではなく、200μm以下であれば、基層全体の靭性を著しく損なうことがない。
また、無機化合物(B)の平均アスペクト比(粒径/厚み)は、好ましくは10以上のものが好適に用いられる。平均アスペクト比は、より高い方が、隙間なく表面を覆うことができるため耐飛び火性の効果が得られ易い。
【0016】
無機化合物(B)は、表面処理剤により表面処理されたものを用いてもよい。表面処理剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、アクリロキシ基またはメタクリロキシ基を有するシラン化合物等のシランカップリング剤、珪素原子に炭素数1〜30の範囲の直鎖、分岐または環状の炭化水素基が1又は2個結合したアルコキシシラン、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネートカップリング剤、等が挙げられる。表面処理剤の使用量は、通常、無機化合物100質量部に対して0.1〜8質量部、好ましくは0.5〜3質量部の範囲である。
【0017】
表面処理の方法としては、既知の種々の方法が適用できる。例えば、表面処理剤を溶解した溶液中で無機化合物と表面処理剤を接触させた後溶媒を除去する湿式法、表面処理剤を溶解した溶液と無機化合物とを噴霧、撹拌等の方法により接触させて、無機化合物表面に表面処理剤をまぶした後、溶媒を除去する半湿式法、樹脂と無機化合物及び表面処理剤ないしは少量の溶媒に溶解させた表面処理剤を混合撹拌後するインテグラルブレンド法等が挙げられる。無機化合物表面に効率よく表面処理剤を付着させるという観点から、湿式法、半湿式法が好ましい。
【0018】
上記無機化合物(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部あたり、10〜30質量部であることを要する。配合量が10質量部未満では、耐飛び火性が低下するという問題があり、30質量部を超えると衝撃強度や成形加工性が低下するという問題がある。
【0019】
基層には上記無機化合物(B)以外に難燃剤(C)を使用することを要する。難燃剤としては通常の難燃剤の中で、ポリカーボネート樹脂に対する耐飛び火性に関する効果が大きいこと、及び環境負荷が低いことからシリコーン系難燃剤を使用する。シリコーン系難燃剤としては、下記化学式のものが好適に使用できる。
3SiO0.5、R2SiO、RSiO1.5
(各式中、Rは炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニル基、メチル基・エチル基・プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シロキサン構造もしくはそのほか置換可能な官能基を表し、複数個のRは、互いに同一でも、異なっていてもよく、Rの一部は、メチル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、ビニル基、フェノール基、アクリル基、メタクリル基などの反応性基で置換されていてもよい)
SiO2の構造単位を単独又は2種類以上混合したシリコーン油、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0020】
シリコーン系難燃剤(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部あたり、0.01〜5質量部であることを要する。より好ましくは0.05〜1質量部の範囲内である。配合量が0.01部未満では、充分な耐飛び火性が得られず、5質量部を超えるものでも同様に充分な耐飛び火性が得られないという問題がある。
【0021】
(表層)
表層は、無機化合物(D)および熱可塑性樹脂(E)を含む組成物からなり、
無機化合物(D)としては、含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト)、含水ケイ酸マグネシウム(セピオライト)等が挙げられる。とりわけ、バーミキュライト、又は焼成バーミキュライトが好適に使用される。
【0022】
無機化合物(D)の配合量は、表層を構成する組成物全量に対し、60〜90質量%であることを要する。より好ましくは70〜90質量%の範囲内である。配合量が60質量%未満では、耐飛び火性が低下するという問題がある。また、90質量%を超えると成形加工性が低下するという問題がある。
【0023】
表層に用いられる熱可塑性樹脂(E)は、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等の難燃性に優れた樹脂材料を使用することができる。これらを1又は2種以上混合してもよい。使用する樹脂は表層の形成方法により選択されるが、表層を塗布により形成する場合にはこれらの樹脂の中で、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂の使用が好ましく、中でもポリエーテル樹脂が好適に使用される。
ポリエーテル樹脂としては、主鎖の繰り返し単位にエーテル結合を有する重合体であって、具体的にはポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。
【0024】
熱可塑性樹脂(E)の配合量は、表層を構成する組成物全量に対し、10〜40質量%であることを要する。配合量が10質量%未満では、成形加工性が低下するという問題があり、40質量%を超えると耐飛び火性が低下するという問題がある。
【0025】
上述した内容の基層と、表層をそれぞれ単独で使用しても十分な耐飛び火性を得ることはできない。すなわち、ポリカーボネート樹脂(A)に対し、成分(B)および(C)を配合した基層と、基層の少なくとも片面に無機化合物(D)および熱可塑性樹脂(E)からなる表層を設けることにより相乗的効果が得られ、耐飛び火性に優れた屋根材が得られる。
【0026】
また、屋根材には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の熱安定剤、酸化防止剤(リン系やフェノール系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾールやトリアジン等)、近赤外線吸収剤(イオウ、硫黄系化合物、銅系化合物およびその他の近赤外線吸収物質等)、着色剤、蛍光増白剤、離型剤、アンチブロッキング剤(シリカ、架橋ポリスチレンビーズ等)、軟化材、帯電防止剤、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)、ドリップ防止剤(ポリテトラフルオロエチレン等)、難燃助剤(パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩化合物、芳香族硫黄化合物の金属塩等)等の添加剤、衝撃改良材、他のポリマーが基層及び表層の一方又は両方に含有されていてもよい。
【0027】
本発明の屋根材の各層の厚みは、耐飛び火性、成形性に問題が無ければ制限するものではなく、厚み比も同様である。一般的には、基層の厚みは1.0mm〜12.0mm、好ましくは1.5mm〜8.0mm、さらには1.5mm〜3.0mmであるのが好ましく、表層3の厚みは0.1μm〜100μm、好ましくは0.5μm〜50μm、さらには1μm〜10μmであるのが好ましい。
【0028】
屋根材の基層又は表層の少なくとも片面、もしくは基層と表層の間に紫外線吸収剤を1〜10質量%含有した10〜100μmの厚さのポリカーボネート系樹脂あるいはフッ素系樹脂からなる紫外線吸収層をさらに設けてもよい。紫外線吸収物質としては、紫外線吸収性能を有すれば特に制限はなく、例えばベンゾトリアゾールやトリアジン等を好適に使用できる。但し、これらに限定するものではない。
【0029】
また、基層と表層との間、もしくは上記紫外線吸収層と表層の間に層間の接着性を高めるためにアクリル樹脂、アクリル変性シリコン樹脂又はシリコン変性アクリル樹脂からなるプライマー層を0.1〜50μmの厚さで設けてもよい。
【0030】
<製造方法>
本発明屋根材の製造方法は、共押出による成形方法あるいは、押出成形にて予め作製した基層の表面に表層をラミネートして積層体を形成する方法等が挙げられる。共押出による成形方法では、基層用の押出機及び表層用の押出機から溶融混練される溶融物を押出ダイの手前のアダプターあるいは押出ダイの中で合流させることによって積層体を形成させることができる。
【0031】
また、表層中の無機化合物(D)の比率が高い組成物では、表層の押出成形が困難であり、基層を押出成形にて予め作製し、無機化合物(D)および熱可塑性樹脂(E)を含む組成物と分散用の溶媒からなる塗布液を基層の表面に塗布することにより表層を形成してもよい。
【0032】
さらに、前述のポリカーボネート系樹脂あるいはフッ素系樹脂からなる紫外線吸収層に上記と同様の塗布液を塗布して表層を形成し、ついで基層の表面に紫外線吸収層をラミネートして積層体を作製してもよい。
なお、上記の表層を塗布により形成する方法によれば、基層を射出成形法等で曲面を有する成形品としたり、異型押出法により中空構造の複合材としても、表層を容易に形成することができる。更に基層を押出成形し、常温でアーチ型に曲げ加工、冷間折り曲げ加工、熱曲げ加工等で曲面を有する成形品としても、表層を容易に形成することができる。
【0033】
<用途>
本発明の屋根材は、上記のように耐飛び火性に優れ、また施工し易いのでテラスやカーポート等の簡易屋根のほか、サンルーム、庇、採光窓やその他の採光材として好適に利用することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において基層の「部」は「質量部」を表わし、表層の「%」は「質量%」を表している。
【0035】
表1、及び表2に示した各基層の配合組成、配合量に基づき、タンブラーを用いて各種配合成分を混合し、2軸押出機を用いて、シリンダー温度240℃にて溶融混練し、ペレット原料を製造した。得られたペレット原料を120℃で6時間乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度240℃、金型温度80℃で幅90mm、長さ150mm、厚さ2mmの基層を射出成形した。
【0036】
表1、及び表2に示した表層の配合組成、配合量に基づき、溶媒として水を使用し、固形物が分散した表層用の塗布剤を得た。ついで、上記の方法で得られた基層の表面に塗布装置、例えばバーコータにより塗布し、乾燥させて、基層の厚さ2mm、表層の厚さ3μmの評価用の試験体を得た。
なお、使用した各配合成分の内容は以下の通りである。
ポリカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックス7027U」
【0037】
マイカ:山口雲母社製「A−41」
シリコーン系難燃剤:信越化学工業社製「X−40−9805」
含水ケイ酸アルミニウム(バーミキュライト):キンセイマテック社製
ポリエーテル樹脂:ポリエチレングリコール 三洋化成工業製「PEG−400」平均分子量400
ポリエステル樹脂:ポリエステル樹脂 ユニチカ社製「エリーテルKA−5034」分子量8500
【0038】
「耐飛び火性」の評価方法は、以下の通りである。
なお、本評価方法は建築基準法第22条第1項に基づく性能評価(「飛び火試験」)に準じて行った。
<飛び火試験>
得られた試験体を架台に載せ、架台を傾斜角15°に設定し、試験体の設置場所の手前から送風装置により架台に沿って風を送る(風量:3.0m/s)。1分間ガスバーナーの火炎をあてた着火剤(材質:ワックス含有圧縮木材繊維、サイズ:30×40×厚さ10mm)を最初の火種として、試験体の上(送風側の端部から38mmの位置)に置き、最初の火種を設置してから5分後に、2番目の着火剤に1番目と同じ手順で火を付け、最初の火種を設置してから6分後に、最初の火種を試験体の上から取り除き、2番目の火種となる着火剤を試験体の上に置く。以後、同じ手順で5番目の着火材を試験体の上に置くまで繰り返す。
【0039】
<評価方法>
1番目の火種を載せてから30分を経過するまで、試験体表面に沿った火炎の拡大や変化及び試験体を貫通する燃え抜け及び裏面での着火の有無について観察及び計測を行い、評価を行った。この試験の判定は次の通りとし、その結果を表1、表2に示す。
(1)火炎の拡大:試験中、試験体の燃焼による火炎の先端が、試験体の風上側底辺及び風下側端部及び左右両端部に達しない場合を○、達した場合を×とした。
(2)裏面着火:試験中、試験体の裏面で火炎を伴う燃焼が観察されなかった場合を○、このような燃焼が観察された場合を×とした。
(3)貫通孔:試験中または試験終了後において、最大部分で10mm×10mmを超える貫通孔が観察されない場合を○、このような貫通孔が観察された場合を×とした。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
実施例1〜8に示すように、本発明の要件を全て満足する屋根材は優れた耐飛び火性を有することが判る。
一方、比較例1〜8に示すように、本発明の要件を満足しない場合においては、耐飛び火性に劣る、もしくは成形が困難であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の屋根材は、優れた耐飛び火性や施工し易いことから、テラスやカーポート等の簡易屋根のほか、サンルーム、庇、採光窓やその他の採光材として好適に利用することができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部、無機化合物(B)10〜30質量部及び、シリコーン系難燃剤(C)0.01〜5質量部を含む組成物からなる基層と、該基層の少なくとも片面に無機化合物(D)60〜90質量%および熱可塑性樹脂(E)10〜40質量%を含む組成物からなる表層を設けてなる屋根材。
【請求項2】
無機化合物(B)がマイカであることを特徴とする請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
無機化合物(D)がバーミキュライト、又は焼成バーミキュライトから選ばれてなることを特徴とする請求項1に記載の屋根材。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(E)がポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の屋根材。

【公開番号】特開2011−63943(P2011−63943A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213192(P2009−213192)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】