説明

履物

【課題】 化石燃料に由来する素材を使用しないことで、廃棄、焼却時にダイオキシンなどの有害物質を発生しない履物を提供すること。
【解決手段】 素材として、天然ゴム、皮革、木材、紙、天然繊維などを用い、履物を構成するアッパー1、インソール2、ヒール3、アウトソール4のそれぞれが必要とする特性に合わせて、前記素材を適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然素材だけを用い、石油や石炭などの化石燃料を原料とする素材を用いない履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の履物類、特にケミカルシューズと称される履物類は、素材として石油製品を利用することで製品化されている。具体的には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルコンパウンド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのような高分子材料、スチレン−ブタジエンゴムのような合成ゴムなどが挙げられる。
【0003】
これらの素材を使用する上での問題点として、第一に資源の枯渇の問題がある。これは前記の素材が石油化学製品であり、石油の埋蔵量が有限であることによる。第二に使用後の廃棄物が自然界では極めて分解し難いことが挙げられる。このために、廃棄物は焼却により処理されることになるが、ハロゲンを含む素材では、ダイオキシン発生の問題がある。
【0004】
また、ダイオキシンの発生は、焼却処理を行う際の温度を適当に設定することで避けられることが明らかになっているにしても、焼却によって必然的に発生する二酸化炭素は、地球温暖化の原因物質として、近年その排出量の抑制が焦眉の問題となっている。
【0005】
一方で、木材などの天然素材は、化石燃料と異なり、植樹などの方法で再生が可能であり、元来大気中の二酸化炭素と水を反応物として、植物の光合成作用により生成した材料なので、基本的に生物による分解が可能である。また、生分解で発生する二酸化炭素にしても、焼却処理によって発生する二酸化炭素にしても、再生との収支を考慮して使用することにより、理論的には地球全体の二酸化炭素量を大幅に増加させることがない。
【0006】
しかも、石油や石炭と異なり、燃焼によって硫黄酸化物や窒素酸化物、ダイオキシンのような有害物質を発生させることがないという特徴を有する。このため、様々な分野で天然素材の活用が検討されている。
【0007】
このような観点で履物に用いられている素材に着目すると、たとえば特許文献1に代表されるように、一部に天然素材を用いた履物の例が開示されている。しかしながら、これらの履物は限定された素材を用いていることが多く、現状では耐久性などの観点で問題を抱えたものが殆どである。
【0008】
【特許文献1】 特開2000−236902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、化石燃料に由来する素材を使用しないことで、廃棄、焼却時にダイオキシンなどの有害物質を発生せず、地球全体での二酸化炭素量増加が少ない履物を提供し、地球の温暖化や各種の公害の防止に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、履物の構成材料として十分な耐久性などを具備した素材とその組み合わせ、及び選択した素材の履物の各部位への適合性を検討した結果、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
即ち、本発明は、表地と裏地とアッパークッションからなるアッパーと、インソール表皮膜とインソールクッションとインソール芯からなるインソールと、ヒール芯と前記ヒール芯を覆うヒール表皮膜からなるヒールと、アウトソールを有する履物において、前記表地と裏地とインソール表皮膜とヒール表皮膜は、天然皮革または天然繊維の少なくともいずれかからなり、前記アッパークッションとインソールクッションは、天然ゴムの発泡材または天然フェルトの少なくともいずれかからなり、前記インソール芯は、紙からなり、前記ヒール芯は、木材またはコルクの少なくともいずれかからなり、前記アウトソールは、天然ゴム、天然皮革、天然フェルト、天然繊維から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする履物である。
【0012】
また、本発明は、前記表地、前記裏地、前記アッパークッション、前記インソール表皮膜、前記インソールクッション、前記インソール芯、前記ヒール表皮膜、前記ヒール芯、前記アウトソールの結合に、天然接着剤または天然繊維からなる糸の少なくともいずれかが用いられてなることを特徴とする前記の履物である。
【0013】
また、本発明は、前記天然接着剤が、天然ゴムまたは膠の少なくともいずれかであり、前記天然繊維が、絹、木綿、麻から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記の履物である。
【発明の効果】
【0014】
前記のように本発明の履物は、天然の素材を用いて構成されているので、廃棄物を生分解で自然に還元することができる。また焼却処理によって廃棄した場合においても、従来のケミカルシューズのように、有害物質を放出することがない。また、前記のように本発明で用いられる天然素材はいずれも再生産が可能なものなので、資源が枯渇する虞も少ない。
【0015】
従って、本発明の履物は環境への負荷が小さく、履物の消費量が多いことを考慮すると、地球温暖化防止や各種の公害防止に寄与するところが極めて大きいと言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の履物は基本的に天然素材により構成されるが、履物の部位により、素材に要求される機能や特性が異なるので、整合を図る必要がある。たとえば、アッパーにおいては、全体に適度な可撓性が要求され、表側には、一定以上の強度と傷がつき難いことが要求され、足の甲に対向する側には、肌触りの良さや柔軟性が要求される。
【0017】
これに対応するには、表側となる表地、中間層となるアッパークッション、足の甲に対向する側となる裏地の3層の構造が望ましく、表地には皮革のような堅牢な素材が、アッパークッションには天然ゴムや天然フェルトのような柔軟性を有する素材が、裏地には、木綿のような繊維や比較的柔軟な皮革などが適している。
【0018】
また、インソールは使用者の体重が直接負荷され、耐摩耗性が必要な他、歩行の際に足裏に加わる衝撃をある程度吸収する機能が必要なので、インソール表皮膜には皮革や麻などの比較的大きな強度を有する素材が、インソールクッションにはゴムやフェルトのような弾性を有する素材が、インソール芯には紙などが適している。
【0019】
また、ヒールは歩行の際に使用者の足に加わる衝撃を緩和する機能を最も強く要求される部位なので、ヒール芯には弾性と強度が同時に要求され、木材やコルクが適している。つまり前記のように各部位に適した特性を有する素材を適宜選択する必要がある。
【0020】
さらに各部位を構成する素材の間や各部位の間は、履物の耐久性を確保する上で強固に結合する必要がある。これには、一般に接着剤や縫合が用いられるが、接着剤としては、天然ゴムや膠が、縫合には、絹、木綿、麻などの天然繊維からなる糸を用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下に具体的な実施例を挙げ本発明について、さらに詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の履物の実施例に係るサンダルの例を示す図である。図1において、1はアッパー、2はインソール、3はヒール、4はアウトソールである。
【0023】
ここでは、アッパー1を構成する表地、アッパークッション、裏地には、それぞれ、牛皮、発泡天然ゴム、木綿が用いられ、インソール2を構成するインソール皮膜、インソールクッション、インソール芯には、それぞれ、牛皮、発泡天然ゴ厶、ボール紙が用いられている。そして、それぞれの素材相互の結合には、天然ゴムラテックスを使用した接着剤が用いられている。
【0024】
また、ヒール表皮膜は前記の表地、インソール皮膜と同じ牛皮が、ヒール芯にはコルクがそれぞれ用いられ、アウトソールには天然ゴムが用いられている。なお、スリッパのような室内用履物には、図1におけるヒールの部位がなく、アウトソールが耐摩耗性をあまり必要としないので、歩行の際の衝撃を和らげるため、アウトソールとして、柔軟性に富む発泡天然ゴムや天然フェルトを用いることができる。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、天然皮革、天然繊維、天然ゴムなどの天然素材のみを用いた履物を提供することができる。なお、本発明は、前記具体例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれる。即ち、本技術分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 本発明の履物の実施例に係るサンダルの例を示す図
【符号の説明】
【0027】
1 アッパー
2 インソール
3 ヒール
4 アウトソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地とクッション材からなるアッパーと、インソール表皮膜とインソールクッションとインソール芯からなるインソールと、ヒール芯と前記ヒール芯を覆うヒール表皮膜からなるヒールと、アウトソールを有する履物において、前記表地と裏地とインソール表皮膜とヒール表皮膜は、天然皮革または天然繊維の少なくともいずれかからなり、前記クッション材とインソールクッションは、天然ゴムの発泡材または天然フェルトの少なくともいずれかからなり、前記インソール芯は、紙からなり、前記ヒール芯は、木材またはコルクの少なくともいずれかからなり、前記アウトソールは、天然ゴム、天然皮革、天然フェルト、天然繊維から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする履物。
【請求項2】
前記表地、前記裏地、前記クッション材、前記インソール表皮膜、前記インソールクッション、前記インソール芯、前記ヒール表皮膜、前記ヒール芯、前記アウトソールの結合には、天然接着剤または天然繊維からなる糸の少なくともいずれかが用いられてなることを特徴とする、請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記天然接着剤は、天然ゴムまたは膠の少なくともいずれかであり、前記天然繊維は、絹、木綿、麻から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の履物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−39484(P2009−39484A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229526(P2007−229526)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(504169005)株式会社中村商店 (2)
【Fターム(参考)】