説明

山留め引抜機

【課題】 山留め鋼材を再利用するため、都市部の狭小地でも使用可能な、小型軽量で取り回しが簡単な山留め引抜機を提供することを課題とする。
【解決手段】 山留め鋼材の上部に引抜金具を取付けると共に、上下可動部に引抜金具を引掛ける為の複数のフック金具を取付け、上下可動部に油圧シリンダーのロッドを固定し、油圧シリンダーのロッドを伸縮する事により山留め鋼材の上部とフック金具に取付けた引抜金具が山留め鋼材を地中より引抜くように構成した山留め引抜機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に打ち込まれた山留め鋼材を引き抜く為の山留め引抜機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下室は、建築基準法において容積率の緩和が認められているため、地価の高い土地や、または狭い土地に建物を建築する際、基準となる土地の容積率に対して建物の建築面積を大きく取ることが可能となると共に、音漏れが少ないので、夜遅くでも安心して大音量での楽器の練習や、音楽、DVD鑑賞が出来るようになるため、日本のような、特に都市部の地価が高い土地や、建ぺい率が狭い土地に住宅を建設する際には、最も適している構造形態であるといえる。
【0003】
しかしながら、都市部の狭小地において主に用いられている山留め工法としては、親杭横矢板工法や、H形鋼を利用した鋼矢板工法が普及しているが、地下室が完成した後も、敷地が狭くさらに隣地との隙間が狭い都市部の建物が密集した区域では、大型の重機を搬入して、山留め鋼材を引き抜く事がほとんど不可能で、地下室を造った後に、山留め鋼材を地中より引き抜いて再利用する事がほとんど行われていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、パイラーを使ってシートパイルを引抜く、山留め引抜き工法は、本来、土木工事等の広い土地のもとでパイラーを使用するように装置が作られており、大都市の道巾が狭く、さらに隣家が迫る狭小敷地では装置が重く大きい為、装置を搬入出来ないと同時に、敷地が変形している場合には敷地内での取り回しが出来なかった。
【0005】
さらに振動式杭打機で、強制振動を杭や鋼矢板に伝達することにより引き抜きを行うバイブロハンマー工法は、隣家が迫る大都市では、地盤沈下や振動により隣家が損傷する可能性があり、使用する事が不可能であった。
【0006】
このように、狭小地で地下室を構築する為に使われた山留め鋼材は、地下室が完成した後も、地中に埋もれたまま放置された。
【0007】
本発明は、山留め鋼材を再利用するため、都市部の狭小地でも使用可能な、小型軽量で取り回しが簡単な山留め引抜機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
【0009】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、山留め鋼材の上部に引抜金具を取付けると共に、上下可動部に引抜金具を引掛ける為の複数のフック金具を取付け、フック金具に引抜金具を引掛け、上下可動部に油圧シリンダーのロッドを固定し、油圧シリンダーのロッドを伸縮させる事により、山留め鋼材の上部に取付けた引抜金具が山留め鋼材を地中より引抜くように構成した事を特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、上下可動部は、H形鋼を挟み込むように2本の油圧シリンダーで構成され、H形鋼に複数のフック金具を取付け、上下可動部には、円筒形ガイドレールに沿って上下に移動出来るように円筒ガイド部を設けた事を特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、引抜金具は、山留め鋼材に開けられた穴に挿入出来るように、下端が細長く丸棒状に構成され、上端はフック金具に引掛ける事が出来るようにU字形に構成された事を特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、山留め引抜機は油圧式クレーンのブーム先端に取付けられ、油圧式クレーンのブーム先端から油圧ホースを接続して、油圧式クレーンの油圧を山留め引抜機の油圧として利用した事を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、山留め鋼材の上部に引抜金具を取付けると共に、上下可動部に引抜金具を引掛ける為の複数のフック金具を取付け、フック金具に引抜金具を引掛け、上下可動部に油圧シリンダーのロッドを固定し、油圧シリンダーのロッドを伸縮させる事により、山留め鋼材の上部に取付けた引抜金具が、山留め鋼材を地中より引抜くように構成した事により、H形鋼を親杭として用いる横矢板工法でもH形鋼を地中より引抜く事が可能となると共に、さらに、H形鋼と平板鋼板を接合して山留め材として用いたH形鋼山留め工法で使用した山留め鋼材も引抜く事が可能となり、これまで地中に埋もれたまま放置された山留め鋼材の再利用が可能となり、資源の再利用とコストの削減を図る事が出来る。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、上下可動部は、H形鋼を挟み込むように2本の油圧シリンダーで構成され、H形鋼に複数のフック金具を取付け、上下可動部には、円筒形ガイドレールに沿って上下に移動出来るように円筒ガイド部を設けた事により、小型軽量で機動力のある山留め引抜機が可能となり、隣家が迫る狭小敷地においても取り回しが容易に出来るようになる為、山留め鋼材の再利用が可能となり、引抜工期の短縮とコストの削減を図る事が出来る。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、引抜金具は、山留め鋼材に開けられた穴に挿入出来るように、下端が細長く丸棒状に構成され、上端はフック金具に引掛ける事が出来るようにU字形に構成した為、山留め鋼材に穴を開ける事により、各種の山留め鋼材に対応する事が可能となり、各種の山留め鋼材の再利用を図る事が出来る。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、山留め引抜機を油圧式クレーンのブーム先端に取付け、油圧式クレーンの油圧を利用する事により、山留め引抜機を駆動する為の専用の油圧機械が不要となると共に、山留め引抜機を山留め鋼材の脇に設置する作業と、山留め引抜機の油圧シリンダーのロッドを伸縮する操作が一度に可能となり、山留め引抜機の操作が容易になって作業時間の短縮につながる為、大幅にコストの削減を図る事が出来る。
【実施例】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1及至図9には、この発明の実施の形態を示す。
【0019】
図1は、山留め引抜機の上下可動部9を正面図、側面図、平面図で表す。
【0020】
上下可動部9は図1、図2、図4で示すように、中央保持部16と油圧シリンダー1、油圧シリンダー4と基礎台15で構成され、中央保持部16はH形鋼8のフランジ面に対して、円筒支部2と円筒支部12が、図5に示すように円筒ガイド部25を挟み込むように斜めに溶接される。さらにH形鋼8の反対側のフランジ面には、先端が丸棒状に形成されたフック金具7が複数個溶接される。またウェブ面には、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4のロッドを固定する為の、油圧シリンダー取付板6がH形鋼8の両側のウェブ面に溶接される。さらにH形鋼8のウェブ面には、単管挿入穴10が開けられ、この単管挿入穴10に、図6で示すように単管28を挿入して山留め引抜機の取り回しと位置決めを行う。
【0021】
基礎台15はH形鋼3、箱形形状の置台5、箱形形状の置台14、円筒支部13で構成され、H形鋼3の切断面に置台14が溶接され、その上部に置台5が乗せられてH形鋼3と置台14に溶接され、さらにH形鋼3のフランジ面と置台5の側面に円筒支部13が溶接される。
【0022】
基礎台15の詳細図については、図1、図2、図4に正面図と側面図で表す。
【0023】
このように構成された中央保持部16の油圧シリンダー取付板6に、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4のロッド11をナット17で固定すると共に、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4の下端部を置台5に固定される。
【0024】
図3は、引抜金具18を左側面図、正面図、右側面図で表す。引抜金具18の上部のフック引掛部19は丸棒をU字形に曲げて成形され、平板鋼材を補強したベース部21に溶接される。さらに、ベース部21下端には、先端が丸穴に挿入しやすいように細く丸く成形された山留め引掛部20が溶接される。
【0025】
図5は、円筒支部2と円筒ガイド部25、円筒形ガイドレール26を組立てる際の構成と位置関係を示す。円筒形ガイドレール26は丸筒状に成形され、半丸筒状に成形された円筒ガイド部25の内側に取付けられ、円筒ガイド部25に対して自在に回転したり、上下にスライドしたり出来るように円筒ガイド部25より少し小さく成形される。さらに円筒支部2は、円筒ガイド部25をネジ27で固定出来るように、角度を付けてH形鋼8に溶接される。構成については、図5aで示した、H形鋼8と円筒支部2に、図5bで示すように、円筒ガイド部25がネジ27で固定され、図5cで示すように、円筒形ガイドレール26が挿入される。
【0026】
図6は、中央保持部16が、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4のロッド11により押し上げられた状態を、正面図と側面図で示す。なお、円筒形ガイドレール26は丸形状の円筒で形成され、上部には、油圧式クレーンのブーム先端に取付けられるようにピン装着部30が構成され、着脱可能な装着ピン29が取付けられる。円筒形ガイドレール26の下部には、円筒ガイド部32から抜け落ちないように、円筒形ガイドレール26の直径より大きな円盤が溶接される。
【0027】
図7は、円筒形ガイドレール26を上下可動部9に取付けた状態を正面図、側面図、平面図で示す。円筒形ガイドレール26と円筒ガイド部25、円筒ガイド部31、円筒ガイド部32がネジ27により円筒支部2、円筒支部12、円筒支部13に固定され、その円筒ガイド部25、円筒ガイド部31、円筒ガイド部32の内側に円筒形ガイドレール26が挿入され回動自在に固定される。
【0028】
図8は、地中に埋設された山留め鋼材34を、本発明の山留め引抜機を使って引抜いている状態を示す。図8aで示すように、山留め引抜機が、山留め鋼材34の近傍に置かれた鉄板35の上に設置され、地中に埋設された山留め鋼材34の穴33に、引抜金具18の山留め引抜部20を挿入すると共に、引抜金具18のフック引掛部19を上下可動部9のフック金具7に引掛け、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4に油圧式クレーンより油圧を供給する事により、図8bに示すように、ロッド11が伸びて中央保持部16が基礎台15より持上げられ山留め鋼材34が地中より引き抜かれる。
【0029】
さらに、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4がストロークいっぱい伸びきった後は、引抜金具18のフック引掛部19をフック金具7から取外すと共に、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4に油圧式クレーンよりの油圧を油圧バルブを切替えてシリンダーを動かしてロッド11を下げて元の位置に戻し、その後、再び引抜金具18のフック引掛部19をフック金具7に引掛けて、油圧シリンダー1、油圧シリンダー4に油圧式クレーンより油圧を供給してロッド11を伸ばし、地中に埋設された山留め鋼材34を引き抜く。このように上下可動部9の油圧シリンダー1、油圧シリンダー4に、油圧式クレーン37より油圧を供給して伸縮動作を繰り返し、山留め鋼材34にかかる土圧が低減するまで引抜き、その後、図9に示すように、油圧式クレーン37に取付けられたクレーン39で山留め鋼材34を引き抜く。
【0030】
なお、上下可動部9のフック金具7は、引抜金具18のフック引掛部19がフック金具7と適正位置で契合出来るように、H形鋼8の複数箇所に設ける事が望ましい。
【0031】
図9は、山留め引抜機を油圧式クレーン37に装着した状態を示す。油圧式クレーン37の装着アーム38がピン装着部30の装着ピン29に挿入され、山留め引抜機は油圧式クレーン37に装着される。
【0032】
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係る山留め引抜機について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【0033】
図3において、フック引掛部19は丸棒をU字形に曲げて構成したが、平板鋼材に楕円の穴を開けて代用する事も可能である。
【0034】
山留め鋼材34の引抜金具18に、油圧クランプ等の製品を使用して、油圧式クレーン37の油圧によりクランプで山留め鋼材を挟んで固定して、油圧クランプ等の製品を引抜金具として使用する事も可能である。
【0035】
基礎台15の形状は、H形鋼3と置台5、置台14の構造にこだわる事なく、上下可動部9を支える構造であれば、他の形状の置台でも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態に係る山留め引抜機の上下可動部を、正面図、側面図、平面図で表した図面である。
【図2】同実施の形態に係る図1の正面図を、中央保持部と油圧シリンダーと基礎台に分解した分解図である。
【図3】同実施の形態に係る引抜金具を、左側面図、正面図、右側面図で表した図面である。
【図4】同実施の形態に係る図1の側面図を、中央保持部と油圧シリンダーと基礎台に分解した分解図である。
【図5】同実施の形態に係る円筒支部と円筒ガイド部と円筒形ガイドレールの関係を断面図で表す。
【図6】同実施の形態に係る上下可動部が油圧シリンダーにより伸びた状態を、正面図、側面図で表した図面である。図6aは、円筒形ガイドレールを示す。
【図7】同実施の形態に係る山留め引抜機を、正面図、側面図、平面図で表す。
【図8】同実施の形態に係る山留め引抜機が、引抜金具を使って山留め鋼材を引き抜く図面である。
【図9】同実施の形態に係る山留め引抜機を油圧式クレーンのブーム先端に装着した図面である。
【符号の説明】
【0037】
1 油圧シリンダー
2 円筒支部
3 H形鋼
4 油圧シリンダー
5 置台
6 油圧シリンダー取付板
7 フック金具
8 H形鋼
9 上下可動部
10 単管挿入穴
11 ロッド
12 円筒支部
13 円筒支部
14 置台
15 基礎台
16 中央保持部
17 ナット
18 引抜金具
19 フック引掛部
20 山留め引掛部
21 ベース部
25 円筒ガイド部
26 円筒形ガイドレール
27 ネジ
28 単管
29 装着ピン
30 ピン装着部
31 円筒ガイド部
32 円筒ガイド部
33 穴
34 山留め鋼材
35 鉄板
36 地中
37 油圧式クレーン
38 装着アーム
39 クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山留め鋼材の上部に引抜金具を取付けると共に、上下可動部に引抜金具を引掛ける為の複数のフック金具を取付け、フック金具に引抜金具を引掛け、上下可動部に油圧シリンダーのロッドを固定し、油圧シリンダーのロッドを伸縮させる事により、山留め鋼材の上部に取付けた引抜金具が山留め鋼材を地中より引抜くように構成した事を特徴とする山留め引抜機。
【請求項2】
上下可動部は、H形鋼を挟み込むように2本の油圧シリンダーで構成され、H形鋼に複数のフック金具を取付け、上下可動部には、円筒形ガイドレールに沿って上下に移動出来るように円筒ガイド部を設けた事を特徴とする請求項1記載の山留め引抜機。
【請求項3】
引抜金具は、山留め鋼材に開けられた穴に挿入出来るように、下端が細長く丸棒状に構成され、上端はフック金具に引掛ける事が出来るようにU字形に構成された事を特徴とする請求項1記載の山留め引抜機。
【請求項4】
山留め引抜機は油圧式クレーンのブーム先端に取付けられ、油圧式クレーンのブーム先端から油圧ホースを接続して、油圧式クレーンの油圧を山留め引抜機の油圧として利用した事を特徴とする山留め引抜機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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