説明

工作機械、およびセンサモジュール

【課題】ワークの寸法の機内計測が可能であり、かつ機械の小型化とセンサの長寿命化とを両立できる工作機械を提供する。
【解決手段】主軸2に把持されたワーク12を加工する工作機械であって、複数の工具取り付け面を有するタレット刃物台7と、前記工具取り付け面の1つに取り付けられ、タレット刃物台7の径方向に起立する支柱22と、支柱22の頭部22bに固定され、ワークの寸法を計測するセンサ24と、支柱22の基部21に支持されるカバー片25およびカバー片26とを備え、カバー片25およびカバー片26は、タレット刃物台7の周方向に開閉可能であり、閉じた位置で支柱22とセンサ24とを覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関し、特にワークの寸法を機内計測可能な工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の1つとして、回転式の工具選択機構であるタレットを備えたタレット旋盤が使用されている。
【0003】
図16は、一般的なタレット旋盤の主要部の一例を示す外観斜視図である。図16に示されるタレット旋盤1は、主軸2およびタレット3を備える。
【0004】
主軸2は、ベッド4に設けられる主軸台5に支持され、主軸チャック6にてワーク(図示せず)を把持する。タレット3は、タレット刃物台7、インデックス機構8、およびタレットスライド9からなる。
【0005】
タレット刃物台7は、回転軸の周囲に複数の工具取り付け面10を有し、インデックス機構8によって回転可能に支持されている。工具取り付け面10には、バイトなどの工具11が装着される。
【0006】
インデックス機構8は、タレットスライド9に設置され、モータ駆動によって、タレット刃物台7を回転させることで所望の工具取り付け面10をワーク側に位置させ、またタレット刃物台7を主軸2の軸方向であるZ軸方向に移動させる。
【0007】
タレットスライド9は、ベッド4上にZ軸方向と直交するX軸方向に移動可能に設置され、モータ駆動によって、タレット刃物台7およびインデックス機構8と共にX軸方向に移動する。
【0008】
このような構成は、通常は筐体(図示せず)に収められ、筐体内にてワークの加工が行われる。
【0009】
タレット旋盤などの工作機械には、ワークの寸法を機内で計測する機能を持つものがある。この機能を用いて、例えばワークを都度機外に取り出すことなく寸法計測を行うことで作業効率を向上できる。また温度変化などの機内の環境変化によるワークや機体の変位を計測し工作機械に対する制御量を校正することで高い寸法精度を維持できる。そのような機能を持つタレット旋盤は、例えば、工具取り付け面10の1つに取り付けられるセンサによってワークの寸法を計測する。
【0010】
しかし、センサを工具取り付け面10に取り付けたのでは、ワーク加工時に飛散する切粉およびクーラントをかぶるなどして、センサが損傷しやすく、またセンサの信頼性の低下や寿命の短縮を招きやすい。
【0011】
そこで、ワークの寸法の機内計測が可能で、かつセンサの長寿命化を図ったタレット旋盤が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0012】
特許文献1に開示されるタレット旋盤は、タレットの前方でタレット中心の非回転部材に旋回可能に支持されてタレットの装着工具よりも外方に延びるセンサ取り付けアームを設け、このアームの先端に主軸のワークを計測する機内計測センサを取り付け、前記アームを主軸から離れる退避角度で保持する退避維持機構と、前記アームをタレットの回転部分に係脱可能に連結する旋回用連結機構とを設けてなる。
【0013】
この構成によれば、機内計測センサを、タレットの回転とは無関係に、適時に退避させ、堆積切粉やクーラントとの接触を低減することができる。その結果、センサが損傷しにくくなり、センサの信頼性向上および長寿命化に役立つ。
【特許文献1】実開平7−3902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の技術によれば、センサを取り付けるためのアームをタレット刃物台とは別体に設けるので、タレット旋盤の小型化は困難である。また、アームをタレット刃物台の前方に設けるので、工具交換の際にアームが邪魔になりやすい。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ワークの寸法の機内計測が可能な工作機械であって、工作機械の小型化とセンサの長寿命化とを両立する工作機械、および工作機械にそのような効果をもたらすセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題を解決するため、本発明の工作機械は、主軸に把持されたワークを加工する工作機械であって、複数の工具取り付け面を有するタレット刃物台と、前記工具取り付け面の1つに取り付けられた基台と、前記基台に回動可能または直動可能に取り付けられ、回動または直動するにつれて前記基台が取り付けられた工具取り付け面との距離を変更自在な可動部と、前記可動部に取り付けられ、前記ワークの寸法を計測するセンサと、前記可動部が前記基台に対して回動または直動するにつれて開閉し、閉じた位置で前記センサを覆う第1のカバー片および第2のカバー片とを備える。
【0017】
また、前記第1のカバー片および第2のカバー片は、前記基台にて支持され、前記工作機械は、さらに、前記可動部を前記タレット刃物台の径方向に往復動させる駆動機構と、前記可動部と前記第1のカバー片とを連結する第1のリンクと、前記可動部と前記第2のカバー片とを連結する第2のリンクとを備えてもよい。
【0018】
また、前記第1のカバー片および第2のカバー片は、前記可動部にて支持され、前記工作機械は、さらに、前記可動部を前記基台に対して回転させる駆動機構と、前記可動部に対し、前記可動部の回動軸と平行な方向に移動可能に取り付けられたスライド部材と、前記可動部の前記基台に対する回動を、前記スライド部材の並進に変換する変換機構と、前記スライド部材と前記第1のカバー片とを連結する第1のリンクと、前記スライド部材と前記第2のカバー片とを連結する第2のリンクとを備えてもよい。
【0019】
この構成によれば、センサが前記カバー片で覆われることにより切粉やクーラントから保護され、センサの長寿命化が図られるとともに、工作機械の小型化に役立つ次のような特徴が得られる。
【0020】
すなわち、可動部、センサ、およびカバー片の全てがタレットの工具取り付け面に取り付けられるので、従来のようにセンサを取り付けるためのアームをタレット刃物台と別体に設ける構成とは異なり、機内の空間が無駄に占有されることがない。また、他の工具取り付け面への刃物着脱の邪魔になりにくい。また、カバー片がタレット刃物台の周方向に開閉するので、刃物の旋回半径を大きく逸脱することなくカバーを開閉できる。そして、支柱の起立方向に往復動する駆動機構とリンクとでカバー片が開閉されるので、例えばカバー片を外側から引っ張って開閉する構成に比べて小型に実現できる。
【0021】
また、前記工作機械は、さらに、前記第1のカバー片と前記第2のカバー片とを閉じる方向に付勢する弾性体を備え、前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記可動部が動くに連れて、前記第1のカバー片と前記第2のカバー片とを、閉じた位置と開いた位置との間で最も広く開く位置を通過して移動させてもよい。
【0022】
この構成によれば、前記駆動機構からの駆動力が途切れた場合でも、前記弾性体の付勢力によって前記カバー片の開閉状態が安定的に保持されるので、不時の停電などにおけるフェイルセーフに役立つ。
【0023】
本発明は、このような工作機械として実現できるだけでなく、このような工作機械に用いられるセンサモジュールとして実現することも可能である。
【発明の効果】
【0024】
前記説明したように、本発明の工作機械によれば、支柱、センサ、およびカバー片を全てタレットの工具取り付け面に取り付け、カバー片が前記タレット刃物台の周方向に開閉可能となるように構成したので、ワークの寸法の機内計測が可能であり、かつ工作機械の小型化とセンサの長寿命化とを両立する工作機械、および工作機械にそのような効果をもたらすセンサモジュールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における工作機械の一例としてのタレット旋盤について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
まず、タレット旋盤の構成について説明する。
このタレット旋盤は、図4に示される従来の一般的なタレット旋盤と同様、回転式の工具選択機構であるタレット3を備え、タレット刃物台7の工具取り付け面10の1つにセンサモジュール110を備えてなる。
【0027】
センサモジュール110は、大まかには、センサと、センサを保護するカバーと、カバーを開閉するための機構とを有している。
【0028】
図1は、タレット旋盤のワーク方向に向かう工具取り付け面付近を左前方から眺めた拡大斜視図である。図1には、工具取り付け面に取り付けられ、カバーが開いた位置(つまり、カバー片が離れた位置)にあるセンサモジュール110の一例が描かれる。
【0029】
センサモジュール110は、支柱の基部として工具取り付け面に締結される基台21と、基台21からタレット刃物台7の径方向に起立する支柱22と、支柱22に固定されワーク12の寸法を計測するセンサ24と、第1のカバー片および第2のカバー片としてのカバー片25およびカバー片26とを有する。
【0030】
支柱22は、分離された支柱脚部22aと支柱頭部22bとからなる。支柱脚部22aには、支柱22の起立方向に往復動するプランジャ32を持つ駆動機構(図示せず)が固定される。支柱頭部22bは、駆動機構のプランジャ32に取り付けられる。プランジャ32は、支柱頭部22bをタレット刃物台7の径方向に往復動させる。
【0031】
駆動機構は、例えば、図示しないポンプからタレット3の回転軸内および工具取り付け面を経由して供給されるエアによって作動するエアシリンダである。切粉およびクーラントのブロー用に供給されるエアを、エアシリンダの駆動に用いてもよい。
【0032】
センサ24は、例えばセンサ24の先端とワークとの接触を検出する接触センサであり、支柱頭部22bに固定される。
【0033】
カバー片25およびカバー片26は、基台21の支柱22を挟む両側に設けられる支持軸で、タレット刃物台7の周方向に開閉可能に軸支される。
【0034】
センサモジュール110は、さらにカバーを開閉するための機構として、プランジャ32に固定されプランジャ32を延長するブラケット35と、ブラケット35およびカバー片25を連結するリンク33と、ブラケット35およびカバー片26を連結するリンク34と、カバー片25およびカバー片26を閉じる方向に付勢する弾性体としてのばね36とを有する。
【0035】
本実施の形態において、一体に動作するプランジャ32、ブラケット35、および支柱頭部22bが、可動部の一例である。
【0036】
図1に示されるカバーが開いた状態は、プランジャ32がタレット外周側端部へ進出した状態に対応する。
【0037】
図2は、カバーが閉じた状態(つまり、カバー片25およびカバー片26が接した状態)のセンサモジュール110の外観を示す拡大斜視図である。このカバーが閉じた状態は、プランジャ32がタレット内周側端部へ退入した状態に対応する。
【0038】
カバー片25およびカバー片26は、この閉じた位置において、支柱22およびセンサ24を覆うとともに、タレット刃物台7が回転した場合に他の構成部と干渉しない限界半径である刃物の旋回半径内に収容される。
【0039】
カバー片25およびカバー片26は、プランジャ32が動くに連れて、開いた位置と閉じた位置との間を移動する。
【0040】
次に、カバーの開状態および閉状態を安定的に保持する機構について説明する。
図3は、プランジャ32が移動範囲の両端部にある場合の、基台21、支柱脚部22a、支柱頭部22b、カバー片25、カバー片26、リンク33、リンク34、ブラケット35、およびばね36の位置を説明する図である。プランジャ32がタレット内周側端部にある場合の位置を実線および点線で示し、プランジャ32がタレット外周側端部にある場合の位置を二点鎖線で示す。
【0041】
プランジャ32の移動範囲の両端部は、ばね36の付勢力によってプランジャ32がそれぞれの端部に押し付けられる位置に設けられる。
【0042】
プランジャ32がタレット内周側(図面右方)の端部にある場合には、リンク33のブラケット35側の接続点がカバー片25側の接続点よりも右方にあり、またリンク34のブラケット35側の接続点がカバー片26側の接続点よりも右方にある。
【0043】
この位置において、ばね36の付勢力はブラケット35を右方へ押し出す方向に働くので、プランジャ32は移動範囲のタレット内周側の端部に押し付けられる。
【0044】
プランジャ32がタレット外周側(図面左方)へ移動するに連れて、カバー片25およびカバー片26の開き角は増していく。そして、リンク33およびリンク34がプランジャ32の移動方向に対して垂直になる位置で、カバー片25およびカバー片26の開き角が最大となる。プランジャ32がその位置を通過するとカバー片は閉じ始め、移動範囲のタレット外周側の端部に到達するまで、カバー片25およびカバー片26の開き角は減っていく。
【0045】
プランジャ32がタレット外周側の端部にある場合には、リンク33のブラケット35側の接続点がカバー片25側の接続点よりも左方にあり、またリンク34のブラケット35側の接続点がカバー片26側の接続点よりも左方にある。
【0046】
この位置において、ばね36の付勢力はブラケット35を左方へ押し出す方向に働くので、プランジャ32は移動範囲のタレット外周側の端部に押し付けられる。
【0047】
この構成により、駆動機構からの駆動力が途切れた場合でも、ばね36の付勢力によって、カバーの開状態および閉状態が安定して保たれるので、不時の停電などにおけるフェイルセーフに役立つ。
【0048】
次に、上記のように構成されたタレット旋盤の動作について説明する。
【0049】
ワーク12の計測を行う際、タレット旋盤の制御装置(図示せず)は、インデックス機構8を制御することによって、タレット刃物台7のセンサモジュール110が取り付けられた刃物取り付け面をワーク12の方向へ位置付ける。
【0050】
そして、駆動機構へエアを供給することにより、プランジャ32を移動範囲のタレット外周側端部へ移動させる。これにより、カバーが開き、支柱頭部22bと共にセンサ24がワーク12の方向へ進出する。
【0051】
この状態で、ワーク12の計測が行われる。すなわち、制御装置は、タレットスライド9を移動させ、ワーク12の直径上の2点のX座標をセンサ24の接触により特定することにより、ワーク12の直径を計測する。
【0052】
カバー片25およびカバー片26は、タレット刃物台7の周方向に、工具の旋回半径から大きく逸脱することなく開閉するので、カバー片25およびカバー片26を退避させるための空間をわざわざ取る必要がなく、タレット旋盤の小型化の点で有利である。
【0053】
また、カバー片25およびカバー片26はワーク12から遠ざかる方向に開くので、カバー片25およびカバー片26とワーク12との干渉が起こりにくい。カバー片25およびカバー片26は、ワーク12との干渉回避の点から、隣接する工具との干渉が生じない限り広く開くことが望ましい。
【0054】
さらに、支柱頭部22bと共にセンサ24がワーク方向へ進出することで、カバー片25およびカバー片26とセンサ24とのクリアランスが増大することも、カバー片25およびカバー片26と大型のワーク12との干渉を回避する上で有利である。
【0055】
ワーク12の寸法の計測が終わると、制御装置は、再び駆動機構へエアを供給することにより、プランジャ32を移動範囲のタレット内周側端部へ移動させる。これにより、支柱頭部22bと共にセンサ24がタレット内周側に引き込まれ、カバーが閉じる。
【0056】
この状態で、支柱22、センサ24、プランジャ32は、カバー片25およびカバー片26で覆われ、切粉やクーラントの飛来および接触から保護される。また、カバー片25およびカバー片26は刃物の旋回半径内に収容され、タレット刃物台7が回転した場合でも他の構成部と干渉しない。
【0057】
このような保護が得られた状態で、制御装置は、タレット刃物台7を回転させることによって好適な工具をワーク12の方向へと位置付け、ワーク12の加工を続行する。
【0058】
なお、本実施の形態において、カバー片25とカバー片26とを閉じる方向に付勢する弾性体は、ばね36に限定されない。例えば、カバー片25およびカバー片26のそれぞれと基台21とに掛け渡されるねじりばねであってもよい。
【0059】
また、カバー片25およびカバー片26の支持軸をタレットの前面側に向かって狭まる非平行に配置してもよい。そうすれば、カバー片25およびカバー片26それぞれのセンサ24側の先端部が開きながらタレットの前面側に移動するので、ワーク12からより遠ざかることができる。このことは、カバー片25およびカバー片26と大型のワーク12との干渉を回避する上で有利である。
【0060】
以上、実施の形態1で説明した工作機械およびセンサモジュールの構成によれば、カバー片25およびカバー片26がタレット刃物台7の周方向に開閉するので、刃物の旋回半径を大きく逸脱することなくカバーを開閉できる。また、タレット刃物台7の径方向に往復動する駆動機構とリンク機構とでカバー片25およびカバー片26が開閉されるので、例えばカバー片を外側から引っ張って開閉する構成に比べて小型に実現できる。
【0061】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、端部にセンサ24を備えるアーム122が回動することにより、センサと工具取り付け面10との距離であるセンサ距離を伸縮させることのできるセンサモジュール120を備えるタレット旋盤100について説明する。タレット旋盤100は、本発明の工作機械の別の一例である。
【0062】
なお、実施の形態2のタレット旋盤100の基本的な構成は、実施の形態1のタレット旋盤1と同じである。そこで、実施の形態2において特徴的な構成部であるセンサモジュール120を中心に説明する。
【0063】
まず、図4〜図7を用いて、実施の形態2におけるセンサモジュール120の基本的な構成について説明する。
【0064】
図4は、本発明の実施の形態2におけるセンサモジュール120の外観を示す拡大斜視図である。
【0065】
センサモジュール120は、基台121と、基台121に取り付けられ回動するアーム122と、アーム122と一体に回動するギアボックス123と、アーム122の回動を駆動する駆動部124と、センサ24(図4に図示せず)を覆う第1カバー片125と第2カバー片126と、アーム122の先端部に固定された後部カバー127とを有する。
【0066】
本実施の形態において、一体に動作するアーム122の先端部および後部カバー127が、可動部の一例である。
【0067】
図4は、アーム122を内側に収めることによって、センサ距離を縮めた状態のセンサモジュール120を示している。この状態から駆動部124は、アーム122を180度回動させることができる。
【0068】
アーム122の端部に保持されているセンサ24は、アーム122が回動することにより、工具取り付け面10との距離が伸ばされることになる。
【0069】
図5は、図4に示す状態からアーム122が90度回動した状態のセンサモジュール120の外観を示す拡大斜視図である。
【0070】
図5に示すように、アーム122の回動に伴い、第1カバー片125と第2カバー片126とが開く。
【0071】
図6は、図5に示す状態からアーム122がさらに90度回動した状態のセンサモジュール120の外観を示す拡大斜視図である。
【0072】
また、図6に示すように、アーム122が図4に示す状態から180度回動すると、センサ距離が伸ばされた状態となり、第1カバー片125と第2カバー片126とが完全に開く。
【0073】
このように、センサモジュール120は、アーム122を回動させることにより、センサ24の径方向の位置を、工具取り付け面10から遠い位置へ持っていくことができる。つまり、センサ距離を伸ばすことができる。
【0074】
このようにセンサ距離を伸ばすことにより、センサ24によりワークの直径の両端の位置を直接計測することが可能となる。
【0075】
なお、駆動部124は、例えば、エアシリンダとラック・アンド・ピニオンとで構成されており、エアシリンダを駆動源としてアーム122を回動させることができる。
【0076】
また、駆動部124にエアシリンダを用いた場合は、上述のように、切粉のブロー等のためにタレット刃物台7に供給されるエアを利用することができる。
【0077】
また、アーム122と駆動部124とにより本発明の工作機械およびセンサモジュールにおける距離伸縮機構が実現される。
【0078】
また、図6に示す状態から、アーム122が逆に180度回動すると、図4に示す状態、つまり、センサ距離を縮め、かつ、第1カバー片125と第2カバー片126とが閉じた状態となる。
【0079】
このような第1カバー片125および第2カバー片126の開閉動作は、本実施の形態においてはギアボックス123およびリンク機構により実現されている。リンク機構の詳細については後述する。
【0080】
次に、図7〜図13を用いて、実施の形態2のセンサモジュール120の構成および動作の詳細を説明する。
【0081】
図7は、実施の形態2のセンサモジュール120の構成を示す平面図である。
図7に示すように、センサモジュール120は、上述のアーム122等の構成部の他に、カム128とスライド部材129とを備えている。
【0082】
また、駆動部124は、タレット刃物台7の回転軸と平行、つまりZ軸に平行な方向の駆動軸124aを有する。
【0083】
アーム122は駆動軸124aと連結されており、駆動部124は駆動軸124aを介してアーム122を回動させることができる。
【0084】
このとき、アーム122に取り付けられているギアボックス123は、アーム122とともに回動する。この回動に伴いギアボックス123内のギアが回転し、カム128をZ軸方向に平行な方向に移動させる。
【0085】
このようにカム128が移動することにより、カム128に連結されたスライド部材129が同じ方向に移動する。
【0086】
なお、スライド部材129は、アーム122およびギアボックス123に対してZ軸方向に平行な方向にのみスライド可能である。これにより、スライド部材129に連結されたカム128は、アーム122およびギアボックス123に対して回転しない。
【0087】
図8は、カム128の外観を示す斜視図である。
カム123は、ギアボックス123内のギアの内周の突起が係合し摺動するカム溝128aと、スライド部材取付部128bが取り付けられる部位であるスライド部材取付部128bとを有する。
【0088】
図9は、ギアボックス123の内部構造の概要を示す図である。
図9に示すように、ギアボックス123は、ギアケース123aと、第1ギア123bと、第2ギア123cと、第3ギア123dとを有する。
【0089】
これら3つのギアのうち、第1ギア123bのみが、基台121に対して回転しない。具体的には、基台121の円筒部121a(図7参照)に固定さている。
【0090】
そのため、ギアボックス123が駆動軸124aを中心に回動すると、第1ギア123bは、ギアケース123aに対して相対的に回転することになる。
【0091】
また、第3ギア123dの内周には突起123eが設けられており、第3ギア123dの内側の孔に挿入されたカム128のカム溝128aと係合している。また、カム溝128aの方向は、第3ギア123dの回転面に対して斜めの方向である。
【0092】
この構造において、第3ギア123dが回転することにより、ギアボックス123に対して回転しないカム128は、Z軸に平行な方向、つまり、図9の奥方向または手前方向に移動する。
【0093】
例えば、駆動軸124aが図9に示すように時計回りに回動すると、それに伴い、ギアボックス123が同じ方向に回動する。
【0094】
このとき、基台121に固定された第1ギア123bは、ギアケース123aに対しては反時計回りに回転する。
【0095】
この第1ギア123bの回転力は第2ギア123cを介して、第3ギア123dに伝わり、第3ギア123dは反時計回りに回転する。これにより、カム128はZ軸に平行な方向に移動する。
【0096】
図10は、カム128が移動する様子を示す模式図である。
図10に示すように、突起123eは、カム溝128aをなぞりながらZ軸に垂直な方向に移動する。これにより、カム128はZ軸に平行な方向へ移動する。
【0097】
例えば、図10の左方向が、図9の奥方向である場合、ギアボックス123が時計回りに回動することで、第3ギア123dは反時計回りに回転する。これにより、カム128は、図9の手前方向(図10の右方向)に移動する。
【0098】
また、ギアボックス123が反時計回りに回動すると、カム128は、図9の奥方向(図10の左方向)に移動する。
【0099】
このようなカム128の移動に伴ってスライド部材129が移動し、リンク機構により第1カバー片125および第2カバー片126が開閉する。
【0100】
図11は、第1カバー片125および第2カバー片126が閉じた状態を示す図である。
【0101】
図11に示すように、第1カバー片125は、後部カバー127と第1ピン125aで回動可能に連結されており、第1ピン125aを回動軸として回動することができる。
【0102】
また、第2カバー片126は、後部カバー127と第2ピン126aで回動可能に連結されており、第2ピン126aを回動軸として回動することができる。
【0103】
また、第1カバー片125および第2カバー片126のそれぞれは第1リンク125bおよび第2リンク126bでスライド部材129と連結されている。
【0104】
図11に示す状態から、カム128が、センサ24が存在する方向、つまり図11における右方向に移動すると、スライド部材129も右方向に移動する。
【0105】
スライド部材129が右方向に移動すると、第1リンク125bにより、第1カバー片125が図11の上方向に回動する。また、第2リンク126bにより第2カバー片126が下方向に回動する。つまり、第1カバー片125および第2カバー片126が開くように回動する。
【0106】
このようにカム128の右方向への移動に伴い、第1カバー片125および第2カバー片126が次第に開いていき、図12に示す状態を経て図13に示す状態になる。
【0107】
図12は、第1カバー片125および第2カバー片126が完全に開く前の状態を示す図であり、図13はこれらが完全に開いた状態を示す図である。
【0108】
図13に示すように、第1カバー片125および第2カバー片126のそれぞれが略90度だけ回動することにより、センサ24によるワークの寸法の計測時にこれらカバー片が邪魔になることがない。
【0109】
また、これらカバー片内に切粉等のごみが存在する場合でも、そのごみをカバー片内から外部に排出することができる。つまり、これらカバー片内にごみが堆積することを防ぐことができる。
【0110】
なお、図13に示す状態から、カム128が左方向へ移動することにより、第1カバー片125および第2カバー片126は図11に示す位置まで戻る。
【0111】
図14は、第1カバー片125および第2カバー片126が開く際のセンサモジュール120の動作の流れを示す図である。
【0112】
なお、図14の上段は、図11に対応する図であり、図14の中段は、図12に対応する図であり、図14の下段は、図13に対応する図である。
【0113】
図14の上段は、センサ距離が最も短い状態であり、この状態からアーム122が90度回動すると図14の中段に示す状態になる。さらにアーム122が90度回動すると図14の下段に示す状態になる。
【0114】
このように、アーム122が回動することによりスライド部材129が移動し、スライド部材129に連結された第1リンク125bおよび第2リンク126bにより、第1カバー片125および第2カバー片126が次第に開いていく。
【0115】
また、図14の下段に示すように、センサ距離が伸ばされた状態になると、アーム122は回動を停止し、ワーク12の寸法の計測が開始される。
【0116】
そして、ワーク12の寸法の計測が終わると、アーム122は逆方向に回動して、再び図15の上段に示すように、センサ距離が縮められ、かつ第1カバー片125および第2カバー片126が閉じた状態に戻る。
【0117】
なお、このようなアーム122の回動およびタレット刃物台7の移動は、実施の形態1における支柱22の伸縮等と同じく、図示しない制御装置によって制御される。
【0118】
また、本実施の形態において、センサモジュール120のアーム122の回動軸となる駆動軸124aは、タレット刃物台7の回転軸と平行であるとした。しかしながら、駆動軸124aは別の方向を向いていてもよい。
【0119】
要するに、駆動軸124aの方向は、アーム122を回動させることで、タレット刃物台7の回転の妨げとならず、計測対象のワークの直径を直接計測できるようにセンサ距離を伸縮させることが可能な方向であればよい。
【0120】
以上説明したように、本発明の工作機械の一例としてのタレット旋盤によれば、センサ24がカバー片で覆われることにより切粉やクーラントから保護され、センサ24の長寿命化が図られるとともに、タレット旋盤の小型化に役立つ次のような多くの特徴が得られる。
【0121】
すなわち、センサ24、ならびに、カバー片およびカバー片を開閉する機構の全てがタレットの工具取り付け面に締結される基台上に設けられるので、従来のようにセンサを取り付けるためのアームをタレット刃物台と別体に設ける構成とは異なり、機内の空間が無駄に占有されることがない。また、他の工具取り付け面への刃物着脱の邪魔になりにくい。
【0122】
さらには、基台から上部の構造は、工具取り付け面に取り付けられるセンサモジュールとして、タレット3とは独立して設計でき、また、タレット3には従来のアームのような複雑な機構を付け加えない。そのため、タレット旋盤の合理的な設計開発が可能となり、タレット旋盤の信頼性の向上にも役立つ。
【0123】
以上、本発明の工作機械の一例としてのタレット旋盤について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0124】
例えば、駆動機構を、エアシリンダに代えて、オイルシリンダ、電磁ソレノイド、または電気モータで実現することも、もちろん可能である。
【0125】
また、センサモジュール120を用いてワークの直径以外の寸法を計測してもよい。例えば、中ぐり加工により形成される穴の直径である穴の内径を計測してもよい。
【0126】
また、センサ24はタッチ式のセンサでなくてもよく、光学的にワークの形状および位置等を計測するセンサでもよい。さらには、寸法以外の温度等の物性値を計測するセンサであってもよい。
【0127】
また、回転式の工具選択機構としてのタレットを備える工作機械には、タレット旋盤以外にも、マシニングセンタなどがあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係る工作機械は、例えばタレット旋盤やマシニングセンタといった、工具選択機構としてのタレットを有する工作機械として広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の実施の形態1におけるカバーが開いた状態のセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図2】カバーが閉じた状態のセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図3】カバーの開状態および閉状態を安定的に保持する機構を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態2におけるセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図5】図4に示す状態からアームが90度回動した状態のセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図6】図5に示す状態からアームがさらに90度回動した状態のセンサモジュールの外観を示す拡大斜視図である。
【図7】実施の形態2のセンサモジュールの構成を示す平面図である。
【図8】カムの外観を示す斜視図である。
【図9】ギアボックスの内部構造の概要を示す図である。
【図10】カムが移動する様子を示す模式図である。
【図11】第1カバー片および第2カバー片が閉じた状態を示す図である。
【図12】第1カバー片および第2カバー片が完全に開く前の状態を示す図である。
【図13】第1カバー片および第2カバー片が完全に開いた状態を示す図である。
【図14】第1カバー片および第2カバー片が開く際のセンサモジュールの動作の流れを示す図である。
【図15】ワークの直径を計測する際の、センサモジュールとワークとの位置関係の一例を示す図である。
【図16】一般的なタレット旋盤の一例を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0130】
1 タレット旋盤
2 主軸
3 タレット
4 ベッド
5 主軸台
6 主軸チャック
7 タレット刃物台
8 インデックス機構
9 タレットスライド
10 工具取り付け面
11 工具
12 ワーク
21 基台
22 支柱
22a 支柱脚部
22b 支柱頭部
24 センサ
25、26 カバー片
32 プランジャ
33、34 リンク
35 ブラケット
122 アーム
123 カム
123 ギアボックス
123a ギアケース
123b 第1ギア
123c 第2ギア
123d 第3ギア
123e 突起
124 駆動部
124a 駆動軸
125 第1カバー片
125b 第1リンク
126 カバー片
126b 第2リンク
127 後部カバー
128 カム
128a カム溝
128b スライド部材取付部
129 スライド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に把持されたワークを加工する工作機械であって、
複数の工具取り付け面を有するタレット刃物台と、
前記工具取り付け面の1つに取り付けられた基台と、
前記基台に回動可能または直動可能に取り付けられ、回動または直動するにつれて前記基台が取り付けられた工具取り付け面との距離を変更自在な可動部と、
前記可動部に取り付けられ、前記ワークの寸法を計測するセンサと、
前記可動部が前記基台に対して回動または直動するにつれて開閉し、閉じた位置で前記センサを覆う第1のカバー片および第2のカバー片と
を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記第1のカバー片および第2のカバー片は、前記基台にて支持され、
前記工作機械は、さらに、
前記可動部を前記タレット刃物台の径方向に往復動させる駆動機構と、
前記可動部と前記第1のカバー片とを連結する第1のリンクと、
前記可動部と前記第2のカバー片とを連結する第2のリンクと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作機械は、さらに、前記第1のカバー片と前記第2のカバー片とを閉じる方向に付勢する弾性体を備え、
前記第1のリンクと前記第2のリンクとは、前記可動部が動くに連れて、前記第1のカバー片と前記第2のカバー片とを、閉じた位置と開いた位置との間で最も広く開く位置を通過して移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1のカバー片および第2のカバー片は、前記可動部にて支持され、
前記工作機械は、さらに、
前記可動部を前記基台に対して回転させる駆動機構と、
前記可動部に対し、前記可動部の回動軸と平行な方向に移動可能に取り付けられたスライド部材と、
前記可動部の前記基台に対する回動を、前記スライド部材の並進に変換する変換機構と、
前記スライド部材と前記第1のカバー片とを連結する第1のリンクと、
前記スライド部材と前記第2のカバー片とを連結する第2のリンクと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
タレット刃物台の回転軸の周囲に複数設けられる工具取り付け面の1つに取り付けられるセンサモジュールであって、
前記工具取り付け面の1つに取り付けられた基台と、
前記基台に回動可能または直動可能に取り付けられ、回動または直動するにつれて前記基台が取り付けられた工具取り付け面との距離を変更自在な可動部と、
前記可動部に取り付けられ、前記ワークの寸法を計測するセンサと、
前記可動部が前記基台に対して回動または直動するにつれて開閉し、閉じた位置で前記センサを覆う第1のカバー片および第2のカバー片と
を備えることを特徴とするセンサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−125852(P2009−125852A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302855(P2007−302855)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】