説明

工作機械のワーク密着状態確認装置

【課題】加工台の着座面に付着したクーラントや切屑等の異物の清掃を行うことができ、工作機械の一時的な停止を防止し、工作機械の可動率を向上することができる工作機械のワーク密着状態確認装置を提供する。
【解決手段】ワークWの着座面13aを有する基準部材13の流体通路13bと、圧力流体供給源21との間に着座面13aの清掃用の流体を供給する清掃用流体供給回路25と、ワークWの密着状態を確認する確認用流体供給回路26を並列に接続する。両供給回路25,26に第1切換制御弁24及び第2切換制御弁31(32)を設け、確認用流体供給回路26に密着状態確認用の圧力スイッチ33(34)を設ける。制御装置からの切り換え信号により第1切換制御弁24及び第2切換制御弁31(32)を切り換え制御し、清掃用流体供給回路25から流体通路13b,13bに清掃用空気を供給して着座面13aを清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のワーク密着状態確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、ワークテーブルの上面にワークの下面を支持すると共に、ワークテーブルの上面に固定された加工台の着座面にワークの側面を接触して、加工台に設けたロケートピンによりワークを位置決めし、ワークテーブルに装着したクランプ機構によりワークを所定位置にクランプするようになっている。前記加工台の着座面にワークが適正に着座(密着)されていない場合には、工具によるワークの加工精度が低下するので、ワークの加工前に加工台の着座面にワークが適正に着座されているか否かを確認する必要がある。
【0003】
このため、従来、ワーク密着状態確認装置が用いられている。このワーク密着状態確認装置として、特許文献1に開示されたものが提案されている。このワーク密着状態確認装置は、ワークが載置される着座面に流体通路が形成された加工台と、該加工台の流体通路に接続されたシャトル弁とを備えている。又、ワーク密着状態確認装置は、前記シャトル弁に圧力スイッチを介して接続され、かつワークの密着状態を確認する高圧流体供給回路系と、前記シャトル弁に可変絞り弁を介して接続され、かつ微量の流体を放出する低圧流体供給回路系とを備えている。そして、加工台の着座面にワークが着座された状態で、前記高圧流体供給回路系を作動させて前記圧力スイッチにより圧力を検出して、設定圧力よりも低い場合には、着座面とワークとの間に切屑等の異物が残留した着座不良と判断するようになっている。又、ワークの加工作業が終了した後、低圧流体供給回路系を作動して、流体通路内に異物が侵入しないようになっている。
【特許文献1】特開平4−354657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のワークのワーク密着状態確認装置は、高圧流体供給回路系及び低圧流体供給回路系からの流体によるクーラント液や切屑等の異物の清掃は行われないので、作業者が手作業により加工台の着座面とワークの表面を清掃したり、清掃用のエアを着座面とワークの表面に噴射して清掃したりする必要がある。このため、常に着座面やワークの表面が適正に清掃されるとは限らず、着座不良の発生率が高く、工作機械の一時的な停止を強いられ、工作機械の可動率を低下させるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、加工台の着座面と、該着座面に接触するワークの表面に付着したクーラントや切屑等の異物の清掃を行うことができ、工作機械の一時的な停止を防止し、その可動率を向上することができる工作機械のワーク密着状態確認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ワークの加工台に設けた着座面に形成された流体通路と、圧力流体供給源との間に、前記着座面の清掃用の流体を供給する清掃用流体供給回路と、ワークの密着状態を確認する確認用流体供給回路を並列に接続し、前記両供給回路に切換制御弁を設け、前記確認用流体供給回路に密着状態確認用の圧力検出手段を設け、前記切換制御弁の切り換えタイミングを制御する制御装置を設け、該制御装置は前記加工台へのワークの搬入開始からクランプ完了までの期間において、前記切換制御弁に対し前記清掃用流体供給回路に切り換える制御信号を出力する機能を備えていることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記制御装置は、ワークのアンクランプ動作の開始からワークの搬出までの期間において、前記切換制御弁に対し前記清掃用流体供給回路に切り換える制御信号を出力する機能を備えていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記切換制御弁は、前記両供給回路の上流側に設けた第1切換制御弁と、下流側に設けた第2切換制御弁とにより構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記圧力流体供給源と第1切換制御弁との間に、該制御弁が非励磁の清掃用流体供給ポートに切り換えられ、かつ第2切換制御弁が非励磁の確認用流体供給ポートに保持された状態において、前記確認用流体供給回路に調整用流体を供給する調整用流体供給回路を設け、該調整用流体供給回路に手動切換制御弁を接続し、前記加工台の着座面とワークの被着座面との隙間に対する前記圧力検出手段の検出感度を調整可能に構成したことを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記清掃用流体供給回路には、速度制御弁が設けられていることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項において、前記圧力流体供給源と前記第1切換制御弁との間には、前記清掃用流体供給回路及び確認用流体供給回路の少なくともいずれか一方を微弱流体供給回路として機能するように切り換える第3切換制御弁が設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、制御装置からの制御信号により清掃用流体供給回路を作動して、加工台の着座面と、該着座面に接触するワークの表面との間に形成された隙間に流体を噴射することができる。このため、着座面やワークに付着しているクーラントや切屑等の異物の清掃を行うことができ、着座面に対するワークの着座不良を防止して、工作機械の一時的な停止を無くし、その可動率を向上することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、ワークのアンクランプ動作の開始からワークの搬出までの期間においても、前記清掃用流体供給回路によって清掃用流体が供給されるので、上述の清掃作業をさらに確実に行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記切換制御弁が第1切換制御弁と第2切換制御弁とにより構成されているので、切り換え制御を円滑に行うことができる。
請求項4に記載の発明は、第1切換制御弁が非励磁の清掃用流体供給ポートに切り換えられ、かつ第2切換制御弁が非励磁の確認用流体供給ポートに保持された状態において、手動切換制御弁を操作することにより前記調整用流体供給回路から前記確認用流体供給回路に調整用流体を供給する。これにより、機械停止時において、前記加工台の着座面とワークの被着座面との隙間に対する前記圧力検出手段の検出感度を調整することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、速度制御弁により清掃用流体の供給速度を適正に調整することができる。
請求項6に記載の発明は、第3切換制御弁により清掃用流体供給回路及び密着確認用流体供給回路の少なくともいずれか一方に微弱流体を供給することができ、流体通路へ異物が侵入するのを防止しつつ、流体の消費量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した工作機械のワーク密着状態確認装置の第1の実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0016】
図3に示すように、工作機械のワークテーブル11の上面には、ワークをクランプするための加工台としての固定台座12が立設され、この台座12の垂直面12aには基準部材13が複数箇所(この実施形態では2箇所)に設けられている。各基準部材13の前面には、ワークWの表面Wa(被着座面)を所定位置に位置規制するための着座面13aが形成されている。前記ワークテーブル11の上面には、前記ワークWを前記基準部材13の着座面13aとの間でクランプするためのクランプ機構14が設けられている。前記クランプ機構14によって、ワークWがワークテーブル11の上面に沿って基準部材13に向かって水平方向(図3の左方向)に移動され、固定台座12に設けた図示しないロケートピンによってワークWが位置決めされるとともに、所定位置にクランプされる。
【0017】
次に、基準部材13の着座面13aに対するワークWの密着状態を確認するためのワーク密着状態確認装置20について説明する。
図3に示すように、前記各基準部材13には、前記ワークWの表面Waに向かって流体としての空気を作用させるための流体通路13bが前記着座面13aに開口するように形成されている。
【0018】
図1に示すように、圧力流体供給源21に接続された配管22には、電磁式の流体供給制御弁23及び電磁式の第1切換制御弁24が接続されている。この第1切換制御弁24には前記基準部材13の着座面13aとワークWの表面Waとの隙間Gに清掃用空気を供給するための清掃用流体供給回路25が接続されている。同じく前記第1切換制御弁24には基準部材13の着座面13aに対するワークWの密着(着座)を確認するための空気を供給する確認用流体供給回路26が前記清掃用流体供給回路25と並列に分岐接続されている。前記流体供給制御弁23は、図示しない制御装置からの制御信号により閉路ポート23a(非励磁)から開路ポート23b(励磁)に切り換えられるようになっている。前記第1切換制御弁24は、前記制御装置からの制御信号により前記清掃用流体供給回路25に清掃用空気を供給するための清掃用流体供給ポート24a(非励磁)と、確認用流体供給回路26に確認用空気を供給するための確認用流体供給ポート24b(励磁)との間で切り換え可能になっている。
【0019】
前記清掃用流体供給回路25の先端は、二つの基準部材13と対応して第1分岐回路25aと第2分岐回路25bに、前記確認用流体供給回路26の先端は、第1分岐回路26aと第2分岐回路26bに分岐されている。そして、それらの先端は、後述する電磁式の第2切換制御弁31(32)を介して前記基準部材13の流体通路13b(13b)に接続可能になっている。前記清掃用流体供給回路25の途中には、速度制御弁27が設けられ、清掃用流体の供給速度を調整するようになっている。前記確認用流体供給回路26の途中には、圧力制御弁28が設けられ、前記流体通路13b(13b)に着座状態を確認するために供給する空気の圧力を適正な圧力に調整するようになっている。
【0020】
前記分岐回路26aと前記分岐回路25aの下流側の合流点には、第2切換制御弁31が接続され、前記分岐回路26bと前記分岐回路25bの下流側の合流点にも第2切換制御弁32が接続されている。前記第2切換制御弁31は、図示しない制御装置からの制御信号により前記第1分岐回路26aから確認用の空気を供給する確認用流体供給ポート31a(非励磁)と、清掃用の空気を供給する清掃用流体供給ポート31b(励磁)との間で切り換え可能になっている。前記第1分岐回路26aの途中には圧力検出手段としての第1圧力スイッチ33が設けられ、第1分岐回路26a内の空気の圧力を検出するようになっている。前記第2切換制御弁32は、図示しない制御装置からの制御信号により前記第2分岐回路26bから確認用の空気を供給する確認用流体供給ポート32a(非励磁)と、清掃用の空気を供給する清掃用流体供給ポート32b(励磁)との間で切り換え可能になっている。前記第2分岐回路26bの途中には第2圧力スイッチ34が設けられ、第2分岐回路26b内の空気の圧力を検出するようになっている。
【0021】
前記第1分岐回路26a及び第2分岐回路26bの途中には、固定絞り弁35,36が接続され、大気に開放される第3分岐回路26c及び第4分岐回路26dには可変絞り弁37,38が接続されている。この可変絞り弁37,38によって確認用空気の圧力をそれぞれ調整することができるようにしている。
【0022】
前記圧力流体供給源21と、第1切換制御弁24の間には、前記配管22と並列に調整用流体供給回路39が接続され、この回路39には、手動切換制御弁40が接続されている。この手動切換制御弁40は、前記第1切換制御弁24が清掃用流体供給ポート24aに切り換えられた状態で、前記確認用流体供給回路26を大気に開放するドレンポート40aを備えている。又、手動切換制御弁40は、前記第1切換制御弁24及び第2切換制御弁31(32)の非励磁(停電)状態において、前記圧力流体供給源21から調整用流体供給回路39を通して前記確認用流体供給回路26内に空気を供給して、ワーク密着状態確認装置20の調整を行うための調整用流体供給ポート40bを備えている。前記配管22及び回路39にはフィルターFが設けられている。
【0023】
次に、前記のように構成されたワーク密着状態確認装置20について、その動作を図2を中心に説明する。
工作機械のワークテーブル11の上面には、図示しないワーク搬入出装置によって、ワークWが搬入される。この搬入出装置のワーク把持具により前工程の工作機械のワークWが把持されて上昇され、前進された後、ワークテーブル11の上面に下降され、ワークWが図3に実線で示すクランプ開始位置に搬入される。
【0024】
ワークWの搬入動作が開始される時刻H1においては、図2に示すように流体供給制御弁23は開路ポート23bに切り換えられ、前記第1切換制御弁24は、非励磁の清掃用流体供給ポート24aに保持されている。又、第2切換制御弁31(32)は励磁されて、確認用流体供給ポート31a(32a)から清掃用流体供給ポート31b(32b)に切り換えられている。この状態で、圧力流体供給源21から配管22、開路ポート23b、清掃用流体供給ポート24a、清掃用流体供給回路25、速度制御弁27及び清掃用流体供給ポート31b(32b)を介して、前記基準部材13の流体通路13b,13bに清掃用空気の供給が所定の圧力で開始される。そして、ワーク搬入出装置によってワークWが図3に実線で示すクランプ開始位置に移動された時刻H2において、クランプ機構14によって、ワークWのクランプ動作が開始される。そして、時刻H3において、ワークWのクランプ動作が完了されると、図3に二点鎖線で示すようにワークWが基準部材13の着座面13aに着座された状態となる。この状態において、前記第2切換制御弁31(32)が非励磁となって清掃用流体供給ポート31b(32b)から、確認用流体供給ポート31a(32a)に切り換えられる。
【0025】
さらに、時刻H3から所定時間が経過した時刻H4になると、制御装置からの制御信号により第1切換制御弁24が励磁されて、清掃用流体供給ポート24aから確認用流体供給ポート24bに切り換えられる。これにより、圧力流体供給源21から配管22、確認用流体供給ポート24b、確認用流体供給回路26、第1(第2)分岐回路26a(26b)及び確認用流体供給ポート31a(32a)を通して基準部材13の流体通路13bに設定圧力の確認用空気が供給される。このとき、基準部材13の着座面13aに対するワークWの表面Waの着座状態が正常の場合には、流体通路13bから空気が外部に漏洩することがないので、前記圧力スイッチ33(34)によって検出される圧力が設定圧力となり、着座状態が正常であることが、制御装置の判定回路によって確認される。一方、前記基準部材13の着座面13aとワークWの表面Waとの間に切屑等の異物が介在されていて、両者の接触界面から空気が外部に漏洩する場合には、前記圧力スイッチ33(34)によって検出された圧力が設定圧力以下となり、着座状態が異常であることが制御装置の判定回路によって確認される。なお、異常が発生した場合には、表示装置に表示される。
【0026】
上述したように、時刻H3から所定時間経過した時刻H4において、密着状態を確認するようにしたのは、基準部材13の流体通路13b内に残留する清掃用空気の圧力をリークさせて前記設定圧力より低い圧力に低下させるためである。
【0027】
図2において、ワークWの加工が図示しない加工機本体の主軸装置に装着された工具によって行われ、ワークWの加工が終了される時刻H5において、前記クランプ機構14によるワークのクランプが解除される。このとき、前記第1切換制御弁24が確認用流体供給ポート24bから清掃用流体供給ポート24aに切り換えられると共に、前記第2切換制御弁31(32)が、確認用流体供給ポート31a(32a)から清掃用流体供給ポート31b(32b)に切り換えられる。これにより、基準部材13の着座面13aと、ワークWの表面Waとの間の隙間Gに清掃用の空気が噴射されて、再び両者の清掃が行われる。ワークWのアンクランプ動作が完了する時刻H6になった後は、加工完了後のワークWが搬入出装置により搬出されるとともに、未加工のワークWが搬入され、再び時刻H1以降の動作が継続される。
【0028】
上記第1の実施形態の工作機械のワーク密着状態確認装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記第1の実施形態では、前記圧力流体供給源21と基準部材13の流体通路13bとの間に配管22、流体供給制御弁23、第1切換制御弁24、清掃用流体供給回路25及び確認用流体供給回路26を設けた。又、第1及び第2分岐回路26a,26bと第1及び第2分岐回路25a,25bの合流点に第2切換制御弁31,
32を設け、ワークWの搬入工程において、ワークWのクランプが完了するまで、清掃用空気を基準部材13の流体通路13bに供給するようにした。このため、基準部材13の着座面13aと、ワークWの表面Waに付着している切屑等の異物を効果的に除去することができ、クランプ機構14によるワークWのクランプ動作時のワークの着座不良の発生を大幅に抑制することができ、機械の可動率を向上することができる。
【0029】
(2)上記第1の実施形態では、ワークのアンクランプ動作の開始からワークの搬出までの期間においても、前記清掃用流体供給回路25によって清掃用流体が供給されるので、上記(1)で述べた清掃作業をさらに確実に行うことができる。
【0030】
(3)上記第1の実施形態では、前記圧力流体供給源21と第1切換制御弁24の間に調整用流体供給回路39及び手動切換制御弁40を設けた。このため、第1切換制御弁24が非励磁の清掃用流体供給ポート24aに切り換えられ、かつ第2切換制御弁31,32が非励磁の確認用流体供給ポート31a,32aに保持された機械停止時の安全な状況下において、次のようにして第1及び第2圧力スイッチ33,34の感度を調整することができる。即ち、手動切換制御弁40を操作することにより前記調整用流体供給回路39から前記確認用流体供給回路26に調整用流体を供給することができる。これにより、前記基準部材13の着座面13aとワークWの表面(被着座面)Waとの隙間Gに対する前記第1及び第2圧力スイッチ33,34の検出感度を調整することができる。この調整に際しては、基準部材13の流体通路13bの出口に隙間調整用ゲージ(図示略)を取り付け、第1及び第2圧力スイッチ33,34が圧力制御弁28により設定された設定圧により作動するか否かを確認して、第1及び第2圧力スイッチ33,34の感度を調整する。
【0031】
(4)上記第1の実施形態では、清掃用流体供給回路25に設けた速度制御弁27により清掃用空気の供給速度を、工作機械の可動率、ミスト量等を考慮した適正速度に容易に調整することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化したワーク密着状態確認装置20の第2の実施形態を図4及び図5に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0033】
図4に示すように、前記配管22の途中には、電磁式の第3切換制御弁41が接続されている。この第3切換制御弁41は非励磁の微風供給ポート41aと、励磁の開路ポート41bとの間で切り換え可能に構成されている。その他の構成は前記第1の実施形態と同様である。
【0034】
次に、図5に基づいて第2の実施形態のワーク密着状態確認装置20の動作について説明する。
この実施形態では、ワーク搬入出装置によりワークWの搬入が開始される時刻H1からクランプ機構14によるクランプ動作が開始される時刻H2までは、制御装置からの制御信号によって第1切換制御弁24が清掃用流体供給ポート24aに保持されるとともに、第2切換制御弁31,32も清掃用流体供給ポート31b,32bに保持され、さらに前記第3切換制御弁41が微風供給ポート41aに保持される。これによって、清掃用流体供給回路25、第1(第2)分岐回路25a(25b)及び流体通路13b,13bに所定圧力の微風が供給され、流体通路13bへの切屑等の異物の侵入が防止される。この状態では、清掃用流体供給回路25等が微弱流体供給回路として機能する。そして、時刻H2になると、第3切換制御弁41が微風供給ポート41aから開路ポート41bに切り換えられ、清掃用流体供給回路25及び第1(第2)分岐回路25a(25b)から前記隙間Gに清掃用空気が供給される。その後、時刻H3において、第2切換制御弁31(32)が確認用流体供給ポート31a(32a)に切り換えられるとともに、時刻H4において、前記第1切換制御弁24が確認用流体供給ポート24bに切り換えられると、確認用空気が確認用流体供給回路26を通して基準部材13の流体通路13bに供給され、前述した密着状態の確認が行われる。
【0035】
ワークの加工動作が終了する時刻H5になると、第1切換制御弁24が清掃用流体供給ポート24aに、第2切換制御弁31(32)が清掃用流体供給ポート31b,32bに切り換えられるが、第3切換制御弁41が微風供給ポート41aに切り換えられるので、時刻H5から時刻H6まで微風が基準部材13の流体通路13bに供給され、その後、再び時刻H1以降の動作が継続される。
【0036】
上記第2の実施形態の工作機械のワーク密着状態確認装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第2の実施形態では、時刻H2から時刻H3において、基準部材13の着座面13aとワークWの表面Waとの隙間Gが形成された状態で、高圧の清掃用空気を噴射するようにした。このため、清掃効率が高い期間のみを有効に利用して清掃を効率良く行うことができ、噴射時に発生するミスト量の抑制及びエア消費量の低減が可能である。
【0037】
(2)第2の実施形態では、第3切換制御弁41により清掃用流体供給回路25に微弱流体を供給するようにしたので、基準部材13の流体通路13bへ異物が侵入するのを防止することができる。
【0038】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・第1の実施形態において、前記第1切換制御弁24の励磁タイミングを、図2の時刻H1から時刻H2の間の任意の時刻にしたり、時刻H2から時刻H3の間の任意の時刻にしたりしてもよい。
【0039】
・第1の実施形態において、前記第2切換制御弁31(32)を省略してもよい。この場合には、第1切換制御弁24を、清掃用流体供給回路25及び確認用流体供給回路26のいずれか一方のみが作動されるように構成する。
【0040】
・第2の実施形態において、第3切換制御弁41によって、前記清掃用流体供給回路25及び確認用流体供給回路26に微弱流体を供給するように前記各切換制御弁の構成を変更したり、確認用流体供給回路26にのみ微弱流体を供給するように各切換制御弁の構成を変更したりしてもよい。
【0041】
・第2の実施形態において、ワークの加工完了後しばらくの間は、第1切換制御弁24を清掃用流体供給ポート24aに切り換えるとともに、第2切換制御弁31,32を清掃用流体供給ポート31b,32bに切り換え、さらに第3切換制御弁41を開路ポート41bに保持して清掃用空気を供給するようにしてもよい。
【0042】
・第2の実施形態において、前記圧力流体供給源21と前記第1切換制御弁24との間に設けた第3切換制御弁41を微風供給ポート41aに切り換えることにより、前記清掃用流体供給回路25及び確認用流体供給回路26の少なくともいずれか一方が微弱流体供給回路として機能するように前記第1切換制御弁24を構成してもよい。
【0043】
・各実施形態において、空気に代えて、例えばクーラント等の他の流体を用いてもよい。
・基準部材13の着座面13aの面積を減少することにより、ワークWとの接触面積を減らすように構成してもよい。この場合には、さらなる切屑除去効果が期待できる。ただし、面積を減らし過ぎると、クランプ時のワークWにかかる圧力が増大するため、ワークWが傷つかない程度にまで減少することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の工作機械のワーク密着状態確認装置の第1の実施形態を示す回路図。
【図2】第1の実施形態のワーク密着状態確認装置の動作を説明するタイミングチャート。
【図3】第1の実施形態の工作機械のワーク密着状態確認装置の概略構成を示す側面図。
【図4】この発明のワーク密着状態確認装置の第2の実施形態を示す回路図。
【図5】第2の実施形態のワーク密着状態確認装置の動作を説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0045】
W…ワーク、G…隙間、13…基準部材、13a…着座面、13b…流体通路、21…圧力流体供給源、24…第1切換制御弁、24a,31b,32b…清掃用流体供給ポート、24b,31a,32a…確認用流体供給ポート、25…清掃用流体供給回路、26…確認用流体供給回路、27…速度制御弁、31,32…第2切換制御弁、31a,32a…確認用流体供給ポート、33…圧力検出手段としての圧力スイッチ、39…調整用流体供給回路、40…手動切換制御弁、41…第3切換制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの加工台に設けた着座面に形成された流体通路と、圧力流体供給源との間に、前記着座面の清掃用の流体を供給する清掃用流体供給回路と、ワークの密着状態を確認する確認用流体供給回路を並列に接続し、前記両供給回路に切換制御弁を設け、前記確認用流体供給回路に密着状態確認用の圧力検出手段を設け、前記切換制御弁の切り換えタイミングを制御する制御装置を設け、該制御装置は前記加工台へのワークの搬入開始からクランプ完了までの期間において、前記切換制御弁に対し前記清掃用流体供給回路に切り換える制御信号を出力する機能を備えていることを特徴とする工作機械のワーク密着状態確認装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御装置は、ワークのアンクランプ動作の開始からワークの搬出までの期間において、前記切換制御弁に対し前記清掃用流体供給回路に切り換える制御信号を出力する機能を備えていることを特徴とする工作機械のワーク密着状態確認装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記切換制御弁は、前記両供給回路の上流側に設けた第1切換制御弁と、下流側に設けた第2切換制御弁とにより構成されていることを特徴とする工作機械のワーク密着状態確認装置。
【請求項4】
請求項3において、前記圧力流体供給源と第1切換制御弁との間に、該制御弁が非励磁の清掃用流体供給ポートに切り換えられ、かつ第2切換制御弁が非励磁の確認用流体供給ポートに保持された状態において、前記確認用流体供給回路に調整用流体を供給する調整用流体供給回路を設け、該調整用流体供給回路に手動切換制御弁を接続し、前記加工台の着座面とワークの被着座面との隙間に対する前記圧力検出手段の検出感度を調整可能に構成したことを特徴とする工作機械のワーク密着状態確認装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記清掃用流体供給回路には、速度制御弁が設けられていることを特徴とする工作機械のワーク密着状態確認装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項において、前記圧力流体供給源と前記第1切換制御弁との間には、前記清掃用流体供給回路及び確認用流体供給回路の少なくともいずれか一方を微弱流体供給回路として機能するように切り換える第3切換制御弁が設けられていることを特徴とする工作機械のワーク密着状態確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−98525(P2007−98525A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292878(P2005−292878)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000152675)株式会社日平トヤマ (218)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】