説明

巻 芯

【課題】 本発明の巻芯は、巻芯表面の摩擦係数が小さいのでシート状材料を巻き取った後に巻芯を抜き取る際の滑り特性が良く、シート材料を傷つけることがない。また、耐磨耗特性に優れており、長期間にわたり連続製造することができる。
【解決手段】 シート状材料を巻き取るための巻芯において、前記巻芯表面の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzが0.4〜5μmであって、且つ切断レベル40%における負荷長さ率tpが20〜95%であることを特徴とする巻芯に関する。また、本発明において、前記巻芯表面がセラミック被覆された巻芯であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シート状材料を巻き取るための巻芯に関する。特に、本発明の巻芯は電池製造時に用いられる電池用巻芯として好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】リチウム二次電池のような円筒電池は、一般に電極とセパレータとを交互に挟み込む形で巻芯に巻き付けられて捲回された後、捲回された電極素子から巻芯を抜き取って渦巻状の電極体を作製し、これを電池缶内に挿入することにより製造されている。
【0003】ところが、前記捲回後に巻芯を電極体から抜き取る際に、ピン(巻芯)抜け不良や成形時のセンターピン(巻芯)挿入不良による素子形状異常等があり、電池の歩留まりの低下の大きな要因となっていた。そこで、ピン抜け性を改良するために、捲回用ピン(巻芯)として、従来の鉄製の巻芯に代えて、巻芯の表面をクロムメッキ処理鏡面加工されたものが使用されているが、いまだ十分とはいえず、巻芯の抜き取り時の滑りが悪いため、巻芯を抜き取った際に、電極素子の形状が竹の子状態になったり、抜けなかったりすることが起こっていた。これらの原因は、捲回後のセパレータと巻芯との滑りの悪さ、すなわちセパレータが巻芯に比較的強く巻かれるため、捲回後に巻芯を抜き取る際のセパレータと巻芯との摩擦係数に起因するものと考えられる。
【0004】そこで、摩擦係数の数値を下げる試みがいくつか提案されている。例えば、巻芯表面にシリコン離型剤を塗布する方法が提案されているが、この方法の場合には、電極体を巻き取る毎に、巻芯にシリコン離型剤を塗布する必要があり、製造工程が複雑になり、生産効率も悪い。また、特開平6−251774号公報には、巻芯表面のクロムメッキ処理鏡面加工の代わりに、カーボンをエポキシ樹脂等と混合し、これを巻芯の芯体表面に塗布して摩擦係数を低減させる方法が提案されている。しかしながら、電極素子を形成する場合、比較的大きなテンションをかけて捲回されるため、前記特開平6−251774号公報の場合には、巻芯の耐久性に難点があり、巻芯の交換の頻度が高くなり、長期間連続した製造を行うことが困難であり、生産効率の面で難点を有しており、しかも、ピン抜け性も未だ十分とは言えなかった。そこで、巻芯表面をさらに改良したものとして、クロムめっきの耐磨耗性と4フッ化樹脂の低摩擦係数の特性を複合して有する巻芯として、自己潤滑性クロムめっきした巻芯が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、自己潤滑性クロムめっきした巻芯は、比較的低い摩擦係数を有しているが耐久性の面では未だ十分ではなく、さらに優れた特性を有する巻芯の提供が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討の結果、巻芯の表面粗さRzを特定の範囲とし、さらに巻芯表面の切断レベルの負荷長さ率tpを特定の範囲とすることによって、低摩擦係数を有し、しかも耐久性に優れた巻芯が得られることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、シート状材料を巻き取るための巻芯において、前記巻芯表面の表面粗さRzが0.4〜5μmであって、且つ切断レベル40%におけるtpが20〜95%であることを特徴とする巻芯に関する。
【0007】また本発明において、前記巻芯表面がセラミック被覆された巻芯であることが好ましい。本発明の巻芯は、シート状材料として比較的柔軟なフィルムが使用されるリチウム二次電池の電極体製造時の巻芯として好適に使用することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、巻芯のフィルムが当接する主表面部における表面粗さ(十点平均粗さ)Rzが過度に小さい場合には、摩擦抵抗が大きくなり、巻芯抜き取り時に、ピン抜け不良となり易く、一方、Rzが過度に大きい場合には、フィルムの損傷が起こり易くなる。したがって、表面粗さ(十点平均粗さ)Rzは0.4〜5μm、特に1〜3.5μmとするのが好ましい。また、切断レベル40%における負荷長さ率tpが過度に小さい場合には、使用されるフィルムが柔らかいために摩擦抵抗が大きくなり、巻芯抜き取り時に、ピン抜け不良となり易い。したがって、負荷長さ率tpは大きい方が好ましいが、表面粗さ(十点平均粗さ)Rzが上記の範囲の場合には、過度に大きくすることは製造上、困難な面があり通常tpは最大85%程度である。したがって、切断レベル40%の負荷長さ率tpは25〜85%とするのがよい。特に本発明において、巻芯表面にセラミック被膜を形成させた巻芯は、低摩擦係数を有し、しかも耐久性に優れており好ましい。
【0009】本発明において、セラミック被膜はマグネトロンスパッタ−イオンプレーティング法(SIP法)により形成される。セラミック被膜としては、Ti、Al、Cr等の炭化物、窒化物、酸窒化物が挙げられ、具体的には、TiC、TiN、TiCN、TiAlN、TiAlNO、TiAlNC、CrN、TiCrN等が挙げられる。セラミック被膜の形成は、マグネトロンスパッタイオンプレーティングSIP処理装置Z700(ドイツ、ライボルト社製)を用いて行うのが好ましい。以下にセラミック被覆法の一例を示す。被体(巻芯本体)を予めガラス粒子♯120〜♯200、Al♯80〜♯220等を用いてサンドブラスト処理を行った後、サンドペーパー♯400で軽く研磨し、鋭い突起を除去する。前記被体をマグネトロンスパッタイオンプレーティングSIP処理装置Z700を用いてTiN等のセラミック被膜を約2μm形成する。セラミック被膜を形成した被体の表面を軽く、研磨材入りナイロンタワシ等を用いて研磨し、鋭い突起を除去し、セラミック被膜を形成した巻芯を製作する。
【0010】本発明において、表面粗さ(十点平均粗さ)RzはJIS B0601に記載された方法により求めた。また、切断レベル40%の負荷長さ率tpもJISB0601に記載された方法により求めた。表面粗さの測定方法を以下に示す。
(1)測定はJIS B0601 表面粗さ−定義および表示、JIS B0651 触針式表面粗さ測定器に準拠した。
測定機器:表面粗さ計(小坂研究所製 型式:SE−2300、 ダイヤモンド触針 先端R 5μm、接触圧 4mN)
研削面に対して直角方向に測定した。
(2)Rzの求め方Rzは粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率方向に測定した最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(深さ)の絶対値の平均値との和を求め、この値をμmで表した。
(3)tpの求め方tpは粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜取り部分の粗さ曲線を山頂線に平行な切断レベルで切断したときに得られる切断長さの和の基準長さに対する比を百分率で表した。基準長さは0.25mm、切断レベルは40%とし、その時のtpを用いて評価項目とした
【0011】摩擦係数は、プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法JIS K7125に準拠した方法により測定した。図1に摩擦係数測定の概略図を示す。摩擦係数の測定方法を以下に示す。
(1)測定機器:スリップテスター(理学工業製 No.3780)
(2)捲回時の巻芯を想定して、従来の荷重(200g)、面積(39.69cm)よりも高い荷重(390g)、小さい面積(1.76cm)とした。
(3)フィルム試験片は23±2℃、相対湿度65±5%に調整された雰囲気で24時間コンディショニングを行う。
(4)滑り片表面(φ15mm円柱)にフィルム試験片をセロハンテープで貼り付ける。
(5)表面粗し加工された試験板を測定器の試験テーブルにテープで固定する。
(6)表面粗し加工された試験板上に滑り片を乗せ、フックをロードセルのリングにかける。
(7)試験テーブルを150mm/minの速度で移動させる。
(8)ロードセルで移動時の荷重をチャート上に記録する。
静摩擦係数μs=A/B動摩擦係数μk=C/B但し、A:動き始めた時の荷重B:滑り片および重りの総重量 390gC:動き途中の最大、最小の荷重の平均値
【0012】磨耗試験はJIS K7204に準拠して測定した。測定方法を以下に示す。回転する試験片上に1対の磨耗輪を規定荷重の下で圧着させ、磨耗輪によって試験片を磨耗させ、磨耗質量を測定した。
測定機器 :テーバー式磨耗試験機(東洋精機製)
磨耗輪 :CS10F速度 :60rpm荷重 :750gf磨耗回数 :1000回試験片 :100mm角×3t
【0013】ピン抜け性評価は以下の方法で行った。図2R>2にピン抜け性測定の概略図を示す。図中、1はセパレータ、2は金属棒(巻芯)を示す。多孔フィルムの捲回時のピン抜け性を評価する方法として半月状の金属棒1対の間にセパレータを2枚挟み込み、もう一方の端にそれぞれ荷重による張力をかけながら数周巻きつけた。そして、巻き状態のセパレータから金属棒を引き抜きその時の引き抜き力を測定した。
金属棒 :φ8mm 半割り形状 多孔フィルム幅:60mm、 セパレータ長さ:800mm 荷重 :300g/1枚
【0014】本発明における巻芯の形状としては、特に限定されず、円柱状、円筒状、楕円形状、三角形状、多角形状、板状等が挙げられ、前記形状のスリットを有する巻芯が好適に使用される。さらに摩擦係数を軽減するために巻芯の縦方向に溝を形成して摩擦を軽減したもの、巻芯スリットをテーパ状として巻芯寸法を可変としたもの、あるいは巻芯外形寸法を可変に調整するもの等を使用することができる。
【0015】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示し、本発明についてさらに詳細に説明する。
実施例1金属板(材質:SUS304)にガラス粒子(粒度♯200)を縦横方向にショットブラストして表面を粗し下地加工を行った。次に、この金属板の表面粗さと滑り性を確認するために表面粗さと摩擦係数を前記した方法により測定した。表面粗さ(十点平均粗さ)Rz及び40%切断レベルにおける負荷長さ率tpを測定した。基準長さを0.25mm、評価長さを1mmとしたときのRzは1.75μm、また40%切断レベルにおける負荷長さ率tpは23%であった。摩擦係数を前記した方法により測定した。PP・PE複層セパレータ25μm(宇部興産(株)製、ユーポア(R)UP3025)の静摩擦係数μsは0.43、動摩擦係数μkは0.25であった。また、PP・PE複層セパレータ25μm(宇部興産(株)製、ユーポア(R)UP3045、高分子量グレード)の静摩擦係数μsは0.47、動摩擦係数μkは0.34であった。
【0016】実施例2実施例1と同様にしてガラス粒子で表面粗し加工し、さらにサンドペーパー(♯400)で軽く表面研磨して鋭い突起を取り除いた。表面特性は実施例1と同様に表面粗さと摩擦係数を測定した。Rzは1.23μm、tpは34%であり、実施例1と比較して、表面粗さが小さくなり接触面積も増加した。摩擦係数はユーポア(R)UP3025のとき、静摩擦係数μsは0.26、動摩擦係数μkは0.14であった。また、ユーポア(R)UP3045のとき、静摩擦係数μsは0.31、動摩擦係数μkは0.17であった。表面の鋭い突起を取り除くことでtpが大きくなり実施例1と比較して摩擦係数は低減された。
【0017】実施例3実施例1と同様にガラス粒子で金属表面を粗し下地加工をし、磨耗性を向上させるためマグネトロンスパッタリングによるセラミック被膜処理を行った。セラミック被膜はマグネトロンスパッタイオンプレーティングSIP処理装置Z700(ドイツ、ライボルト社製)を用いTiAlCN(4元組成)の被膜を形成した。膜厚は約2μmであり、密着力はCSEMスクラッチ試験で100Nまで被膜の破壊は観測されず、密着強度は他法(アーク放電法、ホローカソード法)と同等で優れている。被膜は最終仕上げに研磨材入りナイロンタワシで軽く研磨して鋭い突起を除去した。表面特性は実施例1と同様に表面粗さと摩擦係数を測定した。表面粗さRzは1.58μm、tpは51%であった。摩擦係数はユーポア(R)UP3025のとき、静摩擦係数μsは0.25、動摩擦係数μkは0.20であった。また、ユーポア(R)UP3045のとき、静摩擦係数μsは0.32、動摩擦係数μkは0.29であった。セラミック被覆後の表面の鋭い突起を取り除くことにより摩擦係数は低かった。セラミック被覆の摩擦係数への影響は少なかった。
【0018】実施例4実施例2と同様にしてガラス粒子で表面加工した後、さらにサンドペーパー(♯400)で軽く表面研磨して鋭い突起を取り除いた。次いで実施例3と同様にしてセラミック被膜を形成した。表面特性は実施例1と同様に表面粗さと摩擦係数を測定した。表面粗さRzは1.30μm、tpは66%であった。摩擦係数はユーポア(R)UP3025のとき、静摩擦係数μsは0.27、動摩擦係数μkは0.22であった。また、ユーポア(R)UP3045のとき、静摩擦係数μsは0.31、動摩擦係数μkは0.23であった。実施例3の場合と同様に、セラミック被膜の摩擦係数への影響は少なく、セラミック被覆後の表面の鋭い突起を取り除くことによりtpの上昇は見られるが摩擦係数は安定して低かった。実施例1〜4の処理条件を表1に、また表面粗さと摩擦係数の測定結果を表2に示す。
【0019】
【表1】


【0020】
【表2】


【0021】実施例5金属板(材質:SUS304)にガラス粒子(粒度♯120)を縦横方向にショットブラストして表面を粗し下地加工した。次に、この金属板の表面粗さと滑り性を確認するために表面粗さと摩擦係数を測定した。その測定結果を表3に示す。
【0022】実施例6実施例5と同様にしてガラス粒子で表面を粗し下地加工した。さらにサンドペーパー(♯400)で軽く表面研磨して鋭い突起を取り除いた。次に、この金属板の表面粗さと滑り性を確認するために表面粗さと摩擦係数を測定した。その測定結果を表3に示す。
【0023】比較例1金属板(材質:SUS304)にアルミナ粒子(粒度♯80)を縦横方向にショットブラストして表面を粗し下地加工した。次に、この金属板の表面粗さと滑り性を確認するために表面粗さと摩擦係数を測定した。その測定結果を表3に示す。
【0024】実施例7比較例1と同様にしてアルミナ粒子で表面を粗し下地加工した。さらにサンドペーパー(♯400)で軽く表面研磨して鋭い突起を取り除いた。次に、この金属板の表面粗さと滑り性を確認するために表面粗さと摩擦係数を測定した。その測定結果を表3に示す。
【0025】実施例8金属板(材質:SUS304)にアルミナ粒子(粒度♯220)を縦横方向にショットブラストして表面を粗し下地加工した。さらにサンドペーパー(♯400)で軽く表面研磨して鋭い突起を取り除いた。次に、この金属板の表面粗さと滑り性を確認するために表面粗さと摩擦係数を測定した。その測定結果を表3に示す。
【0026】
【表3】


【0027】実施例9金属板(材質:SS400)にアルミナ粒子(粒度♯220)を縦横方向にショットブラストして表面を粗し下地加工した。さらにサンドペーパー(♯400)で軽く表面研磨して鋭い突起を取り除いた。次に、この金属板の表面にTiCrCN被覆、TiCrN被覆、TiAlN被覆、TiAlCN被覆を形成した。その後、最終仕上げとして研磨材で軽く研磨して鋭い突起を取り除いた。次に、この金属板の磨耗特性と滑り耐久特性の変化を調べた。すなわち、セラミック被覆表面の場合の磨耗特性と、被覆なし(比較例2)、クロムめっき(比較例3)、潤滑性クロムめっき(比較例4)の場合の磨耗特性の比較を行った。磨耗試験は磨耗輪による前記した磨耗試験方法により行った。その後磨耗表面の摩擦係数の変化を測定した。セパレータとしては、ユーポア(R)UP3025を使用した。その結果を表4に示す。
【0028】比較例2セラミック被覆処理を行わなかったほかは、実施例9と同様にして磨耗特性と滑り耐久特性の変化(摩擦係数の変化)を測定した。その結果を表4に示す。
【0029】比較例3実施例9におけるセラミック被覆処理の代わりに、金属板(材質:SS400)に約70μmの硬質クロムめっきを行った後、実施例9と同様にして磨耗特性と滑り耐久特性の変化(摩擦係数の変化)を測定した。その結果を表4に示す。
【0030】比較例4実施例9におけるセラミック被覆処理の代わりに、クロムめっきの耐磨耗性と4フッ化樹脂の低摩擦係数等の特性を複合して持つとされる自己潤滑性クロムめっきを金属板(材質:SS400)に約30μm被覆した後、実施例9と同様にして磨耗特性と滑り耐久特性の変化(摩擦係数の変化)を測定した。その結果を表4に示す。
【0031】
【表4】


【0032】表4から、比較例2〜4に見られるように金属表面のままや、潤滑性クロムめっき(テフロン(R)被覆材)では研磨材入りの磨耗輪による磨耗試験では磨耗減量が大きい。一方、表面に硬質のクロムめっきやセラミック被覆を行うと、磨耗が低く抑えられ、効果が顕著に現れている。磨耗後の摩擦係数の変化はクロムめっきとセラミック被覆はほとんど変化がないのに対し、磨耗の激しい自己潤滑性クロムめっきや金属表面のままの場合には、摩擦係数が著しく変化して、大きくなっており、リチウム二次電池の連続製造を続けるとピン抜け性が悪くなることを示している。
【0033】実施例10実施例9と同様の処理を金属棒に加工した。すなわち、金属棒(SKH51)をアルミナ粒子♯220で表面加工した後、セラミック(TiAlCN)を約2μm被膜した。その後、軽い研磨により表面突起を除いた。セパレータの捲回時のピン抜け性を評価する方法として金属棒引き抜き時の引張り荷重を測定した。金属棒はφ8mm半割形状で一対の間の隙間に2枚のセパレータを挟み込み、もう一方の端に荷重による張力をかけながら数回巻き付けた。そして巻き状態のセパレータから金属棒を引き抜く時の荷重を測定した。セパレータの長さは800mm、それぞれ1枚毎に荷重300gの張力をかけた。セパレータとして、ユーポア(R)UP3025(PP・PE複層25μm)、ユーポア(R)UP3045(PP・PE複層25μm、高分子量グレード)、PE単層25μm、PP・PE複層16μmの4種について測定を行った。その測定結果を表5に示す。
【0034】比較例5金属棒(SKH51)にクロムめっき約50〜70μm被膜をした。その後実施例10と同様に表面粗さ、引き抜き荷重(N)を測定した。その測定結果を表5に示す。
【0035】比較例6金属棒(SKH51)に潤滑性クロムめっき約30μm被覆をした。その後実施例10と同様に表面粗さ、引き抜き荷重(N)を測定した。その測定結果を表5に示す。
【0036】
【表5】


【0037】セラミック被膜を有する金属棒の引き抜き時の引張り荷重を、クロムめっきした場合(比較例5)、潤滑性クロムめっきした場合(比較例6)と比較すると、適度な表面粗し加工した後にセラミック被膜を有する金属棒は低摩擦係数でピン抜け性に効果があるとされる潤滑性クロムめっきと同等の滑り特性が確認された。しかしながら、潤滑性クロムめっきは前記したように磨耗試験からも分るように耐久性に難点があり、一方耐磨耗性があるクロムめっきは引き抜き荷重が高い。したがって、適度な表面粗さを有するセラミック被膜金属が耐久性、低摩擦係数でピン抜け性に優れた良好な表面被膜手段であることを示している。
【0038】
【発明の効果】本発明の巻芯は、巻芯表面の摩擦係数が小さいのでシート状材料を巻き取った後に巻芯を抜き取る際の滑り特性が良く、シート材料を傷つけることがない。また、耐磨耗特性に優れており、長期間にわたり連続製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における摩擦係数測定の概略図を示す。
【図2】本発明におけるピン抜け性測定の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シート状材料を巻き取るための巻芯において、前記巻芯表面の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzが0.4〜5μmであって、且つ切断レベル40%における負荷長さ率tpが20〜95%であることを特徴とする巻芯。
【請求項2】 前記巻芯表面がセラミック被覆された巻芯であることを特徴とする請求項1記載の巻芯。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−73036(P2003−73036A)
【公開日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−262776(P2001−262776)
【出願日】平成13年8月31日(2001.8.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】