説明

巻取リール

【課題】特別な位置決め係合部材を用いることなく帯状シートの巻き取りを可能とすることができる巻取リールを提供する。
【解決手段】互いに離間状態で対向する一対のプレート17の中心を取り巻くように複数の柱状部材18がプレート17間に架設され、所定方向から供給された長尺な帯状シート20の先端20aを互いに隣接する柱状部材18間を通って反対側の柱状部材18間に出した状態で一対のプレート17を回転させて、帯状シート20の先端を柱状部材18に巻き付かせて帯状シート20を巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺部材を巻き取る巻取リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ製造工程において、長尺部材、例えば、所定の前工程で造られたトレッドやサイドゴムなどの未加硫ゴム部材からなる長尺のタイヤ構成部材を、成型工程でタイヤとして組み立てられるまで中間製品として巻取リールに巻き取り保管することが行われている
【0003】
例えば、未加硫ゴム部材を巻取りリールに巻き取る際に、未加硫ゴムの先端部分を巻取りリールに巻き付けるためには、先端の位置決めが必要であるだけではなく、先端を巻き取りリールの円筒状の芯に取り付ける必要がある。そのためには、ゴム部材をリールの前記芯に案内し、しかもそれに巻き付けなければならない。
しかしながら、ゴム部材自体にタッキネス(粘着力)がある場合は別として、そうでない場合は、ゴム部材の先端を巻き取りリールの芯に接触させても先端が滑るだけで巻き付けることはできない。
そのため、従来は、ライナーを用いて巻き取らせることが行われている。
即ち、例えば、図5Aに示すように、巻取リールDに接着等任意の止着手段でライナーLを止着し、そのライナーLを巻取らせながらライナー上にゴム部材20の先端を載せ、巻取芯Cにまで案内させて、そこでライナーLと一緒に巻取リールDの円筒状の芯Cに巻き付け、巻き取るようにしている。
【0004】
また、他の方法は、前記の装置と基本的には同じであるが、図5Bに示すように、巻き初めの例えば数メートル分だけライナーLを使用し、ゴム部材20が巻き取り、リールDの芯Cに巻き付いた後にはライナーLを介在させずにゴム部材20のみを巻き取るものである。
【0005】
更に他の方法としては、ライナーを要せずいわゆる裸巻きと称するもので、ゴムがタッキネスを有する場合に図5Cに示す誘導CV(コンベアベルト)を用いる方法である。これは、巻取リールDの近傍にコンベアベルトCVを揺動自在に配置し、ゴム部材20を巻き取るときは、コンベアベルトCVを巻取リールDの芯Cに近接した位置に揺動配置し、その状態で送り出されてきたゴム部材20の先端をコンベアベルトで受けて搬送し、前記円筒状の芯Cに接触させるように作用することで、ゴム部材20を前記芯C上に付着(止着)して巻き取るものである。
【0006】
ところで、従来のライナーを利用した巻取装置では、2系統から繰り出されたタイヤ構成部材であるゴム部材とライナーとを、いずれもリールに弛みが生じないように巻き取る必要がある。
具体例としては、タイヤ構成部材(ゴム部材)とライナーのそれぞれの張力を独立に制御して、帯状のタイヤ構成部材をライナーを介在させて巻き緩みや型潰れを起こさずに精度よく巻き取るようにした制御方法が知られている(特許文献1)。
しかし、ライナーを用いる場合はライナー自体のコストを要するが、ライナーやゴム部材の張力を独立して制御する装置を要し、装置自体のコストや管理コスト等各種コストを要するという問題がある。
また、ライナーを要せず誘導コンベアを用いるものは、ゴム部材(タイヤ構成部材)にタッキネスがある場合に限られるから、その利用範囲は限定的である上、誘導コンベア及びそれを制御する制御装置等の設備が必要となるため、これも装置自体のコストや管理コスト等各種コストを要するという問題がある。
【特許文献1】特開平9−240893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、従来のように特別な専用部材を用いることなく帯状シートを簡単かつ容易に巻き取ることができる巻取リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するため、請求項1に記載の巻取リールは、所定方向から供給された長尺部材を先端側から巻き取る巻取リールであって、
互いに離間状態で対向する一対のプレートと、該プレート間に架設され円周状に配置された複数の柱状部材とを備え、互いに隣接する前記柱状部材間に長尺部材を挿入した状態で、前記一対のプレートを前記複数の柱状部材と一体に回転させることにより長尺部材の巻取りを行うことを特徴とする。
請求項2に記載の巻取リールは、請求項1に記載の巻取リールにおいて、前記複数の柱状部材が、長尺ゴムの先端が前記互いに隣接する前記柱状部材間と前記一対のプレートの中心を挟んで対向する互いに隣接する前記柱状部材間を貫通した状態で、前記一対のプレートを前記複数の柱状部材と一体に回転させることにより長尺部材を巻き取ることを特徴とする。
請求項3に記載の巻取リールは、請求項1又は請求項2に記載の巻取リールにおいて、前記複数の柱状部材が、前記一対のプレートの中心から等距離で且つ互いに等間隔に配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の巻取リールは、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の巻取リールにおいて、前記長尺部材がシート状または棒状のゴムであり、前記一対のプレートの離間距離が前記ゴムの幅よりも幅広であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の巻取リールによれば、所定方向から供給された長尺部材を互いに離間状態で対向する一対のプレートの中心を取り巻くように架設した複数の柱状部材間に挿入して、その状態で一対のプレートを前記複数の柱状部材と一体に回転させて長尺部材を巻き取るから、ライナー送り装置やガイド用コンベアベルト等の特別な位置決め係合部材を用いることなく長尺部材の巻き取りが可能であり、従来のようにライナーを要せずコスト(ランニングコスト)を節減することができる。また、ライナーを用いる場合のように長尺部材とライナーとを個別に制御する必要がなく、或いは誘導コンベアベルト等の必要がないため装置コスト(イニシャルコスト)も削減できる。
請求項2に記載の巻取リールによれば、前記複数の柱状部材は、長尺部材の先端を一対のプレートの中心を挟んで対向する互いに隣接する柱状部材間をも貫通させた状態で一対のプレートを複数の柱状部材と一体に回転させることにより、巻取り初期の長尺部材の巻取をより一層確実に行うことができる。
請求項3、4に記載の巻取リールによれば、複数の柱状部材を一対のプレートの中心から等距離で且つ互いに等間隔で配置した円柱体とすることにより、長尺部材(シート状或いは棒状の未加硫ゴム)を互いに隣接する柱状部材間への挿入、並びに一対のプレートの中心を挟んで対向する互いに隣接するいずれかの柱状部材間への挿入するだけで巻取リールに巻き付ける際の位置決めができ、操作が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の巻取リールの一例を帯状のゴム部材を巻き取る場合を例に採って図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明の巻取リールの斜視図、図2(A)は本発明の巻取リールの平面図、図2(B)は本発明の巻取リールの変形例の平面図である。
【0012】
リール本体11は、図1に示すように、互いに離間状態で対向する円板状の一対のプレート17と、従来の円筒状の芯Cの代わりに、内部に空間を形成するようプレート17の中心を取り巻くようにプレート17間に架設した複数の柱状部材18から成っている。
【0013】
ここで、柱状部材18は、例えば、角パイプ、丸パイプ、フラットバー等からなり、図2Aは、一例として、一対のプレート17の中心(=回転中心)から等距離で且つ互いに等間隔で配置された、角パイプからなるものを示す。尚、この柱状部材18の本数や配置間隔(太さ)は巻き取るべき帯状シート20の種類や材質等によって決定されるが、柱状部材18間の隙間を多数形成することで、リールセット時における位置決めを行う必要を事実上無くすることができる。
図2Bは、柱状部材18の他の実施形態である丸パイプ状のものを示す。その機能等は角パイプ等でできたものと変わらない。
【0014】
図3(A)は本発明の巻取リールを帯状シート先端との関係を示す要部の説明図、図3(B)は本発明の巻取リールによる帯状シートの巻取り初期の要部の説明図である。上記構成において、前CVモータ15(図4)の駆動によって回転する繰出ローラ21によって帯状シート20の先端20aが繰出されると、図2Aに示すように、その先端20aが手前側で隣接する柱状部材18の隙間に挿入される。
【0015】
12はゴム部材先端の検出を行う検出センサーを示す。検出センサーは巻取機側に設けられ、例えば帯状シート20の挿入方向に対してそれと直交する方向に配置された発光素子と受光素子とからなり、帯状シート20の挿入側柱状部材とプレート17の中心を挟んで反対側の柱状部材の帯状シートの出口側に検出エリアを備えている。検出センサーは、ゴム部材(シート部材)が検出エリアに達し、発光素子からの光を遮断したことを検知して検知信号を出し、後述する巻取のための制御を行う。尚、この検出センサーに換えて、タイマーによる繰出し量の推定や、パルスモータ等による帯状シート20の繰出し量の推定を基に帯状シート20の先端位置を検出してもよい。
【0016】
挿入された帯状シート20は、プレート17の中心に対し、挿入側と反対側の柱状部材18の隣接間を通過し、その際検出センサー12によって先端20aが検出される(図3A参照)。検出センサーにより帯状シートが検出されると、繰出ローラ21による帯状シート20の繰出しが一旦停止され、巻取モータ13と繰出ローラ21とを同期して駆動(繰出ローラ21は停止でもよい)し、図2(B)に示すように、巻取リールを回転させて帯状シート20の先端部分を柱状部材18に巻き付かせ、巻取りを開始する。
【0017】
図4は、上記動作を実現するために構成される、本発明の帯状シート巻き取り装置のブロック図である。
図4において、帯状巻取り装置10は、リール本体11に設けられた帯状シート先端位置検出用の検出センサー12と、リール本体11を回転させる巻取モータ13と、この巻取モータ13を制御する駆動回路14と、検出センサー12からの検出信号並びに帯状シート繰り出し用の繰出モータ15からの駆動信号とに基づいて駆動回路14を制御する制御回路16とを備えている。
この帯状巻取り装置10において、検出センサー12が柱状部材18間を通過して反対側柱状部材18間から出てきた帯状シート先端位置を検出すると、検出センサー12からの検出信号を受けて制御回路14は巻取モータ13の駆動回路14を制御し、巻取モータ13による帯状シートの巻取を開始する。その際、制御回路14は、前CVモータ15からの駆動信号に基づき、帯状シートをその送り出し速度に同期して適度な張力を付与しつつリール本体11で巻き取るよう巻取モータ13を駆動制御する。
【0018】
ところで、帯状シート20をタイヤ製造工程における所定の前工程で造られたトレッドやサイドゴムといった未加硫ゴム部材からなる帯状のタイヤ構成部材とした場合には、その後の成型工程でタイヤとして組み立てられるまでの中間製品としてリール本体11に巻き取られる。
【0019】
したがって、このリール本体11に巻き取られたタイヤ製造工程における中間製品としての帯状シート20には、従来技術で説明したライナーが介在されていないことから、ライナーを使用しないことに伴うコストダウンを実現することができるばかりでなく、ライナーを使用しないことによる軽量化、並びに径方向の薄肉化を実現することができ、流通・搬送過程(例えば、1次生産工場から2次生産工場への出荷や、同一工場内でのリフト搬送など)における小型・軽量化にも貢献することが可能となる。
なお、以上の説明では長尺部材を帯状のものとして説明したが、その形状は丸棒或いは任意の断面形状を備えた棒状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の巻取リールを示し、巻取リールの斜視図である。
【図2】本発明の巻取リールを示し、(A)は巻取リールの平面図、(B)は巻取リールの変形例の平面図である。
【図3】本発明の巻取リールを示し、(A)は巻取リールを帯状シート先端との関係を示す要部の説明図、(B)は巻取リールによる帯状シートの巻取り初期の要部の説明図である。
【図4】本発明の帯状シート巻取り装置のブロック図である。
【図5】従来の巻取リールの一例を示し、タイヤ製造工程のブロック説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10…帯状シート巻取り装置、11…リール本体(巻取リール)、 12…検出センサー、13…巻取モータ、14…駆動回路、15…繰出モータ、16…制御回路、17…プレート、18…柱状部材、20…帯状シート、20a…先端、21…繰出ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向から供給された長尺部材を先端側から巻き取る巻取リールであって、
互いに離間状態で対向する一対のプレートと、該プレート間に架設され円周状に配置された複数の柱状部材とを備え、
互いに隣接する前記柱状部材間に長尺部材を挿入した状態で、前記一対のプレートを前記複数の柱状部材と一体に回転させることにより長尺部材の巻取りを行うことを特徴とする巻取リール。
【請求項2】
前記複数の柱状部材は、長尺部材の先端が前記互いに隣接する前記柱状部材間と前記一対のプレートの中心を挟んで対向する互いに隣接する前記柱状部材間を貫通した状態で、前記一対のプレートを前記複数の柱状部材と一体に回転させることにより長尺部材を巻き取ることを特徴とする請求項1に記載の巻取リール。
【請求項3】
前記複数の柱状部材は、前記一対のプレートの中心から等距離で且つ互いに等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の巻取リール。
【請求項4】
前記長尺部材はシート状または棒状のゴムであり、前記一対のプレートの離間距離が前記ゴムの幅よりも幅広であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の巻取リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−27823(P2006−27823A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209453(P2004−209453)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】