説明

巻回形電気二重層コンデンサ

【課題】各種電子機器に使用される巻回形電気二重層コンデンサにおいて、大電流で急速に充放電を行っても、陽極と陰極の電位バランスが崩れることなく、高信頼性・長寿命に優れた巻回形電気二重層コンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】集電体2の両面に分極性電極層3,4を形成した陽極電極5と陰極電極6をその間にセパレータ7を介し、陰極電極6を外側に配置して巻回したコンデンサ素子1と、このコンデンサ素子1を駆動用電解液と共に収納した金属ケース10と、この金属ケース10を封止した封口部材9からなり、上記コンデンサ素子1の最外周となる陰極電極6の分極性電極層4が陽極電極5の分極性電極層3と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層4を形成しない未形成部を設けたことにより、大電流で急速に充放電を行っても特性劣化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用される巻回形電気二重層コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、この種の従来の巻回形電気二重層コンデンサの構成を示した一部切り欠き斜視図、図8は、同巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図である。図7、図8において、101はコンデンサ素子であり、このコンデンサ素子101は、陽極電極105と陰極電極106をその間にセパレータ104を介在させた状態で巻回することにより構成されている。
【0003】
また、陽極電極105と陰極電極106は、金属箔からなる集電体102の両面に分極性電極層103を夫々形成する(裏面側は図示せず)ことにより構成されたものである。さらに、この陽極電極105と陰極電極106には夫々リード線107が接続されている。
【0004】
このように構成されたコンデンサ素子101は、図示しない駆動用電解液を含浸させた後に有底円筒状の金属ケース109内に挿入され、夫々のリード線107が挿通する孔を有したゴム製の封口部材108を金属ケース109の開口部に配設した後、金属ケース109の開口部をカーリング加工することによって封止を行っている。
【0005】
また、このように構成された従来の巻回形電気二重層コンデンサの特性劣化を抑制する目的で、コンデンサ素子の陽極電極より陰極電極を1周分多く巻回する構成のものが提案されている。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2007−157811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の巻回形電気二重層コンデンサでは、陽極電極105、陰極電極106夫々に、集電体102の両面に分極性電極層103を形成し、陰極電極106を外側に配置して巻回しているため、コンデンサ素子101の最外周部では陰極電極106の外周面側に形成された分極性電極層103は陽極電極105の分極性電極層103と対向しないことになる。このために許容範囲内の最大値の大電流で急速に充放電を繰り返すような使われ方をすると上記陰極電極106の分極性電極層103が陽極電極105の分極性電極層103と対向していない部分が電位バランスを崩して、陽極電極105に負担がかかって過電流が発生し、これにより駆動用電解液の分解がおこりガスが発生し、容量低減の原因となり特性が劣化するという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決し、大電流で急速に充放電を繰り返し行っても陽極と陰極との電位バランスが崩れることなく、特性劣化の少ない高性能・長寿命の巻回形電気二重層コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、金属箔からなる集電体の両面に分極性電極層を形成した陽極電極と陰極電極を一対とし、その間にセパレータを介在させた状態で陰極電極を外側にして重ね合わせて巻回したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を駆動用電解液と共に収納した有底筒状の金属ケースと、この金属ケースの開口部を封止した封口部材からなる巻回形電気二重層コンデンサにおいて、上記コンデンサ素子の最外周となる陰極電極の分極性電極層が陽極電極の分極性電極層と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層を形成しない未形成部を設けた構成にしたものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明による巻回形電気二重層コンデンサは、コンデンサ素子の最外周となる陰極電極の分極性電極層が陽極電極の分極性電極層と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層を形成しない未形成部を設けた構成にすることにより、陽極電極の分極性電極層と陰極電極の分極性電極層の非対向部分が少なくなり、陽極と陰極に流れる電流の電位バランスが保たれるため、大電流で急速に充放電を繰り返し行っても、駆動用電解液の分解によるガス発生を抑制することができるので、特性劣化の少ない高信頼性・長寿命に優れた巻回形電気二重層コンデンサを実現することができるという効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて本発明の特に請求項1及び2に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態1における巻回形電気二重層コンデンサの構成を示した一部切り欠き斜視図、図2は同巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図である。
【0013】
図1〜図2において、1はコンデンサ素子であり、このコンデンサ素子1は、アルミニウムなどの金属箔からなる集電体2の両面に分極性電極層3を形成した陽極電極5と、同じくアルミニウムなどの金属箔からなる集電体2の両面に分極性電極層4を形成した陰極電極6に夫々リード線8を冷間圧接、超音波溶接等で接続し、この陽極電極5と陰極電極6の間に短絡防止用のセパレータ7を介在させると共に、陰極電極6を外側にして重ね合わせた状態で巻回することにより構成されている。
【0014】
従って、このコンデンサ素子1の最外周には陰極電極6が配置されており、陰極電極6の外周側の分極性電極層4は陽極電極5の分極性電極層3と対向しないことになるため、この陰極電極6の最外周の少なくとも一部に分極性電極層4を形成しない未形成部4aを設けた構成にしたものである。
【0015】
このように構成されたコンデンサ素子1は、図示しない駆動用電解液を含浸した後、有底円筒状の金属ケース10内に挿入し、一対のリード線8を封口部材9に設けられた孔に挿通して封口部材9を装着し、金属ケース10の外周を内側に絞り加工するとともに、開口部をカーリング加工することにより、封口部材9を圧縮して金属ケース10を封止するように構成されている。
【0016】
また、上記陽極電極5と陰極電極6に形成された分極性電極層3、4は、活性炭粉末とカーボンブラックとバインダを混練したものにより構成され、上記活性炭粉末としては、木粉系、ヤシガラ系、フェノール樹脂系、石油コークス系、石炭コークス系、ピッチ系の原料を賦活したものが用いられる。また、バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと呼ぶ)の水溶性バインダを混合したものが用いられる。
【0017】
また、上記駆動用電解液の溶媒としては、プロピレンカーボネート、γ―ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはメチルエチルカーボネートのいずれか1種もしくは2種以上の混合物が用いられている。また、電解質カチオンとしては、第四級アンモニウム、第四級スルホニウム、イミダゾリウム塩が使用され、一方、電解質アニオンとしては、BF4-、PF6-、ClO4-、CF3SO3-またはN(CF3SO22-が用いられる。
【0018】
このように構成された本発明の実施の形態1による巻回形電気二重層コンデンサは、コンデンサ素子1の最外周となる陰極電極6の分極性電極層4が陽極電極5の分極性電極層3と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層4を形成しない未形成部4aを設けているので、陽極電極5と陰極電極6に流れる電流の電位バランスが保たれ、大電流で急速に充放電を繰り返し行っても、容量劣化を抑制することができるという効果を有するものである。
【0019】
以下、具体的な実施例について説明する。
【0020】
(実施例1)
金属箔からなる集電体として、厚さ30μmの高純度アルミニウム箔(Al:99.99%以上)を使用し、塩素系のエッチング液中で電解エッチングしてアルミニウム箔の表面を粗面化した。
【0021】
次に、このアルミニウム箔の両面に分極性電極層を形成した。この分極性電極層の形成は、平均粒径5μmのフェノール樹脂系活性炭粉末と、導電性付与剤として平均粒径0.05μmのカーボンブラック、CMCを溶解した水溶性バインダー溶液を10:2:1の重量比に混合して混練機で充分に混練した後、メタノールと水の分散溶媒を少しずつ加え、更に混練して所定の粘度のペーストを作製した。続いて、このペーストをアルミニウム箔の表面に塗布して、100℃の大気中で1時間乾燥して分極性電極層を形成した。
【0022】
次に、この分極性電極が形成されたアルミニウム箔を、陽極側の電極として39×475mm、陰極側の電極として39×495mmの寸法に切断し、この電極に陽極と陰極のリード線を夫々接続した。この夫々のリード線の接続は、アルミニウム箔の表面に形成された分極性電極層の一部を取り除き、この取り除いた部分に各リード線を冷間圧接により接合した。
【0023】
続いて、上記陰極電極を外側にして配置し、厚さ35μmのセパレータ、陽極電極、厚さ35μmのセパレータを順次配置した状態でこれらを巻回する。このとき、巻き終わりの陰極電極の分極性電極層は50.24mmの未形成部が設けてある。これにより、陰極電極の分極性電極層と陽極電極の分極性電極層とが対向しない部分がないコンデンサ素子(巻き径:φ16mm)を得た。
【0024】
続いて、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸した後、有底円筒状のアルミニウム製の金属ケース内に挿入し、一対のリード線が挿通する孔を有したゴム製の封口部材を金属ケースの開口部に配設した後、金属ケースの外周部および開口部を絞り加工することにより封止を行い、実施例1によるφ18×50mmの巻回形電気二重層コンデンサを作製した。
【0025】
なお、駆動用電解液の溶媒にはプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートを7:3の割合にした混合溶媒を用い、電解質にはエチル−ジメチル−イミダゾリウムとBF4-の混合物を1mol/l溶解したものを用いた。
【0026】
(実施例2)
上記実施例1において、巻き終わりの陰極電極の分極性電極層の未形成部を80%にした以外は、実施例1と同様にして巻回形電気二重層コンデンサを作製した。
【0027】
(実施例3)
上記実施例1において、巻き終わりの陰極電極の分極性電極層の未形成部を500%にした以外は、実施例1と同様にして巻回形電気二重層コンデンサを作製した。
【0028】
(実施例4)
上記実施例1において、巻き終わりの陰極電極の分極性電極層の未形成部を40%にした以外は、実施例1と同様にして巻回形電気二重層コンデンサを作製した。
【0029】
(実施例5)
上記実施例1において、巻き終わりの陰極電極の分極性電極層の未形成部を20%にした以外は、実施例1と同様にして巻回形電気二重層コンデンサを作製した。
【0030】
(実施例6)
上記実施例1において、巻き終わりの陰極電極の分極性電極層の未形成部を10%にした以外は、実施例1と同様にして巻回形電気二重層コンデンサを作製した。
【0031】
(比較例)
上記実施例1において、巻き終わりの陰極電極の分極性電極層の未形成部を0%にした以外は、実施例1と同様にして巻回形電気二重層コンデンサを作製した。
【0032】
このようにして得られた本発明の実施例1〜6及び比較例の巻回形電気二重層コンデンサ(2.3V70F)について、大電流充放電試験を行った結果を(表1)に示す。
【0033】
ここで、大電流充放電試験は、25℃の環境下で、下限電圧1.25V、上限電圧2.5V、10Aの充放電電流値、定電圧、休止無しで10000サイクルの条件で試験を行い、試験後の静電容量を比較した。なお、試験数は5個で行い、その平均値を記載した。
【0034】
【表1】

【0035】
(表1)から明らかなように、本発明の実施例1〜6による巻回形電気二重層コンデンサは、比較例に比べて連続充放電試験後の容量維持率が高く、耐久性に優れていることが分かる。また、陰極電極の分極性電極層の未形成部が25.12mm(50%)以上だと容量変化率が−5.5%以下となるため、より長寿命の電気二重層コンデンサが得られる。
【0036】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて本発明の特に請求項3に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0037】
本実施の形態は、上記実施の形態1で図1、図2を用いて説明した巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の構成が一部異なるようにしたものであり、これ以外の構成は実施の形態1と同様であるために同一部分には同一の符号を付与してその詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ以下に図面を用いて説明する。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態2による巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き始め部分を示した断面図である。
【0039】
図3において、15は陽極電極、16は陰極電極、17はセパレータであり、上記陰極電極16を外側に配置し、陰極電極16が陽極電極15よりも突出するように巻回方向に位置をずらして配置して巻回している。このため、コンデンサ素子の最内周には陰極電極16が配置されることになり、陰極電極16の内周側の分極性電極層14が陽極電極15の分極性電極層13と対向しないことになる。従って、この陰極電極16の最内周の少なくとも一部に分極性電極層14を形成しない未形成部14aを設けた構成にしたものである。
【0040】
このように構成された本発明の実施の形態2による巻回形電気二重層コンデンサは、コンデンサ素子の陰極電極16の分極性電極層14が陽極電極15の分極性電極層13と対向しない部分となる陰極電極16の最内周の少なくとも一部に分極性電極層14を形成しない未形成部14aを設けているので、最内周においても陽極電極15と陰極電極16に流れる電流の電位バランスが保たれ、大電流で急速に充放電を繰り返し行っても、容量劣化を抑制することができるという効果が得られる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態2においては、コンデンサ素子の最内周となる陰極電極16の分極性電極層14が陽極電極15の分極性電極層13と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層14を形成しない未形成部14aを設けた巻回形電気二重層コンデンサを用いて説明したが、上記実施の形態1において説明した、コンデンサ素子1の最外周となる陰極電極6の分極性電極層4が陽極電極5の分極性電極層3と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層4を形成しない未形成部4aを設けた構成のものと併せ1つのコンデンサ素子に両方の構成を形成することにより、さらに良好な効果が得られるものである。
【0042】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項4に記載の発明について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図4(a)は本発明の実施の形態3における巻回形電気二重層コンデンサの構成を示した平面図、(b)は同正面断面図、(c)は同底面図、図5(a)は同巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図、(b)は同コンデンサ素子の巻き始め部分を示した断面図である。
【0044】
図4〜図5において、31はコンデンサ素子であり、このコンデンサ素子31は、アルミニウムなどの金属箔からなる集電体32の両面に幅方向の一端を除いて分極性電極層33を形成した陽極電極35と、同じく集電体32の幅方向の一端を除いて分極性電極層34を形成した陰極電極36を互いに逆方向に位置をずらして配置し、その間に短絡防止用のセパレータ37を介在させて巻回することにより構成され、このコンデンサ素子31の両端面(図4(b)において上下方向)に陽極引出し部35aと陰極引出し部36aを設け、夫々の電極を取り出すようにしたものである。
【0045】
また、上記コンデンサ素子31は、陰極電極36を外側に配置して巻回しているため、コンデンサ素子31の最外周には陰極電極36が配置されており、陰極電極36の外周側の分極性電極層34は陽極電極35の分極性電極層33と対向しないことになるため、この陰極電極36の最外周の少なくとも一部に分極性電極層34を形成しない未形成部34aを設けた構成にしたものである。
【0046】
また、巻き始めは、陰極電極36が陽極電極35よりも突出するように巻回方向に位置をずらして配置して巻回しているため、コンデンサ素子31の最内周には陰極電極36が配置されることになり、陰極電極36の最内周の分極性電極層34が陽極電極35の分極性電極層33と対向しないことになる。従って、この陰極電極36の少なくとも一部に分極性電極層34を形成しない未形成部34bを設けた構成にしたものである。
【0047】
このように構成されたコンデンサ素子31は、図示しない駆動用電解液と共に有底円筒状の金属ケース38内に挿入し、封止用ゴム41を介して端子板39を金属ケース38の開口部に配置し、この金属ケース38の開口部に横絞り加工とカーリング加工を施すことにより封止を行い、陽極引出し部35aを端子板39の内面に、陰極引出し部36aを金属ケースの内底面にレーザー溶接等により接続することで、本実施の形態による巻回形電気二重層コンデンサを構成したものである。
【0048】
なお、上記駆動用電解液および分極性電極層の材料は、上記実施の形態1で使用したものと同様のものを使用したものであるため、ここでの説明は割愛する。
【0049】
このように構成された本発明の実施の形態3による巻回形電気二重層コンデンサは、コンデンサ素子31の最外周となる陰極電極36の分極性電極層34が陽極電極35の分極性電極層33と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層34を形成しない未形成部34aを設け、かつコンデンサ素子31の最内周となる陰極電極36の分極性電極層34が陽極電極35の分極性電極層33と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層34を形成しない未形成部34bを設けているので、最外周と最内周において、陽極電極35と陰極電極36に流れる電流の電位バランスが保たれ、大電流で急速に充放電を繰り返し行っても、容量劣化を抑制することができるという効果を有するものである。
【0050】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4を用いて本発明の特に請求項5に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0051】
本実施の形態は、上記実施の形態1で図1および図2を用いて説明した巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の構成が一部異なるようにしたものであり、これ以外の構成は、実施の形態1と同様であるために同一部分には同一の符号を付与してその詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ以下に図面を用いて説明する。
【0052】
図6(a)は、本発明の実施の形態4における巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図、(b)は、同コンデンサ素子の巻き始め部分を示した断面図である。
【0053】
図6(a)、(b)において、45は陽極電極、46は陰極電極、47はセパレータであり、コンデンサ素子は、上記陰極電極46を外側に配置し、かつ陰極電極46が陽極電極45よりも突出するように巻回方向に位置をずらして配置して巻回している。このため、コンデンサ素子の最外周及び最内周は陰極電極46が配置されていることになり、陰極電極46の外周側の分極電極層44と内周側の陰極電極46の分極性電極層44が陽極電極45の分極性電極層43とそれぞれ対向しないことになる。従って、この陰極電極46の最外周と最内周の分極性電極層44の少なくとも一部を夫々絶縁材44a、44bで被覆した構成にしたものである。
【0054】
また、上記絶縁材44a、44bの材料としては、例えば、変性ポリプロピレン、ポリアミドイミド等が使用でき、分極性電極層44を均一に覆うことができ、かつ、駆動用電解液に溶解、膨潤しないものであれば何でもよい。
【0055】
このように構成された本発明の実施の形態4による巻回形電気二重層コンデンサは、コンデンサ素子の最外周の陰極電極46の分極性電極層44が陽極電極45の分極性電極層43と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層44を被覆する絶縁材44aを設け、かつ、コンデンサ素子の最内周となる陰極電極46の分極性電極層44が陽極電極45の分極性電極層43と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層44を被覆する絶縁材44bを設けているので、最外周と最内周において陽極電極45と陰極電極46に流れる電流の電位バランスが保たれ、大電流で急速充放電を繰り返し行っても、容量劣化を抑制することができるという効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明の巻回形電気二重層コンデンサによれば、大電流で急速に充放電を繰り返し行っても、特性劣化の少ない高信頼性・長寿命に優れるという効果を有し、車載用の巻回形電気二重層コンデンサとして有効である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1における巻回形電気二重層コンデンサの構成を示した一部切り欠き斜視図
【図2】同巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図
【図3】本発明の実施の形態2による巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き始め部分を示した断面図
【図4】(a)本発明の実施の形態3における巻回形電気二重層コンデンサの構成を示した平面図、(b)同正面断面図、(c)同底面図
【図5】(a)同巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図、(b)同巻き始め部分を示した断面図
【図6】(a)本発明の実施の形態4における巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図、(b)同巻き始め部分を示した断面図
【図7】従来の巻回形電気二重層コンデンサの構成を示した一部切り欠き斜視図
【図8】同巻回形電気二重層コンデンサに使用されるコンデンサ素子の巻き終わり部分を示した断面図
【符号の説明】
【0058】
1 コンデンサ素子
2 集電体
3,4 分極性電極層
5 陽極電極
6 陰極電極
7 セパレータ
8 リード線
9 封口部材
10 金属ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔からなる集電体の両面に分極性電極層を形成した陽極電極と陰極電極を一対とし、その間にセパレータを介在させた状態で陰極電極を外側にして重ね合わせて巻回したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を駆動用電解液と共に収納した有底筒状の金属ケースと、この金属ケースの開口部を封止した封口部材からなる巻回形電気二重層コンデンサにおいて、上記コンデンサ素子の最外周となる陰極電極の分極性電極層が、陽極電極の分極性電極層と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層を形成しない未形成部を設けた巻回形電気二重層コンデンサ。
【請求項2】
上記陰極電極の分極性電極を形成しない未形成部を50%以上設けた請求項1に記載の巻回形電気二重層コンデンサ。
【請求項3】
セパレータを介在させて重ね合わせる陽極電極と陰極電極の一方を巻回方向に位置をずらせることにより巻き始め部分に陰極電極が突出するようにして巻回し、このコンデンサ素子の最内周となる陰極電極の分極性電極層が陽極電極の分極性電極層と対向しない部分の少なくとも一部に分極性電極層を形成しない未形成部を設けた請求項1に記載の巻回形電気二重層コンデンサ。
【請求項4】
コンデンサ素子が、陽極/陰極の各電極を両端面から夫々取り出すように構成され、このコンデンサ素子の一方の電極を金属ケースの内底面に、同他方の電極を封口部材の内面に接合することにより、コンデンサ素子の一方の電極を金属ケースから、同他方の電極を封口部材から取り出すようにした請求項1〜3のいずれか一つに記載の巻回形電気二重層コンデンサ。
【請求項5】
金属箔からなる集電体の両面に分極性電極層を形成した陽極電極と陰極電極を一対とし、その間にセパレータを介在させた状態で陰極電極を外側にして重ね合わせて巻回したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を駆動用電解液と共に収納した有底筒状の金属ケースと、この金属ケースの開口部を封止した封口部材からなる巻回形電気二重層コンデンサにおいて、上記コンデンサ素子の最外周となる陰極電極の分極性電極層が陽極電極の分極性電極層と対向しない部分の分極性電極層の少なくとも一部を絶縁材で被覆した巻回形電気二重層コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−64931(P2009−64931A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230964(P2007−230964)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】