説明

巻寿司

【課題】 安全性が高く、傷みにくく、さらに採取および加工が容易である青色の寿司ねたを含んだ巻寿司を提供する。
【解決手段】 茄子漬11の青色の部分(青色部14)を巻寿司の芯とする。巻寿司1は芯2を有し、この芯2は茄子漬11の青色部14によって構成される。芯2の周りには寿司飯3が配置され、さらに、その寿司飯3の周囲が海苔4によって巻かれる。茄子漬11の青色部14は、茄子漬11の皮13および、その皮13に近接した果肉16を含み、茄子漬11から包丁等で切除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茄子の漬物を使った寿司に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康ブームを反映して、魚介類や野菜等を用いた低カロリーの寿司が、国内のみならず海外でも注目を集めている。
【0003】
寿司は、古くから日本に伝わる伝統的な料理であり、上述のような健康面だけでなく、寿司ねたの選択、配置、組み合わせ等によって千変万化する味覚や色彩の面でも人々を魅了する。
【0004】
一方、寿司は、生ものを材料として用いることが多く、傷みやすいという問題点がある。特許文献1には、このように傷みやすい寿司を長持ちさせることができ、さらに、健康にも良い寿司を提供するために、寿司ねたとともに、アロエベラをのせた寿司(にぎり寿司)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2777046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
寿司屋などでは、もちろん、美味な寿司を提供するということが大切であるが、近年では特に、提供された寿司のそれぞれの色彩、または料理全体の色彩をどのようにバランス良く仕上げるかということが重視されるようになってきている。
【0007】
一般的に、寿司に用いられるねたは、大きく分けて5色のグループに分類される。このグループの色をうまく配置し、組み合わせると、出前などで、盛り込み(数人前を一つの寿司桶に盛り込むこと)を作るような場合に見栄えのするものができる。五色とは、青色、黄色、赤色、白色、および黒色の5つの色であり、たとえば、青は、アジ、コハダ、サヨリ、サバ、サンマ等であり、黄は、卵焼き、数の子等であり、赤は、マグロ、エビ、赤貝等であり、白は、イカ、白身魚等であり、黒は、トリ貝や巻寿司の海苔などである。
【0008】
しかしながら、これらの5色のバランスを良好に保つことは容易ではない。なぜなら、青色のグループの食材は、実際にはほとんど青色には見えないからである。すなわち、青色のグループとされるアジやコハダなどは、かろうじて皮の一部分を青色と認めることができるが、その他の皮の部分や身自体は白色に近く、寿司として供される場合に、鮮やかに青色を示すことはない。また、温暖な海域にも、食用に適する鮮やかな青色の魚が生息するが、この魚の身も白色に近く青色ではない。
【0009】
さらに、ボタン海老等の海老の卵も青色に近いものがあるが、採取される季節や量が限られるばかりでなく、加工するのに非常に手間のかかる食材であり、寿司ねたとしては向いていない。
【0010】
一方、食用青色1号(ブリリアントブルー)などの着色料を用いた青色の食材を用いれば、青色に見える寿司を比較的容易に作ることができるが、これらの着色料には、一部で発ガン性の危険性等が報告されており、これらの食材を使用することは、近年の健康ブームや自然食ブームに逆らう結果となるおそれがある。
【0011】
したがって、自然界で調達することが極めて困難である青色の食材を用いた寿司が容易に提供されれば、上述のような色彩のバランスを容易に調整できるという点で価値がある。また、上述のように、青色に見える寿司の実現は非常に困難であるため、青色の食材を用いた寿司が単独で提供されること自体にも大きな価値がある。
【0012】
したがって、本発明の目的は、青色の寿司ねたを含んだ寿司を提供することにある。またさらに、本発明の目的は、安全性が高く、傷みにくく、さらに採取および加工が容易である青色の食材を寿司ねたとして使用する寿司を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の実施態様は、茄子漬の青色部を芯に含む巻寿司である。
【0014】
本発明の第2の実施態様は、茄子漬の青色部を芯とした巻寿司である。
【0015】
本発明の第3の実施態様は、上述した本発明の第1の実施態様または第2の実施形態において、茄子漬の青色部小片を芯に含む巻寿司である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、青色が鮮やかな寿司が提供され、寿司から与えられる色彩の印象をより豊かなものにすることができる。
【0017】
また、本発明に係る寿司は巻寿司である。この巻寿司の断面は、青色の芯の外側に白色の寿司飯が配置され、さらにその外側に黒色の海苔が配置されており、これによって、今までになかった、印象的な配色が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
最初に、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る巻寿司の構造について説明する。図1Aには、茄子漬の青色の部分(青色部)を芯とした巻寿司の斜視図が示されている。図1Aの巻寿司1は芯2を有し、この芯2は茄子漬の青色部によって構成される。芯2の周りには寿司飯3が配置され、さらに、その寿司飯3の周囲が海苔4によって巻かれる。寿司飯3は、通常、白米を炊いたものと寿司酢を合わせたものであり、白色または白色に近い色をしているが、このような色のものに限定される必要はない。
【0019】
図1Aに示した巻寿司1は、このような細長の状態でそのまま供されることもあるが、点線Jに沿って切り分けられた後、図1Bに示すように、断面を上にして配置され供されることが多い。この例では、巻寿司1は点線Jに沿ってほぼ4等分され、つけ台、皿、または容器などの上に並べられる。
【0020】
また、図1の例では、巻寿司1が4つに切り分けられているが、たとえば、6つといった他の数に切り分けられても良い。図1Bのような状態では、芯2が青色であり、寿司飯3が白色であり、外周の海苔4が黒といった配色となる。
【0021】
図1に示した巻寿司1は、細巻であるが、本発明に係る巻寿司には、全型の海苔1枚を用いて作る太巻きや、中巻(中太巻)といった、他の様々な太さの巻寿司が含まれる。また、巻寿司には、海苔を用いずに、薄焼き卵などで外周を巻くものがあるが、このような種類のものも本発明の巻寿司に含まれる。さらに、海苔等が内側になるように巻き込まれ、外周表面には青のりやゴマが付けられる巻寿司(いわゆる、裏巻)も本発明の巻寿司の範囲内である。
【0022】
また、前述のように、巻寿司1の芯2には、茄子漬の青色部が用いられる。この青色部は、たとえば、茄子を漬け込む際に、ミョウバンや古くぎを加えることによって得られる鮮やかな発色部分を含む。こうした青色の発色は、茄子の皮に含まれているナスニンというアントシアン系の色素が、アルミニウムイオンや鉄イオンと錯塩を形成して安定化することによって行われ、その後、長い間、鮮やかな青色を保つことができる。
【0023】
この「青色」は色彩のひとつである。一方、色彩とは、受けた光のうち反射する光によって人間の網膜を刺激する物体の性質のひとつであり、人間は、反射する光の波長によって異なる色を感じる。
【0024】
本明細書において「青色」とは、厳密に1つの特定の色を指す意図で用いられているわけではなく、人間が青色と視認しうる一定の範囲の色のことを指す。図2には、JIS(日本工業規格)が「物体色の色名」で規定している慣用色名の一部がRGB(RはRed(赤)、GはGreen(緑)、BはBlue(青))の値とともに示されているが、たとえば、これらを代表的な「青色」と考えることができる。
【0025】
RGBによって、赤、緑、青の3原色を元に色を特定することができる。ここでは、R、G、Bのそれぞれが、0〜255の256段階で表現されている。
【0026】
RGBの値は、その組み合わせによって色が変化するので、青色の範囲を、R、G、およびBの各値の範囲で定義することは難しいが、一般的には、図2に示された各色のRGB値の組み合わせに近い値を有する色は、「青色」の範囲に含まれる。
【0027】
図2から分かるように、ここでは、やや緑がかった緑青色から、やや紫がかった紫紺なども青色の範囲に含まれる。なお、図2には、紫(NO.44)とパープル(NO.75)のように、異なる名称であるが実質的に同じ色となるものも含まれている。
【0028】
また、紺色(NO.29)、茄子紺(NO.46)、群青色(NO.32)、藍色(NO.21)なども上記青色に含まれる。芯2の色は、茄子の種類や漬け方等によって、青色の範囲に含まれる様々な色に視認されうる。
【0029】
芯2に、茄子の青色部を用いることは、自然界では稀な青い食品を人々に提供するという大きな効果があるが、それ以外に、健康増進という面でも大きな役割を果たす。茄子の皮の部分に含まれるナスニンは、抗酸化物質であるポリフェノールの一種であり、そのポリフェノールの働きにより、免疫力が高まり、ガンや老化予防に効果を発揮する。また、それに加えてポリフェノールには、血管をきれいにして高血圧や動脈硬化を予防する効果があるとも言われている。
【0030】
また、茄子は食物繊維を含むが、これにはコレステロールを排出し、血中コレステロール値を下げる働きがあり、高脂血症や動脈硬化の予防に効果がある。この他、茄子には、ナス科特有のアルカロイドという、ガン細胞の増殖・腫瘍の成長を抑えるといわれる物質も含まれる。また、茄子には、わずかながらコリンという機能性成分が含まれるが、このコリンには、血圧降下や胃液分泌を促進し、肝臓の働きを助ける働きがあるといわれている。
【0031】
次に、茄子漬から芯2の材料となる青色部を取り出す方法の一例について、図3を参照して説明する。図3Aには、茄子のへた12および皮13を含む茄子漬11の全体の外観が示されており、点線Kは、茄子漬11の表面部分が切除される切除線を示している。この表面部分は、皮13および、その皮13に近接した果肉16(後述する図3B参照)を含み、芯2の青色部14に対応する。青色部14の切除は、たとえば、ジャガイモ等の皮を剥くような要領で、包丁等を用いて行われる。
【0032】
図3Aには、1つの青色部14しか示されていないが、茄子漬11の表面全体にわたって、上記のような切除が行われ、複数の青色部14が1つの茄子漬11から切り取られうる。また、図3Aでは、青色部14の切除が、それぞれ茄子漬11の長手方向に沿って行われていることを示すものであるが、これらは単なる例示に過ぎず、どのような方向や大きさで切除を行ってもよい。
【0033】
図3Bは、図3Aの一点鎖線Lに沿って茄子漬11を切断した場合の断面図である。皮13の内側には果肉16がある。発色部15は、皮13と、皮13に近接した果肉16の一部からなり、青色に発色した部分である。点線Mは、図3Aに示した点線Kに対応する線であり、このような切除線に沿った切除により、結果的に薄い切除片(すなわち、青色部14)が得られる。図3Bでは、発色部15と、これに属さない果肉16の部分の境界線が明確に表示されているが、実際は、このように、急に青色に変化するわけではなく、果肉16の中心部から外側にかけて徐々に青色に変化する。
【0034】
したがって、切除された青色部14には、薄い青色から濃い青色といった、均一でない青色の皮13および果肉16が含まれる場合がある。また、巻寿司1の芯2に用いられる青色部14としては、青色部14が全体として青色に見える限り、多少白色の皮13や果肉16を含んでいてもよい。また、皮13と、皮13に極めて近い果肉16からなる発色部15の一部のみを切除することによって、より、青色が濃く鮮やかな青色部14を得るようにすることも可能である。
【0035】
図3Cは、図3Aおよび図3Bに示すような態様により切除された茄子漬11の青色部14を示している。青色部14は、たとえば、複数の点線Nに沿って包丁等で切り分けられることにより、さらに小さい複数の小片に形成される。芯2として用いられる青色部14の形状は、図3Cに示される、切り分け前の比較的大きな形状であってもよく、芯2として巻寿司1に合理的に格納される限り、どのような形状、大きさであってもよい。ただし、本発明に係る巻寿司1の芯2としては、たとえば、図3Cに示す切り分け前の形状のものを2ないし4程度または粗みじんに切り分けたり、点線Nに沿った細切りやみじん切りにしたりすることにより、青色部14をある程度小さな形状にして用いることが好ましい。
【0036】
芯2として青色部14が得られた後は、通常の手順で巻寿司1を製造する。海苔の上に配置した寿司飯3の上に青色部14を置く際には、必要に応じて余分な水分を絞る等の作業により取り除くことが望ましい。
【0037】
また、青色部14は、巻き込んだときに巻寿司1の芯2の位置に配置される。また、青色部14の量は、一定(好ましくは巻寿司1の断面の2割ないし3割程度)の断面積を専有するよう調整する。上述のように、青色部14またはその小片は、基本的に細長の形状であるため、一定の断面積を確保するためには、複数の青色部14をまとめて(あるいは重ねて)配置することが望ましい。
【0038】
また、芯2の材料として、茄子漬11の青色部14以外の素材を加えてもよい。たとえば、青色部14、卵焼き、おぼろ、およびキュウリからなる芯を一緒に巻き込んで太巻き等を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻寿司の構造を示した略線図である。
【図2】青色の例をRGBの値とともに示す略線図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る巻寿司に用いられる青色部を得るための方法を示す略線図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・巻寿司、2・・・芯、3・・・寿司飯、4・・・海苔、11・・・茄子漬、12・・・へた、13・・・皮、14・・・青色部、15・・・発色部、16・・・果肉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茄子漬の青色部を芯に含む巻寿司。
【請求項2】
茄子漬の青色部を芯とした巻寿司。
【請求項3】
請求項1および請求項2のいずれかに記載の巻寿司において、
前記青色部を小片で構成してなる巻寿司。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−223131(P2006−223131A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38500(P2005−38500)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(304005428)
【Fターム(参考)】