説明

布接着装置

【課題】ノズルと布との間に隙間をあけることができる布接着装置を提供する。
【解決手段】CPUは、作業者がペダルの操作を中止した場合に、エアシリンダ105を駆動して第二プーリ28を第一位置から第二位置へ移動する。第一位置では、エアシリンダ105の可動部58を下方に移動して、ベルト27前方部分を上方に移動している。第一位置では、ベルト27とノズル17とで下布152を挟んでいる。第二位置では、エアシリンダ105の可動部58を上方に移動して、ベルト27前方部分を下方に移動している。第二位置では、ノズル17と下布152とが離隔する。第二プーリ28が第二位置へ移動することで、下布152とノズル17との間隔は開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布接着装置に関する。より詳細には、作業状態に応じて移送部の位置を切り替える布接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布接着装置は、加熱した液状の接着剤をノズルから吐出する。接着剤は、布に付着する。作業者は、接着剤が付着した布に接着したい布を重ねる。布接着装置は、双方の布を圧着する。布接着装置は、該方法で布と布とを接着する。布接着装置は、布と布とを接着剤で接着することで、縫糸による縫製時に布表面に生じる縫糸の凹凸を無くすことができる。
【0003】
特許文献1に記載の布接着装置は、ノズルの下方付近に設けたローラとノズルに対して布の移送方向下流側に設けたローラとに亙ってベルトを掛架してある。布は、ベルト上に配置する。ローラは、モータを駆動することにより回転する。布接着装置は、ローラの回転によって、ベルト上に配置した布を移送する。布接着装置は、布の移送によって、接着剤の布への付着及び布と布との接着を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−222140号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載の装置は、布を移送して接着剤を付着するとき、ノズルに付着し且つ布に接触していない接着剤がノズルの形状に沿って存在する。作業者は、接着剤を布に付着する際に、布の移送を一端停止し、再度移送して布に接着剤を付着する場合がある。布の移送を一端停止した場合、ノズルの下方にある布には、ノズルの形状に沿って存在する接着剤が溜って付着する(溜り部という)。布を再度移送した場合、布に付着する接着剤は溜り部を形成した部分とそれ以外の部分とで布への付着量が不均一になるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、布の移送を一端停止しても布に付着する接着剤の量が不均一となるのを防ぐことができる布接着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するために、請求項1に記載の布接着装置は、布に接着剤を吐き出すノズルと、前記ノズルに対して前記布の移送方向下流側に配置し、前記布を移送する第一移送手段と、前記布に対して前記第一移送手段が配置する側の面と反対の面側であって、前記布を挟んで前記ノズルと対向する位置に少なくとも配置し、前記布を移送する第二移送手段とを備える布接着装置において、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、前記供給手段を駆動制御する供給制御手段と、前記第一移送手段及び前記第二移送手段による前記布の移送を制御する移送制御手段と、前記供給制御手段による前記供給手段の駆動及び前記移送制御手段による前記布の移送の開始及び停止を入力する入力手段と、前記第二移送手段を、前記第二移送手段と前記ノズルとの間で前記布を挟む第一位置と、前記布と前記ノズルとが離隔する第二位置との間で移動させる移動手段と、前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の停止及び前記移送制御手段による前記布の移送の停止が入力された場合、前記移動手段によって前記第二移送手段を前記第一位置から前記第二位置に移動させる移動制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の布接着装置は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記移動制御手段は、前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の開始及び前記移送制御手段による前記布の移送の開始が入力された場合、前記移動手段によって前記第二移送手段を前記第二位置から前記第一位置に移動させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の布接着装置は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、前記第二移送手段の前記第一位置及び前記第二位置を設定する位置設定手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の布接着装置は、請求項3に記載の発明の構成に加えて、前記位置設定手段により設定する前記第二移送手段の前記第一位置を複数記憶する位置記憶手段と、前記第二移送手段を前記位置記憶手段が記憶する複数の前記第一位置から何れか一つの第一位置に切り替える切替手段とを備え、前記移動制御手段は、前記切替手段により前記第二移送手段の前記第一位置を切り替えた場合に、前記移動手段によって前記第二移送手段を前記切替手段で切り替えた前記第一位置に変更することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の布接着装置は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の構成に加えて、前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の停止及び前記移送制御手段による前記布の移送の停止を入力してからの経過時間を計測する計測手段と、前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の停止及び前記移送制御手段による前記布の移送の停止を入力してから、前記移動手段が前記第二移送手段を前記第一位置から前記第二位置に移動させるまでの時間を設定する時間設定手段とを備え、前記移動制御手段は、前記計測手段によって計測された前記経過時間が、前記時間設定手段で設定された時間に到達したときに前記移動手段によって前記第二移送手段を前記第一位置から前記第二位置に移動させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の布接着装置は、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の構成に加えて、前記第一移送手段は、円筒形に形成した第一ローラであり、前記第二移送手段は、前記布を挟んで前記第一ローラと対向する位置に配置する第一プーリと、前記布を挟んで前記ノズルと対向する位置、又は、前記布を挟んで前記ノズルと対向する位置から少なくとも前記布の移送方向上流側の位置に配置する第二プーリと、前記第一プーリと前記第二プーリとの間に掛架するベルトとを備え、前記移動手段は、前記第二プーリの位置を、前記ベルトと前記ノズルとの間で前記布を挟む前記第一位置と、前記布と前記ノズルとが離隔する前記第二位置との間で移動させることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の布接着装置は、請求項6に記載の発明の構成に加えて、前記第二移送手段は、前記第一プーリ及び前記第二プーリを回転可能に支持し、且つ前記第一プーリの回転軸に揺動可能に支持されるアーム部を更に備え、前記移動手段は、モータと、前記モータの出力軸に設け且つ前記アーム部と当接する偏心輪とで構成され、前記モータは、前記偏心輪と当接する前記アーム部を揺動し、前記第二プーリを前記第一位置と前記第二位置との間で移動させることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の布接着装置は、請求項6又は7に記載の発明の構成に加えて、前記第二移送手段は、前記ベルトに掛架される第三プーリを備え、前記第三プーリは、軸方向両端部にフランジ部を設け、且つ前記第一プーリの前記回転軸と前記第二プーリの回転軸とを結ぶ直線よりも下方に位置し、前記フランジ部は、前記布から離隔することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の布接着装置では、移動制御手段は、入力手段によって供給手段の駆動及び布の移送の停止が入力された場合、布を挟んでノズルと対向する位置にある第二移送手段を第一位置から第二位置に移動させる。第二移送手段を移動させることで、布とノズルの間隔は開く。布接着装置は、接着作業の停止時に布とノズルとの間を空けて、ノズルの後方部分に付着し且つ布に接着していない接着剤をノズルの布との接触部分に移動させる。故に、布接着装置は、ノズルの後方に付着する接着剤が布に付着して接着剤の溜り部を形成することを防ぎ、布に付着する接着剤の量が不均一となるのを防ぐことができる。
【0016】
請求項2の布接着装置では、請求項1に記載の発明の効果に加えて、移動制御手段は、入力手段によって供給手段の駆動及び布の移送の開始が入力された場合、布を挟んでノズルと対向する位置にある第二移送手段を第二位置から第一位置に移動させる。第二移送手段を移動させることで、第二移送手段とノズルとで布を挟む。布接着装置は、接着作業時には第二移送手段とノズルとで布を挟み、接着剤を布に付着して布を移送することができる。
【0017】
請求項3の布接着装置では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、位置設定手段は、第二移送手段の第一位置及び第二位置を設定可能である。故に、布接着装置は、第二移送手段の位置を調整して布の厚みに関わらず接着剤を均一に供給することができる。
【0018】
請求項4の布接着装置では、請求項3に記載の発明の効果に加えて、切替手段は、第二移送手段を位置記憶手段が記憶する複数の第一位置から何れか一つの第一位置に切り替える。布接着装置は、接着中の布の厚さの変化に応じて第二移送手段の第一位置を変更することができる。布接着装置は、接着中の布の厚さの変化に応じて布とノズルとの隙間を調整し、布に付着する接着剤を均一にすることができる。
【0019】
請求項5の布接着装置では、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の効果に加えて、時間設定手段は、入力手段によって供給手段の駆動及び布の移送の停止を入力してから、移動手段が第二移送手段を第一位置から第二位置に移動させるまでの時間を設定する。布接着装置は、ノズルから吐出する接着剤の量に応じて第二移送手段を移動させるまでの時間を設定可能なので、接着剤を均一に布に付着することができる。
【0020】
請求項6の布接着装置では、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の効果に加えて、第二移送手段は、第一プーリと、第二プーリと、第一プーリと第二プーリとの間に掛架するベルトとを備えている。布接着装置は、ノズルと対向する位置から第一ローラと対向する位置へ布をベルト上でスムーズに移送することができる。
【0021】
請求項7の布接着装置では、請求項6に記載の発明の効果に加えて、移動手段は、アーム部と当接する偏心輪を備えたモータで構成される。アーム部は、モータの回転によって回転する偏心輪によって揺動する。第二プーリは、アーム部の揺動によって第一位置と第二位置との間で移動する。布接着装置は、第二プーリの第一位置と第二位置との間の移動、及び第一位置、第二位置の調整をモータによって容易に行うことができる。故に、布接着装置は、作業効率が向上する。
【0022】
請求項8の布接着装置では、請求項6又は7に記載の発明の効果に加えて、第二移送手段は、フランジ部を有する第三プーリを備える。ベルトは、第一プーリ、第二プーリ、第三プーリの間に掛架する。第三プーリは、第一プーリの回転軸と第二プーリの回転軸とを結ぶ直線よりも下方に位置する。フランジ部は、布から離隔する。故に、布接着装置は、掛架したベルトが第三プーリから離脱することを防ぐとともに、フランジ部が布に接するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】布接着装置1全体の斜視図である。
【図2】接着機2の斜視図である。
【図3】接着機2の正面図である。
【図4】接着機2の左側面図である。
【図5】接着機2の内部構造の斜視図である。
【図6】貯蔵室18、ポンプケース14、支持部16の部分拡大断面図である。
【図7】下移送部37の近傍の斜視図である。
【図8】下移送部37の近傍の左側面図である。
【図9】下移送部37の近傍の正面図である。
【図10】第一位置の下移送部37近傍の左側面図である。
【図11】第二位置の下移送部37近傍の左側面図である。
【図12】布接着装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図13】布接着処理を示すフローチャートである。
【図14】布接着処理を示すフローチャートである。
【図15】第二実施形態の下移送部38の近傍の斜視図である。
【図16】第二実施形態の下移送部38の近傍の斜視図である。
【図17】第二実施形態の支持アーム160の斜視図である。
【図18】第二実施形態の第一位置の下移送部38近傍の右側面図である。
【図19】第二実施形態の第二位置の下移送部38近傍の右側面図である。
【図20】第二実施形態の布接着装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図21】変形例の第三モータ93近傍の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の布接着装置について、図面を参照して説明する。
<第一実施形態>
図1〜図4を参照し、布接着装置1の構成について説明する。以下、図3に示す接着機2のうち紙面上側、下側、右側、左側、表面側、背面側を、夫々接着機2の上側、下側、右側、左側、前側、後側と定義して説明する。
【0025】
図1を参照し、布接着装置1全体の構成について説明する。図1に示すように、布接着装置1は、接着機2と、制御ボックス3と、操作パネル210を備えている。接着機2は、対向配置した2層の布の間に接着剤を付着し、布を押圧し移送する。2層の布は、接着機2の前述した動作を経て接着する。接着機2の構成詳細については後述する。
【0026】
接着機2は、テーブル220の上側に固定してある。テーブル220は、接着機2右側に操作パネル210を備える。操作パネル210は、液晶表示部207と、複数のキー209とを備える。液晶表示部207は、各種情報を表示する。キー209は、各種入力をするものである。作業者は、液晶表示部207を見ながらキー209を操作することで、接着機2の各種動作を設定する。
【0027】
テーブル220は、下方に布の移送速度を調整する為のペダル208を備えている。制御ボックス3は、ペダル208の上方且つテーブル220の裏面に設けてある。制御ボックス3は、布接着装置1全体を制御する制御基板を格納する。
【0028】
図2〜図4を参照し接着機2の構成について説明する。図2、図3に示すように、接着機2は、台座部11と、脚柱部12と、アーム部13とを備えている。台座部11は、略直方体状である。脚柱部12は、台座部11右端から鉛直方向に延びている。アーム部13は、脚柱部12上端に接続し、脚柱部12左側面よりも左方に突出している。台座部11は、脚柱部12を支持する土台として機能する。脚柱部12は、アーム部13を支持する。
【0029】
図2に示すように、アーム部13左端部は、前方から順に、ポンプケース14、貯蔵室18、梁部19を支持している。
【0030】
ポンプケース14について説明する。図2、図3に示すように、ポンプケース14は、第一ポンプケース31、第二ポンプケース32を備えている。第一ポンプケース31は、略立方体状の部材である。第一ポンプケース31は、アーム部13の左側面に固定している。第一ポンプケース31は、その内部にギアポンプ124(図5参照)等を備える。ギアポンプ124は、適量の接着剤を高精度でノズル17に供給する。第二ポンプケース32は、略直方体状の部材である。第二ポンプケース32は、第一ポンプケース31左下端面から下方に延びている。
【0031】
第二ポンプケース32は、その左側に軸部45(図3参照)を備えている。軸部45は、支持部16上端右側に接続し、支持部16を揺動可能に支持する。ポンプケース14は、供給路81(図6参照)を備えている。供給路81は、接着剤を貯蔵室18からギアポンプ124へ導く。
【0032】
図2、図3に示すように、支持部16の形状は、略直方体状である。支持部16下端と台座部11との間は、僅かな隙間が存在する。支持部16は、その内部に供給路82(図6参照)を備える。供給路82は、接着剤をポンプケース14からノズル17へ導く。支持部16は、その下端部にノズル17を備えている。ノズル17は、支持部16から布に沿うように左側に延びている。支持部16は、その上端部に駆動伝達部41を備えている。駆動伝達部41は、エアシリンダ24の可動部75下端部を支持する。
【0033】
エアシリンダ24は、エア注入口を備えている。エア注入口には、図示しない吸排気用ホースが接続している。布接着装置1は、エア注入口への圧縮空気の吸気/排気を制御する。エアシリンダ24本体部内にあるピストンの位置は、吸気/排気の制御によって移動する。可動部75は、ピストンに接続している。それ故、ピストンが移動すると、可動部75は前後に移動する。支持部16は、エアシリンダ24の可動部75が前後に移動することで、軸部45を中心軸として前後方向に揺動する。ノズル17は、支持部16の揺動に伴って、布の接着作業を行う場合の位置と、保守を行う場合の位置とに移動する。
【0034】
ノズル17は円筒形状である。ノズル17は、その下側に接着剤を吐出する吐き出し口(図示略)を備えている。作業者が布の接着作業を行う場合、吐き出し口は台座部11と対向する。ギアポンプ124は、支持部16内部の供給路82を介して、接着剤をノズル17に供給する。ノズル17は、吐き出し口から布に接着剤を吐出する。接着剤は、ノズル17下方に位置する布の表面に付着する。
【0035】
図2、図3、図6に示すように、支持部16は、前側にバルブ開閉シリンダ49を備えている。バルブ開閉シリンダ49は、供給路82(図6参照)を遮断するためのバルブ55(図6参照)を開閉する。バルブ開閉シリンダ49の動作は、制御ボックス3内のCPU200(図12参照)が制御する。
【0036】
図2、図3に示すように、貯蔵室18は、略直方体状である。貯蔵室18は、アーム部13左側、且つポンプケース14後方部分から上方に延びている。貯蔵室18は、本体部46、蓋部47、蓋軸部48を備える。本体部46の形状は、その上部が開口した有底筒状である。蓋部47は、本体部46上部開口を覆う。本体部46は、その上端に蓋軸部48を有する。蓋軸部48は、蓋部47を開閉可能に支持する。貯蔵室18は、熱溶融性の接着剤(図示略)を本体部46内部に貯蔵する。貯蔵室18は、貯蔵した接着剤を、必要に応じてギアポンプ124を介してノズル17に供給する。熱溶融性の接着剤は、所定の温度に加熱すると液化し、該所定の温度より低い温度では、固化するものである。
【0037】
図2に示すように、梁部19は、本体部51、シリンダ支持部53、柱部52を備えている。本体部51は、アーム部13左側後端部から左方へ水平方向に延びる部材である。シリンダ支持部53は板状であり、本体部51左側端部から前方へ水平方向に延びる。図2、図4に示すように、柱部52は、水平面に対して約45度の角度で、本体部51から前方斜め下方に延びている。柱部52下端部は、台座部11から離れている。
【0038】
図2に示すように、シリンダ支持部53前方先端部にエアシリンダ21の本体部が設けてある。エアシリンダ21は、エア注入口を備えている。エア注入口には、図示しない吸排気用ホースが接続している。布接着装置1は、エア注入口への圧縮空気の吸気/排気を制御する。エアシリンダ21の本体部内にあるピストンの位置は、吸気/排気の制御によって移動する。可動部15は、ピストンに接続している。ピストンが移動すると、可動部15は上下に移動する。柱部52は、その下端部左側に左右に延びる軸部62を有している。軸部62は、ローラ保持部20後端部を支持している。ローラ保持部20は、軸部62を揺動中心として、その前端部を上下方向に揺動する。本体部51は、シリンダ支持部53よりも右側にエアシリンダ24を備えている。エアシリンダ24は、支持部16の位置を切り替えるものである。
【0039】
ローラ保持部20について説明する。ローラ保持部20前端部は、円柱状の第一ローラ22を回転可能に支持している。第一ローラ22は、支持部16から延びたノズル17の後方近傍にある。
【0040】
ローラ保持部20は、その中央からやや前方上面に、軸支持部33を有する。軸支持部33は、可動部15下端部に接続している。
【0041】
図2に示すように、台座部11は、第一ローラ22下方部分及びノズル17下方部分に穴部26を設けてある。台座部11内のベルト27の一部は、穴部26から上方に僅かに突出している。ベルト27は、接着機2の前方から後方に移動する。ベルト27は、布を前方から後方に移送する。
【0042】
エアシリンダ21のピストンが移動することで、第一ローラ22とベルト27との間の隙間は変化する。図4に示すように、ローラ保持部20は、可動部15が下方に移動した状態で、前方斜め下に傾斜している。第一ローラ22とベルト27との間の隙間は小さい。ローラ保持部20は、可動部15が上方に移動した状態で略水平になる。第一ローラ22とベルト27との間の隙間は大きくなる。
【0043】
図5を参照し、接着機2の内部構造について説明する。接着機2は、その内部に第一モータ91、第二モータ92、第三モータ93、下移送部37等を備える。
【0044】
第一モータ91は、回転軸121を介して回転駆動力をギアポンプ124に伝達することで、ギアポンプ124を駆動する。ギアポンプ124は、駆動ギア122と、従動ギア123とを備えている。駆動ギア122は、回転軸121左側端部に固定している。駆動ギア122は、回転軸121と共に回転する。従動ギア123は、駆動ギア122と噛合する。第一モータ91は、アーム部13内部に、且つポンプケース14がアーム部13と接続する部分の右方に位置する。回転軸121は、ポンプケース14内を第一モータ91の回転軸から左方に延びる。駆動ギア122と従動ギア123とは、適量の接着剤をノズル17に供給する。
【0045】
第二モータ92は、回転軸126、127、128、及びベルト129、130を介して、回転駆動力を第一ローラ22に伝達することで、第一ローラ22を駆動する。第二モータ92は、アーム部13内部に、且つ梁部19がアーム部13と接続している部分の右方に位置する。
【0046】
回転軸126は、第二モータ92の回転軸から左方に延び、本体部51内を貫通している。回転軸126左端部は、柱部52内に位置する。回転軸126左端部は、プーリを支持している。回転軸127右端部は、柱部52下端部内に延びている。回転軸127左端部は、ローラ保持部20後端部内に延びている。回転軸127右端部と左端部は、夫々プーリを支持している。回転軸128は、第一ローラ22の回転軸である。回転軸128左端部は、ローラ保持部20前端内部に延び、プーリを支持している。回転軸128右端部は、ローラ保持部20前端部から突出し、第一ローラ22を支持している。ベルト129は、柱部52内で、回転軸126左端部のプーリと回転軸127右端部のプーリとの間に掛け渡してある。ベルト130は、ローラ保持部20内で、回転軸127左端部のプーリと回転軸128左端部のプーリとの間に掛け渡してある。第一ローラ22は、第二モータ92が回転することで回転する。
【0047】
第三モータ93は、台座部11内の右方に設けてある。第三モータ93は、回転軸141とベルト142とを介して、回転駆動力を第一プーリ25に伝達することで、第一プーリ25を回転する。回転軸141は、第一プーリ25の回転軸である。回転軸141は、台座部11内を右方に延びる。回転軸141右端部は、プーリを支持している。台座部11は、その内部に支持台座4を有する。支持台座4は、回転軸141を回転可能に支持している。ベルト142は、台座部11内で、第三モータ93の回転軸のプーリと、回転軸141右端部のプーリとの間に掛け渡してある。第一プーリ25は、第三モータ93が回転することで回転する。
【0048】
図7〜図9を参照し、下移送部37について説明する。図7の右上、左下、左上、右下は、夫々下移送部37の前側、後側、右側、左側に相当する。下移送部37は、第一プーリ25、第二プーリ28、プーリ支持部100、ベルト27、ばね106を備えている。プーリ支持部100は、第二プーリ28を回転可能に支持する。ベルト27は、歯付ベルトである。第一プーリ25及び第二プーリ28の形状は円柱形である。第一プーリ25は、第一ローラ22下方に設けてある。第二プーリ28は、ノズル17の下方斜め前方に設けてある。
【0049】
図7に示すように、プーリ支持部100は、左側面板部101、右側面板部111、架設部108を備えている。板状の左側面板部101は、第一プーリ25と第二プーリ28との左側にある。板状の右側面板部111は、第一プーリ25と第二プーリ28との右側にある。架設部108は、左側面板部101と右側面板部111との間を繋いでいる。
【0050】
左側面板部101は、支持凸部102、輪部103、ばね凸部104を備える。円形板状の輪部103は、第一プーリ25の左端面に平行に位置する。輪部103の中心は、第一プーリ25の回転軸中心と同一位置にある。輪部103は、その中心部分に穴を備える。第一プーリ25の回転軸141は、該穴に挿通している。ばね凸部104は、輪部103後方において水平方向に延びている。支持凸部102は、輪部103前方斜め上約45度の方向に延びている。
【0051】
右側面板部111は、左側面板部101と略同一形状である。右側面板部111は、支持凸部112、輪部113、ばね凸部114を備える。ばね凸部114の前後方向長さは、ばね凸部104の前後方向長さと比較して僅かに長い。輪部113は、その中心部分に穴を備える。第一プーリ25の回転軸141は、該穴に挿通している。
【0052】
支持凸部102と支持凸部112は、夫々その前端部分に穴を有している。第二プーリ28の回転軸は、該穴に挿通している。支持凸部102及び支持凸部112は、第二プーリ28を回転可能に支持している。架設部108は、ばね凸部104後端から右方に延びてばね凸部114に接続する。
【0053】
図7、図8に示すように、第一プーリ25と第二プーリ28には、ベルト27が掛け渡してある。ベルト27は、第一プーリ25が回転することで回転する。
【0054】
エアシリンダ105は、架設部108下方に設けてある。エアシリンダ105は、エア注入口を備えている。エア注入口には、図示しない吸排気用ホースが接続している。布接着装置1は、エア注入口への圧縮空気の吸気/排気を制御する。エアシリンダ105内にあるピストンの位置は、吸気/排気の制御に基づいて移動する。可動部58は、ピストンに接続している。それ故、ピストンが移動すると、可動部58は上下に移動する。可動部58は、架設部108に当接可能である。
【0055】
ストッパ107は、ばね凸部114下方に設けてある。ストッパ107は、棒状である。ストッパ107は、支持台座4から鉛直方向に延びている。ストッパ107は上端にストッパネジがねじ込んである。ストッパ107はストッパネジのねじ込み量を変化させて上下方向の長さを変えることができる。ストッパ107は、ばね凸部114後端部と当接可能である。
【0056】
図7に示すように、ばね106は、ストッパ107前方に設けてある。ばね106下端部は、支持台座4に接続している。ばね106上端部は、ばね凸部114右側面、且つばね凸部114前後方向略中央部分に接続している。ばね106は、ばね凸部114を引き下げる。プーリ支持部100は、回転軸141を軸として揺動する。支持凸部102及び支持凸部112は、ばね106の付勢力に基づいて上昇する。その結果、第二プーリ28は上側に移動する。
【0057】
図8に示すように、ベルト27の一部は、台座部11の穴部26(図2参照)から上方に僅かに突出している。可動部58は、上下方向に移動し、プーリ支持部100の揺動量を調整する。ストッパ107は、上下方向の長さを変え、プーリ支持部100の揺動量を調整する。可動部58及びストッパ107は、ベルト27の前方部分の上方への移動量を調整できる。
【0058】
図10、図11を参照し、接着作業時における第一ローラ22及び下移送部37の近傍の様子について説明する。図10は第一位置を示している。図11は第二位置を示している。第一位置では、エアシリンダ105の可動部58を下方に移動して、ベルト27前方部分を上方に移動している。第一位置では、ベルト27とノズル17とで下布152を挟んでいる。第二位置では、エアシリンダ105の可動部58を上方に移動して、ベルト27前方部分を下方に移動している。第二位置では、ノズル17と下布152とが離隔する。
【0059】
図12を参照し、布接着装置1の電気的構成について説明する。布接着装置1は、CPU200、ROM201、RAM202、記憶装置203を備えている。CPU200は、受信処理、制御処理を実行する。受信処理は、キー209、ペダル208等から入力情報を受信する処理である。制御処理は、モータ等を制御する処理である。
【0060】
ROM201は、CPU200が実行するプログラム、各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAM202は、タイマ値、カウンタ値、フラグ等を一時的に記憶する。記憶装置203は、作業者が入力する各種設定情報を記憶する。記憶装置203は、後述する第1〜第8所定時間を記憶している。作業者は、キー209の操作により第1〜第8所定時間を設定することができる。
【0061】
CPU200は、ROM201と、RAM202と、記憶装置203とに夫々電気的に接続している。CPU200は、ROM201、RAM202、記憶装置203の記憶領域にアクセスできる。
【0062】
ペダル208は、CPU200と電気的に接続している。作業者は、布の移送速度を調節する場合にペダル208を使用する。CPU200は、ペダル208の踏み込み量を認識することができる。CPU200は、認識したペダル208の踏み込み量に比例して、第一ローラ22と第一プーリ25との回転速度、駆動ギア122の回転速度を決定する。
【0063】
キー209は、CPU200と電気的に接続している。作業者は、各種動作設定を行う場合にキー209を使用する。CPU200は、作業者によるキー209の押下状態を認識する。CPU200は、認識したキー209の押下状態に基づいて、各種動作設定の情報を記憶装置203に記憶する。
【0064】
表示駆動ドライバ205は、CPU200と電気的に接続している。表示駆動ドライバ205は、液晶表示部207と電気的に接続している。CPU200は、表示駆動ドライバ205を介して所望の情報を液晶表示部207に表示する。
【0065】
モータ駆動ドライバ206は、CPU200と電気的に接続している。モータ91〜93は、夫々モータ駆動ドライバ206と電気的に接続している。CPU200は、モータ駆動ドライバ206を介してモータ91〜93を制御する。
【0066】
エア駆動ドライバ204は、CPU200と電気的に接続している。エア駆動ドライバ204は、エアシリンダ21、24、105、バルブ開閉シリンダ49と電気的に接続している。CPU200は、エア駆動ドライバ204を介して、エアシリンダ21、24、105、バルブ開閉シリンダ49のエア注入口に送り込む空気圧力を制御する。第一ローラ22は、エアシリンダ21の動作に基づいて、上下方向に移動する。支持部16は、エアシリンダ24の動作に基づいて、使用位置と保守位置とに移動する。第二プーリ28は、エアシリンダ105の動作に基づいて、上下方向に移動する。バルブ55は、バルブ開閉シリンダ49の動作に基づいて、上下方向に移動する。
【0067】
図13、図14を参照し布接着処理について説明する。尚、図13のフローチャートは、作業者がペダル208を踏み込んだことをCPU200が検出した時に実行される割り込み処理であり、図14のフローチャートは、作業者がペダル208の操作を中止したことをCPU200が検出した時に実行される割り込み処理である。
【0068】
図13の処理を実行すると、CPU200は、タイマーを起動する(S1)。尚、タイマーは、他の割り込み処理において更新されている。CPU200は、タイマー値が第1所定時間経過したか否かを判断する(S5)。第1所定時間は、作業者がペダル208を踏み込んでから布送りを行うまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0.1sである。タイマー値が第1所定時間経過したと判断した場合(S5:YES)、CPU200は、モータ駆動ドライバ206を介して第二モータ92、第三モータ93を駆動して布送りを行い(S10)、その後、処理をS15に移行する。
【0069】
S10の処理後、又は、タイマー値が第1所定時間経過していないと判断した場合(S5:NO)、CPU200は、タイマー値が第2所定時間経過したか否かを判断する(S15)。第2所定時間は、作業者がペダル208を踏み込んでからギアポンプ124が作動するまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0sである。タイマー値が第2所定時間経過したと判断した場合(S15:YES)、CPU200は、モータ駆動ドライバ206を介して第一モータ91を駆動して、ギアポンプ124を作動させ接着剤をノズル17に供給し(S20)、その後、処理をS25に移行する。
【0070】
S20の処理後、又は、タイマー値が第2所定時間経過していないと判断した場合(S15:NO)、CPU200は、タイマー値が第3所定時間経過したか否かを判断する(S25)。第3所定時間は、作業者がペダル208を踏み込んでからバルブ55を開放するまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0sである。タイマー値が第3所定時間経過したと判断した場合(S25:YES)、CPU200は、エア駆動ドライバ204を介してバルブ開閉シリンダ49を駆動して、バルブ55を開放し(S30)、その後、処理をS35に移行する。
【0071】
S30の処理後、又は、タイマー値が第3所定時間経過していないと判断した場合(S25:NO)、CPU200は、タイマー値が第4所定時間経過したか否かを判断する(S35)。第4所定時間は、作業者がペダル208を踏み込んでから第二プーリ28を移動するまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0sである。タイマー値が第4所定時間経過したと判断した場合(S35:YES)、CPU200は、エア駆動ドライバ204を介してエアシリンダ105を駆動して、第二プーリ28を第二位置から第一位置へ移動し(S40)、その後、処理をS5に移行する。CPU200は、タイマー値が第4所定時間経過していないと判断した場合(S35:NO)、処理をS5に移行する。
【0072】
図14の処理を実行すると、CPU200は、タイマーを起動する(S101)。尚、タイマーは、他の割り込み処理において更新されている。CPU200は、タイマー値が第5所定時間経過したか否かを判断する(S105)。第5所定時間は、作業者がペダル208の操作を中止してから布送りを停止するまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0sである。タイマー値が第5所定時間経過したと判断した場合(S105:YES)、CPU200は、モータ駆動ドライバ206を介して第二モータ92、第三モータ93を停止して布送りを中止し(S110)、その後、処理をS115に移行する。
【0073】
S110の処理後、又は、タイマー値が第5所定時間経過していないと判断した場合(S105:NO)、CPU200は、タイマー値が第6所定時間経過したか否かを判断する(S115)。第6所定時間は、作業者がペダル208の操作を中止してからギアポンプ124を停止するまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0.03sである。タイマー値が第6所定時間経過したと判断した場合(S115:YES)、CPU200は、モータ駆動ドライバ206を介して第一モータ91を停止して、ギアポンプ124を停止させ(S120)、その後、処理をS125に移行する。
【0074】
S120の処理後、又は、タイマー値が第6所定時間経過していないと判断した場合(S115:NO)、CPU200は、タイマー値が第7所定時間経過したか否かを判断する(S125)。第7所定時間は、作業者がペダル208の操作を中止してからバルブ55を閉鎖するまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0.1sである。タイマー値が第7所定時間経過したと判断した場合(S125:YES)、CPU200は、エア駆動ドライバ204を介してバルブ開閉シリンダ49を駆動して、バルブ55を閉鎖し(S130)、その後、処理をS135に移行する。
【0075】
S130の処理後、又は、タイマー値が第7所定時間経過していないと判断した場合(S125:NO)、CPU200は、タイマー値が第8所定時間経過したか否かを判断する(S135)。第8所定時間は、作業者がペダル208の操作を中止してから第二プーリ28を移動するまでの時間であり、通常使用時ではタイマーの起動から0sである。タイマー値が第8所定時間経過したと判断した場合(S135:YES)、CPU200は、エア駆動ドライバ204を介してエアシリンダ105を駆動して、第二プーリ28を第一位置から第二位置へ移動し(S140)、その後、処理をS105に移行する。CPU200は、タイマー値が第8所定時間経過していないと判断した場合(S135:NO)、処理をS105に移行する。
【0076】
以上説明したように、第一実施形態における布接着装置1では、CPU200は、作業者がペダル208の操作を中止した場合に、エアシリンダ105を駆動して第二プーリ28を第一位置から第二位置へ移動する。第二プーリ28が第二位置へ移動することで、下布152とノズル17との間隔は開く。布接着装置1は、接着作業の停止時に下布152とノズル17との間を空けて、ノズル17の後方部分に付着し且つ布に接触していない接着剤(布付着前接着剤という)をノズル17の布との接触部分に移動することができる。故に、布接着装置1は、ノズル17の後方に付着する接着剤が布に付着して接着剤の溜り部を形成することを防ぐことができる。布接着装置1は、接着作業を再開したときに、布への接着剤塗布量の不均一が発生しない。
【0077】
CPU200は、作業者がペダル208を踏み込んだ場合に、エアシリンダ105を駆動して第二プーリ28を第二位置から第一位置へ移動する。第二プーリ28が第一位置へ移動することで、ベルト27とノズル17とで下布152を挟む。布接着装置1は、第二プーリ28が第二位置に移動した際にノズル17下方に移動した接着剤を布に付着して接着作業を開始することができる。
【0078】
尚、ローラ保持部20、第一ローラ22は、本発明の「第一移送手段」に相当する。下移送部37は本発明の「第二移送手段」に相当する。供給路81、82、第一モータ91、駆動ギア122、従動ギア123、ギアポンプ124は、本発明の「供給手段」に相当する。ペダル208は、本発明の「入力手段」に相当する。エアシリンダ105は、本発明の「移動手段」に相当する。S10、S110の処理を実行するCPU200は、本発明の「移送制御手段」に相当する。S20、S120の処理を実行するCPU200は、本発明の「供給制御手段」に相当する。S40、S140の処理を実行するCPU200は、本発明の「移動制御手段」に相当する。
【0079】
ストッパ107、可動部58は、本発明の「位置設定手段」に相当する。S101の処理を実行するCPU200は、本発明の「計測手段」に相当する。キー209は、本発明の「時間設定手段」に相当する。
【0080】
本発明は上記実施形態に限定するものではなく、種々の変更が可能である。本実施形態において、布接着装置1は、第二プーリ28の上下方向の移動をエアシリンダ105によって行っていた。本発明はこの方法に限らない。布接着装置1は、第二プーリ28の上下方向の移動を以下の構成で行ってもよい。
<第二実施形態>
図15〜図20を参照し、第二実施形態の布接着装置1について説明する。以下の説明では、図18の紙面左側、右側、表面側、背面側を、夫々下移送部38及び布接着装置1の前側、後側、右側、左側とする。尚、上述の第一実施形態と同様部分については、同一符号を付し説明を省略又は簡単化する。
【0081】
図15〜図17を参照し、下移送部38について説明する。下移送部38は、第一プーリ25、第二プーリ28、第三プーリ29、支持アーム160、ベルト27、ばね166を備えている。
【0082】
図15、図17に示すように、支持アーム160は、左右方向に延びる支持板部161と、支持板部161右端部から下方に延びる当接部162とを備えている。支持板部161左端部は、後方に突出する輪部171、上方に突出する輪部172、前方に突出する輪部173を備えている。支持板部161右端部は、上方に突出する輪部175、前方に突出する輪部176を備えている。当接部162上端部は、後方に突出する輪部174を備えている。輪部171〜176は、円形板状に形成してあり、中心部分に穴を備える。
【0083】
輪部171、174は、中心部分の穴に軸受を介して回転軸141を挿通している。第一プーリ25は、輪部171と輪部174との間に位置する。輪部172、175は、中心部分の穴に第二プーリ28の回転軸を挿通している。第二プーリ28は、輪部172と輪部175との間に位置する。輪部173は、中心部分の穴に第三プーリ29の回転軸を挿通している。輪部176は、中心部分の穴に軸受を介して第三プーリ29の回転軸を挿通している。第三プーリ29は、輪部173と輪部176との間に位置する。
【0084】
第三プーリ29の形状は円柱形である。図16に示すように、第三プーリ29は、軸方向両端部にフランジ291を形成している。第三プーリ29は、第二プーリ28の下方斜め前方に設けてある。第一プーリ25、第二プーリ28、第三プーリ29には、ベルト27が掛け渡してある。ベルト27は、第一プーリ25が回転することで回転する。フランジ291は、ベルト27が第三プーリ29から脱落するのを防ぐことができる。
【0085】
当接部162は、上下方向略中央部にばね166の一端部を接続可能なばね取付部165を備えている。ばね166の他端部は、支持台座が備えるフレーム40に設けたばね取付部42に接続している。ばね166は、支持アーム160を、回転軸141を中心として時計回り方向(図18において)に常に付勢する。
【0086】
第四モータ94は、ステップモータでありベルト27下方に設けてある。第四モータ94は、フレーム40に固定してある。第四モータ94は、その出力軸に偏心輪65を固定している。偏心輪65は、中心からの距離が徐々に大きくなるように形成した略円筒形状の部材である。偏心輪65は、その外周に当接部162が当接可能である。ばね166の付勢力によって、当接部162は常に偏心輪65と当接している。
【0087】
偏心輪65は、第四モータ94が回転することで回転する。偏心輪65の回転によって、当接部162は前後方向へ移動する。支持アーム160は、当接部162の移動によって回転軸141を中心として揺動する。支持アーム160の揺動によって、第二プーリ28及び第三プーリ29は上下方向に移動する。ベルト27は、第二プーリ28及び第三プーリ29とともに移動する。
【0088】
フレーム40は、第四モータ94の角度位置を検出可能な位置検出センサ43を固定している。偏心輪65は、中心からの距離が最大となる位置の外周に検出板66を設けている。位置検出センサ43は、検出板66を検出することにより第四モータ94の所定角度位置を検出可能である。
【0089】
図18、図19を参照し、接着作業時における下移送部38近傍の様子について説明する。図18は第一位置を示している。図19は第二位置を示している。第一位置では、ばね166の付勢力によって当接部162を前方に移動する。当接部162が左方に移動することで、ベルト27前方部分は上方に移動している。第一位置では、ベルト27とノズル17とで下布152を挟んでいる。
【0090】
第二位置では、第一位置から第四モータ94が反時計回り(図19において)に回転する。第四モータ94の回転によって、当接部162は後方へ移動する。支持アーム160は、当接部162の後方への移動によって回転軸141を中心に時計回り(図19において)方向に揺動する。支持アーム160の揺動によって、ベルト27前方部分は下方に移動している。
【0091】
図20を参照し、第二実施形態の布接着装置1の電気的構成について説明する。布接着装置1は、CPU200、ROM201、RAM202、記憶装置203を備えている。記憶装置203は第二プーリ28の位置に対応して第四モータ94の原点位置からの回転駆動量を記憶している。記憶装置203は、第二プーリ28の第一位置、第二位置を記憶する。第二プーリ28の第一位置は、記憶装置203に複数記憶することができる。作業者は、キー209の操作により第一位置、第二位置を設定することができる。
【0092】
キー209は、CPU200と電気的に接続している。作業者は、記憶装置203が記憶する第二プーリ28の複数の第一位置から何れか一つの第一位置に第二プーリ28を切り替える場合にキー209を操作する。キー209は、作業者が押下するごとに記憶装置203が記憶する複数の第一位置から一つを順次選択して切り替える。CPU200は、認識したキー209の押下状態に基づき、モータ駆動ドライバ216を介して第四モータ94を駆動制御して選択した第一位置に第二プーリ28を移動制御する。作業者は、接着中の布の厚さが変化した場合に、キー209を操作することで第二プーリ28の第一位置を変更する。布接着装置1は、接着中の布の厚さの変化に応じて第二プーリ28の第一位置を変更して布とノズル17との隙間を調整し、布に付着する接着剤を均一にすることができる。
【0093】
モータ駆動ドライバ216は、CPU200と電気的に接続している。モータ91〜94は、夫々モータ駆動ドライバ216と電気的に接続している。CPU200は、モータ駆動ドライバ216を介してモータ91〜94を制御する。
【0094】
位置検出センサ43は、CPU200と電気的に接続している。CPU200は、位置検出センサ43が偏心輪65に設けた検出板66の検出状態を認識する。CPU200は、位置検出センサ43が検出板66を検出することで第四モータ94を原点位置に移動制御する。CPU200は、第二プーリ28の第一位置、第二位置への第四モータ94の原点位置からの駆動量の信号をモータ駆動ドライバ216に入力する。CPU200は、モータ駆動ドライバ216に入力した信号に基づいて第四モータ94を駆動制御し、第二プーリ28を移動制御する。
【0095】
エア駆動ドライバ214は、CPU200と電気的に接続している。エア駆動ドライバ214は、エアシリンダ21、24、バルブ開閉シリンダ49と電気的に接続している。CPU200は、エア駆動ドライバ214を介して、エアシリンダ21、24、バルブ開閉シリンダ49のエア注入口に送り込む空気圧力を制御する。
【0096】
以上説明したように、第二実施形態における布接着装置1では、支持アーム160は、第四モータ94の回転によって回転する偏心輪65によって揺動する。第二プーリ28は、支持アーム160の揺動によって第一位置と第二位置との間で移動する。作業者は、第2プーリ28の第一位置、第二位置の設定を行う場合にキー209を使用する。布接着装置1は、第二プーリ28の第一位置と第二位置との間の移動、及び第一位置、第二位置の調整を第四モータ94によって容易に行うことができる。
【0097】
第三プーリ29は、軸方向両端部にフランジ291を形成している。第三プーリ29は、第二プーリ28の下方斜め前方に設けてある。第一プーリ25、第二プーリ28、第三プーリ29には、ベルト27が掛け渡してある。フランジ291は、ベルト27が第三プーリ29から脱落するのを防ぐことができる。第三プーリ29は、第二プーリ28の下方斜め前方に設けてあるので、フランジ291が布に接するのを防ぐことができる。
【0098】
尚、第二実施形態の下移送部38は本発明の「第二移送手段」に相当する。第四モータ94は、本発明の「移動手段」に相当する。キー209は、本発明の「位置設定手段」及び「切替手段」に相当する。記憶装置203は、本発明の「位置記憶手段」に相当する。支持アーム160は、本発明の「アーム部」に相当する。フランジ291は、本発明の「フランジ部」に相当する。
【0099】
本発明は上記実施形態に限定するものではなく、種々の変更が可能である。本実施形態において、布接着装置1は、第一プーリ25の回転を、台座部11内の右方に設けた第三モータ93が回転軸141とベルト142とを介して行っていた。本発明はこの方法に限らない。図21に示すように、第三モータ93は、台座部11内の左方の支持台座4に設けてある。第三モータ93は、回転軸145とベルト146とを介して、回転駆動力を第一プーリ25(図5参照)に伝達して第一プーリ25を回転する。
【0100】
回転軸145は、第一プーリ25の回転軸である。回転軸145は、台座部11内を左右方向に延びる。回転軸145右端部は、支持台座4に軸受(図示略)を介して支持してある。回転軸145は、前記軸受の左方にプーリ148を備えている。第一プーリ25は、図21において省略するがプーリ148の左方に位置する。
【0101】
第三モータ93は、回転軸にプーリ149を設けている。ベルト146は、第三モータ93のプーリ149と、回転軸145のプーリ148との間に掛け渡してある。ベルト146は、第三モータ93のプーリ149と、回転軸141のプーリ148との間に設けたプーリ147によって張力を付加してある。プーリ147は、支持台座4に回転可能に支持してある。第一プーリ25は、第三モータ93が回転することで回転する。
【0102】
上記実施形態では、時間設定手段は、第二プーリ28を第一位置から第二位置に移動させるまでの時間を設定した。本発明はこれに限らず、第二プーリ28を第二位置から第一位置に移動させるまでの時間を設定するようにしてもよい。
【0103】
上記実施形態では、キー209によって第二プーリ28を第一位置から第二位置に移動させるまでの時間、第二プーリ28の第一位置及び第二位置を設定可能であった。本発明はこれに限らず、予めROM201に記憶してあってもよい。
【0104】
上記実施形態では、作業者がキー209を操作することによって第二プーリ28の第一位置を切り替え可能であった。本発明はこれに限らず、プログラム等に応じて第二プーリ28の第一位置を切り替えてもよい。
【0105】
下移送部37、38はいずれも第一プーリ25の周囲に沿って第二プーリ28が上下動する構成であるが、これに限定しない。第二プーリ28の支持構成を第一プーリ25から独立して構成し、第二プーリ28の支持構成を上下動して第一位置と第二位置との間で切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 布接着装置
2 接着機
16 支持部
20 ローラ保持部
21、24、105 エアシリンダ
22 第一ローラ
25 第一プーリ
27 ベルト
28 第二プーリ
29 第三プーリ
37、38 下移送部
58 可動部
91 第一モータ
92 第二モータ
93 第三モータ
94 第四モータ
100 プーリ支持部
107 ストッパ
122 駆動ギア
123 従動ギア
124 ギアポンプ
151 上布
152 下布
160 支持アーム
200 CPU
201 ROM
202 RAM
203 記憶装置
208 ペダル
209 キー
291 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布に接着剤を吐き出すノズルと、
前記ノズルに対して前記布の移送方向下流側に配置し、前記布を移送する第一移送手段と、
前記布に対して前記第一移送手段が配置する側の面と反対の面側であって、前記布を挟んで前記ノズルと対向する位置に少なくとも配置し、前記布を移送する第二移送手段とを備える布接着装置において、
前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、
前記供給手段を駆動制御する供給制御手段と、
前記第一移送手段及び前記第二移送手段による前記布の移送を制御する移送制御手段と、
前記供給制御手段による前記供給手段の駆動及び前記移送制御手段による前記布の移送の開始及び停止を入力する入力手段と、
前記第二移送手段を、前記第二移送手段と前記ノズルとの間で前記布を挟む第一位置と、前記布と前記ノズルとが離隔する第二位置との間で移動させる移動手段と、
前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の停止及び前記移送制御手段による前記布の移送の停止が入力された場合、前記移動手段によって前記第二移送手段を前記第一位置から前記第二位置に移動させる移動制御手段と
を備えたことを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記移動制御手段は、
前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の開始及び前記移送制御手段による前記布の移送の開始が入力された場合、前記移動手段によって前記第二移送手段を前記第二位置から前記第一位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記第二移送手段の前記第一位置及び前記第二位置を設定する位置設定手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の布接着装置。
【請求項4】
前記位置設定手段により設定する前記第二移送手段の前記第一位置を複数記憶する位置記憶手段と、
前記第二移送手段を前記位置記憶手段が記憶する複数の前記第一位置から何れか一つの第一位置に切り替える切替手段とを備え、
前記移動制御手段は、
前記切替手段により前記第二移送手段の前記第一位置を切り替えた場合に、前記移動手段によって前記第二移送手段を前記切替手段で切り替えた前記第一位置に変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の布接着装置。
【請求項5】
前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の停止及び前記移送制御手段による前記布の移送の停止を入力してからの経過時間を計測する計測手段と、
前記入力手段によって前記供給制御手段による前記供給手段の駆動の停止及び前記移送制御手段による前記布の移送の停止を入力してから、前記移動手段が前記第二移送手段を前記第一位置から前記第二位置に移動させるまでの時間を設定する時間設定手段とを備え、
前記移動制御手段は、
前記計測手段によって計測された前記経過時間が、前記時間設定手段で設定された時間に到達したときに前記移動手段によって前記第二移送手段を前記第一位置から前記第二位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の布接着装置。
【請求項6】
前記第一移送手段は、円筒形に形成した第一ローラであり、
前記第二移送手段は、
前記布を挟んで前記第一ローラと対向する位置に配置する第一プーリと、
前記布を挟んで前記ノズルと対向する位置、又は、前記布を挟んで前記ノズルと対向する位置から少なくとも前記布の移送方向上流側の位置に配置する第二プーリと、
前記第一プーリと前記第二プーリとの間に掛架するベルトと
を備え、
前記移動手段は、前記第二プーリの位置を、前記ベルトと前記ノズルとの間で前記布を挟む前記第一位置と、前記布と前記ノズルとが離隔する前記第二位置との間で移動させることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の布接着装置。
【請求項7】
前記第二移送手段は、
前記第一プーリ及び前記第二プーリを回転可能に支持し、且つ前記第一プーリの回転軸に揺動可能に支持されるアーム部を更に備え、
前記移動手段は、モータと、前記モータの出力軸に設け且つ前記アーム部と当接する偏心輪とで構成され、
前記モータは、前記偏心輪と当接する前記アーム部を揺動し、前記第二プーリを前記第一位置と前記第二位置との間で移動させることを特徴とする請求項6に記載の布接着装置。
【請求項8】
前記第二移送手段は、
前記ベルトに掛架される第三プーリを備え、
前記第三プーリは、軸方向両端部にフランジ部を設け、且つ前記第一プーリの前記回転軸と前記第二プーリの回転軸とを結ぶ直線よりも下方に位置し、
前記フランジ部は、前記布から離隔することを特徴とする請求項6又は7に記載の布接着装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−136323(P2012−136323A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289462(P2010−289462)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】