説明

帯状ロープの巻取器

【課題】巻取りドラムがロープ繰出し方向に回転するのを防止するロック機能と帯状ロープの繰出し量の調整機能の二つの機能を有する部品点数の少ない小型の帯状ロープ巻取器を提供することである。
【解決手段】巻取りケース13内に組込まれた巻取りドラム18の一側面にディスク22を固定し、そのディスク22の外周面に形成された複数の係合歯23の周方向の一端にロック面24を形成し、他端に係合面25を設ける。ディスク22の外周囲に設けられた揺動可能なロックレバー27を切換スイッチ34の操作により係合位置に変位させ、そのロックレバー27の作用片部27bの先端部に係合歯23の係合面25が係合する作用によって巻取りドラム18が巻取り方向に回転するのを阻止して、巻取りドラム18に巻き取られた帯状ロープ11の繰出し長さの調整を可能とする。また、ロックレバー27のロック片部27aの先端部にロック面24が係合する作用により、巻取りドラム18がロープ繰出し方向に回転するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築現場等の高所で作業を行う際に使用される高所作業用安全帯の帯状ロープを巻き取る巻取器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高所で作業を行う場合、高所作業用安全帯が使用される。その高所作業用安全帯においては、胴ベルトの巻き締め状態で左腰部と対応する部位の外面側に巻取器を取付け、その巻取器から引き出された帯状ロープの先端にフックを連結し、そのフックを高所作業位置に張設された親綱や構築物等に係合して安全性を確保するようにしている。
【0003】
帯状ロープを巻き取る巻取器として、特許文献1に記載されているように、作業者が万一足を踏み外して落下し、帯状ロープが急速に引き出された際、その帯状ロープを巻き取る巻取りドラムをロックし、帯状ロープが繰り出されるのを防止して、作業者の落下距離を最小限に抑え、帯状ロープによって墜落が阻止される作業者に大きな衝撃力が負荷されることのないようにしたロック機構付きのものが知られている。
【0004】
ここで、巻取器の巻取りドラムから繰り出された帯状ロープが巻取りドラムの巻取り方向の回転によって常に緊張する状態にあると、作業位置の変更の際に抵抗を与えることになり、作業位置をスムーズに変更することができなくなる。そこで、特許文献2に記載された巻取器においては、巻取りドラムの一側面にラチェットホイールを固定し、そのラチェットホイールの外周に形成された係合歯に対するラチェットの係合により、帯状ロープの繰出し量を調整し得るようにしている。
【0005】
また、巻取器として、安全性および良好な作業性を確保するため、上記特許文献1に記載されたロック機能と、特許文献2に記載された帯状ロープの繰出し量の調整機能の二つの機能を設けたものも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−305109号公報
【特許文献2】特開2009−112514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ロック機能と帯状ロープの繰出し量の調整機能の二つの機能を有する従来の巻取器においては、巻取りドラムの軸方向一側にロック機構を設け、他側に繰出し量調整機構を設けるようにしているため、部品点数が多く、巻取器が大型化するという問題があった。
【0008】
また、繰出し量調整機構には大きな負荷を受けることがないために強度が要求されず、巻取器の軽量化の面から、ラチェットおよびラッチェトホイールのそれぞれを合成樹脂の成形品としているが、巻取器の内部に砂等の異物が侵入した際、その異物が研摩材の役目を果たして、ラチェットやラチェットホイールが摩耗し易くなり、耐久性に問題があった。
【0009】
この発明の課題は、巻取りドラムがロープ繰出し方向に回転するのを防止するロック機能と帯状ロープの繰出し量を調整する繰出し量の調整機能の二つの機能を有する部品点数の少ない小型の帯状ロープ巻取器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、第1の発明においては、巻取りケースの内部に帯状ロープを巻き取る回転可能な巻取りドラムを組込み、その巻取りドラムをゼンマイばねにより巻取り方向に付勢し、前記巻取りドラムの一側面に複数の係合歯を外周に有する金属製のディスクを固定し、そのディスクの周囲に、ロック片部およびそのロック片部の一端部に作用片部が連設された金属製のロックレバーを配置して、ロック片部と作用片部の連設部を回転自在に支持し、そのロックレバーを弾性部材により作用片部の先端がディスクの外周に接触する方向に向けて付勢し、前記巻取りドラムがロープ繰出し方向に急速に回転して、前記係合歯が前記作用片部のディスクと対向する内側面を蹴り上げる作用によりロックレバーを揺動させ、ロック片部の先端部に対する係合歯の係合により巻取りドラムが帯状ロープの繰出し方向に回転するのを防止するようにした帯状ロープの巻取器において、前記係合歯のロック片部の先端部が係合可能なロック面に対する反対側の端部に前記作用片部の先端部が係合可能な係合面を設け、その係合面の回転軌跡の範囲内に作用片部の先端部が臨む係合位置と、前記回転軌跡から径方向外方に作用片部の先端部が退避する係合解除位置にロックレバーを切り換えて変位させる切換スイッチを設けた構成を採用したのである。
【0011】
上記の構成からなる帯状ロープの巻取器において、切換スイッチの操作により、ロックレバーを係合位置に変位させた状態で帯状ロープを引き出すと、巻取りドラムが帯状ロープを繰り出す方向に回転する。このとき、ディスクの係合歯がロックレバーの作用片部を押圧し、その押圧によりロックレバーが係合解除位置に向けて揺動すると共に、上記係合歯が作用片部の先端を通過すると、ロックレバーが係合位置に向けて揺動し、係合歯が作用片部の先端を通過するたびに、ロックレバーは揺動を繰り返す。
【0012】
ここで、ロックレバーが係合解除位置に向けて揺動するとき、ロックレバーはロック片部の先端がディスクの外周面に近づく方向に向けて揺動するが、ロック片部の先端は係合歯の回転軌跡内に入り込むようなことはないようにされているため、巻取りドラムは回転を阻害されることなくロープ繰出し方向に回転する。そして、帯状ロープの引き出しを停止すると、係合歯の係合面が作用片部の先端部に係合し、巻取りドラムは帯状ロープを繰り出した位置で停止保持される。
【0013】
このように、ロックレバーを、その作用片部の先端部が係合歯の係合面の回転軌跡の範囲内に臨む係合位置に変位させることによって、巻取りドラムのロープ繰出し方向への回転を自由とし、ロープ巻取り方向への回転を阻止することができるため、帯状ロープの繰出し量を調整することができる。
【0014】
ここで、帯状ロープの先端に安全フックを予め取付けておき、その安全フックを高所作業位置に張設された親綱や構築物に係合して高所で作業をしている際に、作業者が誤って落下し、帯状ロープが急速に引き出されると、その帯状ロープの引き出しにより巻取りドラムがロープ繰出し方向に向けて高速回転し始める。
【0015】
このとき、巻取りドラムの回転初期の段階でディスクの係合歯が作用片部の内側面を打撃するため、ロックレバーが急激に揺動して、その慣性力によりロック片部の先端部が係合歯のロック面と周方向で対向する位置まで揺動し、そのロック片部の先端部に対する係合歯のロック面の係合によって巻取りドラムがロックされ、巻取りドラムはロープ繰出し方向に回転するのが防止される。
【0016】
このように、帯状ロープが急速に引き出されると、巻取りドラムがロックされて帯状ロープの繰り出しが阻止されるため、作業者の落下距離は最小限に抑えられることになり、帯状ロープによって墜落が阻止される作業者に大きな衝撃力が負荷されることはない。
【0017】
上記の課題を解決するため、第2の発明においては、第1の発明に係る巻取器における係合歯の外周にロック面側の一端から係合面側の他端に向けてドラム中心までの半径が次第に小さくなる弧状面を形成し、その弧状面の回転軌跡の範囲内に作用片部の先端が臨む位置をロックレバーの係合解除位置とした構成を採用したのである。
【0018】
上記第2の発明のように、係合歯の外周に弧状面を形成し、その弧状面の回転軌跡の範囲内に作用片部の先端が臨む位置をロックレバーの係合解除位置とすることにより、帯状ロープが高速度で引き出されて巻取りドラムがロープ繰出し方向に向けて高速回転し始めると、ディスクの係合歯が作用片部の内側面を打撃し、その打撃によりロックレバーが急激に揺動して、その慣性力によりロック片部の先端部が係合歯のロック面と周方向で対向する位置まで揺動し、そのロック片部の先端部に対する係合歯のロック面の係合によって巻取りドラムがロックされ、巻取りドラムはロープ繰出し方向に回転するのが防止される。
【0019】
このように、帯状ロープが急速に引き出されると、巻取りドラムはその回転初期の段階でロックされて帯状ロープの繰り出しが阻止されるため、ロックレバーを係合解除位置に変位させる状態においても、作業者の落下距離は最小限に抑えられることができる。
【0020】
ここで、第1の発明に係る巻取器および第2の発明に係る巻取器のいずれの巻取器においても、切換スイッチは、ロックレバーの揺動中心軸を中心にして揺動自在とし、その操作片部を巻取りケースの周壁に形成されたスイッチ挿入孔から外部に臨む支持とすることができる。この場合、操作片部の一方の揺動操作面にロックレバーを係合位置に変位させた位置でスイッチ挿入孔の内周一辺に係合する第1係合段部と、ロックレバーを係合解除位置に変位させた位置でスイッチ挿入孔の内周一辺に係合する第2係合段部を設けて切換スイッチを切換え位置で保持できるようにする。
【0021】
また、ロックレバーのロック片部に巻取りドラムの軸方向に延びる連結バーを設け、その連結バーの端部に切換スイッチと軸方向で対向する連動プレートを設け、その連動プレートにロックレバーの揺動中心軸が挿入されるピン孔を形成し、そのピン孔の内周に切欠部を形成し、切換スイッチには上記切欠部に挿入される突片を設けて、切換スイッチの揺動によりロックレバーが揺動するようにしておく。
【発明の効果】
【0022】
上記のように、第1の発明においては、ディスクの外周に設けられた係合歯のロック片部の先端部が係合可能なロック面に対する反対側の端部に作用片部の先端部が係合可能な係合面を設け、その係合面の回転軌跡の範囲内に作用片部の先端部が臨む係合位置と、前記回転軌跡から径方向外方に作用片部の先端部が退避する係合解除位置とにロックレバーを切り換えて変位させる切換スイッチを設けたことによって、その切換スイッチの操作によりロックレバーを係合位置に変位させることによって、作用片部の先端部に対する係合面の係合により巻取りドラムがロープ巻取り方向に回転するのを阻止することができ、反対に、ロープ繰出し方向に自由に回転させることができることでき、帯状ロープの繰出し量を調整することができる。
【0023】
また、帯状ロープの急速な引き出しによって巻取りドラムがロープ繰出し方向に高速で回転しようとすると、係合歯が作用片部の内側面を打撃し、その打撃によりロックレバーが係合解除位置に向けて大きく揺動して、ロック片部の先端部が係合歯の回転軌跡の範囲内に臨み、そのロック片部の先端部に対するロック面の係合により巻取りドラムがロープ繰出し方向に回転するのを防止することができる。このため、作業者の落下距離を最小限に抑えることができる。
【0024】
第2の発明においては、係合歯の外周に弧状面を形成し、その弧状面の回転軌跡の範囲内に作用片部の先端が臨む位置をロックレバーの係合解除位置としたことにより、ロックレバーを係合解除位置に変位させる状態においても、作業者の落下距離を最小限に抑えられることができる。
【0025】
第1の発明および第2の発明のいずれの発明も、巻取りドラムの一側面に固定されたディスクと、そのディスクの周囲に設けられたロックレバーとで帯状ロープの繰出し量の調整と巻取りドラムのロックとを行なうことができるため、部品点数の少ない簡単な構成の小型の巻取器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係る帯状ロープの巻取器を採用した高所作業用安全帯の正面図
【図2】この発明に係る帯状ロープの巻取器の縦断正面図
【図3】図2の一部切欠左側面図
【図4】図2に示すロックレバーの支持部の背面図
【図5】ドラム支持枠、巻取りドラム、ロックレバーおよび切換スイッチのそれぞれを示す分解斜視図
【図6(a)】作動状態を示す説明図
【図6(b)】作動状態を示す説明図
【図6(c)】作動状態を示す説明図
【図7】巻取器の他の例を示す断面図
【図8】図7に示すロックレバーを係合解除位置に変位させた状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、高所作業用安全帯1は、胴ベルト2を有し、その胴ベルト2の一端部にはバックル3が取付けられている。また、胴ベルト2には、作業者の腰部に対する巻き締め状態で左腰部と対向する位置にこの発明に係る巻取器10が取付けられ、その巻取器10から引き出された帯状ロープ11の先端部には安全フック12が連結されている。
【0028】
ここで、帯状ロープ11は、芯材にアラミド繊維等の高強度繊維を用いた構成とされて、極めて大きな引張り強度を有している。
【0029】
図2および図3に示すように、巻取器10は内部中空の巻取りケース13を有している。巻取りケース13は、軸方向に2分割され、その分割ケースはねじの締め付けにより結合一体化されている。
【0030】
巻取りケース13の内部空間は、ドラム収納空間14とされ、そのドラム収納空間14内にドラム支持枠15が組込まれている。図2、図3および図5に示すように、ドラム支持枠15は、巻取りケース13の平坦な上面壁の下面に衝合される板体16の両側に対向一対の側板17を設けたコの字形をなしており、巻取りケース13内への組込みによって固定の状態とされる。
【0031】
ドラム支持枠15の対向一対の側板17間には軸方向の両端にフランジ18aを有し、そのフランジ18a間で帯状ロープ11を巻き取る巻取りドラム18が組込まれている。巻取りドラム18は、対向一対の側板17により両端部が支持されたドラム軸19を中心にして回転自在とされ、その内部に組込まれたゼンマイばね20によってロープ巻取り方向への回転力が付与されている。
【0032】
巻取りドラム18に巻き取られた帯状ロープ11は、巻取りケース13の周壁に形成されたロープ引出し口21から外部に引き出されている。
【0033】
巻取りドラム18の軸方向の一側面には金属製のディスク22が固定されている。ディスク22の外周には複数の係合歯23が等間隔に形成され、その複数の係合歯23のそれぞれには、周方向の一端部にロック面24が設けられ、周方向の他端部に係合面25が形成されている。また、係合歯23の外周は、ロック面24側の一端から係合面25側の他端に向けてドラム中心までの半径が次第に小さくなる弧状面26とされている。
【0034】
ディスク22の外周囲には金属製のロックレバー27が設けられている。ロックレバー27は、ロック片部27aの一端部に作用片部27bが連設されてくの字形状をなし、そのロック片部27aと作用片部27bの連設部が対向一対の側板17により両端部が支持されたピン28で支持され、そのピン28を中心にして揺動自在とされている。
【0035】
ロックレバー27は、図6(a)の鎖線で示すように、係合歯23の回転軌跡xに作用片部27bの先端が位置する状態でロック片部27aの先端が上記回転軌跡xより半径方向外方に位置し、上記作用片部27bの先端が回転軌跡xより径方向外方に大きく変位される状態で、ロック片部27aの先端が回転軌跡x内に臨むようになっている。
【0036】
図2、図3および図5に示すように、ロックレバー27のロック片部27aの外側面には連結バー29の一端部が一体化されている。連結バー29は巻取りドラム18の外周囲を軸方向に延び、その他端部には折曲げによって連動プレート30が設けられている。
【0037】
連動プレート30は、ピン28が挿通されるピン孔31を有し、そのピン孔31の内周に切欠部32が形成されている。
【0038】
ロックレバー27の揺動中心となる上記のピン28には、ロックレバー27と連動プレート30間に弾性部材としてのキックばね33が支持されている。キックばね33は、ロックレバー27の作用片部27bの先端がディスク22の外周に接触する方向に向けてロックレバー27を付勢している。
【0039】
また、ピン28には切換スイッチ34が支持されている。切換スイッチ34は、ピン28に嵌合可能なボス部34aの外周に周方向に延びる弾性片34bを設け、その弾性片34bの上面に操作片部34cを設けた構成とされ、上記ボス部34aがピン28に嵌合され、操作片部34cが巻取りケース13の周壁に形成されたスイッチ挿入孔35に挿通されて端部が外部に位置する組付けとされ、上記ピン28を中心に揺動自在とされている。
【0040】
切換スイッチ34には、操作片部34cの一方の揺動操作面にスイッチ挿入孔35の内周一辺に対して係合可能な第1係合段部36および第2係合段部37が階段状の配置でもって形成されている。
【0041】
また、切換スイッチ34には、ボス部34aの前記連動プレート30と対向する端面に突片38が設けられている。突片38は連動プレート30に形成された切欠部32内に挿入されており、切換スイッチ34を揺動させると、突片38が切欠部32の周方向で対向する端面を押圧し、その押圧によってロックレバー27が揺動するようになっている。
【0042】
また、切換スイッチ34を、第1係合段部36がスイッチ挿入孔35の内周一辺に係合する位置まで揺動させると、作用片部27bの先端部が図6(a)に示す係合歯23の回転軌跡x内に位置する係合位置にロックレバー27が変位され、一方、第2係合段部37がスイッチ挿入孔35の内周一辺に係合する位置まで揺動させると、作用片部27bの先端部が回転軌跡xから径方向外方に退避する係合解除位置にロックレバー27が変位されるようになっており、上記ロックレバー27の係合位置で、突片38と切欠部32の一方の端面間に、図4に示すように、ロックレバー27が係合解除位置に向けて揺動可能とする回転方向の遊びが設けられている。δはその回転方向の遊び量を示す。
【0043】
図2に示すように、連結バー29には押圧片29aが設けられ、その押圧片29aは、巻取りケース13の周壁に形成されて弾性変形可能な柔軟なキャップ39により閉塞された窓40内に配置され、上記キャップ39を介して押圧片29aを押圧すると、係合位置に変位されたロックレバー27が係合解除位置に向けて揺動するようになっている。
【0044】
実施の形態で示す高所作業用安全帯1は上記の構造からなり、高所での作業に際しては、胴ベルト2を腰部に巻付け、巻取器10から帯状ロープ11を引き出し、その帯状ロープ11の先端の安全フック12を高所に張設された親綱や構築物等に係合して、安全性を確保する。
【0045】
帯状ロープ11の引き出しに際しては、図6(a)に示すように、第1係合段部36がスイッチ挿入孔35の内周一辺と係合する位置まで切換スイッチ34を揺動させるようにする。
【0046】
上記のように、切換スイッチ34を第1係合段部36がスイッチ挿入孔35の内周一辺と係合する位置まで揺動させると、突片38が切欠部32の周方向で対向する一端を押圧する。その押圧によりロックレバー27が係合位置に向けて揺動して、図6(a)に示すように、ロックレバー27は、作用片部27bの先端部が係合歯23の回転軌跡x内に配置される係合位置に変位される。
【0047】
ロックレバー27を係合位置に変位させた状態で帯状ロープ11を引き出すと、巻取りドラム18が図2の矢印で示すロープ繰り出し方向に回転する。このとき、ディスク22の外周に設けられた係合歯23がロックレバー27の作用片部27bの内側面を押圧し、その押圧によりロックレバー27が係合解除位置に向けて揺動すると共に、上記係合歯23が作用片部27bの先端を通過すると、キックばね33の押圧によりロックレバー27が係合位置に向けて揺動し、係合歯23が作用片部27bの先端を通過するたびに、ロックレバー27は揺動を繰り返す。
【0048】
ここで、ロックレバー27が係合解除位置に向けて揺動するとき、ロックレバー27はロック片部27aの先端がディスク22の外周面に近づく方向に向けて揺動するが、ロック片部27aの先端は係合歯23の回転軌跡x内に入り込むようなことはないようにされているため、巻取りドラム18は回転を阻害されることなくロープ繰出し方向に回転する。
【0049】
帯状ロープ11の引き出しを停止すると、ゼンマイばね20の弾性により巻取りドラム18がロープ巻取り方向に回転する。このとき、ロックレバー27は、作用片部27bの先端部が係合歯23の回転軌跡x内に配置される係合位置に変位されているため、図6(a)に示すように、係合歯23の係合面25が作用片部27bの先端部に係合し、巻取りドラム18は帯状ロープ11を繰出した位置で停止保持される。
【0050】
このように、ロックレバー27を係合位置に変位させることによって巻取りドラム18のロープ繰出し方向への回転を自由とし、ロープ巻取り方向への回転を阻止することができるため、帯状ロープ11の繰出し量を調整することができる。
【0051】
帯状ロープ11の先端の安全フック12を高所作業位置に張設された親綱や構築物に係合して高所で作業をする場合は、切換スイッチ34を、第1係合段部36がスイッチ挿入孔35の内周一辺に係合する状態として、ロックレバー27を係合位置に変位させた状態としておく。その作業状態において、作業者が誤って落下し、帯状ロープ11が急速に引き出されると、その帯状ロープ11の引き出しにより巻取りドラム18が高速回転しようとする。
【0052】
このとき、ディスク22の係合歯23が作用片部27bの内側面を打撃するため、ロックレバー27が急激に揺動し、その慣性力によりロック片部27aの先端部が係合歯23と周方向で対向する位置まで揺動し、そのロック片部27aの先端部に、図6(b)に示すように、係合歯23のロック面24が係合する。その係合によって巻取りドラム18がロックされ、巻き取りドラム18はロープ繰出し方向に回転するのが防止される。
【0053】
このように、帯状ロープ11が急速に引き出されると、巻取りドラム18がロックされて帯状ロープ11の繰り出しが阻止されるため、作業者の落下距離は最小限に抑えられることになり、帯状ロープ11によって墜落が阻止される作業者に大きな衝撃力が負荷されることはない。
【0054】
図6(a)に示す帯状ロープ11の繰出し量調整状態において、切換スイッチ34を、第2係合段部37がスイッチ挿入孔35の内周一辺に係合する方向に向けて揺動させると、突片38が切欠部32の他端を押圧し、その押圧によりロックレバー27が係合解除位置に向けて揺動するため、図6(c)に示すように、作用片部27bの先端部に対する係合面25の係合を解除させることができる。その係合解除により、ゼンマイばね20の弾性力により、巻取りドラム18がロープ巻取り方向に回転し、帯状ロープ11が巻取りドラム18により巻き取られることになる。
【0055】
なお、繰り出された帯状ロープ11の巻き取りに際しては、窓40に臨む押圧片29aを押し込んで、ロックレバー27を係合解除位置に向けて揺動させるようにしてもよい。
【0056】
以上のように、巻取りドラム18の一側面に固定されたディスク22と、そのディスク22の周囲に設けられ、切換スイッチ34の操作によって係合位置と係合解除位置との変位されるロックレバー27とで、帯状ロープ11の繰出し量の調整と巻取りドラム18のロックとを行なうことができるため、部品点数の少ない簡単な構成の小型の巻取器を得ることができる。
【0057】
図7および図8は、巻取器10の他の例を示す。この例においては、係合歯23の外周に形成された弧状面26の回転軌跡の範囲内に作用片部27bの先端部が臨む位置をロックレバー27の係合解除位置としており、そのロックレバー27の係合位置は、図2に示す巻取器10と同様に、作用片部27bの先端部が係合面25の回転軌跡xの範囲内に配置される位置としている。他の構成は、図2に示す場合と同一であるため、同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
ここで、弧状面26の回転軌跡の範囲とは、図7に示すように、ドラム軸19の軸心を中心にして係合面25の先端を通る円yとドラム軸19の軸心を中心にしてロック面24の先端を通る円z間の範囲をいう。
【0059】
上記のように、弧状面26の回転軌跡の範囲内に作用片部27bの先端部が臨む位置をロックレバー27の係合解除位置とすることにより、図8に示すように、そのロックレバー27を係合解除位置に変位させた状態で図2に示す帯状ロープ11が高速度で引き出され、巻取りドラム18がロープ繰出し方向(図8の矢印で示す方向)に向けて高速回転し始めると、ディスク22の係合歯23が作用片部27bの内側面を打撃する。その打撃によりロックレバー27が急激に揺動し、その慣性力によりロック片部27aの先端部が、図8の鎖線イで示すように、係合歯23のロック面24と周方向で対向する位置まで揺動し、そのロック片部27aの先端部に対する係合歯23のロック面24の係合によって巻取りドラム18がロックされ、巻取りドラム18はロープ繰出し方向に回転するのが防止される。
【0060】
このように、帯状ロープ11が急速に引き出されると、巻取りドラム18はその回転初期の段階でロックされて帯状ロープ11の繰り出しが阻止されるため、ロックレバー27を係合解除位置に変位させる状態においても、作業者の落下距離は最小限に抑えられることができる。
【符号の説明】
【0061】
11 帯状ロープ
13 巻取りケース
18 巻取りドラム
20 ゼンマイばね
22 ディスク
23 係合歯
24 ロック面
25 係合面
26 弧状面
27 ロックレバー
27a ロック片部
27b 作用片部
29 連結バー
30 連動プレート
31 ピン孔
32 切欠部
33 キックばね(弾性部材)
34 切換スイッチ
34c 操作片部
35 スイッチ挿入孔
36 第1係合段部
37 第2係合段部
38 突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取りケースの内部に帯状ロープを巻き取る回転可能な巻取りドラムを組込み、その巻取りドラムをゼンマイばねにより巻取り方向に付勢し、前記巻取りドラムの一側面に複数の係合歯を外周に有する金属製のディスクを固定し、そのディスクの周囲に、ロック片部およびそのロック片部の一端部に作用片部が連設された金属製のロックレバーを配置して、ロック片部と作用片部の連設部を回転自在に支持し、そのロックレバーを弾性部材により作用片部の先端がディスクの外周に接触する方向に向けて付勢し、前記巻取りドラムがロープ繰出し方向に急速に回転して、前記係合歯が前記作用片部のディスクと対向する内側面を蹴り上げる作用によりロックレバーを揺動させ、ロック片部の先端部に対する係合歯の係合により巻取りドラムが帯状ロープの繰出し方向に回転するのを防止するようにした帯状ロープの巻取器において、
前記係合歯のロック片部の先端部が係合可能なロック面に対する反対側の端部に前記作用片部の先端部が係合可能な係合面を設け、その係合面の回転軌跡の範囲内に作用片部の先端部が臨む係合位置と、前記回転軌跡から径方向外方に作用片部の先端部が退避する係合解除位置にロックレバーを切り換えて変位させる切換スイッチを設けたことを特徴とする帯状ロープの巻取器。
【請求項2】
巻取りケースの内部に帯状ロープを巻き取る回転可能な巻取りドラムを組込み、その巻取りドラムをゼンマイばねにより巻取り方向に付勢し、前記巻取りドラムの一側面に複数の係合歯を外周に有する金属製のディスクを固定し、そのディスクの周囲に、ロック片部およびそのロック片部の一端部に作用片部が連設された金属製のロックレバーを配置して、ロック片部と作用片部の連設部を回転自在に支持し、そのロックレバーを弾性部材により作用片部の先端がディスクの外周に接触する方向に向けて付勢し、前記巻取りドラムがロープ繰出し方向に急速に回転して、前記係合歯が前記作用片部のディスクと対向する内側面を蹴り上げる作用によりロックレバーを揺動させ、ロック片部の先端部に対する係合歯の係合により巻取りドラムが帯状ロープの繰出し方向に回転するのを防止するようにした帯状ロープの巻取器において、
前記係合歯のロック片部の先端部が係合可能なロック面に対する反対側の端部に前記作用片部の先端部が係合可能な係合面を設け、前記係合歯の外周にロック面側の一端から係合面側の他端に向けてドラム中心までの半径が次第に小さくなる弧状面を形成し、前記係合面の回転軌跡の範囲内に作用片部の先端部が臨む係合位置と、作用片部の先端がその係合位置から径方向外方に変位して前記弧状面の回転軌跡の範囲内に位置する係合解除位置にロックレバーを切り換えて変位させる切換スイッチを設けたことを特徴とする帯状ロープの巻取器。
【請求項3】
前記切換スイッチを前記ロックレバーの揺動中心軸を中心に揺動自在に支持して、その操作片部を巻取りケースの周壁に形成されたスイッチ挿入孔から外部に位置させ、前記操作片部の一方の揺動操作面に前記ロックレバーを係合位置に変位させた位置で前記スイッチ挿入孔の内周一辺に係合する第1係合段部と、ロックレバーを係合解除位置に変位させた位置でスイッチ挿入孔の内周一辺に係合する第2係合段部を設け、前記ロックレバーのロック片部には巻取りドラムの軸方向に延びる連結バーを設け、その連結バーの端部に切換スイッチと軸方向で対向する連動プレートを設け、その連動プレートにロックレバーの揺動中心軸が挿入されるピン孔を形成し、そのピン孔の内周に切欠部を形成し、前記切換スイッチには前記切欠部に挿入されて、切換スイッチの揺動運動をロックレバーに伝動する突片を設けた請求項1又は2に記載の帯状ロープの巻取器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7】
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【図8】
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