説明

平型電線、平型電線の製造方法、平型絶縁電線および平型絶縁電線の製造方法

【課題】末端の絶縁被覆を除去しても複数の集合撚り線がばらけない平型絶縁電線を提供する。
【解決手段】平行に且つ密接して一列に並べられた7本の集合撚り線(1a)と、7本の集合撚り線(1a)の外周に施された編組導体(1b)と、その外周に設けられた絶縁被覆(1d)とを具備してなる平型絶縁電線(1)。
【効果】末端の絶縁被覆(1d)を剥がしても、編組導体(1c)があるため、末端の複数本の集合撚り線(1c)がばらけず、コネクタを容易に接続できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型電線、平型電線の製造方法、平型絶縁電線および平型絶縁電線の製造方法に関し、更に詳しくは、絶縁被覆を形成し易い平型電線、その平型電線の製造方法、末端の絶縁被覆を除去しても複数の集合撚り線がばらけない平型絶縁電線およびその平型絶縁電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平行に且つ密接して一列に並べられた複数本の集合撚り線と、それら複数本の集合撚り線の外周に施された絶縁被覆とを具備してなる平型絶縁電線が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−166415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の平型絶縁電線では、第1に、例えばコネクタを接続するために末端の絶縁被覆を剥がすと、末端の複数本の集合撚り線がばらけてしまい、コネクタを接続するのに手間が掛かる問題点がある。第2に、樹脂押出被覆により絶縁被覆を形成するとき、複数本の集合撚り線を平行に且つ密接して一列に並べて被覆機へ供線する必要があり、絶縁被覆を形成しにくい問題点がある。
そこで、本発明の目的は、絶縁被覆を形成し易い平型電線、その平型電線の製造方法、末端の絶縁被覆を除去しても複数の集合撚り線がばらけない平型絶縁電線およびその平型絶縁電線の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、平行に且つ密接して一列に並べられた複数本の集合撚り線(1a)と、前記複数本の集合撚り線(1a)の外周に施された編組導体(1b)とを具備してなることを特徴とする平型電線(1c)を提供する。
上記第1の観点による平型電線(1c)では、複数本の集合撚り線(1a)の外周に編組導体(1b)が施されているため、1本の電線として被覆機に供線すればよい。従って、絶縁被覆を形成し易い。
【0006】
第2の観点では、本発明は、複数本の集合撚り線(1a)を平行に且つ密接して一列に並べ、その形状を維持しながら外周に編組導体(1b)を施すことを特徴とする平型電線の製造方法を提供する。
筒状の編組線の中に複数本の集合撚り線を挿通してから平坦に圧縮する製造方法が考えられるが、挿通する工程や圧縮する工程が煩雑になる。
上記第2の観点による平型電線の製造方法では、複数本の集合撚り線(1a)を平行に且つ密接して一列に並べ、その外周に編組導体(1b)を形成してゆくので、製造が容易になり、例えば800m程度の長尺の平型電線を製造可能となる。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点による平型電線の製造方法において、前記集合撚り線(1a)の外径を短径とし且つ前記集合撚り線(1a)の外径×前記集合撚り線(1a)の本数を長径とした長円形の通路断面を有する平型ガイドダイス(A)を通して、前記複数本の集合撚り線(1a)を平行に且つ密接して一列に並べることを特徴とする平型電線の製造方法を提供する。
上記第3の観点による平型電線の製造方法では、平型ガイドダイス(A)を通すことにより、複数本の集合撚り線(1a)を平行に且つ密接して一列に並べた形状にすることが出来る。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第1の観点による平型電線(1c)の外周に絶縁被覆(1d)を設けたことを特徴とする平型絶縁電線(1)を提供する。
上記第4の観点による平型絶縁電線(1)では、複数本の集合撚り線(1a)の外周に編組導体(1b)が施されているため、末端の絶縁被覆を剥がしても、末端の複数本の集合撚り線がばらけない。従って、例えばコネクタを容易に接続することが出来る。
【0009】
第5の観点では、本発明は、前記第1の観点による平型電線(1c)を、前記平型電線(1c)の短径を短径とし且つ前記平型電線(1c)の長径を長径とした長円形の通路断面を有し且つ前記編組導体(1b)の編組ピッチ×2以上の長さを持つ平型成型ダイス(D)を通して、被覆機(E)へ供線することを特徴とする平型電線の製造方法を提供する。
上記第5の観点による平型電線の製造方法では、平型成型ガイドダイス(D)を通すことにより、編組導体(1b)の応力によって平型電線(1c)が湾曲するのを矯正し、平型形状を維持した状態で被覆機(E)に供線することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の平型電線(1c)によれば、1本の電線として被覆機に供線すればよいので、絶縁被覆を形成し易い。
本発明の平型電線の製造方法によれば、例えば800m程度の長尺の平型電線を製造可能になる。
本発明の平型絶縁電線(1)によれば、末端の絶縁被覆を剥がしても末端の複数本の集合撚り線がばらけないので、例えばコネクタを容易に接続することが出来る。
本発明の平型絶縁電線の製造方法によれば、平型電線(1c)を湾曲させないで被覆機(D)に供線することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1に係る平型電線を示す断面図である。
【図2】実施例1に係る平型電線製造装置を示す構成説明図である。
【図3】実施例2に係る平型絶縁電線を示す断面図である。
【図4】実施例2に係る平型絶縁電線製造装置を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る平型電線1cを示す断面図である。
この平型電線1cは、平行に且つ密接して一列に並べられた7本の集合撚り線1aと、7本の集合撚り線1aの外周に施された編組導体1bとを具備してなる。
【0014】
集合撚り線1aは、外径0.2mmの軟銅素線を75本撚り合せたもので、仕上り外径約2mmである。なお、軟銅素線の他、銅線、アルミ線、めっき線、エナメル銅線などを用いてもよい。
【0015】
編組導体1bは、線径0.2mmの軟銅線9本を24打ちしたものであり、ピッチ50mmであり、厚さは0.4mmである。なお、軟銅素線の他、銅線、アルミ線、めっき線、エナメル銅線などを用いてもよい。
【0016】
図2は、平型電線製造装置100を示す構成説明図である。
平型電線製造装置100は、平型ガイドダイスAと、編組機Bと、巻取機Cとを具備してなる。
【0017】
平型ガイドダイスAは、集合撚り線1aの外径(例えば2mm)を短径(例えば2mm)とし且つ集合撚り線1aの外径(例えば2mm)×集合撚り線1aの本数(例えば7本)を長径(例えば14mm)とした長円形の通路断面を有する。なお、平型ガイドダイスAの材質は、金属でもプラスチックでもよい。
この平型ガイドダイスAを通すことにより、複数本の集合撚り線1aが平行に且つ密接して一列に並べられる。
【0018】
編組機Bは、複数本(例えば9本)の素線を巻いた素線ボビンを複数個(例えば24個)装着した回転盤を有するものであり、平行に且つ密接して一列に並べられ複数本の集合撚り線1aが回転盤の中心孔を通ると、その外周に編組導体1bが施される。
【0019】
巻取機Cは、平型形状を維持するように平型電線1cを巻き取る。
【0020】
実施例1の平型電線1cによれば、複数本の集合撚り線1aの外周に編組導体1bが施されているため、1本の電線として被覆機(実施例2で説明するE)に供線すれば絶縁被覆(実施例2で説明する1d)を形成できるので、絶縁被覆をし易い。
【0021】
また、実施例1の平型電線製造装置100によれば、複数本の集合撚り線1aを平行に且つ密接して一列に並べた形状の外周に編組導体1bを施すので、例えば800m程度の長尺の平型電線を製造可能になる。
【0022】
−実施例2−
図3は、実施例2に係る平型絶縁電線1を示す断面図である。
この平型絶縁電線1は、平行に且つ密接して一列に並べられた7本の集合撚り線1aと、7本の集合撚り線1aの外周に施された編組導体1bと、その外周に設けられた絶縁被覆1dとを具備してなる。
【0023】
絶縁被覆1dは、PVCであり、厚さは1mmである。
【0024】
図4は、平型絶縁電線製造装置200を示す構成説明図である。
平型絶縁電線製造装置200は、平型成型ダイスDと、被覆機Eと、巻取機Fとを具備してなる。
【0025】
平型成型ダイスDは、平型電線1cの短径(例えば2.8mm)を短径とし且つ平型電線1cの長径(例えば14.8mm)を長径とした長円形の通路断面を有し、編組導体1bの編組ピッチ×2以上の長さ(例えば100mm)を持っている。なお、平型成型ダイスDの材質は、金属でもプラスチックでもよい。
この平型成型ダイスDを通すことにより、平型電線1cが湾曲せず、平型形状を維持するようになる。
【0026】
被覆機Eは、クロスヘッドダイから樹脂を押し出して平型電線1cに被せ、絶縁被覆1dを形成する。
【0027】
巻取機Fは、平型形状を維持するように平型絶縁電線1を巻き取る。
【0028】
実施例2の平型絶縁電線1によれば、末端の絶縁被覆1dを剥がしても、編組導体1cがあるため、末端の複数本の集合撚り線1cがばらけず、例えばコネクタを容易に接続することが出来る。
【0029】
また、実施例2の平型絶縁電線製造装置200によれば、編組導体1bの応力によって平型電線1cが湾曲しようとするのを平型成型ガイドダイスDで矯正し、平型形状を維持した状態で被覆機Eに供線することが出来る。
【0030】
−参考例−
実施例1の平型電線1cと同一線積率の平型電線を編組導体1bのみで造る場合を考える。
省いた集合撚り線1aの断面積分を補償するように素線径を太くすればよいが、素線径を太くすると、編組機の素線ボビンが小型であるため、素線ボビンに巻ける素線の長さが短くなってしまう。この結果、平型電線を長尺で造ることが出来なくなってしまう。
【0031】
数値例で示すと、実施例1における7本の集合撚り線1aの断面積は、16.5mm2(={(0.2mm×0.2mm×π)/4}×75本×7本)である。また、素線導体1bの断面積は、6.8mm2(={(0.2mm×0.2mm×π)/4}×9本×24打ち)である。よって、平型電線1cの合計導体断面積は、23.3mm2(=16.5mm2+6.8mm2)になる。
これを編組導体1bのみで賄うとすると、素線の断面積を3.4倍(=23.3mm2/6.8mm2)にすればよい。しかし、素線の断面積を3.4倍にすると、素線ボビンに巻ける素線の長さが1/3.4倍になってしまう。この結果、編組導体1bのみで造った平型電線の長さも1/3.4倍になってしまう。例えば実施例1の平型電線1cの長さが800mなら、編組導体1bのみで造った平型電線の長さは230m(=800m/3.4)程度になってしまう。
【0032】
言い換えると、本願発明により、800m程度の長尺の平型電線1cの製造が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の平型電線および平型絶縁電線は、柔軟性のある高電力線として利用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 平型絶縁電線
1a 集合撚り線
1b 編組導体
1c 平型電線
1d 絶縁被覆
A 平型ガイドダイス
B 編組機
C 巻取機
D 平型成型ダイス
E 被覆機
F 巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に且つ密接して一列に並べられた複数本の集合撚り線(1a)と、前記複数本の集合撚り線(1a)の外周に施された編組導体(1b)とを具備してなることを特徴とする平型電線(1c)。
【請求項2】
複数本の集合撚り線(1a)を平行に且つ密接して一列に並べ、その形状を維持しながら外周に編組導体(1b)を施すことを特徴とする平型電線の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の平型電線の製造方法において、前記集合撚り線(1a)の外径を短径とし且つ前記集合撚り線(1a)の外径×前記集合撚り線(1a)の本数を長径とした長円形の通路断面を有する平型ガイドダイス(A)を通して、前記複数本の集合撚り線(1a)を平行に且つ密接して一列に並べることを特徴とする平型電線の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の平型電線(1c)の外周に絶縁被覆(1d)を設けたことを特徴とする平型絶縁電線(1)。
【請求項5】
請求項1に記載の平型電線(1c)を、前記平型電線(1c)の短径を短径とし且つ前記平型電線(1c)の長径を長径とした長円形の通路断面を有し且つ前記編組導体(1b)の編組ピッチ×2以上の長さを持つ平型成型ダイス(D)を通して、被覆機(E)へ供線することを特徴とする平型電線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate