説明

平面研削装置

【課題】静圧水軸受で砥石軸を支持する基板の研削装置の提供。
【解決手段】フレームF上に設けられたツールテーブル用セラミック製スライドSをリニアモータ駆動により左右方向に直動駆動する静圧水軸受セラミック製スライドウエイS上に、砥石軸4を静圧水軸受で回転可能に支持するとともに、直動/回転複合アクチュエータにより砥石軸を直動および回転可能にした砥石軸頭100を搭載し、ワークを保持するセラミック製ロータリーテーブルホルダーHを静圧水軸受で支持される主軸に軸承するワークステージWを前記ツールテーブルTに対してL字型に配置したワークテーブルT上に搭載した基板の平面研削装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧水軸受により支持されるセラミック製スライドウエイ(キャリッジともいう)および回転/直動主軸を利用した平面研削装置に関する。この平面研削装置は、シリコンベアウエハ、半導体基板、セラミック基板、GaAs基板、AlTiC基板、サファイア基板等のワークの平面研削加工に使用され、環境に易しく、ワークの研削速度を向上させる。
【背景技術】
【0002】
静圧流体軸受直動スライドシステムの静圧流体軸受としては、一般に空気を利用した静圧気体軸受、潤滑油を使用する静圧油軸受、水を利用する静圧水軸受が提案され、工作機械分野では静圧油軸受が主流で、静圧水軸受直動スライドシステムとして成功した実例としては1994年に米国Oregon州Hillsboro市所在のCoorsTec社がMITのAlexander Slocum教授と共同で開発したオール・セラミック製研削装置があるのみである(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
静圧水軸受直動スライドシステムは、静圧油軸受直動スライドシステムと比較して環境に易しいこと、およびスライドウェイとガイドウエイ間のギャップが静圧油軸受のそれと比較して約半分(7〜10μm)で済む故に水を送るポンプの馬力が静圧油軸受で使用されるポンプの馬力より小さくて済む利点があることが指摘されている(非特許文献2参照。)。
【0004】
環境に優しい静圧水軸受を利用する研削装置として、ビルトインモータ駆動の砥石軸(例えば特許文献1および特許文献2参照。)、ウエハ研削主軸(例えば特許文献3参照。)およびロータリーテーブル主軸(例えば特許文献4参照。)が提案されている。
【0005】
一方、研削装置への利用を開示するものではないが、主軸をボールベアリングで支持して回転および直動させる複合アクチュエータとして、チップマウンタ用回転/直動アクチュエータ(例えば特許文献5参照)、多関節型ロボットアーム用回転/直動アクチュエータ(例えば特許文献6参照)および用途を具体的に開示していない回転/直動アクチュエータ(例えば、特許文献7参照。)が提案されている。
【0006】
【非特許文献1】Alexander Slocum、Get a preload of this”、〔online〕、Mastercam.〔平成17年10月13日検索〕、インターネット<URL:http://www.americanmachinist.com/304/Technologies/Grinding/Article/False/8279>
【非特許文献2】Alexander H. Slocum et al著、”Design of self-compensated, water-hydrostatic bearings”, 雑誌「Precision Engineering 17」,173-185頁,1995年発行
【特許文献1】特開平11−235643号公報
【特許文献2】米国特許第6,419,396号明細書
【特許文献3】特開2000−218528号公報
【特許文献4】特開2000−240652号公報
【特許文献5】特開2006−220196号公報
【特許文献6】特開2004−364348号公報
【特許文献7】特開2006−220178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、研削砥石による基板(ワークピース)の研削取り代量が100〜1,000μmと小さいことから平面研削砥石を回転自在に支持する主軸(スピンドル)の駆動源として主軸を静圧水軸受で支持して回転および直動させる複合アクチュエータを採用し、研削砥石の基板への接近移動および基板から待機位置への後退についてはリニアモータ駆動によるセラミック製ツールテーブルの駆動を利用することにより従来のボールネジ駆動による移動速度を短縮(加工時間を短く向上)することが可能で、静圧水軸受を利用することにより研削加工された基板の寸法精度をより向上できる平面研削装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、機械フレーム、前記機械フレーム上に設けたベースと、このベース上に設けられた第一セラミック製ガイドウエイ(G)上を第一セラミック製スライドウエイ(S)がリニアモータ駆動により左右(X軸)方向に直動する静圧水軸受直動ツールテーブル前記静圧水軸受直動ツールテーブル上に設けた砥石台に、静圧水軸受で支持され直動/回転複合アクチュエータにより回転および直動される砥石軸に平面研削砥石を回転自在に軸承させた砥石軸頭、前記機械フレーム上に設けたベースと、このベース上に前記第一セラミック製ガイドウエイ(G)に対してL字形状に設けられた第二セラミック製ガイドウエイ(G)上を第二セラミック製スライドウエイ(S)がリニアモータ駆動により前後(Z軸)方向に直動する静圧水軸受直動ワークテーブル、および、前記静圧水軸受直動ワークテーブル上に設けたワーク主軸台に、静圧水軸受で水平方向に支持されアクチュエータにより回転駆動される主軸先端にワーク保持チャックテーブル(H)を軸承させたワーク保持チャック、を備える平面研削装置を提供するものである。
【0009】
請求項2の発明は、前記静圧水軸受直動ツールテーブルの第一ガイドウエイ(G)が一対のセラミック製長尺状直方体レールの上面高さを同一水平面にしてセラミック製長尺状直方体レールベース上面に平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール間に永久磁石または電磁石を前記長尺状直方体レールベース上面に対向し
て設けたガイドウエイ(G)であり、第一スライドウエイ(S)はセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベースの底面に二対のセラミック製静圧パッドを平行離間して前記長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製静圧パッド間にモーターコイルをその底面が前記永久磁石または電磁石の上面に平行となるよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの一方の長手方向側面には内側下部に一対のセラミック製静圧パッドを離間して前記長尺状直方体レール側面に対向する位置に設けたキーパーを設け、これらのセラミック製パッドに水を供給する噴出孔を設けた第一スライドウエイ(S)である静圧水軸受直動ツールテーブルであり、前記静圧水軸受直動ワークテーブルの第二ガイドウエイ(G)は一対のセラミック製長尺状直方体レールの上面高さを同一水平面にしてセラミック製長尺状直方体レールベース上面に平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール間に永久磁石または電磁石を前記長尺状直方体レールベース上面に対向して設けた第二ガイドウエイ(G)であり、第二スライドウエイ(S)はセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベースの底面に二対のセラミック製静圧パッドを平行離間して前記長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製静圧パッド間にモーターコイルをその底面が前記永久磁石または電磁石の上面に平行となるよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの一方の長手方向側面には内側下部に一対のセラミック製静圧パッドを離間して前記長尺状直方体レール側面に対向する位置に設けたキーパーを設け、これらのセラミック製パッドに水を供給する噴出孔を設けた第二スライドウエイ(S)である静圧水軸受直動ワークテーブルであることを特徴とする、請求項1に記載の平面研削装置を提供するものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の砥石軸頭が、先端に平面研削砥石を軸承する砥石軸の両側端近傍で静圧水軸受により水平方向に支持され、この静圧水軸受内側部主軸に設けた直動/回転複合アクチュエータにより砥石軸が回転および直動可能であり、前記直動/回転複合アクチュエータは、円筒形電機子と、この円筒形電機子の内部に回転自在に設けられた中空の円筒形回転界磁部とからなる回転モータと、前記円筒形回転界磁部の内周に固定されたリニアモータ電機子と、このリニアモータ電機子の内部に直動自在に設けられた円筒形リニアモータ界磁部とからなるリニアモータとにより構成され、前記円筒形リニアモータ界磁部の内部に、前記リニアモータ電機子と一体に回転するとともに前記リニアモータ電機子の軸心方向に摺動自在に砥石軸を設けたものであり、前記回転モータの前記円筒形回転界磁部の反負荷端に回転モータ制御用検出器を設け、前記砥石軸の反負荷端に前記砥石軸の長手方向に沿って等ピッチで同砥石軸のストローク以上の長さに配置固定した複数の異方性磁石と、前記磁石から生じる磁界を検出する90°位相に配置した磁気センサとにより構成したリニアモータ制御用検出器を設けたことを特徴とする、請求項1記載の平面研削装置を提供するものである。
【0011】
請求項4の発明は、前記ワーク保持チャックが、内周壁が山型断面の中央部中空のリング状固定子の左側に中央部中空の台形円筒状第一可動子を右側に中央部中空の台形円筒状第二可動子を配置し、これら両可動子間の空間部に円筒状スペーサおよび拘束リングを挟持させ、前記リング状固定子の中央外筒側から内筒側に向けて水供給通路を設け供給された水が第一可動子の台形斜面および第二可動子の台形斜面と固定子の山型斜面間の水流路に供給され、この水流路を経由して来た水が前記リング状固定子の内筒中央部側から外筒側に向けて設けられたドレン抜き流路を経てリング状固定子より外側へ排出される構造の静圧水軸受を設け、前記第一可動子、拘束リングおよび第二可動子の内筒面で形成された中央空間部に主軸を設け、この主軸の先端にワーク保持チャックテーブルを軸承させた構造を採ることを特徴とする請求項1に記載の平面研削装置を提供するものである。
【0012】
請求項5の発明は、砥石軸を静圧水軸受で回転可能に支持し、直動/回転複合アクチュエータで前記砥石軸を直動および回転可能とする砥石軸頭を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
ツールテーブルのスライドウエイ、ワークテーブルのスライドウエイ、ワーク保持チャックテーブルおよび砥石軸(ツールスピンドル)の軸受に静圧水軸受を使用するので、環境に優しい研削装置である。
【0014】
複合アクチュエータにより回転および直動される砥石軸に平面研削砥石を回転自在に軸承させた砥石軸頭構造としたことにより、基板の研削加工時は砥石軸頭の進退直動移動による基板表面への切込み、あるいは基板表面からの後退をさせ、砥石軸頭の待機位置への移動にはリニアモータ駆動されるツールテーブル移動を用いるので研削加工時間が短くなる。
【0015】
セラミック製パッドのポケット面に設けた噴出孔に供給される水の圧力バランスによりガイドウエイとスライドウエイ間のギャップを7〜10μmに保つことができる。このセラミック製スライドウエイはハニカム構造を成しており、このハニカム空洞にセラミック製静圧パッドに設けられた噴出孔に水を供給する供給管が配設できる。セラミックの比重は2.2〜2.8であり、鉄の比重7.9と比較すると小さく、さらにスライドウエイはハニカム構造を採用したことにより嵩密度が更に小さく軽いものとなるので、リニアモータの馬力も少なくて済む。スライドウエイのサイズが小さいときは、リニアモータの永久磁石または電磁石を25〜33度傾斜して設けることによりキーパーとの荷重バランスを良くし、スライドウエイの横揺れを防ぐ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を用いて本発明をさらに詳細に説明する。 図1は静圧水軸受を利用した本発明の研削装置の斜視図、図2はツールテーブルを上方から見た斜視図、図3はツールテーブルを底面側から見た斜視図、図4はスライドウエイ底面部に設けられたセラミック製パッドの配置を示す図、図5は砥石軸頭の断面図、図6は砥石軸に備えたリニアモータ制御用検出器の配置図、図7はロータリーテーブルホルダーの組立図、および、図8はワークホルダーステージの断面図である
【0017】
図1に示すように、本発明の基板表面研削装置1は、機械フレームF上に据え付けられたベースB上に設けた第一セラミック製ガイドウエイG上をリニアモータ駆動により左右方向(X軸方向)に直動駆動する断面L字状の静圧水軸受第一セラミック製スライドウエイSとからなる第一ツールテーブルT、基板の平面平坦化工具である砥石Tを左右方向に直動および軸鉛直方向に回転移動可能に静圧水軸受で砥石軸に支持する砥石軸頭100よりなるツールステージT、前記フレームF上に据え付けられたベースB上に設けたツールテーブルTに対しL字型に配置された第二セラミック製ガイドウエイG上をリニアモータ駆動により前後方向に直動駆動する第二静圧水軸受セラミック製スライドウエイSとからなるワークホルダーテーブルT、ならびに、ロータリーテーブルホルダーHを静圧水軸受で軸承する主軸、および、この主軸を回転させるリニアモータ駆動機構を前記ワークホルダーテーブルT上にチャックテーブルHを前記主軸で軸承したワーク保持チャックW、とを備える。図1中、Pは純水供給ポンプ、102は貯水槽、103,104は分配器で、図示していないがそれぞれ圧力調整コントローラを備える。105はドレン抜き管、106はフィルタ、107は廃液貯槽、108は高さ調整キャスタである。
【0018】
前記ロータリーテーブルホルダーHは、基板の種類により異なり、バキュームチャック、基板を貼り付けるテンプレートまたは防水性を施した磁気チャックなどが挙げられる。
【0019】
前記フレームFの素材は、大理石、セラミック、黒御影石(グラナイト)、レジンコンクリートが好ましい。前記ツールテーブル(T)およびワークホルダーテーブルTは、図2および図3に示すように、ガイドウエイ(G,G)2と断面L字状のスライドウエイ(S,S)3を有する。ガイドウエイ2は、一対のセラミック製ハニカム構造23bの長尺状直方体レール21a,21bの上面22a,22bの高さを同一水平面としてセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レールベース23の上面23aに平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール21a,21b間に永久磁石または電磁石24を前記長尺状直方体レールベース上面23aに対して25〜33度傾斜して上面傾斜支持台25を介して設けたガイドウエイである。長尺状直方体レールベース23への長尺状直方体レール21a,21bの固定は、ボルト締めもしくはエポキシ樹脂接着剤を用いて行われる。また、ツールテーブル(T)のガイドウエイ2は、図1に示す研削装置1の鋳鉄製あるいは花崗岩製ベースB(9)上に搭載される。このガイドウエイの長尺状直方体レールベース23および長尺状直方体レール21a,21bは、ハニカム構造であっても空洞のない忠実セラミックス製長尺状直方体であってもよい。
【0020】
スライドウエイ3は、図4に示すようにセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31の底面31aに二対のセラミック製静圧パッド33a,33b,33c,33dを平行離間して前記長尺状直方体レール21a,21b上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製静圧パッド間にモーターコイル34をその底面が前記永久磁石または電磁石24の上面に平行となるよう支持台36を介して傾斜して設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの一方の長手方向側面31bには内側下部に一対のセラミック製静圧パッド33e,33fを離間して前記長尺状直方体レール側面21cに対向する位置に設けたキーパー32を設け、これらのセラミック製静圧パッド33a,33b,33c,33d,33e,33fに純水を供給する噴出孔35を設けた構造である。
【0021】
セラミック製静圧パッドは種々の形状のものが市販されており、スライドウエイの形状、寸法、ク−ラント水供給システムにより選択される。図3および図4に示すセラミック製静圧パッドは、パッド中央部のポケット部41bに噴出孔35を設け、この噴出孔35を中心に左右対称に中央ランド部を2個有し、この中央ランド部42a,42bを囲綾するよう水受け入れポケット部(溝)41aを有し、更にこのポケット部(溝)41a,41bを囲繞するように外側ランド43を有する。セラミック製パッドの寸法を縦Lとすると、横幅は1.5L〜1.8L、好ましくは1.618Lが良い。中央ランド部42の縦方向の長さは0.4L〜0.6L、外側ランド43の幅はそれぞれ0.2L〜0.4L、ポケット部41aの幅は0.1Lが好ましい。噴出孔35の径は5〜10mmでよい。
【0022】
図4に示すように、水供給ポケット41aに設けられた噴出孔35は、水供給配管81に接続され、水供給配管81の先はポンプ83に接続されている。図3において84は圧力計、85はレリーフ弁、86は抗圧弁、Mはモータである。セラミック製パッドに接続する水供給配管81の内径は、5〜8mm程度である。水供給配管81は、スライドウエイ3のハニカム空洞内に配管され、噴出孔35に接続される。水供給配管81のスライドウエイ3のハニカム壁への固定は、非磁性体である強化樹脂製またはセラミックス製固定バンド、ボルトを使用して行われる。塞板37は、スライドウエイ3のハニカム開放口23bを塞ぐと共に、分岐した水供
給配管81,81を固定する。
【0023】
セラミック製ガイドウエイ2、セラミック製スライドウエイ3、セラミック製静圧パッド33a,33b,33c,33d,33e,33fのセラミック素材としては、例えば、アルミナ(Al23)セラミックス、ムライト(3Al23・2SiO2)セラミックス、窒化アルミニウム(AlN)セラミックス、窒化珪素(Si34)セラミックス、窒化炭素(SiC)セラミックス、ジルコニアセラミックス、サーメット、サイアロン等が挙げられる。アルミナセラミックスは安価であり、ガイドウエイ2、スライドウエイ3、パッドの素材として適している。窒化炭素セラミックス、ジルコニアセラミックスは耐久性に富むので、パッド素材としてアルミナより優れる。
【0024】
ガイドウエイ2、スライドウエイ3は、ノンポーラスセラミック製品が好ましく、パッドは、窒化炭素セラミックス、ジルコニアセラミックスを素材とするときは気孔率が3%以下のノンポーラスセラミック製品が、アルミナセラミックスを素材とするときは気孔率が8〜30%のポ−ラスセラミックスが好ましい。
【0025】
セラミックス製品2,3の製造方法について説明する。最初に、ハウジングとなるハニカム構造のセラミック部材21a,21b,23,31、キーパー(側板)32および支持台24,36を作製する。例えば、アルミナ等のセラミックス粉末に所定量のバインダを加えて造粒処理し、これを一軸プレス成形し、さらにCIP成形して角板状または支持台用の傾斜構造のプレス成形体を作製する。次いで、角板状プレス成形体をハニカム状に加工して、その底面に所定パターンのパッド用溝部を形成し、さらにこの溝部に開口する噴出孔35を形成する。必要により、ガイドウエイ構成用部材のレール部材とベール部材を接合しておいてもよい。得られた加工体を必要に応じて脱脂処理した後、所定の雰囲気、温度、時間で焼成することによりハウジングとなるハニカム構造セラミック部材や支持台が得られる。なお、プレス成形体を800〜950℃で仮焼し、得られた仮焼体に溝部等を形成する加工を施し、その後に1,000〜1,250℃で焼成処理を行ってもよい。バインダとしては、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/イソプロピルメタクリレ−ト/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/t−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/イタコン酸共重合体等が焼成時の黒煙の発現がなく、強度の高いセラミック製品が得られる。
【0026】
次ぎに、スライドウエイ3のパッド用溝に市販のセラミック製静圧パッド33a,33b,33c,33d,33e,33fをエポキシ樹脂接着剤で固定する。または、パッド形成セラミックススラリーを溝部に塗布し、焼成してセラミック製静圧パッドを形成させる。
【0027】
セラミック製静圧パッドを形成する素材のセラミックススラリーの調製は、セラミックス粉末(例えば、アルミナ粉末や窒化珪素、炭化珪素粉末など、必要によりガラス粉末を添加)に、水またはアルコール等の溶剤を加えて、ボールミル、ミキサー等の公知の方法により混合することにより調製することができる。なお、水またはアルコール等の添加量は特に限定されるものではないが、セラミックス粉末の粒度を考慮して、所望の流動性が得られるように調節する。
【0028】
なお、開気孔の平均気孔径が10〜150μm、気孔率が30%以下であるアルミナ製多孔質パッドを最終的に形成するためには、セラミックス粉末としては、その平均粒径が30μm〜500μmのものを使用することが好ましい。
【0029】
また、多孔質セラミック製静圧パッドの添加成分としてガラス粉末を使用する場合は、その熱膨張係数が、多孔質パッドのもう一方の構成成分であるセラミックスの熱膨張係数より小さいものを用いることが好ましい。これにより、後の焼成段階でハニカム構造ハウジング、キーパーの界面と実質的に連続している組織を有する多孔質パッドを形成することができる。また、多孔質パッドにおいて結合材としての役割を有するガラスに圧縮応力が加わった状態を作り出すことができる。ガラスは一般的に引張強度に弱いために、ガラスに圧縮応力が加わった状態とすることにより多孔質パッドの強度が高められ、研削加工時の脱粒や欠け等の発生も抑制される。
【0030】
多孔質セラミック製静圧パッドを形成するための原料であるガラス粉末の平均粒子径は、多孔質パッドのもう一方の原料であるセラミックス粉末の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。これは、ガラス粉末の平均粒径がセラミックス粉末よりも大きいと、セラミックス粉末の充填が阻害されて、後のガラス軟化点(約800〜850℃)以上での焼成時に焼成収縮を起こしてしまうからであり、この場合には、ハニカム構造セラミック部材と焼成により形成された多孔質パッドとの境界に隙間が生じてしまうこととなる。ガラス粉末の平均粒径は、セラミックス粉末の平均粒径の1/3以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
【0031】
セラミックス粉末に対して添加するガラス粉末の量は、使用するセラミックス粉末の粒度(粒度分布)や焼成温度におけるガラスの粘性等を考慮して調整されるが、多過ぎるとセラミックス粉末の充填が阻害されて焼成収縮が生じ、逆に少な過ぎるとセラミックス粉末の結合強度が低下し、脱粒や欠け等が生ずる。このため、ガラス粉末の量は、所望の結合強度、気孔率が得られる範囲においてできるだけ少ないことが好ましく、具体的には、概ね、セラミックス粉末100質量部に対して、5〜30質量部とすることが好ましい。
【0032】
次に、前記で作製したハニカム構造のハウジング31、キーパー32(焼成後のセラミック部材)に形成されているパッド用溝部と噴出孔35に樹脂等の焼失材料を充填する。次いで、前記の調製したセラミックススラリーをハウジングの溝に充填して、後の焼成により多孔質セラミック製静圧パッドとなる部分を成形する。その際に必要に応じて、スラリー中の残留気泡を除去するための真空脱泡処理や充填率を高めるための振動を加えるとよい。
【0033】
このようにしてスラリーが充填されたハウジング31,キーパー32を十分に乾燥させた後、多孔質パッド形成材を900℃以上の温度で焼成し、多孔質セラミック製静圧パッドを形成する。この焼成時に、溝部と噴出孔35に充填された樹脂等は消失し、ポケット部(空洞)41aが形成される。
【0034】
続いて、得られた焼成体の表面全体を研削し、必要に応じて研磨処理することにより、静圧軸受装置が得られる。パッドのランド面、セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レール、スライドウエイのセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース表面は、1.0μm以下の表面粗さRに研削・研磨加工しておくのが好ましい。
【0035】
ハニカム構造長尺状直方体レールベース23と長尺状直方体レール21a,21bの一体化は、前記焼成時に接合し、一緒に焼成してもよいが、後工程の研削・研磨加工作業を容易とするため、後述する制振パッド接着剤27を用いて研削・研磨加工後に接着してもよい。
【0036】
スライドウエイ3のセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31およびキーパー32に設けるセラミック製パッドの個数および位置関係は、スライドウエイ3のサイズ、剛性による。但し、少なくともセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31の底面に二対のセラミック製静圧パッド33a,33b,33c,33dを平行離間してガイドウエイ2の長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製静圧パッド間にモーターコイル34をその底面が前記永久磁石または電磁石24の上面に平行となるよう傾斜して設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベース31の一方の長手方向側面に内側下部に一対のセラミック製静圧パッド33e,33fを離間して前記ガイドウエイ2の長尺状直方体レール側面に対向する位置に設けたキーパー32内側に設ける。
【0037】
スライドウエイ3の長尺方向(進行方向)の長さをKとし、図3または図4で示されるセラミック製パッドの長尺方向(横方向)の長さをk、縦方向の長さをk/1.618とすると、長手方向一列に設けられるセラミック製静圧パッドのピッチ間隔の目安は、左右両端のセラミック製パッドの端部はスライドウエイの端部より2k/16.18離れた距離より設置されるとすると、次式で求められる値が好ましい。 (K−4k/16.18)/3k よって、長手方向一列に設けられるセラミック製静圧パッドの必要個数は、次式で算出される。 〔K/(K−4k/16.18)/3k〕+1 本発明では長手方向三列にパッドは設置されるので、パッド総数は、前式の3倍となる。
【0038】
ツールテーブルT,ワークテーブルTのガイドウエイ2を支持するフレーム素材9は、セラミックでも、花崗岩でも鋳鉄でもよい。鋳鉄は安価であり、製造も容易である。花崗岩はセラミックと比較して防黴性に優れる。ベースへのガイドウエイ2の固定は、ボルトナットを用いてもよいが、制振パッド接着剤27を用いるのが好ましい。
【0039】
制振パッド接着剤27の素材としては、カルボキシル基や水酸基等の官能基を有するネオプレンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等の液状ラバーに、アクリル系ビニル単量体、硬化剤を配合した液状接着剤組成物が使用される。この組成物は、更に、ポリエ−テルポリオール・ポリイソシアネートウレタンエラストマー、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴム、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体ゴム、水添スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、低密度ポリエチレン等の軟質樹脂またはエラストマー、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレイ、アスファルト等の充填材、酸化防止剤などを含有していてもよい。
【0040】
例えば、(A)酸無水物基を有する液状イソプレン 100質量部と、(B)アミン系潜在性硬化剤 1〜4質量部と、(C)酸化防止剤 0.5〜5質量部と、(D)アクリル化合物 0.5〜5質量部と、を含有する制振接着剤組成物を開示する。また、特開2005−41943号公報は、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体、ポリエステル樹脂、ゴム状弾性体樹脂の三成分を少なくとも含有する樹脂組成物であって、極性基を有するユニットを1質量%以上含有するビニル重合体のマトリックス中に、ポリエステル樹脂相及びゴム状弾性体樹脂相がそれぞれ独立して分散してなる制振材料用樹脂組成物である。
【0041】
制振パッドは、積層構造であってもよい。例えば、予め芯材となる高減衰ゴムの層を半加硫し、この高減衰ゴムの表裏面に制振接着剤組成物を塗布した後、フレームF上に置き、この上にガイドウエイ2を載せることにより型押しし、ついで、硬化させることにより高減衰ゴムの層とゴムの層とが一体化された制振パッドとすることができる。制振パッドの厚みは、1〜5mmで充分である。
【0042】
スライドウエイ3の駆動手段としては、コイル34と電磁磁石または永久磁石24とを用いるリニアモータが使用される。これらは、ファナック株式会社、独国ジーメンス社、米国アーノルド社等より市販されている。スライドウエイ3のサイズが小さいときは、図3に示すようにハニカム構造の長尺状直方体レールベース23の上面に対し22〜35度傾斜するようにしてコイル34および磁石24を設けるのが好ましい。スライドウエイ3のサイズが大きいときは、コイル34および磁石24は22〜35度傾
斜させても、傾斜させなくてもよい。
【0043】
スライドウエイ3の左右方向のストローク幅は、600〜1,000mmで、リニアモータ駆動移動速度は0〜30m/分が好ましい。スライドウエイ3は、リニアモータ24,34を駆動することにより左右方向に駆動され、スライドウエイ3に搭載された砥石軸頭はワークホルダH側へ近づいたり遠ざかったりする。このスライドウエイ3の左右移動の際、ガイドウエイ2とスライドウエイ3間の摺動面のセラミック製静圧パッドに貯水槽102内の静圧水はポンプ83により供給され、水供給ポケットより供給され、ガイドウエイ2とスライドウエイ3間の隙間を5〜10μm程度に保つ。
【0044】
図1に示すように、この静圧水軸受直動ツールテーブルT上にトンネル状砥石軸固定ガイド109を固定し、この砥石ハウジング109の中空部に砥石軸(x座標)がツールテーブルTの直動軸(X軸)と平行になるように砥石軸頭100(T)を取り付ける。
【0045】
図5に示すように、砥石軸頭100の砥石軸4は、平面研削砥石Tを左端で軸承する砥石軸の両側端近傍で静圧水軸受5,5により水平方向に支持され、この静圧水軸受された砥石軸4に設けた直動/回転複合アクチュエータにより砥石軸4が回転および直動可能である。
【0046】
前記複合アクチュエータは、回転モータ50とリニアモータ60とから構成され、前記回転モータ50は、円筒形電機子53と、この円筒形電機子の内部に回転自在に設けられた中空の円筒形回転界磁部RMとからなり、前記円筒形回転界磁部RMの内周に固定されたリニアモータ電機子LMと、このリニアモータ電機子の直動自在に設けられた円筒形リニアモータ界磁部LMとからなるリニアモータ60とにより構成され、前記円筒形リニアモータ界磁部LMの内部に、前記リニアモータ電機子LMと一体に回転するとともに前記リニアモータ電機子の軸心方向に摺動自在に出力軸101を設けたものである。
【0047】
前記回転モータ50の前記円筒形回転界磁部51の反負荷端には回転モータ制御用検出器55を設け、前記出力軸101の反負荷端に前記出力軸の長手方向に沿って等ピッチで同主軸のストローク以上の長さに配置固定した複数の異方性磁石と、前記磁石から生じる磁界を検出する90°位相に配置した磁気センサとにより構成したリニアモータ制御用検出器64を設ける。
【0048】
図5おいて、50は回転モータであり、円筒形電機子RMと円筒形回転界磁部RMとから構成されている。円筒形電機子RMは、回転モータ電機子コア52と、その回転モータ電機子コア52に巻装された電機子巻線53で構成されている。この円筒形電機子RMの内側には、中空の円筒形回転界磁部RMが設けられている。円筒形回転界磁部RMは、円筒形の回転モータ界磁ヨーク57の表面に、偶数個で、等ピッチの界磁磁石51が配置固定されており、これは、アクチュエータフレーム70の両端に固定されているLブラケット71、反Lブラケット72と、静圧水軸受58とで回動自在に支持されている。また、回転モータ制御用検出器55は、アクチュエータ反Lブラケット72後端に配置固定されている。回転モータ制御用検出器55で検出された信号は、回転モータ用検出器端子56から図示しないコントローラ(制御装置)に取り出される。回転モータ電機子巻線53への給電は、回転モータ端子54により行われる。
【0049】
図中、60は直線運動を行う円筒形のリニアモータであり、リニアモータ電機子LMとリニアモータ界磁部LMで構成されている。リニアモータ電機子LMは、円筒形回転界磁部RMの内側に固定された円筒形のリニアモータ電機子フレーム62と、リニアモータ電機子フレーム62に固着されたリニアモータ電機子巻線61で構成されている。またリニアモータ界磁部LMは、リニアモータ電機子巻線61にギャップを介して対向配置されたリニアモータ界磁ヨーク66と、このリニアモータ界磁ヨーク66上に多極に着磁された界磁磁石67で構成されている。そしてそのリニアモータ界磁部LMは、出力軸101(4)に固定されており、これよりリニアモータから生じる直動動作は、リニアモータの前後端に配置固定されているボールスプライン63により、スラスト方向に支持されている。
【0050】
図6に示すように、リニアモータ制御用検出器64は、出力軸101の反負荷端に構成されており、出力軸101の長手方向に沿って複数のリング状の異方性磁石からなり、多極磁化された界磁部70を配置し、この界磁部70が生じる磁束を90°位相で配置された2つのホール素子71(A相),ホール素子(B相)72等の磁気センサで検出するものである。リニアモータ制御用検出器64の出力は、シリアル変換器74により2分割され、かつ、シリアル信号変換され、サーボドライバ73に入り、リニアモータの制御信号として用いられる。
【0051】
次に直動/回転複合アクチュエータの動作について説明する。回転モータ端子54から回転モータ電機子巻き線53に駆動電力を供給すると、回転モータ電機子コア52に出力軸101回りの回転磁界が生じ、その回転磁界と回転モータ界磁磁石11の磁極との磁気作用である吸引、反発により回転モータ界磁ヨーク57が静圧水軸受58を支持として回転する。その回転力は、ボールスプライン63により砥石軸4に伝達され、その砥石軸に取り付けられているアーム部90を回転駆動する。
【0052】
一方、回転モータ57に固定されたリニアモータ電機子フレーム62に設けられたリニアモータ電機子巻線61にスリップリング(図示せず)を介してコントローラから駆動電力を供給すると、リニアモータ電機子巻線61に発生する移動磁界との相互作用により、直動用円筒形リニアモータ60が出力軸101の軸方向に駆動力を受ける。直動用円筒形リニアモータ60はリニアモータ界磁ヨーク66を介して出力軸101に固定されているので、その駆動力は出力軸101を軸方向に駆動する力として伝達される。
【0053】
砥石軸4は、円筒状軸受ハウジング6内で複数の水静圧軸受58で回転自在に支持される。この円筒状軸受ハウジング6はアウターハウジング5内周面にボルトで固定される。砥石軸4の左端部および右端部の外周は、静圧水軸受58によって支持されるとともに、フランジ58aが静圧水軸受よりなる一対のスラスト軸受58b,58bにより支持される。
【0054】
図5に示すように、砥石軸4(出力軸101)を支持するラジアル軸受58c,58cおよびスラスト軸受58b,58b一対は、砥石軸4のフランジ58aを中心に対称に配置される。アウターハウジング5および軸受ハウジング6の当接面に環状の分配室58dが形成され、ラジアル軸受58cは砥石軸4の外周を囲むように6個の静圧ポケット部を備え、分配室58dと前記静圧ポケットとがそれぞれ絞りを介して連通している。給水ポート58eから分配室58dに供給された加圧水は絞りを経由して6個の静圧ポケットに供給され、砥石軸4をフローティング状態で支持する。水は、ドレン流路58fを経てアウターハウジング5の外へ排出される。前記絞りの半径方向外側には圧力調整器を備える。
【0055】
砥石軸4の素材は、窒下珪素、窒化炭素、酸化珪素、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックが好ましいが、従来のステンレスあるいはクロムメッキ鋼製スピンドル表面をセラミック化学蒸着で100〜500μm厚コーティングしたものでもよい。
【0056】
砥石軸4の回転速度は、500〜3,000rpmで十分である。砥石軸4の直動は、基板表面の取り代量が粗研削加工のときは1,000μm以下、仕上研削加工のときは0.5〜10μmの取り代量に過ぎないことから第一スライダSを使用せずに複合アクチュエータの砥石軸4用リニアモータ機構LM,LMを利用してかかる取り代量に相当する量の切込みを基板にかけるのが好ましい。
【0057】
平面研削砥石Tとしては、図5に示すカップホイール型ダイヤモンド砥石や、セリア、シリカ、ダイヤモンド砥粒をフェルトやウレタン樹脂に分散させた平砥石、オイルストーン砥石、ピッチポリッシャなどが使用できる。
【0058】
次に、図7および図8を用いてワーク保持チャックWについて説明する。ワーク保持チャックWは、そのワーク保持チャックテーブルH上に基板がその直径方向を鉛直面として載置され、研削砥石Tにより基板表面を研削するワークステージWを構成する。
【0059】
前記ワーク保持チャックWのロータリーテーブルホルダー200は、内周壁が山型断面の中央部中空のセラミック製リング状固定子(ステータ)204の左側に中央部中空のセラミック製台形円筒状第一可動子(ロータ)202を右側に中央部中空のセラミック製台形円筒状第二可動子(ロータ)203を配置し、これら両可動子間の空間部にセラミック製円筒状スペーサ205とセラミック製拘束リング206を挟持させ、前記リング状固定子204の中央外筒側から内筒側に向けて水供給通路207を設けここに供給された水が第一可動子202の台形斜面および第二可動子203の台形斜面と固定子の山型斜面間の水流路に供給され、この水流路を経由して来た水が前記リング状固定子204の内筒中央部側から外筒側に向けて設けられたドレン抜き流路208を経てリング状固定子204外側へ排出される構造の静圧水軸受を設け、前記第一可動子202、拘束リング206および第二可動子203の内筒面で形成されたロータリーテーブルホルダー中央空間部に主軸216を内装して設け、この主軸216の右面先端にワーク保持チャックテーブルHを軸承させた構造を採る。
【0060】
図7aにおいて、200はロータリーテーブルホルダー、206は拘束リング、209はボルト孔である。前記第一ロータ202右傾斜面および第二ロータ203の左傾斜面には、ポケット(202a,203a)、ベアリングランド(202b,203b)およびリークランド(202c,203c)が交互に配置されている。
【0061】
図8から理解されるように、前記第二ロータ203右表面にポーラスセラミックチャックテーブル201が載置され、その底部にバキューム機構の減圧室215が前記中央中空部に設けられる。第一ロータ203左表面側に設けられたワーク主軸台400の中央中空部210には、ロータリージョイント230が主軸216に接続され、その先は蛇腹補強線入り樹脂管(減圧管)300に接続され、さらに図示されていない真空ポンプに接続されている。
【0062】
ワークステージWは、既述したセラミック製ガイドウエイG上をリニアモータ駆動により前後方向に直動駆動する静圧水軸受セラミック製スライドウエイS上にワーク主軸台400を固定し、このワーク主軸台にワーク保持チャックWを主軸216が左右水平方向となるよう搭載したものである。前記静圧水軸受セラミック製スライドウエイSは、これに搭載されるワーク主軸台400を前後方向に50〜200mm幅揺動させて加工基板に砥石条痕が付くのを防止する。また、ツールステージとワーク保持チャックWの位置合わせを行うのに使用、および、ワーク保持チャックWを図示されていない基板収納カセット側へ50〜500mm幅前後移動させるために使用される。
【0063】
図8に示すように、ワークステージWは、制振パッド211を介して前記ワーク主軸台400の前面に搭載される。ロータリーテーブルホルダー200の第二ロータ203右面外周縁よりポーラスセラミック製チャック板201を支持する固定リング212が起立され、不通気性外周縁213を有するポーラスセラミッ
ク製チャック板201が当て嵌められている。また、第二ロータ203右面中央部に仕切板214を設け、この仕切板と、前記固定リング212とポーラスセラミック製チャック板201とで減圧室215を形成している。仕切板214中央部には孔があり、中空スピンドル(主軸)216が水平方向に挿入されている。その中空スピンドル216の右端は前記減圧室に連通し、左端はロータリージョイント230に接続し、さらに減圧管300を介して図示されていない真空ポンプに接続されている。
【0064】
前記中空スピンドル216の左側には、磁性材から形成された下部の歯形部218を備え、その下面にエンコーダ225を備え、これに対向してセンサ225aがスライドウエイSに設けられ、スライドウエイSに対するポーラスセラミック製チャック板201の回転角度を分解能1秒角以下で測定できるようになっている。エンコーダ225とセンサ225aとで測定手段を構成する。
【0065】
前記歯形部218は、外周に複数の歯が形成され、一歯ずつ磁化されることによりN極とS極が交互に配列される。この歯形部218に対向してスライドウエイSの上突起部の上面であってステータ204の左面に当たる位置には制振パッド211を介してコイル220が配置されている。コイル220の歯数は、歯形部218の歯数より1個だけ多い。歯形部218とコイル220とでACサーボモータを構成する。このサーボモータは、中空スピンドル216の回転駆動力となる。
【0066】
リング状固定子204の外周縁には純水供給孔207が設けられ、貯水槽102からポンプPで汲み上げられた水が図示されていない圧力調整器で流量を調節されて純水供給孔207に給水され、その先の絞りで絞られて拘束リング206内周面とロータ間の隙間を経し、第二ロータ203左斜面および第一ロータ202右斜面に設けられたポケット203aに供給され、ポーラスセラミック製チャック板201を搭載する第一および第二ロータ203,202外周面をリング状固定子204内周面からフローティングさせる。拘束リング206はボルト209aにより第二ロータ203と第一ロータ202を締結している。
【0067】
第一,第二ロータ202,203斜面ポケット部に供給された純水は、廃液孔208を経由してロータリーテーブルホルダー200外部へ排出される。図8の円内拡大図に示されるように、第二ロータ203外周縁斜面とリング状固定子204内周壁が対向する位置にある廃液通路208aは、リング状固定子204内周壁に接着219されたゴム舌218がロータ斜面を被い、水漏れを防いでいる。
【0068】
ポーラスセラミック製チャック板201は、ロータ202,203と伴に鉛直方向に回転する。また、減圧室215を真空ポンプで減圧することにより平坦加工される基板裏面を吸着する。
【0069】
なお、図示されていないが、スライドウエイS,スライドウエイS、ツールステージTの砥石軸4の位置座標(X,Y)が送信されるようにガイドウエイGにはX軸レーザスケール、ガイドウエイGにはY軸レーザスケール、ツールステージTにはx軸レーザスケールが取り付けられており、また、ワーク保持チャックWには、ロータリースケール225,225aが取り付けられ、砥石軸4とワーク主軸216の同期制御を可能にしている。
【0070】
図1に示す基板の研削装置1を用いて基板を平坦化研削加工する手順を以下に説明する。先ず、基板をポーラスセラミック製チャック板201上へ載置し、真空ポンプを稼動させて減圧室215を減圧し、基板をポーラスセラミック製チャック板201上に固定する。ついで、主軸216、第一,第二ロータ202,203を回転させることにより基板を主軸216に対し直角方向に回転させる。
【0071】
スライドウエイSを後退、スライドウエイSを左方向へ移動させ、砥石軸4とポーラスセラミック製チャック板201の加工開始点位置合わせを行う。
【0072】
砥石軸4を回転させながら下降させてダイヤモンドカップホイール型砥石Tにより回転している基板面への研削切り込みを開始する。
【0073】
ワークテーブルスライドウエイSの前後移動、砥石軸4の直動/回転、およびツールテーブルスライドウエイSの左右揺動を同期制御することにより、ダイヤモンドカップホイール型砥石Tは基板に切り込みをかけ研削加工する。
【0074】
研削中は、図示されていない加工液供給ノズルより基板表面に、もしくは、基板と砥石刃が接触する加工作用点に加工液を供給する。
【0075】
基板の研削加工終了後は、砥石軸4を右側へ後退させ、回転を止め、スライドウエイSを右方向へ移動させて砥石Tを待機位置へと戻す。
【0076】
ポーラスセラミック製チャック板201を支持するロータの回転を止め、ワークテーブルスライドウエイSを前進させ、待機位置(例えば洗浄ステージ)へと移動させる。その位置で、真空ポンプの稼動を停止し、減圧室215の減圧を開放する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の基板の研削装置1は、静圧水軸受支持のセラミック製ツールテーブル、セラミック製ワークテーブル、静圧水軸受支持の直動/回転可能な砥石軸を利用するので、環境に優しい。また、セラミック製テーブルを用いるので軽量化でき、搬送が容易である。さらに、静圧水軸受支持の直動/回転砥石軸を利用するので、砥石軸頭をコンパクトに設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の静圧水軸受を利用した研削装置の斜視図である。
【図2】ツールテーブルを上方から見た斜視図である。
【図3】ツールテーブルを底面側から見た斜視図である。
【図4】スライドウエイ底面部に設けられたセラミック製パッドの配置を示す図である。
【図5】砥石軸頭の断面図である
【図6】砥石軸に備えたリニアモータ制御用検出器の配置図である。
【図7】ロータリーテーブルホルダーの組立図である。
【図8】ワークステージの断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 平面研削装置 4 砥石軸100 砥石軸頭101 出力軸200 ロータリーテーブルホルダー216 中空スピンドル400 ワーク主軸台 F 機械フレーム H ワーク保持チャックテーブルS スライドウエイS スライドウエイ T カップホイール型ダイヤモンド砥石 T ツールステージT ツールテーブルT ワークテーブルW ワーク保持チャック(ワークステージ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械フレーム、前記機械フレーム上に設けたベースと、このベース上に設けられた第一セラミック製ガイドウエイ上を第一セラミック製スライドウエイがリニアモータ駆動により左右方向に直動する静圧水軸受直動ツールテーブル、前記静圧水軸受直動ツールテーブル上に設けた砥石台に、静圧水軸受で支持され複合アクチュエータにより回転および直動される砥石軸に平面研削砥石を回転自在に軸承させた砥石軸頭、前記機械フレーム上に設けたベースと、このベース上に前記第一セラミック製ガイドウエイに対してL字形状に設けられた第二セラミック製ガイドウエイ上を第二セラミック製スライドウエイがリニアモータ駆動により前後方向に直動する静圧水軸受直動ワークテーブル、および、前記静圧水軸受直動ワークテーブル上に設けたワーク主軸台に、静圧水軸受で水平方向に支持されアクチュエータにより回転駆動される主軸先端にワーク保持チャックテーブルを軸承させたワーク保持チャック、を備える平面研削装置。
【請求項2】
静圧水軸受直動ツールテーブルの第一ガイドウエイが、一対のセラミック製長尺状直方体レールの上面高さを同一水平面にしてセラミック製長尺状直方体レールベース上面に平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール間に永久磁石または電磁石を前記長尺状直方体レールベース上面に対向して設けたガイドウエイであり、第一スライドウエイはセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベースの底面に二対のセラミック製静圧パッドを平行離間して前記長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製静圧パッド間にモーターコイルをその底面が前記永久磁石または電磁石の上面に平行となるよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの一方の長手方向側面には内側下部に一対のセラミック製静圧パッドを離間して前記長尺状直方体レール側面に対向する位置に設けたキーパーを設け、これらのセラミック製パッドに水を供給する噴出孔を設けた第一スライドウエイである静圧水軸受直動ツールテーブルであり、前記静圧水軸受直動ワークテーブルの第二ガイドウエイは一対のセラミック製長尺状直方体レールの上面高さを同一水平面にしてセラミック製長尺状直方体レールベース上面に平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール間に永久磁石または電磁石を前記長尺状直方体レールベース上面に対向して設けた第二ガイドウエイであり、第二スライドウエイはセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベースの底面に二対のセラミック製静圧パッドを平行離間して前記長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製静圧パッド間にモーターコイルをその底面が前記永久磁石または電磁石の上面に平行となるよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの一方の長手方向側面には内側下部に一対のセラミック製静圧パッドを離間して前記長尺状直方体レール側面に対向する位置に設けたキーパーを設け、これらのセラミック製パッドに水を供給する噴出孔を設けた第二スライドウエイである静圧水軸受直動ワークテーブル、であることを特徴とする、請求項1に記載の平面研削装置。
【請求項3】
砥石軸頭が、先端に平面研削砥石を軸承する砥石軸の両側端近傍で静圧水軸受により水平方向に支持され、この静圧水軸受内側部主軸に設けた複合アクチュエータにより主軸が回転および直動可能であり、前記複合アクチュエータは、円筒形電機子と、この円筒形電機子の内部に回転自在に設けられた中空の円筒形回転界磁部とからなる回転モータと、前記円筒形回転界磁部の内周に固定されたリニアモータ電機子と、このリニアモータ電機子の内部に直動自在に設けられた円筒形リニアモータ界磁部とからなるリニアモータとにより構成され、前記円筒形リニアモータ界磁部の内部に、前記リニアモータ電機子と一体に回転するとともに前記リニアモータ電機子の軸心方向に摺動自在に砥石軸を設けたものであり、前記回転モータの前記円筒形回転界磁部の反負荷端に回転モータ制御用検出器を設け、前記砥石軸の反負荷端に前記砥石軸の長手方向に沿って等ピッチで同砥石軸のストローク以上の長さに配置固定した複数の異方性磁石と、前記磁石から生じる磁界を検出する90°位相に配置した磁気センサとにより構成したリニアモータ制御用検出器を設けたことを特徴とする、請求項1記載の平面研削装置。
【請求項4】
ワーク保持チャックが、内周壁が山型断面の中央部中空のリング状固定子の左側に中央部中空の台形円筒状第一可動子を右側に中央部中空の台形円筒状第二可動子を配置し、これら両可動子間の空間部に円筒状スペーサおよび拘束リングを挟持させ、前記リング状固定子の中央外筒側から内筒側に向けて水供給通路を設け供給された水が第一可動子の台形斜面および第二可動子の台形斜面と固定子の山型斜面間の水流路に供給され、この水流路を経由して来た水が前記リング状固定子の内筒中央部側から外筒側に向けて設けられたドレン抜き流路を経てリング状固定子より外側へ排出される構造の静圧水軸受を設け、前記第一可動子、拘束リングおよび第二可動子の内筒面で形成された中央空間部に主軸を設け、この主軸の先端にワーク保持チャックテーブルを軸承させた構造を採ることを特徴とする請求項1に記載の平面研削装置。
【請求項5】
砥石軸を静圧水軸受で回転可能に支持し、直動/回転複合アクチュエータで前記砥石軸を直動および回転可能とする砥石軸頭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−149434(P2008−149434A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342126(P2006−342126)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】