説明

【課題】庇板の強度低下を招く穿孔などの特別な加工を必要とせず、また、部品点数を少なくして庇板が脱落する要因をなくした構造が簡易かつ安価な庇を提供する。
【解決手段】保持枠3により庇板2の基端部が保持される。保持枠3は、上下一対の突壁34,35と、上下の突壁間に形成された前面開放の保持溝31とを有する。一方の突壁34には保持溝31内に向けてねじ6をねじ込むための複数のねじ孔61が所定の間隔で上下に貫通して形成されている。保持溝31内には、庇板2の基端部と、庇板2の基端部の上下各面に接するように配置される弾性体37A,37Bと、弾性体37Aの上面上に重ねて配置される加圧板62とが挿入される。各ねじ孔61にねじ込まれかつ保持溝31内に突出させた各ねじ6の先端により加圧板62を押圧して庇板2の基端部を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の外壁面より張り出すように設けられる庇に関し、特にこの発明は、板ガラス製の庇板を用いる場合に好適な構造の庇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の庇は、庇板の基端部が建物の外壁面に取り付けられた支持具により支持されるとともに、庇板の少なくとも2箇所がアームにより吊持されている(例えば、特許文献1参照)。各アームは、上端部が建物の外壁面に、下端部が庇板の板面に、それぞれ自在継ぎ手を介して接続されている。庇板の板面には、自在継ぎ手を取り付けるための取付孔が貫通して設けられている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−160993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した構成の庇では、庇板に自在継ぎ手の取付孔を形成する必要があるため、庇板の加工に手数がかかるだけでなく、庇板が板ガラスである場合、前記取付孔によって板ガラスの強度が低下し、板ガラスの破損による落下を招く要因となる。また、庇板を2本のアームにより吊持する構造であるので、部品点数が多く、構造の複雑化とコスト高を招くという問題もある。さらに、庇板に風圧などの外圧が上向きに作用すると、アームの上端部が支点となり、前記外圧の水平分力が庇板を支持具より引き抜く力として作用するため、庇板の脱落を招くおそれもある。
【0005】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、アームを用いずに庇板を保持枠だけで強固に保持する構造とすることにより、庇板の強度低下を招く穿孔などの特別な加工を必要とせず、また、部品点数を少なくして庇板が脱落する要因をなくした構造が簡易かつ安価な庇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による庇は、建物の外壁面に取り付けられる保持枠により庇板の基端部が保持されて成るものである。前記保持枠は、庇板の幅に応じた長さを有する上下一対の突壁と、上下の突壁間に形成された前面開放の保持溝とを有し、少なくとも一方の突壁には、前記保持溝内に向けてねじ部材をねじ込むための複数のねじ孔が所定の間隔で上下に貫通して形成されている。前記保持溝内には、庇板の基端部が挿入されかつその上面と下面の少なくとも一方に加圧板が重ねられるとともに、各ねじ孔にねじ込まれかつ保持溝内に突出させた各ねじ部材の先端により前記加圧板を押圧して庇板の基端部を保持している。
【0007】
上記した構成の庇を建物の外壁面に取り付けるには、庇板の基端部を建物の外壁面に取付け固定された保持枠の保持溝内に挿入するとともに、庇板の基端部の上面と下面の少なくとも一方に加圧板を重ねて配置する。上下の突壁の少なくとも一方に形成された複数のねじ孔にねじ部材をそれぞれねじ込み、各ねじ部材の先端を保持溝内に突出させて加圧板に突き当てる。かくして、加圧板はねじ部材により押圧されて庇板の基端部が強固に保持される。
【0008】
この発明の上記した構成において、庇板は板ガラスの他、アルミ板のような金属板を用いて構成することができる。また、加圧板は、鉄板、ステンレス板などの金属板が用いられる。
【0009】
前記加圧板は、庇板の基端部の上面や下面に直に重ねてもよいが、弾性体を介在して重ねてもよい。
弾性体を介在させた場合、突壁の各ねじ孔にねじ部材をそれぞれねじ込み、各ねじ部材の先端を保持溝内に突出させて加圧板に突き当てたとき、加圧板はねじ部材により弾性体に向けて押圧され、これにより弾性体が圧縮変形し、その復元力により庇板の基端部が強固に保持される。
なお、弾性体は硬質ゴムの他、独立気泡の発泡体などを用いることができるが、適度な硬さとクッション性を有するものであればこれに限られるものではない。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、アームを用いることなく庇板の基端部を保持枠により強固に保持するようにしたから、庇板に穿孔などの特別な加工を必要とせず、庇板の強度を低下させない。また、庇板に風圧などの外圧が作用しても、アームの存在に起因する庇板の抜けが生じるおそれもない。さらにまた、アームを用いていないので、部品点数が少なく、構造の簡略化とコストの低減とを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1および図2はこの発明の一実施例である庇1の外観を、図3はその設置状態を、それぞれ示している。
図示例の庇1は、窓10の上方に位置し、建物の外壁面aから張り出すように設けられる板ガラス製の庇板2と、建物の外壁面aに取付け固定される金属製の保持枠3とから成る。前記庇板2は前記保持枠3によって基端部が支持され、水平ないしは水平に近い角度に保持されている。
【0012】
前記庇板2は、平面形状が横に長い矩形状の板ガラスをもって構成されており、2枚の透明な強化ガラス板20,21を強靱かつ無色透明なシート材22を中間に挟んで一体接合されている。前記シート材22の表裏面には粘着層が設けられ、この粘着層によって各強化ガラス板20,21とシート材22とが接合されるので、たとえ強化ガラス板20,21が強い衝撃を受けて破損しても、その破片が散乱することがない。
【0013】
前記保持枠3は、庇板2の幅Dと一致する長さを有するもので、庇板2の基端縁を支持する枠本体30と、枠本体30の前面の上半分を覆う蓋板4とを含んでいる。保持枠3の両端面は開放され、各開放部は端板5,5で塞がれてねじ止めされている。
【0014】
前記枠本体30は、背板部32の上端縁、高さ中央部、および下端縁にそれぞれ突壁33,34,35(以下、「第1の突壁33」、「第2の突壁34」、「第3の突壁35」という。)がそれぞれ突設されたものである。前記背板部32には、第1の突壁33と第2の突壁34との間に、アンカーボルト7が挿入されるボルト挿通孔36が一定距離毎に設けられている。
【0015】
第2の突壁34と第3の突壁35との間には、庇板2の後端縁が差し込まれる前面開放の保持溝31が形成されている。この保持溝31内には硬質ゴムなどの弾力性を有する帯板状の弾性体37A,37B,37Cが前面の開放部より挿入されて装填され、保持溝31の開放部はシリコンなどの帯板状のコーキング材38により密封される。前記弾性体37A,37B,37Cは庇板2の基端部を保持するとともに衝撃や振動を吸収する。また、コーキング材38は保持溝31内への雨水の浸入を防止する働きがある。弾性体37A,37B,37Cおよびコーキング材38は保持枠3の全長に一致する長さに設定されているが、弾性体37A,37B,37Cは保持枠3より多少短いものであってもよい。
【0016】
第2の突壁34には、前記保持溝31内に向けてねじ6をねじ込むための複数のねじ孔61が所定の間隔で上下に貫通して形成されている。前記保持溝31内には、図4に示すように、庇板2の基端部を挟んで上下各面に接するように弾性体37A,37Bが、庇板2の基端面に接するように弾性体37Cが、それぞれ配置されている。前記弾性体37Aの上面上には、弾性体37Aと同じ長さの加圧板62が重ねて配置されており、各ねじ孔61にねじ込まれかつ保持溝31内に突出させた各ねじ6の先端により前記加圧板62が弾性体37Aに向けて押圧される。この押圧により弾性体37A,37Bが圧縮変形し、その復元力によって庇板2の基端部が強固に保持される。
【0017】
この実施例の加圧板62は、上面にねじ6の先端が嵌る凹部63を有し、コ字状に屈曲させた両端部64,64が弾性体37Aの両側縁に係合しているが、図5に示すように、加圧板62の下面に鋸歯状の凹凸面65を形成して加圧板62と弾性体37Aとを結合するようにしてもよい。
前記庇板2の厚みをt1、弾性体37A,37Bの各厚みをt2,t3、加圧板62の厚みをt4、保持溝31の上下の開口幅をdとすると、d>t1+t2+t3+t4に設定することにより、図6に示すように、前記保持溝31内に弾性体37Bと庇板2の基端部とを挿入した後に、弾性体37Aの上面に加圧板62を装着した状態のものを庇板2と第2の突壁34との間の隙間に挿入することが可能となる。
【0018】
前記蓋板4は、下端部が枠本体30の第2の突壁34の先端縁に支持され、上端部が第1の突壁33の上面に支持されて複数箇所がねじ70により止め固定されている。蓋板4の下端部の内面には第2の突壁34の先端縁に係合する突状部41が形成され、上端部には前記ねじ70が挿入される孔42が形成されている。前記枠本体30の第1の突壁33にはねじ孔39が形成され、このねじ孔39に前記ねじ70がねじ込まれることにより蓋板4が固定される。なお、図3において、73は外壁部aと保持枠3との隙間や枠本体30と蓋板4との隙間に雨水が浸入するのを防止するためのコーキング材である。
【0019】
図7は、この発明の第2実施例である庇1の要部を示している。
この実施例では、保持枠3の枠本体30は、背板部32の上端縁に第1の突壁33、高さ中央部に第2,第3の各突壁34,35、下端縁に第4の突壁8が、それぞれ突設されている。第2の突壁34と第3の突壁35との間には、庇板2の後端部が差し込まれる保持溝31が形成されている。第3の突壁35には、前記保持溝31内に向けてねじ6をねじ込むための複数のねじ孔61が所定の間隔で上下に貫通して形成されている。
【0020】
前記保持溝31内には、庇板2の基端部を挟んで上下各面に接するように弾性体37A,37Bが、庇板2の基端面に接するように弾性体37Cが、それぞれ配置され、下側の弾性体37Bの下面上には加圧板62が重ねて配置されている。各ねじ孔61にねじ込まれかつ保持溝31内に突出させた各ねじ6の先端により前記加圧板62が弾性体37Bに向けて押圧される。この押圧により前記弾性体37A,37Bが圧縮変形し、その復元力によって庇板2の基端部が保持される。
なお、同図において、38は保持溝31の開放部を密封するシリコンなどの帯板状のコーキング材である。
【0021】
図示例の保持枠3は、枠本体30の前面の上半分を覆う第1の蓋板4と、枠本体30の前面の下半分を覆う第2の蓋板9とを含んでいる。
第2の蓋板9は、上端部が枠本体30の第3の突壁35の先端縁に支持され、下端部が第4の突壁8の下面に支持されて複数箇所がねじ71により止め固定されている。第2の蓋板9の上端部の内面には第3の突壁35の先端縁に係合する突状部91が形成され、下端部には前記ねじ71の頭部を支持するねじ孔92が形成されている。前記枠本体30の第4の突壁8にはねじ孔81が形成され、このねじ孔81にねじ71がねじ込まれて第2の蓋板9が固定される。
なお、図7において、第1の蓋板4の構成および枠本体30との結合構造は第1実施例と同様の構成であり、ここでは対応する構成に第1実施例と同様の符号を付することで説明を省略する。
【0022】
また、上記した第1、第2の各実施例では、弾性体は、庇板2の基端部の上面に接するように配置される第1の弾性体37Aと、庇板2の基端部の下面に接するように配置される第2の弾性体37Bと、庇板2の基端部の端面に接するように配置される第3の弾性体37Cとで構成されているが、図8に示すように、庇板2の基端部の上面、下面、および端面に一連に接する一体の弾性体37によって構成してもよい。
【0023】
同図の実施例では、弾性体37の上面上に第1の加圧板62Aを、弾性体37の下面上に第2の加圧板62Bを、それぞれ重ねて配置するとともに、第2、第3の各突壁34,35には、前記保持溝31内に向けてねじ6A,6Bをねじ込むための複数のねじ孔61が所定の間隔で上下に貫通して形成されている。第2の突壁34に形成された各ねじ孔61にねじ込まれかつ保持溝31内に突出させた各ねじ6Aの先端により第1の加圧板62Aが弾性体37に向けて押圧され、また、第3の突壁35に形成された各ねじ孔60にねじ込まれかつ保持溝31内に突出させた各ねじ6Bの先端により第2の加圧板62Bが弾性体37に向けて押圧される。この上下からの押圧により弾性体37が圧縮変形し、その内側への復元力によって庇板2の基端部が保持される。
【0024】
図3に示した構成の庇1を建物の外壁面aに取り付けるには、庇板2の基端部を建物の外壁面aに取付け固定された保持枠3の保持溝31内に挿入するとともに、庇板2の基端部の上下各面に接するように弾性体37A,37Bを配置し、さらに弾性体37Aの上面上に加圧板62を重ねて配置する。つぎに、第2の突壁34に形成された複数のねじ孔61にねじ6をそれぞれねじ込み、各ねじ6の先端を保持溝31内に突出させて加圧板62の上面に突き当てる。かくして、加圧板62はねじ6により弾性体37Aに向けて押圧され、これにより弾性体37A,37Bが圧縮変形し、その復元力により庇板2の基端部が強固に保持される。
【0025】
上記した各実施例は、庇板2の基端部の上下各面に接するように帯板状の弾性体37A,37B,37を配置し、少なくとも一方の弾性体上に加圧板62,62A,62Bを重ねて配置しているが、庇板2の基端部の上面や下面に加圧板を直に重ねるように配置してもよい。
【0026】
図9に示す実施例では、保持溝31内に、庇板2の基端部を挟んで上下各面に接するように加圧板62A,62Bが重ねて配置されている。各加圧板62A,62Bは保持枠3の全長にほぼ一致する長さを有している。第2の突壁34に形成された複数のねじ孔61にねじ6をねじ込んで保持溝31内に突出させると、各ねじ6の先端により前記加圧板62Aが押圧され、庇板2の基端部が2枚の加圧板62A,62Bによって強固に挟持される。図示例の加圧板62A,62Bはフラットな金属板であって、加圧板62Aの上面にはねじ6の先端が嵌る凹部63が形成されている。
【0027】
図10に示す実施例は、第3の突壁35の内面に庇板2の基端部の下面を支持するための上面がフラットな台部35Aを保持枠3の全長にわたって突設するとともに、図9の実施例の加圧板62Aと同様の構成の加圧板62を庇板2の基端部の上面に重ねて配置したものである。第2の突壁34に形成された複数のねじ孔61にねじ6をねじ込んで保持溝31内に突出させると、各ねじ6の先端により前記加圧板62が押圧され、庇板2の基端部が加圧板62と台部35Aとによって強固に挟持される。
なお、図9および図10の各実施例の他の構成は、前記した実施例と同様であり、ここでは対応する構成に同じ符号を付することで説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施例である庇の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の庇の平面図である。
【図3】図1の庇を建物の外壁面に設置した状態を示す断面図である。
【図4】保持枠の保持溝に庇板の基端部が保持された状態を示す拡大断面図である。
【図5】加圧板の他の実施例を示す断面図である。
【図6】保持枠の組立構造と保持枠への庇板の取付状態とを示す断面図である。
【図7】この発明の他の実施例を示す断面図である。
【図8】この発明の他の実施例を示す保持枠の拡大断面図である。
【図9】この発明の他の実施例を示す拡大断面図である。
【図10】この発明の他の実施例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 庇
2 庇板
3 保持枠
6 ねじ
31 保持溝
34,35 突壁
37,37A,37B,37C 弾性体
61 ねじ孔
62,62A,62B 加圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面に取り付けられる保持枠により庇板の基端部が保持されて成り、前記保持枠は、庇板の幅に応じた長さを有する上下一対の突壁と、上下の突壁間に形成された前面開放の保持溝とを有し、少なくとも一方の突壁には、前記保持溝内に向けてねじ部材をねじ込むための複数のねじ孔が所定の間隔で上下に貫通して形成されており、前記保持溝内には、庇板の基端部が挿入されかつその上面と下面の少なくとも一方に加圧板が重ねられるとともに、各ねじ孔にねじ込まれかつ保持溝内に突出させた各ねじ部材の先端により前記加圧板を押圧して庇板の基端部を保持して成る庇。
【請求項2】
前記庇板は、板ガラスにより形成されている請求項1に記載された庇。
【請求項3】
前記加圧板は、庇板の基端部の上面と下面の少なくとも一方に直に重ねられている請求項1または2に記載された庇。
【請求項4】
前記加圧板は、庇板の基端部の上面と下面の少なくとも一方に弾性体を介して重ねられている請求項1または2に記載された庇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−348708(P2006−348708A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191441(P2005−191441)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591181562)株式会社共和 (23)
【Fターム(参考)】